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特許拒絶査定不服審判

2023-020626

磁気アイソレータ

審判番号
2023-020626
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-555822外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年12月05日
審決日
2025年09月24日
公報発行日
2026年03月27日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (G01R)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-555822「磁気アイソレータ」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 9月24日国際公開、WO2020/187127、令和 4年 5月12日国内公表、特表2022-525364〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 1 手続の経緯 本願は、2020年(令和2年)3月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2019年3月15日、中国)を国際出願日とする外国語特許出願であって(以下、2019年3月15日を「優先日」という。)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和3年10月27日 :翻訳文の提出 令和4年10月14日付け:拒絶理由通知書 同年12月26日 :意見書、手続補正書の提出 令和5年 3月15日付け:拒絶理由通知書(最後) 同年 6月27日 :意見書の提出 同年 8月 3日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月 8日 :原査定の謄本の送達) 同年12月 5日 :審判請求書、手続補正書の提出 同月27日付け:前置報告書 令和6年 3月 7日 :上申書 令和7年 1月15日付け:拒絶理由通知書 同年 4月14日 :意見書、手続補正書の提出 2 本願発明について (1) 本願発明の認定 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和7年4月14日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。 「基板、磁場生成ユニット、磁場検出ユニット、シールド層、および絶縁誘電体を備える磁気アイソレータであって、 該磁場生成ユニットは、電流導体を備え、該電流導体は、該基板の片側で第1の方向に沿って延びるように配置され、該磁場検出ユニットおよび該電流導体は、該基板の同じ側に配置され、該磁場検出ユニットは、該電流導体の側面に位置し、該電流導体と該磁場検出ユニットとの間の距離は、第2の方向に沿って0よりも大きく、該第1の方向は、該第2の方向に直交し、 絶縁誘電体が、該電流導体と該磁場検出ユニットとの間に配置され、高絶縁耐力を有するアイソレート材料で形成され、アイソレーション距離は、電流導体と磁場検出ユニットとの間の第2の方向上の距離に関連し、前記絶縁誘電体は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、ポリイミド、およびベンゾシクロブテンのうちの少なくとも1つを含み、 該電流導体は、入力端子を備え、該入力端子から入力された電流信号は、該電流導体を通って流れて該電流導体の周りに磁場を生成し、該磁場は、該磁場検出ユニットの感受方向に成分を有し、該磁場検出ユニットによって検出される出力信号は、該電流導体の周りに生成される該磁場に正比例し、 該シールド層および該磁場生成ユニットは、該基板の該同じ側に位置し、該シールド層は、外部干渉磁場を吸収するとともに該磁場生成ユニットの該電流導体の周りに生成される該磁場の漏れを防ぐように、該基板の近くにおよび/または該基板から離れて該磁場生成ユニットの片側に位置し、 該磁場検出ユニットは、4つの磁気検出用抵抗器からなるブリッジ構造であり、同じ磁場検出ユニットを構成する4つの磁気検出用抵抗器は、該電流導体の同じ側に位置し、該電流導体と該磁場検出ユニットとの間の距離は、該電流導体と該磁場検出ユニットとの間の接続の長さを指し、 前記磁場検出ユニットは、巨大磁気抵抗素子で構成され、該巨大磁気抵抗素子のピン止め層の磁化方向は、該巨大磁気抵抗素子の表面に直交し、該巨大磁気抵抗素子の感受方向は、該巨大磁気抵抗素子の該表面に直交し、または 前記磁場検出ユニットは、トンネル磁気抵抗素子で構成され、該トンネル磁気抵抗素子のピン止め層の磁化方向は、該トンネル磁気抵抗素子の表面に直交し、該トンネル磁気抵抗素子の感受方向は、該トンネル磁気抵抗素子の該表面に直交し、 前記磁場検出ユニットの第1の側および第2の側に配置された磁気濃縮シートをさらに備え、該第1の側および該第2の側は、該磁場検出ユニットの2つの反対の側であり、該第1の側から該第2の側への接続方向は、前記磁場検出ユニットの前記感受方向と同じまたは反対であり、該磁気濃縮シートは、前記電流導体によって生成される磁場信号、および前記磁気アイソレータの信号対ノイズ比を強化するように構成される、磁気アイソレータ。」 (2) 本願発明の分説 検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Hまでに分説する。また、参考図として、本願の【図2】を元に部材名などを記入したものを併せて掲載する。 <本願明の分説> X 基板、磁場生成ユニット、磁場検出ユニット、シールド層、および絶縁誘電体を備える磁気アイソレータであって、 A 該磁場生成ユニットは、電流導体を備え、該電流導体は、該基板の片側で第1の方向に沿って延びるように配置され、該磁場検出ユニットおよび該電流導体は、該基板の同じ側に配置され、該磁場検出ユニットは、該電流導体の側面に位置し、該電流導体と該磁場検出ユニットとの間の距離は、第2の方向に沿って0よりも大きく、該第1の方向は、該第2の方向に直交し、 B 絶縁誘電体が、該電流導体と該磁場検出ユニットとの間に配置され、高絶縁耐力を有するアイソレート材料で形成され、アイソレーション距離は、電流導体と磁場検出ユニットとの間の第2の方向上の距離に関連し、前記絶縁誘電体は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、ポリイミド、およびベンゾシクロブテンのうちの少なくとも1つを含み、 C 該電流導体は、入力端子を備え、該入力端子から入力された電流信号は、該電流導体を通って流れて該電流導体の周りに磁場を生成し、該磁場は、該磁場検出ユニットの感受方向に成分を有し、該磁場検出ユニットによって検出される出力信号は、該電流導体の周りに生成される該磁場に正比例し、 D 該シールド層および該磁場生成ユニットは、該基板の該同じ側に位置し、該シールド層は、外部干渉磁場を吸収するとともに該磁場生成ユニットの該電流導体の周りに生成される該磁場の漏れを防ぐように、該基板の近くにおよび/または該基板から離れて該磁場生成ユニットの片側に位置し、 E 該磁場検出ユニットは、4つの磁気検出用抵抗器からなるブリッジ構造であり、同じ磁場検出ユニットを構成する4つの磁気検出用抵抗器は、該電流導体の同じ側に位置し、該電流導体と該磁場検出ユニットとの間の距離は、該電流導体と該磁場検出ユニットとの間の接続の長さを指し、 F 前記磁場検出ユニットは、巨大磁気抵抗素子で構成され、該巨大磁気抵抗素子のピン止め層の磁化方向は、該巨大磁気抵抗素子の表面に直交し、該巨大磁気抵抗素子の感受方向は、該巨大磁気抵抗素子の該表面に直交し、または G 前記磁場検出ユニットは、トンネル磁気抵抗素子で構成され、該トンネル磁気抵抗素子のピン止め層の磁化方向は、該トンネル磁気抵抗素子の表面に直交し、該トンネル磁気抵抗素子の感受方向は、該トンネル磁気抵抗素子の該表面に直交し、 H 前記磁場検出ユニットの第1の側および第2の側に配置された磁気濃縮シートをさらに備え、該第1の側および該第2の側は、該磁場検出ユニットの2つの反対の側であり、該第1の側から該第2の側への接続方向は、前記磁場検出ユニットの前記感受方向と同じまたは反対であり、該磁気濃縮シートは、前記電流導体によって生成される磁場信号、および前記磁気アイソレータの信号対ノイズ比を強化するように構成される、 X 磁気アイソレータ。 <参考図> [図:0001432423000001.jpg] (3) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本開示は、磁気センサの分野に関し、詳細には、磁気アイソレータに関する。 【背景技術】 【0002】 電子回路では、様々な信号が互いに干渉する恐れがある。信号の安定性を確実にするために、信号アイソレータがしばしば使用される。今のところ、市販の信号アイソレータには、オプトカプラ、容量性カップリング・アイソレータ、および磁気アイソレータが含まれ、磁気アイソレータは、高速応答周波数および統合容易という特徴を有し、現在広く使用されている。 【0003】 基板上で一次コイルと二次コイルを統合するために、チップレベルの変換器技術が、ADIによって商品化に成功しているiCouplerの一連の製品に使用されている。一次コイルと二次コイルとの間に、高い絶縁破壊強さを有するポリイミドが設けられ、それによってアイソレーション電圧が5000VRMS/分まで到達するとともに、伝送速度が150Mbpsにと到達する。変換器が高周波信号だけに応答するので、入力信号が低周波信号である場合、一次コイルと二次コイルとの間の信号伝送は、例えば、チョッピングによって生信号を処理することによってのみ実現することができる。 【0004】 NVEは、巨大磁気抵抗(GMR:giant magnetoresistive)素子を用いたIsoLoopの一連の製品を開発し、それによりアイソレーション電圧が6000Vまで到達し、伝送速度も50Mbpsに到達している。一次コイルが、この一連の製品内に設けられている。GMR素子は、一次コイルの下方に設けられ、一次コイルは、GMR素子の位置に水平磁場を生成する。GMR素子は、水平磁場を検出して出力し、それによって分離された信号の伝送を実現する。10μmの厚さを有するベンゾシクロブテン(BCB)が、一次コイルとGMR素子との間に設けられ、それによって数キロボルトのアイソレーション電圧を実現する。