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特許拒絶査定不服審判

2023-017866

核反応を開始および維持するための方法および装置

審判番号
2023-017866
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-517915外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年10月20日
審決日
2025年03月21日
公報発行日
2025年09月26日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .536-Z (G21C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-517915「核反応を開始および維持するための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 元年12月12日国際公開、WO2019/234289、令和 3年10月28日国内公表、特表2021-529326〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 8項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、2019年(平成31年)3月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年6月4日 フィンランド)を国際出願日とする外国語特許出願であって、その手続の経緯の概略は次のとおりである。

令和 3年 2月 2日 :翻訳文の提出

同年 8月31日 :手続補正書の提出

令和 5年 1月 5日付け:拒絶理由通知書

同年 5月 1日 :手続補正書及び意見書の提出

同年 6月12日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)

( 同月20日 :原査定の謄本の送達)

同年10月20日 :審判請求書及び手続補正書(以下、この手続補正書による補正を「本件補正」という。)の提出
同月27日 :上申書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1の記載は、次のとおりである。

「以下のaおよびbを含むことを特徴とする核反応用の燃料。
a.下記のiおよびiiの1つまたは複数の軌道を一定時間の間、形成および/または維持することができる、1つまたは複数の第一の材料。
i.1つまたは複数の軌道であって、核からの平均電子軌道距離が10ピコメートル未満である軌道、
ii.25から45.6eV、69から91eV、140から160eVのいずれかの電子総エネルギーを有する1つまたは複数の軌道電子。
b.少なくとも一つの中性子および/または1個の陽子を有する核を含む、1つまたは複数の第二の材料。」

第3 原査定の拒絶の理由の概要

本件補正前の請求項1に係る発明に対する原査定の拒絶の理由の概要は、核反応が発生していることや、発熱反応が核反応によってもたらされているものであることを証明する実験結果が発明の詳細な説明には記載されておらず、出願時の技術常識を考慮してもそのようなことが実現できるとはいえないから、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないのであり、したがって、本願は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない、というものである。

第4 当審の判断

1 当審の判断の概要

本願発明は、「核反応用の燃料」に係る発明であるところ、「1つまたは複数の軌道であって、核からの平均電子軌道距離が10ピコメートル未満である軌道」であって、「25から45.6eV、69から91eV、140から160eVのいずれかの電子総エネルギーを有する1つまたは複数の軌道電子」が存在する軌道(以下「本件軌道」という。)を「一定時間の間、形成および/または維持することができる、1つまたは複数の第一の材料」(以下「本件軌道材料」という。)を含むことを発明特定事項としている。

しかしながら、発明の詳細な説明の記載及び本願出願時の技術常識からは、本願発明の「核反応用の燃料」によって、「核反応」を実現できること、特に、本件軌道材料を含む燃料によって、核反応を実現できることが裏付けられているとはいえない。

したがって、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

2 当審の判断の詳細な説明

(1) 本願の発明の詳細な説明等の記載

本願発明における核反応並びに本件軌道及び本件軌道材料について、本願の発明の詳細な説明及び図面には次の記載がある。下線は、特に関連する記載について、当合議体が付したものである。

ア 技術分野、背景技術(【0001】~【0004】)

「【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー生産に関する。より具体的には、本発明は、核反応からのエネルギー生成のための方法および装置を開示する。核反応は、電子伝達および/または単一元素燃料からのものであり得る。
【背景技術】
【0002】
化石燃料ベースのエネルギー源の将来的な代替のための新エネルギー技術は、政府および社会によって緊急に促進されており、熱心な研究が行われている。進行中の「化石燃料でない」エネルギーの研究は、a)太陽からの入力される電力の直接的または間接的な利用に依存する技術、およびb)原子力技術に大きく分割される場合がある。本発明は、核技術のカテゴリーに分類されると考えられている。本発明は、核分裂ベースの技術と同様のエネルギーおよび電力密度を提供するが、本質的に放射能のない反応器設計を可能にすることによって差別化することができる。
【0003】
他の先行する放射能のない核の発明は、ニッケル水素およびパラジウム重水素燃料の組み合わせに基づくエネルギー生成に主に関連している。これらの先行する発明の工業化は単純ではなく、今日までかかる先行する発明の商業的利用を妨げている。これまで、重核の中性子媒介連鎖反応のみが工業的に開発されてきた。それは現在のすべての原子力エネルギー生産の基礎である。
【0004】
燃料内で発生するエネルギー生成反応には、大きな潜在的有用性がある。開示される本発明により、その確実な始動、良好な制御性、および十分に高い電力密度の長所によって、その産業利用が容易になる。特定の燃料からのエネルギーの生成、およびかかるエネルギー生成プロセスからの最適な電気変換のための技術は、開示された発明の態様を補完するものである。」

イ 発明の概要(【0005】~【0082】)

