特許拒絶査定不服審判
2023-016057
診断可能化データを識別するためのシステム、方法、及びコンピュータプログラム製品
- 審判番号
- 2023-016057
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-175699外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年09月22日
- 審決日
- 2024年08月06日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .121-Z (G16H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-175699「診断可能化データを識別するためのシステム、方法、及びコンピュータプログラム製品」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 1月14日出願公開、特開2022- 9600〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)5月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理日 2016年(平成28年)5月11日 米国(US))を国際出願日とする特願2018-559774号の一部を令和3年10月27日に新たな特許出願としたものであって、同日付で手続補正書が提出され、令和4年11月22日付けで拒絶理由が通知され、令和5年2月24日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年5月18日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対して同年9月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出され、同年11月9日に手続補正書(方式)が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1~19に係る発明は、令和5年9月22日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~19に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである(A、B等などの符号は当審が付した。)。なお、同手続補正書による補正は、請求項4を引用する請求項6、7、及び請求項13を引用する請求項15、16に記載の「前記生理学測定」なる記載を、それぞれ引用元である請求項4、13に記載の「非瞬間的生理学的測定」なる記載に合わせて、「前記非瞬間的生理学的測定」との記載に補正するものであって不明瞭な記載の釈明を目的とするものであり、請求項1は補正されていない。
「(A)医療実務者ではないユーザによって患者の病状を診断するためのシステムであって、
(B)前記患者の身体へ医療検査を実行するために用いられるように構成されたセンサ、及び
(C-1)前記患者の身体の前記医療検査の間に取得された生理学的データを取得し、
(C-2)前記患者の前記病状の前記診断を可能にする診断可能化データであるデータの存在を決定するために前記取得された生理学的データを分析し、かつ
(C-3)存在する場合に少なくとも前記診断可能化データを診断エンティティに提供し、それによって少なくとも前記診断可能化データに基づいて該診断エンティティが前記患者の前記病状を診断することを可能にする、
(C-4)ように構成された、前記センサと通信するプロセッサ、
を含むことを特徴とするシステム。」
第3 原査定の拒絶の理由
本願発明に係る原査定の拒絶理由の概要は、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるか、または、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特表2014-518642号公報
第4 当審の判断
1 引用文献1の記載事項
原査定に引用された上記引用文献1(特表2014-518642号公報)には、以下の事項が記載されている(下線は当審が付した)。
(1)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学検査の分野に関し、より詳細には、自動の及び自己ガイドされる医学検査の分野に関する。」
(2)「【0007】