GMR素子の周波数応答は、0Hzから数MHzまでであり、それによって変換器は高周波信号しか伝送できないという問題を解決する。 【0005】 上記2つの方法の高いアイソレーション電圧は、信号送信素子と信号受信素子との間でアイソレーション層によって実現される。高いアイソレーション電圧を実現するために、高いアイソレーション電圧および比較的厚いアイソレーション層を有する材料が必要とされる。酸化ケイ素または酸化アルミニウムがアイソレーション層として働く場合、比較的長いコーティング時間が必要とされ、比較的高いコストが必要とされ、ポリイミドまたはBCBなどのポリマー材料が、アイソレーション層として働く場合、一部の極端な環境において、例えば、湿気の場合、または高度環境において、装置故障の隠れた危険がある。」 「【0017】 先行技術と比較して、本開示は、以下の有益な技術的効果を有する。 【0018】 絶縁誘電体は、本開示において与えられる磁気アイソレータの第2の方向に(水平に配置された磁気アイソレータについての水平方向に)電流導体と磁場検出ユニットとの間の距離内に設けられ、それによって電気的アイソレーションで役割を果たし、アイソレーション強度を改善するのを助け、プロセスを単純化する。シールド層は、外部干渉磁場を吸収し、信号対ノイズ比をさらに改善することができる。」 「【0022】 図1は、当業界における従来の磁気アイソレータの概略断面図である。全ての、構成要素が、半導体プロセスまたはMEMSプロセスによって基板101上に配置されている。電流信号が電流導体102に入力され、電流信号の方向が紙面に内に直交することに関する説明が以下に与えられる。電流信号の大きさは、測定された電流の大きさに関連している。磁場検出ユニット104は、電流導体102の真下にあり、磁場検出ユニット104の位置における電流導体102によって生成される磁場の方向は、図中の矢印103によって示されるようなものである。磁場検出ユニット104は、磁場を検出し、電圧モードで磁場を出力する。絶縁誘電体105は、電流導体102と磁場検出ユニット104との間に設けられ、絶縁誘電体の材料および厚さがアイソレーション電圧を決定する。外部場の抑制を強化し、磁場の漏れを減少させるために、シールド層106は、電流導体102および磁場検出ユニット104の上側および下側に設けられる。比較的高いアイソレーション電圧を実現するために、通常、比較的厚い絶縁誘電体が必要とされる。酸化ケイ素または酸化アルミニウムがアイソレーション層として働く場合、比較的長いコーティング時間が必要とされ、比較的高いコストが必要とされ、ポリイミドまたはBCBなどのポリマー材料がアイソレーション層として働く場合、一部の極端な環境において、例えば、湿気の場合、または高温環境において、装置故障の隠れた危険がある。」 「【図1】 [図:0001432423000002.jpg] 」 「【0029】 本開示の実施形態により与えられる磁気アイソレータは、基板、磁場生成ユニット、磁場検出ユニット、シールド層、および絶縁誘電体を含み、磁場生成ユニットは電流導体を含み、電流導体は、基板の片側で第1の方向に沿って延びるように配置され、磁場検出ユニットおよび電流導体は、基板の同じ側に配置され、磁場検出ユニットは、電流導体の側面に位置し、電流導体と磁場検出ユニットとの間の距離は、第2の方向に沿って0よりも大きく、第1の方向は、第2の方向に直交し、絶縁誘電体は、電流導体と磁場検出ユニットとの間に配置され、絶縁誘電体は、第2の方向に沿って電流導体と磁場検出ユニットとの間の距離内に配置され、それによって電気的アイソレーションで役割を果たし、アイソレーション強度を改善するのを助け、プロセスを単純化する。シールド層は、外部干渉磁場を吸収し、信号対ノイズ比をさらに改善することができる。」 3 当審において通知した拒絶の理由の概要 当審において令和7年1月15日付けで通知した拒絶の理由のうち、令和7年4月14日に提出された手続補正書により補正される前の本願の請求項1、5、6、8に係る発明についての理由2(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。 本願の請求項1、5、6、8に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において発行された、下記引用文献に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 1.特開2010-219829号公報(主たる引用文献) 2.特開2010-258979号公報(周知技術1を示す文献) 3.特開2010-258372号公報(周知技術1を示す文献) 4.特表2003-526083号公報(周知技術1を示す文献) 10.国際公開第2015/033464号(周知技術6を示す文献) 11.特開2009-111294号公報(周知技術7を示す文献) 4 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定 (1) 引用文献1に記載された事項 当審において通知した拒絶の理由において引用され、本願の優先日前に発行された文献である特開2010-219829号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(2)の引用発明の認定に用いる記載に下線を付している。)。 ア 段落【0001】 「【0001】 本発明は、平面コイルと磁気検出素子とを備えて構成される磁気結合型アイソレータに関する。」 イ 段落【0005】~【0011】 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 従来における磁気結合型アイソレータでは、平面コイルと、磁気検出素子とを高さ方向に絶縁層を介して対向配置していた。 【0006】 絶縁層は、平面コイルと磁気検出素子間を電気的に絶縁するが、磁気的には結合させる厚さにしなければならない。したがって絶縁層の膜厚を極端に厚くできず、このとき、絶縁層に高さ方向へのピンホール等が発生すると、磁気検出素子と平面コイル間の絶縁性が低下しやすい問題があった。 【0007】 また例えば磁気検出素子は素子抵抗を高めるためにミアンダ形状で形成されており、平面コイルと磁気検出素子との対向面積は大きくなる。この結果、上記した絶縁性の低下が顕著になり、さらに、平面コイルを有する1次側回路(入力側回路)と、磁気検出素子を有する2次側回路(出力側回路)間の静電容量Cが大きくなり、高速応答性が低下する問題が生じた。 【0008】 そこで本発明は上記従来課題を解決するためのものであり、特に、磁気検出素子と平面コイル間の絶縁性の低下を抑制でき、また、1次側回路と2次側回路間の静電容量Cを従来よりも小さくすることで、より高速伝送できる磁気結合型アイソレータを提供することを目的としている。 【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明における磁気結合型アイソレータは、 入力信号により外部磁界を発生させるための平面コイルと、前記外部磁界を検出して電気信号に変換するための磁気検出素子と、前記平面コイルと前記磁気検出素子の間に介在する絶縁層と、を有し、 前記磁気検出素子は、前記平面コイルの側方に位置していることを特徴とするものである。これにより、磁気検出素子と平面コイル間の絶縁性の低下を抑制できる。また。磁気検出素子の平面コイルとの対向面積を小さくでき、1次側回路と2次側回路間の静電容量Cを小さくでき、高速応答性を向上させることができる。 【0010】 本発明では、前記磁気検出素子は、ホール素子であり、前記磁気検出素子の側面と前記平面コイルの側面とが水平方向にて対向するように配置されていることが好ましい。ホール素子は垂直磁場成分により電気特性が変化するため、ホール素子で形成された磁気検出素子の側面と平面コイルの側面とを水平方向にて対向させることで、磁気検出素子に平面コイルからの垂直磁場成分を適切に作用させ、磁気検出素子により、平面コイルから生じた外部磁界を検出することが出来る。 【0011】 あるいは本発明では、前記磁気検出素子は、磁気抵抗効果を利用したMR素子であり、前記磁気検出素子は、前記平面コイルよりも上方あるいは下方に位置していることが好ましい。MR素子は水平磁場成分により電気特性が変化するため、MR素子で形成された磁気検出素子を平面コイルよりも上方あるいは下方に配置することで、磁気検出素子に平面コイルからの水平磁場成分を適切に作用させ、磁気検出素子により、平面コイルから生じた外部磁界を検出することが出来る。」 ウ 段落【0018】~【0020】、【図1】、【図3】 「【0018】 図1は、本実施形態の磁気結合型アイソレータ(磁気カプラ)の全体の回路構成図、図2は、磁気検出素子R1~R4にて構成されるブリッジ回路図、図3は本実施形態における磁気結合型アイソレータの部分平面図、図4は、図3に示すA-A線に沿って厚さ方向に切断し矢印方向から見た部分拡大断面図、図5は、図4とは異なる形態の磁気結合型アイソレータの部分拡大断面図、図6は、磁気検出素子の斜視図、である。 【0019】 図1に示すように磁気結合型アイソレータ1は、平面コイル2と、磁気検出素子R1~R4と、平面コイル2と磁気検出素子R1~R4を電気的に絶縁する絶縁層30とを有して構成される。平面コイル2と各磁気検出素子R1~R4は磁気的結合が可能な間隔を空けて配置される。 【0020】 平面コイル2は図3のように、X1-X2方向に帯状に延びる第1磁界発生部3と第2磁界発生部4を有する。第1磁界発生部3と第2磁界発生部4は図示Y1-Y2方向に間隔を空けて対向している。第1磁界発生部3と第2磁界発生部4は連結部17,18を介して連結されている。連結部17,18は、湾曲状となっているが形態を限定するものではない。第1磁界発生部3、第2磁界発生部4、及び連結部17,18に囲まれて空間部19が形成されている。」 「【図1】 [図:0001432423000003.jpg] 」 「【図3】 [図:0001432423000004.jpg] 」 エ 段落【0021】~【0029】、【図4】 「【0021】 図4に示すように平面コイル2は、幅寸法T1で形成されたコイル片6が所定の間隔T2を空けて、複数回、平面内にて巻回形成された形状である。よって、図3及び図4に示すように、第1磁界発生部3及び第2磁界発生部4は、X1-X2方向に直線的に延びる複数本のコイル片6がY1-Y2方向に並設された構成となっている。 【0022】 平面コイル2に接続される2つの電極パッド5,6が設けられている。電極パッド5,6は円形状であるが特に形状を限定するものではない。