「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
反応性原子核燃料反応器における電子伝達核反応(EMNR)のための方法および装置が開示される。EMNRは最終的に発熱である場合がある。個別のパルス反応プロセスと連続反応プロセスの明確な反応動力学が開示されている。これらの明確な動力学は、さまざまな核反応プロセスに対応している場合がある。連続反応動力学は高度に制御可能である。この制御可能な特徴、その高い(例えばから30W/g)反応出力率、および確実な反応始動は、将来のエネルギー生産に大きな可能性を提供する。この方法および装置は、燃料中の核の周りに、準安定電子軌道、高度に局在化した電子軌道、および/または近接電子原子核近接軌道(「電子伝達核反応促進軌道」またはEMNRPO)の存在を可能にする材料を組み込むことができる。前記軌道は、「電子伝達核反応促進軌道電子全エネルギー」(EMNRPOETE)を有する「電子伝達核反応促進軌道電子」(EMNRPOE)を有し得る。前記軌道は、振動運動軌道であり得る。前記振動運動軌道は、「振動運動軌道電子全エネルギー」(ZOETE)を有する「振動運動軌道電子」(ZOE)を有する場合がある。方法および装置の燃料は、振動運動軌道可能材料(ZOCM)、触媒作用を及ぼす、または他の方法でEMNRを促進することができる1H核もしくは2H核などの電子伝達核反応促進軌道可能材料(EMNRPOCM)を含むことができる。電子からEMNRPOへの遷移は、燃料中の1つまたは複数のEMNRPOCMの1つまたは複数のEMNRPOTEに近接した遷移開始運動エネルギー(TIKE)を持つ電子を有する遷移開始運動エネルギー電子軌道(TIKEEO)の存在によって容易になる、または促進される場合がある。EMNRPOCMがZOCMである場合、ZOCMが水素(1H)で、ZOETEは~80から81eVである場合、前記EMNRPOETEはZOETEであり、1つまたは複数のTIKEが~80から81eVに近い可能性があり、ZOCMが重水素(2HまたはD)で、ZOETEが~35eVでの場合、~35eVに近い場合がある。本発明によると、反応性原子核および燃料を予測する方法が開示されている。
続きを表示(全47行)
【0006】
本発明の1つの目的は、核反応のための燃料を開示すことである。核反応のための単一または多元素燃料が開示されている。燃料は、1つまたは複数の反応性原子核(反応性原子核燃料)を含み得る。燃料は、1つまたは複数の核二重電子捕獲可能同位体(NDECCI)を含み得る。燃料は、ZOCMなどの1つまたは複数のEMNRPOCMを含むことができる。燃料は、1つまたは複数の「遷移開始運動エネルギー電子軌道材料」(TIKEEOM)および/またはそれらの前駆体をさらに含み得る。EMNRPOCMのうちの1つまたは複数は、軽い核物質であり得る。軽い核EMNRPOCMは、水素(1H)および/または重水素(2H)である場合がある。燃料は、「遷移開始運動エネルギー電子軌道変調可能材料」(TIKEEOMM)を含み得る。1つまたは複数のTIKEEOMは金属であってよい。金属のうちの1つまたは複数は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ポスト遷移金属、ランタノイドおよび/またはアクチノイドであり得る。1つまたは複数のTIKEEOMは、「軌道修正複合材料」(OMCM)の要素である場合がある。OMCMは、例えば、少なくとも部分的に1つまたは複数のTIKEEOMを含む分子、合金または塩であり得る。OMCMは、「遷移開始運動エネルギー電子軌道複合材料」TIKEEOCMである場合がある。TIKEOCMはTIKEEOMである場合がある。分子は、例えば、ホウ酸塩、ホウ化物、酸化物、窒化物、硝酸塩、酸化物、フッ化物、ケイ酸塩、リン酸塩、硫酸塩、塩化物、セレン化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、窒化物、リン酸塩、ホスフィン、リン化物、硫酸塩、硫化物、またはその他の分子の組み合わせであり得る。燃料構造は、1より大きい高エネルギー電子の増倍率を持っていてよい。燃料は、EMNR用の方法または装置、例えば、電子伝達核連鎖反応(EMNCR)で使用することができる。
・・・(中略)・・・
【0008】
本発明の一実施形態によれば、1つまたは複数のEMNRPOCMおよび1つまたは複数のEMNRPOCMのEMNRPOETEに近接した運動エネルギーを有する1つまたは複数の「遷移開始運動エネルギー電子」(TIKEE)が1つまたは複数のEMNRPOCMの核の周りに1つまたは複数のEMNRPOを形成するように遷移する方法で、EMNRの方法および装置が開示される。1つまたは複数のTIKEEは、束縛電子または自由電子の場合がある。束縛電子の場合、前記電子は、TIKEEOMの軌道に束縛されてもよい。TIKEは、EMNRPOCMが1Hを含む場合は~80から81eVに近く、EMNRPOCMが2Hを含む場合はTIKEは~35eVに近い場合がある。EMNRPOCMはZOCMの場合がある。EMNRPOは振動運動軌道である場合がある。EMNRPOは、1つまたは複数の核反応を触媒、強化、または促進する場合がある。1H互換性のTIKEEOMの例には、Ni、Br、Vおよび/またはCoを含む材料が含まれるが、これらに限定されない。2H互換性のTIKEEOMの例には、Caを含む材料が含まれるが、これらに限定されない。TIKEEは、どのような方法でもEMNRPOCMに提供できる。TIKEEは、束縛電子および/または自由電子によって提供される場合がある。束縛電子からTIKEEを供給する手段の例には、(例えば、表面プラズモン、電解中の表面電圧によって、または、表面界面を横切るフェルミ準位差による加速(例えば、非平衡拡散中)、例えば、例えば1つまたは複数のTIKEEOMを含む合金をより低いフェルミ準位の他の材料に溶融するなどの溶融相変化、および/またはTIKEEをEMNRPOCMを含む材料へ加速することにより、TIKEEOMを含む材料を通して1つまたは複数のEMNRPOCMを拡散すること、TIKEEOMを含む材料に1つまたは複数のEMNRPOCMを加速することが含まれるが、これらに限定されない。自由電子からTIKEEを供給する手段の例には、プラズマ温度がEMNRPOETEに近接した1つまたは複数のEMNRPOCMを含むプラズマを提供すること、および/またはEMNRPOCMを含む材料へ衝撃を与えることが含まれるが、これらに限定されない。電子は、EMNRPOETEよりも高いエネルギー、好ましくはEMNRPOETEの3倍に近いエネルギーを持つ、好ましくはEMNRPOCMイオンを含むEMNRPOCMを含む材料に衝撃を与えることにより、EMNRPOに転移することができる。
【0009】
本発明の1つの目的は、燃料からエネルギーを生成するための方法および装置を開示すことである。電子伝達核連鎖反応を含む、電子伝達核反応からエネルギーを生成するための方法および装置が開示される。好ましい実施形態として、リチウムおよび/またはニッケル含有燃料が開示されている。より好ましい実施形態として、58Ni含有燃料および6Li-7Li燃料混合物が開示されている。本発明によれば、他の燃料または燃料成分が可能である。電子伝達および/または単一元素を燃料とする核反応が開示されている。58Niとの電子伝達および/または単一元素を燃料とする核反応が開示されている。6Li-7Liの混合物との電子伝達性および/または単一元素を燃料とする核反応が開示されている。単一元素を燃料とする核反応は、電子伝達核連鎖反応である場合がある。電子伝達反応は、単一元素反応であり得る。単一元素を燃料とする核反応は、電子伝達核反応である場合がある。電子伝達および/または単一元素を燃料とする核反応は、その初期段階では、電子伝達核連鎖反応であり得る。電子伝達核反応は、連続的または半連続的な核反応であり得る。電子伝達および/または単一元素を燃料とする核連鎖反応は、その初期段階では、電子伝達または単一元素核反応であり得る。電子伝達または単一元素の核反応は、連続的または半連続的な核反応であり得る。電子伝達核連鎖反応または連鎖反応は、初期および/または周期的な核連鎖反応または核反応から、連続的または半連続的な核反応または核連鎖反応に遷移し得る。電子伝達および/または単一元素を燃料とする核反応または連鎖反応は、最終的な発熱反応であり得る。電子伝達または単一元素燃料反応順序を可能にする反応機構が開示されている。
