2023-013250
成形容器用積層体、成形容器および包装体
- 審判番号
- 2023-013250
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-019327外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年08月07日
- 審決日
- 2025年10月28日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社DNP高機能マテリアル彦根
- 【請求人代理人】松村 直都
- 【請求人代理人】渡邉 彰
- 分類
- P18 .121-WZ (B32B) / P18 .55 -WZ (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 7項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成31年2月6日(優先権主張平成30年3月14日)の出願であって、その手続の経緯は、概略以下のとおりである。
8月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 本願請求項に係る発明
本願の特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明は、令和7年7月14日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載されたとおりの事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「底壁と、底壁の周縁から立ち上がった周壁と、周壁の上端縁から径方向外方にのびた水平環状のフランジとを備えているカップ状の成形容器を冷間成形するための材料として用いられる成形容器用積層体であって、金属箔層と、前記金属箔層の両面のうち成形容器の外側となる面に積層されてマット調の外表面層を構成している外側樹脂フィルム層とを備えており、前記外側樹脂フィルム層が、ポリオレフィン樹脂に、前記外表面層の外表面の光沢度が0.5~30%となるような配合量のオレフィン系エラストマーを添加した樹脂組成物からなるインフレーションフィルムによって構成されている、成形容器用積層体。」
第3 拒絶理由の概要
令和7年5月20日付けで当審が通知した拒絶理由通知は、概略以下のとおりである。
(進歩性)本件出願の請求項1~5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献>
第4 当審における判断
当審合議体は、令和7年7月14日の手続補正により特定された事項に対し、周知例として特公昭48-11817号公報(以下「引用文献3」という。)を引用し、上記第3に係る拒絶理由は解消していないものと判断する。
1 引用文献について
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載事項
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引用文献1には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審において付与した。また、「・・・」は記載の省略を意味する。以下同様。)。
・「【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、雑貨、雑誌等を包装する包装材に関するものであって、詳しく表面に印刷を施したり、和紙等をラミネートしたりすることなしに、単体でも使用することが可能なマット調(つや消し性)の積層フィルム及び該フィルムからなる包装材に関する。」
・「【0007】
即ち、本発明は、プロピレン系樹脂(a1)と、メルトフローレートが1g/10分以下の高密度ポリエチレン(a2)とを含有し、前記プロピレン系樹脂(a1)と前記高密度ポリエチレン(a2)との使用割合(質量比)(a1)/(a2)が20/80~70/30の範囲である表面樹脂層(A)と、
プロピレン系樹脂(b1)を含有してなる単層または多層の基材樹脂層(B)と、が積層されてなるマット調積層フィルムであって、積層フィルムの表面樹脂層(A)の、JIS B-0601に基づく表面粗さ(Ra)が0.5~2.0であることを特徴とするマット調積層フィルム、及び該フィルムからなる包装材を提供するものである。
・・・
【0010】
前記プロピレン系樹脂(a1)としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体、たとえばプロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよい。得られる積層フィルムにおけるマット感と、表面粗さの調整が容易である点から、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体を用いることが好ましく、これらを混合使用することが特に好ましい。」
・「【0024】
本発明の積層フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、樹脂層(A)、樹脂層(B)に用いる各樹脂又は樹脂混合物を、それぞれ別々の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィードブロック法等の方法により溶融状態で(A)/(B)の順で積層した後、インフレーションやTダイ・チルロール法等によりフィルム状に成形する共押出法が挙げられる。
・・・
【0025】
本発明の積層フィルムは、上記の製造方法によって、実質的に無延伸の多層フィルムとして得られるため、真空成形による深絞り成形等の二次成形も可能となる。
・・・
【0029】
また、樹脂層(B)とヒートシール可能な別のフィルムを重ねてヒートシールすることにより包装袋・容器・容器の蓋を形成することも可能である。