さらに平面コイル2は電極パッド5,6を介して図1に示すように送信回路7に接続されている。送信回路7から入力信号に基づく電流が流れると、平面コイル2から外部磁界が発生する。 【0023】 図4に示すように第1磁界発生部3を構成するコイル片6、及び第2磁界発生部4を構成するコイル片6では電流の流れる向きが反平行である。よって、第1磁界発生部3を構成するコイル片6により発生する外部磁界H1と、第2磁界発生部4を構成するコイル片6により発生する外部磁界H2は逆向きに発生する。 【0024】 図4に示すように、平面コイル2は、基板20上に形成された絶縁下地層21上に形成される。絶縁下地層21はAl2O3やSiO2等で形成される。 【0025】 図3,図4に示すように、磁気検出素子R1~R4が平面コイル2の側方に間隔を空けて配置されている。 【0026】 磁気検出素子R1~R4は例えばホール素子である。図4に示すように、磁気検出素子R1~R4は、平面コイル2と同じように絶縁下地層21上に形成される。 【0027】 そして、磁気検出素子R1~R4上から平面コイル2上にかけて絶縁層30が形成され、各磁気検出素子R1~R4と平面コイル2間には前記絶縁層30が介在する。磁気検出素子R1~R4と平面コイル2間の間隔T3(図4参照)は、磁気検出素子R1~R4と平面コイル2間を電気的には絶縁するが磁気的に結合させる大きさで形成される。絶縁層30の材質は問わない。絶縁層30は無機絶縁材料でも有機絶縁材料でもどちらでもよい。例えば絶縁層30はポリイミドで形成される。 【0028】 図3,図4に示すように、磁気検出素子R1と磁気検出素子R4は、平面コイル2の第1磁界発生部3の外側であってX1-X2方向に間隔を空けて配置されており、磁気検出素子R2と磁気検出素子R3は、平面コイル2の第2磁界発生部4の外側であってX1-X2方向に間隔を空けて配置されている。したがって磁気検出素子R1及び磁気検出素子R4には、第1磁界発生部3より発生する外部磁界H1が作用し、一方、磁気検出素子R2及び磁気検出素子R3には、第2磁界発生部4より発生する外部磁界H2が作用する。 【0029】 なお図4に示す実施形態では、各磁気検出素子R1~R4(ホール素子)に全て垂直上方向(あるいは下方向)に磁界が作用する。そこで磁気検出素子R1,R4の組と、磁気検出素子R2,R3の組の一方をn型半導体、他方をp型半導体のホール素子で形成することで、磁界の向きが同一でも、極性を変えることが可能である。」 「【図4】 [図:0001432423000005.jpg] 」 オ 段落【0036】~【0037】、【0046】、【図2】 「【0036】 図3に示す実施形態では、入力端子10、グランド端子11,12及び出力端子13,14が、平面コイル2から見てY2側に離れた位置に設けられ、各端子10~14がX1-X2方向に間隔を空けて一列に並んでいる。 【0037】 そして各磁気検出素子R1~R4と各端子10~14間が図示しない配線パターンにより配線され図2に示すブリッジ回路が構成されている。」 「【0046】 上記したように図4に示す磁気検出素子R1~R4はホール素子である。ホール素子は、垂直磁場成分により電気特性が変化するため、図4に示すように、磁気検出素子R1~R4を平面コイル2と同じように絶縁下地層21上に形成し、磁気検出素子R1~R4を平面コイル2と水平方向(Y1-Y2方向)に対向させることで、磁気検出素子R1~R4に平面コイル2の第1磁界発生部3及び第2磁界発生部4から垂直磁場成分(Z方向成分)を作用させることが出来る。」 「【図2】 [図:0001432423000006.jpg] 」 カ 段落【0051】~【0056】、【図5】 「【0051】 図5に示す磁気検出素子R1~R4は、図4と異なって、磁気抵抗効果(MR効果)を利用したMR素子である。 【0052】 MR素子は、水平磁場成分により電気特性が変化するので、図5に示すように、磁気検出素子R1~R4を平面コイル2よりも上方、あるいは下方に配置する。 【0053】 図5に示すように基板20上に形成された絶縁下地層21上に平面コイル2が形成され、平面コイル2上が第1絶縁層24により覆われている。第1絶縁層24はポリイミド等の有機絶縁材料、あるいは無機絶縁材料で形成される。 【0054】 各磁気検出素子R1~R4は、第1絶縁層24の平面化面24a上であって、平面コイル2の第1磁界発生部3及び第2磁界発生部4の側方に離れた位置に形成される。磁気検出素子R1~R4は例えば巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)であり、反強磁性層/固定磁性層/非磁性層/フリー磁性層の基本積層構造を備えている。固定磁性層は磁化方向が固定されており例えばY1方向に固定されている。フリー磁性層は磁化が固定されず外部磁界により変動する。 【0055】 磁気検出素子R1~R4上は第2絶縁層25にて覆われている。第2絶縁層25は第1絶縁層24と同じ材質であっても異なる材質であってもどちらでも良い。 【0056】 図5に示すように、各磁気検出素子R1~R4を、平面コイル2の側方であって、平面コイル2から見て上方に位置させることで、各磁気検出素子R1~R4には、第1磁界発生部3及び第2磁界発生部4からY1-Y2方向の水平磁場成分が作用する。これにより、磁気検出素子R1~R4の電気特性を変化させることが出来る。」 「【図5】 [図:0001432423000007.jpg] 」 (2) 引用発明の認定 前記(1)に摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、第1の実施形態(【図1】~【図4】)に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。 <引用発明> 「平面コイル2と、磁気検出素子R1~R4と、平面コイル2と磁気検出素子R1~R4を電気的に絶縁する絶縁層30とを有して構成される磁気結合型アイソレータ1であって、(【0019】) 平面コイル2は、基板20上に形成された絶縁下地層21上に形成され、(【0024】、【図4】) 平面コイル2は、X1-X2方向に帯状に延びる第1磁界発生部3と第2磁界発生部4を有し、(【0020】、【図3】~【図4】) 第1磁界発生部3及び第2磁界発生部4は、X1-X2方向に直線的に延びる複数本のコイル片6がY1-Y2方向に並設された構成となっており、(【0021】、【図3】~【図4】) 平面コイル2は、電極パッド5、6を介して送信回路7に接続され、送信回路7から入力信号に基づく電流が流れると、平面コイル2から外部磁界が発生し(【0022】、【図3】) 磁気検出素子R1~R4は、平面コイル2と同じように絶縁下地層21上に形成され、(【0026】、【図4】) 磁気検出素子R1と磁気検出素子R4は、平面コイル2の第1磁界発生部3の外側であってX1-X2方向に間隔を空けて配置され、磁気検出素子R2と磁気検出素子R3は、平面コイル2の第2磁界発生部4の外側であってX1-X2方向に間隔を空けて配置され、(【0028】、【図3】~【図4】) 磁気検出素子R1~R4はホール素子であり、ホール素子は、垂直磁場成分により電気特性が変化するため、磁気検出素子R1~R4を平面コイル2と水平方向(Y1-Y2方向)に対向させることで、磁気検出素子R1~R4に平面コイル2の第1磁界発生部3及び第2磁界発生部4から垂直磁場成分(Z方向成分)を作用させ、(【0046】、【図4】) 各磁気検出素子R1~R4と平面コイル2間には前記絶縁層30が介在し、磁気検出素子R1~R4と平面コイル2間の間隔T3は、磁気検出素子R1~R4と平面コイル2間を電気的には絶縁するが磁気的に結合させる大きさで形成され、また絶縁層30はポリイミドで形成され、(【0027】) 各磁気検出素子R1~R4と各端子10~14間が配線パターンにより配線されブリッジ回路が構成される、(【0037】、【図2】) 磁気結合型アイソレータ1。」 5 引用文献2の記載事項及び周知技術1の認定 (1) 引用文献2に記載された事項 当審において通知した拒絶の理由において引用され、本願の優先日前に発行された文献である特開2010-258979号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。 なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。 ア 段落【0001】 「【0001】 本発明は、磁界発生部と磁気抵抗効果素子(TMR素子、CIP-GMR素子、CPP-GMR素子)とを備える磁気結合型アイソレータに関する。」 イ 段落【0036】、【図3】 「【0036】 図3に示すように、平面視において磁界発生部であるコイル2及び磁気抵抗効果素子R1~R4と重なるように上部シールド膜(第1シールド膜)41及び下部シールド膜(第2シールド膜)42が設けられている。また、磁気抵抗効果素子R1~R4を囲繞するようにミドルシールド(第3シールド膜)43が設けられている。」 「【図3】 [図:0001432423000008.jpg] 」 ウ 段落【0037】~【0038】、【0059】~【0063】、【図5】 「【0037】 図5は、本発明の実施の形態に係る磁気結合型アイソレータの部分断面図である。図5に示す磁気結合型アイソレータにおいては、基板であるシリコン基板51上に絶縁層であるシリコン酸化膜52が形成されている。シリコン酸化膜52には、熱酸化によるシリコン酸化膜やCVD成膜されたシリコン酸化膜が用いられる。 【0038】 シリコン酸化膜52上の所定の位置、すなわち厚さ方向においてコイル2の形成領域の下方(平面視においてコイル2及び磁気抵抗効果素子R1~R4と重なる位置)には、下部シールド膜42が形成されている。下部シールド膜42を構成する材料としては、アモルファス磁性材料、パーマロイ系磁性材料、又は鉄系微結晶材料等の高透磁率材料を用いることができる。下部シールド膜42の厚さとしては、膜応力を考慮すると、0.5μm~10μmであることが好ましい。下部シールド膜42は、前記材料を成膜した後に、フォトリソグラフィ及びエッチングにより形成することができる。あるいは、下部シールド膜42は、下地材料を成膜した後に、フォトリソグラフィ及びめっきにより形成することができる。」 「【0059】 ポリイミド層60上の所定の位置、すなわち厚さ方向においてコイル2の上方(平面視においてコイル2及び磁気抵抗効果素子R1~R4と重なる位置)には、上部シールド膜41が形成されている。上部シールド膜41を構成する材料としては、アモルファス磁性材料、パーマロイ系磁性材料、又は鉄系微結晶材料等の高透磁率材料を用いることができる。