・・・(中略)・・・
【0012】
EMNRは、電子遷移事象によって開始または先行される場合がある。電子遷移事象の例には、振動運動軌道などのEMNRPOへの電子の遷移が含まれるが、これらに限定されない。束縛電子または自由電子はEMNRPOに遷移する場合がある。EMNRは、単一段階または複数段階のプロセスの場合がある。振動運動軌道などのEMNRPOは、1つまたは複数のEMNRおよび/または1つまたは複数のEMNCRを触媒、強化、またはその他の方法で促進することができる。
・・・(中略)・・・
【0031】
「電子伝達核反応促進軌道」(EMNRPO)は、s、p、d、f軌道などの通常の原子軌道とそれらの混成の間の相互作用よりも強い電子と原子核の相互作用を持つ電子軌道である。EMNRPOの例は、高度に局在化した準安定で近接した電子と原子核の電子軌道である。振動運動軌道はEMNRPOの一例である。EPCOおよび/またはEPCOEは、単一の電子捕獲および/または二重電子捕獲を含む、EMNRの1つまたは複数の段階を触媒、強化、または促進する場合がある。
【0032】
「電子伝達核反応促進軌道可能材料」(EMNRPOCM)は、EMNRPOを一定期間形成および/または維持することができる任意の材料である。EMNRPOCMの例には、軽い核物質が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、EMNRPOCMは、電荷Z=1(すなわち、1H,2H,3H)を有する核を有し、したがって、EMNRPOを有する結果として生じる原子は、電気的に中性であり、したがって、正に帯電した原子よりも他の核により容易に接近し得る。ZOCMはEMNRPOCMの一種である。反応性核物質は、EMNRPOCMとしても機能する場合がある。
・・・(中略)・・・
【0040】
本明細書での電子軌道に関して「高度に局在化」とは、s、p、d、f軌道などの「通常の」原子軌道およびそれらの混成よりも狭い領域に電子軌道確率があることを意味する。振動運動軌道の電子は、高度に局在化した状態(高度に局在化した電子)である、および/またはその状態にあると見なすことができる。かかる高度に局在化されたZOEは核からの平均軌道距離Rが好ましくは0.383pm+/-0.2pm、より好ましくは0.383pm+/-0.1pm、より好ましくは0.383pm+/-0.05pm、より好ましく+/-0.02pm、より好ましくは0.383pm+/-0.01pm、より好ましくは0.383pm+/-0.005pm、より好ましくは0.383pm+/-0.002pm、より好ましくは0.383pm+/-0.001pm、最も好ましくは~0.383pmで核の周りに近接であり得る。
・・・(中略)・・・
【0045】
「反応性原子核燃料」または「燃料」は、本明細書では、少なくとも部分的に反応性原子核を含む任意の材料および/またはかかる材料の混合物として定義される。
【0046】
反応性原子核燃料は、NDECCIなどの1つまたは複数の反応性核物質を含み得る。反応性原子核燃料は、ZOMCなどの1つまたは複数のEMNRPOCMを含み得る。反応性原子核燃料は、1つまたは複数のTIKEEOM、TIKEEOCMおよび/または1つまたは複数のTIKEEOMM、TIKEEOMCMおよび/または1つまたは複数のOMMをさらに含み得る。反応性原子核燃料は、1つまたは複数の構成要素が、その運動エネルギーが燃料中のEMNRPOCMのEMNRPOに近接した電子軌道を有する多元素燃料であり得る。反応性原子核燃料は、1つまたは複数の構成要素が、EMNRPOCMである場合がある少なくとも1つの他の構成要素の振動運動軌道総軌道エネルギーに近接した運動エネルギーを有する電子軌道を有する多元素燃料を含み得る。上記のEMNRPOCMはZOCMである場合がある。前記ZOCMは1H、2Hおよび/または3Hであり得る。
【0047】
「反応性核物質」は、少なくとも部分的に、1つまたは複数の反応性の核を含む任意の材料である。反応性原子核燃料は、少なくとも部分的に、反応性核物質を含む。NDECCIは、反応性核物質の一種である。反応性核物質は、軽い核物質であり得る。反応性核物質の例には、1H、2H、3H、He、Li、Be、b、C、N、O、F、Ne、およびNaが含まれるが、これらに限定されない。Niは反応性核物質として作用する場合がある。EMNRPOCMは、反応性核物質としても機能する場合がある。
【0048】
「近接電子と原子核の近接」は、本明細書では、原子核から100ピコメートル未満、より好ましくは10ピコメートル未満、最も好ましくは5ピコメートル未満の平均距離で原子核の周りを周回する電子として定義される。軌道を回る電子は励起電子であり得る。
・・・(中略)・・・
【0052】
「核二重電子捕獲可能同位体」(NDECCI)は、本明細書では、その核の少なくとも1つが核二重電子捕獲を経験することができる原子または原子系として定義される。NDECCI原子核は、その原子核が、2つ以上の電子の連続的または同時の核捕獲時にエネルギーを解放する場合がある、少なくとも1つの陽子、中性子、または同位体を含む場合がある。2つ以上の電子のこの核捕獲は、単一の核によって、または前記近接核の融合プロセスの前または最中に2つ以上の近接核によって達成され得る。本発明によるNDECCIの例はニッケル(Ni)である。上記のNiは、二重電子捕獲時にFeに核変換することができる。前記二重電子捕獲の発熱エネルギーは~2MeVである。本発明によれば、他のNDECCIおよび他の発熱エネルギーが可能である。NDECCIの他の例には、58Ni、64Zn、40Ca、およびそれらの任意の混合物が含まれるが、これらに限定されない。NDECCIの例には、さらに2つの近接陽子が含まれるが、これらに限定されない。
・・・(中略)・・・
【0057】
核の「二重電子捕獲反応」または「二重電子捕獲」は、原子核の崩壊モードである場合がある。核子数A、原子番号Zの核種(A、Z)の場合、(A、Z-2)の核種の質量が小さければ、二重電子捕獲が可能である。この崩壊モードでは、軌道電子の2つが核内の2つの陽子によって捕獲され、2つの中性子を形成する場合がある。その過程で2つのニュートリノが放出されるか、2つの電子が同時に捕獲される場合、その過程はニュートリノがない場合がある。陽子が中性子に変わるため、中性子の数は2増加し、陽子Zの数は2減少し、原子質量数Aは変化しない。陽子の数を変えることにより、二重電子捕獲は核種を新しい元素に変換する。二重電子捕獲反応は、核反応、最終的な発熱二重電子捕獲反応、最終的な発熱二重電子捕獲核反応、および/または核変換または核変換反応であり得る。
・・・(中略)・・・
【0065】
「連鎖反応」は、本明細書ではそれ自体を永続させる任意の反応として定義される。連鎖反応の例は、電子伝達核連鎖反応である。例示的な連鎖反応は、1つまたは複数のNDECCI核が1つまたは複数の電子の捕獲によって励起されて過剰なエネルギー性電子を生成する一連の発熱二重電子捕獲反応(核変換反応)である。
・・・(中略)・・・
【0077】
驚くべきことに、連鎖反応を開始する可能性のあるエネルギー性の電子は、少なくとも次の3つの異なる方法によって効率的に生成される場合があることが判明した。
・・・(中略)・・・
【0079】
●燃料の固液相変化によるもの。部分溶融プロセス中に、固相と溶融相のフェルミエネルギー水準が異なる場合、相変化を経験する燃料は熱力学的平衡からかけ離れている場合がある。地域間のフェルミエネルギー水準の違いにより、電圧が発生する場合がある。この電圧は、相変化中にイオンと電子を加速する場合がある。理論に束縛されるものではないが、異なるフェルミエネルギー水準の条件下で、部分溶融事象は、固液界面でエネルギー性のイオンおよび/またはエネルギー性の電子を生成することができると考えられている。燃料の特定の組成では、温度サイクルがこれらの固液相変化を生成するための効果的な方法であることが判明した。
・・・(後略)」