・・・。」
・「【0031】
実施例1
表面樹脂層(A)として、プロピレン単独重合体(密度:0.90g/cm3、MFR:9g/10分間)40部と高密度ポリエチレン(密度:0.955g/cm3、MFR:0.35g/10分間)40部とプロピレン-エチレンブロック共重合体(密度:0.91g/cm3、MFR:7g/10分間)20部とからななる混合物を用いた。また、中間層(i)として、プロピレン-エチレンブロック共重合体(密度:0.91g/cm3、MFR:7g/10分間)90部と直鎖状低密度ポリエチレン〔密度:0.905g/cm3、MFR:4g/10分〕10部とからなる混合物を用いた。更に、シール層(ii)としてプロピレン-エチレン共重合体(エチレン由来成分含量:5.8%、密度:0.90g/cm3、MFR:6g/10分間)75部と結晶性エチレン-1-オクテン共重合体(密度:0.88g/cm3、MFR:3g/10分)25部とからなる混合物を用いた。これらをそれぞれ3台の押出機に供給し、表面樹脂層(A)と中間層(i)とシール層(ii)の平均厚さの比が3:5:2となるように共押出して、厚さ30μmの3層フィルムを成形した。次いで、得られた3層フィルムの表面樹脂層(A)に、表面エネルギーが36mN/mになるようにコロナ放電処理を施して、積層フィルムを得た。」
・「【0045】
【表1】
[図:0001430405000001.jpg]
」
イ 引用文献1に記載の発明
上記アの記載、特に実施例1に着目すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「表面樹脂層(A)として、プロピレン単独重合体(密度:0.90g/cm3、MFR:9g/10分間)40部と高密度ポリエチレン(密度:0.955g/cm3、MFR:0.35g/10分間)40部とプロピレン-エチレンブロック共重合体(密度:0.91g/cm3、MFR:7g/10分間)20部とからなる混合物を用い、中間層(i)として、プロピレン-エチレンブロック共重合体(密度:0.91g/cm3、MFR:7g/10分間)90部と直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.905g/cm3、MFR:4g/10分)10部とからなる混合物を用い、シール層(ii)としてプロピレン-エチレン共重合体(エチレン由来成分含量:5.8%、密度:0.90g/cm3、MFR:6g/10分間)75部と結晶性エチレン-1-オクテン共重合体(密度:0.88g/cm3、MFR:3g/10分)25部とからなる混合物を用い、表面樹脂層(A)と中間層(i)とシール層(ii)の平均厚さの比が3:5:2となるように共押出して成型した、厚さ30μmの3層フィルムであって、光沢度が3.6%である、マット調の積層フィルム。」
(2)引用文献2
ア 引用文献2の記載事項
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引用文献2には、以下の事項が記載されている。
・「【0075】
また、本発明のレトルト殺菌用包装材料のガスバリア性基材フィルム13の基材フィルム5とアルミニウム箔12、アルミニウム箔12と共押出積層フィルム4はウレタン系接着剤を用いて公知のドライラミネーション法により積層される。
・・・
【0078】
さらに、前記レトルト殺菌用包装材料を用いて真空成型機や圧空成型機あるいは深絞り成型機により図6に示すような容器状の包装体30が作製される。」
・「【図4】
[図:0001430405000002.jpg]
・・・
【図6】
[図:0001430405000003.jpg]
」
イ 周知技術
上記アから、次の点は周知技術(以下「周知技術1」という。)であると認める。
「成形容器用積層体として、アルミニウム箔からなる層を設けること。」
(3)引用文献3
ア 引用文献3の記載事項
引用文献3には、以下の事項が記載されている。
・「
[図:0001430405000004.jpg]
」
(第1ページ左欄、第18~26行)
・「
[図:0001430405000005.jpg]
」
(第1ページ右欄、第1~13行)
・「
[図:0001430405000006.jpg]
」
(第6ページ、FIG.1)
・「
[図:0001430405000007.jpg]
」
(第6ページ、FIG.4)
イ 周知技術
上記アのFIG.4からみて、底壁と、底壁の周縁から立ち上がった周壁と、周壁の上端縁から径方向外方にのびた水平環状のフランジとを備えているカップ状の成形容器を形成していることが理解できる。そうすると、当該成形容器の形状も踏まえれば、次の点は周知技術(以下「周知技術2」という。)であると認める。
「熱可塑性樹脂を冷間で絞り加工し、底壁と、底壁の周縁から立ち上がった周壁と、周壁の上端縁から径方向外方にのびた水平環状のフランジとを備えているカップ状の成形容器を形成すること。」
2 本願発明について
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。
(ア)引用発明の「マット調の積層フィルム」における「表面樹脂層(A)」は、文字どおり表面に積層された層としてマット調を呈するものであるから、本願発明における「外側となる面に積層されてマット調の外表面層を構成している外側樹脂フィルム層」に相当する。
(イ)引用発明の「マット調の積層フィルム」は、成形容器用であるかはさておき、ひとまず本願発明の「積層体」に相当する。
(ウ)引用発明の「表面樹脂層(A)」は、「プロピレン単独重合体」と「高密度ポリエチレン」をそれぞれ40部有しているところ、これら「プロピレン単独重合体」と「高密度ポリエチレン」は、本願発明における「外側樹脂フィルム層」の「ポリオレフィン樹脂」に相当する。
