特許拒絶査定不服審判
2023-010849
情報通信ユニット
- 審判番号
- 2023-010849
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-105028
- 請求日
- 2023年06月29日
- 審決日
- 2024年07月12日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】因幡電機産業株式会社
- 【請求人代理人】宮地 正浩
- 審判長/審判官
- 審判長 篠塚 隆
- 審判官 富澤 哲生
- 審判官 野崎 大進
- 分類
- P18 .113-WY (H05K) / P18 .121-WY (H05K) / P18 .537-WY (H05K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-105028「情報通信ユニット」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年11月18日出願公開、特開2021-180313、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年2月21日(優先権主張 平成29年2月23日)を出願日とする特許出願(特願2018-28596号)の一部を、平成30年10月3日に新たな特許出願(特願2018-188354号)とし、その一部を、平成31年3月15日に新たな特許出願(特願2019-48094号)とし、その一部を、令和2年10月16日に新たな特許出願(特願2020-174594号)とし、その一部を、令和3年6月24日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 1月12日 :手続補正書の提出
令和4年 4月22日付け:拒絶理由通知書
令和4年 6月20日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年10月20日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和4年12月16日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 4月 3日付け:令和4年12月16日付け手続補正書でした
補正の却下の決定、拒絶査定
令和5年 6月29日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出
令和6年 3月25日付け:拒絶理由通知書
令和6年 5月23日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、令和6年5月23日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりの発明である。
「【請求項1】
複数の基板と、それら複数の基板を収容するケーシングと、そのケーシングの外方に露出する露出部とが備えられ、
前記露出部は、前記ケーシングの外面部にて構成され、
前記ケーシングとは別に備えられて、前記ケーシングの外方に露出しない状態で前記ケーシングの内部に配設された伝熱部が備えられ、
前記伝熱部は、複数の基板の熱を自己に伝熱させて集めて、その集めた複数の基板の熱を基板の面方向に沿って伝熱させた後、基板の表裏方向へも伝熱させて前記露出部に伝熱させて放熱させる放熱構造を備えた情報通信ユニットにおいて、
アンテナ素子、情報通信のための部品、及び、電源部品が備えられ、
前記ケーシングは、少なくとも後方側の一部が設置対象部位の内部に埋設される埋設状態にて設置対象部位に設置され、
前記露出部は、設置対象部位の前方側に配置される化粧カバーよりも設置対象部位の後方側に配設されている情報通信ユニット。」
第3 原査定の概要
原査定(令和5年4月3日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。
本願請求項1,2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本願請求項1,2に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献A: 特開2014-72561号公報
第4 当審拒絶理由の概要
当審が令和6年3月25日付けで通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。
1 理由1(サポート要件)
この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
