審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2023-012551

振動ダンパを備える測定装置及び測定装置を振動から保護する方法

審判番号
2023-012551
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-167006
請求日
2023年07月26日
審決日
2024年04月30日
公報発行日
2024年10月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ネッチ ゲレーテバウ ゲーエムベーハー
  • 【請求人代理人】杉村 憲司
審判長/審判官
  • 審判長 三崎 仁
  • 審判官 ▲高▼見 重雄
  • 審判官 櫃本 研太郎
分類
P18 .121-Z (G01H) / P18 .575-Z (G01H)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-167006「振動ダンパを備える測定装置及び測定装置を振動から保護する方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 6月 9日出願公開、特開2022- 87013〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2021年(令和3年)10月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2020年(令和2年)11月28日、(DE)ドイツ)の出願であって、令和4年12月5日付けの拒絶理由の通知に対し、令和5年2月10日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年5月2日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対して同年7月26日に審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、令和6年3月19日に上申書が提出されたものである。 第2 令和5年7月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和5年7月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「 【請求項1】 測定装置(1)であって、ハウジング(2)と、前記ハウジング(2)に直接取り付けられた少なくとも1個の振動ダンパ(3)と、を備え、 前記振動ダンパ(3)は、減衰要素レセプタクル(4)と、該減衰要素レセプタクル(4)に収容された少なくとも1個の減衰要素(5)とを有する、 測定装置。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和5年2月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。 「 【請求項1】 測定装置(1)であって、 ハウジング(2)と、 前記ハウジング(2)に取り付けられた少なくとも1個の振動ダンパ(3)と、 を備え、 前記振動ダンパ(3)は、減衰要素レセプタクル(4)と、該減衰要素レセプタクル(4)に収容された少なくとも1個の減衰要素(5)とを有する、 測定装置。」 2 補正の適否 上記補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「振動ダンパ(3)」について、「前記ハウジング(2)に取り付けられた少なくとも1個の振動ダンパ(3)」が、「前記ハウジング(2)に」直接「取り付けられた」ことを限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献 ア 引用文献1について (ア)引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された刊行物である特表2001-509263号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審において付与した。以下同様)。 (引1ア) 「【特許請求の範囲】 1.赤外線検査及び検出装置であって、 (a)検査される試供体(33)を受け入れるための等温室(32)を区画形成する等温容器手段(1)と、 (b)検査のための試供体(33)を支持するための前記等温室(32)内の支持手段(31)と、 (c)前記試供体からの赤外線放射を監視して前記試供体(33)の全面積温度の表示信号を得るための前記等温室(32)内の赤外線カメラ手段(94)と、 (d)前記試供体の温度と前記等温室(32)内の雰囲気温度状態とを監視して、このような温度の表示信号を得るための前記等温室内の検知手段(109,110)と、 (e)前記試供体(33)の三次元像をもたらすための全ての信号を審査するために前記カメラ手段(94)及び前記検知手段(109,110)へ接続されて、試供体から試供体への像の変化が試供体の異常を示すとするコンピュータ手段(96)、 とを具備する赤外線検査及び検出装置。」 (引1イ) 「本発明は、赤外線適格審査及び検査装置に関する。 特に、本発明は、赤外線技術を使用して回路カード組立体を検査するための装置に関する。」(第4頁3~5行) (引1ウ) 「本発明は、添付図面を参照して以下に詳細に述べられる。図面は本発明の好適な実施形態を図示している。 図1は、本発明の装置に使用される等温容器の斜視図である。 図2は、図1の容器の部分断面正面図である。」(第5頁13~16行) (引1エ) 「図1から3を参照すると、本発明の装置に使用される等温容器は、全体的に1で示され、外側ハウジング2及び内側ハウジング3を有し、これらは全体的に矩形平行六面体形状である。外側ハウジング2は、底壁4、上壁5、側壁6、前壁7、及び後壁8によって区画形成されている。足部9が、平らな表面上に外側ハウジング2を支持するために、底壁4の角部近傍に設けられている。足部9は、僅かに可撓性であり、逆さまにしたボール形状を有し、それにより、外側ハウジングは他の場合より振動に敏感でない。」(第6頁4~10行) (引1オ)図1 「 [図:0001414878000001.jpg] 」 (引1カ)図2 「 [図:0001414878000002.jpg] 」 (イ)引用文献1に記載された発明 a 上記(引1カ)の図2から、足部9が、外側ハウジング2の底壁4に直接設けられていることが見て取れる。 b 上記(引1エ)の記載を図2に照らしながら読むと、矩形形状である底壁4の各角部近傍(4箇所)に足部9が設けられていることが分かる。 c 上記a・bを含む上記(ア)の記載及び図面を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。ここで、各構成単位末尾の括弧内には、主たる認定箇所となる引用文献1の記載箇所を示す。 「赤外線カメラ手段(94)により回路カード組立体からの赤外線放射を監視して、回路カード組立体を検査する赤外線適格審査及び検査装置であって、((引1ア)、(引1イ)) 当該装置に使用される等温容器1は、外側ハウジング2及び内側ハウジング3を有し、これらは全体的に矩形平行六面体形状であり、外側ハウジング2は、底壁4、上壁5、側壁6、前壁7、及び後壁8によって区画形成されており、足部9が、平らな表面上に外側ハウジング2を支持するために、外側ハウジング2の、矩形形状である底壁4の各角部近傍(4箇所)に直接設けられ、足部9は、僅かに可撓性であり、逆さまにしたボール形状を有し、それにより、外側ハウジングは他の場合より振動に敏感でない、((引1エ)、a、b) 赤外線適格審査及び検査装置。」 イ 引用文献2について (ア)引用文献2の記載 原査定の拒絶の理由で周知技術として引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平11-287288号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 (引2ア) 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、例えば精密機器や測定機器を支持台に搭載する場合に使用して好適な防振装置に関する。」 (引2イ) 「【0002】 【従来の技術】一般に、精密機器等を床面上に設置する場合、床面から伝達される振動を吸収し、精密機器側への振動伝達を阻止するための防振装置が用いられる。従来、この種の防振装置には、一定のばね定数をもつ振動吸収体を備えたものが採用されている。 ・・・ 【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかし、前者(振動吸収体をもつもの)にあっては、振動吸収体のばね定数が一定であるため、振動系が共振すると、機器の振動加速度が入力加速度より大きくなる。この結果、共振による加速度を考慮して搭載機器を設計する必要が生じ、搭載機器の設計を面倒なものにするという問題があった。」 (引2ウ) 「【0015】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。図1は本発明の第一実施形態に係る防振装置の概略を示す断面図(図3のA?A断面図)、図2は同じく本発明の第一実施形態に係る防振装置の内部構造を示す斜視図、図3は本発明の第一実施形態に係る防振装置の使用例を示す斜視図である。