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特許拒絶査定不服審判

2023-013916

固定焦点投影レンズ

審判番号
2023-013916
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-139081
請求日
2023年08月18日
審決日
2024年09月19日
公報発行日
2025年02月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】揚明光學股▲ふん▼有限公司
  • 【請求人代理人】杉村 憲司
  • 【請求人代理人】杉村 光嗣
  • 【請求人代理人】上原 真
審判長/審判官
  • 審判長 山村 浩
  • 審判官 齋藤 卓司
  • 審判官 野村 伸雄
分類
P18 .121-Z (G02B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-139081「固定焦点投影レンズ」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 1月 4日出願公開、特開2023- 974〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2021年(令和3年)8月27日(パリ条約による優先権主張2021年6月18日(以下、この日を「優先日」という。)、台湾)の出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。 令和 4年 9月13日付け:拒絶理由通知書 令和 4年12月21日 :意見書・手続補正書の提出 令和 5年 4月11日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和 5年 8月18日 :審判請求書の提出 第2 本願発明の認定 本願の請求項1~12に係る発明(そのうち当該請求項1に係る発明を「本願発明」という。)は、令和4年12月21日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定されるものと認められるところ、当該請求項1の記載は以下のとおりである。 「固定焦点投影レンズであって、 絞りで分割され、且つ前記固定焦点投影レンズの拡大側から縮小側に向かって順番に配列された第1レンズ群および第2レンズ群を含み、 前記第1レンズ群が、屈折力を有する6~8枚のレンズを含み、且つ2つの非球面レンズ表面を含み、 前記第2レンズ群の屈折力が、正であり、屈折力を有する5~8枚のレンズを含み、且つ2つの接合面を含み、前記屈折力を有するレンズが、いずれも球面レンズであり、 前記固定焦点投影レンズが、 0.6<D1/OAL<0.8と、 2<D1/DL<4とを満たし、 D1が、前記固定焦点投影レンズの前記拡大側から数えて1枚目のレンズの拡大側表面での直径であり、OALが、前記固定焦点投影レンズ両端の最も外側のレンズ表面の間の光軸上の距離であり、DLが、前記固定焦点投影レンズの前記拡大側から数えて最後の1枚のレンズの縮小側表面での直径である固定焦点投影レンズ。」 第3 原査定における拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、本願発明は、優先日前に頒布された刊行物に記載された発明である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記の引用文献2又は引用文献4に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という内容を含むものである。 引用文献2:特開2018-194619号公報 引用文献4:特開2011-154193号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献4(特開2011-154193号公報)の記載事項及び引用発明4の認定 (1)引用文献4の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献4には、次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 拡大側から順に、前群と、絞りと、後群とが配列され、縮小側が略テレセントリックに構成されてなる投写レンズであって、 前記前群は最も拡大側に非球面レンズを配してなり、 前記後群は、拡大側から順に、負の屈折力を有する後群フロント部と、正の屈折力を有する後群リア部とからなり、 前記後群フロント部は非球面レンズを含み、 前記後群リア部は、拡大側から順に、正レンズおよび縮小側に凸面を向けた負メニスカスレンズからなる接合レンズと、2枚の正レンズと、により構成され、 前記後群リア部中に含まれる正レンズは、それぞれ下記条件式(1)を満たすことを特徴とする投写レンズ。 -0.10<RRr2/RRr1<0.50・・・(1) ここで、 RRr1:前記後群リア部中の正レンズの、拡大側の面の曲率半径 RRr2:前記後群リア部中の正レンズの、縮小側の面の曲率半径 【請求項2】 前記前群は、拡大側から、負の屈折力を有する第1レンズ群と正の屈折力を有する第2レンズ群と、からなり、 前記後群は、正の屈折力を有する第3レンズ群からなり、 前記後群フロント部は第3aレンズ群からなるとともに、前記後群リア部は第3bレンズ群からなることを特徴とする請求項1記載の投写レンズ。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、液晶表示素子等のライトバルブからの表示情報等を拡大投写する投写レンズおよびこれを用いた投写型表示装置に関する。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 しかしながら、昨今、上述した如き投写型表示装置においては、ライトバルブ等のさらなる高性能化に伴う、より高い光学性能が求められている。すなわち、光学系全体で発生した収差、特に球面収差や倍率色収差をさらに良好に補正することが求められている。 【0008】 本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、縮小側がテレセントリックに構成されるとともに、近年の投写レンズに好適なバックフォーカスを有する構成とされ、広画角で良好な収差補正機能を有する投写レンズ、およびこのような投写レンズを用いた投写型表示装置を提供することを目的とする。」 「【0055】 <実施例1> 図1に示すように、実施例1に係る投写レンズは、拡大側から順に、負の屈折力を有する前群GFと、絞り3と、正の屈折力を有する後群GRとが配列されてなり、縮小側が略テレセントリックとされている。