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特許拒絶査定不服審判

2023-007020

イオン液体、潤滑剤、及び磁気記録媒体

審判番号
2023-007020
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-128943
請求日
2023年04月27日
審決日
2024年11月08日
公報発行日
2025年02月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】デクセリアルズ株式会社
  • 【請求人代理人】伊東 忠重
  • 【請求人代理人】伊東 忠彦
審判長/審判官
  • 審判長 木村 敏康
  • 審判官 野田 定文
  • 審判官 齊藤 真由美
分類
P18 .575-Z (C07D) / P18 .537-Z (C07D) / P18 .536-Z (C07D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条4項1号特許法36条6項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第17条の2第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第5項第1号、特許法第17条の2第5項第4号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-128943「イオン液体、潤滑剤、及び磁気記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔令和3年2月12日出願公開、特開2021-14417〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和元年7月11日の出願であって、令和4年9月1日付けの拒絶理由通知に対し、同年10月11日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、令和5年2月2日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年4月27日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。 第2 令和5年4月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定 〔補正の却下の決定の結論〕 令和5年4月27日にされた手続補正を却下する。 〔理由〕 1 補正の内容 令和5年4月27日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の記載を、以下の(A)から(B)とするものである(補正後の(B)の補正箇所に下線を付した。)。 (A)補正前 「 【請求項1】 カチオン成分と、アニオン成分とを有し、 前記カチオン成分が、4級アンモニウムカチオンであり、 前記4級アンモニウムカチオンが、窒素カチオンに結合し、水酸基及びフッ素原子を有する第1の基と、前記窒素カチオンに結合し、水酸基を有する第2の基と、を有し、 前記第1の基の前記水酸基が、前記第1の基の末端の炭素原子に結合していることを特徴とするイオン液体。 【請求項2】 前記第2の基の前記水酸基が、前記第2の基の末端の炭素原子に結合している請求項1に記載のイオン液体。 【請求項3】 前記第1の基の分子量が、1,500以下である請求項1から2のいずれかに記載のイオン液体。 【請求項4】 下記一般式(1)で表される請求項1から3のいずれかに記載のイオン液体。 【化1】 [図:0001418651000001.jpg] ただし、前記一般式(1)中、Rfは、炭素数1~4のパーフルオロアルキルオキシ鎖を繰り返し単位として持つパーフルオロポリエーテル鎖を表す。 Xは、炭素数1以上のアルキレン基、炭素数1以上のオキシアルキレン基、若しくは、炭素数1以上のオキシアルキレン基の繰り返し、又はこれらの組み合わせである。 Yは、単結合、及び2価の基のいずれかを表す。 Y’は、単結合、及び2価の基のいずれかを表す。 R1、及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基を表す(ただし、R1、及びR2は、結合して炭素数2~8の含窒素炭化水素環を形成してもよい)。 R3は、炭素数1~12の(n+1)価の炭化水素基である。 Aは、水酸基である。 nは、1以上の整数である。 Z-は、前記アニオン成分を表す。 【請求項5】 下記一般式(1-1)で表される請求項1から4のいずれかに記載のイオン液体。 【化2】 [図:0001418651000002.jpg] ただし、前記一般式(1-1)中、pは、1~20の整数を表す。qは、2~10の整数を表す。rは、0~4の整数を表す。sは、0~4の整数を表す。 R1、及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基を表す(ただし、R1、及びR2は、結合して炭素数2~8の含窒素炭化水素環を形成してもよい)。 R3は、炭素数1~12の(n+1)価の炭化水素基である。 Aは、水酸基である。 nは、1以上の整数である。 Z-は、前記アニオン成分を表す。 【請求項6】 前記アニオン成分が、フッ素化炭化水素基を有する請求項1から5のいずれかに記載のイオン液体。 【請求項7】 前記アニオン成分が、下記一般式(2)~一般式(5)のいずれかで表される請求項1から6のいずれかに記載のイオン液体。 【化3】 [図:0001418651000003.jpg] ただし、前記一般式(2)中、nは、0~8の整数を表す。 ただし、前記一般式(3)中、nは、0以上の整数を表す。 ただし、前記一般式(4)中、nは、0~8の整数を表す。 ただし、前記一般式(5)中、nは、1以上の整数を表す。 【請求項8】 請求項1から7のいずれかに記載のイオン液体を含有することを特徴とする潤滑剤。 【請求項9】 更にフッ素系溶剤を含有する請求項8に記載の潤滑剤。 【請求項10】 非磁性支持体と、前記非磁性支持体上に磁性層と、前記磁性層上に請求項8から9のいずれかに記載の潤滑剤とを有することを特徴とする磁気記録媒体。」 (B)補正後 「 【請求項1】 カチオン成分と、アニオン成分とを有し、 前記カチオン成分が、4級アンモニウムカチオンであり、 前記4級アンモニウムカチオンが、窒素カチオンに結合し、水酸基及びフッ素原子を有する第1の基と、前記窒素カチオンに結合し、水酸基を有する第2の基と、を有し、 前記第1の基の前記水酸基が、前記第1の基の末端の炭素原子に結合しており、 前記アニオン成分が、フッ素化炭化水素基を有することを特徴とするイオン液体。 【請求項2】 前記第2の基の前記水酸基が、前記第2の基の末端の炭素原子に結合している請求項1に記載のイオン液体。 【請求項3】 前記第1の基の分子量が、1,500以下である請求項1から2のいずれかに記載のイオン液体。 【請求項4】 下記一般式(1)で表される請求項1から3のいずれかに記載のイオン液体。 【化1】 [図:0001418651000004.jpg] ただし、前記一般式(1)中、Rfは、炭素数1~4のパーフルオロアルキルオキシ鎖を繰り返し単位として持つパーフルオロポリエーテル鎖を表す。 