特許拒絶査定不服審判
2023-020095
改善された味を有する生分解性フィルター
- 審判番号
- 2023-020095
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-542086
- 請求日
- 2023年11月28日
- 審決日
- 2025年03月13日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ジェイティー インターナショナル エスエイ
- 【請求人代理人】山本 修
- 【請求人代理人】宮前 徹
- 【請求人代理人】松尾 淳一
- 【請求人代理人】新井 規之
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 充
- 審判官 正木 裕也
- 審判官 水野 治彦
- 分類
- P18 .121-Z (A24D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-542086「改善された味を有する生分解性フィルター」拒絶査定不服審判事件〔令和元年8月8日国際公開、WO2019/149742、令和3年6月24日特許出願公表、特表2021-515540〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(平成31年)1月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2018年2月1日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、令和4年12月26日付けで拒絶の理由が通知され、令和5年6月2日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和5年7月20日付けで拒絶査定がされ、これに対し、令和5年11月28日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし請求項16に係る発明は、令和5年6月2日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項16に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「喫煙物品用フィルターであって:
天然セルロース繊維を含む濾過基材を含むセグメントであって、前記濾過基材が、フェノール類を減少させるための添加剤および前記フェノール類を減少させるための添加剤を前記濾過基材に結合させるための結合剤を含む組成物を含む、セグメントと;
前記セグメントを少なくとも部分的に取り囲むラッパーと、
を含み、
前記添加剤の量が、前記濾過基材と組成物の全重量に対し、9~35重量%であり、
前記結合剤の量が、前記濾過基材と組成物の全重量に対し、0.2~5.0重量%である、
フィルター。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前に発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献:特表2015-523079号公報
第4 引用文献
1.引用文献の記載
原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献には、「喫煙物品用の分解性フィルタ」に関して、次の記載事項、図示事項及び認定事項がある(下線は当審が付したものである。以下同様。)。
(1)「【0006】
喫煙物品が喫煙されて物品の残りの部分が廃棄された後は、フィルタ区画はできるだけ早く分解することが望ましい。これを容易にする喫煙物品のためのフィルタを提供することが望ましいと考えられる。」
(2)「【0007】
本発明の第1の態様により、喫煙物品のためのフィルタを提供し、フィルタは、フィルタ材料のセグメントを含み、フィルタ材料は、ランダムに配向された再生セルロース繊維及び酢酸セルロース繊維を含む。フィルタ材料は、トリアセチンを更に含み、フィルタはまた、フィルタ材料のセグメントを取り囲む包装紙を含む。
【0008】