請求項1の「複数の基板と、それら複数の基板を収容するケーシングと、そのケーシングの外方に露出する露出部とが備えられ」との記載は、「ケーシング」と「露出部」とが異なる構成であるように解し得るが、互いに異なる構成である「ケーシング」及び「露出部」に対応する、発明の詳細な説明の記載を見出すことができない。
よって、請求項1に係る発明、及びこれを引用する請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
2 理由2(明確性)
この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
請求項1には、「前記露出部は、設置対象部位の前方側に配置される化粧カバーよりも設置対象部位の後方側となる内方側に配設されている」と記載されているが、「内方側」とはどのような「側」であるのか不明であり、そのため、「露出部」がどのように「配設されている」のか不明である。
また、請求項2には、「前記露出部が前記伝熱部よりも外方側に配設されている」と記載されているが、「外方側」とはどのような「側」であるのか不明であり、そのため、「露出部」がどのように「配設されている」のか不明である。
よって、請求項1,2に係る発明は明確でない。
3 理由3(進歩性)
本願請求項1,2に係る発明は、以下の引用文献1,2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1: 特開2014-72561号公報(原査定の引用文献A)
引用文献2: 特開2016-119395号公報
第5 引用文献の記載、引用発明等
1 引用文献1、引用発明1
(1)当審拒絶理由にて引用された引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。
「【0076】
スマートタップとしては、第1の形式として、例えば図6に示すような内部構造のものを使用することができる。なお以下の図においては制御装置としてMOSFETを採用した。
図6は2個口コンセントのスマートタップの内部配置を模式的に示した図であり、制御手段として1個口当たり4つのMOSFET1、1つの電流測定手段2を設け、さらに図示はしないが1個口当たり1つの電圧測定手段を設けている。そして2個口で1つの演算装置と通信手段を共有するように設けている。図から明らかなように、演算装置電源用回路基板を設け、MOSFET1から発生する熱を電源プラグの外へ放熱することを容易にするために、4つの隅にMOSFET1を設け、そのMOSFET1からなるべく離れた箇所に演算装置3と通信手段4を設置している。なお、MOSFET1は最低2個で、4~8個までを設けることが可能である。
このような配置とすることにより、可能な限り演算装置3と通信手段4が加熱されないようにすることが必要である。
MOSFET等の発熱量が少ないすなわちオン抵抗値の小さい電力制御デバイスである制御手段を採用することによって、発熱量が低くなるため、電波透過性がない金属材料を用いる必要性がない。そして筐体の少なくとも一部を放熱効果が小さい樹脂製とすることができるので、サーバとの間で通信を行うために必要な電波の透過性を担保することができる。
この場合、電力制御デバイスとしては、このような発熱量の小さいすなわちオン抵抗値の小さいデバイスを選択することで、発熱量を80℃以下にすることができる。
【0077】
第2の形式としては、上記図6に示すスマートタップの構造とは異なり、制御手段であるMOSFET1をスマートタップの樹脂製等の電波を透過し得る前面の直下またはその奥の基板に、コンセント1個口当たり2個となるように設けた例を図7及び8に示す。図7及び8は本発明のスマートタップの一例の構成図であり、図8は図7の構成を一部組み立てた状態を別方向から見た図である。
図7及び8においては、スマートタップの樹脂等の非金属樹脂材料である電波を透過し得る材料からなる該前面6の例えば中央部の裏面に通信手段4及びその基板を設置する。このために該通信手段4が通信する信号はスマートタップの該前面6を通過して、例えばサーバと通信することができる。さらに、図示はしないが、該基板中央部にスマートタップの運転状況を示すLED及びその基板ならびに無線モジュールならびにマイコンのファームウエアを書き換える基板を設けることができる。無線モジュールとマイコンのファームウエアの書き換えは、埋め込み型の場合、USB端子による書き換え更新や無線での書き換えのいずれも使用することができる。
【0078】
さらに、スマートタップの該前面6の内部に位置する基板7の長辺の中央部付近にMOSFET1を設け、さらにスマートタップの運転により、MOSFET1が発熱した場合には、図示していないが、該MOSFET1と筐体8の両方に接するように絶縁性放熱シートを設けている。
