特許拒絶査定不服審判
2023-007649
ポリエステル系長繊維不織布
- 審判番号
- 2023-007649
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-178214
- 請求日
- 2023年05月11日
- 審決日
- 2025年03月14日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ユニチカ株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人森本国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 岩谷 一臣
- 審判官 木原 裕二
- 審判官 神山 茂樹
- 分類
- P18 .121-Z (D04H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-178214「ポリエステル系長繊維不織布」拒絶査定不服審判事件〔令和2年4月2日出願公開、特開2020-50971〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年9月25日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和 4年 7月15日付け:拒絶理由通知
4年11月15日 :意見書及び手続補正書の提出
5年 2月 3日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
5年 5月11日 :審判請求書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和4年11月15日付け手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲、及び図面によれば、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。
「芯部にポリエステル系重合体Aが配されるとともに、鞘部にポリエステル系重合体Bが配された芯鞘型複合繊維を構成繊維とし、鞘部のポリエステル系重合体Bにポリメタクリル酸メチルを1.0~20質量%含有することを特徴とするポリエステル系長繊維不織布。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1~4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2017-150098号公報
引用文献2:特開2011-162888号公報
第4 当審の判断
当審は、以下に示すとおり、意見書及び審判請求書の請求の理由を考慮しても、前記第3に記載した理由は解消していないと判断する。
1 引用文献に記載の事項と引用発明
(1) 引用文献1
ア 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、特開2017-150098号公報(平成29年8月31日公開)には、次の記載がある。(下線は当審で付した。「・・・」は省略を表す。)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯鞘型複合繊維によって構成される連続繊維不織布であり、
芯鞘型複合繊維において、芯部および鞘部を構成するポリマーが両者共に芳香族ポリエステルポリマー(A)であり、
芯部を構成するポリマーである芳香族ポリエステルポリマー(A)は、結晶核剤を含有し、
鞘部を構成するポリマーである芳香族ポリエステルポリマー(A)は、結晶核剤を含有せず、
不織布は、部分的に熱圧着された熱圧着部を有することにより、連続繊維同士が一体化していることを特徴とする連続繊維不織布。
【請求項2】
芳香族ポリエステルポリマー(A)の結晶融点が、240~270℃であることを特徴とする請求項1記載の連続繊維不織布。
・・・
【請求項5】
芯部と鞘部の質量比率が、(芯部)/(鞘部)=90/10~50/50であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項記載の連続繊維不織布。
【請求項6】
芯鞘型複合ノズル孔を用いて溶融紡糸し、得られた芯鞘型複合繊維を集積して連続繊維不織布を製造する方法であり、
芯部を構成するためのノズル孔に、結晶核剤を含有する芳香族ポリエステルポリマー(A)を供給し、
鞘部を構成するためのノズル孔に、結晶核剤を含有しない芳香族ポリエステルポリマー(A)を供給して溶融紡糸し、牽引速度3500~4500m/分で引き取り、
得られた芯鞘型複合繊維を集積し、集積してなる不織ウェブに部分的に加熱加圧することにより、芯鞘型複合繊維の鞘部の芳香族ポリエステルポリマー(A)を軟化させて繊維同士を接着することにより一体化することを特徴とする連続繊維不織布の製造方法。」
「【背景技術】
【0002】
ポリエステルからなる連続繊維不織布は、強度が高く、また、耐久性に優れるため、各種分野に用いられている。そのなかでも、他の素材と複合する、あるいは不織布単独で、所定の形状に成型してなる成型物は、連続繊維不織布の特性を活かした成型物が得られる。成型するにあたっては、成型金型に応じた所定の形状への追従性、熱成型時の寸法安定性、成型後の形態保持性等の総合した熱成型性が求められる。
