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特許拒絶査定不服審判

2023-015186

可動画像記録デバイスおよびそうしたデバイスを備えた車両

審判番号
2023-015186
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-122474外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年09月08日
審決日
2025年06月02日
公報発行日
2025年11月28日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (G03B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

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特願2021-122474「可動画像記録デバイスおよびそうしたデバイスを備えた車両」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年11月25日出願公開、特開2021-182146〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2016年(平成28年)9月16日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2015年(平成27年)9月18日、オランダ。以下、この日を「優先日」という。)を国際出願日とする特願2018-514356号の一部を2021年(令和3年)7月27日に新たな出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 3年 9月 8日 :手続補正書の提出 令和 4年 8月 4日付け:拒絶理由通知書 令和 5年 2月 9日 :意見書、手続補正書の提出 同年 4月21日付け:拒絶査定 同年 9月 8日 :審判請求書、手続補正書の提出 同年11月14日付け:前置報告書 令和 6年 2月21日 :上申書の提出 同年12月26日付け:拒絶理由通知書(以下、この拒絶理由通知書に係る拒絶理由を「当審拒絶理由」という。) 令和 7年 4月 7日 :意見書、手続補正書(以下、この手続補正書による補正を「本件補正」という。)の提出 第2 本願発明の認定 本願の請求項1~28に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~28に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1の記載は以下のとおりである。 「 【請求項1】 画像記録デバイスであって、 自動車のボディ内にかつ/または前記ボディ上に少なくとも部分的に組み込まれる、ハウジングを備えた固定部分と、 少なくとも一つの光学要素を含む、キャリアを備えた可動部分であって、前記光学要素は少なくとも一つの光学センサーおよび/またはレンズユニットを備え、前記可動部分は、前記キャリアが前記ハウジングに対して少なくとも第1の位置と第2の位置との間で動作できるように、前記固定部分に対して接続されている、可動部分と、 少なくとも前記可動部分の前記キャリアを前記第1の位置と前記第2の位置との間で動作させるための、動力源を備えた調整デバイスと、 前記画像記録デバイスを作動させるための制御ユニットと、を具備し、 前記画像記録デバイスは、前記可動部分の前記第2の位置において後方に向けられる光学軸を有し、 前記制御ユニットは前記画像記録デバイスの制御のために設けられ、前記制御ユニットを用いて、少なくとも前記可動部分の前記キャリアを前記第1の位置と前記第2の位置との間で動作させることが可能であり、 前記制御ユニットを用いて、少なくとも、前記デバイスの前記少なくとも一つの光学要素の視野角を設定することが可能であり、 前記視野角は、前記自動車の中央を通って前後に垂直に伸びる、前記自動車の垂直中央長手方向平面と、前記画像記録デバイスの前記光学軸との間に含まれる角度を意味し、 水平視角および垂直視角は、前記光学要素の画像平面の境界によって囲まれるそれぞれの角度を意味する、画像記録デバイス。」 第3 当審拒絶理由について 当審拒絶理由の理由2は、以下の内容を含むものである。 