Xは、炭素数1以上のアルキレン基、炭素数1以上のオキシアルキレン基、若しくは、炭素数1以上のオキシアルキレン基の繰り返し、又はこれらの組み合わせである。 Yは、単結合、エステル(-COO-)、2級アミド(-NHCO-)、及びスルホン(-SO3-)のいずれかを表す。 Y’は、単結合、エステル(-COO-)、2級アミド(-NHCO-)、及びスルホン(-SO3-)のいずれかを表す。 R1、及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基を表す(ただし、R1、及びR2は、結合して炭素数2~8の含窒素炭化水素環を形成してもよい)。 R3は、炭素数1~12の(n+1)価の炭化水素基である。 Aは、水酸基である。 nは、1以上の整数である。 Z-は、前記アニオン成分を表す。 【請求項5】 下記一般式(1-1)で表される請求項1から4のいずれかに記載のイオン液体。 【化2】 [図:0001418651000005.jpg] ただし、前記一般式(1-1)中、pは、1~20の整数を表す。qは、2~10の整数を表す。rは、0~4の整数を表す。sは、0~4の整数を表す。 R1、及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基を表す(ただし、R1、及びR2は、結合して炭素数2~8の含窒素炭化水素環を形成してもよい)。 R3は、炭素数1~12の(n+1)価の炭化水素基である。 Aは、水酸基である。 nは、1以上の整数である。 Z-は、前記アニオン成分を表す。 【請求項6】 前記アニオン成分が、下記一般式(2)~一般式(5)のいずれかで表される請求項1から5のいずれかに記載のイオン液体。 【化3】 [図:0001418651000006.jpg] ただし、前記一般式(2)中、nは、0~8の整数を表す。 ただし、前記一般式(3)中、nは、0以上の整数を表す。 ただし、前記一般式(4)中、nは、0~8の整数を表す。 ただし、前記一般式(5)中、nは、1以上の整数を表す。 【請求項7】 請求項1から6のいずれかに記載のイオン液体を含有することを特徴とする潤滑剤。 【請求項8】 更にフッ素系溶剤を含有する請求項7に記載の潤滑剤。 【請求項9】 非磁性支持体と、前記非磁性支持体上に磁性層と、前記磁性層上に請求項7から8のいずれかに記載の潤滑剤とを有することを特徴とする磁気記録媒体。」 2 補正の目的 (1)補正事項aについて 本件補正は、補正前の請求項1の「前記第1の基の前記水酸基が、前記第1の基の末端の炭素原子に結合していることを特徴とするイオン液体。」との記載部分を、補正後の請求項1の「前記第1の基の前記水酸基が、前記第1の基の末端の炭素原子に結合しており、前記アニオン成分が、フッ素化炭化水素基を有することを特徴とするイオン液体。」との記載に改め、補正前の請求項6の「前記アニオン成分が、フッ素化炭化水素基を有する請求項1から5のいずれかに記載のイオン液体。」との請求項を削除し、補正前の請求項1~6を引用する請求項7~10の記載を補正後の請求項1~5を引用する請求項6~9の記載に改める補正(以下「補正事項a」という。)を含むものである。 そして、補正事項aは、補正前の請求項1~5の記載を直接又は間接的に引用する請求項6の記載を、補正後の独立形式での記載に改めた請求項1及びこれを引用する従属形式での記載に改めた請求項2~5の記載に整理するとともに、補正前の請求項1~5の記載を直接又は間接的に引用する請求項6を直接又は間接的に引用する請求項7~10を、補正後の請求項1~5の記載を直接又は間接的に引用する請求項6~9の記載に改めて、補正前の請求項1及びこれを直接又は間接的に引用する請求項2~5及び7~10を実質的に削除するものであるから、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる「第三十六条第五項に規定する請求項の削除」を目的とするものに該当する。 (2)補正事項bについて ア 本件補正は、補正前の請求項4の「Yは、単結合、及び2価の基のいずれかを表す。Y’は、単結合、及び2価の基のいずれかを表す。」との記載部分を、補正後の請求項4の「Yは、単結合、エステル(-COO-)、2級アミド(-NHCO-)、及びスルホン(-SO3-)のいずれかを表す。Y’は、単結合、エステル(-COO-)、2級アミド(-NHCO-)、及びスルホン(-SO3-)のいずれかを表す。」との記載に改める補正(以下「補正事項b」という。)を含むものである。 イ そして、補正事項bは、令和5年2月2日付けの拒絶査定の備考欄における「請求項4における『2価の基』・・・なる記載では、具体的な化学構造を特定できないことに加え、明細書段落[0030]及び[0031]には、『2価の基』として、エステル(-COO-)、2級アミド(-NHCO-)、及びスルホン(-SO3-)が例示されるものの、これら以外にいかなる構造を有する置換基が含まれるのか明確でない」との指摘に対応して、補正前の「2価の基」との記載部分の各々を「エステル(-COO-)、2級アミド(-NHCO-)、及びスルホン(-SO3-)」との記載の各々に改めた経緯がある。 ウ そこで、当該補正が「明りようでない記載の釈明」を目的とするものであるか否かについて検討するに、補正後の請求項4の記載を引用する請求項5の「一般式(1-1)」の記載は、補正後の請求項4の「Y」及び「Y’」に対応する連結基として「-(CH2)p-」及び「-(CH2)s-」というメチレン鎖を有し、pは「1~20の整数」を表し、sは「0~4の整数」を表すものとして定義されている。 エ このため、補正後の請求項4の「Y」及び「Y’」の連結基は「メチレン鎖」を含まないものとして定義されているのに対して、補正後の請求項4の記載を引用する請求項5の一般式(1-1)の定義は、補正後の請求項4の「Y」及び「Y’」の連結基の選択肢にない「-(CH2)p-」及び「-(CH2)s-」というメチレン鎖を有するものとして定義されているという点において、請求項の記載が他の記載との関係において不合理を生じている。 オ そうすると、補正事項bは、補正前の請求項4の「2価の基」との記載を、さらに不明瞭な記載にしているから、補正前の明瞭でない記載の不明瞭さを正して、その記載本来の意味内容を明らかにする「釈明」に該当するとはいえず、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的とするものに該当するとはいえない。 カ さらに、補正事項bが、同項第1号に掲げる「第三十六条第五項に規定する請求項の削除」及び同項第3号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものに該当しないことも明らかである。 キ つまるところ、補正前の「二価の基」との記載部分を、補正後の「エステル(-COO-)、2級アミド(-NHCO-)、及びスルホン(-SO3-)」との記載に改めることによって、補正前のY及びY’の選択肢の範囲から「メチレン鎖」などの選択肢が削除されているという点において、補正事項bは、同項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮(第三十六条第五項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものに該当するといえる。 