特許拒絶査定不服審判
2023-018430
マッサージ機能付きの可変形性クッション
- 審判番号
- 2023-018430
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-062443
- 請求日
- 2023年10月31日
- 審決日
- 2024年10月15日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】大東電機工業株式会社
- 【請求人代理人】安田岡本弁理士法人
- 審判長/審判官
- 審判長 草野 顕子
- 審判官 小岩 智明
- 審判官 高橋 学
- 分類
- P18 .121-WZ (A61H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022- 62443号「マッサージ機能付きの可変形性クッション」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年10月17日出願公開、特開2023-152425号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和4年4月4日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和5年 4月 4日付け:拒絶理由通知書
令和5年 6月 7日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 8月 8日付け:拒絶査定
令和5年10月31日 :審判請求書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、令和5年6月7日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
内部に流動性を有する内容物が装入されることで使用者の体型や姿勢に添って形状を変形可能とされたクッション体に、使用者にマッサージを付与可能なマッサージ機構が搭載された構成を有し、
前記クッション体は前記内容物を装入可能な袋体を有しており、前記袋体内に空間部が存在する量の前記内容物が装入されていて、
前記袋体内におけるビーズの寄集度合いを変更することで、マッサージ機構からのマッサージ強さが変更可能とされている
ことを特徴とするマッサージ機能付きの可変形性クッション。」
第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、以下の理由を含む。
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:登録実用新案第3212976号公報
引用文献2:特開2019-76139号公報(周知技術を示す文献)
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている。
・「【0016】
図1で示すように、引用符号1は、本実施例のマッサージ器1である。マッサージ器1は、図1、2、4および7で示すように、施術部位をマッサージするマッサージ器本体2と、マッサージ器本体2を施術部位に沿って位置させるクッション材3と、クッション材3およびマッサージ器本体2をカバーする外装カバー部4(第1のカバー部)と、外装カバー部4の上面(本体収納部41(第1の収納部)および収納部42(第2の収納部)の各上面)を覆う表面カバー部5(第2のカバー部)と、を備える。」
・「【0029】
図5で示すように、外装カバー部4は、マッサージ器本体2を収納する本体収納部41と、本体収納部41を囲むように位置し、クッション材3を収納する収納部42と、を有する。」
・「【0036】
本実施例のマッサージ器1は、クッション材3が複数の粒状物であるビーズで形成されているため、外装カバー部4が自由に変形するため、施術部位に沿ってマッサージ器本体2を密着させることができる。すなわち、本実施例のマッサージ器1は、施術部位に密着させることで、揉み玉22bの揉み下げ動作および揉み上げ動作を施術部位に確実に伝え、効率良くマッサージをすることができる。」
・【図4】には、以下の内容が示されている。
「
[図:0001418072000001.jpg]
」
2 引用発明
引用文献1の記載事項より、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。なお、括弧内は主な参照箇所を示す。
「施術部位をマッサージするマッサージ器本体2と、マッサージ器本体2を施術部位に沿って位置させるクッション材3と、クッション材3およびマッサージ器本体2をカバーする外装カバー部4と、を備え(段落【0016】)、
クッション材3が複数の粒状物であるビーズで形成されているため、外装カバー部4が自由に変形するため、施術部位に沿ってマッサージ器本体2を密着させることができ(段落【0036】)、
外装カバー部4は、クッション材3を収納する収納部42を有する(段落【0029】)
マッサージ器1(段落【0016】)。」
第5 対比・判断
1 対比
ア 引用発明の「クッション材3」は、「複数の粒状物であるビーズで形成され」ており、「クッション材3」「をカバーする」「外装カバー部4が自由に変形する」ものであるので、本願発明の「流動性を有する内容物」に相当する。
イ 引用発明の「施術部位をマッサージするマッサージ器本体2」は、使用者の「施術部位をマッサージする」ことは明らかであるので、本願発明の「使用者にマッサージを付与可能なマッサージ機構」に相当する。
ウ 引用発明の「クッション材3を収納する収納部42を有する」「外装カバー部4」は、上記アの相当関係も踏まえると、本願発明の「前記内容物を装入可能な袋体」に相当する。
エ 引用発明の「クッション材3」「をカバーする外装カバー部4」「を備え」、「外装カバー部4が自由に変形する」ことは、使用者の体型や姿勢に添って「外装カバー4が自由に変形する」ことは明らかであるので、前記アの相当関係も踏まえると、本願発明の「内部に流動性を有する内容物が装入されることで使用者の体型や姿勢に添って形状を変形可能とされたクッション体」であることに相当する。
オ 前記ア~エの相当関係を踏まえると、引用発明の「外装カバー部4」で「クッション材3およびマッサージ器本体2をカバーする」ことは、本願発明の「内部に流動性を有する内容物が装入されることで使用者の体型や姿勢に添って形状を変形可能とされたクッション体に、使用者にマッサージを付与可能なマッサージ機構が搭載された構成を有」することに相当する。