上部シールド膜41の厚さとしては、膜応力を考慮すると、0.5μm~10μmであることが好ましい。上部シールド膜41は、前記材料を成膜した後に、フォトリソグラフィ及びエッチングにより形成することができる。あるいは、上部シールド膜41は、下地材料を成膜した後に、フォトリソグラフィ及びめっきにより形成することができる。 【0060】 上部シールド膜41を形成したポリイミド層60上には、オーバーコート層としてシリコン酸化膜62が形成されている。このシリコン酸化膜62、ポリイミド層57,60及びシリコン酸化膜58のコイル電極59及びパッド用の電極56の領域には、コンタクトホールが形成され、そのコンタクトホール内にパッド61が形成されている。これにより、パッド61とコイル電極59との間が電気的に接続され、パッド61と電極56との間が電気的に接続される。 【0061】 なお、図5に示す構成において、シリコン酸化膜54,58は設けなくても良い。 【0062】 図5から分かるように、本実施の形態に係る磁気結合型アイソレータは、コイル2及び磁気抵抗効果素子R1~R4と重なるように配置された上部シールド膜41及び下部シールド膜42と、磁気抵抗効果素子R1~R4を囲繞するように配置されたミドルシールド43とを有する。このように、磁気抵抗効果素子R1~R4の周囲に上部シールド膜41、下部シールド膜42及びミドルシールド膜43を配設するので、外部磁場やEMSに対する耐性を十分に確保することができる。 【0063】 上部シールド膜は、コイル2から磁気抵抗効果素子R1~R4で構成されるブリッジ回路に印加される磁界をエンハンスする機能を有することが好ましい。また、上部シールド膜41、下部シールド膜42及び/又はミドルシールド膜43は、平面視において点対称な形状を有しており、それぞれの対称の中心が一致していることが好ましい。このような形状にすることにより、磁気抵抗効果素子R1~R4に印加される磁界の大きさをより均一にして中点電位のずれを緩和することができる。なお、上部シールド膜41、下部シールド膜42及び/又はミドルシールド膜43の相互の位置関係や大きさなどについては後述する。」 「【図5】 [図:0001432423000009.jpg] 」 (2) 周知技術1の認定 前記(1)に摘記した引用文献2の記載事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる。(以下「周知技術1」という。) <周知技術1> 「磁気結合型アイソレータにおいて、外部磁場やEMSに対する耐性を十分に確保するために、シールド膜を磁気発生部の周辺に配置すること。」 6 引用文献10の記載事項及び周知技術2の認定 (1) 引用文献10に記載された事項 当審において通知した拒絶の理由において引用され、本願の優先日前に発行された文献である国際公開第2015/033464号(以下「引用文献10」という。)には、次の記載がある。 ア 段落[0001]~[0002] 「[0001] 本発明は、磁気抵抗効果素子を用いた磁気センサ素子に関するものである。 [0002] 近年、磁気センサは、車載用の車軸回転センサやカム/クランク角位置センサ、電気自動車用の電流センサ、あるいは携帯端末の電子コンパスなど様々な用途で用いられている。トンネル磁気抵抗(Tunneling Magnetoresistive:TMR)効果を利用するMTJ(Magnetic Tunneling Junction)素子は小型で低消費電力な磁気センサとして有望である。MTJ素子の基本構成は、2つの強磁性体層(固定層、自由層)で絶縁体のバリア層を挟んだ構造である。固定層の磁化方向は一方向に固定されており、一方、自由層の磁化方向は外部磁場によって回転する。両者の磁化方向の角度差によって素子の抵抗が変化するため、外部磁場の変化を素子の抵抗変化として検出することができる。」 イ 段落[0014]~[0019]、[図1]、[図3] 「[0014]<実施例1> 実施例1は二方向の磁場を測定可能な磁気センサを提案するものである。図1は、実施例1におけるセンサ素子の断面模式図である。センサ素子は、図1のように複数の金属薄膜および絶縁体薄膜をウェハ基板上に積層して構成される。本素子は、上段のMTJ構造71と下段のMTJ構造72とが積層され、両者の間には絶縁体のスペーサ層40が配置されている。 [0015] まず下段のMTJ構造72について説明する。MTJ構造72は従来用いられている一般的な面内磁気異方性の強磁性層を用いた磁気センサ構造である。下部電極34は下からTa(膜厚:5nm)/Ru(膜厚:10nm)/Ta(膜厚:5nm)/NiFe(3nm)の順で積層した積層膜で構成される。その上に反強磁性層42としてMnIr(8nm)を積層する。さらに固定層第二の強磁性層25、非磁性層41、固定層第一の強磁性層24の順に積層する。固定層第二の強磁性層25はCo50Fe50(2.5nm)、非磁性層41はRu(0.8nm)、固定層第一の強磁性層24はCo20Fe60B20(3nm)である。固定層第一の強磁性層24と固定層第二の強磁性層25は非磁性層41のRuを介した反強磁性結合により、それぞれの磁化64,65は互いに反平行に安定する。これがいわゆる積層フェリ構造の固定層であり、固定層の磁化を強く固定するのに有効である。固定層の上にはバリア層12としてMgO(1.5nm)を積層し、その上に自由層23のCo20Fe60B20(2nm)と、上部電極33としてTa(5nm)/Ru(5nm)の積層膜を形成する。上部電極33と下部電極34にはそれぞれ抵抗を測定するための電極端子53と54が接続される。 [0016] 続いて磁場に対する素子の応答について説明する。固定層の磁化65は反強磁性層42の交換バイアスによって図中+y方向に強く固定されている。上述したようにRuを介した反強磁性結合により、固定層の磁化64は磁化65と反平行に安定するため-y方向に固定される。一方、自由層の磁化63は磁化容易軸がx方向にある。つまり、外部磁場が無い状況では、自由層の磁化63と、バリア層12を介して対向する固定層の磁化64の磁化容易軸は面内で直交する。これを初期状態とする。 [0017] 次に、図示したように例えば+y方向の磁場82が印加されると自由層の磁化63が+y方向に向くよう面内で回転する。このとき両者の磁化は反平行配置に近づくため、MTJ構造72の抵抗(電極端子53-54間の抵抗)は初期状態に比べて増大する。逆に外部磁場が-y方向に印加されると自由層の磁化63は-y方向に向くように回転し両者の磁化は平行配置に近づくためMTJ構造72の抵抗は初期状態に比べて減少する。図2は、このMTJ構造の外部磁場と抵抗変化の関係を示す模式図である。図示したように外部磁場に応じて抵抗が線形に変化する領域を利用して磁場をセンシングできる。 [0018] 次に、上段のMTJ構造71について説明する。下部電極32は下からTa(膜厚:5nm)/Ru(膜厚:10nm)/Ta(膜厚:5nm)の順で積層した積層膜で構成される。その上に固定層22、バリア層11、自由層21の順に積層する。固定層22はCo20Fe60B20(1nm)、バリア層11はMgO(1.5nm)、自由層21はCo20Fe60B20(2nm)を用いた。その上に上部電極31としてTa(5nm)/Ru(5nm)の積層膜を形成する。上部電極31と下部電極32にはそれぞれ抵抗を測定するための電極端子51と52が接続される。このMTJ構造71においては、固定層22の磁化62は膜面垂直方向に向いている。これは、Co20Fe60B20は膜厚を1nm程度に薄くすることでMgO界面との界面磁気異方性の影響が増大し、磁化容易軸が膜面内から膜面垂直方向に変わるためである。一方、自由層21の磁化61は膜面内x方向を向く。これは、自由層21は比較的厚い2nmのCo20Fe60B20であり、磁化容易軸が面内方向を向いているためである。固定層22の垂直磁気異方性は一般に面内磁気異方性よりも強いので反強磁性層がなくても磁化62を安定に固定できる。より強く固定層22の磁化を固定したい場合は必要に応じて下部電極32と固定層22の間に反強磁性層を挿入しても良い。 [0019] 続いて、このMTJ構造71の磁場に対する応答について説明する。まず外部磁場のない初期状態において、自由層の磁化61は膜面内方向を向き、固定層の磁化62は膜面垂直方向を向いて、両者は直交している。図示したように+z方向の外部磁場81がかかると自由層の磁化61は+z方向を向くように回転し、磁化62と反平行配置に近づくため抵抗が増大する。逆に-z方向の外部磁場がかかると自由層の磁化61は-z方向を向くため固定層の磁化62と平行配置に近付き抵抗が減少する。図3は、このMTJ構造の外部磁場と抵抗変化の関係を示す模式図である。図示したように外部磁場に応じて抵抗が線形に変化する領域を利用して磁場をセンシングできる。」 「[図1] [図:0001432423000010.jpg] 」 「[図3] [図:0001432423000011.jpg] 」 (2) 周知技術2の認定 前記(1)に摘記した引用文献10の記載事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる。(以下「周知技術2」という。) <周知技術2> 「固定層の磁化方向が膜面垂直方向である、垂直方向に感度を有するトンネル磁気抵抗効果を利用するMTJ構造の磁気センサ素子。」 7 引用文献11の記載事項及び周知技術3の認定 (1) 引用文献11に記載された事項 当審において通知した拒絶の理由において引用され、本願の優先日前に発行された文献である特開2009-111294号公報(以下「引用文献11」という。)には、次の記載がある。 ア 段落【0001】 「【0001】 本発明は、薄膜コイルと磁気抵抗効果素子とを備え、互いに絶縁された複数の電気回路間の信号伝達を非接触で行う磁気カプラに関する。」 イ 段落【0017】~【0018】、【図1】~【図2】 「【0017】 [第1の実施の形態] 最初に、図1および図2を参照して、本発明における第1の実施の形態としての磁気カプラの構成について説明する。図1は、本実施の形態の磁気カプラの構成を表す平面図である。図2(A)は、図1に示した磁気カプラの要部を拡大した平面図であり、図2(B)は、図2(A)のIIB-IIB線に沿った矢視方向の断面図である。なお、図1に示した信号電流Imおよび誘導磁界Hmの矢印の方向は、磁気抵抗効果素子31~34(後出)との相対的な方向を示している。この磁気カプラは、ある電気回路からの信号を、電気的に非接触な状態で他の電気回路へ伝達するデバイスであり、必要な信号を伝達しつつノイズを遮断するのに有効な手段である。 