このため、該MOSFET1から発生した熱は放熱材としての絶縁性放熱シートを伝熱し、さらに金属の筐体8や金属製ヒートシンクに伝えられる。筐体8はスマートタップが設置されている壁内にて、放熱することにより、MOSFET1からの熱を円滑に放熱させることになり、スマートタップ内部ならびに筺体の温度を80℃以下にできる。
このため、オン抵抗の小さな電力制御デバイスを使用せずに安価なデバイスを使用することができる。
【0079】
MOSFET1を設けた基板7のさらに内部には、図示はしないが電圧波形計測手段、電流波形計測手段、CPU等の演算装置を設けた基板9を設置する。これらの手段や装置には直接MOSFET1から発生する熱が伝わることがなく、熱の接触的な筐体8への伝導もあり過度に加熱されることがない。
さらにその内部にも、基板10を設置することができる。この基板10の背面には、接続する家電機器が高負荷であるときに備えて、高負荷対応のMOSFET等の制御装置11を設けることができる。
スマートタップ自体を低背化優先とした場合には、基板7に電力制御ならびにスイッチング機能を有するMOSFTE等の半導体デバイス構成とし、スマートタップの設置において、奥行きに自由度がある場合は、基板10にMOSFETを設置することができる。故に発熱部となる電力制御デバイスは、いずれかの構成で使用できる。
また、上述したようにMOSFETは、高電流家電機器や、電気機器の場合は、なるべくマイコンや無線モジュールから離れた部位に構成したほうが良い。このように各基板を配置して、本発明のスマートタップとすることができるが、各基板の配置、及び各基板にどのような素子を設けるかは、本発明の効果を損なわない範囲において適宜変更することができる。」
「【図7】
[図:0001413003000001.jpg]
【図8】
[図:0001413003000002.jpg]
」
(2)上記(1)の記載から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「制御手段であるMOSFET1をコンセント1個口当たり2個となるように設けたスマートタップであって、
スマートタップの樹脂等の非金属樹脂材料である電波を透過し得る材料からなる前面6の中央部の裏面に通信手段4及びその基板を設置し、このために該通信手段4が通信する信号はスマートタップの該前面6を通過して、サーバと通信することができ、さらに、該基板中央部に無線モジュールを設け、
スマートタップの該前面6の内部に位置する基板7の長辺の中央部付近にMOSFET1を設け、さらにスマートタップの運転により、MOSFET1が発熱した場合には、該MOSFET1と筐体8の両方に接するように絶縁性放熱シートを設けているため、該MOSFET1から発生した熱は放熱材としての絶縁性放熱シートを伝熱し、さらに金属の筐体8や金属製ヒートシンクに伝えられ、筐体8はスマートタップが設置されている壁内にて、放熱し、
MOSFET1を設けた基板7のさらに内部には、電圧波形計測手段、電流波形計測手段、CPU等の演算装置を設けた基板9を設置し、
さらにその内部にも、基板10を設置し、この基板10の背面には、接続する家電機器が高負荷であるときに備えて、高負荷対応のMOSFET等の制御装置11を設けた、
スマートタップ。」
2 引用文献2、引用発明2
(1)当審拒絶理由にて引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0019】
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、本発明を実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本実施の形態の電源装置100の回路構成の一例を示す説明図である。以下、本実施の形態の電源装置100として、DC/DCコンバータを例に挙げて説明するが、本実施の形態は、DC/DCコンバータに限定されるものではなく、発熱部品を有するものであれば、他の電源装置、あるいは電気機器又は電子装置にも適用することができる。すなわち、本実施の形態の電源装置には、発熱部品を有する電気機器、電子装置も含まれる。
【0020】
図1において、符号1は入力端子を示し、符号2は出力端子を示す。電源装置100は、入力端子1に入力される比較的高圧の直流電圧を比較的低圧の直流電圧に変換し、出力端子2から出力する。
【0021】
電源装置100は、キャパシタ11、4つのFET10、FET10のスイッチングを制御する制御部12、トランス13、2つのダイオード14、コイル(チョークコイルとも称する)15、キャパシタ16などを備える。各FET10、各ダイオード14、トランス13及びコイル15などが発熱部品である。また、トランス13の入力側を一次側と称し、出力側を二次側と称する。トランス13は、入力側と出力側とが電気的に絶縁されており、一次側と二次側とを電気的に絶縁する。
【0022】
