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特許拒絶査定不服審判

2023-013160

スポンジチタンの製造方法

審判番号
2023-013160
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-119023
請求日
2023年08月04日
審決日
2024年08月30日
公報発行日
2024年09月27日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
  • 【請求人】東邦チタニウム株式会社
  • 【請求人代理人】アクシス国際弁理士法人
審判長/審判官
  • 審判長 粟野 正明
  • 審判官 井上 猛
  • 審判官 佐藤 陽一
分類
P18 .113-WY (C22B) / P18 .121-WY (C22B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第37条、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-119023「スポンジチタンの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和3年1月14日出願公開、特開2021-4399、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和1年6月26日の出願であって、令和4年11月14日付けで拒絶理由通知がされ、令和5年1月20日に意見書及び手続補正書が提出され、同年4月21日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年8月4日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の理由の概要 原査定の理由の概要は次のとおりである。 本願請求項1~2、5に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 また、本願請求項1~2、5に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特公昭59-042060号公報 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正(令和5年8月4日提出の手続補正書による補正)は、当該補正前の請求項1に記載された「有効空間高さHs」という記載を、「有効空間高さHe」とする補正である。 当該補正は、願書に最初に添付した明細書の段落【0029】、【0035】の記載に基づくものであるから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。 また、当該補正は、補正前の請求項1に記載された「有効空間高さHs」という記載を、「有効空間高さHe」とするものにすぎないから、補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明と、補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明とが、同一の特別な技術的特徴を有していることにより、これらの発明が単一の一般的発明概念を形成するように連関している技術的関係を有することにより、特許法第37条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものとなるようにしたものである。 そして、当該補正は、補正前の請求項1に記載された「有効空間高さHs」という記載が誤りで、補正後の請求項1に記載された「有効空間高さHe」という記載が正しいことが、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載から明らかで、当業者であればそのことに気付いて補正後の趣旨に理解するのが当然であるといえるから、誤記の訂正を目的とするものである。 したがって、審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項に適合するとともに、同法同条第5項第3号に掲げる事項を目的とするものに該当する。 なお、審判請求時の補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものではないから、同法同条第6項において準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 第4 本願発明 本願請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明6」という。)