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特許拒絶査定不服審判

2023-013669

不燃式エアロゾル供給システムで使用するための物品

審判番号
2023-013669
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-554577
請求日
2023年08月14日
審決日
2024年08月19日
公報発行日
2025年02月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド
  • 【請求人代理人】池田 成人
  • 【請求人代理人】酒巻 順一郎
  • 【請求人代理人】野田 雅一
  • 【請求人代理人】柳 康樹
審判長/審判官
  • 審判長 鈴木 充
  • 審判官 竹下 和志
  • 審判官 間中 耕治
分類
P18 .113-WZ (A24D) / P18 .121-WZ (A24D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-554577「不燃式エアロゾル供給システムで使用するための物品」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 9月17日国際公開、WO2020/183166、令和 4年 5月11日国内公表、特表2022-525079〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件に係る出願(以下、「本願」という。)は、2020年(令和2年)3月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2019年3月11日、英国(GB))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。 令和4年12月 5日付け:拒絶理由通知 令和5年 3月13日 :意見書及び手続補正書の提出 同 年 4月 4日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。) 同 年 8月14日 :拒絶査定不服審判の請求書及び手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)の提出 第2 本件補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「【請求項1】 不燃式エアロゾル供給システムで使用するための物品であって、 エアロゾル生成材料と、 前記エアロゾル生成材料に接続されたマウスピースとを備え、前記マウスピースは前記物品のうち前記エアロゾル生成材料の下流の部分であり、前記マウスピースにおける差圧が少なくとも10mmH2Oであり、32mmH2O未満である、物品。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和5年3月13日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。 「【請求項1】 不燃式エアロゾル供給システムで使用するための物品であって、 エアロゾル生成材料と、 前記エアロゾル生成材料に接続されたマウスピースとを備え、前記マウスピースにおける差圧が少なくとも10mmH2Oであり、32mmH2O未満である、物品。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「マウスピース」の位置を「物品のうち前記エアロゾル生成材料の下流の部分」であるものに限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、「マウスピース」の位置が「物品のうち前記エアロゾル生成材料の下流の部分」であることは、願書に最初に添付した明細書の段落【0040】に記載されているから、本件補正は、同条第3項の規定に適合する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献 ア 引用文献の記載事項 令和5年4月4日付け拒絶査定で引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、国際公開第2018/215781号(以下、「引用文献」という。)には、関連する図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は、当審が付与した。以下同様。) (ア)「The article may have a total pressure drop < 120mm water column along its longitudinal axis. The pressure drop is preferably in the range of 5 to 40 mm water column and more preferably is in the range 10 to 30 mm water column. Such a consumable may be manufactured using conventional cavity-filter- making technology, well known within the tobacco industry and shown in US6537186 for example. In such prior art arrangements, a filter is manufactured with a distal filter portion, a cavity to receive typically a solid granular material such as activated carbon, and a mouth-end filter portion all held together by a paper overwrap. Products have also existed which utilised tobacco-derived material within said cavity to impart or attenuate flavour to the smoke as it passes through the filter.The