また、この前群GFは、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2とが配列されてなる。また、後群GRは第3レンズ群G3を構成し、拡大側より、負の屈折力を有する第3aレンズ群G3a(後群フロント部GRf)と、正の屈折力を有する第3bレンズ群G3b(後群リア部GRr)と、からなる。 【0056】 すなわち、上記第1レンズ群G1は、拡大側から順に、両面非球面とされた屈折力の小さい非球面レンズ(光軸Z上において、負の屈折力を有する)よりなる第1レンズL1と、縮小側に凹面を向けた負メニスカスレンズよりなる第2レンズL2および第3レンズL3と、両凹レンズからなる第4レンズL4と、両凸レンズからなる第5レンズL5が配列されてなり、第4レンズL4および第5レンズL5は互いに接合してなる2枚接合レンズを構成してなる。 【0057】 また、上記第2レンズ群G2は、拡大側に凸面を向けた正メニスカスレンズよりなる第6レンズL6からなる。 【0058】 また、上記第3レンズ群G3において、第3レンズ群フロント部G3fは、拡大側から順に、両凸レンズよりなる第7レンズL7と、拡大側に凹面を向けた負メニスカスレンズよりなる第8レンズL8と、両面非球面とされた屈折力の小さい非球面レンズ(光軸Z上において、正の屈折力を有する)からなる第9レンズL9と、が配列されてなり、第7レンズL7および第8レンズL8は互いに接合してなる2枚接合レンズを構成してなる。一方、上記第3レンズ群リア部G3rは、拡大側から順に、縮小側に凸面を向けた正メニスカスレンズからなる第10レンズL10と、縮小側に凸面を向けた負メニスカスレンズよりなる第11レンズL11と、縮小側に凸面を向けた正メニスカスレンズからなる第12レンズL12および第13レンズL13が配列されてなる。」 「【0061】 実施例1における全系の焦点距離f(mm)、バックフォーカスBf(mm)、FナンバFno.、画角2ωの各数値を表1の最上段に示す。 【0062】 また、実施例1に係る投写レンズの各レンズ面の曲率半径R(mm)、各レンズの中心厚および各レンズ間の空気間隔(以下「軸上面間隔」と称す)D(mm)、各レンズのd線における屈折率Ndおよび各レンズのd線におけるアッベ数νdの値を、表1の上段に示す。なお、表1および以下の表において面番号の数字は拡大側からの順番を表すものであり、面番号の左側に*印が付された面は非球面とされている。実施例1および以下の実施例2~4において、これらの非球面の曲率半径Rは、各表において光軸Z上での曲率半径Rの値として示しているが、対応するレンズ構成図においては図面を見やすくするため、引出線は必ずしも光軸Zとの交点から引き出されていないものがある。 【0063】 また、表1の中段には、所定の投写距離(837.5mm、無限遠)においてフォーカシングされた際の面間隔D1、D2の数値を示す。 【0064】 なお、表1の下段には各非球面に対応する各定数K,A3~A12の値が示されている。 【0065】 【表1】 [図:0001418795000001.jpg] 」 「【図1】 [図:0001418795000002.jpg] 」 (2)引用文献4の記載から当業者が把握することができる事項 実施例1(図1)に係る投写レンズについて、当業者は、次の事項を把握することができると認められる。 ア 図1は、当該投写レンズの光軸を通る断面上でのレンズ形状及び面間隔を、実質的に正確な縮尺で表現した図面であること。 (ア)すなわち、まず、レンズ系の技術分野においては、その設計をレンズ設計ソフトウェアで行うことが例示するまでもなく技術常識であり、レンズ設計ソフトウェアでは、レンズ系の光軸を通る断面上でのレンズ形状及び面間隔を表した図(以下「レンズ断面図」という。)を表示できることが例示するまでもなく技術常識であると認められる。そして、レンズ系の技術分野に属する特許文献で用いられる図面がレンズ断面図であることはごく一般的なことであるところ、レンズ断面図を、レンズ設計ソフトウェアを用いることなくたやすく作成できるものとは認められない。 そうすると、レンズ系の技術分野に属する特許文献で用いられる図面は、レンズ設計ソフトウェアによって表示されたものに基づいて作成されることがごく自然であると認められる。 (イ)引用文献4は、レンズ系の技術分野に属する特許文献であると認められる。 (ウ)そして、図1において、光軸上の面間隔(面1と2の間隔の値を1とする。)を実測すると、有効数字2桁として次のとおり(なお、「※」を表記した箇所は、当該図1での実測が難しかったため、実測値を記載していない。)であり、これは、当該図1に対応する表1(投写距離が837.5mmの場合)に記載された値と実質的に一致しているといってよい。 面番号 実測値 表1の値(面1と2の間の間隔を1と表記している。) 1と2 1 1 2と3 1.8 1.8 3と4 0.29 0.31 4と5 1.2 1.2 5と6 0.25 0.26 6と7 1.5 1.4 7と8 0.21 0.21 8と9 1.4 1.3 9と10 2.9 2.8 10と11 0.64 0.61 11と12 3.1 3.0 12と13 0.39 0.40 13と14 0.43 0.43 14と15 0.21 0.21 15と16 0.21 0.21 16と17 0.39 0.39 17と18 0.29 0.31 18と19 1.2 1.2 19と20 0.14 0.16 20と21 ※ 0.029 21と22 0.93 0.90 22と23 ※ 0.029 23と24 0.50 0.49 (エ)また、図1では、各レンズの上下端が光軸に平行な直線で表されていることが見て取れるところ、レンズ設計ソフトウェアでは、レンズ鏡筒に各レンズを設置する際の端面をこのような直線で表した上でレンズ形状を表示することが例示するまでもなく技術常識であると認められる。 (オ)このように、引用文献4は特許文献であること、特許文献で用いられる図面はレンズ設計ソフトウェアによって表示されたものに基づいて作成されることがごく自然であること、図1の光軸上での面間隔は実質的に正確な縮尺で表示されていること、図1に記載された各レンズの上下端面が光軸に平行な直線で表されていることから、当該図1は、レンズ設計ソフトウェアに基づいて作成されたものと推認されるのであり、このことに加えて、レンズ設計ソフトウェアでは、レンズ断面図が実質的に正確な縮尺で表示されることが例示するまでもなく技術常識であることを踏まえれば、当該図1は、光軸を通る断面上でのレンズ形状及び面間隔を、実質的に正確な縮尺で表示したものであると認められる。 イ 当該投写レンズは、前群GFが、第1レンズL1を含む6枚のレンズからなるものであって、第1レンズL1は、2つの非球面を備えるとともにその径が最大であり、前群GFのその余のレンズは球面レンズであること。 