は、上記第3で検討したとおり、令和5年8月4日提出の手続補正書により適法に補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 【請求項1】 金属製還元反応容器内で、金属マグネシウムを含む溶融浴に四塩化チタンを供給し、スポンジチタン塊を生成する還元工程を含む、スポンジチタンの製造方法であって、 前記還元工程で、四塩化チタンの供給量が、少なくとも、四塩化チタンの総供給量の50質量%に達するまでの間、 四塩化チタンを前記総供給量の10質量%供給する毎に、前記溶融浴の浴面の総移動距離を、金属製還元反応容器内の有効空間高さに対する比で、0.12以上とし、かつ、 高さ方向における前記浴面の位置での金属製還元反応容器の側壁の温度を、700℃~950℃の範囲内とし、 四塩化チタンの供給を開始したときから四塩化チタン50質量%を供給するまでの間の期間において、金属製還元反応容器内の有効空間高さHeと、前記浴面の高さの最高値Hsmaxと、前記浴面の高さの最低値Hsminとが、(Hsmax-Hsmin)/He≧0.15の関係を満たす、スポンジチタンの製造方法。 【請求項2】 前記還元工程で、金属製還元反応容器内で生成する塩化マグネシウムを、金属製還元反応容器から断続的に排出する、請求項1に記載のスポンジチタンの製造方法。 【請求項3】 四塩化チタンを総供給量に対して7質量%~10質量%供給する間に1回の頻度で、前記塩化マグネシウムを排出する、請求項2に記載のスポンジチタンの製造方法。 【請求項4】 1回当たりの前記塩化マグネシウムの排出量を、還元工程全体での塩化マグネシウム総排出量の5質量%~12質量%とする請求項2又は3に記載のスポンジチタンの製造方法。 【請求項5】 前記還元工程で、金属製還元反応容器内に金属マグネシウムを断続的に供給する、請求項1~4のいずれか一項に記載のスポンジチタンの製造方法。 【請求項6】 前記還元工程で、金属製還元反応容器の円筒状の側壁の内面に、壁面生成スポンジチタンが、該内面から半径方向の内側に盛り上がって形成され、 前記壁面生成スポンジチタンの半径方向の最大厚みが200mm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のスポンジチタンの製造方法。 第5 当審の判断 1 引用文献1に記載された事項、引用文献1に記載された発明 (1)引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の記載がある。なお、「・・・」は、記載の省略を意味する。 ア「下方にロストルを有する容器内に溶融保持された金属Mg上にTiCl4を導き両者の反応により金属Tiを生成し該Tiの本質的部分を上記ロストル上に堆積せしめる方法において、該ロストルの上面から本質的に隔たつた該容器の上部に浴面が到達すべく金属Mgを溶融保持せしめた後TiCl4を供給して反応を開始せしめ、更に同一工程中において副生成するMgCl2を容器外へ排出せしめることにより該MgCl2の上方に存在する金属Mgの浴面のレベルを本質的に限定されかつロストルから隔たつた範囲に保ち、かく制御された金属Mgの浴面上で反応を進行せしめ、一方生成するTiをロストル上に沈降堆積させることを特徴とする金属Tiの製造方法。」(特許請求の範囲) イ「本発明はクロル法による金属Tiの製造方法、特に還元ルツボ内に別の容器(内筒)を配置し、この容器内で溶融金属MgとTiCl4との反応によりスポンジ状Tiを製造する方法の改良に関する。」(第1欄第30行~第34行) ウ「本発明者の知見によれば、溶融Mgを保持せる容器の上部に位置するMg浴面でTiCl4との反応を進行させた場合には、生成したTiは溶融状態のMgやMgCl2中を沈降し容器底部に設けられたロストル面上に堆積し、また器壁面上に析出したスポンジもある程度の大きさに成長すると器壁から離れて落下して同様に堆積する。」(第2欄第34行~第3欄第3行) エ「従つて本発明はかゝる知見に基き、反応容器の上部の限定された部分で主たる還元反応を実施することによつて生成したTiを容器底部のロストル上に順次堆積せしめ、こうして一定条件下で反応を継続することを可能にし、同時に析出したTiスポンジ容器内に緻密に堆積させてバツチ当りの析出量を増大することも可能にしたものであつてその要旨とするところは、・・・金属Tiの製造方法に存する。」(第3欄第3行~第25行) オ「Mgの浴面位はTiCl4の還元反応が主としてこのジヤケツトに対応する内筒空間の部分で進行する様に調整される。」(第3欄第35行~第37行) カ「実施例 本質的に第1図に示された構成の装置を用いた。内筒は内径1.6m、肉厚19mmのSUS410製で外筒は全長4.5m、内径1.7m、肉厚32mmのSUS316製で、内筒の器底から約2~3mの高さに相当する部分の外面に冷気吹込用のジヤケツトが設けられている。