したがって、当該技術分野では、自動の及び自己ガイドされる医学検査を行うことによって訓練された人の負荷を減らし及び利用可能性を増加させることになる新しいシステム及び方法に対する必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の主題の一態様によれば、少なくとも1つの医学検査を行うように構成されるハンドヘルド診断デバイスであって、少なくとも1つの診断センサと、プロセッサとを備え、少なくとも1つの医学検査のうちのそれぞれに関して、プロセッサが、予め定義された参照データに基づいてユーザに医学的データの収集ガイダンスを提供し、患者の医学的データを収集するために少なくとも1つの診断センサを作動させるように構成される、ハンドヘルド診断デバイスが提供される。」
(3)「【0076】
これを念頭において、本開示の主題に係る自動及び自己ガイド式医学検査を行うためのシステムの一例を概略的に例証するブロック図である図1に注目する。ユーザ102と患者103は患者の場所100に位置することが理解できる。ユーザ102は、幾つかの場合、医学検査が必要な患者103である可能性がある(このような場合、ユーザ102と患者103が別個のエンティティとして図面に示されていても、彼らは実際には同じエンティティである)。他の場合、ユーザ102は、患者103の医学検査を行うことになる人物である可能性がある。
【0077】
医学検査を行う目的で、ユーザ102は、さらに詳しく後述するように診断デバイス104を作動させる。幾つかの場合、ユーザ102はまた、さらに詳しく後述するように患者のワークステーション114を作動させる。患者のワークステーション114は、パーソナルコンピュータ、ポータブルコンピュータ、セルラーハンドセット、又は例えば、特に該目的用に構成することができるコンピュータ及び/又は装置を含む適切な処理能力をもつ装置を含むあらゆるコンピュータとすることができる。幾つかの場合、患者のワークステーション114は、診断デバイス104内に組み込むことができることに注目すべきである。診断デバイス104は、少なくとも1つのプロセッサ106(例えば、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)、マイクロコントローラ、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)など)、及びメモリユニット110(例えばROM、ハードディスクなど)を備える(又は他の場合には関連付けられる)。プロセッサ106は、指示を受信し、診断デバイス104のコンポーネント及び動作を制御するように構成される。」
(4)「【0079】
診断デバイス104は、さらに詳しく後述するように、種々のデータを収集するように構成することができる。収集したデータは、(診断デバイス104から直接又は患者のワークステーション114を通じて)訓練された人の場所120に位置する訓練された人のワークステーション122に及び/又は中央システム130に伝送することができる。中央システム130及び訓練された人のワークステーション122は、パーソナルコンピュータ、ポータブルコンピュータ、セルラーハンドセット、又は例えば、特に該目的用に構成することができるコンピュータ及び/又は装置を含む適切な処理能力をもつ装置を含むあらゆるコンピュータとすることができる。収集したデータは、例えばインターネット116を介して伝送することができる。データは、セルラーネットワーク、VPN、LANなどのような他の公知の代替的通信手段を用いながら伝送することができることに注目すべきである。」
(5)「【0082】
伝送されたデータが訓練された人のワークステーション122で受信されるときに、データは、訓練された人のワークステーション122に接続可能な訓練された人のデータリポジトリ123に保存することができる。訓練された人の場所120にいる訓練された人124(例えば、医学的データを収集する及び/又は分析するノウハウ及びスキルをもつあらゆる他の人を含む、医師、看護師、医学者など)は、例えば、訓練された人のワークステーション122を用いて収集したデータを検索し及びレビューすることができる。患者のワークステーション114、訓練された人のワークステーション122、及び中央システム130は、ディスプレイ(例えばLCD画面)と、キーボード又はあらゆる他の適切な入力/出力デバイスとを含むことができることに注目すべきである。幾つかの場合、訓練された人124は、例えば、データを患者のワークステーション114に伝送して戻すことで、ユーザ102にフィードバックを提供することができる。こうしたフィードバックは、例えば、受信したデータの分析、より多くのデータを受信することへの要求、医療処置指示、さらなる検査への案内などを含むことができる。代替的に又は加えて、訓練された人124は、フィードバックデータを中央システム130に伝送することができ、中央システム130は次に、フィードバックデータを患者のワークステーション114に伝送することができる(例えば、インターネット、セルラーネットワークなどを介して)。」
