特許拒絶査定不服審判
2022-018789
スポンジチタン格納容器の製造方法及びスポンジチタンの管理方法
- 審判番号
- 2022-018789
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-143519
- 請求日
- 2022年11月22日
- 審決日
- 2024年12月03日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】東邦チタニウム株式会社
- 【請求人代理人】アクシス国際弁理士法人
- 審判長/審判官
- 審判長 金丸 治之
- 審判官 木原 裕二
- 審判官 田口 傑
- 分類
- P18 .121-WZ (B65D) / P18 .537-WZ (B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-143519号「スポンジチタン格納容器の製造方法及びスポンジチタンの管理方法」拒絶査定不服審判事件〔令和2年2月6日出願公開、特開2020-19506号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年7月31日の出願であって、その手続の経緯の概略は次のとおりである。
令和4年 2月 4日付け:拒絶理由通知書
令和4年 3月28日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 8月18日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(令和4年 8月30日 :原査定の謄本の送達)
令和4年11月22日 :審判請求書の提出
令和6年 7月19日付け:拒絶理由通知書
令和6年 9月19日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~9に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)は、令和6年9月19日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
上端縁に胴板カールを有する胴体と、前記胴体の上端開口に開閉可能であって、外周縁に蓋カールを有する天板と、前記胴板カールと前記蓋カールとの間に挟み込むためのガスケットとを備えた格納容器に、スポンジチタンを格納した後、前記蓋カールと前記胴板カールとを外周側から包み込むように締結バンドを取り付け、締結部材で前記締結バンドを締付ける締付け工程を含み、
前記締結部材の締付けトルク量が10N・m以上25N・m以下となり、
前記格納容器がオープン型ドラム缶である、スポンジチタン格納容器の製造方法。」
第3 当審拒絶理由の概要
令和6年7月19日付けで通知した拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。
拒絶理由(進歩性)
本願の請求項1~11に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
拒絶理由(サポート要件)
この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
具体的には、締結部材の締付けトルク量のみが特定された請求項1、7、9では、必ずしも、保管・輸送中における格納容器内の気密性を確保するという本願の課題を解決できないものである(請求項1、7、9を引用する請求項2~6、8、10、11も同様である。)。
<引用文献等一覧>
1.中国実用新案第201280280明細書
2.特開2003-300594号公報(技術常識を示す文献)
3.特開2001-180672号公報(技術常識を示す文献)
5.特開平9-29860号公報(技術常識を示す文献)
第4 当審の判断
当審は、以下に示すとおり、令和6年9月19日提出の手続補正書による補正及び意見書(以下「意見書」という。)の内容を考慮しても、上記第3に記載した拒絶理由(進歩性)及び拒絶理由(サポート要件)は解消していないと判断する。
1 引用文献
(1) 引用文献1の記載、引用発明等について
ア 引用文献1の記載
引用文献1には、以下の記載がある(翻訳は当審の訳による。)。なお下線は当審が付した。また「・・・」は省略を表す。以下同様である。
(ア)1ページ3行~5行
「
[図:0001418479000001.jpg]
(翻訳)
技術分野
