特許拒絶査定不服審判
2023-019974
腫瘍の視覚化および除去のためのデバイス、システム、および方法
- 審判番号
- 2023-019974
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-541946
- 請求日
- 2023年11月27日
- 審決日
- 2025年01月20日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ユニバーシティー ヘルス ネットワーク
- 【請求人代理人】弁理士法人深見特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 加々美 一恵
- 審判官 萩田 裕介
- 審判官 松本 隆彦
- 分類
- P18 .121-Z (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-541946「腫瘍の視覚化および除去のためのデバイス、システム、および方法」拒絶査定不服審判事件〔令和元年8月8日国際公開、WO2019/148268、令和3年5月27日特許出願公表、特表2021-513390〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(平成31年)2月1日 (パリ条約による優先権主張 2018年2月2日 米国、2018年2月3日 米国、2019年1月17日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 4年 2月 1日 手続補正書
同年 5月27日 手続補正書
令和 5年 3月30日付け 拒絶理由通知書
同年 7月 4日 意見書・手続補正書
同年 7月12日付け 拒絶査定
同年11月27日 審判請求書・手続補正書
令和 6年 4月15日 上申書
以下では、令和5年7月12日付け拒絶査定を「原査定」という。
第2 令和5年11月27日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)について
1 本件補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲のうち、請求項18及び26の記載は次のとおりである。
「【請求項18】
外科的マージン内の前癌細胞、癌細胞、および衛星病変のうちの少なくとも1つを視覚化するための手持ち式の白色光および蛍光ベースの撮像デバイスであって、
使用者の手の中に保持されるように構成された第1の端部および外科的マージン上へ光を誘導するように構成され、および手術腔内に少なくとも部分的に位置決めされるように構成された第2の端部を有する本体と、
前記外科的マージンの組織細胞の自家蛍光放射および組織細胞内の誘起ポルフィリンの蛍光放射を励起するように構成された少なくとも1つの励起光源と、前記少なくとも1つの励起光源は、前記本体の前記第2の端部中に、または前記本体の前記第2の端部上に位置決めされ、
反射された励起光の通過を防止するが、組織細胞の自家蛍光放射および組織細胞内の前記誘起ポルフィリンの蛍光放射に対応する波長を有する放射の通過は許可するように構成されたフィルタと、
撮像レンズと、
前記外科的マージンのフィルタにかけられた前記組織細胞の自家蛍光放射および組織細胞内の前記誘起ポルフィリンの蛍光放射を検出するように構成された画像センサと、
検出された前記放射を受け取り、前記外科的マージンのフィルタにかけられて検出された前記組織細胞の自家蛍光放射および組織細胞内の前記誘起ポルフィリンの蛍光放射に関するデータを出力するように構成されたプロセッサとを収容する、デバイス。」
「【請求項26】
前記第2の端部は、先細り状および/または細長形である、請求項18に記載のデバイス。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲のうち、請求項1の記載は次のとおりである。(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。また、各構成単位冒頭の「A」などは便宜のため当審にて付した分説番号であり、以下、各構成単位について該分説番号を用いて「構成A」などということがある。引用発明等についても同様である。)
「【請求項1】
A 外科的マージン内の前癌細胞、癌細胞、および衛星病変のうちの少なくとも1つを視覚化するための手持ち式の白色光および蛍光ベースの撮像デバイスであって、
B 使用者の手の中に保持されるように構成された第1の端部および外科的マージン上へ光を誘導するように構成され、および手術腔内に少なくとも部分的に位置決めされるように構成された第2の端部を有する本体と、
C 前記外科的マージンの組織細胞の自家蛍光放射および組織細胞内の誘起ポルフィリンの蛍光放射を励起するように構成された少なくとも1つの励起光源と、前記少なくとも1つの励起光源は、前記本体の前記第2の端部中に、または前記本体の前記第2の端部上に位置決めされ、
D 反射された励起光の通過を防止するが、組織細胞の自家蛍光放射および組織細胞内の前記誘起ポルフィリンの蛍光放射に対応する波長を有する放射の通過は許可するように構成されたフィルタと、
E 撮像レンズと、
F 前記外科的マージンのフィルタにかけられた前記組織細胞の自家蛍光放射および組織細胞内の前記誘起ポルフィリンの蛍光放射を検出するように構成された画像センサと、
G 検出された前記放射を受け取り、前記外科的マージンのフィルタにかけられて検出された前記組織細胞の自家蛍光放射および組織細胞内の前記誘起ポルフィリンの蛍光放射に関するデータを出力するように構成されたプロセッサとを収容し、
H 前記第2の端部は、先細り状および/または細長形である、デバイス。」
2 本件補正の適否
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲について補正しようとするものであるところ、本件補正前の請求項26は、請求項18の記載を引用して記載されたものである。
そして、本件補正後の請求項1に係る発明と、本件補正前の請求項26に係る発明は、発明として相違するところがないから、本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項26を他の請求項を引用しない独立形式に書き改めて記載したものである。
そうすると、請求項1に係る本件補正は、本件補正前の請求項18を削除して、本件補正前の請求項26を本件補正後の請求項1にしたものであるから、請求項1に係る本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる、同法第36条第5項に規定する請求項の削除を目的とする補正である。
したがって、請求項1に係る本件補正は適法になされたものである。
第3 本願発明
上記第2のとおり、請求項1に係る本件補正は適法になされたものであるところ、請求項1に係る発明は上記第2の1(2)に記載されたとおりである。
第4 原査定の拒絶の理由
原査定において、本願は令和5年3月30日付け拒絶理由通知書に記載した理由1~4のうち、理由2及び4によって拒絶をすべきものであるとしたところ、理由4の概要は、以下のとおりである。
4.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項18-23、26-30
・引用文献等1
<引用文献等一覧>
1.特表2011-521237号公報
第5 引用文献の記載等
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された特表2011-521237号公報(以下「引用文献」という。)には、図面とともに次の記載がある(下線は当審において付与した。以下同様。)。