同図において、符号1で示す防振装置は、四つの防振装置からなり、装置筐体2と支持台3と空気ばね4と調整弁5と圧力センサ6とコントローラ7とを備えている。これにより、精密機器Sを弾性保持し、精密機器Sの振動が吸収される。 【0016】装置筐体2は、円筒体8および底面板9を有している。円筒体8は下方に開口する有頭筒体からなり、上面中央部には軸線方向に開口する貫通孔8aが設けられている。底面板9は、円筒体8の下方開口部を閉塞する円板からなり、床面(図示せず)に設置されている。底面板9の外径は、円筒体8の外径より大きな寸法に設定されている。 【0017】支持台3は、貫通孔8aを挿通する連結軸3aおよびこの連結軸3aを介して互いに対向する上下二つの円形受台3b、3cからなり、底面板9上に空気ばね4を介して弾性保持されている。これにより、支持台3に振動が印加されると、空気ばね4が伸縮する。円形受台3bは装置筐体2外に露呈し、上部には精密機器Sが搭載される。円形受台3cは装置筐体2に内蔵され、かつ空気ばね4に連結されている。 【0018】空気ばね4は、連結軸3aの延長軸線の円周方向に等間隔をもって並列する二つのベローズ4a,4bからなり、下方の円形受台3cと基準面(図示せず)上の底面板9との間に介装され、かつ装置筐体2内に収納されている。調整弁5は、コントローラ7の制御によって開閉する電磁弁からなり、一方のベローズ4aに連結され、かつ装置筐体2内に収納されている。これにより、コントローラ7の制御によって調整弁5が開閉すると、ベローズ4aのばね定数が変化する。すなわち、ベローズ4a,4b内の圧力が一定値を超えた場合には、調整弁5が開放し、ベローズ4aのばね定数が変化する。一方、ベローズ4a,4b内の圧力が一定の範囲内である場合には、調整弁5が閉塞したままである。 【0019】圧力センサ6は、他方のベローズ4bの圧力変動を検出する圧力センサからなり、コントローラ7に接続され、かつ装置筐体2内に収納されている。これにより、圧力センサ6が他方のベローズ4b内の圧力変動を検出すると、この検出信号がコントローラ7に出力される。 【0020】コントローラ7は、圧力センサ6による検出圧力に対応する振動数値を算出し、この算出値と予め設定された規定値とを比較して調整弁5を開閉制御するコントローラからなり、調整弁(電磁弁)5および圧力センサ6に接続され、かつ装置筐体2内に収納されている。これにより、圧力センサ6がベローズ4bの圧力変動を検出すると、この検出圧力に対応する振動数値を算出し、この算出値と予め設定された規定値(周波数範囲にある数値)とを比較し、この比較結果に基づいて調整弁5を開閉制御する。」 (引2エ) 「【0025】したがって、本実施形態においては、空気ばね4のばね定数が振動系の振動に応じて変化するから、振動系の共振を確実に抑制することができ、精密機器Sの振動加速度が入力加速度より大きくなることがない。また、本実施形態において、調整弁5の開閉によって空気ばね4(ベローズ4a)のばね定数を変化させ、振動系の共振を抑制できることは、部品点数を削減することができる。」 (引2オ) 「【0033】この他、本実施形態においては、精密機器を搭載する場合に適用する例について説明したが、本発明はこれに限定適用されず、例えば測定機器を搭載する場合にも実施形態と同様に適用可能である。」 (引2カ)図1 「 [図:0001414878000003.jpg] 」 (引2キ)図2 「 [図:0001414878000004.jpg] 」 (引2ク)図3 「 [図:0001414878000005.jpg] 」 (イ)引用文献2に記載された技術的事項 a 上記(引2ク)の図3から、精密機器Sは底面が矩形形状であり、その底面の各角部近傍(4箇所)に防振装置1が直接設けられていることが見て取れる。 b (引2ア)及び(引2オ)の記載を踏まえると、(引2ウ)の第一実施形態に係る防振装置1は、測定機器にも適用されるものであるから、精密機器Sは測定機器Sに読み替える。 c 上記a及びbを含む上記(ア)の記載及び図面を総合すると、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「測定機器Sは底面が矩形形状であり、その底面の各角部近傍(4箇所)に直接設けられた防振装置1であって、(a、b) 防振装置1は、装置筐体2と支持台3と空気ばね4と調整弁5と圧力センサ6とコントローラ7とを備え、(【0015】) 装置筐体2は、円筒体8および底面板9を有し、円筒体8は下方に開口する有頭筒体からなり、上面中央部には軸線方向に開口する貫通孔8aが設けられ、底面板9は、円筒体8の下方開口部を閉塞する円板からなり、床面に設置され、(【0016】) 