ウ 発明を実施するための形態(【0084】~【0203】)

「【発明を実施するための形態】
【0084】
本明細書では、EMNRを生成するための新しい燃料、方法、および装置を開示する。原子核反応を生成するために、励起電子および/または近接電子-原子核近接電子および/または電子軌道などの高度に局在化された状態を利用する方法および装置が開示される。電子軌道は準安定で、原子核(すなわちEMNRPO)の周囲および/または電子原子核に近接して高度に局在化する場合がある。核は、例えば1H、2Hまたは3H核の軽い核であってもよい。このプロセスは、核連鎖反応を含む核反応および/またはENMCRを含むENMRを生成するために使用され得る。反応は、パルス反応相および/または本質的に連続的な反応相を含む。パルス反応相および/または連続反応相は、連鎖反応を含み得る。プロセスは、パルス反応相から連続反応相に遷移する場合がある。これらの反応相は、2つの異なる相として現れる場合がある。反応相の1つまたは複数は、熱および/またはエネルギー生成であり得る。1つまたは複数のEMNRPOへの電子遷移のプロセスが開示されている。実用例に関して、判明した方法および装置は、例えば1Hまたは2Hなどの軽い核物質、および1H、2H、3H、He、Li、Be、B、C、N、O、F、Ne、NiおよびNaといった金属などの反応性核物質を含む燃料からの持続可能なエネルギー生産の可能性を提供する。本発明によれば、他の軽い核物質および反応性核物質が可能である。
・・・(中略)・・・
続きを表示(全20行)
【0087】
反応性原子核燃料は、1つまたは複数の核二重電子捕獲可能同位体を含み得る。少なくとも1つの核二重電子捕獲可能な同位体は58Niである可能性がある。反応性核のうちの2つは、6Liおよび7Li同位体核の混合物を含み得る。6Liおよび7Li同位体の比率は、0.001:0.999から0.999:0.001の間である可能性がある。電子伝達核連鎖反応および/または融解相変化の開始および/または周期的な再開は、目標温度範囲内での温度サイクルによって、および/またはエネルギー粒子および/または中性子を燃料に供給することによって達成され得る。エネルギー粒子は、エネルギー性の電子および/または中性子であり得る。燃料は、溶融アルカリまたは非アルカリ環境で加熱されると分解したり破壊したりすることができる燃料成分を含み得る。溶融アルカリ環境は、溶融リチウムを含み得る。
【0088】
本発明の一実施形態の一態様によれば、1つまたは複数の内殻電子と原子核との間の通常の相互作用よりもはるかに強い電子と原子核の相互作用を可能にする電子軌道を利用することができる。これらの軌道はEMNRPOである場合がある。電子と原子核が近接している、準安定および/または高度に局在化した電子は、かかる軌道の一例である。EMNRPOを利用すると、電子捕獲の可能性が高まり、および/またはEMNCRを含むEMNRなどの核融合反応を触媒、促進、または強化することができる。本発明の一実施形態によれば、前記EMNRPOは、かかる準中性子と他のいくつかの核との間の小さな核間距離を可能にし、それによって、EMNCRを含むEMNRなどの触媒融合反応を可能にし得る。前記EMNRPOは、単一または二重電子捕獲または他の核反応プロセスを含む、EMNRを触媒し、強化し、または他の方法で促進し得る。反応は、エネルギー性のイオンおよび/またはエネルギー性の電子または他のエネルギー性の荷電粒子などのエネルギー粒子を生成し得る。生成されたエネルギー粒子は、電子捕獲を含むEMNRに関与するエネルギー性の電子として直接、または間接的に、例えば電子に衝撃を与えるか、EMNRPOなどの電子軌道を生成して、電子捕獲を含む、EMNRに関与する可能性のあるエネルギー性の電子を生成、触媒、強化または他の方法で促進する。
・・・(中略)・・・
【0094】
反応性原子核燃料は、1つまたは複数の核二重電子捕獲可能同位体を含み得る。少なくとも1つの核二重電子捕獲可能な同位体は58Niである可能性がある。反応性核のうちの2つは、6Liおよび7Li同位体核の混合物を含み得る。6Liおよび7Li同位体の比率は、0.001:0.999から0.999:0.001の間であり得る。電子伝達核連鎖反応および/または融解相変化の開始および/または周期的な再開は、目標温度範囲内での温度サイクルによって、および/またはエネルギー粒子および/または中性子を燃料に供給することによって達成され得る。エネルギー粒子は、エネルギー性の電子および/または中性子であり得る。燃料は、溶融アルカリまたは非アルカリ環境で加熱されると分解したり破壊したりすることができる燃料成分を含み得る。溶融アルカリ環境は、溶融リチウムを含み得る。反応および/または連鎖反応の開始または持続は、自発的な開始および/または持続事象に依存し得るか、または、例えば、熱エネルギーおよび/またはエネルギー粒子の計画的な開始または持続源に依存し得る。
・・・(中略)・・・
【0105】
本発明の一実施形態によれば、燃料は、水素および/または重水素などの軽い核物質などのEMNROCMを含むか、またはさらに含むことができる。驚くべきことに、EMNRは、内殻電子と原子核の間の通常の相互作用よりもはるかに強力な電子と原子核の相互作用を可能にする可能性のある電子軌道によって達成できることが判明した。EMNRPOは、かかる強力な電子と原子核の相互作用軌道の一例である。驚くべきことに、EMNRPOは、電子捕獲を含むEMNRの確率を触媒、強化、または促進する場合があることが判明した。最も重要なことには、驚くべきことに、振動運動軌道などのEMNRPOは、かかる準中性子と別の核との間の小さな核間距離を可能にし、EMNRを含む触媒核融合反応を可能にする場合があることがわかった。
・・・(中略)・・・
【0108】
ZOCMなどのEMNRPOCMは、軽い核を持っている場合もあれば、軽い核の材料である場合もある。軽い原子核はZ=1の原子核であり、原子番号Zは原子核内の陽子の数である。Z=1の核物質の例としては、1H(その核として陽子を有する)、2H(D)および/または3Hを含むが、これらに限定されるものではない。燃料は、使用されたZOCMの振動運動軌道など、使用されたEMNRPOCMのEMNRPOETEに近接した運動電子エネルギーを有する電子軌道を有する1つまたは複数の材料を含み得る。上記の素材はTIKEEOMである。EMNRPOCMは、TIKEOMおよび/またはTIKEOMMの場合がある。
・・・(中略)・・・
【0111】