ア 「【請求項23】
蛍光に基づく標的の画像化およびモニタリング方法であって、
少なくとも1つのバイオマーカを蛍光発光させる少なくとも1つの波長または波長帯域の光を発する光源で前記標的を照射すること;および
前記少なくとも1つのバイオマーカの蛍光を画像検出器で検出することを含む、方法。
【請求項24】
前記標的は、手術部位、創傷、腫瘍、器官、皮膚標的、生体標的、非生体標的、食物製品、植物系物質、口腔標的、耳鼻咽喉標的、眼球標的、生殖器標的、および肛門標的からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
・・・
【請求項28】
前記標的における選択されたバイオマーカを少なくとも1つの蛍光発光造影剤で標識付けすることをさらに含む、請求項23から27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記造影剤はアミノレブリン酸(ALA)である、請求項28に記載の方法。」
イ 「【0019】
螢光に基づく画像化およびモニタリングのための方法ならびに装置が開示される。本装置の1つの実施形態は、携帯可能な光学デジタル画像化装置である。本装置は、白色光、組織蛍光および反射画像化の組合せを利用してもよく、リアルタイムの創傷画像化、評価、記録/文書化、モニタリングおよび/またはケア管理を提供してもよい。本装置は、手で持ってもよく、コンパクトおよび/または軽量であってもよい。本装置および方法は、ヒトおよび動物における創傷のモニタリングに好適であってもよい。
・・・
【0021】
本装置は、一般に、i)1つ以上の励起/照明光源およびii)検出器装置 (たとえばデジタル画像化検出器装置)を含んでもよく, それは、1つ以上の光学発光フィルタまたはスペクトルフィルタ処理機構と組合わされてもよく、表示/制御スクリーン (たとえば接触感応スクリーン)、画像キャプチャおよびズーム制御を有してもよい。本装置は、さらに、iii)有線/無線データ転送ポート/モジュール、iv)電源および電力/制御スイッチ、ならびに/またはv)コンパクトおよび/もしくは軽量であってもよく、検出器装置および/もしくは取っ手握りの取付のための機構を有してもよい筐体を有してもよい。励起/照明光源は、約405nm(たとえば±5nm)で発光するLEDアレイであってもよく、それ自体の光学フィルタを有する画像化検出器への光の漏洩を引き起こさないように、LEDアレイ出力からの光のサイドスペクトル帯域を除去/最小限にするよう、中心が約405nmにある追加のバンドパスフィルタと組合わされてもよい。デジタル画像化検出器装置は、たとえば少なくともISO800感度、より好ましくはISO3200感度を有するデジタルカメラであってもよく、1つ以上の光学発光フィルタまたは他の等しく効果的な(たとえば小型化された)機械化されたスペクトルフィルタ処理機構(たとえば音響光学的チューナブルフィルタまたは液晶チューナブルフィルタ)と組合わされてもよい。デジタル画像化検出器装置は、接触感応型表示および/または制御スクリーン、画像キャプチャおよびズーム制御を有してもよい。筐体は、外側の硬いプラスチックまたはポリマー外郭であってもよく、デジタル画像化検出器装置を囲み、釦を有し、すべての必要な装置制御がユーザにより容易にアクセスされ操作されてもよい。小型ヒートシンクもしくは小さな機械的ファン、または他の熱放散装置を装置に埋め込んで、必要な場合には、過剰な熱を励起光源から取り除いてもよい。その埋め込まれた補機および取付物を含む、完全な装置は、標準的なAC/DC電力を用いて、または再充電可能なバッテリパックによって、電源を与えられてもよい。さらに、その完全な装置を、外部の機械的装置(たとえば三脚、または回転するアームを備えた可動台)に取付またはマウントして、該装置の、診療室における、手を使わない操作での可動性を可能にしてもよい。代替的に、装置に、移動式枠を、それが携帯可能であるように設けてもよい。装置は、水で湿らせたガーゼで清掃してもよく、一方、取っ手は、アルコールで湿らせたガーゼで清掃してもよい。本装置は、ユーザが、画像化パラメータの制御、画像の視覚化、画像データおよびユーザ情報の保存、画像および/もしくは関連データの転送、ならびに/または関連する画像解析(たとえば診断アルゴリズム)を含む、装置の制御を行なうことを可能にするソフトウェアを含んでもよい。
【0022】
本装置の例の概略図を図1に示す。本装置は、標的物10または標的表面を画像化するよう位置決めされて示される。図示される例では、本装置は、デジタルカメラ、ビデオレコーダ、カムコーダ、埋込み型デジタルカメラを有するセルラー電話、デジタルカメラを有する「スマート」フォン、携帯情報端末(PDA)、デジタルカメラを有するラップトップ/PC、またはウェブカムなどの、デジタル画像取得装置1を有する。デジタル画像取得装置1はレンズ2を有し、レンズ2は、標的物10を指すよう整列させてもよく、標的物10または表面から出る光信号を検出してもよい。本装置は、1つ以上の光学フィルタ4を収容してもよい光学フィルタホルダ3を有する。各光学フィルタ4は、異なる離散的なスペクトル帯域幅を有してもよく、バンドパスフィルタであってもよい。これらの光学フィルタ4を選択し、デジタルカメラレンズから移動させて、光の波長に基づいて、特定の光信号を選択的に検出してもよい。本装置は、たとえば青色光(たとえば400nmから450nm)、または単一波長もしくは複数波長(たとえば、紫外線範囲/可視光範囲/近赤外線範囲/赤外線範囲の波長)の任意の他の組合せで画像化される光信号(たとえば螢光)を誘導するために標的物10を照射するよう励起光を生じさせる光源5を含んでもよい。光源5は、さまざまな形状で配置された、LEDアレイ、レーザダイオードおよび/またはフィルタ処理された光を含んでもよい。本装置は、熱を放散し、照明光源5を冷却するよう、方法または装置6(たとえばヒートシンクまたは冷却ファン)を含んでもよい。本装置は、画像化されている標的物10を照射するよう用いられる光源5から望ましくないどのような波長の光も取り除くよう、方法または装置7(たとえば光学バンドパスフィルタ)を含んでもよい。本装置は、画像化装置と標的物10との間の距離を測定し判断する光学的手段(たとえば、視準光ビームを発するコンパクトな小型レーザダイオードの使用)を使用するよう、方法または装置8を含んでもよい。たとえば、本装置は、装置と標的物10の間に一定の距離を維持するよう、三角測量装置の一部として、2つのレーザダイオードのような2つの光源を用いてもよい。他の光源が可能であってもよい。本装置は、さらに、維持すべき一定の距離を判断するために、超音波、または定規のような物理的尺度を用いてもよい。本装置は、さらに、異なる距離に対して標的物10に当たる光の照明角度を変更するよう励起光源5および8を操作するように、励起光源5および8の操作および向き付けを可能にするよう、方法または装置9(たとえばピボット)を含んでもよい。」
ウ 「【0031】
励起/照射光源による生ずる光信号は、励起光は拒絶するが、組織からの発光の、選択された波長は検出され、ディスプレイ上に画像を形成する光学フィルタ(たとえばChroma Technology Corp, Rockingham, VT, USAから入手可能なもの)を用いて、画像化装置により検出されてもよい。図2のb)およびc)に示されるように、異なる離散的なスペクトル帯域幅を有する1つ以上の光学フィルタを収容してもよい光学フィルタホルダがデジタルカメラレンズから筐体枠に取付けられる。b)は、単一の発光フィルタを適所に伴い、オンにされると明るい紫色/青色光を発するLEDアレイを伴う装置を示す。c)は、所望される波長に特化された画像化のために適切なフィルタを選択するよう用いられる複数光学フィルタホルダを用いる装置を示す。d)は、足の皮膚表面の画像化中において片手で保持される装置を示す。」