3 独立特許要件について (1)はじめに ア 上記2(2)キに示したように、補正事項bによる補正は、同項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当するものといえるから、当該補正による補正後の請求項4及び請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5~9に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができ、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反しないか否かについて、以下検討する。 イ また、審判請求書の「3-1.本願発明について」において、請求人が「・補正後の請求項1では、補正前の請求項5に基づき、「アニオン成分が、フッ素化炭化水素基を有す」ることを特定する補正、即ち、アニオン成分の構造を限定的に減縮する補正を行いました。」と主張していることから、補正事項aによる補正が、仮に同法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当するものとした場合に、当該補正による補正後の請求項1及び請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~9に係る発明(以下、請求項の項番に対応して「本願補正発明1」等という。)が、同様に同法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反しないか否かについても、以下検討する。 (2)理由A(明確性要件)について 上記2(2)エに示したように、補正後の請求項4の「Y」及び「Y’」の連結基は「メチレン鎖」を含まないものとして定義されているのに対して、補正後の請求項4の記載を引用する請求項5の一般式(1-1)の定義は、補正後の請求項4の「Y」及び「Y’」の連結基の選択肢にない「-(CH2)p-」及び「-(CH2)s-」というメチレン鎖を有するものとして定義されているという点において、補正後の請求項4の記載は他の記載との関係で不合理を生じている。 したがって、補正後の請求項4及び請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5~9の記載は、特許を受けようとする発明が明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に適合せず、本願補正発明4~9は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (3)理由B(サポート要件)について ア サポート要件の判断の前提 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比し、特許請求の範囲で特定された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。 イ 本願明細書の発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明には、本願補正発明1~9に関する事項として、以下の摘記(A)~(E)の事項が記載されている(以下、下線は当審合議体が付したものであり、「・・・」は記載の省略を表す。)。 摘記(A)「【発明が解決しようとする課題】 【0013】 本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、熱安定性、フッ素系溶剤への溶解性、及び流動性に優れ、かつボンド率が高く、更に、薄い単分子膜を形成可能なイオン液体、及び前記イオン液体を用いた潤滑剤、並びに前記潤滑剤を用いた磁気記録媒体を提供することを目的とする。」 摘記(B)「【発明の効果】 【0015】 本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、熱安定性、フッ素系溶剤への溶解性、及び流動性に優れ、かつボンド率が高く、更に、薄い単分子膜を形成可能なイオン液体、及び前記イオン液体を用いた潤滑剤、並びに前記潤滑剤を用いた磁気記録媒体を提供することができる。」 摘記(C)「【発明を実施するための形態】 【0017】 (イオン液体) 本発明のイオン液体は、アニオン成分と、カチオン成分とを有する。即ち、前記イオン液体は、前記アニオン成分と、前記カチオン成分とから構成される。 【0018】 本発明者らは、熱安定性、フッ素系溶剤への溶解性、及び流動性に優れ、かつボンド率が高く、更に、薄い単分子膜を形成可能なイオン液体を提供するために、鋭意検討を行った。その結果、アニオン成分と、カチオン成分とを有するイオン液体において、前記カチオン成分が、4級アンモニウムカチオンであり、前記4級アンモニウムカチオンが、窒素カチオンに結合し、水酸基及びフッ素原子を有する第1の基と、前記窒素カチオンに結合し、水酸基を有する第2の基と、を有することにより、熱安定性、フッ素系溶剤への溶解性、及び流動性に優れ、かつボンド率が高く、更に、薄い単分子膜を形成可能なイオン液体が得られることを見出した。そのイオン液体は、潤滑剤、特に磁気記録媒体用潤滑剤に好適に用いることができる。 【0019】 前記イオン液体において、熱安定性、フッ素系溶剤への溶解性、及び流動性に優れ、かつボンド率が高く、更に、薄い単分子膜を形成可能である理由について、本発明者らは以下のように考察している。 イオン液体自体は熱安定性に優れる。更に、カチオン成分である4級アンモニウムカチオンが、フッ素原子を有する第1の基を有することにより、フッ素系溶剤溶解性に優れ、かつ低融点となる。低融点であることにより、常温(25℃)での流動性に優れる。更に、カチオン成分が、水酸基を有することにより、フッ素系溶剤溶解性及び流動性を低下せずに、ボンド率を高くすることができる。加えて、カチオン成分が、第1の基及び第2の基のそれぞれに、基材と結合しやすい水酸基を有することにより、それら水酸基が基材と結合する結果、前記イオン液体が基材表面に沿って配向しやすくなり、薄い単分子膜の形成が可能になると考えられる。 【0020】 <カチオン成分> 前記カチオン成分は、4級アンモニウムカチオンである。 前記カチオン成分は、水酸基及びフッ素原子を有する第1の基と、水酸基を有する第2の基と、を有する。 前記第1の基は、前記4級アンモニウムカチオンにおける窒素カチオンに結合している。 前記第2の基は、前記4級アンモニウムカチオンにおける窒素カチオンに結合している。 前記第1の基における前記水酸基、及び前記第2の基における前記水酸基とは、炭素原子に結合するOH基を意味する。 【0021】 <<第1の基>> 前記第1の基は、例えば、炭素数1~4のパーフルオロアルキルオキシ鎖を繰り返し単位として持つパーフルオロポリエーテル鎖を有する。 前記第1の基の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1,500以下が好ましく、1,000以下がより好ましく、800以下がより好ましい。前記第1の基の分子量の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、400などが挙げられる。 本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を示す。即ち、炭素数1~4は、炭素数1以上4以下を意味する。 