制御部12が所要のスイッチング周波数で各FET10のオン/オフを制御することにより、トランス13の一次側の巻線には、交流が発生する。トランス13により降圧された交流は、ダイオード14で整流され、コイル15及びキャパシタ16により平滑されて出力端子2を介して直流が出力される。
【0023】
図2は本実施の形態の電源装置100の構造の第1実施例を示す要部断面図である。図2において、符号20は、固定部材としての金属製の筐体20である。なお、筐体20は、所要の強度を確保で23きる場合には、放熱特性を有する合成樹脂、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂などを用いてもよい。筐体20の両端部には、それぞれ不図示の絶縁部を介して入力端子1、出力端子2を設けてある。
【0024】
基板31には、発熱部品としてのFET10及びダイオード14などを実装してある。また、基板31には、比較的発熱量が少ない他の電子部品311を実装してある。基板31の実装面と反対側の面にはバスバー32を配置してある。バスバー32は、例えば、金属製であり、FET10及びダイオード14の金属製のケースが取り付けられている。バスバー32と筐体20との間には、絶縁シート33を介在してある。なお、FET10、ダイオード14を基板31上に固定する場合には、バスバー32を省略してもよい。基板31、バスバー32及び絶縁シート33は筐体20に固定してある。
【0025】
筐体20の表面には、トランス13、コイル15を装着してある。なお、トランス13、コイル15を基板31上に実装するようにしてもよい。
【0026】
蓋部としてのカバー40は、金属製であり、基板31、トランス13、コイル15、入力端子1、出力端子2などを覆うことができる。なお、カバー40は、放熱特性を有する合成樹脂、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂などを用いてもよい。カバー40は、螺子62を締め付けることにより筐体20に取付けることができる。カバー40の筐体20への取付け方法は、螺子62に限定されるものではなく、カバー40を筐体20に嵌め込むようにしてもよく、嵌合させるようにしてもよい。
【0027】
カバー40とFET10との間には電磁シールド部51を設けてある。また、カバー40とダイオード14との間には電磁シールド部52を設けてある。電磁シールド部51は、個々のFET10を個別に覆うように構成してもよく、複数のFET10を1つに纏めて覆うように構成してもよい。また、電磁シールド部52は、個々のダイオード14を個別に覆うように構成してもよく、複数のダイオード14を1つに纏めて覆うように構成してもよい。すなわち、電磁シールド部51、52は、1又は複数の発熱部品を覆うように構成することができる。
【0028】
カバー40を筐体20に取付けた場合、カバー40は、電磁シールド部51、52を介してFET10及びダイオード14と熱伝導的に接触させることができる。また、電磁シールド部51、52は、カバー40とFET10及びダイオード14との間に備えられているので、FET10及びダイオード14から発生するノイズ(例えば、スイッチングによる高周波ノイズ)を遮蔽して外部へ漏洩することを抑制し、ノイズを低減することができる。さらに、FET10及びダイオード14は、電磁シールド部51、52を介してカバー40に熱伝導的に接触することになるので、カバー40(特にカバー40全体)を用いて発熱部品からの熱を外部へ放出することができ、発熱部品の放熱を向上させることができる。
【0029】
トランス13とカバー40との間には、絶縁シート36を設けてあり、コイル15とカバー40との間には、絶縁シート38を設けてある。絶縁シート35~38は、電源装置100の一次側と二次側とを絶縁する機能を有する。
【0030】
また、複数の発熱部品は、基板31の表面からの離隔寸法が異なり、電磁シールド部51、52は、複数の発熱部品の基板31の表面からの離隔寸法に応じて異なる厚みを有する。
【0031】
図2に示すように、FET10の基板31の表面からの高さ寸法をh1とし、ダイオード14の基板31の表面からの高さ寸法をh2とし、h1>h2であるとする。この場合、FET10に対する電磁シールド部51の厚み(より正確には、電磁シールド部51のカバー40と絶縁シート35との間の厚み)をt1とし、ダイオード14に対する電磁シールド部52の厚み(より正確には、電磁シールド部52のカバー40と絶縁シート37との間の厚み)をt2とすると、t1<t2となる。
【0032】