エ 「【0040】
細菌学/培養検査室における本装置の実用性を示すため、生きた細菌培養物を羊の血液寒天プレート上で成長させた。細菌種は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(streptococcus pyogenes)、セラチア・マルセセンス(serratia marcescens)、スタフィロコッカス・アウレウス(staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・エピデルミデス(staphylococcus epidermidis)、エシェリキア・コリ(escherichia coli)、およびシュードモナス・エルギノーサ(pseudomonas aeruginosa)を含んだ(アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC))。これらを、標準的なインキュベーション条件下において、37℃で成長させて維持し、「指数成長段階」中における実験に対して用いた。コロニーが寒天プレートにおいて検出されると(接種後~24時間)、本装置を用いて、個々の細菌種を含む寒天プレートを、暗室で画像化した。紫色/青色(約405nm)励起光を用い、本装置を用いて、各寒天プレートの、緑と赤を組合わせた自己蛍光(約490nmから550nmおよび約610nmから640nmの発光)および赤のみの自己蛍光(約635±10nm、蛍光性の体内由来のポルフィリンに対するピーク発光波長)の両方を画像化した。各細菌種の蛍光画像を経時的に捕え、比較およびコロニー成長のモニタリングを行なった。」
オ 「【0057】
プロドラッグアミノレブリン酸(ALA)は、ほとんどすべての生細胞において、ポルフィリン形成を誘導する。ALAに暴露された多くの細菌種は、プロトポルフィリンIX(PpIX)蛍光を誘導することができる。超低用量のALAの使用によって、細菌内にPpIX形成を誘導してもよく、その結果、赤色蛍光発光を高めてもよく、それによって、本装置で画像化される細菌の赤色対緑色蛍光コントラストを向上させてもよい。ALAは、それ自体は非蛍光性であるが、PpIXは、630nm、680nmおよび710nm付近において蛍光性であり、630nm発光が最も強い。次いで、画像化装置を用いて、創傷および周囲組織からの緑色および赤色蛍光を画像化してもよい。ALA(~20μg/mL)が創傷に与えられた後、画像化装置を用いて、赤色(たとえばピークが630nm)蛍光における有意な/測定可能な増加を得るのに必要な時間は、10分~30分の範囲であるが、この時間は最適化され得、その時間は、これも最適化し得るALAの用量にも依存する。」
カ 「【0133】
蛍光画像誘導手術
ある1つの台頭しつつある分野は、診断スクリーニングおよび画像誘導手術に対する蛍光画像化の使用である。白色光を用いた標準的な手術の限界を克服して、蛍光画像を用いることで、蛍光(たとえば体外由来の標的化/非標的化された造影剤からの自己蛍光または蛍光)に基づくin vivoでの腫瘍の外科的切除、および腫瘍除去の完全性(たとえば明瞭な縁部)に対するチェックを支援してもよい。蛍光画像誘導手術は、前臨床的および臨床的に、生存率の改善を示した[Bogaards et al. (2004) Lasers Surg Med. 35:181-90]。たとえば、ラットに対する実験的な手術において、本装置によって、手術部位の標準的白色光画像化を提供してもよい。
【0134】
ここで図14を参照する。いくつかの試験を行なって、小動物における蛍光画像誘導手術に対する本装置の利用性を示した。画像化装置を用いて、実験的手術を、安楽死させた雌のラットに対して行なった。図14は、画像化造影剤を用いた蛍光画像誘導手術に対する本装置の使用例を示す。実験手術中、本装置は、手術部位、ここでは雌のラットの腹部に対して標準的な白色光画像化を提供した(a)。外科医は、本装置の表示スクリーンを用いて手順を誘導し、白色光モードと蛍光モードとの間で容易にかつ迅速に切換を行なった。b)では、紫色/青色励起光を用いて、本装置は、白色光画像化中においては可能ではなかった、異なる種類の組織間における追加のコントラストを与えた。たとえば、における結合組織は明るい緑色蛍光色(緑色矢印)に見え、一方、皮膚表面(赤色蛍光性光増感剤(BPD)を伴う)は赤く現われ(赤色矢印)、後脚に先に注射されたQドットは明るい赤色に見えた(青色矢印)。蛍光画像化を用いて、手術手順中における手術器具および備品(たとえばガーゼ、テープ、ブランケットなど)の汚染を検出した。c)では、装置は、手術手順中において汚された/汚染された手術用ガーゼを検出することにより、さらに利用性を示した。すべてのガーゼが清潔に見えた標準的な白色光と比較して、手術中において皮膚および手術部位を清掃するために用いたガーゼは、清潔なガーゼ(右側)と比較して赤い蛍光色(左側)に見えた。」
キ 「【0163】
図19Hは、ヒトの卵巣腫瘍を持つヌードマウスの検出のための本装置の使用例を示す。a)は、ウイルス処置されたマウスおよびウイルス処置されなかった対照マウスの白色光画像であり、開いた腹腔を示す。b)処置されたマウスおよび対照マウスの、対応の蛍光画像は、対照と比較して、腸間膜における腫瘍小結節における光学的に標識されたウイルスからのオレンジ色-赤色蛍光を示す(黄色矢印)。c)は、腸間膜の拡大図を示し、d)対照マウスと比較して、腫瘍小結節内におけるウイルス光学プローブの生体分布、およびミリメートル未満の腫瘍小結節の検出能力を示す(青色矢印)。プローブ蛍光はバックグラウンドの腸組織自己蛍光から区別されてもよいことに注目されたい。これらのデータは、たとえば、ウイルス療法および細胞療法を含むが、それらに限定はされない治療応答を画像化すること、および蛍光性の腫瘍標本の画像誘導手術切除に対する本装置の使用の可能性を示す(c;挿入図)(405nmの励起、500nmから550nmの発光(緑)、>600nmの発光(赤))。
【0164】
図19Iは、術後に別々の体外由来の緑色および赤色腫瘍細胞標的化プローブの蛍光性カクテルを投与された、マウス結腸腫瘍を有するヌードマウスにおける検出/視覚化のための本装置の使用例を示す。開いた腹腔のa)白色光画像、およびb)対応のマルチスペクトル蛍光画像であり、緑色(緑色矢印)分子プローブおよび赤色(赤色矢印)分子プローブの両方の同時検出を示し、それをスペクトル非ミキシングソフトウェアを用いて解析してもよい。本装置を修正して、内視鏡画像化も可能にしてもよい。この例では、c)剛性の内視鏡プローブを手持ち式の画像化装置に取付け、画像a、b)におけるマウスから外科的に切除した組織のd)白色光画像およびe)蛍光画像を得た。これらのデータは、(臨床および研究に基づく)さまざまな検出、診断または処置モニタリング適用例に対してヒトおよび家畜の患者におけるin vivoでの携帯可能な内視鏡リアルタイムの蛍光画像化のために内視鏡プローブ付属品とともに本装置を用いることを示唆する。f)(たとえば内視鏡能力を備えた)本装置は、in vivoで用いられてもよい複数のスペクトルが独自の「プローブ」の蛍光画像化の能力があってもよい(405nmの励起;490nmから550nmおよび>600nmの発光チャネル)。」