【0083】
図2は、本開示の主題に係る自動及び自己ガイド式医学検査を行うように構成される診断デバイスの一例を概略的に例証するブロック図である。診断デバイス104は、とりわけ、診断センサモジュール202、ガイドモジュール206、検査論理モジュール208、健診プランリポジトリ210、及びデータリポジトリ216を備えることができる。診断デバイスは、ナビゲーションモジュール204、読取及び検証論理モジュール212、及び校正論理モジュール214をさらに備えることができる。」
(6)「【0090】
診断デバイス104が、例えば患者に特異的な健診プランによって示される場合の患者103の身体(又はその特定の部分)に対する所望の空間配置に到達すると、検査論理モジュール208は、患者103の医学的データを収集するために読取及び検証論理モジュール212を用いるように構成することができる。診断デバイス104が患者103の身体(又はその特定の部分)に対する所望の空間配置に到達すると、読取及び検証モジュール212は、とりわけ図14を参照してさらに詳しく後述するように、患者103の医学的データを収集するときに、診断デバイス104が患者103の身体(又はその特定の部分)に対する所望の空間配置に位置することを検証するように構成することができる。読取及び検証モジュール212はさらに、とりわけ図14を参照してさらに詳しく後述するように、診断センサモジュール202に患者103の医学的データを収集する準備をすること、及びこうした医学的データの収集を行うことを指示するように構成することができる。患者の医学的データの収集後に、読取及び検証モジュール212は、とりわけ図14を参照してさらに詳しく後述するように、収集したデータが予め定義された基準(例えば、必要な読取長さ、読取データ閾値など)を満たすことを検証するように構成することができる。収集したデータが予め定義された基準を満たさない場合、診断デバイス104は、幾つかの場合、診断デバイス104を患者103の身体(又はその特定の部分)に対する所望の空間配置にもっていくために、その必要な再位置決め及び再配向を行うことをユーザ102に指示するように構成することができる。診断デバイス104の再位置決め及び再配向後に、読取及び検証論理モジュール212は、とりわけ図14を参照してさらに詳しく後述するように、患者103の医学的データの収集を再試行するように構成することができる。
【0091】
診断デバイス104はさらに、患者103の医学的データを収集するように構成することができる診断センサモジュール202を用いるように構成することができる。診断センサモジュール202は、患者103の種々の医学的データを収集するのに用いられる種々のセンサの作動を担当することができる。こうした患者103の医学的データは、例えば訓練された人124による診断に用いることができる。診断センサモジュール202はさらに、とりわけ図3を参照して後述される。」
(7)「【0119】
幾つかの場合、診断デバイス104のナビゲーションは、如何なる患者に特異的な参照データも使用せずに、しかし一般的な参照データだけを用いて行うことができることに注目すべきである。このような場合、診断デバイス104は、患者の医学的データを連続的に又は周期的に収集し、収集した医学的データが、該収集したデータが要求されたデータであることを示す或る基準を満たすかどうかを確認するために監視するように構成することができる。例えば、診断デバイス104は、参照として鼓膜(患者に特異的ではない)のような典型的な器官の予め定義された一般的な画像を用いることができる。この場合、例えば、診断デバイス104は、収集した患者の内耳画像を連続的に分析し、読取値を一般的な参照画像とマッチングさせることを試みるように構成することができる。マッチング基準は、例えば、鼓膜の円形構造体のような器官に特有の画像特徴、及び周囲画像に比べたその画像コントラストとすることができる。一般的な器官読取値参照に関する別の例は、ヒトの心臓の一般的な音波とすることができ、この場合、例えば、マッチング基準は、ペース、振幅、ボリュームなどのような音波に特有の構造及び特別な特徴とすることができる。」
(8)「【0157】