【0022】 前記パーフルオロポリエーテル鎖の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1,200以下が好ましく、600以下がより好ましい。前記パーフルオロポリエーテル鎖の分子量の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、300などが挙げられる。 【0023】 <<第2の基>> 前記第2の基は、例えば、1以上の水酸基を有する炭化水素基である。前記炭化水素基の炭素数としては、1~12が好ましく、1~5がより好ましい。 【0024】 前記第1の基の前記水酸基は、前記第1の基の末端の炭素原子に結合しており、前記第2の基の水酸基は、前記第2の基の末端の炭素原子に結合していることが好ましい。カチオン成分が、第1の基及び第2の基のそれぞれに、基材と結合しやすい水酸基を有することにより、それら水酸基が基材と結合する結果、前記イオン液体が基材表面に沿って配向しやすくなり、薄い単分子膜の形成が可能になると考えられる。そして、前記第1の基の前記水酸基が前記第1の基の末端の炭素原子に結合しており、かつ前記第2の基の水酸基が前記第2の基の末端の炭素原子に結合していることにより、イオン液体が基材表面に沿ってより配向しやすくなり、より薄い単分子膜の形成が可能になると考えられる。 ここで、前記第1の基及び前記第2の基の末端の炭素原子とは、前記第1の基及び前記第2の基において、窒素カチオンに結合した原子を片端とし、前記片端の原子と共有結合によりつながった複数の鎖の中のつながりが最も長い鎖の炭素原子の中で、前記片端から最も遠くにある炭素原子を指す。 【0025】 <アニオン成分> 前記アニオン成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、溶解性の点から、フッ素化炭化水素基を有することが好ましく、下記一般式(2)、下記一般式(3)、下記一般式(4)及び下記一般式(5)のいずれかで表されることがより好ましい。前記フッ素化炭化水素基は、全フッ素化炭化水素基であってもよいし、部分フッ素化炭化水素基であってもよい。 【化4】 [図:0001418651000007.jpg] ただし、前記一般式(2)中、nは、0~8の整数を表し、0~3の整数が好ましい。 ただし、前記一般式(3)中、nは、0以上の整数を表し、0~8の整数が好ましく、0~3の整数がより好ましい。 ただし、前記一般式(4)中、nは、0~8の整数を表し、1~8の整数が好ましく、1~4の整数がより好ましい。 ただし、前記一般式(5)中、nは、1以上の整数を表し、1~8の整数が好ましく、1~4の整数がより好ましい。 【0026】 前記イオン液体としては、下記一般式(1)で表されることが好ましい。 【化5】 [図:0001418651000008.jpg] ただし、前記一般式(1)中、Rfは、炭素数1~4のパーフルオロアルキルオキシ鎖を繰り返し単位として持つパーフルオロポリエーテル鎖を表す。 Xは、炭素数1以上のアルキレン基、炭素数1以上のオキシアルキレン基、若しくは、炭素数1以上のオキシアルキレン基の繰り返し、又はこれらの組み合わせである。 Yは、単結合、及び2価の基のいずれかを表す。 Y’は、単結合、及び2価の基のいずれかを表す。 R1、及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基を表す(ただし、R1、及びR2は、結合して炭素数2~8の含窒素炭化水素環を形成してもよい)。 R3は、炭素数1~12の(n+1)価の炭化水素基である。 Aは、水酸基である。 nは、1以上の整数であり、1以上3以下の整数が好ましい。 Z-は、前記アニオン成分を表す。 【0027】 <<パーフルオロポリエーテル鎖又はRf>> 前記パーフルオロポリエーテル鎖又はRfの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1,200以下が好ましく、600以下がより好ましい。前記パーフルオロポリエーテル鎖又はRfの分子量の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、300などが挙げられる。 【0028】 前記パーフルオロポリエーテル鎖又は前記Rfとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(1-A)で表される基が好ましい。 【化6】 [図:0001418651000009.jpg] ただし、前記一般式(1-A)中、qは、2~10の整数を表し、2~6の整数が好ましい。rは、0~4の整数を表し、0~2の整数が好ましい。sは、0~4の整数を表し、0~2の整数が好ましい。*1は、Xに結合する結合手を表す。*2は、Y’に結合する結合手を表す。 【0029】 <<X>> Xは、炭素数1以上のアルキレン基、炭素数1以上のオキシアルキレン基、若しくは、炭素数1以上のオキシアルキレン基の繰り返し、又はこれらの組み合わせである。 前記炭素数1以上のアルキレン基としては、炭素数1~20のアルキレン基が好ましく、炭素数2~6のアルキレン基がより好ましい。 前記オキシアルキレン基の炭素数としては、1~4が好ましい。 前記オキシアルキレン基の繰り返し数としては、例えば、2~10であってもよいし、2~5であってもよい。 【0030】 <<Y>> Yは、単結合、及び2価の基のいずれかを表す。 前記2価の基としては、例えば、エステル(-COO-)、2級アミド(-NHCO-)、スルホン(-SO3-)などが挙げられる。 【0031】 なお、X、Yは、Rf鎖を窒素カチオンに結合させるためのものであるため、その構造は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。 【0032】 <<Y’>> Y’は、単結合、及び2価の基のいずれかを表す。 前記2価の基としては、例えば、エステル(-COO-)、2級アミド(-NHCO-)、スルホン(-SO3-)などが挙げられる。 【0033】 なお、Y’は、Rf鎖に直接的に又は間接的に水酸基を結合させるためのものであるため、その構造は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。 【0034】 <<R1、及びR2>> R1、及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基を表す。ただし、R1、及びR2は、結合して炭素数2~8の含窒素炭化水素環を形成してもよい。 前記炭素数2~8の含窒素炭化水素環としては、例えば、アルキレンイミン環が挙げられる。前記アルキレンイミン環としては、アジリジン環、アゼチジン環、ピロリジン環、ピペリジン環、ヘキサメチレンイミン環などが挙げられる。 R1及びR2が上記構造であれば、本発明の効果をより阻害しない。また、R1及びR2がそれぞれ独立して炭素数1~4のアルキル基である場合と、R1及びR2が結合して炭素数2~8の含窒素炭化水素環を形成している場合とは、本発明の効果への影響が異なるほどの構造上の違いではない。 【0035】 <<R3>> R3は、炭素数1~12の(n+1)価の炭化水素基である。 前記炭化水素基の炭素数としては、1~6が好ましく、1~4がより好ましい。 【0036】 前記イオン液体としては、下記一般式(1-1)で表されることがより好ましい。 【化7】 [図:0001418651000010.jpg] ただし、前記一般式(1-1)中、pは、1~20の整数を表し、2~6の整数が好ましい。