この実用新案はスチールドラムの収容の技術分野に属し、開放型スチールドラム、特にスポンジチタン格納用のスチールドラムに関する。」
(イ)1ページ6行~23行
「
[図:0001418479000002.jpg]
(翻訳)
背景技術
既存のスチールドラムは、密閉型スチールドラムと開放型スチールドラムの2つのカテゴリーに分けられ、主に特定の物質を格納するために使用される。一般に、密閉型スチールドラムは、液体物質を格納し、その液体物質の漏洩を防ぐために使用される。この密閉型スチールドラムは、気密要件を満たすことができる。開放型スチールドラムは、固形物質の格納に使用され、一般に国家規格「格納容器用スチールドラム」GB/T 325-2000は気密性を規定していない。そのため、一部の特定固形物を開放型スチールドラムに収容し、その保管特性に応じて開放型スチールドラムに良好な気密性が要求される場合、既存の開放型スチールドラムでは対応できない。スポンジチタンの製造は一般にマグネシウム法を採用しているため、スポンジチタン製品中に少量の塩化マグネシウムが残留し、大気に触れると塩化マグネシウムが水分を吸収し、スポンジチタンの品質に影響を及ぼす。したがって、マグネシウムスポンジチタンの格納、輸送、保管の際には、スポンジチタンの品質を保護するために、格納容器内にアルゴンガスを充填する必要がある。国家規格GB/T 2524-2002「スポンジチタン」では、「スポンジチタンの格納ドラムは、プラスチックフィルムで裏打ちされ、大径の蓋で密封された亜鉛メッキスチールドラムである」と規定されている。大口径の蓋シールは、開放型スチールドラムのシール形式である。スポンジチタンの特有の保管特性により、スポンジチタンを開放型スチールドラムに詰めた後、スチールドラムを真空にし、その後アルゴンを充填する必要がある。開放型スチールドラムに充填された密封されたアルゴンガスは漏れることはない。これには、スポンジチタンを格納するための開放型スチールドラムが必要である。現在、国内外のスチールドラム製造企業が生産する開放型スチールドラムは気密要件を満たすことができない。金属スポンジチタンの格納、輸送、保管には使用できない。」
(ウ)1ページ24行~末行
「
[図:0001418479000003.jpg]
(翻訳)
実用新案の内容
既存の開放型スチールドラムはシール性が悪く、スポンジチタンの格納に使用できないという問題に鑑み、本実用新案はシール性が良好なスポンジチタン格納用スチールドラムを提供する。」
(エ)2ページ8行~10行
「
[図:0001418479000004.jpg]
(翻訳)
実用新案を使用してスポンジチタンを保持した後、ロックバレルフープの締結ボルトでロックバレルフープを締め付けることにより、蓋と胴体の間の良好なシールが達成され、気密要件を満たし、充填したアルゴン等の不活性ガスの漏れはない。」
(オ)2ページ17行~3ページ2行
「
[図:0001418479000005.jpg]
[図:0001418479000006.jpg]
(翻訳)
この実用新案については、添付の図面を参照して以下にさらに説明する。
スポンジチタン格納用スチールドラムは、底部7、胴部13、蓋3からなる。・・・胴体の上端部と蓋の端部をそれぞれ外側に向けて円弧状の断面を有するイヤリングを形成する。2つのイヤリングの間には円形のシールリング4があり、円形のロックバレルフープ2がイヤリングの外側に取り付けられる。ロックバレルフープの断面形状は、蓋の端のイヤリングの形状と一致する。ロックバレルフープを取り付ける目的は、イヤリングとそれらの間のシールリングを締め付けてシールを達成することである。したがって、シールの目的を達成し、取り付けを容易にするために、リングはロック形状のバレルフープに切り離された開口部がある。・・・開口部の両端のロックバレルフープに締結耳12があり、それらの間に締結ボルト1がある。・・・」
(カ)3ページ7行~末行
「
[図:0001418479000007.jpg]
(翻訳)
このスチールドラムを使用してスポンジチタンを格納する場合、作業員はまずスチールドラムの締結ボルト1を緩め、固定されているロックバレルフープ2を取り外し、ドラムの蓋3を開け、裏打ちされたビニール袋をドラムに挿入し、所定の梱包材を追加する。スポンジチタン製品の場合は、袋内にアルゴンガスを一定量充填し、フィルム袋の口を結び、スチールドラムの蓋3をかぶせ、ロックドラムフープ2をかぶせ、締結ボルト1を締めて、シールプラグを緩め、スチールドラム内の空気を抜き、アルゴンガスを充填し、シールプラグを締める。」
(キ)図1
「