図17は、本発明の特定の実施形態による燃料の例を示している。本発明の一実施形態によれば、核反応用の燃料(28)は、1つまたは複数のEMNRPOCM(23)を含み得、ここで、1つまたは複数のEMNRPOCM(23)は、一定期間、1つまたは複数のEMNRPO(24)を形成および/または維持することができる材料で、1つまたは複数のEMNRPOは、任意のs、p、d、およびf軌道と原子核の相互作用およびEMNRPOCMのそれらの混成(23)間の電子よりも強い電子と原子核の相互作用を有する。原子核(26)は、中性子を含む場合も含まない場合もあり、通常の軌道電子を含む場合も含まない場合もある(図示せず)。EMNRPOCM(23)は、定義上、EMNRPO(24)を持つことができるが、反応が始まる前は、EMNRPOCM(23)はEMNRPO(24)を含まない場合がある。核反応用の燃料は、1つまたは複数の反応性核物質(25)を含み得、ここで、前記反応性核物質は、少なくとも1つの中性子(27)および/または陽子(35)を有する核(26)、すなわち、EMNRPOの生成が反応を開始する場合がある。燃料は、燃料(28)中の1つまたは複数のEMNRPOCM(23)の1つまたは複数のEMNRPO(24)の1つまたは複数のEMNRPOE(図示せず)のEMNRPOETEの+/-10eV以内にTIKEを有する少なくとも1つのTIKEE(30)を有する少なくとも1つのTIKEEO(29)を含む1つまたは複数のTIKEEOM(16)をさらに含み得、および/または1つまたは複数の反応性核物質(25)は、NDECCIであり得る。1つまたは複数のTIKEEOM(16)は、1つまたは複数のTIKEEOM(16)、および/または1つまたは複数のTIKEEOMM(図示せず)および/または1つまたは複数のTIKEEOMCM(図示せず)を含むTIKEEOCMであり得る。燃料は、改質材(図示せず)をさらに含み得る。改質材は、OMM、融点調整材料、破壊誘発材料、励起電子を維持することができる材料、溶融相および固相において異なるフェルミ準位を有する材料、および/または飽和材料であり得る。1つまたは複数のEMNRPOCM(23)は、10未満の原子番号Zを有する軽い核物質を含み得る。1つまたは複数の軽い核EMNRPOCM(23)は、1に等しい原子番号Zを有する材料を含み得る。1に等しい原子番号Zを有する1つまたは複数の材料は、1H、2Hおよび/または3Hおよびそれらの任意の組み合わせを含み得る。1つまたは複数の反応性核物質(25)、TIKEEOM(16)、TIKEEOMM、TIKEEOCMおよび/またはTIKEEOMCMは、金属を含み得る。1つまたは複数のTIKEEOM(16)、TIKEEOMM、TIKEEOCM、および/またはTIKEEOMCMは、TIKEEOCMを形成するために、OMMの一部であるか、化学結合されているか、合金化されているか、または他の方法でOMMと接触または近接している。TIKEEOCMのうちの1つまたは複数は、1つまたは複数のTIKEEOMMおよび/またはTIKEEOMCMおよび1つまたは複数のOMMおよび/または1つ以上のTIKEEOMMおよび/またはTIKEEOMCMと接触するOMMの表面または被膜を含む分子、合金または塩であり得る。EMNRPOCM(23)のうちの1つまたは複数は、ZOCMであり得る。TIKEEOM(16)の1つまたは複数は、Cr、Cu、Ca、O、Ni、Co、BrまたはVを含み得、および/またはZOCMの1つまたは複数は、1H、2Hおよび/または3Hを含み得る。1つまたは複数のZOCMは1Hを含み、1つまたは複数のTIKEEOMは、80-81eVの1HZOETEの+/-10eV以内の運動エネルギーを持つTIKEを備えたTIKEEO(29)内の少なくとも1つのTIKEE(30)を含む。1つまたは複数のTIKEEOM(16)は、Ni、Br、Ca、O、Co、Cu、Crおよび/またはVを含み得る。1つまたは複数のZOCMは2Hを含み得、そして1つまたは複数のTIKEEOM(16)は、35eVの2HZOETEの+/-10eV以内の運動エネルギーを持つTIKEを有するTIKEEO(29)内の少なくとも1つのTIKEE(30)含み得る。TIKEEOM(16)および/またはTIKEEOCMのうちの1つまたは複数は、Caおよび/またはOを含み得る。反応性核物質の少なくとも1つは、例えば、1H、2H、3H、He、Li、Be、V、C、N、O、F、Neおよび/またはNaであり得、および/またはNDECCIの少なくとも1つは、6Liおよび7Li、58Ni、64Znまたは40Caまたはそれらの任意の組み合わせを含み得る。1つまたは複数の改質材は、Cuおよび/またはAlを含み得る。」
「【図17】
[図:0001426322000001.jpg]
」
「【0136】
励起電子状態の考え方を紹介する。かかる状態では、電子は原子核に非常に近接している場合がある。理論に束縛されるものではないが、これらの励起状態は、電子の内部構造の励起か、相対論的エネルギーで原子核を周回する電子のいずれかである場合がある。励起電子である可能性のあるこれらの励起状態は、例えば、以下の特性によって特徴付けられ得る。(i)特徴的な電子-核の距離が10ピコメートル以内であり得る、核の周りの複数の近接電子の存在を可能にする。(ii)励起エネルギー水準は1から10keVのエネルギー範囲にある場合がある。(iii)励起寿命は0.1から1ミリ秒の範囲である場合がある。(iv)それらの生成速度は、反応環境の化学組成および構造(燃料構造)に依存する場合がある。
・・・(中略)・・・
【0157】
続きを表示(全13行)
したがって、驚くべきことに、減少したコンプトン波長距離スケールで、1H核の周りに準安定平衡電子軌道があることが判明した。この準安定軌道は、電子と原子核が近接している、および/または高度に局在化した電子軌道である場合がある。この電子軌道は正の総エネルギーを持っている場合がある。この振動運動軌道の正の総エネルギーは、常温でEtotal≒-13.6eVの電子が1H核の周りで低いエネルギーのボーア軌道状態を占めることを暗示していることを強調する。
【0158】
したがって、驚くべきことに、EMNRPOの特定の例を特定した。これは振動運動軌道であってよい。この軌道は1H核または他の軽い核の周囲に存在してもよい。本発明によると他の軽い核が可能であるものの、最も好ましくは、軽い核は水素(1H)または重水素(2H)のように、原子番号Z=1を有している。1H原子核、または他の軽い原子核の周りの振動運動軌道などの電子のEMNRPOは、基本的な相対論的状態として理解できる。特定の電子の運動エネルギー準位では、電子の振動運動は、軽い原子核の周りの相対論的軌道としてそれ自体を局在化させる場合がある。1H核の場合、この運動エネルギーはTIKEについて~80から~81eVであることがわかるが、2H核の場合、この運動エネルギーは~35eVであることがわかる。この命題により、例えばニッケル燃料または他の材料燃料の反応器の反応動力学を正しく予測することができる。関連する実験データを使用して、次のセクションでは、この必要なTIKEを正確に特定する。
【0159】
Z>1の原子核に関しては、4Heの場合、核磁気モーメントがないため、かかる状態は安定しないことに注意が必要である。リチウムの場合、驚くべきことに、TIKEは~150eVであることがわかった。ただし、リチウム原子核の周囲にZOEが存在しても、核融合の確率に大きな影響を与えることはないであろう。
【0160】
[図:0001426322000002.jpg]
表3:様々な原子核の周りの振動運動軌道における全電子エネルギー準位の比較
・・・(後略)」