支持台3は、貫通孔8aを挿通する連結軸3aおよびこの連結軸3aを介して互いに対向する上下二つの円形受台3b、3cからなり、底面板9上に空気ばね4を介して弾性保持され、円形受台3bは装置筐体2外に露呈し、上部には測定機器Sが搭載され、円形受台3cは装置筐体2に内蔵され、かつ空気ばね4に連結され、(【0017】、b) 空気ばね4は、連結軸3aの延長軸線の円周方向に等間隔をもって並列する二つのベローズ4a,4bからなり、下方の円形受台3cと基準面上の底面板9との間に介装され、かつ装置筐体2内に収納され、調整弁5は、コントローラ7の制御によって開閉する電磁弁からなり、一方のベローズ4aに連結され、かつ装置筐体2内に収納され、(【0018】) 圧力センサ6は、他方のベローズ4bの圧力変動を検出する圧力センサからなり、コントローラ7に接続され、かつ装置筐体2内に収納され、(【0019】) コントローラ7は、圧力センサ6による検出圧力に対応する振動数値を算出し、この算出値と予め設定された規定値とを比較して調整弁5を開閉制御するコントローラからなり、調整弁(電磁弁)5および圧力センサ6に接続され、かつ装置筐体2内に収納されており、(【0020】) 空気ばね4のばね定数が振動系の振動に応じて変化することで、振動系の共振を確実に抑制することができる、(【0025】) 防振装置1。」 (3)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「赤外線適格審査及び検査装置」は、「赤外線カメラ手段(94)により回路カード組立体からの赤外線放射を監視」すなわち測定「して、回路カード組立体を検査する」「装置」であるから、本件補正発明の「測定装置(1)」及び「測定装置」に相当する。 イ 引用発明の「外側ハウジング2」は、本件補正発明の「ハウジング(2)」に相当する。 ウ (ア)引用発明の「足部9は、僅かに可撓性であり、逆さまにしたボール形状を有し、それにより、外側ハウジングは他の場合より振動に敏感でない」ことから、引用発明の「足部9」は、外側ハウジングに伝わる「振動」を抑制するダンパ機能を有するといえる。よって、引用発明の「足部9」は、機能的にみて、本件補正発明の「振動ダンパ(3)」に相当する。 (イ)上記(ア)の対比を踏まえると、引用発明の「外側ハウジング2の、矩形形状である底壁4の各角部近傍(4箇所)に直接設けられ」た「足部9」は、本件補正発明の「前記ハウジング(2)に直接取り付けられた少なくとも1個の振動ダンパ(3)」に相当する。 (4)一致点・相違点 上記(3)から、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「測定装置(1)であって、ハウジング(2)と、前記ハウジング(2)に直接取り付けられた少なくとも1個の振動ダンパ(3)と、を備える、 測定装置。」 (相違点) 振動ダンパ(3)が、本件補正発明では、「減衰要素レセプタクル(4)と、該減衰要素レセプタクル(4)に収容された少なくとも1個の減衰要素(5)とを有する」のに対し、引用発明では、振動ダンパ(3)に相当する「足部9」が、そのような構成を有するものでない点。 (5)判断 以下、相違点について検討する。 ア (ア)上記(2)イ(イ)で記載した引用文献2技術的事項における「防振装置1」は、「装置筐体2」及び「装置筐体2内に収納され」た「空気ばね4」を備えるものであり、そして、「防振装置1」、「装置筐体2」及び「装置筐体2内に収納され」た「空気ばね4」は、それぞれ機能的にみて、本件補正発明の「振動ダンパ(3)」、「減衰要素レセプタクル(4)」及び「該減衰要素レセプタクル(4)に収容された少なくとも1個の減衰要素(5)」に相当する。すると、引用文献2技術的事項における「装置筐体2」及び「装置筐体2内に収納され」た「空気ばね4」を備える「防振装置1」は、上記相違点に係る「減衰要素レセプタクル(4)と、該減衰要素レセプタクル(4)に収容された少なくとも1個の減衰要素(5)とを有する」「振動ダンパ(3)」との本件補正発明の構成を備えているといえる。 (イ)また、引用文献2には、一定のばね定数をもつ振動吸収体を備えた従来の防振装置では、振動吸収体のばね定数が一定であるため、振動系が共振するという問題があったこと(上記(引2イ)参照)が記載されており、その問題を解決するために、上記引用文献2技術的事項の「防振装置1」を用いて、空気ばね4のばね定数を振動系の振動に応じて変化させることで、振動系の共振を確実に抑制できたこと(上記(引2エ)参照)が記載されている。 (ウ)一方、引用文献1には、「足部9」が特段、共振抑制等の工夫をした旨の記載がなく、また、引用発明の「足部9」は、「逆さまにしたボール形状を有」する一般的な制震ゴム(クッションゴム)が想定されることから、引用発明の「足部9」は、上記(イ)で示した引用文献2における、振動吸収体のばね定数が一定である従来の防振装置に該当する蓋然性が高いといえる。 