炉は外径2.5m、全高5mの円筒状で鉄板製の外被を有する密閉構造のものを用いた。ヒーターはこのジヤケツトの近傍の部分が他から独立して制御可能となっている外、更に幾つかの部分ごとに制御可能に構成されている。分解されている内筒に、溶融時に浴面が内筒の器底から約2.3mの位置に達する様に計算された約7.8トンのMg塊が装入された。装置を組立て外筒内の空間をアルゴン雰囲気とし、炉により全体を約800℃まで加熱して金属Mgを溶融した後、内筒頂部の導入管を通じてTiCl4を400kg/時の割合で液状にて吹込んだ。反応の進行につれて浴面位が変化するが、これはTiCl4の装入量からの計算により推定し、また内筒内外の差圧から検知し、反応開始後6時間から外筒底部の融液排出手段を通じて3時間毎に約1.2トンずつ抜出した。反応の進行とともに浴面付近の温度も上昇するのでこの部分のヒーターへの通電の中断並びに冷却ジヤケツトへの空気送入操作によつてこの部分の温度を約950℃以下(内筒内面)に維持して生成Tiの内筒材との合金形成による汚染を避け、一方その他の部分は約800℃に保つて融液の抜出操作を容易にした。この様な工程を延べ50時間行なつた後結局約5.1トンのスポンジ状Tiを含む内容物にて内筒内空間の約90%が充填されている内筒を回収した。」(第4欄第31行~第5欄第18行) キ「以上詳述した様に本発明においては反応が主として進行する領域が、1)特定の位置に限定され、反応の外部からの確実な制御が行なわれる様になつたことにより a)TiCl4の供給速度を増す時の反応領域の過度の温度上昇並びにこれに起因する生成Tiの反応容器材による汚染が効果的に回避されるので、高収率にて生産速度を増大することができる。 b)更に反応の全期間を通じて一定速度でTiCl4の供給を行なえるのでほゞ一定の品質・性状のTiが得られ、製品の歩留りが向上する。 2)生成物を保持すべきロストルから隔たつた上方に位置することにより、析出したTiは順次ロストル上に堆積していくので大きな空間の埋め残しはなく、内容空間の利用効率が向上する。 等の利点が得られるものである。」(第5欄第24行~第6欄第16行) (2)引用文献1に記載された発明 引用文献1の上記(1)の記載によれば、特に、実施例に着目すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「分解されている、内径1.6m、肉厚19mmのSUS410製の内筒に、溶融時に浴面が内筒の器底から約2.3mの位置に達するように計算された約7.8トンのMg塊が装入され、 装置を組立て、全長4.5m、内径1.7m、肉厚32mmのSUS316製の外筒内の空間をアルゴン雰囲気とし、外径2.5m、全高5mの円筒状で鉄板製の外被を有する密閉構造の炉により全体を約800℃まで加熱して金属Mgを溶融した後、内筒頂部の導入管を通じてTiCl4を400kg/時の割合で液状にて吹込み、 反応の進行につれて変化する浴面位は、TiCl4の装入量からの計算により推定し、また内筒内外の差圧から検知し、反応開始後6時間から外筒底部の融液排出手段を通じて3時間毎に約1.2トンずつ抜出し、 反応の進行とともに温度が上昇する浴面付近の部分の内筒内面の温度を約950℃以下に維持し、その他の部分は約800℃に保ち、 この様な工程を延べ50時間行なつた後、約5.1トンのスポンジ状Tiを含む内容物にて内筒内空間の約90%が充填されている内筒を回収する、スポンジ状金属Tiの製造方法。」 2 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明における「内径1.6m、肉厚19mmのSUS410製の内筒」は、引用文献1の上記1(1)イの記載によれば、反応(還元)を行うための容器と解されるから、本願発明1における「金属製還元反応容器」に相当する。 イ 引用発明において、内筒に装入されたMg塊が加熱されることにより「溶融した」「金属Mg」は、本願発明1における「金属マグネシウムを含む溶融浴」に相当する。そして、引用発明において、溶融した金属Mgが装入された内筒の「内筒頂部の導入管を通じてTiCl4を400kg/時の割合で液状にて吹込」むことは、本願発明1において、金属マグネシウムを含む溶融浴に「四塩化チタンを供給」することに相当する。 ウ 引用発明において、「この様な工程を延べ50時間行なつた後、約5.1トンのスポンジ状Tiを含む内容物にて内筒内空間の約90%が充填されている内筒を回収する」ことは、引用文献1の上記1(1)イの記載によれば、溶融した金属MgとTiCl4との反応(還元)によりスポンジ状Tiを製造することと解されるから、本願発明1における「スポンジチタン塊を生成する還元工程」に相当する。 