上記ア~キの記載事項から、以下、ク~コの事項が導かれる。
ク 段落【0019】には、「本装置の1つの実施形態は、携帯可能な光学デジタル画像化装置である。」と記載されているから、「画像化装置」は「本装置」を具体化した1つの実施形態であって、上記記載の「本装置」と「画像化装置」とは同じものを指すといえる。
また、同様に、段落【0021】、【0133】、【0134】、【0163】及び【0164】の「本装置」は、段落【0019】の「画像化装置」と同じものを指すといえる。
ケ 段落【0163】には、「腫瘍小結節内におけるウイルス光学プローブの生体分布、およびミリメートル未満の腫瘍小結節の検出能力を示す(青色矢印)。・・・蛍光性の腫瘍標本の画像誘導手術切除に対する本装置の使用の可能性を示す(c;挿入図)(405nmの励起、500nmから550nmの発光(緑)、>600nmの発光(赤))。」と記載されており、上記記載の「(405nmの励起、500nmから550nmの発光(緑)、>600nmの発光(赤))」が、405nmの励起光を用い、500nmから550nmの緑の発光と、600nm以上の赤の発光を検出することを意味することは、明らかである。
また、段落【0163】の「蛍光性の腫瘍標本の画像誘導手術切除」が、段落【0133】の「蛍光画像誘導手術」と同じものを意味することは、明らかであるから、引用文献1には、蛍光画像誘導手術において、405nmの励起光を用い、500nmから550nmの緑の発光と、600nm以上の赤の発光を検出する点が記載されているといえる。
コ 段落【0133】には、「蛍光画像を用いることで、蛍光(たとえば体外由来の標的化/非標的化された造影剤からの自己蛍光または蛍光)に基づくin vivoでの腫瘍の外科的切除、および腫瘍除去の完全性(たとえば明瞭な縁部)に対するチェックを支援してもよい。」と記載されており、上記記載において、造影剤からの蛍光は自己蛍光ではないから、「造影剤からの自己蛍光または蛍光」は、「造影剤からの蛍光または自己蛍光」の誤記であることは、自明である。
また、段落【0163】には、「b)処置されたマウスおよび対照マウスの、対応の蛍光画像は、対照と比較して、腸間膜における腫瘍小結節における光学的に標識されたウイルスからのオレンジ色-赤色蛍光を示す(黄色矢印)。c)は、腸間膜の拡大図を示し、d)対照マウスと比較して、腫瘍小結節内におけるウイルス光学プローブの生体分布、およびミリメートル未満の腫瘍小結節の検出能力を示す(青色矢印)。プローブ蛍光はバックグラウンドの腸組織自己蛍光から区別されてもよいことに注目されたい。」と記載されているから、「腫瘍小結節内におけるウイルス光学プローブ」の「プローブ蛍光」、すなわち、造影剤からの蛍光と、「バックグラウンドの腸組織自己蛍光」の両方を用いる点が記載されているといえる。
そうすると、段落【0133】、【0163】より、引用文献1には、蛍光画像を用いることで、体外由来の標的化/非標的化された造影剤からの蛍光及び自己蛍光に基づくin vivoでの腫瘍の外科的切除、および腫瘍除去の完全性(たとえば明瞭な縁部)に対するチェックを支援する点が記載されているといえる。
(2)引用文献に記載された発明
上記(1)ア~キの記載事項及びク~コの認定事項を総合すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「a 蛍光画像誘導手術において、蛍光画像を用いることで、造影剤からの蛍光及び自己蛍光に基づくin vivoでの腫瘍の外科的切除、および腫瘍除去の完全性(たとえば明瞭な縁部)に対するチェックを支援し、白色光モードと蛍光モードとの間で容易にかつ迅速に切換を行う、剛性の内視鏡プローブが取付けられた手持ち式の画像化装置であって、(段落【0133】、【0134】、【0164】、認定事項コ)
c1 画像化装置は、画像化される光信号(たとえば螢光)を誘導するために標的物10を照射するよう励起光を生じさせる光源5を含み、405nmの励起光を用い、500nmから550nmの緑の発光と、600nm以上の赤の発光を検出するものであり、(段落【0022】、認定事項ク、ケ)
c2 蛍光に基づく標的の画像化において、標的は、手術部位、腫瘍を含む群から選択され、標的における選択されたバイオマーカを少なくとも1つの蛍光発光造影剤で標識付けし、造影剤はアミノレブリン酸(ALA)であり、(【請求項23】、【請求項24】、【請求項28】、【請求項29】)
d 励起/照射光源により生ずる光信号は、励起光は拒絶するが、組織からの発光の、選択された波長は検出され、ディスプレイ上に画像を形成する光学フィルタを用いて、画像化装置により検出されてもよく、
(段落【0031】)
e 画像化装置は、デジタル画像取得装置1を有し、デジタル画像取得装置1は、レンズ2を有し、標的物10または表面から出る光信号を検出し、(段落【0022】、認定事項ク)
g 画像化装置は、ユーザが、画像化パラメータの制御、画像の視覚化、画像データおよびユーザ情報の保存、画像および/もしくは関連データの転送、ならびに/または関連する画像解析(たとえば診断アルゴリズム)を含む、装置の制御を行なうことを可能にするソフトウェアを含む、(段落【0021】、認定事項ク)
h 剛性の内視鏡プローブが取付けられた手持ち式の画像化装置。(段落【0164】)」
2 周知文献1
この審決において新たに引用する特開2006-166940号公報(以下「周知文献1」という。)には、図面とともに次の記載がある。
(1)「【0009】
図1ないし図6は本発明の実施例1に係り、図1は本発明の実施例1を備えた内視鏡装置の構成を示し、図2はLEDユニットの発光波長領域等を示し、図3は各観察モードにおける照明と撮像のタイミング動作を示し、図4は狭帯域モード及び蛍光モード時における画像処理回路の構成例を示し、図5は第1変形例を備えた内視鏡装置の構成を示し、図6第2変形例を備えたカプセル型医療装置の構成を示す。
図1に示す本発明の実施例1を備えた内視鏡装置1は、体腔内に挿入して観察するための電子内視鏡2と、この電子内視鏡2に内蔵された照明手段の駆動制御を行うLED制御ユニット3と、通常観察画像(通常画像)、狭帯域観察画像(狭帯域画像)及び蛍光観察画像(蛍光画像)を構築する信号処理を行うプロセッサ4と、通常画像、狭帯域画像及び蛍光画像を選択的に表示するモニタ5とにより構成される。
【0010】
電子内視鏡2は、体腔内に挿入される細長の挿入部7を有し、この挿入部7の先端部8の照明窓には照明手段として、4色発光ダイオードを形成するLEDユニット9が設けてある。
このLEDユニット9は、赤(R)、緑(G)、長波長側の青(B1)、短波長側青(B2)の波長でそれぞれ狭帯域で発光する4色の発光ダイオード(LEDと略記)11R,11G,11B1,11B2と、各LED11J(J=R,G,B1,B2)の光を集光する照明レンズ12とを有する。
図2は、LEDユニット9を構成する各LED11Jが発光する波長領域を示す。LED11Rは、610nm付近を中心波長とし、LED11Gは、550nm付近を中心波長とし、LED11B1は、470nm付近を中心波長とし、LED11B2は、415nm付近を中心波長として、それぞれ発光する。また、各LED11Jの発光する波長の半値幅は、20~30nm程度であり、狭帯域の発光特性を有する。」
(2)「【図1】
[図:0001424129000001.jpg]
」
3 周知文献2
この審決において新たに引用する特開2013-123647号公報(以下「周知文献2」という。)には、図面とともに次の記載がある。
(1)「【0027】