すると、引用文献1及び2を知る当業者であれば、引用発明は、その振動系が共振するという問題が生じる可能性があったこと、そのために、引用文献2技術的事項を適用すれば、引用発明の振動系の共振を確実に抑制できるであろうこと、を認識できたはずであるから、引用発明の「足部9」として、引用文献2技術的事項の「防振装置1」を採用する動機は存在するといえる。 (エ)してみると、引用発明において、「足部9」として、引用文献2技術的事項の「防振装置1」を採用すること、すなわち、「装置筐体2」及び「装置筐体2内に収納され」た「空気ばね4」を備える「防振装置1」にすることは、当業者が容易になし得た事項であり、当該事項は、上記(ア)で述べたとおり、上記相違点に係る「減衰要素レセプタクル(4)と、該減衰要素レセプタクル(4)に収容された少なくとも1個の減衰要素(5)とを有する」「振動ダンパ(3)」との本件補正発明の構成とすることに他ならない。 イ そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 (6)小括 したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (7)審判請求人の主張について(下線は、当審において付与した。) ア 審判請求人は審判請求書の「3.4.本願発明と引用発明との対比」の欄において、「審査官殿は、当業者は引用文献1に記載の発明に引用文献2に記載の円筒体を適用することで本願発明に容易に想到し得るとして本願を拒絶されました。より詳細には審査官殿は当業者は、引用文献1に記載の足部9を引用文献2に記載の円筒体8に置き換えることで本願発明とすることに容易に想到し得ると認定されました。その前提には引用文献2に記載の円筒体8は本願発明の減衰要素レセプタクルに相当すると認定されています。 しかし本願の図1と引用文献2の図1~図4とを対比すると、引用文献2の防振装置は、支持台3と、該支持台3と2つのベローズ4a,4bとの間で接続される連結軸を備える一方、本願発明は、ハウジング2及びテーブル11の両方と直接接触する振動ダンパを備える点で相違します。すなわち引用文献2の防振装置は、構造上連結軸を必須とするため支持台3と、該支持台3と2つのベローズ4a,4bとの間で直接接触するような構成を取り得ません。以上より引用文献1,2のいずれも本願請求項1の「前記ハウジング(2)に直接取り付けられた少なくとも1個の振動ダンパ(3)」について記載も示唆もしておりません。」と主張する。 イ また、審判請求人は令和6年3月19日に提出された上申書の「3.本願発明が特許されるべき理由」の欄において、「前置審査官殿は、『ハウジング(「外側ハウジング手段2」)に直接取り付けられた少なくとも1個の振動ダンパ(「足部9」、6頁「足部9は、僅かに可撓性であり、逆さまにしたボール形状を有し、それにより、外側ハウジングは他の場合より振動に敏感でない。」。図2を参照すると、「足部9」は「外側ハウジング手段2」に直接取り付けられた点が見て取れる。)』の点は引用文献1に記載されている事項に過ぎない、と指摘されました。 しかし引用文献1の図2を参照すると、本件発明の振動ダンパと引用文献1の足部9とは、顕著に相違することは審査官殿も既に認めております。仮にその足部9を引用文献2に記載の円筒体8に置き換えようとしても、引用文献2の円筒体8はテーブルと筐体との間で直接接続されていないので、引用文献1の発明において足部9を引用文献2に記載の円筒体8に置き換えることによって本件発明に想到するという論理付けは構成し得ないと思料いたします。 より詳細には、本願の図1と引用文献2の図1~図4とを対比すると、引用文献2の防振装置は、支持台3と、該支持台3と2つのベローズ4a,4bとの間で接続される連結軸を備える一方、本願発明は、ハウジング2及びテーブル11の両方と直接接触する振動ダンパを備える点で相違します。すなわち引用文献2の防振装置は、構造上連結軸を必須とするため支持台3と、該支持台3と2つのベローズ4a,4bとの間で直接接触するような構成を取り得ません。以上より引用文献1,2のいずれも本願請求項1の「前記ハウジング(2)に直接取り付けられた少なくとも1個の振動ダンパ(3)」について記載も示唆もしておりません。」と主張する。 ウ 上記ア及びイの主張について検討する。 上記ア及びイにおいて、請求人は、「引用文献1に記載の足部9を引用文献2に記載の円筒体8に置き換える」という判断を審査官がしている、と主張する。しかし、原査定において、審査官は「引用文献2に記載の円筒体8は本願発明の減衰要素レセプタクルに相当する」と判断しているが、審査官は足部9を円筒体8に置き換えると判断していない。 