本件補正前の請求項1に係る発明は、優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、又は引用文献1に記載された発明並びに引用文献2に記載された技術的事項若しくは引用文献3に記載された技術的事項に基いて優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1.独国特許出願公開第102011102773号明細書 2.特開2001-260754号公報 3.特開2003-291729号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1 (1)引用文献1に記載された事項 引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当合議体が付した。以下同様。)。なお、以下の引用文献1に関する摘記は、引用文献1の原文(ドイツ語)に基づいて当合議体が作成した訳文によるものである。ここで、原文で「ハウジング6」の意味をもつものとして表現されている部分([0031]・[0033])は、「ハウジング8」の意味であると認められるので、誤記を正して訳出してある。 「[0001]本発明は、請求項1の上位概念に記載の、自動車の後部空間を監視するための自動車用カメラシステムに関する。」 「[0030]図3は、静止位置にある運転席側ドア7内のカメラ6のハウジング8の配置を示しており、図3の上部は、運転席側ドアの表面9の一部の斜視平面図を示している。この場合、ハウジング8の表面10が運転席側ドアの表面と同一平面を成しており、この場合にも矢印FRが走行方向を示していることが分かる。図3の下部には、カメラハウジング8とハウジング内に配置されたカメラ6とを備えた、上側の斜視図に対応する、運転席ドア7の横断面が示されている。この場合、カメラハウジングの、外方に向いた表面9は、カメラ静止位置において、運転席側ドア7の表面9と同一平面を成している。」 [図:0001428500000001.jpg] 「[0031]図4は、運転席側ドア7におけるカメラ6のハウジング8の配置を作動位置で示しており、図3の上側部分は、運転席側ドア7の表面9の一部の斜視平面図を示している。図示の作動位置では、ハウジング8は、運転席ドア7内に配置された旋回軸11を中心にして外方旋回させられているので、ハウジング8内に配置されたカメラは、走行方向FRとは逆向きに後方を見ることができる。この場合、ハウジング8の表面10は、運転席側ドア7の表面9から所定の角度だけ外側に旋回されているので、運転状態においてハウジング8の流線形の配置が生じ、この配置は、僅かな風抵抗を発生する。図4の下部には、上側の斜視図に対応する、運転席側ドア7を通るカメラ対物レンズの箇所の横断面が示されており、このカメラ対物レンズは、ドア7から外方旋回されたカメラハウジング8と、このカメラハウジング内に配置されたカメラ6とを備えている。換言すれば、図4の下部における観察方向は、走行方向FRに相当する。」 [図:0001428500000002.jpg] 「[0032]図5は、カメラ(図示せず)のハウジング8をハウジング基部の周囲に、すなわち走行方向で見て前方のハウジング部分に、ハウジング8の表面10がドア7の表面9と同一平面を成す静止位置で固定することを示している。ハウジング8の前方領域において、ハウジング8はピン12を用いてホルダ13と結合されており、このホルダは固定部材14を介してドア7の衝突補強部15への結合を形成する。この場合、ピン12は回転軸として作用し、この回転軸を中心としてハウジングが静止位置と作動位置との間で往復旋回することができる。観察方向はここでも前方から走行方向FRとは反対方向に見ている。」 [図:0001428500000003.jpg] 「[0033]図6には、カメラ6のハウジング8が、カメラ対物レンズの高さで、外方旋回させられた状態で、つまり作動位置で横断面図で示されているので、ハウジング8はドアの表面9から突出している。この運動は、ドア7内に配置された旋回アーム18によって生ぜしめられ、この旋回アーム18は図示されていないサーボモータに結合されている。振動を回避するために、図示されていないサーボモータが同様にドア7の衝突補強部に配置されている。運動を生ぜしめる旋回アーム18は、結合エレメント17並びにピン16を介して、力を伝達するためにハウジング8に結合されており、この場合ピン16はハウジング8の旋回を可能にする。」 [図:0001428500000004.jpg] (2)引用文献1の記載から当業者が把握できる事項 引用文献1には、図3~6に記載された構造について、[0030]には「カメラハウジング8とハウジング内に配置されたカメラ6とを備え」と記載され、[0032]には、「ハウジング8はピン12を用いてホルダ13と結合されており」と記載されているところ、これらの記載から理解できるハウジング8内に配置されたカメラ6を備え、ハウジング8とホルダ13がピン12を用いて結合された構造(以下「引用文献1構造」という。)について、当業者は以下の事項を把握することができる。 ア 引用文献1構造は、自動車の後部空間を監視するための自動車用カメラシステムに関するものである。([0001]) イ ハウジング8は、静止位置で、その表面10が運転席側ドア7の表面と同一平面を成している。([0030]) ウ ハウジング8は、作動位置で、運転席ドア7内に配置された旋回軸11を中心にして外方旋回させられているので、その内部に配置されたカメラは、走行方向FRとは逆向きに後方を見ることができ、この場合、その表面10は、運転席ドア7の表面9から所定の角度だけ外側に旋回されている。([0031]) エ ホルダ13は、ハウジング8の前方領域において、固定部材14を介して運転席側ドア7の衝突補強部15への結合を形成し、この場合、ピン12は回転軸として作用し、この回転軸を中心としてハウジング8が静止位置と作動位置との間で往復旋回することができる。([0032]) オ ハウジング8は、それが外方旋回させられた状態つまり作動位置で、ドアの表面9から突出しており、この運動は、ドア7内に配置された旋回アーム18によって生ぜしめられ、この旋回アーム18はサーボモータに結合されている。([0033]) (3)引用発明の認定 前記(1)及び(2)によれば、引用文献1には、引用文献1構造(ハウジング8とホルダ13がピン12を用いて結合された構造)について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(括弧内は、認定の根拠とした箇所を示す。以下同様。)。 「ハウジング8内に配置されたカメラ6を備え、ハウジング8とホルダ13がピン12を用いて結合された構造であって、 自動車の後部空間を監視するための自動車用カメラシステムに関するものであり、(前記(2)ア) ハウジング8は、静止位置で、その表面10が運転席側ドア7の表面と同一平面を成しており、(前記(2)イ) ハウジング8は、作動位置で、運転席ドア7内に配置された旋回軸11を中心にして外方旋回させられているので、その内部に配置されたカメラ6は、走行方向FRとは逆向きに後方を見ることができ、この場合、その表面10は、運転席ドア7の表面9から所定の角度だけ外側に旋回されており、(前記(2)ウ) ホルダ13は、ハウジング8の前方領域において、固定部材14を介して運転席側ドア7の衝突補強部15への結合を形成し、この場合、ピン12は回転軸として作用し、この回転軸を中心としてハウジング8が静止位置と作動位置との間で往復旋回することができ、(前記(2)エ) ハウジング8はそれが外方旋回させられた状態つまり作動位置で、ドアの表面9から突出しており、この運動は、ドア7内に配置された旋回アーム18によって生ぜしめられ、この旋回アーム18はサーボモータに結合されている、(前記(2)オ) 構造。」 2 引用文献2について (1)引用文献2に記載された事項 引用文献2には、以下の事項が記載されている。 「【0001】 【発明が属する技術分野】本発明はバックミラー装置に関し、特にトラクタとトレーラから成る連結車両の巻き込み事故を防止するために車両が旋回した時にバックミラーの角度を自動的に変更するバックミラー装置に関するものである。」 「【0011】これを図1に示した原理図により具体的に説明する。まず、連結車両が同図(1)に示すような屈曲ゼロ(直進走行)の状態の場合、カメラ3の視野角αとミラーの視野角βとが図示のような関係にあるとする。このような状態から、同図(2)に示すような屈曲角θで旋回するような場合、制御部(図示せず)は、カメラ3の出力画像からトレーラ2の後端位置2aを検出し、この後端位置2aが画像内の所定位置に来るように回動部(図示せず)を制御してバックミラー4を回動させる。 【0012】バックミラー4が回動するとカメラ3も一緒に回動するのでカメラ3の画像中のトレーラ2の後端位置2aは所定位置(図2に示す追従ラインL1)に一致する。図1(2)の状態から更に屈曲角が増して同図(3)の状態(屈曲角θ’)に変化した場合も同様にしてカメラ3の出力画像に基づきバックミラー4が回動させられることによりカメラ3も回動させられる結果、図2に示すようにトレーラ2の後端位置2aが追従ラインL1へ一致制御されることとなる。」 [図:0001428500000005.jpg] (2)引用文献2の記載から把握できる技術事項 上記引用文献2の記載から、引用文献2には、以下の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「特にトラクタとトレーラから成る連結車両の巻き込み事故を防止するために車両が旋回した時にバックミラーの角度を自動的に変更するために、(【0001】) カメラ3の出力画像からトレーラ2の後端位置2aを検出し、この後端位置2aが画像内の所定位置に来るように回動部を制御してバックミラー4を回動させ、(【0011】) バックミラー4が回動するとカメラ3も一緒に回動するようにすること。(【0012】)」 3 引用文献3について (1)引用文献3に記載された事項 引用文献3には、以下の事項が記載されている。 「【0008】 【発明の実施の態様】(実施の態様1)図1は、本発明の実施の態様の一例を示しており、特にバックミラーを運転状態に応じて可変できるようにしたものである。この実施の態様では、走行中に車線変更する際の斜め後ろの死角を解消するため、格納式ドアミラーの開放角度を、格納時a、通常時b、広角時cの3段階の可変にして、ミラーの視界を大幅に改善した電動格納式ドアミラーにしたものである。」 [図:0001428500000006.jpg] (2)引用文献3の記載から把握できる技術事項 上記引用文献3の記載から、引用文献3には、以下の技術事項(以下「引用文献3技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「電動格納式ドアミラーにおいて、 走行中に車線変更する際の斜め後ろの死角を解消するため、格納式ドアミラーの開放角度を、格納時a、通常時b、広角時cの3段階の可変にすること。(【0008】)」 第5 対比 1 対比 (1)本願発明の「画像記録デバイスであって、」「画像記録デバイス。」との特定事項について ア 引用発明の「ハウジング8内に配置されたカメラ6を備え、ハウジング8とホルダ13がピン12を用いて結合された構造」(引用文献1構造)は、「自動車の後部空間を監視するための自動車用カメラシステムに関する」ものである。そうすると、本願発明の「画像記録デバイス」と引用発明の「ハウジング8内に配置されたカメラ6を備え、ハウジング8とホルダ13がピン12を用いて結合された構造」(引用文献1構造)は、画像デバイスである点で共通する。 イ したがって、本願発明と引用発明とは、画像デバイス「であって、」画像デバイスである点で共通するが、画像デバイスが、本願発明は「画像記録デバイス」であるのに対して、引用発明は、自動車の後部空間を監視するための自動車用カメラシステムに関する構造である。 (2)本願発明の「自動車のボディ内にかつ/または前記ボディ上に少なくとも部分的に組み込まれる、ハウジングを備えた固定部分と、」「を具備し、」との特定事項について ア 引用発明の「ホルダ13」は、「固定部材14を介して運転席側ドア7の衝突補強部15への結合を形成し」ているから、固定されているということができ、そのため、本願発明の「固定部分」に相当する。そして、当該「ホルダ」が結合されている「運転席ドア7の衝突補強部15」は本願発明でいう「自動車のボディ内」に存在するといえるから、当該「ホルダ13」は、本願発明でいう「自動車のボディ内にかつ/または前記ボディ上に少なくとも部分的に組み込まれる」ものといえる。 イ したがって、本願発明と引用発明は、「自動車のボディ内にかつ/または前記ボディ上に少なくとも部分的に組み込まれる」「固定部分と、」「を具備」する点で共通するが、固定部分が、本願発明では「ハウジングを備え」るのに対し、引用発明ではハウジングを備えるか不明である。 (3)本願発明の「少なくとも一つの光学要素を含む、キャリアを備えた可動部分であって、前記光学要素は少なくとも一つの光学センサーおよび/またはレンズユニットを備え、前記可動部分は、前記キャリアが前記ハウジングに対して少なくとも第1の位置と第2の位置との間で動作できるように、前記固定部分に対して接続されている、可動部分と、」「を具備し、」との特定事項について ア 引用発明の「ハウジング8」は「静止位置と作動位置との間で往復旋回することができ」るものであり、その内部に「カメラ6」が配置されるものであるから、当該「ハウジング8」及び「ハウジング8内に配置されたカメラ6」からなる構造(以下「ハウジング構造」という。)をもって、作動位置本願発明の「可動部分」に相当するということができる。