ここで図1を参照して、内視鏡検査システム100の半模式図が図示されている。システム100は、取り外し可能な先端を有する内視鏡102を含み得る(例えば、図3および/または図4の取り外し可能な先端を有する内視鏡)。取り外し可能な先端を有する内視鏡102は、ハンドル104を含み得る。ハンドル104から、細長軸106が延びる。細長軸106は、先端部108と共に終端する。先端部108は、屈曲部110を介して回転させることができる。ハンドル104を用いて、体腔内の細長軸106を操作することができる。前記ハンドルは、1つ以上のノブおよび/またはスイッチ105を含み得る。1つ以上のノブおよび/またはスイッチ105は、屈曲部110と、内視鏡的機能(例えば、流体注入および吸入)とを制御する。ハンドル104は、外科用器具の挿入口として機能し得る1つ以上のワーキングチャネル開口部をさらに含み得る(例えば、ワーキングチャネル開口部112)。」
(2)「【0034】
内視鏡200は、細長軸(図示せず)と、屈曲部(図示せず)と、前記内視鏡と終端する先端部201とを含み得る。前記屈曲部により、先端部201を異なる方向において回転させることが可能となる。先端部201は、取り外し可能部202と、線203に沿って接続された永久部207とを含み得る。
【0035】
取り外し可能部202は、前方を向くキャプチャ装置(例えば、カメラまたはビデオカメラ204)を内部に含み得る。前記キャプチャ装置は、先端部201の遠位端表面206内の穴を通じて画像をキャプチャし得る。別個の前方照明器208は、任意選択的に発光ダイオード(LED)であり、前方を向くカメラ204と関連付けられ得、前記カメラの視野を遠位端表面206内の別の穴を通じて照射するために用いられる。前記LEDは、白色光LED、赤外光LED、近赤外光LEDまたは紫外光LEDであり得る。前記光は、内視鏡先端部201内において発生させてもよいし、あるいは遠隔位置から発生させて例えば光ファイバーを介して転送することも可能である。いくつかの実施形態において、取り外し可能部202は、2つ以上の照明器を含み得る。前記2つ以上の照明器のうち少なくとも1つの内部において前記光が生成され得、遠隔生成された光が少なくとも1つから提供され得る。」
(3)「【図1】
[図:0001424129000002.jpg]
」
(4)「【図2】
[図:0001424129000003.jpg]
」
4 周知文献3
この審決において新たに引用する特開2003-190091号公報(以下「周知文献3」という。)には、図面とともに次の記載がある。
(1)「【要約】
【課題】 構造が簡単であり小型且つ軽量で運搬及び配置に容易な為に診察に適当な場所が広く選ばれ、且つ、医療費抑制に貢献する蛍光観察用電子内視鏡システムに、用いられる蛍光観察用照明プローブを提供する。
【解決手段】 長尺な略円筒形状を有するチューブ31と、チューブ31の先端を封止するキャップ32と、キャップ32の凹部32a内に固定された一対の発光素子33,34と、各発光素子33,34に夫々接続されて
いるリード線33a,34aと、キャップ32の凹部32aを封止する蓋35とから構成されているプローブ3を用いた。リード線33a,34aに駆動電流が交互に供給されると、発光素子33は、被検体の生体組織を励起して自家蛍光を生じさせる励起光を、発光素子34は、前記被検体を照明する可視光を、交互に発光する。」
(2)「【0019】
【実施形態1】以下、本発明の第一の実施の形態(以下、実施形態1という)を、図1を用いて、説明する。図1は、蛍光観察用照明プローブ3を有する蛍光観察用電子内視鏡システムの構成を示す概略図である。
【0020】この蛍光観察用電子内視鏡システムは、電子内視鏡1、内視鏡プロセッサ装置2、蛍光観察用照明プローブ(以下、プローブと略記)3、電源装置4、PC5、及びモニタ6からなる。」
(3)「【0027】次に、プローブ3について説明する。図2(a)は、プローブ3の先端部を正面から見た破断図であり、図2(b)は、図2(a)中のB-B線に沿った縦断面図である。図2(a),(b)に示されるよう
に、プローブ3は、長尺な略円筒形状を有するチューブ31と、チューブ31の基端に固定されている図示せぬコネクタと、チューブ31の先端を封止するキャップ32と、キャップ32の凹部32a内に固定された一対の発光素子33,34と、各発光素子33,34に夫々接続されているリード線33a,34aと、キャップ32の凹部32aを封止する蓋35とから、構成されている。」
(4)「【図1】
[図:0001424129000004.jpg]
」
(5)「【図2】
[図:0001424129000005.jpg]
」
5 周知文献4
この審決において新たに引用する特表2006-509573号公報(以下「周知文献4」という。)には、図面とともに次の記載がある。
(1)「【0033】
外科手術が開始される前に、生物学的組織BTにマーカ物質が適用される。マーカ物質は、健康な脳組織と腫瘍との間の対比を増大させ、よって外科医が腫瘍切除をより完全かつ正確に実行するのを支援するように、予め定められた波長または波長帯域の励起光にさらされたときに、非癌組織より癌組織において、より大きい蛍光を誘発することができるものである。こうして、腫瘍の画像はオンラインで生成され、腫瘍識別のために中断または遅延することなく、手術を実行することが可能になる。
【0034】
発明の背景の上記考察で簡単に示したように、多くのそのようなマーカ物質が知られている。図1に示した装置を脳外科手術中に腫瘍識別のために使用する場合、脳組織を造影するための好適な方法は、悪性組織がヘム生合性経路で自然発生する前駆物質である5アミノレブリン酸(5‐ALA)のような蛍光性および光感作性内因性ポルフィリンを選択的に合成または蓄積するという観察結果に依存する。ヒト悪性神経膠腫に適用したときに、ポルフィリン蓄積は脳内の蛍光検出を可能にする。この方法の明らかな利点は、血液由来のマーカによる腫瘍空洞の汚染または腫瘍周囲の浮腫によるマーカの拡散無しに、蛍光が悪性細胞に限定されることである。」
6 周知文献5
この審決において新たに引用する「小山政史,外1名,「腎細胞癌に対するPDDの応用」,Japanese Journal of Endourology,(一社)日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会,2011年,第24巻,第23~28頁、[令和6年11月29日検索],インターネット<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsejje/24/1/24_23/_pdf>」(以下「周知文献5」という。)には、次の記載がある。
(1)「要旨 5-アミノレブリン酸(5-ALA)を用いた術中光力学的診断(PDD)は通常光では視認困難な腫瘍の同定やサージカルマージンの検索に有用である.泌尿器科領域では従来,膀胱癌に対して5-ALAを膀胱内注入してきたが,内服が可能なことより,最近では腎細胞癌に応用され5-ALAの腫瘍特異性が確認されている.また,腹腔鏡下腎部分切除術に5-ALA-PDDを併用することでサージカルマージンの蛍光発色部位に病理組織学的に癌細胞が確認されている.5-ALA-PDDが手術中リアルタイムにサージカルマージン同定に寄与する可能性が示唆された.尚,5-ALAによる有害事象は本稿で紹介した報告では認めていない.」(第23頁左欄第1~12行)
(2)「第3世代:ポルフィリン前駆体5-ALA