エ 引用発明における「スポンジ状金属Tiの製造方法」は、本願発明1における「スポンジチタンの製造方法」に相当する。 オ 引用発明において、「反応の進行とともに温度が上昇する浴面付近の部分の内筒内面の温度を約950℃以下に維持し、その他の部分は約800℃に保」つことは、本願発明1において、「高さ方向における前記浴面の位置での金属製還元反応容器の側壁の温度を、700℃~950℃の範囲内と」することに相当する。 カ したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「金属製還元反応容器内で、金属マグネシウムを含む溶融浴に四塩化チタンを供給し、スポンジチタン塊を生成する還元工程を含む、スポンジチタンの製造方法であって、 高さ方向における前記浴面の位置での金属製還元反応容器の側壁の温度を、700℃~950℃の範囲内とする、スポンジチタンの製造方法。」 (相違点) (相違点1)本願発明1は、「前記還元工程で、四塩化チタンの供給量が、少なくとも、四塩化チタンの総供給量の50質量%に達するまでの間、四塩化チタンを前記総供給量の10質量%供給する毎に、前記溶融浴の浴面の総移動距離を、金属製還元反応容器内の有効空間高さに対する比で、0.12以上と」するものであるのに対し、引用発明は、このようなことが特定されていない点。 (相違点2)本願発明1は、「四塩化チタンの供給を開始したときから四塩化チタン50質量%を供給するまでの間の期間において、金属製還元反応容器内の有効空間高さHeと、前記浴面の高さの最高値Hsmaxと、前記浴面の高さの最低値Hsminとが、(Hsmax-Hsmin)/He≧0.15の関係を満たす」ものであるのに対し、引用発明は、このようなことが特定されていない点。 (2)相違点についての判断 ア 相違点1について (ア)まず、相違点1が実質的な相違点であるか否かについて検討する。 a 引用文献1には、相違点1に係る発明特定事項、すなわち、「前記還元工程で、四塩化チタンの供給量が、少なくとも、四塩化チタンの総供給量の50質量%に達するまでの間、四塩化チタンを前記総供給量の10質量%供給する毎に、前記溶融浴の浴面の総移動距離を、金属製還元反応容器内の有効空間高さに対する比で、0.12以上と」することについては、何ら記載されておらず、また、そのようなことが技術常識であるともいえない。 b(a)もっとも、引用発明は、内筒に装入されたMg塊を加熱することにより金属Mgを溶融した後、内筒頂部の導入管を通じてTiCl4を400kg/時の割合で液状にて吹込むとともに、反応開始後6時間から外筒底部の融液排出手段を通じて3時間毎に約1.2トンずつ抜出し、この様な工程を延べ50時間行なうものであるから、その間、内筒内の浴面位、すなわち、浴面高さは変化するものと解される。 (b)ここで、内筒頂部の導入管を通じて吹込んだ液状のTiCl4が、当該内筒内において、溶融した金属Mgの上にそのまま液状の層として堆積すると仮定すると、内筒内の浴面高さの変化量の合計、すなわち、浴面高さの総移動距離は、以下(c)のとおり、算出することができる。 (c)液状のTiCl4は、400kg/時の割合で、内径1.6mの内筒に吹込まれることから、TiCl4の密度(室温)を1.73g/cm3、TiCl4の吹込み開始からt時間後の浴面高さの増分をΔHt(m)とすると、ΔHt(m)=((400×103(g/時))/(1.73×106(g/m3)))×t/(0.8(m)×0.8(m)×3.14)=0.115tとなる。 また、全吹込み時間は50時間であるから、TiCl4の全吹込み量に対する、吹込み開始からt時間後のTiCl4の吹込み量の比は、t/50で算出される。 そうすると、TiCl4の吹込み開始から全吹込み量の10質量%を吹込んだ時とは、TiCl4を5時間吹込んだ時である。また、反応開始後6時間までは、外筒底部の融液排出手段を通じて抜出されることはないから、5時間後の浴面高さの増分ΔHt(m)、すなわち、浴面高さの総移動距離を求めると、ΔHt(m)=0.115×5=0.575mと算出される。 一方、内筒内の有効空間高さは、不明であるものの、少なくとも外筒の高さ(全長)4.5mよりは低いと認められるところ、仮に、内筒内の有効空間高さを該外筒の高さ(全長)4.5mと等しいとして、浴面高さの総移動距離の、内筒内の有効空間高さに対する比を求めると、0.575/4.5=0.127となる。なお、実際には、内筒内の有効空間高さは4.5mより低いため、当該比は0.127より大きな値となる。 また、TiCl4の吹込み開始から全吹込み量の20質量%、30質量%、40質量%、50質量%を吹込んだ時とは、それぞれ、TiCl4を10時間、15時間、20時間、25時間吹込んだ時である。