そして、上記によれば、当該「ハウジング8」は、本願発明の「キャリア」に相当するといえる。 イ 引用発明の「カメラ6」は、本願発明の「光学要素」に相当する。そして、当該「カメラ6」が本願発明でいう「少なくとも一つの光学センサーおよび/またはレンズユニットを備え」るといえるのは、明らかである。 ウ 前記ア及びイによれば、引用発明のハウジング構造は、本願発明でいう「少なくとも一つの光学要素を含む、キャリアを備えた」ものといえる。 エ 引用発明のハウジング構造(本願発明の「可動部分」に相当。)は、それに含まれる「ハウジング8」が「静止位置と作動位置との間で往復旋回することができる」ところ、当該「静止位置」及び「作動位置」は、それぞれ、本願発明の「第1の位置」及び「第2の位置」に相当する。 オ 引用発明のハウジング構造は、それに含まれる「ハウジング8」が「ピン12を用いて」「ホルダ13」に「結合され」るといえるから、前記(2)アをも踏まえると、本願発明でいう「前記固定部分に対して接続されている」ものといえる。 カ 前記エ及びオによれば、本願発明と引用発明は、「前記可動部分は、前記キャリアが」固定部分「に対して少なくとも第1の位置と第2の位置との間で動作できるように、前記固定部分に対して接続されている」点で共通する。 キ したがって、本願発明と引用発明は、「少なくとも一つの光学要素を含む、キャリアを備えた可動部分であって、前記光学要素は少なくとも一つの光学センサーおよび/またはレンズユニットを備え、前記可動部分は、前記キャリアが」固定部分「に対して少なくとも第1の位置と第2の位置との間で動作できるように、前記固定部分に対して接続されている、可動部分と、」「を具備」する点で共通するが、固定部分が、本願発明では、「ハウジングを備え」るものであるのに対し、引用発明では、「ホルダ13」であり、「ホルダ13」は、「ハウジング8の前方領域において、固定部材14を介して運転席側ドア7の衝突補強部15への結合を形成」するものであるとともに、「ピン12」を用いて「ハウジング8」に結合されるものである。 (4)本願発明の「少なくとも前記可動部分の前記キャリアを前記第1の位置と前記第2の位置との間で動作させるための、動力源を備えた調整デバイスと、」「を具備し、」との特定事項について ア 引用発明の「サーボモータ」は、本願発明の「動力源」に相当する。 イ 引用発明の「サーボモータ」は「旋回アーム18」に「結合」されているところ、当該「旋回アーム18」が「ハウジング8」、ひいてはハウジング構造を外方旋回させることによって、ハウジング構造が「静止位置」と「作動位置」に位置するといえるから、「サーボモータ」及び「旋回アーム18」等からなる構造をもって、本願発明の「調整デバイス」に相当するということができる。そして、当該「サーボモータ」は、本願発明でいう「少なくとも前記可動部分の前記キャリアを前記第1の位置と前記第2の位置との間で動作させるための」ものといえる。 ウ したがって、引用発明は、上記特定事項を備える。 (5)本願発明の「前記画像記録デバイスを作動させるための制御ユニットと、を具備し、」「前記制御ユニットは前記画像記録デバイスの制御のために設けられ、前記制御ユニットを用いて、少なくとも前記可動部分の前記キャリアを前記第1の位置と前記第2の位置との間で動作させることが可能であり、」「前記制御ユニットを用いて、少なくとも、前記デバイスの前記少なくとも一つの光学要素の視野角を設定することが可能であり、前記視野角は、前記自動車の中央を通って前後に垂直に伸びる、前記自動車の垂直中央長手方向平面と、前記画像記録デバイスの前記光学軸との間に含まれる角度を意味し、」との特定事項について ア 引用発明に係る構造は、「ハウジング8」(本願発明の「キャリア」に相当。)が「静止位置と作動位置との間で往復旋回することができ」るものであるところ、当該「ハウジング8」の旋回が何らかの制御手段によって行われていることは明らかである。そのため、本願発明と引用発明は、画像デバイスを作動させるための制御手段を具備する点で共通する。 また、引用発明が具備する制御手段は、本願発明でいう、前記画像デバイス「の制御のために設けられる」ものといえるから、本願発明の「前記画像記録デバイスの制御のために設けられ」る「前記制御ユニット」と引用発明が具備する制御手段は、前記画像デバイス「の制御のために設けられる」制御手段である点で共通する。 