【0003】
熱成型性を有する不織布の構成ポリマーであるポリエステルとしては、芳香族ポリエステルのみを使用するのではなく、芳香族ポリエステルと低融点の共重合ポリエステルと併用することが提案されている。例えば、特許文献1では、成型に用いる長繊維不織布を構成する連続繊維は、芳香族ポリエステルと芳香族共重合ポリエステルとを組み合せて用いる。具体的な組合せ方としては、2つポリエステルを複合紡糸して芯鞘複合繊維やサイドバイサイド繊維とする方法、2つポリエステルをブレンドしてブレンド紡糸してブレンド繊維とする方法、低融点熱接着繊維と高融点繊維とを混繊する方法を挙げている。
・・・
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-62084号公報 特許請求の範囲、段落番号0015」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に開示された芳香族ポリエステルと低融点の芳香族共重合ポリエステルとによって構成される不織布は、エンボス点で熱圧着される際に、低融点の芳香族共重合ポリエステルが熱接着成分として機能するため、繊維同士の接着性が上がり、不織布強度は向上する傾向となるが、低融点成分を含むため、耐熱性に劣る。すなわち、熱成型の際に、高温に加熱するため寸法安定性を要するが、低融点成分を含むと、高温下での加熱処理によって熱収縮が大きくなり、安定した熱成型加工を施しにくいという問題がある。
【0007】
本発明は、成型金型に応じた所定の形状への良好な追従性、熱成型時の寸法安定性、成型後の形態保持性等の総合した熱成型性が向上し、より耐熱性に優れた連続繊維不織布を提供することを課題とする。」
「【0013】
本発明における連続繊維は、芯部と鞘部に同じ芳香族ポリエステル(A)を配するが、芯部と鞘部において結晶化の状態が異なっている。芯部に配する芳香族ポリエステル(A)は結晶核剤を含み、鞘部に配する芳香族ポリエステル(B)は結晶核剤を含まない。芯部には結晶核剤を含有させ、鞘部には結晶核剤を含有させないことにより、溶融紡糸後に高速で引き取る際に、芯部および鞘部に配された芳香族ポリエステル(A)において分子配向して結晶化するが、このとき、芯部には結晶核剤を含有しているため、鞘部よりも結晶化が進み、その一方、鞘部は結晶核剤を含有しないため、芯部よりも結晶化しにくい。芯部と鞘部には、同じ芳香族ポリエステル(A)を配しているが、結晶核剤の有無により、結晶しやすさに差を設け、そのようなポリマーを複合して、溶融紡糸後に高速で引き取った際に、芯部は配向結晶化が促進し、鞘部は配向結晶化が抑制されるのである。結晶化が促進した芯部を有することにより、連続繊維の強度は向上し、また、不織布強度も向上する。一方、結晶化が抑制された鞘部を有することにより、鞘部は、不織布化のための熱接着成分として良好に機能する。すなわち、結晶化が抑制された鞘部は、融点よりも低い温度で良好に軟化するので、熱接着性に優れる。融点よりも低い温度で熱接着処理を施すことができるため、熱接着処理の際の設定温度を融点以下の低い温度に設定することができ、そのような低い温度であっても、良好に軟化して熱接着成分として機能し、繊維同士を良好に接合する。また、融点よりも低い温度で熱接着していることから、引っ張りに対して伸張しやすく破壊や破断が生じにくいことから、熱成型時の追従性が良好となる。さらには、熱圧着された箇所(部分熱圧着部)において、融点以下の低い温度で熱処理が施されていることにより、芯部への熱の影響がなく、熱圧着部においても芯部は良好に強度を維持する。熱接着処理については後述するが、熱処理時の設定温度は、芳香族ポリエステル(A)の融点よりも90~60℃低い温度とし、このような融点より低い温度で良好に熱接着されて実用的な強度を発揮することができる。なお、芯部と鞘部は両者ともに同じ芳香族ポリエステルが配されるが、ポリマー構成成分が同じものであれば、粘度については、本発明の目的が達成される範囲であれば、同じものであっても、異なるものであってもよい。なお、鞘部が接着剤として機能することを考慮すれば、粘度は、同等もしくは、鞘部の粘度が低いもの(流動しやすいもの)を用いることが好ましい。」
イ 引用文献1に記載された発明
上記アの記載を参酌すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「芯部に結晶核剤を含有する芳香族ポリエステルポリマーが配されるとともに、鞘部に結晶核剤を含有しない芳香族ポリエステルポリマーが配された芯鞘型複合繊維によって構成される連続繊維不織布であって、
不織布は、部分的に熱圧着された熱圧着部を有することにより、連続繊維同士が一体化しており、
芯部と鞘部の芳香族ポリエステルポリマーの融点が240~270℃であり、
芯部と鞘部との質量比率が、(芯部)/(鞘部)=90/10~50/50であり、
芯鞘型複合繊維を製造する際に牽引速度が3000~4500m/minとされ、
結晶核剤の有無により、結晶しやすさに差を設け、溶融紡糸後に高速で引き取った際に、芯部は配向結晶化が促進され、鞘部は配向結晶化が抑制されている、連続繊維不織布。」