すなわち、発熱部品の基板31の表面からの高さ寸法が比較的大きい場合には、電磁シールド部の厚みを小さくし、発熱部品の基板31の表面からの高さ寸法が比較的小さい場合には、電磁シールド部の厚みを大きくする。これにより、1又は複数の発熱部品は、形状や大きさ(特に基板面からの高さ寸法)に関わらず、電磁シールド部51、52でノイズを低減することができるとともに、カバー40と基板31の表面との離隔寸法を所要の寸法にすることができる。図2の例では、(t1+h1)=(t2+h2)となるように電磁シールド部の厚みを調整しているので、発熱部品の形状や大きさに関わらず共通のカバー40(例えば、カバー40の天板を平板状にすることができる)を用いることができ、部品の共通化を図ることができる。
【0033】
また、発熱部品の基板31の表面からの高さ寸法に関わらず、電磁シールド部を介して発熱部品とカバー40とを熱伝導的に接触させることができるので、カバー40(特にカバー40全体)を用いて発熱部品からの熱を外部へ放出することができ、発熱部品の放熱を向上させることができる。
【0034】
図3は本実施の形態の電源装置100のカバー40と電磁シールド部51との固定例を示す模式図であり、図4は本実施の形態の電源装置100の電磁シールド部51の構造の一例を示す横断面図である。図4において、符号101は、FET10の接続端子であり、接続端子101は、基板31上の回路パターン(不図示)に電気的に接続されている。図3及び図4では、電磁シールド部51のみを例示しているが、電磁シールド部52のカバー40への固定方法も同様である。図3及び図4に示すように、電磁シールド51は、一面が開口した箱状をなし、基板31に実装されたFET10を周囲及び上側から覆うように、FET10を内部に収容することができる構造をなす。
【0035】
電磁シールド部51は、カバー40に設けられた挿通孔(不図示)に螺子61を挿通して電磁シールド部51の螺子孔に螺合させることにより、カバー40に固定することができる。電磁シールド部51、52が固定されたカバー40を筐体20に固定することにより、カバー40で発熱部品を押し付けて、発熱部品の熱を、絶縁シート35~38、電磁シールド部51、52などを介してカバー40へ伝導させることができ、カバー40全体で放熱することができる。
【0036】
また、電磁シールド部51、52は、それぞれFET10、ダイオード14の周囲を覆うので、放熱と同時に外部にノイズが漏洩することを抑制することができる。」
「【図2】
[図:0001413003000003.jpg]
【図3】
[図:0001413003000004.jpg]
【図4】
[図:0001413003000005.jpg]
」
(2)上記(1)の記載から、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「電源装置100であって、
基板31には、発熱部品としてのFET10などを実装してあり、
基板31が金属製の筐体20に固定してあり、
蓋部としてのカバー40は、金属製であり、基板31などを覆い、
カバー40を筐体20に取付け、
カバー40とFET10との間には電磁シールド部51を設けてあり、電磁シールド部51は、複数のFET10を1つに纏めて覆い、
カバー40は、電磁シールド部51を介してFET10と熱伝導的に接触させることができ、
FET10は、電磁シールド部51を介してカバー40に熱伝導的に接触することになるので、カバー40全体を用いて発熱部品からの熱を外部へ放出し、
電磁シールド51は、一面が開口した箱状をなし、基板31に実装されたFET10を周囲及び上側から覆うように、FET10を内部に収容することができる構造をなす、
電源装置100。」
第6 当審拒絶理由の理由3(進歩性)について(引用発明との対比・判断)
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明1とを対比する。
(ア)引用文献1の図7、図8から見て取れる配置を考慮すると、引用発明1の「筐体8」は、「基板7」、「基板9」及び「基板10」すなわち複数の基板を収容するためのものであることは明らかであり、本願発明1の「ケーシング」に相当する。
また、引用発明1の「筐体8」は、「スマートタップが設置されている壁内にて、放熱」するから、「放熱」先の「壁内」の空間に対して、「筐体8」の外方に露出し、「筐体8」の外面部にて構成された部分を含むといえるものであり、当該部分は本願発明1の「前記ケーシングの外面部にて構成され」た「露出部」に相当する。
(イ)引用発明1は、「MOSFET1が発熱した場合には、該MOSFET1と筐体8の両方に接するように絶縁性放熱シートを設けているため、該MOSFET1から発生した熱は放熱材としての絶縁性放熱シートを伝熱し、さらに金属の筐体8や金属製ヒートシンクに伝えられ、筐体8はスマートタップが設置されている壁内にて、放熱」するものであるから、引用発明1の「絶縁性放熱シート」は、「筐体8」とは別に備えられており、「MOSFET1」の熱を自己に伝熱させて、その熱を上記(ア)の「筐体8」の外方に露出している部分に伝熱させて放熱させるといえる。