【0018】 図1に示したように、本実施の形態の磁気カプラは、基体10上の、X-Y平面に沿って広がる第1の階層L1(図2(B))において巻回する薄膜コイル20と、第1の階層L1の上層である第2の階層L2において薄膜コイル20と対応する領域に位置する第1~第4の磁気抵抗効果(MR;Magneto-Resistive effect)素子31~34と、第2の階層L2において薄膜コイル20の巻回中心側および巻回外周側に配置されたヨーク41~44とを備えている。第1の階層L1において、薄膜コイル20は絶縁層12によって覆われており、第2の階層L2において、ヨーク41~44および第1~第4のMR素子31~34は共に絶縁層13によって覆われている(図2(B))。なお、図1および図2では、第1から第4のMR素子31~34を繋ぐ配線パターンの図示は省略している。」 「【図1】 [図:0001432423000012.jpg] 」 「【図2】 [図:0001432423000013.jpg] 」 ウ 段落【0029】~【0031】 「【0029】 ヨーク41~44は、パーマロイ(NiFe)、コバルト鉄ニッケル(CoFeNi)合金、鉄硅素合金(FeSi)、センダスト、ニッケル-亜鉛(NiZn)フェライト、マンガン-亜鉛(MnZn)フェライト、などの高い透磁率を有する軟磁性材料によって構成され、薄膜コイル20を流れる信号電流Imによって生じる誘導磁界Hmを、第1~第4のMR素子31~34に向かうようにガイドする機能を有するものである。ヨーク41,42は、薄膜コイル20の径方向(Y軸方向)において第1および第2のMR素子31,32を挟むように対向配置されている。同様に、ヨーク43,44は、薄膜コイル20の径方向(Y軸方向)において第1および第2のMR素子31,32を挟むように対向配置されている。 【0030】 ここで、ヨーク41~44は、積層方向において直線領域R21と重複する位置に設けられていてもよいし、重複しない位置に設けられていてもよい。但し、薄膜コイル20の巻回中心側のヨーク41,43は、薄膜コイルの巻回外周側のヨーク42,44よりも直線領域R21のY軸方向の中心位置CLの近くに設けられていることが望ましい。すなわちヨーク41とヨーク42との関係についていえば、図2(B)に示したように、Y軸方向において、薄膜コイル20の最内周端縁(最内周に位置する直線パターン21における巻回中心側の側面位置)21T1と最外周端縁(最外周に位置する直線パターン21における巻回外周側の側面位置)21T2との中心位置CLが、薄膜コイル20の巻回外周側のヨーク42よりも薄膜コイル20の巻回中心側のヨーク41に近いことが望ましい。第1および第2のMR素子31,32に及ぶ誘導磁界Hmの強度分布が、Y軸方向においてより平坦化された(偏りの小さな)ものとなるからである。ヨーク43とヨーク44との関係についても同様である。上記の場合、Y軸方向において、巻回中心側のヨーク41は最内周に位置する直線パターン21の側面位置21T1よりも巻回外周側に位置するようにするとよい。すなわち図2(B)に示したように、ヨーク41における巻回中心側の側面位置41T1が最内周の直線パターン21の側面位置21T1よりも巻回外周側に位置するようにするとよい。ヨーク43についても同様である。また、図2(B)に示したように、巻回外周側のヨーク42は、その巻回中心側の端縁42T1が、最外周に位置する直線パターン21の側面位置21T2よりも巻回中心側に位置することが望ましい。ヨーク44についても同様である。 【0031】 さらに、ヨーク41~44は、各々の磁化容易軸Meが薄膜コイル20の巻回方向(ここではX軸方向)に沿った向きとなっている。これにより、磁化容易軸Meが他の向きである場合と比べ、薄膜コイル20からの誘導磁界Hmによってヨーク41~44が磁化されやすくなり、より効率的にその誘導磁界Hmが第1~第4のMR素子31~34へガイドされることとなる。特に、ヨーク41~44は、その長手方向が薄膜コイル20の巻回方向と一致するように延在しているので、形状磁気異方性により磁化容易軸Meの向きが安定している。」 エ 段落【0038】 「【0038】 本実施の形態の磁気カプラでは、第1~第4のMR素子31~34を面内方向において挟むように、軟磁性材料からなるヨーク41~44を薄膜コイル20の巻回中心側および巻回外周側の双方に配置したので、薄膜コイル20から発生する誘導磁界Hmの強度低下を抑制し、その誘導磁界Hmを第1~第4のMR素子31~34に対して効率的に及ぼすことができる。よって、より微小な信号電流Imであっても誘導磁界Hmを正確に検出することができる。したがって、従来よりも省電力化を図ることができる。特に、ヨーク41~44を、第1~第4のMR素子31~34と同じく第2の階層L2に配置するようにしたので、第2の階層L2以外にある場合と比べ、誘導磁界Hmが、より効率的に第1~第4のMR素子31~34に及ぶようになる。なお、特許文献1には、コイルと電流センサとの両方の近傍に配置されて磁場コンセントレータとして機能する磁性材料層に関する記載があるが、その磁性材料層の具体的な配置位置が示されていないため、十分な効果が得られるかどうか不明である。」 オ 段落【0048】 「【0048】 一方、ヨーク41~44は、いずれも同じ構成である。具体的には、厚さが0.15μm、幅が45μmであり、パーマロイからなり、透磁率μが2000である。巻回中心側のヨーク41,43と巻回外周側のヨーク42,44との間隔はいずれも250μmとし、ヨーク41とヨーク43との間隔は60μmとした。また、薄膜コイル20とヨーク41~44との、積層方向(Z軸方向)の距離は40μmとした。」 (2) 周知技術3の認定 前記(1)に摘記した引用文献11の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる。(以下「周知技術3」という。) <周知技術3> 「薄膜コイルと磁気検出素子とを備え、互いに絶縁された複数の電気回路間の信号伝達を非接触で行う磁気カプラにおいて、磁界の強度低下を抑制し、その誘導磁界を磁場検出素子に対して効率的に及ぼすために、軟磁性材料からなる薄膜を磁場検出素子の周辺に配置すること。」 8 引用文献17の記載事項及び技術常識1の認定 (1) 引用文献17に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開2010-130325号公報(以下「引用文献17」という。)には、次の記載がある。 ア 段落【0010】~【0011】、【図1】 「【0010】 図1は実施例1に係わる磁気結合型アイソレータ10の主要回路図を示す。磁気結合型アイソレータ10は、入出力間の電気的絶縁と信号カップリングの機能を兼ね備えた絶縁型インターフェースであり、信号絶縁デバイス又は信号伝送装置と称することができる。磁気結型アイソレータ10は、磁気カプラ素子20と、コンパレータ(比較器)COMPとを主要構成として備える。 【0011】 磁気カプラ素子20は、入力信号としての入力電流を流すための導体から成るプライマリコイル41と、複数の磁気抵抗効果素子31,32,33,34がブリッジ接続されてなる検出ブリッジ回路30と、バイアス信号としてのバイアス電流を流すための導体から成るバイアスコイル42とを備える。検出ブリッジ回路30は、直列接続されてなる二つの磁気抵抗効果素子31,33と、直列接続されてなる二つの磁気抵抗効果素子32,34とが並列接続されてなる回路構成を有しており、入力信号の変化により生じる磁界強度の変化を磁気抵抗効果素子31,32の磁気抵抗の変化(又は磁気抵抗効果素子33,34の磁気抵抗の変化)として検出する。」 「【図1】 [図:0001432423000014.jpg] 」 イ 段落【0016】~【0018】、【図2】 「【0016】 次に、図2を参照しながら、磁気抵抗効果素子31と外部磁界との関係について説明する。説明の便宜上、磁気抵抗効果素子31の長手方向を±X方向とするXYZ直交座標系を定義する。磁気抵抗効果素子31は、磁化方向が一方向に固定された強磁性体から成る磁化固定層(図示せず)と、磁気抵抗を検出するためのセンス電流が流れる非磁性体から成る導電体層(図示せず)と、外部磁界の作用を受けてその磁化方向が変化する強磁性体から成る磁化自由層(図示せず)とが順次積層して成る磁気抵抗効果膜を有するスピンバルブGMR素子である。ここで、磁化固定層の磁化方向D1Pは、磁気抵抗効果素子31の長手方向(±X方向)に対して略垂直な方向(例えば、+Y方向)に固定されている。また、外部磁界が存在しない場合は、磁化自由層の磁化方向D1Fは、磁気抵抗効果素子31の長手方向(±X方向)に対して平行な方向を向くが、外部磁界が存在する場合には、磁化自由層の磁化方向D1Fは、外部磁界(複数の外部磁界が存在する場合には、複数の外部磁界の合成磁界)の作用を受けて変化する。 【0017】 尚、磁化固定層の磁化方向D1Pを、磁気抵抗効果素子31の長手方向に対して略垂直な方向に固定すると、磁気抵抗効果素子31の磁気抵抗値は、外部磁界強度に対してほぼ線形的に変化する特性を有することが知られている。斯かる特性により、図1の回路において、入力信号に対してほぼ比例する信号を差動出力信号として取り出すことが可能となる。又、磁化固定層の磁化方向を、磁気抵抗効果素子31の長手方向に対して略水平な方向に固定する場合と比較して、外部磁界強度に対してヒステリシスを有しないことが知られている。従って、図1の回路において、入力信号が0に遷移した場合、それ以前の入力信号が保持される(メモリ効果)ことがないので、入力信号に対しほぼ比例する信号を差動出力信号として取り出すことが可能となる。 【0018】 本実施形態では、磁化固定層の磁化方向D1Pと、プライマリコイル41が生成する磁界H1の方向とが平行であり且つ逆方向を向くように調整され、且つ磁化固定層の磁化方向D1Pと、バイアスコイル42が生成する磁界H2の方向とが平行であり且つ同一方向を向くように調整されている。また、磁界H1の強度は、磁界H2の強度よりも高くなるように調整されている。従って、磁界H2のみが磁気抵抗効果素子31に作用している場合には、磁化自由層の磁化方向D1Fは、磁化固定層の磁化方向D1Pに対して平行であり、且つ同一方向を向くので(平行状態)、磁気抵抗の変化率は負となり、低抵抗状態となる。一方、磁界H1と磁界H2とが同時に磁気抵抗効果素子31に作用している場合には、磁界H1と磁界H2との合成磁界の方向は、磁界H1の方向と同じになり、磁化自由層の磁化方向D1Fは、磁化固定層の磁化方向D1Pに対して平行であり、且つ逆方向を向くので(反平行状態)、磁気抵抗の変化率は正となり、高抵抗状態となる。」 