カ 前記ア、ウ及びエの相当関係を踏まえると、引用発明の「クッション材3を収納する収納部42を有する」「外装カバー部4」が「クッション材3」「をカバー」することと、本願発明の「クッション体は前記内容物を挿入可能な袋体を有しており、前記袋体内に空間部が存在する量の前記内容物が挿入されていて、前記袋体内におけるビーズの寄集度合いを変更することで、マッサージ機構からのマッサージ強さが変更可能とされている」こととは、「クッション体は前記内容物を挿入可能な袋体を有しており、前記袋体内に前記内容物が挿入されてい」る点で共通する。
キ 前記ア~エの相当関係を踏まえると、引用発明の「マッサージ器本体2と、」「クッション材3と、」「外装カバー部4と、を備え」た「マッサージ器1」は、本願発明の「マッサージ機能付きの可変形性クッション」に相当する。
ク そうすると、両者は、
「内部に流動性を有する内容物が装入されることで使用者の体型や姿勢に添って形状を変形可能とされたクッション体に、使用者にマッサージを付与可能なマッサージ機構が搭載された構成を有し、
前記クッション体は前記内容物を装入可能な袋体を有しており、前記袋体内に前記内容物が装入されている
マッサージ機能付きの可変形性クッション。」
において一致し、以下の点で相違する。
[相違点]
クッション体の構成に関し、本願発明では、袋体内に「空間部が存在する量の」内容物が装入されていて、「前記袋体内におけるビーズの寄集度合いを変更することで、マッサージ機構からのマッサージ強さが変更可能とされている」のに対し、引用発明では、外装カバー部4のクッション材3を収納する収納部42に空間部が存在するか明確ではない点。
2 相違点についての判断
ア 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2(段落【0004】)のほかに、例えば、登録実用新案第3225688号公報(段落【0031】)や実願昭56-179598号(実開昭58-82161号)のマイクロフィルム(明細書第3ページ第14~17行)などにも示されるように、可変形性クッションにおいて、使用者の体型や姿勢に添って形状を変形可能とするために、袋体内に空間部が存在する量の内容物が装入されている構成は、本願出願前に周知の技術であると認められる(以下「周知技術」という。)。
イ また、そもそもクッションにおいて内容物をどの程度装入するかは、クッションに求められる可変性などを考慮して当業者が適宜選択し得ることであり、設計的事項の範ちゅうにすぎない。
ウ そうすると、引用発明において、周知技術を参酌し、外装カバー部4の収納部42に空間部が存在する量のクッション材3を収納する構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
エ ここで、上述のように、引用発明において、外装カバー部4の収納部42に空間部が存在する量のクッション材3を収納する構成とした場合に、複数の粒状物であるビーズで形成されているクッション材3の、収納部42内におけるビーズの寄集度合いが変更可能となることは明らかである。
そして、前記第4の1に示す引用文献1の【図4】の記載も参酌すると、この場合において、クッション材3をマッサージ器本体2の下方に寄せることや、クッション材3をマッサージ器本体2の周囲に寄せることが可能であることも明らかであり、それに応じて、施術部位に対するマッサージ器本体2の密着の度合いが変化し、マッサージ強さも異なることになるといえるので、引用発明が「マッサージ強さが変更可能」であるとの態様を有することとなるのも明らかである。
オ したがって、引用発明において、クッション体の構成として、周知技術を採用することで、相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
3 作用効果についての検討
上記2で示したとおり、本願発明が奏する効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものとはいえない。
4 請求人の主張について
なお、請求人は、令和5年10月31日付け審判請求書で、
「 (i) 本願発明は、内部に流動性を有する内容物が装入されることで使用者の体型や姿勢に添って形状を変形可能とされたクッション体に、使用者にマッサージを付与可能なマッサージ機構が搭載された構成を有するマッサージ機能付きの可変形性クッションに関するものであり、以下に述べる特徴的な構成を有しています。
すなわち、
・構成(a):前記クッション体は前記内容物を装入可能な袋体を有しており、前記袋体内に空間部が存在する量の前記内容物が装入されている。
・構成(b):前記袋体内におけるビーズの寄集度合いを変更することで、マッサージ機構からのマッサージ強さが変更可能とされている。
上記した構成(a)(b)を備える本願発明によれば、当初明細書の[0027]などに開示されているように、まず、マッサージ機構からのマッサージ強さ(施療子に強弱をつけること)が非常に容易となります。すなわち、施療子を施療部に強く当てたいと考えたら、マッサージ機構の裏側において、ビーズを厚くするようにクッション内で周りからビーズを寄せ集めます。すると、マッサージ機構が使用者の施療部に近接することになり、施療子を使用者に強く当てることが可能となります。
加えて、マッサージ機構を後方から支持する支持体が剛体でないため、マッサージ機構に過度な負荷がかかった際(例えば、使用者の施療部がマッサージ機構に強く接した際)には、マッサージ機構自体がクッション内へ沈み込むようになります。そのため、マッサージ機構に過度な負荷がかかりにくく、使用者へも過度なマッサージも回避することができるようになります。
・・・。
充填材が移動できずに袋(外皮)全体として硬く固まってしまうことを防ぐために、充填材を少なめに装入することに関しては、当業者が通常の創作能力の範囲内でなし得ることであると思われますが、本願発明の構成(b)はこれとは全く異なり、マッサージ機構からのマッサージ強さを変更可能にするためであって、著しく特徴的な構成を有していると思料いたします。」
と主張する。
しかしながら、上記2に示したとおり、可変形性クッションにおいて、使用者の体型や姿勢に添って形状を変形可能とするために、「袋体内に空間部が存在する量の内容物が装入されている構成」は周知技術にすぎず、引用発明において、当該周知技術を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、引用発明において当該周知技術を採用した際には、引用発明が「前記袋体内におけるビーズの寄集度合いを変更することで、マッサージ機構からのマッサージ強さが変更可能」となるとの態様を有することとなるのも上述したとおりである。
よって、請求人の当該主張は認められない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、 結論のとおり審決する。
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