ユーザ102が収集した医学的データを保存することを選ぶ又は読取値の収集プロセスがOKであった場合、診断デバイス104は、収集した医学的データを(例えば、データリポジトリ216、患者及び健診プランリポジトリ136、訓練された人のデータリポジトリ123、又はその上に患者データが格納される、診断デバイス104に作動的に接続されるあらゆる他の場所のうちの1つ又は複数に)保存するように構成することができる(ステップ1014)。」
(9)「図1
[図:0001418852000001.jpg]
」
(10)「図2
[図:0001418852000002.jpg]
」
(11)「図14
[図:0001418852000003.jpg]
」
2 引用文献1に記載された発明
上記1によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「少なくとも1つの医学検査を行うように構成されるハンドヘルド診断デバイスであって(【0008】)、
ユーザ102は、医学検査が必要な患者103であり(【0076】)、
医学検査を行う目的で、ユーザ102は、診断デバイス104を作動させ、診断デバイス104は、少なくとも1つのプロセッサ106を備え、プロセッサ106は、診断デバイス104のコンポーネント及び動作を制御するものであって(【0077】)、
診断デバイス104は種々のデータを収集し、収集したデータは、訓練された人の場所120に位置する訓練された人のワークステーション122に伝送され(【0079】)、
伝送されたデータが訓練された人のワークステーション122で受信されるときに、データは、訓練された人のワークステーション122に接続可能な訓練された人のデータリポジトリ123に保存され、訓練された人124(医師)は、訓練された人のワークステーション122を用いて収集したデータをレビューすることができ(【0082】)、
診断デバイス104は、診断センサモジュール202、読取及び検証論理モジュール212をさらに備えており(【0083】)、
患者の医学的データの収集後に、読取及び検証モジュール212は、収集したデータが予め定義された基準(例えば、必要な読取長さ、読取データ閾値など)を満たすことを検証し、収集したデータが予め定義された基準を満たさない場合、診断デバイス104は、診断デバイス104を患者103の身体(又はその特定の部分)に対する所望の空間配置にもっていくために、その必要な再位置決め及び再配向を行うことをユーザ102に指示し(【0090】)、
診断センサモジュール202は、患者103の種々の医学的データを収集するのに用いられる種々のセンサの作動を担当し、患者103の医学的データは、訓練された人124による診断に用いられ(【0091】)、
診断デバイス104は、収集した医学的データが、該収集したデータが要求されたデータであることを示す或る基準を満たすかどうかを確認するために、収集した患者の内耳画像を連続的に分析し、読取値を一般的な参照画像とマッチングさせることを試み、マッチング基準は、鼓膜の円形構造体のような器官に特有の画像特徴、及び周囲画像に比べたその画像コントラストであり、一般的な器官読取値参照に関する別の例は、ヒトの心臓の一般的な音波であり、この場合、マッチング基準は、ペース、振幅、ボリュームなどのような音波に特有の構造及び特別な特徴であり(【0119】)、
読取値の収集プロセスがOKであった場合、診断デバイス104は、収集した医学的データを、訓練された人のデータリポジトリ123に保存する(【0157】)、
ハンドヘルド診断デバイス。」
3 対比
(1)「(A)医療実務者ではないユーザによって患者の病状を診断するためのシステム」について
引用発明の「少なくとも1つの医学検査を行うように構成されるハンドヘルド診断デバイス」は、「ユーザ102は、医学検査が必要な患者103であり、医学検査を行う目的で、ユーザ102は、診断デバイス104を作動させ」るものであって、「種々のデータを収集し、収集したデータは、訓練された人の場所120に位置する訓練された人のワークステーション122に伝送され、伝送されたデータが訓練された人のワークステーション122で受信されるときに、データは、訓練された人のワークステーション122に接続可能な訓練された人のデータリポジトリ123に保存され、訓練された人124(医師)は、訓練された人のワークステーション122を用いて収集したデータをレビューすることができ」、「患者103の医学的データは、訓練された人124による診断に用いられ」るものである。
すなわち、引用発明の「少なくとも1つの医学検査を行うように構成されるハンドヘルド診断デバイス」は、患者の医学検査を行うために種々の医学的データを収集するものであって、収集された医学的データは、訓練された人の場所120に位置するワークステーション122に伝送され、訓練された人124(医師)による診断に用いられるものであるから、患者の病状を診断するために用いられるシステムであるといえる。