current invention therefore allows production of consumables via readily- available high- speed production machinery, using proven manufacturing technology, with low material and production costs, material & design flexibility, and can be compatible with a variety of aerosol-generating systems. In some examples, the article may modify one or more other organoleptic properties of the aerosol (e.g. modifying the feel or smell or look of the aerosol to the user).」(第2ページ第31行-第3ページ第17行) (当審訳:物品は、その長手方向軸に沿って、総圧力損失<120mm水柱を有することができる。圧力降下は、好ましくは5~40mm水柱の範囲であり、より好ましくは10~30mm水柱の範囲である。このような消耗品は、タバコ業界ではよく知られており、例えばUS6537186に示されている従来のキャビティフィルター製造技術を用いて製造することができる。このような先行技術の配置では、フィルターは、遠位フィルター部分、活性炭のような典型的には固形粒状材料を受容する空洞、および紙オーバーラップによって一緒に保持された口端フィルター部分を備えて製造される。また、煙がフィルタを通過する際に煙に風味を付与または減衰させるために、前記空洞内に煙草由来の材料を利用した製品も存在した。従って、本発明は、容易に入手可能な高速製造機械による消耗品の製造を可能にし、実績のある製造技術を使用し、材料及び製造コストが低く、材料及び設計の柔軟性があり、様々なエアロゾル発生システムと互換性がある。いくつかの例では、物品は、エアロゾルの1つ以上の他の有機官能特性を変更することができる (例えば、使用者に対するエアロゾルの感触または匂いまたは外観を変更する)。) (イ)「As described herein, a non-combustible tobacco article means an article containing a tobacco-derived portion that is not intended to be combusted as a whole or in part during use, and no part of said article is intended to be lit during use. Furthermore the construction of said article resists ignition through the use of filter materials such as cellulose acetate at both the distal and mouth ends.」(第3ページ第26行-第30行) (当審訳:本明細書に記載されているように、不燃性タバコ物品とは、使用中に全体又は部分的に燃焼されることが意図されていないタバコ由来部分を含む物品を意味し、前記物品のいかなる部分も使用中に点火されることが意図されていない。さらに、前記物品の構造は、遠位端と口端の両方に酢酸セルロースのようなフィルター材料を使用することにより発火に抵抗する。) (ウ)「Figure 1 depicts the basic construction of the article of the invention. The mouth end 3 is the end of the article intended as the exit of the aerosol towards the user. The distal end 1 is the opposite end of the article, typically intended as the inlet for air and other materials into the article. A tobacco portion sits there between. By way of example, the length of the tobacco portion 2 is in the range 7mm to 17mm and preferably in the range 10mm to 13mm, the length of each of the filter portions 1 ,3 is in the range 3mm to 15mm and preferably in the range 4mm to 6mm and the diameter of the flavour container is in the range 5mm to 8.5mm. The dimensions depend upon a combination of the need to provide sufficient material within the tobacco portion 2 to provide a desired flavour effect whilst ensuring a balance between the three sections overall to provide an appropriate pressure drop whilst retaining overall product strength and compressibility. In the example of Figure 1 part 2 is a tobacco-derived portion, which can include single-grade tobacco, blended tobacco grades, leaf, stem, dust, reconstituted tobacco, washed tobacco, extracted tobacco, treated tobacco, tobacco extracts and mixtures thereof. The tobacco-derived portion 2 can be produced from tobacco plants by methods including harvesting, drying, cutting, shredding, grinding, extraction, reconstitution, extrusion and combinations thereof. The tobacco-derived portion 2 can be present in the physical form of leaf, stem, dust, reconstituted sheet, crimped, folded, shaped, beaded, granulated and mixtures thereof.」