エ 実施例(【0204】~【0222】)

「実施例
【0204】
以下の実施例では、図8に記載されているような反応器が、実施例に記載されているような様々な燃料を組み込んだ本発明に従って使用されている。これらの例では、NiはNDECCIである可能性があり、軽い核との融合は発熱性である。Liは、中性子捕獲時にエネルギー性の電子放出が可能であり、他の原子核との融合は発熱性である。Cuは融点調整元素であり、近接電子と原子核の状態への遷移を触媒する上で有益な役割を果たす場合がある。
【0205】
続きを表示(全23行)
次の例では、存在する水素、これらの場合は1Hが、EMNRPOCM、この場合はZOCMとして機能する場合がある。例2から6では、Liは反応性核物質としても機能し、NiはTIKEEOMとしても機能し得る。Alおよび/またはCuは、改質材および/またはOMMとして機能する場合がある。
【0206】
実施例1:
本発明の一実施形態の実験装置を使用して、単一元素燃料からエネルギーを生成した。この例では、単一元素燃料を使用して、電子を生成した。0.5gのリチウムを反応器に入れ、リチウム燃料と接触するニッケル材料が存在する中で1370℃に加熱した。観測された電子伝達連鎖反応爆発は、実験でさまざまな強度と持続時間を有していたが、測定された発熱熱生成は数百ワットだった。強力な爆発中に、1から10MHzの周波数範囲で均一な電力拡散を伴う無線周波数信号の生成が検出された。かかる平坦な無線周波数電力スペクトルは、予想されるエネルギー性の電子の減速の兆候である。同時に、燃料容器から0.5メートルの距離に配置されたガイガー=ミュラー計数管は、バックグラウンドの40倍の放射水準を示した。このガイガー=ミュラー計数管の指示値は、本明細書に開示された電子伝達核連鎖反応によるエネルギー性の電子の増殖を確認する。
【0207】
ガイガー=ミュラー計数管の指示値は、例えば電子またはイオンであり得る他のエネルギー性の荷電粒子の増殖を示し得る。我々の装置では、振動運動対応の材料として機能し得る水素が、大気中での燃料容器の組み立ておよび密閉中にリチウム上で生成されるLiOHの形で導入される場合がある。
【0208】
実施例2:
使用する燃料は、9.52gのコンスタンタン合金と0.28gの金属リチウムで構成されている。温度プログラムは、反応器の温度を13時間かけて動作範囲まで上昇させ、続いて温度サイクルプログラムで構成された。1240から1300℃で定電力加熱を使用し、1300℃の上限温度閾値で加熱をオフにした。その後、1240℃の低温閾値で定電力加熱が再びオンになった。図5は、連続的な核反応が始まる前の、温度サイクルの6つの連続する加熱段階における燃料サンプルの温度変化オーバーレイを示している。電子伝達核連鎖反応の兆候は、突然の温度上昇として見ることができる。連続反応への遷移は、特定のサイクルの加熱段階の開始時に発生した。図6は、連続的な核反応の開始から始まる、温度サイクルの6つの連続する加熱段階中の燃料サンプルの温度変化オーバーレイを示している。連続核反応の開始前後の温度上昇勾配の比較を図7に示す。連続発熱熱生成は、図6の温度上昇曲線の一定勾配から見ることができる。図6に示すように、電子伝達核連鎖反応のいくつかの温度ジャンプの兆候は、連続的な核反応の開始後でも、開始後の最初の数サイクルで見ることができる。さらに、連続的な発熱熱生成は、温度サイクルの冷却段階よりも加熱段階の方が著しく大きいことが観察されている。したがって、この核反応プロセスは半連続的である場合がある。
【0209】
図7および7aは、連続反応開始前後の6サイクルにおける加熱段階と冷却段階の温度変化を示している。表記の負(正に対する)の数は、連続反応の開始前(開始後に対する)のサイクル数を示す。
【0210】
連続反応は、特定の加熱サイクル(つまり「サイクル1」)の開始直後に開始される。これは、最初の急な傾斜からわかる。加熱サイクル中のかなり一定の勾配、および正の番号のサイクル間の非常に類似した勾配は、反応が加熱サイクル中に一定の発熱力を生成することを示している。パルス反応の兆候(つまり、突然の温度ジャンプ)は、いくつかの負の番号の先行サイクルで見られ、同時にいくつかの正の番号のサイクルでの連続反応でも見られる。サイクル1、2、および5は、非常に目に見える温度ジャンプを示している。冷却段階で最初に観察できる特徴は、負の番号のサイクルの温度変化と比較した、正の番号のサイクルでの温度のオーバーシュートである。これは、加熱を停止した後、連続反応が数秒間活性のままであることを示している。その後、冷却速度は、負の番号のサイクルよりも正の番号のサイクルの方がいくらか速くなる。これは、近くの熱電対によって再開した、連続反応中の局所的な熱生成の結果である。これは、電気加熱がはるかに短い時間でオンになったため、加熱終了時の平均反応器温度が負の番号のサイクルよりも正の番号のサイクルでいくらか低いことを意味する。温度低下相の動力学は、温度低下中の発熱反応がほとんどまたはまったくないことを示している。したがって、反応動力学は実際には半連続的である。つまり、連続的な発熱は主に加熱段階で発生する。
【0211】
この連続反応の長期的な動力学は、温度信号の自己相関関数の周波数スペクトルを構築することによって分析された。図10は、半連続反応開始前の20分間の動作温度状況の最初の部分のこのスペクトルと、半連続発熱反応の持続時間のスペクトルを示している。図10の上部には、動作温度状況の開始時の過渡期間が除外されているにもかかわらず、自己相関のピークがそれほど鋭くない。これは、部分的に初期動作温度状況の残りの過渡現象によって、部分的に初期段階での温度爆発によって引き起こされる場合がある。
【0212】
連続反応部分は、非常に鋭い自己相関ピークを示し、高周波ノイズがない。加熱プログラムは温度フィードバックを介して制御されるため、このデータは、反応動力学が高度に秩序化されており、サイクル間でほぼ一定に保たれていることを証明している。反応速度をかかる一定値に調節する反応制御パラメータがあってもよい。理論に束縛されるものではないが、溶融相へのニッケルの流入速度はかかる制御パラメータである場合がある。要約すると、ニッケル燃料反応器の発熱核反応は電子伝達性であるように見えることを示した。初期段階では、それはパルスプロセスである可能性があり、その後、高度に制御可能である場合がある連続反応プロセスに遷移する場合がある。データから、最初の反応爆発はその後の半連続反応プロセスとは異なるプロセスであることがはっきりとわかる。
【0213】
我々の装置では、水素はLiOHの形で導入される可能性があり、大気での燃料容器の組み立ておよび密閉中にリチウム上で生成される。」
「【図5】
[図:0001426322000003.jpg]
【図6】
[図:0001426322000004.jpg]
続きを表示(全11行)
【図7】
[図:0001426322000005.jpg]
【図7A】
[図:0001426322000006.jpg]
【図10】
[図:0001426322000007.jpg]
」
「【0214】
実施例3:
Niを利用する本発明の一実施形態では、熱活性化された電子伝達核反応が燃料中で開始され、すなわち、電子伝達核反応が熱活性化される。Niの主な同位体の場合、考えられる発熱核反応は、二重電子捕獲または他の核との融合のいずれかである場合がある。ただし、通常のNiでは85eVの結合エネルギー準位との電子エネルギー差が大きい。リチウムまたは水素の原子分率が10%を超える、Niの高度なリチウム化相または水和相が調製される。これらの相は、85eVのイオン化エネルギー相当付近の電子エネルギー水準を持っている。反応器の1000℃以上の動作温度では、85eV水準との差が1eV以内の場合、熱爆発プロセスが発生する場合がある。次に、かかる爆発は、必要なリチウム化相が利用可能である限り、反応温度の上昇とともに局所的に増幅する。言い換えれば、「振動運動軌道」共鳴水準の失われた電子エネルギーは、光子によって化学的にアクセスできない内部電子に供給される場合がある。爆発反応中に燃料の一部が例えば0.1から0.2eVのエネルギー水準(1000から2000℃の温度)に加熱されると、熱放射スペクトルのかなりの部分が失われたエネルギー差を上回り、近接軌道への遷移が熱放射によって引き起こされる場合がある。一部の有効な発熱核反応は燃料分子を局所的に加熱するため、このプロセスは熱放射を爆発として伝播する場合がある。したがって、結果は爆発のようなパルスNi反応である。
【0215】
続きを表示(全15行)
実施例4:
使用する燃料は、9.52gのコンスタンタン合金と0.28gの金属リチウムで構成されている。温度プログラムは、反応器の温度を13時間かけて動作範囲まで上昇させ、続いて温度サイクルプログラムで構成された。1240から1300℃で定電力加熱を使用し、1300℃の上限温度閾値で加熱をオフにし、その後、1240℃の低温閾値で定電力加熱が再びオンになった。温度サイクル中、燃料は、溶融したLiに富む相と固体のCuおよびNiに富む相からなる2相組成を保持していることが判明した。連続反応プロセスの場合、開示されたプロセスは、使用された燃料の溶融Liに富む相と固体CuおよびNiに富む相との間の相境界を含むことが判明した。これらの2つの相間のフェルミ準位の差は6から7Vである。CuとNiは金属環境で+2に帯電しているため、溶融中に溶融相-固相境界を越えるイオンは平均で12から14eV増加する。溶融相のイオンと衝撃を与えると、生成される制動放射スペクトルは少なくとも10eVに及ぶと理解されている。したがって、近くのNi、Cu、またはLiイオンの一部の電子は、近接した「振動運動軌道」に遷移すると理解され、吸収された制動放射光子が失われたエネルギーを提供して、この遷移を可能にする。理論に束縛されるものではないが、この光子吸収の際に、いくつかの電子は85eVのイオン化エネルギーに相当するエネルギー水準を持っていると考えられている。コンスタンタン合金は1250から1300℃の連続溶融温度範囲を有するため、1250から1300℃の加熱段階でのイオンの連続加速は、加熱段階での見かけ上一定の反応力を説明すると理解される。冷却段階では、同様のイオン加速プロセスはないと理解されている。この差は、1300から1250℃の冷却段階で観察されたほぼゼロの反応力に対応することがわかる。
【0216】
我々の装置では、水素はLiOHの形で導入される可能性があり、大気での燃料容器の組み立ておよび密閉中にリチウム上で生成される。
【0217】
実施例5:
Li-Ni-Cu実験では、使用したコンスタンタン合金の最低融点に対応する1200℃の限度から開始する反応が観察される(図4を参照)。このLi-Ni-Alの実験では、1350℃の温度限度から開始する反応が観察される(図11に示すように)。これは、ニッケルに富むニッケル-アルミニウム合金内の最低融点相であるAlNi3相の融点温度に対応する。約1200℃を超える燃料は、温度が上昇している間、電磁ノイズを伴う。多くの熱電対で感知された電磁妨害が記録されたが、実際の反応信号に起因するものではなく、おそらく、かかるノイズ生成事象の兆候である。
【0218】
減速するエネルギー性のイオンまたは電子は、その軌道に沿って励起電子を生成すると理解されている。つまり、熱電子との1keVを超えるエネルギー衝突により、励起電子が生成され、一部の原子核の周囲に高度に局在化する場合がある。金属の破壊は、エネルギー性の電子または中性子を生成すると理解されている。両種類の粒子放出は、電子伝達連鎖反応を開始すると理解されている。連鎖反応の開始は、破壊の発生によって引き起こされると理解されている。図4は、熱電対の指示値に電磁特性がノイズとして現れる非発熱破壊事象と、温度ジャンプとして現れる実際の発熱反応特性の違いを示している。これらの前駆体事象の非発熱性は、温度上昇の一定の勾配から見ることができる。これらの前駆体事象は、溶融リチウムの存在下でコンスタンタン合金を加熱しているときに、温度が1200℃の閾値を超えて上昇したときに発生する。
【0219】
我々の装置では、水素はLiOHの形で導入される可能性があり、大気での燃料容器の組み立ておよび密閉中にリチウム上で生成される。」
「【図4】
[図:0001426322000008.jpg]
」