qは、2~10の整数を表し、2~6の整数が好ましい。rは、0~4の整数を表し、0~2の整数が好ましい。sは、0~4の整数を表し、0~2の整数が好ましい。 R1、及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基を表す(ただし、R1、及びR2は、結合して炭素数2~8の含窒素炭化水素環を形成してもよい)。 R3は、炭素数1~12の(n+1)価の炭化水素基である。 Aは、水酸基である。 nは、1以上の整数である。 Z-は、前記アニオン成分を表す。 【0037】 前記一般式(1-1)中のR1、R2、R3、及びnの例示は、前記一般式(1)中のR1、R2、R3、及びnと同じであり、好ましい態様も同じである。 【0038】 本発明のイオン液体は、常温(25℃)で液体である。 前記イオン液体の融点は、25℃以下であることが好ましく、10℃以下であることがより好ましい。前記イオン液体の融点の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記イオン液体の融点は、-100℃以上が好ましい。 前記融点は、例えば、示差走査熱量測定により求めることができる。 前記イオン液体が常温以下の融点であることで、常温において流動性があるイオン液体となる。」 摘記(D)「【実施例】 【0066】 以下、本発明の具体的な実施例について説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。 【0067】 (実施例1) <イオン液体(1-D)の合成> 以下のイオン液体(1-D)を、以下の方法で合成した。 【化8】 [図:0001418651000011.jpg] 【0068】 <<工程1-A>> 3-ブロモプロピルトシラート(1-A)の合成 【化9】 [図:0001418651000012.jpg] 【0069】 撹拌子、及び冷却管を備えたフラスコ中に、3-ブロモ-1-プロパノール(メーカー:Aldrich)72.1g(519mmol)、p-トルエンスルホニルクロリド(メーカー:東京化成工業)114g(598mmol)、トルエン(メーカー:和光純薬工業)390g、及び塩基としてトリエチルアミン(メーカー:関東化学)59.5g(588mmol)を入れ、室温にて21時間撹拌した。撹拌後、反応溶液をろ過し、ジエチルエーテルを加え、エーテル層を水及び塩酸水で洗浄し、エバポレータにて溶媒を除去した。その後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン+アセトン=(質量比)9+1⇒3+1)にて精製した。精製後、フラクションを濃縮し、目的物の3-ブロモプロピルトシラート(1-A)を収率88%で得た。 【0070】 <<工程1-B>> 3-ブロモプロピルPFTEG-OH(1-B)の合成 【化10】 [図:0001418651000013.jpg] 【0071】 撹拌子、温度計、及び冷却管を備えたフラスコ中に、1H,1H,11H,11H-ドデカフルオロ-3,6,9-トリオキサウンデカン-1,11-ジオール(PFTEG-DOL)(メーカー:和光純薬)25.3g(61.6mmol)、<<工程1-A>>にて合成した3-ブロモプロピルトシラート(1-A)27.2g(92.8mmol)、及び溶媒としてメタキシレンヘキサフロライド(メーカー:和光純薬)62gを導入し、室温にて撹拌した。撹拌中に炭酸カリウム(メーカー:和光純薬)12.8g(92.5mmol)及びテトラブチルアンモニウムヒドロキシド55質量%水溶液(メーカー:Aldrich)2.89gを加え、80℃で6時間加熱撹拌を行った。この反応溶液に水とNovec7100(メーカー:3M)を加え、分液抽出を行い、続いて塩酸にて洗浄した後、Novec層をエバポレータにて濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン+アセトン=(質量比)17+3⇒3+1)にて精製した。得られたフラクションを濃縮し、3-ブロモプロピルPFTEG-OH(1-B)を収率17%で得た。 【0072】 <<工程1-C>> 臭化物塩(1-C)の合成 【化11】 [図:0001418651000014.jpg] 【0073】 撹拌子、温度計、及び冷却管を備えたフラスコ中に、1-ピロリジンエタノール(メーカー:東京化成工業)4.4g(38mmol)、及び<<工程1-B>>にて合成した3-ブロモプロピルPFTEG-OH(1-B)5.6g(19mmol)を加え、溶媒としてアセトニトリル8gを加え6時間加熱還流を行った。 得られた混合物溶液はエバポレータにて溶媒留去後、ヘキサン及びジエチルエーテルにてデカンテーション後、エバポレータで再度濃縮を行った。得られた濃縮液にNovec7100(メーカー:3M)を加え、0.2μのメンブレンフィルターにてろ過後、80度で減圧乾燥を行い、4級ピロリジニウム臭化物塩(1-C)を48%の収率で得た。合成した臭化物はLC-MS(ELSD)の測定結果から、約72%が目的物であることを確認した。 【0074】 <<工程1-D>> イオン液体(1-D)の合成 【化12】 [図:0001418651000015.jpg] 【0075】 撹拌子、及び冷却管を備えたフラスコ中に、<<工程1-C>>にて合成した4級ピロリジニウム塩〔臭化物塩(1-C)〕6.0g(9.2mmol)を入れ、そこへ水20gを加え、撹拌した。その後、EF-N445(ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドリチウム、メーカー:三菱マテリアル電子化成)17.7g(30.1mmol)を30gの水に溶かした溶液をフラスコ中に導入し、16時間撹拌した。撹拌後、得られたイオン液体層を水により洗浄した。その後、減圧乾燥を行い、目的物のイオン液体(1 -D)を収率72%で得た。目的物はLC-MS(ELSD)を測定し、純度98%であることを確認した。」 摘記(E)「【0076】 (比較例1) <イオン液体(2-D)の合成> 以下のイオン液体(2-D)を、以下の方法で合成した。 【化13】 [図:0001418651000016.jpg] ・・・ 【0083】 (比較例2) <イオン液体(3-D)の合成> 以下のイオン液体(3-D)を、以下の方法で合成した。 【化17】 [図:0001418651000017.jpg] ・・・ 【0088】 (比較例3) <PFTEG-DOL> 比較例3として、1H,1H,11H,11H-ドデカフルオロ-3,6,9-トリオキサウンデカン-1,11-ジオール(PFTEG-DOL、メーカー:和光純薬、分子量440)を用いた。 【0089】 (比較例4) <PFPE> 比較例4として、パーフルオロポリエーテル(PFPE、ソルベイ社製、分子量2000の末端水酸基2官能品:Z-DOL)を用いた。」 摘記(F)「【0107】 <<まとめ>> 上記評価結果を、以下にランク分けし、更に、以下の評価基準でまとめを行った。結果を表5に示した。 <ランク分け> 〔フッ系素溶剤溶解性〕 ○評価:ランク○ ×評価:ランク× 〔融点〕 25℃以下:ランク○ 25℃超:ランク× 〔耐熱性(熱分解温度)〕 300℃以上:ランク○ 300℃未満:ランク× 〔ボンド率〕 UV60秒照射後の場合に40%以上:ランク◎ UV60秒照射後の場合に30%以上40%未満:ランク○ UV60秒照射後の場合に30%未満:ランク× 〔単分子膜厚〕 10Å未満:ランクA 10Å以上15Å以下:ランクB 15Å超:ランクC 【0108】 【表5】 [図:0001418651000018.jpg] 【0109】 以上により、実施例1はフッ素系溶剤溶解性を維持しつつ高耐熱性と単分子膜厚の薄膜化を達成した。 