また、当該投写レンズは、後群GRが、第9レンズL9を含む7枚のレンズからなるものであって、2つの接合面を備えるものであり、第9レンズL9は、2つの非球面を備えるとともにその径が第1レンズL1の径の1/5弱であり、後群GRのその余のレンズは球面レンズであること。(図1、表1及び前記ア) ウ 当該投写レンズは、固定焦点レンズであること。 すなわち、【0061】及び表1によれば、全系の焦点距離fが7.38と記載されており、焦点距離が一つだけ記載されていることから、そのようにいえる。 エ 第1レンズL1の拡大側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の直径を、第1レンズL1の拡大側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)と第13レンズL13の縮小側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の間の光軸上の距離で除算した値が、有効数字2桁として0.68であること。 すなわち、第1レンズL1の拡大側表面(光軸と平行な端部に至るまでのもの)の直径、及び第1レンズL1の拡大側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)と第13レンズL13の縮小側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)との間の光軸上の距離は、前記アによれば、図1を実測することによって求めることができることから、そのようにいえる。 オ 第1レンズL1の拡大側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の直径を、第13レンズL13の縮小側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の直径で除算した値が、有効数字2桁として3.1であること。 すなわち、前記エと同様の考えに基づき、図1を実測することによって、そのようにいえる。 (3)引用発明4の認定 前記(1)及び(2)によれば、引用文献4には、実施例1に係る投写レンズについて、次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されていると認められる(引用発明の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付してある。以下同じ。)。 「拡大側から順に、前群GFと、絞りと、後群GRとが配列され、縮小側が略テレセントリックに構成されてなる投写レンズであって、 前記前群GFは最も拡大側に非球面レンズを配してなり、 前記後群GRは、拡大側から順に、負の屈折力を有する後群フロント部と、正の屈折力を有する後群リア部とからなり、 前記後群フロント部は非球面レンズを含み、 前記後群リア部は、拡大側から順に、正レンズおよび縮小側に凸面を向けた負メニスカスレンズからなる接合レンズと、2枚の正レンズと、により構成され、(【請求項1】) 前記後群GRは、正の屈折力を有する第3レンズ群からなり、(【請求項2】) [図:0001418795000003.jpg] [図:0001418795000004.jpg] であり、(【表1】) 前群GFが、第1レンズL1を含む6枚のレンズからなるものであって、第1レンズL1は、2つの非球面を備えるとともにその径が最大であり、前群GFのその余のレンズは球面レンズであり、(前記(2)イ) 後群GRが、第9レンズL9を含む7枚のレンズからなるものであって、2つの接合面を備えるものであり、第9レンズL9は、2つの非球面を備えるとともにその径が第1レンズL1の径の1/5弱であり、後群GRのその余のレンズは球面レンズであり、(前記(2)イ) 第1レンズL1の拡大側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の直径を、第1レンズL1の拡大側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)と第13レンズL13の縮小側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の間の光軸上の距離で除算した値が、有効数字2桁として0.68であり、(前記(2)エ) 第1レンズL1の拡大側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の直径を、第13レンズL13の縮小側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の直径で除算した値が、有効数字2桁として3.1であり、(前記(2)オ) 固定焦点レンズである、(前記(2)ウ) 投写レンズ。」 2 引用文献2(特開2018-194619号公報)の記載事項及び引用発明2の認定 (1)引用文献2の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2には、次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。 「【技術分野】 【0001】 この発明は、投射用ズームレンズ、画像投射装置に関する。」 「【背景技術】 【0002】 画像をスクリーンなどに向けて投射するプロジェクタ等の画像投射装置が知られている。 【0003】 このような画像投射装置において、表示される画像の大きさを変えるために、広角端から望遠端まで変倍する、所謂ズーミングを行う構成が知られている。 このようなズーミングを行う際には、焦点距離をはじめ様々な光学的パラメータが変化して収差変動が生じることが知られている。 【0004】 画像投射装置に備えられる投射用のズームレンズにおいては、かかる収差変動を抑制し、適切に収差補正を行う構成が求められている。 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 この発明は、新規な投射用ズームレンズの実現を課題とする。」 「【図面の簡単な説明】 【0008】 【図1】撮像装置の実施形態の一例を説明するための図である。 【図2】実施例1の投射用ズームレンズを説明するための図である。 ・・・(後略)」 「【発明を実施するための形態】 【0009】 図1に、本発明の実施形態の一例として、投射用ズームレンズたる投射レンズ群1を備えた画像投射装置100を示す。 本実施形態における画像投射装置100は、画像表示素子たる液晶パネル101に表示された原画像を投射面たるスクリーン104へと拡大して投射するプロジェクタである。 