【0220】

実施例6:

溶接されたステンレス鋼の容器に封入されたリチウム-ニッケル-アルミニウム燃料組成物も調査した。おおよそのLi:Ni:Al原子組成は1:10:1だった。図11は、燃料容器(上の線)と反応器の端(中央の曲線)での温度変化と、加熱力の変化(下の曲線)を示している。横軸は実験経過時間(秒)を示している。遅い温度上昇の後、図の左端は、1350℃の一定温度プログラムの開始に対応する。燃料容器の熱電対は、温度フィードバック制御に使用された。当初、反応器が加熱から目標温度の維持に遷移するにつれて、加熱力は徐々に低下した。最初の垂直の破線は最初の反応の兆候を示しており、加熱力を下げながら反応器の温度をわずかに上げる。次の垂直の破線は、2番目の反応の兆候を示している。これにより、反応器の温度がさらに上昇し、加熱力がさらに速く低下する。加熱力の低下は、反応器の端の温度の低下によって裏付けられる。右端の破線の直後に暴走反応が発生し、ステンレス鋼容器の大部分が溶けて電熱線が破壊された。このリチウム-ニッケル-アルミニウム実験は、この例で有効燃料成分がニッケルおよび/またはリチウムであることを示している。

【0221】

次の例では、上記の電子遷移プロセスに基づいて、連続的なエネルギー生成が観察されたそれらの実験装置での原子間の衝突を分析する。Ni-Li相図の分析により、Niが10から15原子%までのLi合金が明らかになり、それを超えると、Niに富む相とLiに富む相の2つの非混和性相が存在する。同様に、Cu-Li相図は、CuのLiとの合金化能力が非常に低いことを示している。したがって、Li-Ni-Cuを燃料とする実験では、溶融したLiに富む相と固体のCu/Niに富む相の間に相境界が存在する場合がある。これらの2つの相間のフェルミ準位の差は~5から~7Vと推定される。図13は、この電子構造と、溶融中の加速境界領域への陽イオンの流入を示している。CuとNiは金属環境で+2帯電しているため、溶融プロセス中に溶融相-固相境界を越えるイオンは、これら2つの相間の電場によって加速され、平均で~10から~14eV増加する場合がある。その後の溶融相でのイオンとの衝突により、一部の内部電子が電子と原子核に近接した「振動運動軌道」に遷移できる状態が発生する場合がある。言い換えれば、これらの加速されたイオンの運動エネルギーの一部は、高度に局在化されたおよび/または近接した電子と原子核の近接軌道への電子遷移のための失われた電子エネルギーを提供し得る。

【0222】

理論に束縛されるものではないが、コンスタンティン合金は~1250から~1300℃の間の連続溶融温度範囲を持っているため、加熱段階でのイオンの連続加速は、加熱段階で明らかに一定の反応力を説明する場合がある。冷却段階では、同様のイオン加速プロセスは見つからなかった。この差は、冷却段階で観測されたほぼゼロの反応力に対応する。」

「【図11】
[図:0001426322000009.jpg]
【図13】
[図:0001426322000010.jpg]
」

(2) 本願発明における核反応並びに本件軌道及び本件軌道材料について

前記(1)で摘記した本願の発明の詳細な説明等の記載によれば、本願発明における核反応並びに本件軌道及び本件軌道材料は、次のように理解される。

ア 本願発明における核反応は、電子伝達核反応であり、電子伝達核反応は、燃料中の核の周りに、準安定軌道であって、高度に局在化した電子軌道である電子伝達核反応促進軌道を利用するものであり(【0005】・【0084】・【0088】)、電子伝達核反応促進軌道は核反応を触媒、強化、促進するものである(【0008】・【0012】・【0031】・【0088】・【0105】)。

イ 本願発明の核反応は、典型的には核二重電子捕獲反応であり(【0006】・【0031】・【0046】・【0047】・【0052】・【0057】・【0065】・【0087】・【0088】・【0094】)、核反応用の燃料は、典型的には、58Ni含有燃料や6Li-7Li燃料混合物であり(【0009】・【0052】・【0087】・【0094】)、実施例において反応性核物質(本願発明における第二の材料)として用いられているのはNi又はLiのみである(【0204】・【0205】)。

ウ 電子伝達核反応促進軌道は、s、p、d、f軌道などの通常の原子軌道とそれらの混成の間の相互作用よりも強い電子と原子核の相互作用を持ち、狭い領域にある電子軌道であり、高度に局在化(s、p、d、f軌道などの「通常の」原子軌道およびそれらの混成よりも狭い領域に電子軌道確率があること(【0040】))した準安定で近接した電子と原子核(10ピコメートル未満の平均距離で原子核の周りを周回する電子として定義される(【0048】・【0136】))の電子軌道であり(【0031】)、1H核で80-81eV、2H核で35eV、7Li核で~150eVの合計電子エネルギーを持つ(【0158】・【0160】)。すなわち、本願発明における本件軌道とは、電子伝達核反応促進軌道を意味する。

エ 電子伝達核反応促進軌道可能材料は、電子伝達核反応促進軌道を一定期間形成および/または維持することができる材料である(【0032】・【0111】)。すなわち、本願発明における本件軌道材料とは、電子伝達核反応促進軌道可能材料を意味し、典型的には1H,2H,3Hである(【0032】・【0084】・【0108】・【0111】・【0158】)。

オ 温度サイクルにより生成される固液相変化により、連鎖反応を開始するエネルギー性の電子が効率的に生成される(【0077】・【0079】・【0087】・【0094】)。

(3) 本願発明の核反応及び本件軌道に関する本願出願時の技術常識

本願発明の本件軌道及び核反応について、次の事項は本願出願時の技術常識であると認められる。参考として、当該事項が技術常識であることを裏付ける本願の発明の詳細な説明の記載がある場合は、その段落番号を括弧内に示す。

ア 本件軌道は、本願出願時には知られておらず(【0157】)、したがって、本件軌道が核反応を触媒、強化、促進することも知られていなかった。

イ 本願発明の核反応の典型例である核二重電子捕獲反応は、反応確率が非常に小さいため観測がきわめて難しく、発明の詳細な説明で核二重電子捕獲反応用の燃料とされている58Niでは本願出願前に観測されてはいない。また、本願発明の核反応用の燃料の典型例である58Ni、6Li、7Liはいずれも安定同位体である。