(2)引用文献2
ア 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された特開2011-162888号公報には、以下の記載がある。
「【0019】
さらにポリエステルマルチフィラメントAにはポリメチルメタアクリレート系ポリマーまたはポリスチレン系ポリマーを混合使用することが必要である。ポリメチルメタアクリレート系ポリマーまたはポリスチレン系ポリマーの混合割合は、前述した含金属リン化合物やアルカリ土類金属化合物を含有するポリエステルと、上記ポリメチルメタアクリレート系ポリマーまたはポリスチレン系ポリマーとの混合ポリマー全重量を基準として0.1~3.0重量%、好ましくは、0.2~2.0重量%、さらに好ましくは0.2~1.0重量%である。混合ポリマーとすることにより、後述するように上記マルチフィラメントAがポリエステル混繊糸の鞘部に配され、ソフトな風合いを有し、経筋斑のない高品質の布帛を得ることができる。これは、マルチフィラメントAが、ポリメチルメタアクリレート系ポリマーまたはポリスチレン系ポリマーを含有することによって低配向となるためと推定される。」
「【0024】
(製糸方法)
以上に説明したポリエステル混繊糸は次の方法により製造することができる。すなわち、ポリエステルの全酸成分に対して0.5~3モル%の含金属リン化合物及び該含金属リン化合物に対して0.5~1.2倍モルのアルカリ土類金属化合物を添加してなるポリエステルとポリメチルメタアクリレート系ポリマーまたはポリスチレン系ポリマーとの混合ポリマーをポリエステルマルチフィラメントA用ポリマーとし、ポリメチルメタアクリレート系ポリマーまたはポリスチレン系ポリマーのいずれも含有していない、好ましくは全酸成分又はグリコール成分を基準として8~40モル%の割合で第3成分を共重合したポリエステルをポリエステルマルチフィラメントB用ポリマーとして、同一または異なる紡糸口金から夫々溶融吐出し、夫々の吐出糸条群を冷却固化した後、これらを合糸し、1500~4000m/分の速度で引き取った未延伸糸に、公知の混繊装置を用いて空気交絡を施し、延伸することによって、本発明のポリエステル混繊糸を製造することができる。
・・・
【0026】
上記方法においては、一方の吐出糸条には、ポリメチルメタアクリレート系ポリマーまたはポリスチレン系ポリマーが含有されていることにより、伸長粘度低下、及び、配向結晶抑制が発現する。そして、これらを合糸して、引き取った未延伸糸条においては、上記ポリマーを含有した未延伸マルチフィラメントAが、該ポリマーを含有しない未延伸マルチフィラメントBよりも高伸度となっており、さらに、該未延伸糸を同時延伸することで、マルチフィラメントAが鞘部、マルチフィラメントBが芯部に配されたポリエステル混繊糸を得ることができる。」
イ 引用文献2の上記記載から認定できる技術事項
上記アを参酌すると、引用文献2には、以下の技術的事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。
「延伸を行うポリエステル繊維にポリメチルメタアクリレート系ポリマーを混合ポリマー全重量を基準として0.1~3.0重量%含有させることで、延伸後の糸が低配向となること。」
2 対比
本願発明と引用発明を対比する。
芳香族ポリエステルポリマーはポリエステル系重合体であるので、引用発明の「芯部に」「芳香族ポリエステルポリマーが配されるとともに、」「鞘部に」「芳香族ポリエステルポリマーが配された芯鞘型複合繊維」は、本願発明の「芯部にポリエステル系重合体Aが配されるとともに、鞘部にポリエステル系重合体Bが配された芯鞘型複合繊維」に相当する。
また、引用発明の「芯部」と「鞘部」を有し、「部分的に熱圧着された熱圧着部を有することにより、連続繊維同士が一体化して」いる「不織布」は、技術常識に鑑みれば、本願発明における「芯鞘型複合繊維を構成繊維とするポリエステル系長繊維不織布」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明は、以下の点で一致し、相違する。
[一致点]
「芯部にポリエステル系重合体Aが配されるとともに、鞘部にポリエステル系重合体Bが配された芯鞘型複合繊維を構成繊維とするポリエステル系長繊維不織布。」
[相違点]
本願発明が、「鞘部のポリエステル系重合体Bにポリメタクリル酸メチルを1.0~20質量%含有する」のに対し、引用発明はそのような構成を有しない点。
3 判断
上記相違点について判断する。
引用発明は、本願発明と同様に、延伸による芯鞘型複合繊維の芯部と鞘部の結晶のしやすさに差を設けることにより、結晶化が促進した芯部による繊維の強度向上とともに、結晶化が抑制された鞘部により融点よりも低い温度で熱接着処理を施し、引っ張りに対して伸張しやすく破壊や破断が生じにくい不織布を得たものである。
ここで、上記1(2)イで説示したように、延伸するポリエステル繊維に対して、ポリメチルメタアクリレート系ポリマー(本願発明の「ポリメタクリル酸メチル」に相当)を0.1~3.0重量%配合することで、延伸後の糸が低配向となる、すなわち、結晶化度が低い糸が得られることが引用文献2記載事項に示されている。