【0010】 原画像の表示を液晶パネル101で行うプロジェクタは、3原色(赤・緑・青)に対応した3枚の液晶パネル101により変調された3つの光を色合成光学系たるプリズム102により合成して投射レンズ1に入射させる。 【0011】 また、本実施形態では原画像の画像表示素子として液晶パネル101を用いたが、かかる構成に限定されるものではなく、微小ミラーを並べて構成されたDMD等の反射型表示素子で行うとしても良い。 かかる反射型表示素子を用いる構成では、反射型表示素子を照明する光路を、反射型表示素子と投射レンズ1との間に確保する必要がある。 【0012】 投射レンズ群1は、一般には小さなサイズで表示された原画像を拡大して投射するレンズ系であり、原画像を倍率可変で拡大して投射可能なズームレンズである。 投射レンズ群1は、図1においては、拡大側から順に、第1レンズ群1Gと、第2レンズ群2Gと、第3レンズ群3Gと、開口絞りSと、第4レンズ群4Gと、第5レンズ群5Gと、を有する5群構成の投射光学系である。 本発明の実施形態の具体的な構成を図2~図8において例示する。なお、図2~図8においては、図の左方が拡大側(拡大共役側)、図の右方が縮小側(縮小共役側)である。また、繁雑化を避けるため、図2~図8において、符号は共通化する。 【0013】 また、図2~図8において、(a)をズーミングの広角端(Wide)とし、(b)をズーミングの望遠端(Tele)とする。 【0014】 第1レンズ群G1は、図2(a)、(b)に示すように、拡大側から順に第1サブレンズ群1aと、負の屈折力を有する第2サブレンズ群1bと、正の屈折力を持つ第3サブレンズ群1cと、を有している。 第1レンズ群G1は、図2(a)、(b)に示すズーミングの際には固定されて、第1レンズ群G1全体で負の屈折力を有している。」 「【0040】 以上に述べたような投射レンズ1の具体的な構成例を、実施例1~7に数値として表1~表35に示す。また、実施例1~7におけるそれぞれの収差図を、図10~37にそれぞれ示す。 【0041】 なお、実施例1~7は、何れも既に述べた条件式(1)を満足する数値実施例である。なお、条件式(1)に加えて条件式(2)~(6)の何れかあるいはすべてを満たしているが、かかる構成に限定されるものではない。 また、実施例1~7において、以下の符号を用いている。 R:曲率半径 D:面間隔 Nd:屈折率 νd:アッベ数 f:全系の焦点距離 ω:半画角 【0042】 [数値実施例1] 実施例1のレンズ構成について表1~表5に示す。 【0043】 【表1】 [図:0001418795000005.jpg] 」 「【表4】 [図:0001418795000006.jpg] 」 「【図2】 [図:0001418795000007.jpg] 」 (2)引用文献2の記載から当業者が把握することができる事項 実施例1(図2)に係る投射用ズームレンズについて、当業者は、次の事項を把握することができると認められる。 ア 図2は、当該投射用ズームレンズの光軸を通る断面上でのレンズ形状及び面間隔を、実質的に正確な縮尺で表現した図面であること。 すなわち、引用文献2は、レンズ系の技術分野に属する特許文献であると認められ、後記のとおり、例えば、図2のうち(a)の図(広角端側を表すものである。)における光軸上の面間隔を実測すると、当該図に対応する表1に記載された値と実質的に一致しているといってよく(なお、「※」を表記した箇所は、当該表1には「i」として記載されている一方で、当該図2には対応する線が描かれていないことから、実測値を記載していない。「※※」を表記した箇所は、表1において「可変」とされているところに対応するものであって、この「可変」は、フォーカシングにより近距離と遠距離の間で可変の値であることを意味すると解される一方で、引用文献2には図2が「近距離」と「遠距離」の間のどの距離に対応した図であるのかが明記されていないが、この「可変」は、いずれの距離と解したとしても極めて小さい値であって、実測値と比較できないといえることから、当該箇所には値を記載していない。)、しかも、当該図2では、各レンズの上下端面が光軸に平行な直線で表されていることから、前記1(2)アと同様の理由で、当該図2は、当該投射用ズームレンズの光軸を通る断面上でのレンズ形状及び面間隔を、実質的に正確な縮尺で表現した図面であると認められる。 i 実測値 表1の値(面1と2の間の間隔を1と表記している。) 1と2 1 1 2と3 ※ 2.6 3と4 ※ ※※ 4と5 0.33 0.33 5と6 1.8 1.8 6と7 0.28 0.27 7と8 1.6 1.6 8と9 0.28 0.26 9と10 ※ 0.85 10と11 ※ ※※ 11と12 0.94 0.95 12と13 ※ ※※ 13と14 ※ 4.2 14と15 1.1 1.1 15と16 0.22 0.24 16と17 2.8 2.8 17と18 0.50 0.50 18と19 ※ 0.73 19と20 ※ 0.75 20と21 0.56 0.58 21と22 0.83 0.81 22と23 0.28 0.27 23と24 0.72 0.70 24と25 ※ 0.040 25と26 0.17 0.16 26と27 1.3 1.3 27と28 0.17 0.18 28と29 0.17 0.16 29と30 1.2 1.2 30と31 0.11 0.11 31と32 0.61 0.59 イ 当該投射用ズームレンズは、第1レンズ群1G、第2レンズ群2G、第3レンズ群3G、第4レンズ群4G及び第5レンズ5Gからなるものであり、第1レンズ群1Gは2つのみ非球面を備え、第1レンズ群1G、第2レンズ群2G及び第3レンズ群3Gは8枚のレンズからなり、第4レンズ群4Gは4つの接合面を備え、第4レンズ群及び第5レンズ群5Gは、全て球面の8枚のレンズからなるものであること(図2及び表1)。 ウ 当該投射用ズームレンズは、表1から計算すると、第4レンズ群4Gの屈折力は正であり、第5レンズ群5Gの屈折力は正であること。 エ 第1サブレンズ群1aの拡大側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の直径を、第1サブレンズ群1aの拡大側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)と第5レンズ群5Gの縮小側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の間の広角端における光軸上の距離で除算した値が、有効数字2桁として0.61であること。 すなわち、第1サブレンズ群1aの拡大側表面(光軸と平行な端部に至るまでのもの)の直径、及び第1サブレンズ群1aの拡大側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)と第5レンズ群5Gの縮小側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)との間の光軸上の距離は、前記アによれば、図2を実測することによって求めることができることから、そのようにいえる。 