イ 引用発明が具備する制御手段は、前記アによれば、これを用いて「ハウジング8」を「静止位置と作動位置との間で往復旋回することができ」るものといえるから、本願発明と引用発明は、前記制御手段を「用いて、少なくとも前記可動部分の前記キャリアを前記第1の位置と前記第2の位置との間で動作させることが可能であ」る点で共通する。 ウ 引用発明が具備する制御手段が、本願発明でいう「少なくとも、前記デバイスの前記少なくとも一つの光学要素の視野角を設定することが可能」であるとはいえない。 もっとも、引用発明においても、「カメラ6」(本願発明の「光学要素」に相当。)の「視野角」を、本願発明と同様に「前記自動車の中央を通って前後に垂直に伸びる、前記自動車の垂直中央長手方向平面」と画像デバイス「の前記光学軸との間に含まれる角度」として観念することは可能であるのであり、このことは、本願発明の「視野角」が「前記自動車の中央を通って前後に垂直に伸びる、前記自動車の垂直中央長手方向平面と、前記画像記録デバイスの前記光学軸との間に含まれる角度を意味」するという定義が、「自動車」と「画像記録デバイス」の「光学軸」が存在すれば必然的に定まる内容にとどまっており、引用発明にも、「自動車」と「カメラ6」の光学軸が存在するといえる(後記(6)参照。)ことから、明らかである。 エ したがって、本願発明と引用発明は、前記画像デバイス「を作動させるための」制御手段「と、を具備し、」前記制御手段は前記画像デバイス「の制御のために設けられ、」前記制御手段「を用いて、少なくとも前記可動部分の前記キャリアを前記第1の位置と前記第2の位置との間で動作させることが可能であ」り、「視野角は、前記自動車の中央を通って前後に垂直に伸びる、前記自動車の垂直中央長手方向平面と、前記」画像デバイス「の前記光学軸との間に含まれる角度を意味」する点で共通する。 そして、「少なくとも前記可動部分の前記キャリアを前記第1の位置と前記第2の位置との間で動作させることが可能」である制御手段が、本願発明は、「制御ユニット」であって、画像記録デバイスに具備されたものであり、「少なくとも、前記デバイスの少なくとも一つの光学要素の視野角を設定すること」も可能であるのに対し、引用発明は、「制御ユニット」といえるのか不明であり、引用文献1構造に具備されているといえるのか不明であり、また、「カメラ6」の視野角を設定することが可能であるとはいえない。 (6)本願発明の「前記画像記録デバイスは、前記可動部分の前記第2の位置において後方に向けられる光学軸を有し、」との特定事項について 引用発明に係る構造(引用文献1構造)では、「ハウジング8は、作動位置で、運転席ドア7内に配置された旋回軸11を中心にして外方旋回させられているので、その内部に配置されたカメラ6は、走行方向FRとは逆向きに後方を見ることができ」るから、後方に向けられる光学軸を有しているといえる。 したがって、本願発明と引用発明は、前記画像デバイスは、「前記可動部分の前記第2の位置において後方に向けられる光学軸を有」する点で共通する。 (7)本願発明の「水平視角および垂直視角は、前記光学要素の画像平面の境界によって囲まれるそれぞれの角度を意味する、」との特定事項について 前記特定事項は、本願発明における「水平視角」及び「垂直視角」の定義であり、「光学要素の画像平面」が特定されれば観念されるものであるところ、引用発明においても、「カメラ6」の画像平面が特定されるといえるから、「カメラ6」(本願発明の「光学要素」に相当。)の「水平視角」及び「垂直視角」をこのように定義することができる。 したがって、引用発明は、前記特定事項を備える。 2 一致点及び相違点の認定 前記1によれば、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 [一致点] 「画像デバイスであって、 自動車のボディ内にかつ/または前記ボディ上に少なくとも部分的に組み込まれる、固定部分と、 少なくとも一つの光学要素を含む、キャリアを備えた可動部分であって、前記光学要素は少なくとも一つの光学センサーおよび/またはレンズユニットを備え、前記可動部分は、前記キャリアが前記固定部分に対して少なくとも第1の位置と第2の位置との間で動作できるように、前記固定部分に対して接続されている、可動部分と、 少なくとも前記可動部分の前記キャリアを前記第1の位置と前記第2の位置との間で動作させるための、動力源を備えた調整デバイスと、 前記画像デバイスを作動させるための制御手段と、を具備し、 前記画像デバイスは、前記可動部分の前記第2の位置において後方に向けられる光学軸を有し、 前記制御手段は前記画像デバイスの制御のために設けられ、前記制御手段を用いて、少なくとも前記可動部分の前記キャリアを前記第1の位置と前記第2の位置との間で動作させることが可能であり、 視野角は、前記自動車の中央を通って前後に垂直に伸びる、前記自動車の垂直中央長手方向平面と、前記画像デバイスの前記光学軸との間に含まれる角度を意味し、 水平視角および垂直視角は、前記光学要素の画像平面の境界によって囲まれるそれぞれの角度を意味する、画像デバイス。」 [相違点1] 画像デバイスが、本願発明は「画像記録デバイス」であるのに対し、引用発明は「自動車の後部空間を監視するための自動車用カメラシステムに関する構造」である点。 [相違点2] 「固定部分」が、本願発明は、「ハウジングを備え」るものであるのに対して、引用発明は、「ホルダ13」であり、「ホルダ13」は、「ハウジング8の前方領域において、固定部材14を介して運転席側ドア7の衝突補強部15への結合を形成」するものであるとともに、「ピン12」を用いて「ハウジング8」に結合されるものである点。 [相違点3] 「少なくとも前記可動部分の前記キャリアを前記第1の位置と前記第2の位置との間で動作させることが可能であ」る制御手段が、本願発明は、「制御ユニット」であって、画像記録デバイスに具備されたものであり、「少なくとも、前記デバイスの前記光学要素の視野角を設定すること」も可能であるのに対し、引用発明は、「制御ユニット」といえるのか不明であり、引用文献1構造に具備されているといえるのか不明であり、また、「カメラ6」の視野角を設定することが可能であるとはいえない。 第6 判断 1 相違点1について 引用発明から出発した当業者が相違点1に係る本願発明の構成に至るためには、(i)引用文献1構造(ハウジング8内に配置されたカメラ6を備え、ハウジング8とホルダ13がピン12を用いて結合された構造)が、撮像のみならず記録をも行うようにするとともに、(ii)その記録に係る構造も、引用文献1構造(ハウジング8内に配置されたカメラ6を備え、ハウジング8とホルダ13がピン12を用いて結合された構造)の内部に設けるようにすれば足りる。 そして、引用文献1構造は、「自動車の後部空間を監視するための自動車用カメラシステムに関する」ものであるところ、撮像のみならず記録をも行うことは例示するまでもなく周知技術であり、また、記録に係る構造を撮像に係る構造と一体とすることも例示するまでもなく周知技術である。そうすると、上記当業者であれば、前記(i)及び(ii)に係る構成に適宜至ることができる。 2 相違点2について 引用発明の「ホルダ13」(本願発明の「固定部分」に相当。)は、「ハウジング8の前方領域において、固定部材14を介して運転席ドア7の衝突補強部15への結合を形成する」ものであるとともに、「ピン12」を用いて「ハウジング8」に結合されるものである。このように、「ホルダ13」は、「ハウジング8」に結合されるものであるところ、「ハウジング8」には「カメラ6」が配置されており、それを機能させるためには、配線や基板などの他の部品を要することは自明である。そうすると、このような種々の部品を格納するために、当該「ホルダ13」を、本願発明でいうところの「ハウジング」として構成することは、当業者にとって適宜なし得たことであるといえる。 3 相違点3について 引用発明から出発した当業者が相違点3に係る本願発明1の構成に至るためには、(iii)引用発明の制御手段を「制御ユニット」として構成すること、(iv)当該「制御ユニット」を引用文献1構造(ハウジング8内に配置されたカメラ6を備え、ハウジング8とホルダ13がピン12を用いて結合された構造)の内部に設けること、(v)当該「制御ユニット」が、引用発明のカメラ構造を、静止位置と作動位置の間の何らかの位置にも固定できるようにすることか、又は、カメラ構造を、作動位置とは別に、作動位置よりも更に外側に旋回させた位置にも固定できるようにすることを満たせば足りる。前記(v)については、上記当業者がこのように構成することに至れば、本願発明で特定される「視野角」の定義からみて、相違点3に係る本願発明の「少なくとも、前記デバイスの前記光学要素の視野角を設定すること」にも至ったといってよい。 そこで、前記当業者がそのように構成できるかについて検討すると、前記(iii)については、ユニット化は常套手段であることから、引用発明の制御手段を「制御ユニット」として構成することは当業者が適宜なし得たことである。 前記(iv)については、引用発明の制御手段はハウジング8の静止位置と作動位置の旋回制御を行う手段であるから、引用発明の制御手段を「制御ユニット」として構成するにあたり、この制御手段を、引用文献1構造の内部に設けることは、ユニット化といった常套手段に照らして、通常程度のことにすぎない。 