(第4ページ第20行-第5ページ第6行) (当審訳:図1は、本発明の物品の基本的な構造を示している。口端3は、使用者に向けたエアロゾルの出口として意図された物品の端である。遠位端1は、物品の反対側の端であり、通常、物品への空気及び他の物質の入口として意図されている。タバコ部分は、その間に位置する。例として、タバコ部分2の長さは7mmから17mmの範囲、好ましくは10mmから13mmの範囲であり、フィルター部分1,3のそれぞれの長さは3mmから15mmの範囲、好ましくは4mmから6mmの範囲であり、フレーバー容器の直径は5mmから8.5mmの範囲である。この寸法は、全体的な製品の強度と圧縮性を維持しながら適切な圧力降下を提供するために全体的に3つのセクション間のバランスを確保しながら、所望のフレーバー効果を提供するためにタバコ部分2内に十分な材料を提供する必要性の組み合わせに依存します。図1の例では、部分2はタバコ由来部分であり、単品タバコ、ブレンドタバコ等級、葉、茎、ダスト、再構成タバコ、洗浄タバコ、抽出タバコ、処理タバコ、タバコ抽出物およびそれらの混合物を含むことができる。タバコ由来部分2は、収穫、乾燥、切断、細断、粉砕、抽出、再構成、押出およびそれらの組み合わせを含む方法によってタバコ植物から製造することができる。タバコ由来部分2は、葉、茎、葉の物理的形態で存在することができる。) (エ)「In some examples, the pressure difference across either of the portions 1 ,3 is in the range 0.1 mm to 2mm water column per mm length of the section.」(第10ページ第30-31行) (当審訳:いくつかの例では、部分1,3のいずれかを横切る圧力差は、部分の長さ1mmあたり0.1mm~2mmの水柱の範囲である。) (オ)「In one embodiment of the present invention the tobacco derived portion 2 is generated by providing a blend of tobacco grades comprising flue cured and air- cured tobaccos with a chemical composition in accordance to Gothiatek○R(当審注:「○R」は、○の中にRの文字。) Standard, namely tobacco-specific nitrosamine (NNN + NNK) content of <1 mg/kg and benzo[a]pyrene content of <1.25ug/kg. Once blended, the tobacco is reduced in size by first shredding and then grinding to pass through a No.18 Mesh giving a particle size of =<1 mm. To the ground tobacco is added 50% equivalent mass of deionised water; 2% equivalent mass of flavourant - a 50:50 mix of menthol and mint oils; 0.375% equivalent mass pH modifying agent - sodium hydroxide. The resultant tobacco paste is passed through a Coperion extruder with barrel temperature 250oC and pressure 4atm linked to a pelletizer to produce a shaped material of particle size approximately 1.5mm diameter. The tobacco derived particles are then dried under vacuum to <10% moisture. The dried tobacco particles are then sieved to produce a fraction in the range 0.2mm ~ 1.25mm. The mouth end and distal end filter portions 1 ,3 are manufactured using a Hauni filter rod making machine. Filter portions 1 ,3 are made from cellulose acetate tow 6Y17 using 10.1 mg of tow per mm of filter length; plasticised with 12% weight/weight triacetin; 26gsm, 2000CU plugwrap affixed with PVA glue. Final filter portion dimensions are 8mm diameter and 6mm length. The assembly of the non-combustible tobacco article is carried out on a Molins cavity filter machine using a paper overwrap PPW 35 by SWM with a 0.1 % coating of AKD on the inner surface. The construction of the article is 6mm filter portion, 17mm cavity with 250mg tobacco-derived material, 6mm filter portion affixed with PVA glue. This generates a final article with a total pressure drop of 40~65mm water column and compressibility factor of -3% in the longitudinal axis.」