そして、引用発明1の「MOSFET1」と、本願発明1の「前記複数の基板」とは、「発熱体」である点で共通する。
以上の点について、上記(ア)でさらに検討した点も踏まえると、引用発明1において、「MOSFET1」の熱を自己に伝熱させて、その熱を「筐体8」の外方に露出している部分に伝熱させて放熱させる「絶縁性放熱シート」が「筐体8」とは別に備えられていることと、本願発明1の「前記ケーシングとは別に備えられて、前記ケーシングの外方に露出しない状態で前記ケーシングの内部に配設された伝熱部が備えられ」、「前記伝熱部は、複数の基板の熱を自己に伝熱させて集めて、その集めた複数の基板の熱を基板の面方向に沿って伝熱させた後、基板の表裏方向の裏側へも伝熱させて前記露出部に伝熱させて放熱させる」こととは、「前記ケーシングとは別に備えられた伝熱部が備えられ」、「前記伝熱部は、発熱体の熱を自己に伝熱させて、その熱を前記露出部に伝熱させて放熱させる」ことである点で共通する。
(ウ)引用発明1の「スマートタップ」は、「通信手段4」の「基板を設置し」、「このために該通信手段4が通信する信号はスマートタップの該前面6を通過して、サーバと通信することができ」るものであるから、情報通信を行うユニットであるといえるものであって、後述する相違点を除き、本願発明1の「情報通信ユニット」に相当する。
また、引用発明1の「スマートタップ」は、「筐体8」及び上記(ア)の「筐体8」の外方に露出している部分が備えられており、かつ上記(イ)の「絶縁性放熱シート」が放熱させる、放熱構造を備えるといえる。
(エ)上記(ア)~(ウ)から、引用発明1における、「筐体8」が「基板7」、「基板9」及び「基板10」を収容し、「MOSFET1が発熱した場合には、該MOSFET1と筐体8の両方に接するように絶縁性放熱シートを設けているため、該MOSFET1から発生した熱は放熱材としての絶縁性放熱シートを伝熱し、さらに金属の筐体8や金属製ヒートシンクに伝えられ、筐体8はスマートタップが設置されている壁内にて、放熱」する「スマートタップ」と、本願発明1における
「複数の基板と、それら複数の基板を収容するケーシングと、そのケーシングの外方に露出する露出部とが備えられ、
前記露出部は、前記ケーシングの外面部にて構成され、
前記ケーシングとは別に備えられて、前記ケーシングの外方に露出しない状態で前記ケーシングの内部に配設された伝熱部が備えられ、
前記伝熱部は、複数の基板の熱を自己に伝熱させて集めて、その集めた複数の基板の熱を基板の面方向に沿って伝熱させた後、基板の表裏方向の裏側へも伝熱させて前記露出部に伝熱させて放熱させる放熱構造を備えた情報通信ユニット」
とは、
「複数の基板と、それら複数の基板を収容するケーシングと、そのケーシングの外方に露出する露出部とが備えられ、
前記露出部は、前記ケーシングの外面部にて構成され、
前記ケーシングとは別に備えられた伝熱部が備えられ、
前記伝熱部は、発熱体の熱を自己に伝熱させて、その熱を前記露出部に伝熱させて放熱させる放熱構造を備えた情報通信ユニット」
である点で共通する。
(オ)引用発明1の「スマートタップ」は、「該基板中央部に無線モジュールを設け」たものであるから、これにアンテナ素子が備えられていることは明らかであり、上記(ウ)の「通信手段4」として、情報通信のための部品が備えられたものであることも明らかである。
また、引用文献1の「スイッチング電源やインバータ等の制御装置」との記載(段落【0023】)及び「制御装置としてMOSFETを採用した」との記載(段落【0067】)によれば、引用発明1の「制御手段であるMOSFET1」は、電源部品であることが理解できるから、引用発明1の「スマートタップ」は、当該電源部品が備えられたものであるといえる。
(カ)引用発明1の「スマートタップ」は、「壁内にて」「設置され」、かつその「筐体8」が「壁内にて、放熱」するものであるから、引用発明1における「筐体8」は、少なくとも「壁」の面よりも後方側の一部が「壁」の内部に「壁」に埋設される埋設状態にて「壁」に設置されるといえる。
そして、引用発明1の「壁」は、本願発明1の「設置対象部位」に相当する。
(キ)引用発明1は、その「筐体8」が「基板7」等を収容し(上記(ア))、かつ「壁内にて、放熱」するものであり、また、「スマートタップの該前面6の内部に位置する基板7の長辺の中央部付近にMOSFET1を設け」たものであるから、引用発明1における上記(ア)の「筐体8」の外方に露出している部分は、「壁」の前方側に配置される「前面6」よりも「壁」の後方側に配設されているといえる。
そして、引用発明1の「前面6」は、本願発明1の「化粧カバー」に相当する。
(ク)上記(オ)~(キ)から、引用発明1は、本願発明1における
「アンテナ素子、情報通信のための部品、及び、電源部品が備えられ、