本明細書では、「再生セルロース繊維」という用語は、望ましい物理特性を有するセルロース繊維を提供するために自然発生的なセルロース材料を加工することによって形成されたセルロース繊維を意味するのに使用する。再生セルロース繊維を形成するための典型的な工程は、木片のような自然発生的なセルロース材料をパルプ化してパルプを形成する段階と、パルプに1つ又はそれよりも多くの処理段階を受けさせてセルロースの物理特性を変更する段階と、例えば、パルプを紡糸口金に通過させてセルロース繊維を紡ぐことにより、処理されたパルプから再生セルロースの繊維を形成する段階とを含む。
【0009】
ランダムに配向された再生セルロースを含むフィルタ材料を使用すれば、フィルタ材料の分解が改善するので有利である。これは、ランダムに配向された繊維が、フィルタを廃棄した後に、特に従来的な酢酸セルローストウフィルタの実質的に連続するフィラメントと比べた時により容易に分散することができるからである。繊維の分散の増大は、環境への個々の繊維の露出を増加させ、従って、フィルタ材料が分解する速度が増大する。
【0010】
更に、フィルタ材料に再生セルロース繊維を使用するにもかかわらず、本発明によるフィルタは、従来的な酢酸セルローストウフィルタと比べた時に同様の風味を消費者に送出する。同様の風味感覚は、本発明によるフィルタのフィルタ材料に存在する酢酸セルロース繊維及びトリアセチン結合剤によるものである。更に、トリアセチンは、酢酸セルロース繊維と結合してフィルタ材料の構造的一体性を改善するが、トリアセチンは、再生セルロース繊維に結合せず、従って、フィルタ材料の分解の改善を維持する。
【0011】
本発明者は、再生セルロース繊維のみから構成されるフィルタは、従来的な酢酸セルロースフィルタと比べた時に喫煙物品の喫煙中に同じレベルの選択的フェノール保持を示さないことも認識している。従って、本発明によるフィルタは、再生セルロース繊維と共に酢酸セルロース繊維及びトリアセチンをフィルタ内に組み込むことによってこの問題に対処する。」
(3)「【0019】
喫煙物品の喫煙中にフェノールを選択的に除去するフィルタの機能を更に改善するために、フィルタ材料は、トリアセチンを含むことができる。トリアセチンを含めることはまた、フィルタ剛性の増大を助け、これは、喫煙物品の取扱い中及び喫煙中のフィルタの崩壊の可能性を低減する。トリアセチンを含む実施形態において、トリアセチンは、好ましくはフィルタセグメントにフィルタ材料の約1重量%から約15重量%、より好ましくはフィルタセグメントにフィルタ材料の約5重量%から約10重量%、最も好ましくはフィルタセグメントにフィルタ材料の約3重量%から約5重量%の量で存在する。」
(4)「【0031】
フィルタ材料は、再生セルロース繊維に加えて他の繊維を含む場合がある。そのような追加繊維は、フィルタ材料の製造中に追加繊維を再生セルロース繊維と混合することによってフィルタ内に組み込むことができる。追加繊維は、上述の水溶性結合剤のような適切な水溶性結合剤を使用して再生セルロース繊維に結合することができる。例えば、本発明の第2の態様によるフィルタのフィルタ材料は、フィルタの機械的強度を改善するために酢酸セルロース繊維を含むことができる。この代わりに又はこれに加えて、フィルタ材料は、フィルタ材料の外観を変更する追加繊維を含むことができる。例えば、本発明の両方の態様に従うフィルタのフィルタ材料の外観は、従来的な酢酸セルローストウフィルタの外観に酷似するように変更することができる。フィルタ材料の外観を変更するための例示的な繊維には、絹、綿、ポリエステル、麻糸、ナイロン、及びウールが含まれる。
【0032】
フィルタが廃棄された後にフィルタの分散及び分解の速度を更に改善するために、包装紙は、溶解可能プラグラップを含むことができる。本明細書では「溶解可能」という用語は、プラグラップが水との溶液中に溶解可能であることを意味するのに使用する。フィルタが廃棄された後に、溶解可能プラグラップは、水との接触によって壊れて開いて分散することになり、従って、下に重なるフィルタ材料を環境に露出させ、フィルタ材料の分散及び分解速度を改善する利点がある。分解性であることに加えて、プラグラップは生分解性とすることができる。」
(5)「【0039】