よって、引用発明の「少なくとも1つの医学検査を行うように構成されるハンドヘルド診断デバイス」は、下記相違点1を除いて、本願発明の「患者の病状を診断するためのシステム」に相当する。
(2)「(B)前記患者の身体へ医療検査を実行するために用いられるように構成されたセンサ」について
引用発明の「診断デバイス104」は、「診断センサモジュール202」「をさらに備えており」、「診断センサモジュール202は、患者103の種々の医学的データを収集するのに用いられる種々のセンサの作動を担当」するものである。
ここで、上記「種々のセンサ」は、「患者103の種々の医学的データを収集するのに用いられる」ものであるから、患者103の身体へ医療検査(医療検査)を実行するために用いられるものといえ、また、「診断デバイス104」が備える「診断センサモジュール202」が「種々のセンサの作動を担当する」ものであるから、上記「種々のセンサ」は「診断デバイス104」に含まれていることは明らかである。
よって、上記(1)の検討も踏まえると、本願発明と引用発明とは、「前記患者の身体へ医療検査を実行するために用いられるように構成されたセンサ」「を含む」「システム」である点で一致する。
(3)「(C―1)前記患者の身体の前記医療検査の間に取得された生理学的データを取得」する「(C-4)ように構成された、前記センサと通信するプロセッサ」について
上記(1)で検討したとおり、引用発明の「診断デバイス104」は、医療検査を行うために「種々の医学的データ」を収集するものであるところ、「診断デバイス104は、少なくとも1つのプロセッサ106を備え、プロセッサ106は、診断デバイス104のコンポーネント及び動作を制御するもの」であるから、上記「プロセッサ106」は、医療検査の間に「種々の医学的データ」を収集するように診断デバイス104を制御するものであることは明らかであって、本願発明の「プロセッサ」に相当する。
さらに、引用発明の「プロセッサ106」は、前述したとおり「診断デバイス104のコンポーネント及び動作を制御するもの」であるから、「種々の医学的データ」を収集するための制御を行うに際し、データを収集する「種々のセンサ」と通信して制御していることも明らかであって、かつ、上記「プロセッサ106」は、「診断デバイス104」が「備え」るものであるから、当該「診断デバイス104」に含まれていることも明らかである。
そして、引用発明の「種々の医学的データ」は、本願発明の「生理学的データ」に相当するものであるから、上記(1)、(2)の検討も踏まえると、本願発明と引用発明とは、「前記患者の身体の前記医療検査の間に取得された生理学的データを取得」する「ように構成された、前記センサと通信するプロセッサ」「を含む」「システム」である点で一致する。
(4)「(C-2)前記患者の前記病状の前記診断を可能にする診断可能化データであるデータの存在を決定するために前記取得された生理学的データを分析し」について
引用発明の「診断デバイス104」は、「読取及び検証論理モジュール212をさらに備えており」、「患者の医学的データの収集後に、読取及び検証モジュール212は、収集したデータが予め定義された基準(例えば、必要な読取長さ、読取データ閾値など)を満たすことを検証」するものである。
ここで、「収集したデータが予め定義された基準(例えば、必要な読取長さ、読取データ閾値など)を満たすことを検証」することは、収集したデータが「予め定義された基準」を満たす所定のデータであることを検証することであるから、少なくとも、「予め定義された基準」を満たす所定のデータが収集したデータに存在するか否かを決定するために生理学的データを分析しているといえる。
そして、上記(1)で検討したとおり、引用発明では、収集した生理学的データは、最終的に訓練された人124(医師)による診断に用いられるものであるから、引用発明における「予め定義された基準」を満たす所定のデータは、診断を行うために必要な所定のデータであるということができ、そのデータの存在を決定するために生理学的データを分析することは、患者の症状の診断を行うために行っていることは明らかである。
さらに、引用発明は、「診断デバイス104は、少なくとも1つのプロセッサ106を備え、プロセッサ106は、診断デバイス104のコンポーネント及び動作を制御するもの」であるから、上記分析は「プロセッサ106」が行っていることは明らかである。
一方、本願発明における「診断を可能にする診断可能化データ」も、引用発明における「予め定義された基準」を満たす所定のデータと同様に、少なくとも診断を行うためには必要とされるデータであるから、診断を行うために必要な所定のデータであるということができる。