(4) 本願発明における本件軌道材料を含む燃料による核反応の実施可能要件についての検討

ア 本願の発明の詳細な説明の記載が本願発明について実施可能要件を満たすために必要な事項

(ア) 前記(1)及び(2)によれば、本願発明の技術的意義は、化石燃料ベースのエネルギー源の将来的な代替のための新エネルギー技術としての原子力技術について、これまで、核分裂ベースの技術である重核の中性子媒介連鎖反応のみが工業的に開発されてきたところ、核分裂ベースの技術と同様のエネルギー及び電力密度を提供するが、本質的に放射能のない反応器設計を可能にすることを解決すべき課題として(【0002】・【0003】)、電子伝達核反応促進軌道である本件軌道を利用して、核反応、典型的には核二重電子捕獲反応を実現できる燃料を提供することであると認められる(前記(2))。

このような技術的意義をもつ本願発明は、本件軌道を「一定時間の間、形成および/または維持することができる」本件軌道材料を含む「核反応用の燃料」を発明特定事項としている。そうすると、本願の発明の詳細な説明の記載が本願発明について実施可能要件を満たすというためには、本願の発明の詳細な説明の記載及び本願出願時の技術常識に基づいて、当業者が、本件軌道材料を含む燃料によって、核反応を実施できることが必要であるといえる。

(イ) しかるに、前記(3)アで示した本願出願時の技術常識のとおり、本件軌道は、本願出願時には知られていなかったのであり、このことは、本願出願時には本件軌道は観測されておらず、したがって、本願出願時には本件軌道材料が存在すること自体公知とはいえないことを意味する。

(ウ) また、本願発明の属する核物理学の技術分野においては、前記(3)イで示したように、本願発明の核反応の典型例である核二重電子捕獲反応は、反応確率が非常に小さいため観測がきわめて難しく、発明の詳細な説明で核二重電子捕獲反応用の燃料とされている58Niでは観測されていないこと、また、核反応用の燃料の典型例である58Ni、6Li、7Liはいずれも安定同位体であることが本願出願時の技術常識である。

(エ) 前記(イ)及び(ウ)を勘案すると、本願出願時の核物理学の技術常識からは、本件軌道材料を含む燃料によって、核反応を実施できること、すなわち、本件軌道を利用して核反応を触媒、強化、促進することにより、典型的には安定同位体である58Ni、6Li、7Liの核反応、典型的には核(二重)電子捕獲反応を実現できるとは考え難いといえる。

(オ) そうすると、当業者が発明の詳細な説明の記載及び本願出願時の技術常識に基づいて、本件軌道材料を含む燃料によって核反応を実施することができるというためには、単に理論的な考察によりその実現可能性を示すのみでは足りず、本件軌道材料を含む燃料によって核反応を実現できることを実験的に示す必要があるというべきである。

イ 実験的な裏付けと具体的な条件の記載について

そこで、本願の発明の詳細な説明の記載をみると、当該記載には、実際に本件軌道材料を含む燃料によって核反応を実施できることが実験的に示されていない。

すなわち、実施例1(【0206】~【0207】)においては、無線周波数信号の生成が検出され、無線周波数電力スペクトルは、予想されるエネルギー性の電子の減速の兆候である旨が記載されているが、無線周波数電力スペクトル等の具体的な測定結果が示されていないため、これが電子の減速の兆候であるとする根拠が不十分であるし、仮にこれが電子の減速の兆候であったとしても、これがただちに核反応(特に、核二重電子捕獲反応)や本件軌道の形成を裏付けるものともいえない。また、ガイガー=ミュラー計数管が、バックグラウンドの40倍の放射水準を示し、この指示値は、電子伝達核連鎖反応によるエネルギー性の電子の増殖を確認する旨も記載されているが、やはり具体的な測定結果は示されておらず、これが電子伝達核連鎖反応によるエネルギー性の電子の増殖であるとする根拠が不明であるし、やはり核反応(特に、核二重電子捕獲反応)や本件軌道の形成についての実験的な裏付けを担保するものとはいえない。

また、実施例2(【0208】~【0213】・【図5】~【図7A】・【図10】)、実施例5(【0217】~【0219】・【図4】)、実施例6(【0220】~【0222】・【図11】・【図13】)では、それぞれ発熱反応を示す実験結果が示されているようであるが、発熱反応がただちに核反応(特に、核二重電子捕獲反応)を意味するものではないことはいうまでもないし、ましてや本件軌道の形成及びこれに基づく核反応についての実験的な裏付けを担保するものとは到底いえない。

実施例3~4(【0214】~【0216】)では、何らの測定結果も示されておらず、これらの記載は核反応(特に、核二重電子捕獲反応)や本件軌道の形成についての実験的な裏付けを担保するものではない。

さらに発明の詳細な説明の他の記載を見ても、実際に核反応や本件軌道の形成が実現できることを実験的に示した記載は存在しない。

ウ 理論的な実現可能性についての記載について

本願の発明の詳細な説明の【0140】~【0160】には、減少したコンプトン波長距離スケールで、1H核の周りに準安定平衡電子軌道があることが判明した旨が記載されている。

しかしながら、この記載は、1H核の周りに準安定平衡電子軌道があることの理論的な可能性を述べるにとどまるのであって、前記アで検討したように、当業者が発明の詳細な説明の記載及び本願出願時の技術常識に基づいて、本件軌道材料を含む燃料によって、核反応を実施できることができるというためには、単に理論的な考察によりその実現可能性を示すのみでは足りないのであるから、当該記載をもって、実際に本件軌道材料を含む燃料によって、核反応を実施できることが裏付けられているとはいえない。

また、本願の発明の詳細な説明には、本件軌道である電子伝達核反応促進軌道が核反応を触媒、強化、促進する旨が記載されているが(前記(2)ア)、単にその旨記載されているにとどまるのであって、理論的な考察すらなされておらず、本件軌道が核反応を触媒、強化、促進することについては理論的な実現可能性についても合理的に示されているとはいえない。

エ 小括

以上のとおり、本件軌道材料を含む燃料によって核反応を実現できることは、本願出願時の核物理学の技術常識からは考え難いにもかかわらず、本願の発明の詳細な説明には、そのような核反応が実現したことが実験的に示されていないから、本願の発明の詳細な説明は、本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

(5) 請求人の主張について

ア 請求人は、幅広い実験結果について発明の詳細な説明で説明し、また実施例に示したとおり、核反応の発生のみならず、発熱的に核反応が起こることについて確認している旨を主張しているが、当業者が発明の詳細な説明の記載及び本願出願時の技術常識に基づいて、本件軌道材料を含む燃料によって核反応を実施することができるというためには、前記(4)アで説示したとおり、本件軌道材料を含む燃料によって核反応を実現できることを実験的に示す必要があるところ、本願の発明の詳細な説明には本件軌道材料を含む燃料によって核反応を実際に実現できることが実験的に示されていないことは、前記(4)イで検討したとおりである。

イ 請求人は、請求人とは独立した第三者であるウプサラ大学の研究グループが、請求人らの実験を繰り返し、本願発明を実施するとともに、本願で開示している結果を検証し、本願発明の燃料によって、核反応による過剰熱とRF放射の両方が発生されることを確認した旨を主張しているが、本願出願時には、存在すること自体公知ではなく、観測もされていない本件軌道が、核反応を触媒、強化、促進することを実験的に示すことが本願出願時の技術常識に基づいて補えるとは到底考えられないことに照らせば、この点についての発明の詳細な説明の記載の不足を、他の実験結果によって補うことにより、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであると主張したとしても、拒絶理由は解消しない。さらにいえば、請求人が審判請求書と共に提出したウプサラ大学での実験レポートをみても、本件軌道材料を含む燃料によって核反応を実際に実現できること(特に、本件軌道を形成すること)の実験的な裏付けは記載されていない。

したがって、請求人の主張を採用することはできない。

(6) 小括

したがって、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

3 当審の判断のまとめ

以上検討のとおり、本願は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。

第5 むすび

以上のとおり、本願は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2023-017866

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