そうすると、当業者であれば、引用発明の芯鞘型複合繊維において、芯部に比べ鞘部の結晶化を低減させるために、芯部に結晶核剤を含有し、鞘部には結晶核剤を含有しないとすることに替えて、引用文献2記載事項を適用し、鞘部にポリメチルメタアクリレート系ポリマー、すなわち、ポリメタクリル酸メチルを所定量加えることは、当業者が容易に想到し得たものである。また、その配合量は、どの程度結晶化度を下げる必要があるかを考慮し、当業者が適宜設定すべき事項であるところ、本願発明において1.0~20質量%とすることによる臨界的意義は認められない。
その他、本願発明において、ポリメタクリル酸メチルを当該量配合することにより、引用発明に比して異質ないし格別顕著な効果を見出すこともできない。
よって、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 審判請求人の主張について
(1) 審判請求人の主張
審判請求人は審判請求書において、以下の旨を主張している。
<主張1>(3.3 本願発明と引用文献1に記載の発明との対比)
引用文献1には、配向結晶化を抑制させるような剤を添加することにより、鞘部の配向結晶化を抑制しようという技術思想はないのに対し、本願発明のポリエステル系長繊維不織布の構成繊維は、芯部が普通のポリエステル系重合体にて構成されるとともに、鞘部が芯部の普通のポリエステル系重合体よりも配向結晶化の度合いを低下させると理解される、ポリメタクリル酸メチルを含有するポリエステル系重合体にて構成されているため、本願発明のポリエステル系長繊維不織布では、その構成繊維の鞘部は、引用文献1における普通の芳香族ポリエステルポリマーよりもさらに結晶化が抑制されていると理解でき、その結果、本願発明のポリエステル系長繊維不織布では、引用文献1のものよりもいっそう成型性が向上することになる。
また、引用文献1の不織布では、引用文献1の段落0024、段落0025に記載のように、不織ウェブに加熱圧着処理を施すことにより不織布化を行うときの熱処理温度は、芳香族ポリエステルの融点よりも90~60℃低い温度範囲にしか設定できないのに対し、本願発明では、本願明細書の段落0022、段落0023に記載のように、同熱処理温度は、ポリエステル系重合体の融点よりも120~60℃低い温度範囲に設定できるため、より低温での加熱圧着処理で不織布化を達成できることから、引用文献1に記載の不織布のように大きい熱エネルギーを付与する必要がなく、引用文献1に記載の不織布よりも容易に製造することができる。
<主張2>(3.4 本願発明と引用文献2に記載の発明との対比)
引用文献2に記載の芯鞘型混繊糸は、審判請求書の手続補足書の参考図2の(a)(b)に示すとおりの断面構造となっており、引用文献2の請求項1に記載によれば、ポリエステル系マルチフィラメントAが鞘部を、ポリエステル系マルチフィラメントBが芯部を形成、つまり引用文献2に記載の芯鞘型混繊糸では、参考図2の(a)に示すように多数の第1の繊維にて構成された第1の繊維束を芯部とするとともに、多数の第2の繊維にて構成された第2の繊維束を、芯部を囲む鞘部として、1本の芯鞘型混繊糸を形成しているので、引用文献2の「芯鞘型混繊糸」は、本願発明の「芯鞘型複合繊維」や引用文献1に記載の「芯鞘型複合繊維」に相当するものではなく、このため、引用文献1に記載の発明(芯鞘型複合繊維によって構成される不織布)において、引用文献2に記載の発明(多数の繊維にて構成されるマルチフィラメントAが鞘部に配され、多数の繊維にて構成されるマルチフィラメントBが芯部に配された芯鞘型混繊糸)のように構成するということ自体、技術的意味がなく、また、引用文献1に記載の発明および引用文献2に記載の発明には、本願発明のごとく、芯鞘型複合繊維における鞘部の成分に配向結晶化を抑制させるポリメタクリ酸メチルを含有させることにより、成型性の良好な不織布を得ようという技術思想はないことから、引用文献1、2は、本願発明の技術思想を示唆、教示するものにはなり得ない。
(2)審判請求人の主張に対して
<主張1に対して>
上記3で説示したように、引用発明は、本願発明と同様に、延伸する芯鞘型複合繊維の芯部と鞘部の結晶しやすさに差を設けることにより、熱成型性が向上した不織布を得ているものであり、引用文献2記載事項を適用して、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。また、本願発明では、より低温での加熱圧着処理で不織布化を達成できるとする主張に関し、どの程度まで温度を下げられるかは加工方法や条件にも左右されると考えられ、当該温度差が格別顕著な効果とまでは言えない。
<主張2に対して>
引用発明の「芯鞘型複合繊維」と引用文献2の請求項1に記載の「芯鞘型混繊糸」との繊維の構造が異なるとしても、ポリメチルメタアクリレート系ポリマーを配合させることにより結晶化度を下げられることには変わりがなく、それぞれの繊維の構造の違いは、上述判断を左右しない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載事項に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-007649