以上を踏まえると、本願発明と引用発明とは、下記の相違点2を除いて、「前記患者の前記病状の前記診断を行うために必要な所定のデータの存在を決定するために前記取得された生理学的データを分析」する「プロセッサ」を備えている点で一致している。
(5)「(C-3)存在する場合に少なくとも前記診断可能化データを診断エンティティに提供し、それによって少なくとも前記診断可能化データに基づいて該診断エンティティが前記患者の前記病状を診断することを可能にする」について
上記(1)で検討したとおり、引用発明では、収集された生理学的データは、最終的に「訓練された人124(医師)」による診断に用いられるものであるから、引用発明における「予め定義された基準」を満たす所定のデータは、「訓練された人124(医師)」に提供され、それによって少なくとも前記所定のデータに基づいて「訓練された人124(医師)」が患者の病状を診断することを可能にしているといえる。
さらに、引用発明は、「プロセッサ106は、診断デバイス104のコンポーネント及び動作を制御するもの」であるから、上記所定のデータを診断デバイス104から「訓練された人124(医師)」に提供することによって診断を可能にしているも「プロセッサ106」であるといえる。
そして、引用発明の上記「訓練された人124(医師)」は、本願発明の「診断エンティティ」に相当するから、上記(4)の検討も踏まえると、本願発明と引用発明とは、下記の相違点2を除いて、「(診断を行うために必要な所定のデータが)存在する場合に少なくとも前記所定のデータを診断エンティティに提供し、それによって少なくとも前記所定のデータに基づいて該診断エンティティが前記患者の前記病状を診断することを可能にする」「プロセッサ」を備えている点で一致している。
(6)一致点及び相違点
上記(1)~(5)の検討を踏まえると、本願発明と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
[一致点]
患者の病状を診断するためのシステムであって、
前記患者の身体へ医療検査を実行するために用いられるように構成されたセンサ、及び、
前記患者の身体の前記医療検査の間に取得された生理学的データを取得し、
前記患者の前記病状の前記診断を行うために必要な所定のデータの存在を決定するために前記取得された生理学的データを分析し、かつ、
存在する場合に少なくとも前記所定のデータを診断エンティティに提供し、それによって少なくとも前記所定のデータに基づいて該診断エンティティが前記患者の前記病状を診断することを可能にする、
ように構成された、前記センサと通信するプロセッサ、
を含むシステム。
[相違点1]
患者の症状を診断する主体に関して、本願発明は、「医療実務者ではないユーザによって患者の病状を診断するためのシステムであって」とされていることから、診断する主体は「医療実務者ではないユーザ」であると解されるのに対して、引用発明は、診断する主体が「訓練された人124」(医師)である点。
[相違点2]
診断を行うために必要な所定のデータに関して、本願発明は、「診断を可能にする診断可能化データ」であるのに対して、引用発明は「予め定義された基準(例えば、必要な読取長さ、読取データ閾値など)を満たす」データである点。
4 判断
(1)相違点1について
本願発明は、構成要件(C-3)において、「前記診断可能化データに基づいて該診断エンティティが前記患者の前記病状を診断する」とされていることから、実際に診断を行う主体は「診断エンティティ」であると解するのが相当であり、このような解釈は、本願明細書の段落【0196】に、「診断可能化データは、医療実務者(例えば、医師、技師)のような診断エンティティ又は生理学的データに基づいて病状を診断するように構成されたコンピュータ処理システムが患者の病状の診断を実施することを可能にするデータと考えられる。」(下線は当審が付与)と記載されていることとも整合するものである。
また、システムを作動させるユーザに関しては、本願明細書の段落【0197】に、「システム200を作動させるユーザは、必ずしも医療実務者であるとは限らず、又は生理学的データを診断する権限が付与されていないか又は診断することができない医療実務者(例えば、看護師)であり、少なくとも一部の場合に、ユーザは、生理学的データを診断する権限が付与された又は診断することができる医療実務者ではないことに注意されたい。」(下線は当審が付与)と記載されていることから、システムを作動させるユーザは「医療実務者ではないユーザ」であることもありうるものと解される。