(エ)引用発明では、「表面樹脂層(A)」として「プロピレン-エチレンブロック共重合体」を「20部」含めた「混合物」としており、また、「光沢度が3.6%であ」るものである。ここで、「プロピレン-エチレンブロック共重合体」は、オレフィン系エラストマーにほかならず、また、引用文献1の【0010】の記載からみて、当該「プロピレン-エチレンブロック共重合体」によって、マット感を調整しているものと理解できる。そうすると、引用発明における「表面樹脂層(A)」として、「プロピレン-エチレンブロック共重合体」を「20部」含めた「混合物」とし、また、その「光沢度が3.6%であ」るとした事項は、上記(ウ)と総合すれば、本願発明における「前記外側樹脂フィルム層が、ポリオレフィン樹脂に、前記外表面層の外表面の光沢度が0.5~30%となるような配合量のオレフィン系エラストマーを添加した樹脂組成物」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明の一致点、相違点は、以下のとおりである。
ア 一致点
「外側となる面に積層されてマット調の外表面層を構成している外側樹脂フィルム層とを備えており、前記外側樹脂フィルム層が、ポリオレフィン樹脂に、前記外表面層の外表面の光沢度が0.5~30%となるような配合量のオレフィン系エラストマーを添加した樹脂組成物によって構成されている、積層体。」
イ 相違点
<相違点1>
本願発明は、「底壁と、底壁の周縁から立ち上がった周壁と、周壁の上端縁から径方向外方にのびた水平環状のフランジとを備えているカップ状の成形容器を冷間成形するための材料として用いられる成形容器用積層体」であるのに対して、引用発明の「マット調の積層フィルム」は、そのような特定がなされていない点。
<相違点2>
本願発明では、「金属箔層」を有し、「前記金属箔層の両面のうち成形容器の外側となる面」に「外側樹脂フィルム層とを備え」たものであるのに対し、引用発明は、「マット調の積層フィルム」であって、金属箔の有無も含め、これらの点が特定されていない点。
<相違点3>
本願発明では、「外側樹脂フィルム層」を「インフレーションフィルムによって構成」しているのに対し、引用発明の「表面樹脂層(A)」は、インフレーションフィルムであるか否か不明である点。
(2) 判断
ア 相違点1、2について
相違点1、2は関連するため、まとめて判断するに、引用文献1には、上記1(1)ア、【0029】にあるとおり、引用発明のフィルムを用い、容器を形成することが可能である旨記載されている。そして、引用発明は、その材質からみて熱可塑性樹脂であるところ、熱可塑性樹脂を冷間で絞り加工し、底壁と、底壁の周縁から立ち上がった周壁と、周壁の上端縁から径方向外方にのびた水平環状のフランジとを備えているカップ状の成形容器を形成することは、上記1(3)イのとおり周知技術2である。
そうすると、引用文献1の上記教示により、引用発明の「マット調の積層フィルム」について、容器を形成するための材料として用いることとしつつ、周知技術2を採用して、冷間で深絞り加工を行うことによって成形するカップ状の成形容器用として供することは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、成形容器用積層体として、アルミニウム箔からなる層を設けることは、上記1(2)イのとおり周知技術1であり、引用発明を成形容器用として供するにあたり、さらに当該周知技術1を適用することも、当業者が容易に想到し得たことである。
ここで、引用発明は、引用文献1の【0007】の記載のとおり、「表面樹脂層(A)」によってマット調を表現しているものであるから、当該周知技術1を適用した場合、アルミニウム箔、すなわち金属箔層の両面のうち成形容器の外側となる面に「表面樹脂層(A)」を設けることは、当業者にとって自明である。
イ 相違点3について
引用文献1には、上記1(1)ア、【0024】にあるとおり、フィルムをインフレーションにより製造することが示唆されているし、これは当該技術分野における一般的な手法の一つである。
そうすると、引用発明の「表面樹脂層(A)」をインフレーションフィルムによって構成することは、当業者が適宜なし得た事項である。
(3)本願出願人の主張について
本願出願人は、令和7年7月14日の意見書において、概ね次の主張をしている。
ア 引用文献1には、印刷やその他の基材のラミネート等を行わずに、十分なマット感を得ることを課題として記載(【0005】等)されており、また、曇り度を75%以上とすることが示され、金属箔をラミネートすることは記載も示唆もなく、むしろ阻害要因があること。(意見書第2ページ第23行~第41行)
イ 引用文献1には、真空成形による深絞り成形等の二次成形が可能となる旨記載(【0025】)されているところ、真空成形は加熱状態で行うものであり、本願発明の冷間成形とは明らかに区別されること。(同第42行~第47行)
しかし、当該アに関し、引用文献1は、印刷や他の基材等があってもなくても、引用発明の「マット調の積層フィルム」それ自体でマット調を表現しようというものであり、印刷層や他の基材を設けることを排除したものでないことは明らかである。そして、本願出願人は、金属箔ラミネートの阻害要因として、引用文献1では曇り度を高くしている点を指摘するものであるが、曇り度を高くしたものに対して金属箔ラミネートを付加したとしても、マット調の外観は得られるものであり、本願出願人の主張する阻害要因は有しない。
また、当該イに関しても、引用文献1の当該記載は、二次成形方法の一つとして真空成形を例示しているにすぎず、他の成形方法の採用を妨げるものではないことは明らかである。
そして、いずれの点についても、当業者にとって容易想到であることは上記(2)のとおりである。
(4)小括
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献1に記載の事項、周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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