本発明による喫煙物品は、エアロゾル形成基材がタバコ材料又は燃焼して煙を形成する別の可燃材料を含むフィルタシガレット又は他の喫煙物品とすることができる。この代わりに、本発明による喫煙物品は、エアロゾル形成基材が燃焼するのではなく加熱されてエアロゾルを形成する材料を含む物品とすることができる。1つのタイプの加熱式喫煙物品では、タバコ材料又は別のエアロゾル形成材料は、1つ又はそれよりも多くの電気的加熱要素によって加熱されてエアロゾルを生成する。別のタイプの加熱式喫煙物品では、エアロゾルは、例えば、可燃性又は化学的熱源からこの熱源の内部、周囲、又は下流に位置する場合がある物理的に分離したエアロゾル形成材料へ伝達される熱によって生成される。本発明は、燃焼又は加熱なしでタバコ材料、タバコ抽出物、又は他のニコチン源からニコチン含有エアロゾルを発生する喫煙物品を更に包含する。」
(6)「【0044】
図1及び図2に示すフィルタシガレット10は、本発明によって軸線方向に位置合わせされたフィルタ14に一端で取り付けられたタバコカットフィルタの包装ロッド12を含む。フィルタ14は、ランダム配向再生セルロース繊維及び酢酸セルロース繊維、並びにトリアセチンを含むフィルタ材料16の単一セグメントを含む。フィルタ材料16はまた、その外観を変更するために絹繊維のような他の繊維を含むことができる。フィルタ材料16はまた、選択的フェノール保持を改善するために1つ又はそれよりも多くの結合剤を含むことができ、かつ1つ又はそれよりも多くの添加剤を有することができる。フィルタ材料16のセグメントは、プラグラップ18によって囲まれ、それは、溶解可能である場合があり、かつ少なくとも1つの水溶性ポリマーを含むポリマーフィルムのシートから構成することができる。包装タバコロッド12及びフィルタ14は、フィルタ14の長さ全体と包装タバコロッド12のうちの隣接する部分とを取り囲む先端紙の帯20によって接合される。」
(7)「【図1】
[図:0001425194000001.jpg]
」
(8)「【図2】
[図:0001425194000002.jpg]
」
(9) (2)の段落【0008】の記載事項から、再生セルロース繊維は、自然発生的なセルロース材料によって形成されたセルロース繊維といえる。
(10) (2)の段落【0010】及び【0011】の記載事項及び(3)の記載事項から、トリアセチンは、従来的な酢酸セルロースフィルタと同じレベルの選択的フェノール保持を示さない再生セルロース繊維のみから構成されるフィルタの機能を改善し、従来的な酢酸セルローストウフィルタと同様の風味を消費者に送出するためのものといえる。
(11) (2)の段落【0010】の記載事項及び(4)の段落【0031】の記載事項から、トリアセチンは酢酸セルロース繊維と結合し、酢酸セルロース繊維は水溶性結合材を介して再生セルロース繊維に結合するから、トリアセチンは、酢酸セルロース繊維を介して再生セルロース繊維と結合しているといえる。
2.引用発明
引用文献の記載事項、図示事項及び認定事項を総合し、整理すると、引用文献には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「フィルタシガレット10のフィルタ14は、
再生セルロース繊維を含むフィルタ材料16の単一セグメントであって、前記フィルタ材料16が酢酸セルロース繊維及びトリアセチン結合剤を含む、単一セグメントを含み、
前記単一セグメントはプラグラップ18によって囲まれ、
前記トリアセチンは、フィルタセグメントに前記フィルタ材料16の約1重量%から約15重量%の量で存在する、
フィルタ14。」
第5 対比・判断
1.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
後者の「フィルタシガレット10」は、その機能、構成及び技術的意義からみて前者の「喫煙物品」に相当し、同様に、後者の「フィルタ14」は、前者の「フィルター」に相当する。
そうすると、後者の「フィルタシガレット10のフィルタ14は、」は、前者の「喫煙物品用フィルターであって:」に相当する。
後者の「再生セルロース繊維」は、第4、1.(9)のとおり、自然発生的なセルロース材料によって形成されたセルロース繊維であるから、前者の「天然セルロース繊維」に相当する。そして、後者の「フィルタ材料16」は、その機能、構成及び技術的意義からみて前者の「濾過基材」に相当し、同様に、後者の「単一セグメント」は、前者の「セグメント」に相当する。
したがって、後者の「再生セルロース繊維を含むフィルタ材料16の単一セグメントであって、」は、前者の「天然セルロース繊維を含む濾過基材を含むセグメントであって、」に相当する。