してみると、本願発明における「医療実務者ではないユーザによって患者の病状を診断するためのシステム」との特定事項は、同発明における「前記診断可能化データに基づいて該診断エンティティが前記患者の前記病状を診断する」との特定事項、並びに、本願明細書における上記記載との整合性に鑑みると、正確には、「医療実務者ではないユーザ」によってシステムが作動され、当該システムの作動によって収集された生理学的データに存在する診断可能化データに基づいて、「診断エンティティ」が診断することを意味していると解するのが相当である。
一方、引用発明は、「ユーザ102は、医学検査が必要な患者103であり」、「ユーザ102は、診断デバイス104を作動させ」、「患者103の医学的データは、訓練された人124による診断に用いられ」るものである。ここで、患者103であるユーザ102は、通常、医療実務者ではないから、引用発明は、医療実務者ではないユーザが診断デバイスを作動させ、収集された医学的データを訓練された人124、すなわち診断エンティティが診断するものであり、システムを作動させる主体、並びに、診断を行う主体について本願発明と差異を有するものではない。
したがって、本願発明における「医療実務者ではないユーザによって患者の病状を診断するためのシステム」との特定事項は、前述した解釈に基づけば、引用発明との差異をもたらすものではないから、上記相違点1は、実質的に相違点ではない。
なお、仮に、本願発明における「医療実務者ではないユーザによって患者の病状を診断するためのシステム」との特定事項を、文言どおりに、「医療実務者ではないユーザ」が主体となって「患者の病状を診断する」ものと解したとしても、収集し分析された生理学的データをいずれの者が診断するかは人為的、あるいは法律的な取り決めであって技術的な事項ではないから、診断する主体が何者であるかという点が、技術的観点において本願発明の進歩性を肯定することにはならない。
(2)相違点2について
引用発明は、「患者の医学的データの収集後に、読取及び検証モジュール212は、収集したデータが予め定義された基準(例えば、必要な読取長さ、読取データ閾値など)を満たすことを検証」するものであるが、この検証に際して、「収集した医学的データが、該収集したデータが要求されたデータであることを示す或る基準を満たすかどうかを確認するために、収集した患者の内耳画像を連続的に分析し、読取値を一般的な参照画像とマッチングさせることを試み、マッチング基準は、鼓膜の円形構造体のような器官に特有の画像特徴、及び周囲画像に比べたその画像コントラストであり、一般的な器官読取値参照に関する別の例は、ヒトの心臓の一般的な音波であり、この場合、マッチング基準は、ペース、振幅、ボリュームなどのような音波に特有の構造及び特別な特徴」とするものである。
ここで、「収集した患者の内耳画像」の分析において、「鼓膜の円形構造体のような器官に特有の画像特徴、及び周囲画像に比べたその画像コントラスト」を「一般的な参照画像」として「マッチング」することは、収集した画像に、器官(鼓膜)に特有の画像特徴や画像コントラストが存在するか否かを分析することに他ならない。
また、別の例として、「ヒトの心臓の一般的な音波であり、この場合、マッチング基準は、ペース、振幅、ボリュームなどのような音波に特有の構造及び特別な特徴」とすることは、収集した音波に、器官(心臓)に特有の音波特徴(ペース、振幅、ボリュームなど)が存在するか否かを分析することに他ならない。
そして、収集した画像、音波に、このような器官(鼓膜、心臓)に特有の画像特徴、音波特徴が存在しない場合には、当該器官に由来する生理学的データが収集できていないことを意味し、当該器官に関する診断ができないことは明らかであるから、このような器官(鼓膜、心臓)に特有の画像特徴、音波特徴が存在する生理学的データは、当該器官に関する診断を可能にするという意味において、診断可能化データであるといえる。
してみると、引用発明において、「収集したデータが予め定義された基準(例えば、必要な読取長さ、読取データ閾値など)を満たすことを検証」することは、収集したデータに診断が可能となる「診断可能化データ」が存在するか否かを分析することといえるから、引用発明の「予め定義された基準(例えば、必要な読取長さ、読取データ閾値など)を満たす」データは、実質的に本願発明の「診断を可能にする診断可能化データ」に相当する。
よって、上記相違点2は実質的に相違点ではない。