「【図2】 [図:0001432423000015.jpg] 」 ウ 段落【0019】、【図3】~【図4】 「【0019】 尚、磁化方向D1Pと外部磁界の向き(磁界H1及び磁界H2のそれぞれの向き)との関係が上述の関係を満たしている限り、磁気抵抗効果素子31、プライマリコイル41、及びバイアスコイル42の物理的な位置関係は、例えば、図3及び図4に示すように、様々な位置関係をとり得る。ここで、図3では、紙面表面から裏面に向かって入力電流及びバイアス電流が流れている場合を想定しており、図4では、紙面表面から裏面に向かってバイアス電流が流れ、且つ紙面裏面から表面に向かって入力電流が流れている場合を想定している。但し、図3及び図4に示す物理的な位置関係は、一例を示すものであり、本実施形態は、この例に限られるものではない。」 「【図3】 [図:0001432423000016.jpg] 」 「【図4】 [図:0001432423000017.jpg] 」 エ 段落【0029】 「【0029】 また、磁気抵抗効果素子31,32,33,34は、上述のスピンバルブGMR素子に限られるものではなく、例えば、TMR素子でもよい。」 (2) 引用文献17の【図1】から、ブリッジ接続された4つの「磁気抵抗効果素子31,32,33,34」が、磁気発生コイルである「プライマリコイル41」から見て同じ側にまとめて配置されている構造が読みとれる。 ここで、引用文献17の段落【0010】の説明では「図1は実施例1に係わる磁気結合型アイソレータ10の主要回路図を示す。」とされており、この説明のみを見ると、【図1】は回路図であって、各構成要素間の物理的な位置関係までを正しく示すものでないと解釈する余地もあるといえる。 しかしながら、【図1】において、「バイアスコイル42」が「検出ブリッジ回路30」と重ねて記載されているのに対し、「プライマリコイル41」はこれらと並べて記載されており、記載の態様が区別されている点や、段落【0019】において【図1】とは異なる位置関係であるとして説明されている【図3】及び【図4】の配置が「プライマリコイル41」、「磁気抵抗効果素子31」及び「バイアスコイル42」が重なったものである点を踏まえると、【図1】に示されたものは「プライマリコイル41」を磁気抵抗効果素子と重ねずに配置する構造を示したものであると解釈することが自然である。 なお、仮にそうでないとしても、引用文献17の段落【0019】には、磁気結合型アイソレータにおいて、磁気検出素子と磁気発生コイルの物理的な位置関係は、様々にとり得るものであることが記載されている。 (3) 技術常識1の認定 前記(1)に摘記した引用文献17の記載事項及び前記(2)の検討を踏まえると、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識1」という。) <技術常識1> 「磁気結合型アイソレータにおいて、磁気検出素子と磁気発生コイルの物理的な位置関係は、磁気検出素子の感磁方向と磁気発生コイルの発生磁界の向きの関係が所定の関係を満たしている限り様々な位置関係をとり得るものであり、当該位置関係には、例えば、ブリッジ接続された4つの磁気検出素子を、磁気発生コイルから見て同じ側にまとめて配置する構成が含まれること。」 9 本願発明と引用発明の対比 (1) 対比分析 本願発明と引用発明を対比する。 ア 構成Xの観点(磁気アイソレータの構成要素) (ア) 引用発明の「基板20」、「平面コイル2」、「磁気検出素子R1~R4」及び「磁気結合型アイソレータ1」は、それぞれ本願発明の「基板」、「磁場生成ユニット」、「磁場検出ユニット」及び「磁気アイソレータ」に相当する。 (イ) 引用発明の「平面コイル2と磁気検出素子R1~R4を電気的に絶縁する絶縁層30」は、「ポリイミドで形成され[る]」ものであるから、本願発明の「絶縁誘電体」に相当する。 (ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において共通する。 「基板、磁場生成ユニット、磁場検出ユニット、および絶縁誘電体を備える磁気アイソレータ」の発明である点。 (エ) また、本願発明と引用発明は、次の点において相違する。 本願発明が「シールド層」を備えているのに対し、引用発明はシールド層を備えてはいない点。 イ 構成Aの観点(磁場生成ユニット) (ア) 引用発明の「X1-X2方向」は、本願発明の「第1の方向」に相当するところ、引用発明の「平面コイル2」を構成する「コイル片6」は、本願発明の「磁場生成ユニット」が備える「電流導体」に相当し、また、引用発明において、「平面コイル2は、基板20上に形成された絶縁下地層21上に形成され」て、「コイル片6」が「X1-X2方向に直線的に延びる」ように構成されることが、本願発明において、「該電流導体は、該基板の片側で第1の方向に沿って延びるように配置され[る]」ことに相当する。 (イ) 引用発明において「平面コイル2は、基板20上に形成された絶縁下地層21上に形成され、」「磁気検出素子R1~R4は、平面コイル2と同じように絶縁下地層21上に形成され[る]」ことは、本願発明において「該磁場検出ユニットおよび該電流導体は、該基板の同じ側に配置され[る]」ことに相当する。 (ウ) 引用発明において「磁気検出素子R1と磁気検出素子R4は、平面コイル2の第1磁界発生部3の外側であってX1-X2方向に間隔を空けて配置され、磁気検出素子R2と磁気検出素子R3は、平面コイル2の第2磁界発生部4の外側であってX1-X2方向に間隔を空けて配置され[る]」ことは、本願発明において「該磁場検出ユニットは、該電流導体の側面に位置[する]」ことに相当する。 また、引用発明の「Y1-Y2方向」は、「X1-X2方向」に直交することは明らかであるから、本願発明の「第1の方向」に「直交」する「第2の方向」に相当するところ、引用発明において、「磁気検出素子R1~R4を平面コイル2と水平方向(Y1-Y2方向)に対向させ」ることは、本願発明の「該電流導体と該磁場検出ユニットとの間の距離は、第2の方向に沿って0よりも大きく、該第1の方向は、該第2の方向に直交[する]」ことに相当する。 (エ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「該磁場生成ユニットは、電流導体を備え、該電流導体は、該基板の片側で第1の方向に沿って延びるように配置され、該磁場検出ユニットおよび該電流導体は、該基板の同じ側に配置され、該磁場検出ユニットは、該電流導体の側面に位置し、該電流導体と該磁場検出ユニットとの間の距離は、第2の方向に沿って0よりも大きく、該第1の方向は、該第2の方向に直交[する]」ものである点。 ウ 構成Bの観点(絶縁誘電体) (ア) 引用発明において「各磁気検出素子R1~R4と平面コイル2間には絶縁層30が介在し、」「絶縁層30はポリイミドで形成され[る]」ことは、本願発明において「絶縁誘電体が、該電流導体と該磁場検出ユニットとの間に配置され、高絶縁耐力を有するアイソレート材料で形成され、」「前記絶縁誘電体は、」「ポリイミド」を含むものであることに相当する。 (イ) 引用発明において「磁気検出素子R1~R4と平面コイル2間の間隔T3」は、「Y1-Y2方向」について規定されたものであり(図4を参照)、「磁気検出素子R1~R4と平面コイル2間を電気的には絶縁する」「大きさで形成され[る]」ものであるところ、磁気検出素子R1~R4と平面コイル2間の電気的な絶縁性は「間隔T3」の大きさに関連するものと認められる。 そうすると、引用発明の「Y1-Y2方向」について規定された「間隔T3」は、本願発明の「電流導体と磁場検出ユニットとの間の第2の方向上の距離に関連[する]」「アイソレーション距離」に相当する。 (ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「絶縁誘電体が、該電流導体と該磁場検出ユニットとの間に配置され、高絶縁耐力を有するアイソレート材料で形成され、アイソレーション距離は、電流導体と磁場検出ユニットとの間の第2の方向上の距離に関連し、前記絶縁誘電体は、ポリイミド」「を含[む]」ものである点。 エ 構成Cの観点(電流導体) (ア) 引用発明において「平面コイル2は、電極パッド5、6を介して送信回路7に接続され、送信回路7から入力信号に基づく電流が流れると、平面コイル2から外部磁界が発生[する]」ことは、本願発明において「該電流導体は、入力端子を備え、該入力端子から入力された電流信号は、該電流導体を通って流れて該電流導体の周りに磁場を生成[する]」ことに相当する。 (イ) 引用発明においては「磁気検出素子R1~R4を平面コイル2と水平方向(Y1-Y2方向)に対向させることで、磁気検出素子R1~R4に平面コイル2の第1磁界発生部3及び第2磁界発生部4から垂直磁場成分(Z方向成分)を作用させ[る]」ように構成されているのであるから、「平面コイル2」の発生させる磁界が「磁気検出素子R1~R4」の感受方向成分を有していることは明らかである。 (ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において共通する。 「該電流導体は、入力端子を備え、該入力端子から入力された電流信号は、該電流導体を通って流れて該電流導体の周りに磁場を生成し、該磁場は、該磁場検出ユニットの感受方向に成分を有[する]」点。 (エ) また、本願発明と引用発明は、次の点において一応相違する。 本願発明においては、「該磁場検出ユニットによって検出される出力信号は、該電流導体の周りに生成される該磁場に正比例[する]」のに対し、 引用発明においては、そのような正比例関係について明示されてはいない点。 オ 構成Dの観点(シールド層) 引用発明は、本願発明の構成Dに相当する構成を備えていないから、本願発明と引用発明は、次の点において相違する。 本願発明においては、 「該シールド層および該磁場生成ユニットは、該基板の該同じ側に位置し、該シールド層は、外部干渉磁場を吸収するとともに該磁場生成ユニットの該電流導体の周りに生成される該磁場の漏れを防ぐように、該基板の近くにおよび/または該基板から離れて該磁場生成ユニットの片側に位置[する]」 との限定があるのに対し、 引用発明は、このような構成を備えていない点。 カ 構成Eの観点(磁場検出ユニット1) (ア) 引用発明は「磁気検出素子R1~R4は、配線パターンにより配線されブリッジ回路が構成され[る]」ものであるから、本願発明と引用発明は、次の点において共通する。 「該磁場検出ユニットは、4つの磁気検出素子からなるブリッジ構造であ[る]」点。 (イ) また、本願発明と引用発明は、次の点において相違する。 