オ 第1サブレンズ群1aの拡大側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の直径を、第5レンズ群5Gの縮小側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の直径で除算した値が、有効数字2桁として2.8であること。 すなわち、前記エと同様の考えに基づき、図2を実測することによって、そのようにいえる。 (3)引用発明2の認定 前記(1)及び(2)によれば、引用文献2には、実施例1に係る投射用ズームレンズについて、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「最も拡大側に配置され、負の屈折力を備える第1レンズ群を有する投射用ズームレンズであって、 前記第1レンズ群は、拡大共役側から縮小共役側に向かって順に第1サブレンズ群と、負の屈折力を備える第2サブレンズ群と、正の屈折力を備える第3サブレンズ群と、を有し、 当該第1レンズ群は、ズーミングを行う際には固定され、フォーカシングを行う際には前記第1サブレンズ群と前記第2サブレンズ群と前記第3サブレンズ群とがそれぞれ独立して光軸上を移動可能であって、 前記第3サブレンズ群が光軸上を移動するとともに前記第1サブレンズ群と前記第2サブレンズ群の間隔が変化する投射用ズームレンズであって、(請求項1) 拡大側から順に、第1レンズ群1Gと、第2レンズ群2Gと、第3レンズ群3Gと、開口絞りSと、第4レンズ群4Gと、第5レンズ群5Gと、を有する5群構成の投射光学系であり、(【0012】) 第1レンズ群1Gは、拡大側から順に第1サブレンズ群1aと、負の屈折力を有する第2サブレンズ群1bと、正の屈折力を持つ第3サブレンズ群1cと、を有し、ズーミングの際には固定されており、(【0014】) [図:0001418795000008.jpg] であり、(【表1】) [図:0001418795000009.jpg] であり、(【表4】) 第1レンズ群1G、第2レンズ群2G、第3レンズ群3G、第4レンズ群4G及び第5レンズ5Gからなるものであり、第1レンズ群1Gは2つのみ非球面を備え、第1レンズ群1G、第2レンズ群2G及び第3レンズ群3Gは8枚のレンズからなり、第4レンズ群4Gは4つの接合面を備え、第4レンズ群4G及び第5レンズ群5Gは、全て球面の8枚のレンズからなるものであり、(前記(2)イ) 第4レンズ群4Gの屈折力は正であり、第5レンズ群5Gの屈折力は正であり、(前記(2)ウ) 第1サブレンズ群1aの拡大側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の直径を、第1サブレンズ群1aの拡大側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)と第5レンズ群5Gの縮小側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の間の広角端における光軸上の距離で除算した値が、有効数字2桁として0.61であり、(前記(2)エ) 第1サブレンズ群1aの拡大側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の直径を、第5レンズ群5Gの縮小側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の直径で除算した値が、有効数字2桁として2.8である、(前記(2)オ) 投射用ズームレンズ。」 第5 対比・判断 1 引用発明4に基づく進歩性欠如について (1)対比 ア 本願発明の「固定焦点投影レンズであって、」「固定焦点投影レンズ。」の特定事項について 引用発明4の「投写レンズ」は、本願発明の「投影レンズ」に相当する。そして、引用発明4の「投写レンズ」は、「固定焦点レンズであ」ることから、本願発明の「固定焦点投影レンズ」にも相当する。 したがって、引用発明4は本願発明の上記特定事項を備えている。 イ 本願発明の「絞りで分割され、且つ前記固定焦点投影レンズの拡大側から縮小側に向かって順番に配列された第1レンズ群および第2レンズ群を含み、」の特定事項について 引用発明4は、「拡大側から順に、前群GFと、絞りと、後群GRとが配列され」るものであるところ、引用発明4の「前群GF」、「後群GR」及び「絞り」は、それぞれ、本願発明の「第1レンズ群」、「第2レンズ群」及び「絞り」に相当する。 そして、引用発明4は、上記のとおり、「前群GF」、「絞り」及び「後群GR」の順に「配列され」ていることから、「絞り」で「前群GF」と「後群GR」を分けているといえるのであり、そうすると、引用発明4の「前群GF」と「後群GR」は、本願発明でいう「絞りで分割され」るものといえる。また、引用発明4は、上記の配列が「拡大側から縮小側に向かって」されることから、引用発明4の「前群GF」と「後群GR」は、本願発明でいう「前記固定焦点投影レンズの拡大側から縮小側に向かって順番に配列された」ものといえる。 したがって、引用発明4は本願発明の上記特定事項を備えている。 ウ 本願発明の「前記第1レンズ群が、屈折力を有する6~8枚のレンズを含み、且つ2つの非球面レンズ表面を含み、」の特定事項について 引用発明4の「前群GF」(本願発明の「第1レンズ群」に相当。)は、「第1レンズL1を含む6枚のレンズからなるものであって、第1レンズL1は、2つの非球面を備えるとともにその径が最大であり、前群GFのその余のレンズは球面レンズであ」ることから、本願発明でいう「屈折力を有する6~8枚のレンズを含み、且つ2つの非球面レンズ表面を含」むものといえる。 したがって、引用発明4は、本願発明の上記特定事項を備えている。 エ 本願発明の「前記第2レンズ群の屈折力が、正であり、屈折力を有する5~8枚のレンズを含み、且つ2つの接合面を含み、前記屈折力を有するレンズが、いずれも球面レンズであり、」の特定事項について 引用発明4の「後群GR」(本願発明の「第2レンズ群」に相当。)は、「正の屈折力を有する第3レンズ群からなり」、「第9レンズL9を含む7枚のレンズからなるものであって、2つの接合面を備えるものであり、第9レンズL9は、2つの非球面を備えるとともにその径が第1レンズL1の径の1/5弱であり、後群GRのその余のレンズは球面レンズであ」ることから、本願発明でいう「屈折力が、正であり、屈折力を有する5~8枚のレンズを含み、且つ2つの接合面を含」むものといえる。 したがって、本願発明と引用発明4とは、「前記第2レンズ群の屈折力が、正であり、屈折力を有する5~8枚のレンズを含み、且つ2つの接合面を含」む点で共通する。 