(第14ページ第31行-第15ページ第22行) (当審訳:本発明の一実施形態では、タバコ由来部分2は、Gothatek(登録商標)規格に準拠した化学組成、すなわちタバコ特異的ニトロソアミン(NNN+NNK)含有量<1mg/kgおよびベンゾ[a]ピレン含有量<1.25ug/kgを有する煙道硬化タバコおよび空気硬化タバコからなるタバコ等級のブレンドを提供することによって生成される。ブレンドされたタバコは、まず細断され、次に18番メッシュを通過するように粉砕され、粒度=<1mmとなる。粉砕されたタバコに50%当量の脱イオン水、2%当量の香料(メンソールとミントオイルの50:50混合)、0.375%当量のpH調整剤(水酸化ナトリウム)を加える。得られたタバコペーストは、バレル温度250℃、圧力4atmのコペリオン製エクストルーダーを通過させ、ペレタイザーに連結し、粒径約1.5mmの成形材料を製造する。タバコ由来の粒子は真空下で水分10%未満まで乾燥される。乾燥されたタバコ粒子はふるい分けされ、0.2mm~1.25mmのフラクションが生成される。口端および遠位端フィルター部分1,3は、Hauniフィルターロッド製造機を使用して製造される。フィルター部分1,3は、フィルター長さ1mmあたり10.1mgのトウを使用した酢酸セルローストウ6Y17から作られ、12重量/重量のトリアセチンで可塑化し、26gsm、2000CUのプラグラップをPVA接着剤で貼り付けた。最終的なフィルター部分の寸法は直径8mm、長さ6mmである。不燃性タバコ製品の組み立ては、内面にAKDを0.1%コーティングしたSWM社製オーバーラップPPW35を使用し、モリンズ社製キャビティフィルター機で行われる。物品の構造は、6mmフィルター部分、250mgのタバコ由来物質を含む17mmキャビティ、PVA接着剤で貼り付けられた6mmフィルター部分である。これにより、40~65mm水柱の総圧力損失と、長手軸方向の圧縮率-3%の最終物品が得られる。) (カ)「FIG.1 [図:0001418788000001.jpg] 」 イ 上記アから認められる事項 (ア)記載事項(ウ)及びFIG.1の図示事項から、物品が、物品への空気及び他の物質の入口として意図されている遠位端1と、タバコ部分2と、使用者に向けたエアロゾルの出口として意図された物品の端である口端3とを備え、口端3がエアロゾルを生成するタバコ部分下流の部分に接続されているものと認められる。 また、記載事項(イ)から、この物品は、様々なエアロゾル発生システムと互換性がある不燃性タバコ物品であるといえる。 (イ)記載事項(ウ)から、フィルター部分1,3のそれぞれの長さが3mmから15mmの範囲であり、記載事項(エ)から、フィルター部分1,3のいずれかを横切る圧力差が、フィルター部分の長さ1mmあたり0.1mm~2mmの水柱の範囲であるから、フィルター部分3における圧力降下は、0.3mm~30mm水柱の範囲であるといえる。 そして、フィルター部分3は、上記(ア)の口端3を意味すると解されるから、口端3における圧力降下は、0.3mm~30mm水柱の範囲である。 (ウ)記載事項(オ)には、一実施形態として、フィルター部分の寸法を直径8mm、長さ6mmとすることで、不燃性タバコ製品の物品としての構造を、6mmフィルター部分と、250mgのタバコ由来物質を含む17mmキャビティ、PVA接着剤で貼り付けられた6mmフィルター部分とすることが開示されている。 ウ 引用発明 上記ア及びイを踏まえると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 〔引用発明〕 「様々なエアロゾル発生システムと互換性がある不燃性タバコ物品であって、 タバコ部分2と、 前記タバコ部分2に接続された口端3とを備え、前記口端3は前記不燃性タバコ物品のうち前記タバコ部分2の下流の部分であり、前記口端3における圧力降下が0.3mm~30mm水柱の範囲である、不燃性タバコ物品。」 (3)当審の判断 本件補正発明と、引用発明とを対比すると、引用発明の「不燃性タバコ物品」は、その機能、構成又は技術的意義から見て、本件補正発明の「物品」に相当する。同様に、「様々なエアロゾル発生システム」は、「不燃式エアロゾル供給システム」に相当する。 そして、引用発明の「様々なエアロゾル発生システムと互換性がある不燃性タバコ物品」は、「不燃性タバコ物品」が様々なエアロゾル発生システムで使用するための物品であることを意味するから、本件補正発明の「不燃式エアロゾル供給システムで使用するための物品」に相当する。 また、引用発明の「タバコ部分2」、「タバコ部分2に接続された口端3」及び「口端3は前記不燃性タバコ物品のうち前記タバコ部分2の下流の部分であ」ることは、それぞれ、本件補正発明の「エアロゾル生成材料」、「エアロゾル生成材料に接続されたマウスピース」及び「マウスピースは前記物品のうち前記エアロゾル生成材料の下流の部分であ」ることに相当する。 また、引用発明の「圧力降下」及び「mm水柱」は、それぞれ、本件補正発明の「差圧」及び「mmH2O」に相当する。 そして、引用発明の「0.3mm~30mm水柱」の範囲は、10mm~30mm水柱の範囲で、本件補正発明の「少なくとも10mmH2Oであり、32mmH2O未満である」範囲に重複するから、引用発明の「口端3における圧力降下が0.3mm~30mm水柱の範囲である」は、本件補正発明の「マウスピースにおける差圧が少なくとも10mmH2Oであり、32mmH2O未満である」に相当する。 