本願発明の「磁場検出ユニット」を構成する4つの磁気検出素子は「磁気検出用抵抗器」であり、「同じ磁場検出ユニットを構成する4つの磁気検出用抵抗器は、該電流導体の同じ側に位置し、該電流導体と該磁場検出ユニットとの間の距離は、該電流導体と該磁場検出ユニットとの間の接続の長さを指[す]」のに対し、引用発明の「磁気検出素子R1~R4はホール素子であり」、また前記のような配置について明示されていない点。 キ 構成F及び構成Gの観点(磁場検出ユニット2) 引用発明は、本願発明の構成F及び構成Gに相当する構成を備えていないから、本願発明と引用発明は、次の点において相違する。 本願発明は、 「前記磁場検出ユニットは、巨大磁気抵抗素子で構成され、該巨大磁気抵抗素子のピン止め層の磁化方向は、該巨大磁気抵抗素子の表面に直交し、該巨大磁気抵抗素子の感受方向は、該巨大磁気抵抗素子の該表面に直交し、または 前記磁場検出ユニットは、トンネル磁気抵抗素子で構成され、該トンネル磁気抵抗素子のピン止め層の磁化方向は、該トンネル磁気抵抗素子の表面に直交し、該トンネル磁気抵抗素子の感受方向は、該トンネル磁気抵抗素子の該表面に直交[する]」 との構成を備えるのに対し、 引用発明は、「磁気検出素子R1~R4」が「ホール素子」であり、このような構成を備えていない点。 ク 構成Hの観点(磁気濃縮シート) 引用発明は、本願発明の構成Hに相当する構成を備えていないから、本願発明と引用発明は、次の点において相違する。 本願発明は、 「前記磁場検出ユニットの第1の側および第2の側に配置された磁気濃縮シートをさらに備え、該第1の側および該第2の側は、該磁場検出ユニットの2つの反対の側であり、該第1の側から該第2の側への接続方向は、前記磁場検出ユニットの前記感受方向と同じまたは反対であり、該磁気濃縮シートは、前記電流導体によって生成される磁場信号、および前記磁気アイソレータの信号対ノイズ比を強化するように構成される」 との構成を備えるのに対し、 引用発明は、「磁気濃縮シート」を備えておらず、このような構成を備えていない点。 (2) 一致点及び相違点 前記(1)の対比分析の結果を整理すると、本願発明と引用発明は、次のアに示す一致点において一致し、後記イに示す相違点において相違すると認められる。 なお、絶縁材料として、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、ベンゾシクロブテンを用いることは例示するまでもなく周知技術であり、これらを引用発明の「絶縁層30」の材質として採用することは、当業者にとって自明の設計事項にすぎないから、絶縁誘電体にポリイミド以外のものが選択肢として含まれることについては、後記イの相違点に含めていない。 ア 一致点 「基板、磁場生成ユニット、磁場検出ユニット、および絶縁誘電体を備える磁気アイソレータであって、 該磁場生成ユニットは、電流導体を備え、該電流導体は、該基板の片側で第1の方向に沿って延びるように配置され、該磁場検出ユニットおよび該電流導体は、該基板の同じ側に配置され、該磁場検出ユニットは、該電流導体の側面に位置し、該電流導体と該磁場検出ユニットとの間の距離は、第2の方向に沿って0よりも大きく、該第1の方向は、該第2の方向に直交し、 絶縁誘電体が、該電流導体と該磁場検出ユニットとの間に配置され、高絶縁耐力を有するアイソレート材料で形成され、アイソレーション距離は、電流導体と磁場検出ユニットとの間の第2の方向上の距離に関連し、前記絶縁誘電体は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、ポリイミド、およびベンゾシクロブテンのうちの少なくとも1つを含み、 該電流導体は、入力端子を備え、該入力端子から入力された電流信号は、該電流導体を通って流れて該電流導体の周りに磁場を生成し、該磁場は、該磁場検出ユニットの感受方向に成分を有し、 該磁場検出ユニットは、4つの磁気検出素子からなるブリッジ構造である、 磁気アイソレータ。」である点。 イ 相違点 (ア) 相違点1 本願発明が「シールド層」を備え、また「該シールド層および該磁場生成ユニットは、該基板の該同じ側に位置し、該シールド層は、外部干渉磁場を吸収するとともに該磁場生成ユニットの該電流導体の周りに生成される該磁場の漏れを防ぐように、該基板の近くにおよび/または該基板から離れて該磁場生成ユニットの片側に位置」するのに対し、 引用発明はシールド層を備えていない点。 (イ) 相違点2(一応の相違点) 本願発明においては、「該磁場検出ユニットによって検出される出力信号は、該電流導体の周りに生成される該磁場に正比例[する]」のに対し、 引用発明においては、そのような正比例関係について明示されてはいない点。 (ウ) 相違点3 本願発明の「磁場検出ユニット」を構成する4つの磁気検出素子は「磁気検出用抵抗器」であり、「同じ磁場検出ユニットを構成する4つの磁気検出用抵抗器は、該電流導体の同じ側に位置し、該電流導体と該磁場検出ユニットとの間の距離は、該電流導体と該磁場検出ユニットとの間の接続の長さを指[す]」のに対し、 引用発明の「磁気検出素子R1~R4はホール素子であり」、また前記のような配置について明示されていない点。 (エ) 相違点4 本願発明においては、「前記磁場検出ユニットは、巨大磁気抵抗素子で構成され、該巨大磁気抵抗素子のピン止め層の磁化方向は、該巨大磁気抵抗素子の表面に直交し、該巨大磁気抵抗素子の感受方向は、該巨大磁気抵抗素子の該表面に直交し、または 前記磁場検出ユニットは、トンネル磁気抵抗素子で構成され、該トンネル磁気抵抗素子のピン止め層の磁化方向は、該トンネル磁気抵抗素子の表面に直交し、該トンネル磁気抵抗素子の感受方向は、該トンネル磁気抵抗素子の該表面に直交[する]」のに対し、 引用発明の「磁気検出素子R1~R4」は「ホール素子」である点。 (オ) 相違点5 本願発明においては、「前記磁場検出ユニットの第1の側および第2の側に配置された磁気濃縮シートをさらに備え、該第1の側および該第2の側は、該磁場検出ユニットの2つの反対の側であり、該第1の側から該第2の側への接続方向は、前記磁場検出ユニットの前記感受方向と同じまたは反対であり、該磁気濃縮シートは、前記電流導体によって生成される磁場信号、および前記磁気アイソレータの信号対ノイズ比を強化するように構成される」のに対し、 引用発明は「磁気濃縮シート」を備えない点。 10 判断 (1) 相違点1について ア 前記5(2)で認定したように、 「磁気結合型アイソレータにおいて、外部磁場やEMSに対する耐性を十分に確保するために、シールド膜を磁気発生部の周辺に配置すること。」 は周知技術(周知技術1)である。 イ ここで、周知技術1は「外部磁場やEMSに対する耐性を十分に確保する」ことを目的とするものであるから、シールド膜は、本来は外部からの磁場の影響を防ぐために設けられたものであるが、このような外部からの磁場の影響を防ぐためのシールド膜を磁気発生部の周辺に配置した場合、磁気発生部自身がその周りに生成する磁場が外部に漏れることを防ぐ機能を付随的に奏することは当然である。 ウ これを踏まえると、周知技術1は、外部からの磁場の影響を防ぐとともに、磁気発生部がその周りに生成する磁場が外部に漏れることを防ぐシールド膜について実質的に開示しているといえる。 エ そして、引用発明と周知技術1は、いずれも磁気発生部(平面コイル)を備える磁気結合型アイソレータに関する技術であり、引用発明においても、外部磁場からの影響に対する耐性を確保するという自明の課題が内在しているといえるから、周知技術1を引用発明に採用する契機はあるというべきである。 オ その場合、シールド層と磁気発生部(平面コイル)を基板の同じ側に位置させ、シールド層を該基板の近くに、あるいは、該基板から離れて磁気発生部(平面コイル)の片側に位置するようにすることは、当業者が適宜なし得た設計事項にすぎず、これにより前記相違点1に係る本願発明の構成は、当業者にとって自明に導き出されるものである。 (2) 相違点2(一応の相違点)について ア 磁気センサについて、検出対象となる磁場の大きさに正比例した出力信号が出力されるように設計することが望ましいことは、磁気センサの種類の如何を問わず、当業者にとって技術常識である。 イ 例えば前記引用文献10に開示された磁気抵抗素子において、次に再掲する[図3]の説明として、 「[図3] [図:0001432423000018.jpg] 」 段落[0019]に「図3は、このMTJ構造の外部磁場と抵抗変化の関係を示す模式図である。図示したように外部磁場に応じて抵抗が線形に変化する領域を利用して磁場をセンシングできる。」と記載されているように、「磁場検出ユニットによって検出される出力信号」と、検出対象である「磁場」を正比例の関係とすべきことは、当業者にとって常識の範囲内の事項であって、このことは、磁気センサが磁気抵抗素子であるかホール素子であるかに関わらず妥当することである。 したがって、相違点2は実質的な相違点ではない。 ウ 仮に相違点2が実質的な相違点であるとして検討しても、磁場の値を検出するために、「磁場検出ユニットによって検出される出力信号」と、検出対象である「磁場」の関係を特定する必要があることは自明であって、その特定の際に、両者の関係を正比例関係とするか否かは、設計事項の範囲内のものといえるから、いずれにしても前記相違点2に係る構成は格別のものではない。 (3) 相違点3及び相違点4について ア 相違点3に係る本願発明の構成の解釈 (ア) 相違点3に係る構成のうち、「同じ磁場検出ユニットを構成する4つの磁気検出用抵抗器は、該電流導体の同じ側に位置[する]」の部分は、発明の詳細な説明中に同一の記載が無く、その意味は必ずしも明確ではない。 (イ) ここで、請求人が令和7年4月14日に提出した意見書において、当該記載に関する補正の根拠の一部として挙げている【図2】を以下に示す。 「【図2】 [図:0001432423000019.jpg] 」 (ウ) 当該図面に関し、発明の詳細な説明において「磁場検出ユニット203および205」と説明されているところ、【図2】中で203、205の示す箇所の近辺領域を見ると、それぞれの領域に4つの直方体が配置されていることが見てとれる。これらの4つの直方体が4つの磁気検出素子に対応していると善解すれば、前記相違点3に係る「同じ磁場検出ユニットを構成する4つの磁気検出用抵抗器は、該電流導体の同じ側に位置[する]」とは、一つのユニットを構成する4つの磁気検出用抵抗器(例えば、磁場検出ユニット203の4つの直方体)が、電流導体202から見て同じ側にまとめて配置されていること(例えば、203の4つの直方体は、図2では、202から見て左側にまとめてあること)、を指すものであると理解することができる。 