なお、比較例1も比較的良好な結果であったが、単分子膜厚が、ランクAとなったことは、ランクBと比べて非常に優れたことである。」 ウ 本願補正発明1~9の解決しようとする課題 摘記(A)及び(B)を含む明細書全体の記載によれば、本願補正発明1~9の課題は、「熱安定性、フッ素系溶剤への溶解性、及び流動性に優れ、かつボンド率が高く、更に、薄い単分子膜を形成可能なイオン液体」の提供であるものと認められる。 エ 検討 (ア)本願補正発明4~9のサポート要件について 本願明細書の【0067】には、実施例1として「 [図:0001418651000019.jpg] 」という化学構造を有するイオン液体(1-D)が、唯一の具体例として記載され、その特性である「フッ素系溶剤溶解性、融点、熱分解温度、ボンド率、及び、単分子膜厚」が確認されている(摘記(D)及び(F))。 ここで、当該「イオン液体(1-D)」は、本願補正発明5の「一般式(1-1)」において、pが3、qが2、rが1、sが1の整数を表し、R1及びR2が結合して炭素数4の含窒素炭化水素環を形成し、R3が炭素数2の2価の炭化水素基、Aが水酸基、nが1であり、Z-がフッ化炭化水素基を有するアニオン成分であるものに該当するが、本願補正発明4の「一般式(1)」において、Yが「-(CH2)3-」であり、Y’が「-CH2-」である点において、本願補正発明4の具体例に該当しない。 そして、本願明細書の一般的な記載、及び本願出願時の技術常識を参酌しても、本願補正発明4の一般式(1)の「Y」及び「Y’」の「単結合、エステル(-COO-)、2級アミド(-NHCO-)、及びスルホン(-SO3-)のいずれか」という選択肢の全てが、上記「熱安定性、フッ素系溶剤への溶解性、及び流動性に優れ、かつボンド率が高く、更に、薄い単分子膜を形成可能なイオン液体」の提供という課題に照らして、実施例1の「-(CH2)3-」及び「-CH2-」というメチレン鎖と、同程度の有用性(熱安定性、溶解性、流動性、ボンド率、単分子膜形成性など)を示すといえる化学的な根拠は見当たらない。 そうすると、本願補正発明4及び本願補正発明4を引用する本願補正発明5~9は、本願補正発明4~9の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものであるとはいえず、また、出願時の技術常識に照らし、当業者が当該課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。 (イ)本願補正発明1~9のサポート要件について a 本願明細書には、「イオン液体」を構成する「アニオン成分」及び「カチオン成分」について、その取り得る化学構造の一般的な記載と一般式(1)及び一般式(1-1)の説明が記載されているが(摘記(C))、実際に本願補正発明1の「イオン液体」を製造し、その特性である「フッ素系溶剤溶解性、融点、熱分解温度、ボンド率、及び、単分子膜厚」を確認しているのは、実施例1の「イオン液体(1-D)」のみである(摘記(D)及び(F))。 b 上記一般的な記載は、本願補正発明1における「カチオン成分」及び「アニオン成分」が、それぞれ、「4級アンモニウムカチオンであり、前記4級アンモニウムカチオンが、窒素カチオンに結合し、水酸基及びフッ素原子を有する第1の基と、前記窒素カチオンに結合し、水酸基を有する第2の基と、を有し、前記第1の基の前記水酸基が、前記第1の基の末端の炭素原子に結合しており」及び「フッ素化炭化水素基を有する」と特定されていることに対応する記載であるところ、「カチオン成分」は、多種多様な原子配列、極性、分子量、及び、直鎖・分岐・環構造(以下「骨格構造」という。)を許容する置換基を4つ有する4級アンモニウムカチオンであり、「アニオン成分」も、多種多様な原子配列、極性、分子量、及び、骨格構造を許容するアニオンである。 c ここで、本願補正発明1としては、その化学構造が上記多種多様な「カチオン成分」とフッ素化炭化水素基を有する「アニオン成分」の任意のイオン結合体のうち、常温で液体であるもの(摘記(C))が該当するといえるが、イオン液体の「熱安定性、フッ素系溶剤への溶解性、流動性、ボンド率、及び単分子膜形成特性」は、化学構造(原子配列、極性、分子量、骨格構造)に大きく依存することが技術常識というべきであって、「イオン液体(1-D)」と化学構造が大きく異なる本願補正発明1に該当する「イオン液体」の全般が、「イオン液体(1-D)」と同様に、「熱安定性、フッ素系溶剤への溶解性、流動性、ボンド率、及び単分子膜形成特性」に優れるとする根拠は本願明細書には十分記載されているとはいえないし、そのような技術常識も確認できない。さらに、摘記(E)に記載の比較例1~4の化合物のように、「イオン液体(1-D)」の部分構造(原子配列、極性、分子量、及び、骨格構造)を具体的に有する化合物であっても、その「熱安定性、フッ素系溶剤への溶解性、流動性、ボンド率、又は単分子膜形成特性」が異なり得ることを考慮すると、「原子配列、極性、分子量、及び、骨格構造」に関係なく、本願補正発明1の要件を満たすのみで、「イオン液体(1-D)」と同様の効果が得られ、本願補正発明1の課題が解決されるとすることは妥当とはいえない。 d そうすると、本願補正発明1及びその従属発明である本願補正発明2~9は、本願補正発明1~9の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものであるとはいえず、また、出願時の技術常識に照らし、当業者が当該課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。 (ウ)まとめ 以上のとおり、本願補正発明1~9は、発明の詳細な説明に記載した発明でない。 オ 審判請求書における請求人の主張について (ア)請求人は、審判請求書の「3-2.特許法第36条第4項第1号及び第36条第6項第1号の規定による拒絶理由について」において、次のように主張している。 「本願発明は、本願明細書の段落[0025]において「前記アニオン成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、溶解性の点から、フッ素化炭化水素基を有することが好ましく」と記載されているとおり、アニオン成分がフッ素化炭化水素基を有することで化合物の溶解性が高くなり、イオン液体の状態となります。そして、補正後の請求項1では、このことが明確となるように、アニオン成分が、フッ素化炭化水素基を有することを特定する補正を行いました。 したがって、発明の詳細な説明は、請求項1に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであると考えます。 よって、特許法第36条第4項第1号及び第36条第6項第1号の規定による拒絶理由は、解消したものと考えます。」 (イ)しかしながら、上記「熱安定性、フッ素系溶剤への溶解性、及び流動性に優れ、かつボンド率が高く、更に、薄い単分子膜を形成可能なイオン液体」の提供という発明の解決しようとする課題に照らし、補正後の請求項1に「アニオン成分が、フッ素化炭化水素基を有する」という発明特定事項を付加することのみで、上記課題を解決できると直ちに認識することができず、上記エ(イ)で示した理由により、本願補正発明1はサポート要件を満たすとはいえないから、請求人の主張は採用できない。 