これまでの第1,2世代光感受性物質の問題点は直接光感受性物質を局所および全身投与するため,PDD/PDT後に数週間に及ぶ遮光措置をしなければ光線過敏症を呈してしまうことであった.第3世代として登場してきた5-アミノレブリン酸(5-aminolevulinic acid:5-ALA)はポルフィリン前駆物質であり,5-ALA自体が青色光照射により蛍光発色するわけではない.5-ALAの代謝産物であるプロトポルフィリンIX(protoporphyrin IX:PPIX)が光照射により蛍光励起する.PPIXは腫瘍特異的に集積し24時間以内に代謝され腎排泄されるので,第1,2世代で問題となっていた光線過敏症はほとんど呈することがないと言われている.」(第24頁左欄第18~30行)
第6 対比、判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)構成Aについて
ア 引用発明の「剛性の内視鏡プローブが取付けられた手持ち式の画像化装置」は、本願発明の「手持ち式の」「撮像デバイス」に相当する。
引用発明の「剛性の内視鏡プローブが取付けられた手持ち式の画像化装置」は、「白色光モードと蛍光モードとの間で容易にかつ迅速に切換を行う」ことができるものであるから、「白色光および蛍光ベースの」ものであるといえる。
イ 引用発明において、「in vivoでの腫瘍の外科的切除、および腫瘍除去の完全性(たとえば明瞭な縁部)に対するチェックを支援」する際の、「明瞭な縁部」は、本願発明の「外科的マージン」に相当する。
引用発明の「腫瘍」は、本願発明の「癌細胞」に相当する。
また、引用発明において、「剛性の内視鏡プローブが取付けられた手持ち式の画像化装置」で「造影剤からの蛍光及び自己蛍光に基づくin vivoでの腫瘍の外科的切除、および腫瘍除去の完全性(たとえば明瞭な縁部)に対するチェックを支援」する際に、「画像化装置」が画像化を行うことは自明であり、当該画像化を行うことは、本願発明の「視覚化する」ことに相当する。
よって、引用発明1において、「剛性の内視鏡プローブが取付けられた手持ち式の画像化装置」を用い、「in vivoでの腫瘍の外科的切除、および腫瘍除去の完全性(たとえば明瞭な縁部)に対するチェックを支援」することは、本願発明において、「外科的マージン内の」「癌細胞」「を視覚化する」ことに相当する。
ウ 以上より、引用発明の「蛍光画像誘導手術において、蛍光画像を用いることで、造影剤からの蛍光及び自己蛍光に基づくin vivoでの腫瘍の外科的切除、および腫瘍除去の完全性(たとえば明瞭な縁部)に対するチェックを支援し、白色光モードと蛍光モードとの間で容易にかつ迅速に切換を行う、剛性の内視鏡プローブが取付けられた手持ち式の画像化装置」は、本願発明の「外科的マージン内の」「癌細胞」「を視覚化するための手持ち式の白色光および蛍光ベースの撮像デバイス」に相当する。
(2)構成Bについて
引用発明において、「手持ち式の画像化装置」及び「剛性の内視鏡プローブ」は、それぞれ、本願発明の「使用者の手の中に保持されるように構成された第1の端部」及び「第2の端部」に相当し、引用発明において、「剛性の内視鏡プローブが取付けられた手持ち式の画像化装置」の全体が、本願発明の「本体」に相当する。
内視鏡プローブは、通常、体腔内に少なくとも部分的に位置決めされて用いられるものであるから、引用発明1において、「剛性の内視鏡プローブが取付けられた手持ち式の画像化装置」を用いて、「蛍光画像誘導手術において、」「in vivoでの腫瘍の外科的切除、および腫瘍除去の完全性(たとえば明瞭な縁部)に対するチェックを支援」する際には、「剛性の内視鏡プローブ」は、手術腔内に少なくとも部分的に位置決めされ、「腫瘍の外科的切除」をした部分の「明瞭な縁部」を画像化するように用いられることは、明らかである。
また、引用発明において、「標的物10」と「明瞭な縁部」とは、同一の部分を指し、「画像化される光信号(たとえば螢光)を誘導するために標的物10を照射するよう励起光を生じさせる光源5」は、「明瞭な縁部」上に励起光を誘導することは、明らかである。
以上を総合すると、構成a、c1より、引用発明1は、本願発明の構成Bと、「使用者の手の中に保持されるように構成された第1の端部および」「手術腔内に少なくとも部分的に位置決めされるように構成された第2の端部を有する本体と」を有し、また、「外科的マージン上へ光を誘導する」点で共通するといえる。
(3)構成Cについて
引用発明の「画像化される光信号(たとえば螢光)を誘導するために標的物10を照射するよう励起光を生じさせる光源5」は、本願発明の「前記外科的マージンの組織細胞の自家蛍光放射および組織細胞内の」「蛍光放射を励起するように構成された少なくとも1つの励起光源」に相当する。
(4)構成Dについて
引用発明において、「光学フィルタ」が「励起光は拒絶する」こと、及び、「光学フィルタ」が「組織からの発光の、選択された波長は検出され」ることは、それぞれ、本願発明において、「フィルタ」が「反射された励起光の通過を防止する」こと、及び、「フィルタ」が「組織細胞の自家蛍光放射および組織細胞内の」「蛍光放射に対応する波長を有する放射の通過は許可する」ことに相当する。
よって、引用発明の「励起/照射光源により生ずる光信号は、励起光は拒絶するが、組織からの発光の、選択された波長は検出され、ディスプレイ上に画像を形成する光学フィルタ」は、本願発明の構成Dと、「反射された励起光の通過を防止するが、組織細胞の自家蛍光放射および組織細胞内の」「蛍光放射に対応する波長を有する放射の通過は許可するように構成されたフィルタ」である点で共通する。
また、引用発明において、「組織からの発光の、選択された波長」は、「検出する」対象となる「500nmから550nm」及び「600nm以上」の波長であることは明らかであるから、「光学フィルタ」は、「500nmから550nmの緑の発光と、600nm以上の赤の発光」の通過は許可するものであることが、明らかである。
(5)構成Eについて
引用発明の「レンズ2」は、本願発明の「撮像レンズ」に相当する。
(6)構成Fについて
引用発明の「デジタル画像取得装置1」は、本願発明の「画像センサ」に相当する。
そして、引用発明において、「標的物10または表面から出る光信号」は、「励起光は拒絶するが、組織からの発光の、選択された波長は検出され、ディスプレイ上に画像を形成する光学フィルタを用いて、画像化装置により検出され」るものであり、また、「標的物10」は「明瞭な縁部」(外科マージン)であるから、引用発明の「標的物10または表面から出る光信号を検出」する「デジタル画像取得装置1」は、本願発明の「前記外科的マージンのフィルタにかけられた前記組織細胞の自家蛍光放射および組織細胞内の」「蛍光放射を検出するように構成された画像センサ」に相当する。
また、引用発明の「デジタル画像取得装置1」が、「検出する」対象となる「500nmから550nmの緑の発光と、600nm以上の赤の発光」を検出するように構成されていることは、明らかである。
(7)構成Gについて
引用発明は、「装置の制御を行なうことを可能にするソフトウェアを含む」ものであるから、当該「ソフトウェア」を動作させるためのプロセッサを備えていることは、自明である。また、「ソフトウェア」を動作させるための当該プロセッサが、「画像化パラメータの制御、画像の視覚化、画像データおよびユーザ情報の保存、画像および/もしくは関連データの転送、ならびに/または関連する画像解析(たとえば診断アルゴリズム)」を行うために、「画像」を構成するためのデータである「デジタル画像取得装置1」が「検出」した「標的物10または表面から出る光信号」のデータを受け取ることは、自明である。よって、引用発明は、本願発明の「検出された前記放射を受け取」る「プロセッサ」に相当するものを備えることは明らかである。