上記理解を踏まえ、以下検討する。 イ 周知技術2を踏まえた相違点4の検討 (ア) 前記6(2)で認定したように、 「固定層の磁化方向が膜面垂直方向である、垂直方向に感度を有するトンネル磁気抵抗効果を利用するMTJ構造の磁気センサ素子。」 は周知技術(周知技術2)である。 (イ) ここで、上記周知技術2の「固定層」は、前記相違点4に係る「トンネル磁気抵抗素子のピン止め層」に相当し、上記周知技術2の「固定層の磁化方向が膜面垂直方向である」ことは、前記相違点4に係る「トンネル磁気抵抗素子のピン止め層の磁化方向は、該トンネル磁気抵抗素子の表面に直交」することに相当する。 (ウ) また、上記周知技術2の「トンネル磁気抵抗効果を利用するMTJ構造の磁気センサ素子」が「垂直方向に感度を有する」ことは、前記相違点4に係る「トンネル磁気抵抗素子の感受方向は、該トンネル磁気抵抗素子の該表面に直交」することに相当する。 (エ) そうすると、前記相違点4に係る「該トンネル磁気抵抗素子のピン止め層の磁化方向は、該トンネル磁気抵抗素子の表面に直交し、該トンネル磁気抵抗素子の感受方向は、該トンネル磁気抵抗素子の該表面に直交[する]」「トンネル磁気抵抗素子」は、周知の構成にすぎない。 (オ) そして、引用発明の「ホール素子」と周知技術2の磁気センサ素子は、いずれも垂直な磁場成分を検出できる素子であるから、引用発明の「ホール素子」に替えて、周知技術2の磁気センサ素子を、平面コイルと水平方向に対向させて配置することにより、前記相違点4に係る本願発明の構成を得ることは、当業者が容易になし得たものである。 ウ 技術常識1を踏まえた相違点3の検討 (ア) 前記8(3)で認定したように、 「磁気結合型アイソレータにおいて、磁気検出素子と磁気発生コイルの物理的な位置関係は、磁気検出素子の感磁方向と磁気発生コイルの発生磁界の向きの関係が所定の関係を満たしている限り様々な位置関係をとり得るものであり、当該位置関係には、例えば、ブリッジ接続された4つの磁気検出素子を、磁気発生コイルから見て同じ側にまとめて配置する構成が含まれること。」 は技術常識(技術常識1)である。 (イ) 上記技術常識1を踏まえると、引用発明において、前記周知技術2により前記相違点4に係る構成を導くに際し、「一つのユニットを構成する4つの磁気検出用抵抗器が、電流導体から見て同じ側にまとめて配置され[る]」ように構成するか否かは、当業者が適宜選択すべき設計事項の範囲内のものといえる。 (ウ) また、前記相違点3に係る「該電流導体と該磁場検出ユニットとの間の距離は、該電流導体と該磁場検出ユニットとの間の接続の長さを指[す]」との構成について検討すると、上記構成の「該電流導体と該磁場検出ユニットとの間の距離」と「該電流導体と該磁場検出ユニットとの間の接続の長さ」は単なる表現の相違であって、引用発明においても「平面コイル2」と「磁気検出素子R1~R4」の間の距離は、両者の間の接続の長さでもあることは自明であり、相違点3に係る上記構成は実質的な相違点ではない。 エ 相違点3及び相違点4の検討のまとめ 以上をまとめると、引用発明、周知技術2、及び技術常識1から相違点3及び相違点4に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。 (4) 相違点5について ア 前記7(2)で認定したように、 「薄膜コイルと磁気検出素子とを備え、互いに絶縁された複数の電気回路間の信号伝達を非接触で行う磁気カプラにおいて、磁界の強度低下を抑制し、その誘導磁界を磁場検出素子に対して効率的に及ぼすために、軟磁性材料からなる薄膜を磁場検出素子の周辺に配置すること。」 は周知技術(周知技術3)である。 イ 周知技術3の「磁界の強度低下を抑制し、その誘導磁界を磁場検出素子に対して効率的に及ぼすため」に「磁場検出素子の周辺に配置する」「軟磁性材料からなる薄膜」は、相違点5に係る「前記磁場検出ユニット」に「配置された磁気濃縮シート」に相当する。 ウ 引用発明と周知技術3は、いずれも磁気結合型アイソレータ(磁気カプラ)に関する技術であり、引用発明においても、磁界の強度低下抑制などの自明な課題が内在していることは明らかであるから、周知技術3を引用発明に採用する契機はあるというべきである。 エ その場合、生成される磁場信号の強度を上昇させることや、磁気アイソレータのS/N比を向上させることは、当業者にとって当然意識すべき設計指針であるから、かかる設計指針の下、「磁場検出ユニット」の対向する両側にそれぞれ「磁気濃縮シート」を配置し、磁気濃縮シートの配置に係る「接続方向」が「磁場検出ユニットの感受方向と同じまたは反対」となるようにすることは、当業者が適宜なし得た設計事項にすぎず、これにより前記相違点5に係る本願発明の構成が自明なものとして導かれることになる。 (5) 総合評価 前記(1)~(4)において検討したとおり、引用発明において、前記相違点1~5に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明、周知技術1~3及び技術常識1に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。 そして、前記相違点1~5を総合的に勘案しても、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本願発明は、引用発明、周知技術1~3及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 11 請求人の主張について (1) 請求人の主張内容 請求人は令和7年4月14日提出の意見書において、おおよそ次のように主張している。 ア 主張1 引用文献1の段落0011には「前記磁気検出素子は、磁気抵抗効果を利用したMR素子であり、前記磁気検出素子は、前記平面コイルよりも上方あるいは下方に位置していることが好ましい。MR素子は水平磁場成分により電気特性が変化するため、MR素子で形成された磁気検出素子を平面コイルよりも上方あるいは下方に配置することで、磁気検出素子に平面コイルからの水平磁場成分を適切に作用させ、磁気検出素子により、平面コイルから生じた外部磁界を検出することが出来る」と記載されており、引用文献1ではMR素子は水平磁場成分により電気特性が変化するものと想定しているのであるから、ピン止め層の磁化方向が膜面垂直方向である「GMR素子」又は「TMR素子」を採用することは容易に想到することができない。 イ 主張2 引用文献1の図3から明確に分かるように、R1~R4は、それぞれ平面コイルの両側に位置しており、このような配置構成から「前記磁場検出ユニットの第1の側および第2の側に配置された磁気濃縮シートをさらに備え、該第1の側および該第2の側は、該磁場検出ユニットの2つの反対の側であり、該第1の側から該第2の側への接続方向は、前記磁場検出ユニットの前記感受方向と同じまたは反対であり、該磁気濃縮シートは、前記電流導体によって生成される磁場信号、および前記磁気アイソレータの信号対ノイズ比を強化するように構成される」ことを容易に想到することができない。 ウ 主張3 引用文献2~11は周知技術を示す文献として挙げられているが、引用文献1から「該磁場検出ユニットは、4つの磁気検出用抵抗器からなるブリッジ構造であり、同じ磁場検出ユニットを構成する4つの磁気検出用抵抗器は、該電流導体の同じ側に位置」させる構成さえも容易に想到できないので、引用文献1~11を組み合わせしても、補正後の請求項1に係る発明を容易に創作することができない。 特に「主引用発明に副引用発明1を適用し、さらに別の副引用発明2を適用する場合において、副引用発明2を適用する(動機付けとしての)課題を、主引用発明に副引用発明を適用してなる発明からは認識できるものの、主引用発明からは認識できないのであれば、副引用発明2を適用することは容易ではない。」という判断基準に基づいて、引用文献1~11から補正後の請求項1に係る本発明を容易に想到することができない。 (2) 請求人の主張についての検討 ア 主張1について 前記4(2)で認定したように、引用発明は「磁気検出素子R1~R4」として「ホール素子」を備えるものであるから、「MR素子」であることを前提とした請求人の主張は採用できない。 また、前記10(3)で説示したように、「固定層の磁化方向が膜面垂直方向である、垂直方向に感度を有するトンネル磁気抵抗効果を利用するMTJ構造の磁気センサ素子。」は周知技術(周知技術2)であり、引用発明の「ホール素子」に替えて、周知技術2の構造を有する素子を、平面コイルと水平方向に対向させて配置することは、当業者が容易になし得たものである。 したがって、前記主張1を採用することはできない。 イ 主張2について 前記10(4)で説示したように、「薄膜コイルと磁気検出素子とを備え、互いに絶縁された複数の電気回路間の信号伝達を非接触で行う磁気カプラにおいて、磁界の強度低下を抑制し、その誘導磁界を磁場検出素子に対して効率的に及ぼすために、軟磁性材料からなる薄膜を磁場検出素子の周辺に配置すること。」は周知技術(周知技術3)であり、周知技術3を引用発明に採用することは、当業者が容易になし得たものである。また、磁気濃縮シートの配置についても、当業者が適宜なし得た設計事項にすぎない。 したがって、前記主張2を採用することはできない。 ウ 主張3について 前記10(3)ウで説示したように、「磁気結合型アイソレータにおいて、磁気検出素子と磁気発生コイルの物理的な位置関係は、磁気検出素子の感磁方向と磁気発生コイルの発生磁界の向きの関係が所定の関係を満たしている限り様々な位置関係をとり得るものであり、当該位置関係には、例えば、ブリッジ接続された4つの磁気検出素子を、磁気発生コイルから見て同じ側にまとめて配置する構成が含まれること。」は技術常識(技術常識1)であるから、引用発明においても「ユニットを構成する4つの磁気検出用抵抗器が、電流導体から見て同じ側にまとめて配置され[る]」ように構成するか否かは、当業者が適宜選択すべき設計事項の範囲内のものといえる。 そして、前記10の各相違点の判断から明らかなように、引用発明には自明な課題が内在するのであって、請求人の主張する「主引用発明に副引用発明を適用してなる発明からは認識できるものの、主引用発明からは認識できない」ような格別な「課題」を前提にして、本願発明の進歩性を判断する必要はないというべきである。 したがって、前記主張3を採用することはできない。 12 むすび 以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-020626

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