[図:0001418479000008.jpg]
」
イ 引用文献1の記載から認定できる事項
(ア)上記ア(オ)の「胴体の上端部と蓋の端部をそれぞれ外側に向けて円弧状の断面を有するイヤリングを形成する。2つのイヤリングの間には円形のシールリング4があり、」という記載、及び上記ア(キ)のスチームドラムの右上に描かれた断面図をみるに、シールリング4は、2つのイヤリングの間に挟み込まれているといえる。
(イ)上記ア(オ)の「円形のロックバレルフープ2がイヤリングの外側に取り付けられる。ロックバレルフープの断面形状は、蓋の端のイヤリングの形状と一致する。ロックバレルフープを取り付ける目的は、イヤリングとそれらの間のシールリングを締め付けてシールを達成することである。」という記載、及び上記ア(キ)のスチームドラムの右上に描かれた断面図をみるに、ロックバレルフープ2は、2つのイヤリングを包み込むように取り付けられているといえる。
(ウ)上記ア(キ)のスチームドラムの上部の記号1で示される部分より、締結ボルト1に、ナットが螺合されていることが看取される。
(エ)上記ア(カ)によれば、スポンジチタン製品を格納したスチールドラムを製造しているので、スポンジチタン格納用スチールドラムの製造方法が開示されているといえる。
ウ 引用文献1に記載された発明
上記ア及びイを総合的に勘案すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「上端部にイヤリングを有する胴体13と、前記胴体13の上端部の開口に開閉可能であって、端部にイヤリングを有する蓋3と、2つのイヤリングの間に挟み込まれたシールリング4とを備えたスチールドラムに、スポンジチタンを格納した後、前記2つのイヤリングの外側から包み込むようにロックバレルフープ2を取り付け、締結ボルト1及びナットで前記ロックバレルフープ2を締付ける、スチームドラムが開放型スチームドラムである、スポンジチタン格納用スチールドラムの製造方法。」
(2) 引用文献2の記載、引用文献2の記載から認定できる技術常識について
ア 引用文献2の記載
引用文献2には、以下の記載がある。
「【0010】ドラム缶70の開口部縁(起立したドラム缶の上部、折り曲げられた縁)に蓋78の周縁部をかぶせ、同部分を締めつけバンド76で巻き回し、開口部縁と蓋の周縁部とが重なり合った部分を挟み込んで締め付ける。このバンドはリング状で、断面はくの字状、U字状、またはV字状になっている。リングには切れ目があり、その両端部にはS字環部77が溶接などで取りつけられている。このS字環部にボルト72を差し込み、反対側でボルトにナット74をセットし、このナットを締め込んでいくことで、バンドを締め上げる。これにより、締めつけバンドは蓋の外周に沿って円に近づき(両端部の間隔が狭まる)、くの字形状、U字状、またはV字状の断面は蓋の外周に沿った円の中心側へと移動して、くの字、U字、またはV字の形状により、蓋周縁部と容器上部縁のお互いを引き寄せ接近せしめる。蓋周縁部内側には、シール部材79が設けられているので、この引き寄せ接近により、蓋と容器の間のシールを実現している。蓋の取り外しにおいては、逆の動作が行なわれている。」
「【図4】
[図:0001418479000009.jpg]
」
イ 引用文献2の記載から認定できる技術常識
上記アを総合的に勘案すると、引用文献2には、以下の技術常識が記載されているといえる。
「オープンヘッドドラムにおいて、締結部材を所定のトルクで締め上げることで、胴体カールと蓋カールを接近させ、ガスケット(シール部材)により、オープンヘッドドラムのシール性を実現すること」
(3) 引用文献3の記載、引用文献3の記載から認定できる事項について
ア 引用文献3に記載された事項
引用文献3には、以下の記載がある。
「【0024】パッキン13は、天然ゴムやEPゴム等、一般的なものでよいが、長期使用時のひび割れ防止にはEP(エチレン・プロピレンゴム)が好ましい。パッキン13には、グリス等を適宜塗布して用いてもよい。たとえば、シリコングリス等塗布しておくことにより、シール性を高めることができる。
【0025】パッキン13の形状としては、図3に示すように、断面が半円形状や円形とすることにより、パッキン13と、収納本体11の開口部11a及び蓋部12の周縁部12aとを線接触させることができ、シール性をよりいっそう高めることが可能となる。」
イ 引用文献3の記載から認定できる事項
上記アを総合的に勘案すると、ガスケットへのグリスの塗布の有無やガスケットの形状などが気密性に影響を及ぼすことが分かる。