そして、反応開始後6時間以降は、外筒底部の融液排出手段を通じて3時間毎に約1.2トンずつ抜出されるため、この抜出しによる浴面高さの減分も、浴面高さの総移動距離に加算されるから、浴面高さの総移動距離の、内筒内の有効空間高さに対する比は、0.127より大きな値となるとなることは、明らかである。 そうすると、上記(b)の仮定が正しければ、相違点1は、実質的な相違点ではないといえる。 (d)しかしながら、実際には、内筒内にて還元反応が進むに従い、TiCl4及び溶融した金属Mgが消費されるとともに、スポンジ状Ti及びMgCl2が生成するから、これらTiCl4及び溶融した金属Mgの消費並びにスポンジ状Ti及びMgCl2の生成によっても、浴面高さは変化するものと認められる。上記(b)の仮定では、このような浴面高さの変化は考慮されていないから、上記(c)の計算式にて浴面高さの総移動距離を正確に算出できているかは不明である。 また、内筒内の圧力は明らかではないものの、内筒内面の温度は少なくとも約800℃であることから、液状で吹込まれたTiCl4の少なくとも一部は内筒内で気化していると推測される。そうであれば、液状で吹込んだTiCl4の全量が、溶融した金属Mgの上にそのまま液状の層として堆積しているとは必ずしもいえない。 以上のことを考慮すると、上記(b)の仮定は正しいとはいえない。 c してみれば、相違点1は、実質的な相違点である。 (イ)次に、相違点1の容易想到性について検討する。 a 上記(ア)aで述べたとおり、引用文献1には、相違点1に係る発明特定事項については、何ら記載されておらず、また、当該発明特定事項のようにすることが技術常識であるともいえない。 b 本願明細書の記載(【0009】~【0013】)によれば、本願発明1が解決しようとする課題は、「金属製還元反応容器の側壁の内面上への厚い壁面生成スポンジチタンの形成を抑制することができるスポンジチタンの製造方法を提供する」ことと認められる。 一方、引用文献1の上記1(1)ウの「器壁面上に析出したスポンジもある程度の大きさに成長すると器壁から離れて落下して同様に堆積する」との記載からみて、引用発明では、器壁面上でのスポンジチタンの成長はある程度許容されており、器壁面上でのスポンジチタンの成長を積極的に抑制しようとする課題は認識されていないといえる。 また、引用文献1の上記1(1)アの「MgCl2の上方に存在する金属Mgの浴面のレベルを本質的に限定」との記載、同エの「反応容器の上部の限定された部分で主たる還元反応を実施する」との記載、同オの「Mgの浴面位はTiCl4の還元反応が主としてこのジヤケツトに対応する内筒空間の部分で進行する様に調整される」との記載、同キの「本発明においては反応が主として進行する領域が、1)特定の位置に限定され、反応の外部からの確実な制御が行なわれる様になつた」との記載からみて、引用発明からは、浴面高さを積極的に上下に変動させようとする動機付けが存在するとはいえず、むしろ浴面高さの変動を本質的に限定することに意義を見いだしている。 このように、引用文献1には、相違点1に係る発明特定事項と相反する教示がされていることから、たとえ当業者といえども、引用発明において、浴面高さを積極的に上下に変動させることは容易に着想できるとはいえず、ましてや、浴面高さの総移動距離を相違点1に係る発明特定事項のように具体的な数値範囲で特定することも容易に着想できるとはいえない。 c 以上によれば、引用発明において、相違点1に係る発明特定事項を備えさせることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 (3)小括 したがって、相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明であるとはいえず、また、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 本願発明2~6について 本願発明2~6は、本願発明1を引用し、更に減縮した発明であって、本願発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、相違点1に係る発明特定事項を備えている。したがって、本願発明1について上記2で述べたのと同じ理由により、本願発明2~6は、引用発明であるとはいえず、また、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 4 まとめ 以上のとおりであるから、本願発明1~6は、引用文献1に記載された発明であるとはいえない。 また、本願発明1~6は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-013160

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