カ 理由B(サポート要件)についてのまとめ 以上のとおり、本願補正発明1~9は、本願明細書に記載したものでないから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (4)理由C(実施可能要件)について ア 実施可能要件の判断の前提 明細書の発明の詳細な説明の記載が、物の発明について実施可能要件を満たすためには、当業者において、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、当該発明に係る物を作り、使用することができる程度のものでなければならない。 イ 検討 (ア)本願補正発明4について 本願明細書には、上記(3)イに摘記したとおりの事項が記載されているところ、上記(3)エに述べたとおり、実際に本願補正発明4の「イオン液体」を製造し、その特性である「フッ素系溶剤溶解性、融点、熱分解温度、ボンド率、及び、単分子膜厚」を確認している具体例はなく、唯一の実施例である実施例1のイオン液体(1-D)は、Yが「-(CH2)3-」であり、Y’が「-CH2-」であるという相互作用が少ない非極性の連結基である点で、本願補正発明4の「Y」及び「Y’」が、極性の連結基である「エステル(-COO-)、2級アミド(-NHCO-)、及びスルホン(-SO3-)」のいずれかを許容する点で、化学構造が異なるものである。 そして、本願補正発明4の「Y’」が「エステル(-COO-)、2級アミド(-NHCO-)、及びスルホン(-SO3-)」のいずれかである場合に、その一般式(1)の右側部分は、-COO-OHという過カルボン酸の構造、-NHCO-OHというカルバミン酸の構造、-SO3-OHという過硫酸の構造を有することになるが、このような過酸などの化学構造を有するイオン液体については、どのように製造でき、どのように使用できるのか、発明の詳細な説明に記載がなく、本件特許の出願時の技術常識を参酌したとしても、当業者に期待し得る程度を越える試行錯誤を要することなく当該「イオン液体」の実施ができると認めるに足る、合理的な理由ないし根拠は見当たらない。 したがって、本願補正発明4のイオン液体は、当業者が本願明細書の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく製造できるとはいえない。 (イ)本願補正発明1について 本願補正発明4は、本願補正発明1の「イオン液体」の技術的範囲が限定されたものであり、上記(ア)で説示したとおり、本願補正発明4について、本願明細書の記載が実施可能要件を満たしていないのであるから、本願補正発明1についても、本願明細書の記載は実施可能要件を満たしていないといえる。 さらに、本願補正発明1は、上記(3)エ(イ)で説示したとおり、「イオン液体」の「カチオン成分」が、多種多様な原子配列、極性、分子量、及び、骨格構造を許容する置換基を4つ有する4級アンモニウムカチオンであり、本願補正発明4における一般式(1)などの特定の化学構造のものに限定されていないから、どのような化学構造を有する化合物まで包含するのか不明である結果、本願補正発明1は、当業者に通常期待し得る程度を超える試行錯誤を要する化合物を多数含んでいるともいえる。 したがって、本願補正発明1のイオン液体は、当業者が本願明細書の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく製造できるとはいえない。 ウ 審判請求書における請求人の主張について (ア)請求人は、実施可能の要件について、上記(3)オ(ア)のように主張している。 (イ)しかしながら、請求人はアニオン成分がフッ素化炭化水素基を有することで、イオン液体の状態となることの根拠を示していないところ、たとえば、「フッ素化炭化水素基」である「トリフルオロメチル基」をアニオン性成分が有すれば、「イオン液体」になるとする技術常識を確認できないだけでなく、アニオン成分の他の化学構造及びカチオン成分によって、常温で液体となるかどうかは大きく左右されるとすることが妥当であり、本願補正発明1及び4の「イオン液体」の全般が、当業者に通常期待し得る程度を超える試行錯誤を要する化合物を多数含んでいないとはいえないから、請求人の主張は採用できない。 エ 理由C(実施可能要件)についてのまとめ 以上のとおり、本願明細書の記載は、当業者が本願補正発明1及び4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 (5)独立特許要件についてのまとめ 上記(2)~(4)のとおり、本願の特許請求の範囲の記載は、本願補正発明4~9について、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、そして、本願補正発明1~9について、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、また、本願明細書の記載は、本願補正発明1及び4について、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願補正発明1~9は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4 補正の却下の決定のむすび 以上のとおり、本願補正発明1~9は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反し、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記〔補正の却下の決定の結論〕のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願に係る発明は、令和4年10月11日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1及び6に係る発明は、上記第2の1(A)に摘記したとおりのものである(以下、請求項の項番に対応して「本願発明1」等という。)。 2 原査定の拒絶の理由 原査定は、「この出願については、令和 4年 9月 1日付け拒絶理由通知書に記載した理由3乃至5によって、拒絶をすべきものです。」というものであり、その理由3は、 「3.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」 というものであり、その理由4は、 「4.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。」 というものである。 そして、令和4年9月1日付け拒絶理由通知書では、上記理由3及び4について、次の点が指摘されている。 「●理由3(サポート要件)、理由4(実施可能要件)について ・・・ 明細書段落[0013]の記載から、本発明の課題は、熱安定性、フッ素系溶剤への溶解性、及び流動性に優れ、かつボンド率が高く、更に、薄い単分子膜を形成可能なイオン液体、及び前記イオン液体を用いた潤滑剤、並びに前記潤滑剤を用いた磁気記録媒体を提供することであると認められる。 