(4) 引用文献4の記載、引用文献4の記載から認定できる事項について
ア 引用文献4に記載された事項
引用文献4には、以下の記載がある。なお表の枠囲いは当審が追加したものである。
「【0046】実施例1
ポリウレタン発泡体の原液の原料を表1に示す。
【0047】
【表1】
[図:0001418479000010.jpg]
【0048】ポリウレタン原液の第1液として、ポリオールA50重量部、ポリオールC50重量部、架橋剤A1.5重量部、水0.7重量部および触媒0.7重量部の混合液を用意した。
【0049】ポリウレタン原液の第2液として、イソシアネートAを用意した。
【0050】第1液および第2液をいずれも22℃に調温した。
【0051】JIS Z-1600に規定のオープンドラムを連続的に製造する工程において、外面塗装の焼き付け直後に天蓋を本体から取り外し、これを裏返して20rpmの速度で回転させ、その外周縁に沿って設けられたガスケット溝に低圧式混合注入機を用いて、第1液と第2液を100/17.4の割合(重量比)で毎秒50gの速度で3秒間混合注入した。このとき、天蓋の表面温度は50℃であった。注入後90秒間経過後にポリウレタン発泡体は形成され、ガスケットがポリウレタン発泡体からなるオープンドラム用天蓋をえた。10分間経過後にこの天蓋とドラムの胴体との締め付けを行ない、翌日ドラム缶の性能を以下の性能の評価方法にもとづいて評価した。」
「【0052】[オープンドラムの性能の評価方法]オープンドラムは、いずれも天蓋と胴体を締め付けるバンドのボルトに350kgf・cmのトルクをかけて締め付けたもので評価を行なった。
【0053】(1)オープンドラムの気密性
(a)気密試験
ドラムを水平な地面の上に横置きして、内圧が0.2kgf/cm3になるまで天蓋の大栓から空気を入れたのちに密栓する。室温下で20分間放置後に内圧を測定し、内圧低下度(圧力差)を算出する。」
「【0060】(3)S金具開き
S金具開きとは、オープンドラムの天蓋と胴体の締め付けの難易度を表わすものである。オープンドラムの天蓋と胴体を締め付けるバンドのボルトに350kgf・cmのトルクをかけて締め付けたあとに、S金具(バンド両端のボルト締めのための金具)間の最短距離を測定する。
【0061】締め付けの難易度評価の評価基準は、以下のとおりである。
【0062】(評価基準)
○:従来の天然ゴム発泡体製ガスケットの天蓋と同様に十分に締め付けられ良好。
×:従来の天然ゴム発泡体製ガスケットの天蓋と比較し、締め付けが不十分となる。」
「【0073】実施例2
ポリウレタン発泡体の原液の第1液を表2に示すように調製した。
【0074】また、ポリウレタン発泡体の原液の第2液として、イソシアネートAを用意した。
【0075】つぎに、第1液と第2液の割合を表2に示すように変更し、また第1液と第2液の混合液の注入速度を毎秒38gに変えたほかは、実施例1と同様にしてオープンドラム用天蓋とガスケット用ポリウレタン発泡体を作製し、それらの評価を実施例1と同様にして行なった。その結果を表2に示す。
【0076】実施例3
ポリウレタン発泡体の原液の第1液を表2に示すように調製した。
【0077】また、ポリウレタン発泡体の原液の第2液として、イソシアネートBを用意した。
【0078】つぎに、第1液と第2液の割合を表2に示すように変更し、また第1液と第2液の混合液の注入速度を毎秒60gに変えたほかは、実施例1と同様にしてオープンドラム用天蓋とガスケット用ポリウレタン発泡体を作製し、それらの評価を実施例1と同様にして行なった。その結果を表2に示す。
【0079】実施例4
ポリウレタン発泡体の原液の第1液を表2に示すように調製した。
【0080】また、ポリウレタン発泡体の原液の第2液として、イソシアネートCを用意した。
【0081】つぎに、第1液と第2液の割合を表2に示すように変更し、また第1液と第2液の混合液の注入速度を毎秒42gに変えたほかは、実施例1と同様にしてオープンドラム用天蓋とガスケット用ポリウレタン発泡体を作製し、それらの評価を実施例1と同様にして行なった。その結果を表2に示す。
【0082】実施例5
ポリウレタン発泡体の原液の第1液を表2に示すように調製した。
【0083】また、ポリウレタン発泡体の原液の第2液として、イソシアネートCを用意した。