引用発明の「画像」は、「標的物10または表面から出る光信号」を画像化したデータであることは明らかであり、また、上記(6)の対比を参酌すると、引用発明の「画像」は、本願発明の「前記外科的マージンのフィルタにかけられて検出された前記組織細胞の自家蛍光放射および組織細胞内の」「蛍光放射に関するデータ」に相当する。
引用発明において、「転送」は、データを他の装置に出力することを意味するから、本願発明の「出力」に相当する。よって、引用発明において、「画像および/もしくは関連データの転送」は、本願発明の「前記外科的マージンのフィルタにかけられて検出された前記組織細胞の自家蛍光放射および組織細胞内の前記誘起ポルフィリンの蛍光放射に関するデータを出力する」ことに相当する。
以上より、引用発明は、本願発明の構成Gと、「検出された前記放射を受け取り、前記外科的マージンのフィルタにかけられて検出された前記組織細胞の自家蛍光放射および組織細胞内の」「蛍光放射に関するデータを出力するように構成されたプロセッサとを収容」する点で共通する。
また、引用発明において、「画像」は、「検出する」対象である「500nmから550nmの緑の発光と、600nm以上の赤の発光」を検出した画像であり、引用発明の「ソフトウェア」は、「検出」した「500nmから550nmの緑の発光と、600nm以上の赤の発光」のデータを出力するものであることは、明らかである。
(8)構成Hについて
引用発明の「剛性の内視鏡プローブが取付けられた手持ち式の画像化装置」は、本願発明の「デバイス」に相当する。
2 一致点、相違点
上記1のとおりであるから、本願発明と引用発明とは、下記(1)の点で一致し、下記(2)~(4)の点で相違する。
(1)一致点
「A 外科的マージン内の癌細胞を視覚化するための手持ち式の白色光および蛍光ベースの撮像デバイスであって、
B’使用者の手の中に保持されるように構成された第1の端部および手術腔内に少なくとも部分的に位置決めされるように構成された第2の端部を有する本体と、
C’前記外科的マージンの組織細胞の自家蛍光放射および組織細胞内の蛍光放射を励起するように構成された少なくとも1つの励起光源と、
D’反射された励起光の通過を防止するが、組織細胞の自家蛍光放射および組織細胞内の蛍光放射に対応する波長を有する放射の通過は許可するように構成されたフィルタと、
E 撮像レンズと、
F’前記外科的マージンのフィルタにかけられた前記組織細胞の自家蛍光放射および組織細胞内の蛍光放射を検出するように構成された画像センサと、
G’検出された前記放射を受け取り、前記外科的マージンのフィルタにかけられて検出された前記組織細胞の自家蛍光放射および組織細胞内の蛍光放射に関するデータを出力するように構成されたプロセッサとを収容する、
H’デバイス。」
(2)相違点1(構成B、C)
「第2の端部」に関して、本願発明は「外科的マージン上へ光を誘導するように構成され」ると特定され(構成B)、また、「前記少なくとも1つの励起光源は、前記本体の前記第2の端部中に、または前記本体の前記第2の端部上に位置決めされ」ると特定されている(構成C)のに対し、引用発明の「剛性の内視鏡プローブ」(第2の端部)は、そのように特定されていない点。
(3)相違点2(構成C)
「少なくとも1つの励起光源」について、本願発明は、「誘起ポルフィリンの蛍光放射を励起するように構成され」ていると特定されているが、引用発明の「光源5」(励起光源)は、「405nmの励起光」を生じさせるが、誘起ポルフィリンの蛍光放射を励起するものとは特定されていない点。
(4)相違点3(構成D)
「フィルタ」について、本願発明は、「組織細胞内の前記誘起ポルフィリンの蛍光放射に対応する波長を有する放射の通過は許可するように構成され」ていると特定されているのに対し、引用発明の「光学フィルタ」(フィルタ)は、「500nmから550nmの緑の発光と、600nm以上の赤の発光」の通過は許可するものであるが、誘起ポルフィリンの蛍光放射に対応する波長を有する放射の通過は許可するとは特定されていない点。
(5)相違点4(構成F)
「画像センサ」について、本願発明は、「前記誘起ポルフィリンの蛍光放射を検出するように構成され」ていると特定されているのに対し、引用発明の「デジタル画像取得装置1」(画像センサ)は、「500nmから550nmの緑の発光と、600nm以上の赤の発光を検出する」ものであるが、誘起ポルフィリンの蛍光放射を検出するとは特定されていない点。
(6)相違点5(構成G)
「プロセッサ」について、本願発明は、「組織細胞内の前記誘起ポルフィリンの蛍光放射に関するデータを出力するように構成され」ていると特定されているのに対し、引用発明において、「ソフトウェア」を動作させるためのプロセッサは、「500nmから550nmの緑の発光と、600nm以上の赤の発光」に関するデータを出力するものであるが、誘起ポルフィリンの蛍光放射に関するデータを出力するとは特定されていない点。
(7)相違点6(構成H)
本願発明は「前記第2の端部は、先細り状および/または細長形である」と特定されているのに対し、本願発明の(第2の端部)は、そのように特定されていない点。
3 相違点について
(1)相違点1について検討する。
内視鏡装置において、内視鏡の端部上に光源を位置決めし、内視鏡から観察対象上に光を誘導するようにすることは、例えば、周知文献1~3(上記第5の2~4参照)に記載されているように、周知技術(以下、「周知技術1」という。)にすぎない。
そして、引用発明と周知技術1とは、内視鏡を含む装置であって、観察対象上に光を誘導するものである点で共通するものであるから、引用発明において、「光源5」から生じる「励起光」を「標的物10を照射するよう」にするための具体的な構成として上記周知技術1を適用し、上記相違点1に係る発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(2)事案に鑑み、誘起ポルフィリンの蛍光放射に関するものである相違点2~5について、併せて検討する。
ア(ア)本願の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「 【0026】
ALAは、腫瘍/癌細胞内でポルフィリン形成(プロトポルフィリンIX(PpIX))を誘起し(図1Aは、腫瘍細胞内のALAからPpIXへの変換を示す)、腫瘍/癌細胞は、適当な励起光によって励起されると、PpIXを含む細胞から赤色蛍光放射が生じ、それによりデバイスによって撮像された腫瘍/癌組織細胞と正常組織細胞(例えば、コラーゲン)との間の赤色と緑色との蛍光コントラストを強化する。ALA自体は非蛍光性であるが、PpIXは、約630nm、約680nm、および約710nmで蛍光性を有し、630nmの放射が最も強い。図1Bは、405nmの波長を有する励起光によって励起されたときのPpIXの蛍光放射を示す。別法として、撮像/造影剤を用いることなく、腫瘍/癌細胞または前癌細胞と正常/健康な細胞との間の内因性の蛍光差を使用することもできる。」
上記の記載を参酌すると、405nmの波長を有する励起光によって誘起ポルフィリンの蛍光放射を励起することができ、誘起ポルフィリンの蛍光放射は630nmの放射が最も強い赤色蛍光放射であるといえる。
(イ)そして、引用発明の「光源5」(励起光源)は、「405nmの励起光」を生じさせるものであるから、誘起ポルフィリンの蛍光放射を励起することができるものであり、引用発明の「光学フィルタ」(フィルタ)は、「600nm以上の赤の発光」の通過は許可するものであるから、誘起ポルフィリンの蛍光放射に対応する波長を有する放射の通過は許可するものであり、「デジタル画像取得装置1」(画像センサ)は、「600nm以上の赤の発光を検出する」ものであるから、誘起ポルフィリンの蛍光放射を検出できるものであり、「ソフトウェア」を動作させるためのプロセッサは、「600nm以上の赤の発光」に関するデータを出力するものであるから、誘起ポルフィリンの蛍光放射に関するデータを出力することができるものといえる。