なお、仮に、引用発明の「予め定義された基準」を満たすデータは、単に、器官に特有の画像特徴、音波特徴を含むデータを意味するにすぎす、当該データをもって診断が可能であることを必ずしも保証するものではないから、本願発明の「診断を可能にする診断可能化データ」とは異なるデータであると、本願発明の「診断可能化データ」を限定的に解釈したとしても、引用発明の「予め定義された基準」を満たすデータは、医師による診断に使用するためのデータであり、かかる使用目的からして実際に診断を行うことが可能なデータを収集することは当然のことにすぎないから、「予め定義された基準」を医師による診断が可能となる基準とすることは、当業者であれば容易になし得る事項である。
(3)審判請求人の主張について
審判請求人は、令和5年11月9日に提出された手続補正書(方式)において、本願発明と引用発明との相違点について、引用文献1の段落【0119】(上記1(7))の開示は、「患者の病状の診断を可能にする診断可能化データであるデータの存在を決定するために取得された生理学的データを分析」することとは何の関係もなく、診断デバイス104を患者103の身体に対する所望の空間配置にナビゲートするための予備的な工程を記載しているに過ぎない旨主張する。
しかしながら、上記(2)で検討したとおり、引用発明において、収集した画像、音波に、器官(鼓膜、心臓)に特有の画像特徴、音波特徴が存在しない場合には、当該器官に関する診断ができないことは明らかであるから、「収集したデータが予め定義された基準(例えば、必要な読取長さ、読取データ閾値など)を満たすことを検証」することは、収集した生理学的データが診断を可能にする画像特徴、音波特徴を含んでいるか否かを検証することに他ならず、実質的に、「診断可能化データ」の存在を決定するために分析しているものである。
そして、引用発明が、収集したデータが「予め定義された基準」を満たさない場合に、診断デバイス104を患者103の身体に対する所望の空間配置にナビゲートするものであったとしても、本願発明は、診断可能化データが存在しない場合に、システムの空間配置をナビゲートすることを排除するものではないから、かかるナビゲートの有無は本願発明との対比に際して相違点になるものではない。
よって、審判請求人の上記主張は、本願発明の特定事項に基づかないものであって失当である。
むしろ、本願発明が記載された請求項1を間接的に引用する本願の請求項5には、
「前記プロセッサは、前記多値品質スコアが予め定められた閾値よりも低い時に前記生理学的データの取得を改善するための命令を前記ユーザに提供するように更に構成される」(下線は当審が付与)
と記載されており、これに関連して、本願明細書の【0282】、【0283】には、
「【0282】
ステージ560には、個人が生理学的検査の処理を修正するための命令を決定するために多値品質スコアのうちの1又は2以上を処理するステージ558が先行することができる。前の図面に対して示した例に関して、ステージ558はプロセッサ220によって実行することができる。
【0283】
例えば(ステージ558及び/又は560を参照すると)、命令は、生理学的データを収集する生理学的センサの位置決め、測定デバイス(例えば、システム200)及び/又は生理学的センサの作動パラメータ、患者が行うべき行動(例えば、呼吸を停止する、咳をする、立ち上がって向きを変えるなど)、及び環境(例えば、周囲信号/周囲光を低減する)などに関連する場合がある。UIは、測定又は測定のステージ又は部分の終了(例えば、医療検査又は医療検査がいくつかの部分を有する場合は医療検査の特定の部分の終了のような)を示す方法500の一部として使用することができる。」(下線は当審が付与)
と記載されている。
請求項5、並びに関連する段落【0282】、【0283】の上記記載に鑑みると、請求項5は、多値品質スコアが予め定められた閾値よりも低い時に(診断可能化データが存在しない場合に)、データの取得を改善するため、生理学的センサの位置決めに関連する命令、すなわち、システムの空間的配置をナビゲートする命令を提供することを包含していると解されるから、請求項5が間接的に引用する請求項1に記載された本願発明も、当然、そのようなナビゲートをするものを包含していると解すべきである。
してみると、審判請求人の相違点に関する上記主張は、本願発明の特定事項に基づかない主張であるだけでなく、そもそも本願明細書等の記載にも基づかない主張であり採用できない。
(4)作用効果について
そして、上記相違点1~2を勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
5 小括
以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むずび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-016057