【0084】つぎに、第1液と第2液の割合を表2に示すように変更し、第1液と第2液の混合液とを混合し、得られた混合液をガスケット溝に注入する際に、天蓋を回転させずに静置し、それに代わって低圧式混合注入機のミキシングヘッドをガスケット溝に沿って移動させながら、ポリウレタン発泡体の厚さが均一となるように混合液を注入したほかは、実施例4と同様にしてオープンドラム用天蓋とガスケット用ポリウレタン発泡体を作製し、それらの評価を実施例1と同様にして行なった。その結果を表2に示す。
【0085】比較例1
ポリウレタン発泡体の原液の第1液を表2に示すように調製した。
【0086】また、ポリウレタン発泡体の原液の第2液として、イソシアネートBを用意した。
【0087】つぎに、第1液と第2液の割合を表2に示すように変更し、また第1液と第2液の混合液の注入速度を毎秒18gに変えたほかは、実施例1と同様にしてオープンドラム用天蓋とガスケット用ポリウレタン発泡体を作製し、それらの評価を実施例1と同様にして行なった。その結果を表2に示す。
【0088】比較例2
ポリウレタン発泡体の原液の第1液を表2に示すように調製した。
【0089】また、ポリウレタン発泡体の原液の第2液として、イソシアネートAを用意した。
【0090】つぎに、第1液と第2液の割合を表2に示すように変更し、また第1液と第2液の混合液の注入速度を毎秒100gに変えたほかは、実施例1と同様にしてオープンドラム用天蓋とガスケット用ポリウレタン発泡体を作製し、それらの評価を実施例1と同様にして行なった。その結果を表2に示す。
【0091】比較例3
ポリウレタン発泡体の原液の第1液を表2に示すように調製した。
【0092】また、ポリウレタン発泡体の原液の第2液として、イソシアネートBを用意した。
【0093】つぎに、第1液と第2液の割合を表2に示すように変更し、また第1液と第2液の混合液の注入速度を毎秒60gに変えたほかは、実施例1と同様にしてオープンドラム用天蓋とガスケット用ポリウレタン発泡体を作製し、それらの評価を実施例1と同様にして行なった。その結果を表2に示す。
【0094】比較例4
ポリウレタン発泡体の原液の第1液を表2に示すように調製した。
【0095】また、ポリウレタン発泡体の原液の第2液として、イソシアネートAを用意した。
【0096】つぎに、第1液と第2液の割合を表2に示すように変更し、また第1液と第2液の混合液の注入速度を毎秒52gに変えたほかは、実施例1と同様にしてオープンドラム用天蓋とガスケット用ポリウレタン発泡体を作製し、それらの評価を実施例1と同様にして行なった。その結果を表2に示す。
【0097】比較例5
ポリウレタン発泡体の原液の第1液を表2に示すように調製した。
【0098】また、ポリウレタン発泡体の原液の第2液として、イソシアネートAを用意した。
【0099】つぎに、第1液と第2液の割合を表2に示すように変更し、また第1液と第2液の混合液の注入速度を毎秒48gに変えたほかは、実施例1と同様にしてオープンドラム用天蓋とガスケット用ポリウレタン発泡体を作製し、それらの評価を実施例1と同様にして行なった。その結果を表2に示す。
【0100】比較例6
ガスケットが天然ゴムの発泡体からなる従来のオープンドラム用天蓋とガスケット用天然ゴム製発泡体を用意して、実施例1と同様にして評価を行なった。その結果を表2に示す。」
「【0101】
【表2】
[図:0001418479000011.jpg]
」
イ 引用文献4の記載から認定できる事項
上記【0052】、【0053】、【0060】によれば、気密試験やS金具開きにおいて、天蓋と胴体を締め付けるバンドのボルトに一定の締め付けトルクをかけて評価を行っている。
また、上記【0046】~【0051】、【0073】~【0100】、【表2】によれば、実施例1~5と比較例1~6のガスケットの材料や製造方法が異なり、それによりガスケットの物性も異なっていることが分かる。
そして、実施例1~5と比較例1~6の【表2】の気密試験やS金具開きの結果を踏まえると、天蓋と胴体を締め付けるバンドのボルトに一定の締め付けトルクを加えても、ガスケットの組成や物性によって、気密性やS金具間の最短距離が異なるということが理解できる。
2 進歩性
(1) 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「スチールドラム」及び「スポンジチタン格納用スチールドラム」は、本願発明の「格納容器」及び「スポンジチタン格納容器」に相当する。
引用発明の「上端部にイヤリングを有する胴体13」は、本願発明の「上端縁に胴板カールを有する胴体」に相当する。
引用発明の「前記胴体13の上端部の開口に開閉可能であって、端部にイヤリングを有する蓋3」は、本願発明の「前記胴体の上端開口に開閉可能であって、外周縁に蓋カールを有する天板」に相当する。