よって、本件補正発明と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点は存在しない。 〔一致点〕 「 不燃式エアロゾル供給システムで使用するための物品であって、 エアロゾル生成材料と、 前記エアロゾル生成材料に接続されたマウスピースとを備え、前記マウスピースは前記物品のうち前記エアロゾル生成材料の下流の部分であり、前記マウスピースにおける差圧が少なくとも10mmH2Oであり、32mmH2O未満である、物品。」 よって、本件補正発明は、引用発明である。 なお、引用文献の記載事項(オ)から、引用文献には、実施形態としても、長さ6mmのフィルター部分をタバコ由来物質を含むキャビティ部分の両側にPVA接着剤で貼り付けるものが開示されている。 そして、引用文献の記載事項(エ)から、圧力差が、フィルター部分の長さ1mmあたり0.1mm~2mmの水柱の範囲であることを踏まえると、実施形態として開示されている長さ6mmのフィルターも、圧力降下は、0.6mm~12mm水柱の範囲であるといえる。 したがって、引用文献に実施形態として開示されたフィルターについても、圧力降下の範囲が、本件補正発明の「マウスピースにおける差圧」の「少なくとも10mmH2Oであり、32mmH2O未満である」範囲と重複するから、本件補正発明は、引用発明であるとの結論を裏付けるものである。 また、引用発明の「口端3における圧力降下」の「0.3mm~30mm水柱」の範囲が、本件補正発明の「マウスピースにおける差圧」の「少なくとも10mmH2Oであり、32mmH2O未満である」範囲と重複しない部分があることを一応の相違点とした場合についてさらに検討する。 引用文献の記載事項(ア)には、「物品は、その長手方向軸に沿って、総圧力損失<120mm水柱を有することができる。圧力降下は、好ましくは5~40mm水柱の範囲であり、より好ましくは10~30mm水柱の範囲である。」と記載されているから、物品全体の総圧力損失が「より好ましくは10~30mm水柱」である以上、引用発明の「口端3における圧力降下」の下限を少なくとも10mm水柱となるように設計することが困難であったとはいえない。 さらに、引用文献の記載事項(ア)から、フィルタを通過する際に煙に風味を付与または減衰させることが従来から行われていたことや、記載事項(ウ)から、フィルター部分3の寸法が、全体的な製品の強度と圧縮性を維持しながら適切な圧力降下を提供すること及び、所望のフレーバー効果を提供することを考慮して設計されることが示唆されていることを踏まえると、口端3のフィルターは、煙がフィルターを通過する際に煙に風味を付与または減衰させることや、エアロゾルの1つ以上の他の有機官能特性を変更すること等を考慮して、その圧力降下の程度を任意に設計し得るものといえる。 してみると、引用発明の「口端3における圧力降下」の範囲である「0.3mm~30mm水柱」を、本件補正発明で特定されている範囲である「少なくとも10mmH2Oであり、32mmH2O未満」にすることは、当業者が実験的に適宜なし得た設計的事項であるといわざるを得ない。 また、マウスピースにおける差圧が「少なくとも10mmH2Oであり、32mmH2O未満」であることが、この範囲外の差圧を有するマウスピースに対して、機能又は効果において当業者の予測を超えた臨界的意義を奏するものとも認められない。 (4)請求人の主張 請求人は、審判請求書において、「補正された請求項1は、「前記マウスピースは前記物品のうち前記エアロゾル生成材料の下流の部分であり」という構成要素が特定されております。このように定義されたマウスピースに関して、「前記マウスピースにおける差圧が少なくとも10mmH2Oであり、32mmH2O未満」であるという点は、各引用文献には何ら開示されておりません」と主張している。 しかしながら、引用発明の「口端3」は、不燃性タバコ物品のうちタバコ部分2の下流の部分であるし、「口端3における圧力降下が0.3mm~30mm水柱の範囲である」から、この主張は、当を得ない。 (5)まとめ 以上のとおり、本件補正発明は、引用発明であるから特許法第29条第1項第3号の発明に該当し、また、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (6)本件補正についてのむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 上記のとおり本件補正は却下されたので、本願の請求項1-30に係る発明は、令和5年3月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-30に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記1(2)に記載のとおりのものである。 第4 原査定における拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、また、下記引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 記 引用文献.国際公開第2018/215781号 第5 引用文献、引用発明 引用文献の記載事項、認定事項及び引用発明は、上記第2の2(2)ア-ウに記載したとおりである。 第6 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2(1)の本件補正発明から、「前記マウスピースは前記物品のうち前記エアロゾル生成材料の下流の部分であり、」に係る限定事項を削除したものであるから、本件補正発明と引用発明との間に相違点が存在しない以上、本願発明も、引用発明である。 また、上述のとおり、引用発明の「口端3における圧力降下」の範囲を、本件補正発明で特定されている範囲とすることは、当業者が容易になし得た事項であると判断されるのだから、本願発明においても、本願補正発明と同様の理由により、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号の発明に該当し、また、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない発明であるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-013669

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