また、上記ア及びイにおいて、請求人は、「引用文献1,2のいずれも本願請求項1の「前記ハウジング(2)に直接取り付けられた少なくとも1個の振動ダンパ(3)」について記載も示唆もしておりません。」と主張するが、引用発明(上記(2)ア(イ)参照)の足部9は、外側ハウジング2に「直接」設けられ、引用文献2技術的事項(上記(2)イ(イ)参照)の防振装置1は、測定機器Sに「直接」設けられているから、引用文献1、2のいずれも本願請求項1の「前記ハウジング(2)に直接取り付けられた少なくとも1個の振動ダンパ(3)」について記載されているといえる。 なお、請求人は、「引用文献2の防振装置は、支持台3と、該支持台3と2つのベローズ4a,4bとの間で接続される連結軸を備える一方、本願発明は、ハウジング2及びテーブル11の両方と直接接触する振動ダンパを備える点で相違します。すなわち引用文献2の防振装置は、構造上連結軸を必須とするため支持台3と、該支持台3と2つのベローズ4a,4bとの間で直接接触するような構成を取り得ません。」と主張しているが、上記(引2ウ)で摘記した【0017】に「支持台3は、貫通孔8aを挿通する連結軸3aおよびこの連結軸3aを介して互いに対向する上下二つの円形受台3b、3cからなり、底面板9上に空気ばね4を介して弾性保持されている。」と記載されているように、支持台3は「連結軸3a」及びこの連結軸3aを介して互いに対向する上下二つの「円形受台3b、3c」から構成されるものであるから、上記請求人の主張は、上記記載と異なり「上の円形受台3b」のみを「支持台3」として論理立てたものであり、受け入れることはできない。 よって、請求人の上記ア及びイの主張については、採用できない。 (8)まとめ 以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和5年7月26日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和5年2月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 なお、令和4年12月5日付けの拒絶理由の通知では、引用文献2に記載された技術的事項を周知技術としても扱っている。 引用文献1:特表2001-509263号公報 引用文献2:特開平11-287288号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献及びその記載事項は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「振動ダンパ(3)」に係る限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]2(3)~(5)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2023-012551

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決1件(ネッチ ゲレーテバウ ゲーエムベーハー)
  • 2016-008164拒絶査定不服審判 / 2017-11-20 / 請求不成立熱分析における測定結果の評価方法、該方法の使用、並びに該方法を行うためのコンピュ…
    同じ当事者: ネッチ ゲレーテバウ ゲーエムベーハー
同じ論点・分野の審決(審決分類)18件(121・G01H、575・G01H)
  • 2021-011328拒絶査定不服審判 / 2022-01-05 / 請求不成立レール波状摩耗に伴う車内騒音評価方法および車内騒音評価システム、並びにこれを用い…
    共通の審決分類: 121・G01H、575・G01H
  • 2018-015424拒絶査定不服審判 / 2019-08-07 / 請求不成立産業用オーディオ騒音監視システム
    共通の審決分類: 121・G01H、575・G01H
  • 2024-020472拒絶査定不服審判 / 2026-02-16 / 請求不成立雷撃検出装置、雷撃検出システム及び雷撃検出方法
    共通の審決分類: 121・G01H
  • 2024-009648拒絶査定不服審判 / 2025-10-21 / 原査定取消(特許/登録すべき)卓越周波数の抽出装置、卓越周波数の抽出方法、卓越周波数の抽出プログラム
    共通の審決分類: 121・G01H
  • 2023-011559拒絶査定不服審判 / 2024-09-09 / 原査定取消(特許/登録すべき)光ファイバセンシングシステム、光ファイバセンシング機器、及び救助要請検知方法
    共通の審決分類: 121・G01H

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存