引用発明の「2つのイヤリングの間に挟み込まれたシールリング4」は、本願発明の「前記胴板カールと前記蓋カールとの間に挟み込むためのガスケット」に相当する。
引用発明の「ロックバレルフープ2」は、本願発明の「締結バンド」に相当する。
引用発明の「締結ボルト1及びナット」は、本願発明の「締結部材」に相当する。
引用発明のものは、「スチールドラムに、スポンジチタンを格納した後、前記2つのイヤリングの外側から包み込むようにロックバレルフープ2を取り付け、締結ボルト1及びナットで前記ロックバレルフープ2を締付け」るので、本願発明の「格納容器に、スポンジチタンを格納した後、前記蓋カールと前記胴板カールとを外周側から包み込むように締結バンドを取り付け、締結部材で前記締結バンドを締付ける締付け工程を含」むものと認められる。
引用発明の「スチームドラムが開放型スチームドラムである」ことは、本願発明の「前記格納容器がオープン型ドラム缶である」ことに相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「上端縁に胴板カールを有する胴体と、前記胴体の上端開口に開閉可能であって、外周縁に蓋カールを有する天板と、前記胴板カールと前記蓋カールとの間に挟み込むためのガスケットとを備えた格納容器に、スポンジチタンを格納した後、前記蓋カールと前記胴板カールとを外周側から包み込むように締結バンドを取り付け、締結部材で前記締結バンドを締付ける締付け工程を含み、前記格納容器がオープン型ドラム缶である、スポンジチタン格納容器の製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点>
本願発明は、「締結部材の締付けトルク量が10N・m以上25N・m以下とな」るのに対して、引用発明は、締結ボルト1及びナットの締付けトルク量がどの程度であるか不明である点。
(2) 判断
上記相違点について検討する。
引用発明は、上記(1)ア(ウ)、(エ)のとおり、ロックバレルフープ2の締め付け完了時に、スチールドラムの良好なシール性を確保することを目的とするものである。
ここで、オープンヘッドドラムにおいて、締結部材を所定のトルクで締め上げることで、胴体カールと蓋カールを接近させ、ガスケット(シール部材)により、オープンヘッドドラムのシール性を実現することは、技術常識である(上記1(2)イ)。
そうすると、引用発明のものは、少なくとも、所望のシール性を確保できる程度に、ボルト1の締付けトルクを設定しているといえる。
加えて、引用発明のものは、上記(1)ア(カ)のとおり、作業員が、締結ボルト1を締め付けたり、緩めたりして、スチールドラムの開封作業や密封作業を行うものである。
上記を総合的に勘案すると、引用発明において、スポンジチタン格納用スチールドラムに必要なシール性に加えて、作業員が実施する開封作業や密封作業の作業効率を考慮して、締結ボルト1及びナットの締付けトルク量を決定することに格別の困難性はなく、その際、当該締付けトルク量を請求項1で規定される程度にすることは適宜設計できる事項である。
なお、本願明細書【0033】、【0034】によれば、締付けトルク量の下限値は気密性確保のために定められ、上限値は開封容易性のために定められていることが分かるが、その下限値及び上限値に関しては好ましいとの例示にとどまり、当該数値範囲の技術的な意義についてはなんら記載されておらず、さらに、【0038】~【0052】に記載された実施例において、実施例1の締付けトルク量を16.2N・mとし、比較例2の締付けトルク量を40.9N・mとして開封に関する評価を行い、実施例1は○、比較例2は△という結果を示しているが、この結果を考慮しても上限値を25N・mとする技術的な意義について判然としないし、実施例1と比較例1との比較では、比較例1のものは、そもそも締結部材による締め付けを行っておらず、下限値を10N・mにする技術的な意義も理解することができない。したがって、本願発明の締付けトルクの数値範囲についての臨界的な意義は認められない。
(3) 効果について
本願発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(4) 請求人の主張について