後者の「トリアセチン」は、第4、1.(10)のとおり、従来的な酢酸セルロースフィルタと同じレベルの選択的フェノール保持を示さない再生セルロース繊維のみから構成されるフィルタの機能を改善し、従来的な酢酸セルローストウフィルタと同様の風味を消費者に送出するものであるから、その機能、技術的意義からみて、前者の「フェノール類を減少させるための添加剤」に相当する。
そして、後者の「酢酸セルロース繊維」は、第4、1.(11)のとおり、トリアセチンと結合するとともに水溶性結合材を介して再生セルロース繊維と結合し、トリアセチンを再生セルロース繊維に結合させる作用、機能、技術的意義を備えているから、前者の「フェノール類を減少させるための添加剤を前記濾過基材に結合させるための結合剤」に相当する。
そうすると、後者の「酢酸セルロース繊維及びトリアセチン結合剤」は、酢酸セルロース及びトリアセチンを含むものであって、このようなものは酢酸セルロース及びトリアセチンを含む組成物といえるものであるから、前者の「フェノール類を減少させるための添加剤および前記フェノール類を減少させるための添加剤を前記濾過基材に結合させるための結合剤を含む組成物」に相当する。
そうすると、後者の「再生セルロース繊維を含むフィルタ材料16の単一セグメントであって、前記フィルタ材料16酢酸セルロース繊維及びトリアセチン結合剤を含む、単一セグメントを含み、」は、前者の「天然セルロース繊維を含む濾過基材を含むセグメントであって、前記濾過基材が、フェノール類を減少させるための添加剤および前記フェノール類を減少させるための添加剤を前記濾過基材に結合させるための結合剤を含む組成物を含む、セグメントと;」に相当する。
後者の「前記単一セグメントはプラグラップ18によって囲まれ、」は、単一セグメントを少なくとも部分的に取り囲むプラグラップ18を備えることであるから、前者の「前記セグメントを少なくとも部分的に取り囲むラッパーと、」に相当する。
後者の「前記トリアセチンは、フィルタセグメントに前記フィルタ材料16の約1重量%から約15重量%の量で存在す」ることは、再生セルロース繊維を含み、酢酸セルロース繊維及びトリアセチンを含むフィルタ材料16の単一セグメントであるフィルタセグメントに、トリアセチンは、フィルタ材料16の約1重量%から約15重量%の量で存在することであるから、前者の「前記添加剤の量が、前記濾過基材と組成物の全重量に対し、9~35重量%であ」ることを満たすものを含む。
したがって、両者は
「喫煙物品用フィルターであって:
天然セルロース繊維を含む濾過基材を含むセグメントであって、前記濾過基材が、フェノール類を減少させるための添加剤および前記フェノール類を減少させるための添加剤を前記濾過基材に結合させるための結合剤を含む組成物を含む、セグメントと;
前記セグメントを少なくとも部分的に取り囲むラッパーと、
を含み、
前記添加剤の量が、前記濾過基材と組成物の全重量に対し、9~35重量%である、
フィルター。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点]
前者は「結合剤の量が、前記濾過基材と組成物の全重量に対し、0.2~5.0重量%」であるのに対し、後者はかかる事項を備えているかどうか不明な点。
2.判断
上記相違点について検討する。
第4、1.(2)の段落【0009】の記載事項のとおり、引用発明は、再生セルロースを含むフィルタ材料を使用することで、従来的な酢酸セルローストウフィルタと比べフィルタ材料の分解が改善するものである。そして、第4、1.(2)の段落【0010】の記載事項、(4)の記載事項を踏まえると、引用発明における酢酸セルロース繊維は、再生セルロース繊維に含まれ、トリアセチンと結合してフィルタ材料の構造的一体性を改善するものである。
そうすると、引用発明のフィルタ材料16に含まれる酢酸セルロース繊維の量は、(ア)トリアセチンとの結合によりフィルタ材料の構造的一体性を改善する程度の量であり、(イ)従来的な酢酸セルローストウフィルタと比べフィルタ材料の分解が改善することを阻害しない程度の量であることは、当業者であれば容易に理解できることである。
そして、(ア)及び(イ)を満たす量を実験的に求めることは、当業者の通常の創作能力の範囲内で容易になし得ることである。