しかしながら、「第2レンズ群」の「前記屈折力を有するレンズ」が、本願発明は、「いずれも球面レンズ」であるのに対し、引用発明4は、「第9レンズL9が2つの非球面を備えるとともにその径が第1レンズL1の径の1/5弱であり、後群GRのその余のレンズは球面レンズであ」る。 オ 本願発明の「前記固定焦点投影レンズが、0.6<D1/OAL<0.8と、2<D1/DL<4とを満たし、D1が、前記固定焦点投影レンズの前記拡大側から数えて1枚目のレンズの拡大側表面での直径であり、OALが、前記固定焦点投影レンズ両端の最も外側のレンズ表面の間の光軸上の距離であり、DLが、前記固定焦点投影レンズの前記拡大側から数えて最後の1枚のレンズの縮小側表面での直径である」の特定事項について 引用発明4の「第1レンズL1の拡大側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の直径」は、本願発明の「前記固定焦点投影レンズの前記拡大側から数えて1枚目のレンズの拡大側表面での直径」である「D1」に相当する。 引用発明4の「第1レンズL1の拡大側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)と第13レンズL13の縮小側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の間の光軸上の距離」は、本願発明の「前記固定焦点投影レンズ両端の最も外側のレンズ表面の間の光軸上の距離」である「OAL」に相当する。 引用発明4の「第13レンズL13の縮小側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の直径」は、本願発明の「前記固定焦点投影レンズの前記拡大側から数えて最後の1枚のレンズの縮小側表面での直径」である「DL」に相当する。 引用発明4は、「第1レンズL1の拡大側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の直径」(本願発明の「D1」)を、「第1レンズL1の拡大側表面と第13レンズL13の縮小側表面の間の光軸上の距離」(本願発明の「OAL」)で除算した値が、「有効数字2桁として0.68であ」ることから、本願発明でいう「前記固定焦点投影レンズが、0.6<D1/OAL<0.8」を満たすものといえる。 引用発明4は、「第1レンズL1の拡大側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の直径」(本願発明の「D1」)を、「第13レンズL13の縮小側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の直径」(本願発明の「DL」)で除算した値が、「有効数字2桁として3.1である」ことから、本願発明でいう「前記固定焦点投影レンズが、」「2<D1/DL<4」を満たすものといえる。 したがって、引用発明4は本願発明の上記特定事項を備えている。 (2)一致点及び相違点の認定 前記(1)によれば、本願発明と引用発明4とは、 「固定焦点投影レンズであって、 絞りで分割され、且つ前記固定焦点投影レンズの拡大側から縮小側に向かって順番に配列された第1レンズ群および第2レンズ群を含み、 前記第1レンズ群が、屈折力を有する6~8枚のレンズを含み、且つ2つの非球面レンズ表面を含み、 前記第2レンズ群の屈折力が、正であり、屈折力を有する5~8枚のレンズを含み、且つ2つの接合面を含み、 前記固定焦点投影レンズが、 0.6<D1/OAL<0.8と、 2<D1/DL<4とを満たし、 D1が、前記固定焦点投影レンズの前記拡大側から数えて1枚目のレンズの拡大側表面での直径であり、OALが、前記固定焦点投影レンズ両端の最も外側のレンズ表面の間の光軸上の距離であり、DLが、前記固定焦点投影レンズの前記拡大側から数えて最後の1枚のレンズの縮小側表面での直径である 固定焦点投影レンズ。」である点で一致し、次の点で一応相違する。 <相違点1> 「第2レンズ群」が、本願発明は、「いずれも球面レンズ」であるのに対し、引用発明4は、「第9レンズL9が2つの非球面を備えるとともにその径が第1レンズL1の径の1/5弱であり、後群GRのその余のレンズは球面レンズであ」る点。 (3)相違点1の判断 引用発明4は、「投写レンズ」に係るものであるところ、「前群GFが、第1レンズL1を含む6枚のレンズからなるものであって、第1レンズL1は、2つの非球面を備えるとともにその径が最大であり、前群GFのその余のレンズは球面レンズであり、後群GRが、第9レンズL9を含む7枚のレンズからなるものであって、2つの接合面を備えるものであり、第9レンズL9は、2つの非球面を備えるとともにその径が第1レンズL1の径の1/5弱であり、後群GRのその余のレンズは球面レンズであ」ることから、「第1レンズL1」と「第9レンズL9」(その径が第1レンズL1の径の1/5弱である。)が非球面レンズであり、その余のレンズが球面レンズである。 ところで、コストと性能はトレードオフの関係にあり、これらの調整を当業者は当然に考慮するところ、結像レンズの技術分野においては、コストを優先する観点から非球面レンズを用いずに球面レンズを用いたりすることや、性能(画質に係る性能となる。)を優先する観点から球面レンズに代えて非球面レンズを用いたりすることが、コストと性能をバランスさせるための手段として周知であると認められる(例えば、特開2017-125904号公報の【0041】・【0042】、及び特開2017-53887号公報の【0027】~【0029】参照。)。 上記のとおり、引用発明4は、「第1レンズL1」と「第9レンズL9」(その径が第1レンズL1の径の1/5弱である。)が非球面レンズであり、その余のレンズが球面レンズであることから、引用発明4に接した当業者は、コストと性能のバランスという観点から、上記周知技術を踏まえて、これらの非球面レンズに着目できるといえる。そして、これらの非球面レンズは、「第9レンズL9」の径が「第1レンズL1」の径の1/5弱となっていることから、径が大きい「第1レンズL1」を非球面レンズにした効果の方が「第9レンズL9」を非球面レンズにした効果よりも性能の観点での寄与が大きいことを当業者は認識できるといえる。しかるに、コストと性能を調整する手法として、コストを優先する観点から性能を大きく下げてコストを大きく削減するという手法のほか、コストを考慮しつつも性能も確保する観点から性能をやや下げてコストもやや削減するという手法も常套手段である。 そうすると、引用発明4に接した当業者は、コストと性能を調整するという観点から、性能をやや下げてコストもやや削減するという手法を採用し、それを具体化するために、「第9レンズL9」を非球面レンズから球面レンズに変更することを容易に想到できるというべきである。 (4)本願発明の効果について 本願発明の効果は、固定焦点投影レンズにおける各光学素子の全体の配置に基づいて、システム全長が制限される状況において、優れた映像品質を維持することができる(【0008】)ことであるところ、ここでの「映像品質」とは、本願の発明の詳細な説明及び図面(以下「本願明細書等」という。)の【0002】~【0004】の記載によれば、収差補正が十分にされていることを意味すると解される。しかるところ、当該効果は、本願発明の構成が奏するものとして、引用発明4及び前記周知技術に基づいて、当業者にとって顕著なものとはいえない。 すなわち、前記(2)のとおり、本願発明と引用発明4の相違点は、「第2レンズ群」を本願発明のように「いずれも球面レンズ」にしたか引用発明4のように非球面レンズを含めたか、ということのみであるから、本願発明の効果に係る「映像品質」という観点では、非球面レンズを含む引用発明4の方が本願発明よりも高くなるのが一般的である。そうすると、本願発明は、前記(3)のとおり、引用発明4に比べてコストをやや優先して性能を下げたことを「システム全長が制限される状況において、優れた映像品質を維持することができる」と評価しているにすぎないものといえるのであり、このような本願発明の効果を、引用発明4及び前記周知技術に基づいて、当業者にとって予測できる範囲を超える顕著なものということはできない。 (5)請求人の主張について 請求人は、引用発明4が本願発明の「6<D1/OAL<0.8と、2<D1/DL<4」の構成を開示しているとはいえない旨主張し、その根拠として、引用文献4に記載されている図面は、模式図であり設計図面のような正確性をもって描かれているとは限らないことを挙げるが、前記第4の1(2)アで認定したとおりである。 請求人は、本願発明の「6<D1/OAL<0.8」及び「2<D1/DL<4」の特定事項が、システムを可能な限りコンパクトにし、かつ、システムの投影照明を高めるためのものである旨主張し、後者の条件式については、下限以下では収差の抑制が困難となり、上限以上では装置の小型化に不利になる旨も主張するが、本願明細書等には、そのようなことは記載されていないことから、請求人の主張は本願明細書等の記載に基づかないものである。さらにいえば、上記特定事項は、前記第4の1(3)で認定したとおり、引用発明4も備えているから、請求人の主張は、相違点に基づく効果ではなく、その意味でも参酌できるものではない。 (6)小括 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明4及び前記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。 2 引用発明2に基づく進歩性欠如について (1)対比 ア 本願発明の「固定焦点投影レンズであって、」「固定焦点投影レンズ。」の特定事項について 引用発明2の「投射用ズームレンズ」は、「投射用」の「レンズ」であることから、本願発明でいう「投影レンズ」といえる。 したがって、本願発明と引用発明2とは、「投影レンズ」で共通する。 しかしながら、「投影レンズ」が、本願発明は、「固定焦点」の「レンズ」であるのに対し、引用発明4は、「ズームレンズ」である。 イ 本願発明の「絞りで分割され、且つ前記固定焦点投影レンズの拡大側から縮小側に向かって順番に配列された第1レンズ群および第2レンズ群を含み、」の特定事項について 引用発明2は、「拡大側から順に、第1レンズ群1Gと、第2レンズ群2Gと、第3レンズ群3Gと、開口絞りSと、第4レンズ群4Gと、第5レンズ群5Gと、を有する」ものであることから、引用発明2の「第1レンズ群1Gと、第2レンズ群2Gと、第3レンズ群3G」、「第4レンズ群4Gと、第5レンズ群5G」及び「開口絞りS」は、それぞれ、本願発明の「第1レンズ群」、「第2レンズ群」及び「絞り」に相当する。 そして、引用発明2は、「第1レンズ群1Gと、第2レンズ群2Gと、第3レンズ群3G」、「開口絞りS」、「第4レンズ群4Gと、第5レンズ群5G」の順に並んでいることから、「開口絞りS」で「第1レンズ群1Gと、第2レンズ群2Gと、第3レンズ群3G」と「第4レンズ群4Gと、第5レンズ群5G」を分けているものといえるのであり、そうすると、引用発明2の「第1レンズ群1Gと、第2レンズ群2Gと、第3レンズ群3G」と「第4レンズ群4Gと、第5レンズ群5G」は、本願発明でいう「絞りで分割され」るものといえ、当該「第1レンズ群1Gと、第2レンズ群2Gと、第3レンズ群3G」及び「第4レンズ群4Gと、第5レンズ群5G」は、それぞれ、本願発明の「第1レンズ群」及び「第2レンズ群」に相当するといえる。また、引用発明2は、「拡大側から順に、第1レンズ群1Gと、第2レンズ群2Gと、第3レンズ群3Gと、開口絞りSと、第4レンズ群4Gと、第5レンズ群5Gと、を有する」ものであることから、引用発明2の「第1レンズ群1Gと、第2レンズ群2Gと、第3レンズ群3G」と「第4レンズ群4Gと、第5レンズ群5G」は、本願発明でいう「前記固定焦点投影レンズの拡大側から縮小側に向かって順番に配列された」ものといえる。 したがって、引用発明2は、本願発明の上記特定事項を備えている。 ウ 本願発明の「前記第1レンズ群が、屈折力を有する6~8枚のレンズを含み、且つ2つの非球面レンズ表面を含み、」の特定事項について 引用発明2は、「第1レンズ群1Gは2つのみ非球面を備え、第1レンズ群1G、第2レンズ群2G及び第3レンズ群3Gは8枚のレンズからな」るものであるところ、当該「第1レンズ群1G、第2レンズ群2G及び第3レンズ群3G」は、前記イで説示したとおり、本願発明でいう「第1レンズ群」に相当するものであることから、引用発明2は、本願発明でいう「前記第1レンズ群が、屈折力を有する6~8枚のレンズを含み、且つ2つの非球面レンズ表面を含」むものといえる。 したがって、引用発明2は、本願発明の上記特定事項を備えている。 エ 本願発明の「前記第2レンズ群の屈折力が、正であり、屈折力を有する5~8枚のレンズを含み、且つ2つの接合面を含み、前記屈折力を有するレンズが、いずれも球面レンズであり、」の特定事項について 引用発明2は、「第4レンズ群4Gの屈折力は正であり、第5レンズ群5Gの屈折力は正であ」ることから、「第4レンズ群4G」と「第5レンズ群5G」を合わせたものである、「開口絞りS」から後ろのレンズ群の屈折力も正であるといえ、さらに、当該「第4レンズ群4G及び第5レンズ群5G」は、前記イで説示したとおり、本願発明でいう「第2レンズ群」に相当するものであることから、引用発明2は、本願発明でいう「第2レンズ群の屈折力が、正であ」るものといえる。 