請求人は、意見書にて、「引用文献1には、本願発明のように、気密性を有する格納容器を開封しやすいように、締結ボルトで締め付ける力を適切に弱めるという発想がありません。仮に、引用文献1に記載の発明において締結ボルトで締め付ける力を弱めれば、開放型スチールドラム内部の気密が崩れやすくなりますので、引用文献1の発明の目的を没却し阻害要因があります。」と主張しているが、上記(2)で検討したとおり、引用発明のものは、作業員がスチールドラムの開封作業や密封作業を行うものである(上記1(1)ア(カ))ことに照らせば、当該締付けトルクを作業員の開封作業や密封作業を踏まえた締付けトルクに設定する動機付けがあるといえるため、上記主張については採用できない。
(5) 小括
よって、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 サポート要件について
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するためには、特許出願時において、具体例の開示がなくとも当業者に理解できる程度に記載するか、又は、特許出願時の技術常識を参酌して、当該数式が示す範囲内であれば、所望の効果(性能)が得られると当業者が認識できる程度に、具体例を開示して記載することを要するところ、検討するに、本願の請求項1~9は、以下のとおり、本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されていない。
本願発明が解決しようとする課題として、【0007】には、「本発明は、一実施形態において、保管・輸送中における格納容器内の気密性を確保し、かつ気密性を有する格納容器を開封しやすいスポンジチタン格納容器の製造方法を提供することを目的とする」と記載されている。
ここで、解決手段として、【0033】には、「(締付けトルク量) 締付け工程S21時における締結部材50の締付けトルク量は、10N・m以上35N・m以下となる。上記締付けトルク量は、格納容器1内の気密性を確保するという観点から、下限側として10N・m以上であり、12N・m以上が好ましく、15N・m以上がより好ましい。また、上記締付けトルク量は、ユーザが気密性を有する格納容器1を開封しやすいことを考慮し、上限側として35N・m以下であり、25N・m以下が好ましく、20N・m以下がより好ましい。」と記載され、【0034】には、「締付け時の締付けトルク量が10N・m未満であると格納容器1内の気密性が不十分となるおそれがある。一方、締付け時の締付けトルク量が35N・mを超えると本実施形態が意図する開封容易性が損なわれるおそれがある。」と一応記載されており、これに対応する発明特定事項として、請求項1には、「前記締結部材の締付けトルク量が10N・m以上25N・m以下」である特定がなされている。
ところで、オープンヘッドドラムにおいて、当該ドラムの気密性は、締結部材の締付けトルク以外に、少なくとも、格納容器の構成部材(締結バンド、ガスケット、銅板カール、蓋カール及び締結部材)の材質、形状及び構造、格納容器内の圧力などの影響を受けるものであるといえる。
これは、技術常識(上記1(2)イ)として示した、オープンヘッドドラムにおいて、締結部材を所定のトルクで締め上げることで、胴体カールと蓋カールを接近させ、ガスケット(シール部材)により、オープンヘッドドラムのシール性を実現するという構造的な機序から明らかであるし、その他、ガスケットへのグリスの塗布の有無やガスケットの形状などが気密性に影響を及ぼすこと(上記1(3)イ)や天蓋と胴体を締め付けるバンドのボルトに一定の締め付けトルクを加えても、ガスケットの組成や物性によって、気密性やS金具間の最短距離が異なるということ(上記1(4)イ)からも明らかである。
そうすると、「上端縁に胴板カールを有する胴体と、前記胴体の上端開口に開閉可能であって、外周縁に蓋カールを有する天板と、前記胴板カールと前記蓋カールとの間に挟み込むためのガスケットとを備えた格納容器」及び「格納容器がオープン型ドラム缶である」という格納容器の構成部材の概要の特定、並びに、「締結部材の締付けトルク量が10N・m以上25N・m以下とな」るという締結部材の締付けトルク量の特定のみの請求項1では、構成部材の材質、形状及び構造、格納容器内の圧力などが少なくとも特定されていないため、必ずしも、保管・輸送中における格納容器内の気密性を確保するという本願の課題を解決できないものであるといえる。
よって、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
第5 むすび
上記の通り、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-018789