また、本願発明の「結合剤の量が、前記濾過基材と組成物の全重量に対し、0.2~5.0重量%」とすることの技術的意義は、本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0036】に記載されるように、「結合材の量が少なすぎるとフェノール類を減少させるための添加剤がラッパーに漏れる危険性があ」ることと、「多すぎると、粘度増加が大きくなりすぎて、フィルター製造機械中でのフィルターの製造が困難となる」こととの調整を行うこと、又は段落【0041】に記載されるとおり、「フェノール類を減少させるための添加剤の担体として機能」すること及び「濾過基材中の組成物の維持をより良好にすることができ、漏れを減少させることができる」というものであって、本願発明の作用・機能を奏し、フィルターとしての製造を可能とするための結合材の量を単に特定したものであり、それを越えた異質な効果、顕著な効果があるということはできない。
そうすると、相違点に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明において、当業者がその通常の創作能力の範囲で容易に想到し得たものである。
また、本願発明は、全体としてみても、引用発明から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。
3.審判請求人の主張
審判請求書において、審判請求人は、次のとおり主張する。
「1)引用文献1は、ランダムに配向された再生セルロース繊維および酢酸セルロース繊維を含み、トリアセチンを更に含むフィルター材料のセグメントを開示する(引用文献1請求項1)。
引用文献1の酢酸セルロース繊維は濾過基材であり、トリアセチンは酢酸セルロース繊維の結合剤である(引用文献1段落0010)。トリアセチンは、通常、濾過基材である酢酸セルロース繊維の添加剤(可塑化等)として使用されること、この場合添加剤であるトリアセチンの量は酢酸セルロース繊維の量よりも少ないことは、当業者の常識である。実際に、引用文献1は、トリアセチンの量がフィルタセグメントにフィルター材料の約1重量%から約15重量%であることが好ましいこと、すなわちトリアセチンの量は繊維の量よりも少ないことを開示する(段落0019)。
よって、引用文献1に接した当業者は、トリアセチンの量(本願発明では添加剤として使用)<酢酸セルロース(本願発明では結合剤として使用)の量であることを当然に理解するが、この量の関係を逆にするとの動機づけを受けない。つまり、当業者が、引用文献1に基づいて添加剤の量>結合剤の量という構成に想到することは容易ではない。」
上記主張について検討する。
引用発明の「トリアセチン」は、第4、1.(10)のとおり、再生セルロース繊維のみから構成されるフィルタの機能を改善し、従来的な酢酸セルローストウフィルタと同様の風味を消費者に送出するものである。また「酢酸セルロース繊維」は、第4、1.(4)のとおり、再生セルロース繊維に含まれる追加繊維であり、第4、1.(2)の段落【0010】に記載されるとおり、トリアセチンと結合して、再生セルロースを含むフィルタ材料の構造的一体性を改善するものである。すなわち、引用発明におけるトリアセチンは、酢酸セルロース繊維の添加剤(可塑化等)としての通常の使用とは異なる使用がなされ、酢酸セルロース繊維の機能・作用も、トリアセチンとの結合による特有のものといえる。このような引用文献1に接した当業者であれば、引用発明における再生セルロース繊維に含まれる追加繊維である酢酸セルロース繊維の量は、トリアセチンと結合できる程度の量と理解するのが自然である。この理解において、酢酸セルロース繊維の量を実験的に求め、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
そうすると、「トリアセチンは、通常、濾過基材である酢酸セルロース繊維の添加剤(可塑化等)として使用されること、この場合添加剤であるトリアセチンの量は酢酸セルロース繊維の量よりも少ないことは、当業者の常識である。実際に、引用文献1は、トリアセチンの量がフィルタセグメントにフィルター材料の約1重量%から約15重量%であることが好ましいこと、すなわちトリアセチンの量は繊維の量よりも少ないことを開示する(段落0019)。」ことを前提とした審判請求人の上記主張は、当を得ない。
したがって、審判請求書における審判請求人の主張は、採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-020095