引用発明2は、「第4レンズ群4Gは4つの接合面を備え、第4レンズ群4G及び第5レンズ群5Gは、全て球面の8枚のレンズからなるものであ」るところ、本願発明の「2つの接合面を含み」という構成は、本願明細書等の【0016】の「第2レンズ群G2は、少なくとも2つの接合面を含む。本実施形態において、第2レンズ群G2は、3つの接合面S16、S17、S20を含む。」という記載からみて、(2つに限定されず)少なくとも2つの接合面を含むものと解されることから、当該「第4レンズ群4G及び第5レンズ群5G」は、本願発明でいう「屈折力を有する5~8枚のレンズを含み、且つ2つの接合面を含み、前記屈折力を有するレンズが、いずれも球面レンズであ」るものといえる。 したがって、引用発明2は、本願発明の上記特定事項を備えている。 オ 本願発明の「前記固定焦点投影レンズが、0.6<D1/OAL<0.8と、2<D1/DL<4とを満たし、D1が、前記固定焦点投影レンズの前記拡大側から数えて1枚目のレンズの拡大側表面での直径であり、OALが、前記固定焦点投影レンズ両端の最も外側のレンズ表面の間の光軸上の距離であり、DLが、前記固定焦点投影レンズの前記拡大側から数えて最後の1枚のレンズの縮小側表面での直径である」の特定事項について 引用発明2の「第1サブレンズ群1aの拡大側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の直径」は、本願発明の「投影レンズの前記拡大側から数えて1枚目のレンズの拡大側表面での直径」である「D1」に相当する。 引用発明2の「第5レンズ群5Gの縮小側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の直径」は、本願発明の「投影レンズの前記拡大側から数えて最後の1枚のレンズの縮小側表面での直径」である「DL」に相当する。 引用発明2は、「第1サブレンズ群1aの拡大側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の直径」(本願発明の「D1」)を、「第1サブレンズ群1aの拡大側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)と第5レンズ群5Gの縮小側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の間の広角端における光軸上の距離」(本願発明の「OAL」)で除算した値が、「有効数字2桁として0.61であ」ることから、本願発明でいう「投影レンズが、0.6<D1/OAL<0.8」を広角端においては満たすものといえる。 引用発明2は、「第1サブレンズ群1aの拡大側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の直径」(本願発明の「D1」)を、「第5レンズ群5Gの縮小側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の直径」(本願発明の「DL」)で除算した値が、「有効数字2桁として2.8である」ことから、本願発明でいう「投影レンズが、2<D1/DL<4」を満たすものといえる。 したがって、本願発明と引用発明2とは、「前記投影レンズが、2<D1/DL<4とを満たし、D1が、前記固定焦点投影レンズの前記拡大側から数えて1枚目のレンズの拡大側表面での直径であり、」「DLが、前記固定焦点投影レンズの前記拡大側から数えて最後の1枚のレンズの縮小側表面での直径である」点で共通する。 しかしながら、「D1/OAL」が、本願発明は、「0.6<D1/OAL<0.8」「を満た」すものであるのに対し、引用発明2は、それを広角端においては満たすものの、その他の位置においては満たすのか不明である。 (2)一致点及び相違点の認定 前記(1)によれば、本願発明と引用発明2とは、 「投影レンズであって、 絞りで分割され、且つ前記投影レンズの拡大側から縮小側に向かって順番に配列された第1レンズ群および第2レンズ群を含み、 前記第1レンズ群が、屈折力を有する6~8枚のレンズを含み、且つ2つの非球面レンズ表面を含み、 前記第2レンズ群の屈折力が、正であり、屈折力を有する5~8枚のレンズを含み、且つ2つの接合面を含み、前記屈折力を有するレンズが、いずれも球面レンズであり、 前記投影レンズが、 2<D1/DL<4とを満たし、 D1が、前記投影レンズの前記拡大側から数えて1枚目のレンズの拡大側表面での直径であり、DLが、前記投影レンズの前記拡大側から数えて最後の1枚のレンズの縮小側表面での直径である 投影レンズ。」である点で一致し、次の点で一応相違する。 <相違点2> 「投影レンズ」が、本願発明は、「固定焦点」レンズであるのに対し、引用発明2は、「ズームレンズ」である点。 <相違点3> 「D1/OAL」が、本願発明は、「0.6<D1/OAL<0.8」を満たすものであるのに対し、引用発明2は、それを広角端においては満たすものの、その他の位置においては満たすのか不明である点。 (3)相違点2及び相違点3の判断 引用発明2は、「ズームレンズ」であるところ、ズームレンズは各ズームポジション毎に一つの成立したレンズ系であり、各ズームポジションにおけるレンズ系の構成は固定焦点レンズといえることから、引用発明2の広角端におけるズームレンズを固定焦点レンズとして用いることは、当業者にとって容易である。 そして、引用発明2の広角端におけるズームレンズを固定焦点レンズとして用いる場合に、引用発明2の「第1サブレンズ群1aの拡大側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)と第5レンズ群5Gの縮小側表面(光軸に平行な端部に至るまでのもの)の間の広角端における光軸上の距離」は、本願発明の「投影レンズ両端の最も外側のレンズ表面の間の光軸上の距離」である「OAL」に相当するといえることから、引用発明2の広角端におけるズームレンズを固定焦点レンズとして用いて、相違点2及び相違点3に係る本願発明の構成に至ることは、当業者にとって容易である。 (4)本願発明の効果について 本願発明の効果は、前記1(4)で説示したとおり、固定焦点投影レンズにおける各光学素子の全体の配置に基づいて、システム全長が制限される状況において、収差補正が十分にされていることであるところ、前記(2)及び(3)のとおり、引用発明2は、広角端において本願発明と同じレンズ系の構成を備えていることから、当該効果は、本願発明の構成が奏するものとして、引用発明2に基づいて、当業者にとって予測できる範囲を超える顕著なものということはできない。 (5)請求人の主張について 請求人の主張に対する判断は、前記1(5)と同様である。 (6)小括 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-013916

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