そうすると、引用発明と本願発明とは、相違点2~5に関連して、デバイスの構成としての差異はないといえる。
(ウ)また、引用発明の「剛性の内視鏡プローブが取付けられた手持ち式の画像化装置」(デバイス)は、励起光源により外科的マージンの組織細胞内の誘起ポルフィリンの蛍光放射を励起し、組織細胞内の誘起ポルフィリンの蛍光放射を検出するように用いることが可能なものであるといえる。
そして、本願発明は「デバイス」自体のものの発明であって方法の発明ではなく、デバイス自体としてみると、上記の通り、相違点2~5に関して、デバイスの構成上の差異はないといえるから、相違点2~5は実質的な相違点ではない。
イ 仮に、本願発明において、「励起光源」により「外科的マージンの」「組織細胞内の誘起ポルフィリンの蛍光放射を励起」させ、「画像センサ」を「前記外科的マージンのフィルタにかけられた」「組織細胞内の前記誘起ポルフィリンの蛍光放射を検出するように」するとの「デバイス」の用途に関する事項が、本願発明の「デバイス」自体を実質的に特定する事項であると解釈した場合について検討する。
(ア)引用発明は、構成c2より、「蛍光に基づく標的の画像化において、標的は、手術部位、腫瘍を含む群から選択され、標的における選択されたバイオマーカを少なくとも1つの蛍光発光造影剤で標識付けし、造影剤はアミノレブリン酸(ALA)であ」るとされている。
また、引用文献1の段落【0057】には、「プロドラッグアミノレブリン酸(ALA)は、ほとんどすべての生細胞において、ポルフィリン形成を誘導する。ALAに暴露された多くの細菌種は、プロトポルフィリンIX(PpIX)蛍光を誘導することができる。超低用量のALAの使用によって、細菌内にPpIX形成を誘導してもよく、その結果、赤色蛍光発光を高めてもよく、それによって、本装置で画像化される細菌の赤色対緑色蛍光コントラストを向上させてもよい。ALAは、それ自体は非蛍光性であるが、PpIXは、630nm、680nmおよび710nm付近において蛍光性であり、630nm発光が最も強い。」、段落【0040】には、「紫色/青色(約405nm)励起光を用い、本装置を用いて、各寒天プレートの、緑と赤を組合わせた自己蛍光(約490nmから550nmおよび約610nmから640nmの発光)および赤のみの自己蛍光(約635±10nm、蛍光性の体内由来のポルフィリンに対するピーク発光波長)の両方を画像化した。」と記載されているように、アミノレブリン酸(ALA)は、生細胞においてポルフィリン形成を誘導するものであり、形成されたポルフィリンは、405nmの励起光により蛍光励起するものである。
そうすると、引用発明は、「造影剤」を「プロドラッグアミノレブリン酸(ALA)」とし、「光源5」が「生じさせる」「405nmの励起光」がプロドラッグアミノレブリン酸(ALA)によって誘起されるポルフィリンの蛍光放射を励起し、「デジタル画像取得装置1は」「標的物10または表面から出る光信号」として誘起ポルフィリンの蛍光放射を検出するとの用途を想定しているといえる。
よって、相違点2~5は実質的な相違点ではない。
(イ)仮に、選択的に特定されている構成c2より、引用発明が上記の用途を想定しているとまではいえず、相違点2~5は実質的な相違点であると解釈した場合について、さらに検討する。
手術中に癌細胞を特定するための画像取得装置において、励起光により誘起ポルフィリンの蛍光放射を励起し、蛍光画像を取得することは、例えば、周知文献4~5(上記第5の5~6参照)に記載されているように、周知技術(以下、「周知技術2」という。)である。
そして、引用発明と周知技術2とは、蛍光画像を取得し、癌細胞を特定するための装置に関するものである点で共通するものであり、また、引用発明は、構成c2より「標的における選択されたバイオマーカを少なくとも1つの蛍光発光造影剤で標識付けし、造影剤は」ポルフィリン形成を誘起するものである「アミノレブリン酸(ALA)」とすることが選択的に示唆されていることを考慮すれば、引用発明において、上記周知技術2を適用し、相違点2~5に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(3)相違点6について検討する。
内視鏡プローブは、一般的に、体内に挿入するために細長形の形状を有するものである(例えば、周知文献1、2を参照)から、引用発明の「剛性の内視鏡プローブ」(第2の端部)が細長形であることは、自明である。
よって、相違点3は、実質的な相違点ではない。
また、仮に相違点3が実質的な相違点であるとしても、引用発明の「剛性の内視鏡プローブ」を、一般的な内視鏡プローブと同様に細長形とし、相違点3に係る発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
4 小括
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術1、あるいは、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 請求人の主張について
(1)請求人は、審判請求書において、「しかしながら、引用文献1には、手持ち式デバイスの第2の端部が先細り状および/または細長形であることについては記載されていません。本願発明では、手持ち式デバイスの第2の端部が先細り状および/または細長形であることにより、腫瘍または癌組織が除去された手術腔内へ、2~3cmのサイズの外科的切開を通って第2の端部の端部または先端を挿入することが容易になるという有利な効果が奏されます(段落[0051])。引用文献1には、このような有利な効果についても開示されていません。」と主張しているが、上記3(3)の通りであり、また、2~3cmのサイズの外科的切開を通って第2の端部の端部または先端を挿入することが容易であるとの効果も、「剛性の内視鏡プローブ」を備える引用発明が当然に有する効果であって、格別なものとはいえないから、請求人の上記主張は採用できない。
(2)さらに、請求人は、令和6年4月15日提出の上申書において、「請求項1において、請求項7の技術的特徴「前記本体は、長手方向軸を有する一体型本体である」を組み込み、請求項7を削除する補正を行う準備があります。」との主張をしているので、検討する。
通常、内視鏡プローブは長尺で長手方向軸を有するものであるから、引用発明において、「剛性の内視鏡プローブが取付けられた手持ち式の画像化装置」(本体)も、全体として、長手方向軸を有するものになるといえる。
また、引用発明において、「剛性の内視鏡プローブを手持ち式の画像化装置に取付けた」際には、「剛性の内視鏡プローブ」は「画像化装置」と接続されたものになるから、両者を合わせたものは、「一体型本体」であるといえる。
なお、本願の発明の詳細な説明には、「一体型本体」との記載はないし、
「本体」が「長手方向軸を有する一体型本体である」ことについて具体的に説明する記載もないから、請求項1において、「前記本体は」「一体型本体である」と特定することにより、本体の構成部材が接続されているものであること以外の何らかの構成が特定されるとも認められない。
よって、「請求項1において、請求項7の技術的特徴「前記本体は、長手方向軸を有する一体型本体である」を組み込」むことで、請求項1に係る発明が進歩性を有するともいえない。
第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-019974