一方、請求項1は、「カチオン成分と、アニオン成分とを有し、前記カチオン成分が、4級アンモニウムカチオンであり、前記4級アンモニウムカチオンが、窒素カチオンに結合し、水酸基及びフッ素原子を有する第1の基と、前記窒素カチオンに結合し、水酸基を有する第2の基と、を有することを特徴とするイオン液体」に係る発明であって、窒素カチオンと水酸基及び/又はフッ素原子を有する基並びにアニオンの組合せによって多種多様な構造を有する化合物が包含されるが、発明の詳細な説明において、イオン液体であって、上記課題を解決することが確認された化合物は、特定の構造を有する1化合物についてのみである。 そして、化合物を構成する置換基及びアニオンが異なれば、その物性が大きく異なることが出願時の技術常識であるところ、引用文献7の合成例3,4には、上記構造を有する化合物であっても結晶又は粉末として得られたことが記載されており、本願実施例1の工程1-Cで得られた4級ピロリジニウム臭化物塩は固体であることを考慮すると、発明の詳細な説明には、上記具体的に開示された化合物と化合物を構成する置換基及び/又はアニオンが異なる化合物をも包含する請求項1に記載のイオン液体の範囲まで、上記課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例や説明が記載されていないため、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化するための根拠も見いだせない。 したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。 また、上記のような発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識を考慮すると、多種多様な構造を有するカチオン及びアニオンから構成される請求項1に記載の化合物全般について、製造し、かつ、所望の物性を有するイオン液体であることを確認するためには、当業者に期待し得る程度を越える試行錯誤が必要であると認められる。 したがって、発明の詳細な説明は、請求項1に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。」 また、原査定では、上記理由3及び4について、次の点が指摘されている。 「●理由3(特許法第36条第6項第1号)及び理由4(特許法第36条第4項第1号)ついて ・・・ また、発明の詳細な説明において、イオン液体であって、本願発明の課題を解決することが確認された化合物は、特定の構造を有する1化合物についてのみであるから、本願出願時の技術常識に照らしても、補正後の請求項1に記載のイオン液体の範囲まで拡張ないし一般化することはできない。 さらに、上記のような発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識を考慮すると、多種多様な構造を有するカチオン及びアニオンから構成される補正後の請求項1に記載の化合物全般について、製造し、かつ、所望の物性を有するイオン液体であることを確認するためには、当業者に期待し得る程度を越える試行錯誤が必要であるといえる。 したがって、出願人の上記主張は採用できないものであり、請求項1-10に係る発明はサポート要件及び実施可能要件を満たしていない。」 3 当審における合議体の判断 (1)理由3(サポート要件)について ア 本願発明6について 上記第2の2(1)で説示したとおり、本願補正発明1は、請求項1の記載を引用する請求項6に係る発明であるから、本願発明6は本願補正発明1を含むものである。 そうすると、上記第2の3(3)エ(イ)で説示したとおり、本願発明6は、特許請求の範囲の記載がサポート要件を満たしていない。 したがって、本願発明6は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 イ 本願発明1について (ア)本願発明6は、本願発明1の「アニオン成分」を更に限定したものである。 そうすると、本願発明1よりも化学構造が更に限定された本願発明6について、上記アのとおり、特許請求の範囲の記載がサポート要件を満たしていないのであるから、本願発明1についても、特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たしていない。 (イ)なお、審判請求書において、請求人が「本願発明は、本願明細書の段落[0025]において「前記アニオン成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、溶解性の点から、フッ素化炭化水素基を有することが好ましく」と記載されているとおり、アニオン成分がフッ素化炭化水素基を有することで化合物の溶解性が高くなり、イオン液体の状態となります。そして、補正後の請求項1では、このことが明確となるように、アニオン成分が、フッ素化炭化水素基を有することを特定する補正を行いました。」と主張している点からみて、化合物の溶解性を高める「フッ素化炭化水素基」を有しない「アニオン成分」については、前記「熱安定性、フッ素系溶剤への溶解性、及び流動性に優れ、かつボンド率が高く、更に、薄い単分子膜を形成可能なイオン液体、及び前記イオン液体を用いた潤滑剤、並びに前記潤滑剤を用いた磁気記録媒体を提供すること」という課題を解決できると当業者が認識できる範囲にあるとはいえない。 (ウ)したがって、本願発明1は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 ウ まとめ 以上のとおり、本願発明1及び6は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (2)理由4(実施可能要件)について 本願発明1及び6と本願補正発明1との関係は、上記(1)ア及びイで述べたとおりである。 そうすると、本願補正発明1を含む本願発明6は、上記第2の3(4)イ(イ)で説示したとおり、本願明細書の記載が実施可能要件を満たしていないし、本願発明1よりも「イオン液体」の技術的範囲が更に限定された本願発明6について、本願明細書の記載が実施可能要件を満たしているとはいえないから、本願発明1についても、本願明細書の記載は実施可能要件を満たしていない。 また、本願発明1及び6は、「イオン液体」の「カチオン成分」が、多種多様な原子配列、極性、分子量、及び、骨格構造を許容する置換基を4つ有する4級アンモニウムカチオンであり、本願発明4における一般式(1)などの特定の化学構造のものに限定されていないのであって、さらに、本願発明1は、「イオン液体」の「アニオン成分」が任意であるから、どのような化学構造を有する化合物まで包含するのか不明である結果、本願発明1及び6は、当業者に通常期待し得る程度を超える試行錯誤を要する化合物を多数含んでいるといわざるを得ない。 したがって、本願明細書の記載は、当業者が本願発明1及び6の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 第4 むすび 以上のとおり、本願は、請求項1及び6に係る発明が、明細書の発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1及び6に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 したがって、そのほかの理由及び請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-007020

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