前記ケーシングは、少なくとも後方側の一部が設置対象部位の内部に埋設される埋設状態にて設置対象部位に設置され、
前記露出部は、設置対象部位の前方側に配置される化粧カバーよりも設置対象部位の後方側に配設されている」
ことに相当する構成を有するものである。
イ 上記アから、本願発明1と引用発明1とは、次の点で一致する。
(一致点)
「複数の基板と、それら複数の基板を収容するケーシングと、そのケーシングの外方に露出する露出部とが備えられ、
前記露出部は、前記ケーシングの外面部にて構成され、
前記ケーシングとは別に備えられた伝熱部が備えられ、
前記伝熱部は、発熱体の熱を自己に伝熱させて、その熱を前記露出部に伝熱させて放熱させる放熱構造を備えた情報通信ユニットにおいて、
アンテナ素子、情報通信のための部品、及び、電源部品が備えられ、
前記ケーシングは、少なくとも後方側の一部が設置対象部位の内部に埋設される埋設状態にて設置対象部位に設置され、
前記露出部は、設置対象部位の前方側に配置される化粧カバーよりも設置対象部位の後方側に配設されている情報通信ユニット。」
ウ また、本願発明1と引用発明1とは、次の点で相違する。
(相違点1)
「伝熱部」について、本願発明1では、「前記ケーシングの外方に露出しない状態で前記ケーシングの内部に配設された」ものであり、複数の発熱体の熱を「集めて」、「その集めた」熱を「基板の面方向に沿って伝熱させた後、基板の表裏方向の裏側へも伝熱させ」るものであるに対して、引用発明1では、複数の発熱体の熱を「集め」ることについて特定されるものではなく、「筐体8」に対する配置の関係及び熱を「筐体8」に伝熱させる経路について特定されるものでもない点。
(相違点2)
本願発明1では、「伝熱部」が「自己に伝熱させ」る対象の発熱体が「前記複数の基板」であるのに対して、引用発明1では「MOSFET1」である点。
(2)判断
そこで、まず相違点1について検討する。
引用発明2において、「カバー40」は、「基板31などを覆い」、その「全体を用いて」「発熱部品からの熱を外部へ放出」するものであり、かつ「金属製の筐体20」に「取付け」たものであること、及び、引用文献2の図2から見て取れる「カバー40」と「基板31」との配置の関係を考慮すると、「カバー40」は、熱を「基板31」の面方向に沿って伝熱させた後、当該「基板31」の表裏方向の裏側へも伝熱させた上、「金属製の筐体20」においても放熱が行われることは明らかである。
よって、引用発明2の「電磁シールド51」及び「カバー40」は、「基板31」の熱を当該「基板31」の面方向に沿って伝熱させた後、当該「基板31」の表裏方向の裏側の「金属製の筐体20」へも伝熱させるといえるものであるといえる。
しかしながら、引用発明2の「カバー40」は、「基板31」の熱を伝熱させる役割と「基板31」の「蓋部」としての役割とを兼ねるものであるから、引用発明1において、「筐体8」へ熱を伝えるための構成として、「絶縁性放熱シート」に代えて、引用発明2における「基板31」の熱が伝熱される「電磁シールド51」及び「カバー40」を適用しても、本願発明1の「前記ケーシングの外方に露出しない状態で前記ケーシングの内部に配設された伝熱部」に相当する構成には至らない。
また、引用発明1に引用発明2を適用した場合の「カバー40」の「筐体8」に対する配置の関係は、当業者が適宜なし得る設計的事項であるともいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1,2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 小括
以上から、当審拒絶理由の理由3(進歩性)は解消した。
第7 当審拒絶理由の理由1(サポート要件)、理由2(明確性)について
令和6年5月23日提出の手続補正書による補正の結果、請求項1は、「前記露出部は、前記ケーシングの外面部にて構成され」との記載を含むものとされ、当該記載は、発明の詳細な説明の段落【0038】等の記載に対応しているといえる。
また、同じく請求項1は、「前記露出部は、設置対象部位の前方側に配置される化粧カバーよりも設置対象部位の後方側に配設されている」と記載の記載を含むものとされたことから、「露出部」の「配設」の態様が明確なものとなり、一方、請求項2は削除されている。
以上から、当審拒絶理由の理由1,2はいずれも解消した。
第8 原査定について
原査定の引用文献Aは当審拒絶理由の引用文献1であるから、上記第6で検討したところによれば、本願発明1は、引用文献Aに記載された発明ではなく、また、当業者であっても引用文献Aに記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
よって、原査定を維持することはできない。
第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-010849