前記(v)については、引用発明のような自動車用の後方監視システムの技術分野において、さまざまな方向を監視できるようにすることは、「監視」である以上、当然の課題であるし、そのための解決手段として、自動車の後方空間を監視するミラーの向きを変更できるようにして監視する範囲を変更できるようにすることは、例示するまでもなく従来周知であり、引用文献2技術事項又は引用文献3技術事項のように公知なものでもある。この点、引用発明は、自動車の後部空間を監視するための自動車用カメラシステムに係るものであって、自動車の後方空間を監視するミラーに係るものではないが、自動車用カメラシステムと自動車用ミラーの機能の共通性に照らせば、当業者であれば、ミラーに係る周知ないし公知技術を上記課題の解決手段として認識することができる。そうすると、引用発明から出発した当業者は、上記の当然の課題を解決するために、引用発明の引用文献1構造を、静止位置と作動位置の間の位置や、作動位置よりも更に外側に旋回させた位置にも固定できるようにして、監視できる場所を調整できるようにすることは、容易に想到し得たことである。 以上のとおりであるから、引用発明から出発した当業者は、周知技術、引用文献2技術事項又は引用文献3技術事項に基づいて、相違点3に係る本願発明の構成に容易に至る。 4 本願発明の奏する効果について 本願発明の奏する効果は、本願発明の構成が奏するものとして、引用発明と、周知技術、引用文献2技術事項又は引用文献3技術事項とのいずれかに基づいて、当業者が予測し得たものであり、格別顕著なものということもできない。 5 請求人の主張について (1)請求人は、引用発明の「ホルダ13」が本願発明における「ハウジング」ではない旨主張しているが、前記2で説示したとおりである。 (2)請求人は、相違点3に係る本願発明の構成である「少なくとも、前記デバイスの前記光学要素の視野角を設定する」「制御ユニット」が当業者にとって容易に至るものではない旨主張し、その根拠として、(i)副引例として提示された引用文献2及び3は、ソリッド平面ミラーに係るものであって、本願発明や引用発明のような光学要素(カメラ)に係るものではないこと、(ii)引用文献2及び3のようなミラーは、これを回転させると、光軸(ミラーの表面の法線)は同じ角度で回転し、光軸を調整できるが、「視野角」は同じままであって、その調整が不可能であること、(iii)本願発明では、「視野角」は、光軸とは独立して設定(変更、拡大又は縮小)することができることを挙げる。 (i)については、前記3で説示したとおり、自動車用カメラシステムと自動車用ミラーの機能の共通性に照らせば、引用発明から出発した当業者であれば、さまざまな方向を監視できるようにするという当然の課題を解決するために、ミラーに係る周知ないし公知技術を上記課題の解決手段として認識することが可能である。 これに対して、請求人は、(ii)及び(iii)を挙げることによって、本願発明の「視野角」の設定の観点においては、ミラー(引用文献2及び3)とカメラ(本願発明及び引用発明)の相違が実質的であることを主張するようである。この点、請求人のいう「視野角」は、判然としないものの、いわゆる画角(カメラで撮影した際に画像に写る範囲)を意味しているように考えられ、本願発明で特定された「視野角」が仮にその意味であれば、請求人の主張を理解できる余地もある。しかしながら、本願発明で特定された「視野角」は、「前記自動車の中央を通って前後に垂直に伸びる、前記自動車の垂直中央長手方向平面と、前記画像デバイスの前記光学軸との間に含まれる角度」とされているのであり、これは、図1のαであって、本願の明細書の【0026】には、αが「自動車の中央を通って前後に垂直に伸びる、自動車の垂直中央長手方向平面Vと、デバイス12の画像記録センサー13および/またはそのレンズまたはレンズシステム14の中心光学軸Oaxisとの間に含まれる角度を意味する」と記載されていることから、このような意味での「視野角」は、画角とは異なり、ミラーを回転させると調整されるものといえる。結局のところ、請求人の主張は、本願発明の特定事項に基づかないものに帰する。 6小括 したがって、本願発明は、引用発明と、周知技術、引用文献2技術事項、又は引用文献3技術事項とのいずれかに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-015186

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