特許拒絶査定不服審判
2023-006093
リサイクル樹脂組成物の製造方法、リサイクル樹脂組成物、及びリサイクル樹脂成形体
- 審判番号
- 2023-006093
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-197324
- 請求日
- 2023年04月13日
- 審決日
- 2025年02月13日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社TBM
- 【請求人代理人】正林 真之
- 【請求人代理人】林 一好
- 【請求人代理人】新山 雄一
- 審判長/審判官
- 審判長 近野 光知
- 審判官 ▲吉▼澤 英一
- 審判官 松本 直子
- 分類
- P18 .121-Z (C08L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-197324「リサイクル樹脂組成物の製造方法、リサイクル樹脂組成物、及びリサイクル樹脂成形体」拒絶査定不服審判事件〔令和 6年 6月20日出願公開、特開2024- 83039〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和4年12月9日の出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。
令和4年12月27日付け:拒絶理由通知
令和5年 1月20日作成:応対記録
同年 1月24日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 3月16日付け:拒絶査定
同年 4月11日作成:応対記録
同年 4月13日 :審判請求書及び手続補正書の提出
同年 6月 1日付け:前置報告
同年 6月16日 :上申書
令和6年 8月29日付け:拒絶理由通知
同年10月15日 :意見書及び手続補正書の提出
同年12月 9日作成:応対記録(最終応対日10月8日)
第2 本願発明
本願の請求項1~4の記載は、令和6年10月15日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
ここで、上記補正において、「1.0質量%以上2.0質量%以下」との特定事項は、補正前の請求項1の「0.2質量%以上3.0質量%以下」の範囲をさらに限定するものであり、「前記無機物質粉末が、重質炭酸カルシウムを含み」との特定事項は、補正前の請求項3に基づくものであり、「前記重質炭酸カルシウムの平均粒子径が、0.5μm以上13.5μm以下であり」との特定事項は、補正前の請求項4に基づくものであり、「前記ポリテトラフルオロエチレンの含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレン含有粉体に対して、10質量%以上70質量%以下であり、前記有機系重合体の含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレン含有粉体に対して、30質量%以上90質量%以下であり」との特定事項は、補正前の請求項5に基づくものであり、「前記ポリテトラフルオロエチレン含有粉体が、アクリル変性ポリテトラフルオロエチレンである」との特定事項は、補正前の請求項6に基づくものである。
「樹脂廃材に、前記樹脂廃材に対して、1.0質量%以上2.0質量%以下のポリテトラフルオロエチレン含有粉体を添加する工程を含み、
前記樹脂廃材が、熱可塑性樹脂と無機物質粉末とを10:90~50:50の質量比で含み、
前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を含み、
前記無機物質粉末が、重質炭酸カルシウムを含み、
前記重質炭酸カルシウムの平均粒子径が、0.5μm以上13.5μm以下であり、
前記ポリテトラフルオロエチレン含有粉体が、ポリテトラフルオロエチレンと、有機系重合体と、からなり、
前記ポリテトラフルオロエチレンの含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレン含有粉体に対して、10質量%以上70質量%以下であり、
前記有機系重合体の含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレン含有粉体に対して、30質量%以上90質量%以下であり、
前記ポリテトラフルオロエチレン含有粉体が、アクリル変性ポリテトラフルオロエチレンである、
リサイクル樹脂組成物(ただし、ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンを含むものを除く。)の製造方法。」
第3 当審が通知した拒絶理由の概要
当審が令和6年8月29日付け拒絶理由通知書で通知した理由1は、以下のとおりである。
なお、上記第2で述べたとおり、上記補正により請求項1に追加された特定事項は、樹脂廃材に対するポリテトラフルオロエチレン含有粉体の割合を含めて、上記理由1の対象とした特定事項である。
(進歩性)この出願の請求項1~8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献Aに記載された発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2021-24972号公報
引用文献A:特開平11-60871号公報
第4 当審の判断
当審は、令和6年10月15日提出の意見書及び手続補正書によっても、本願発明は、令和6年8月29日付け拒絶理由通知書で通知した理由1により、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと判断する。
以下にその理由を述べる。
1 本願発明に関する本願明細書の記載概要について
本願明細書には、「無機物質粉末が高充填された樹脂廃材を使用しつつも、良好な溶融特性を備えるリサイクル樹脂組成物を得るための技術が提供される」(【0018】)ことが本願発明の効果であることが記載され、さらに、「「良好な溶融特性」とは、メルトマスフローレイトのばらつきが小さいことを包含する。」(【0026】)と記載されているから、本願発明の効果が「メルトマスフローレイトのばらつきが小さいこと」を含むと解される。
また、本願明細書には、「ポリテトラフルオロエチレン含有粉体を添加すると、無機物質粉末が高充填された樹脂廃材であっても、その溶融時に、無機物質粉末の分散性が高まり、溶融特性が良好となり易いことが見出された。」(【0023】)及び「この様な効果は、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体の添加量が、樹脂廃材に対して0.2質量%以上3.0質量%以下であると、特に安定的に奏された。」(【0023】)と記載され、「ポリテトラフルオロエチレン含有粉体は、樹脂廃材に対して、0.2質量%以上3.0質量%以下の量で添加される。本発明者は、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体の添加量が上記範囲であると、無機物質粉末が高充填された樹脂廃材の溶融特性が特に安定的に良好となることを見出した。」(【0041】)と記載されている。
さらに、本願明細書の実施例には、樹脂廃材に対してポリテトラフルオロエチレン含有粉体である粉体aを1.0及び2.0質量%配合したリサイクル樹脂組成物(実施例1-2~1-3、2-2~2-3、3-2~3-3、4-2~4-3)の溶融特性の評価が「1」であるのに対し、樹脂廃材に対して粉体aを0.1、0.5、3.0及び5.0質量%配合したリサイクル組成物(実施例1-1、1-4、2-1、2-4、3-1、3-4、4-1、4-4、比較例1-2、1-3、2-2、2-3、3-2、3-3、4-2、4-3)の溶融特性の評価が「2」又は「3」であり、樹脂廃材に対してポリテトラフルオロエチレン含有粉体である粉体aを1.0及び2.0質量%配合したリサイクル樹脂組成物である上記実施例に比べて溶融特性が劣ることが示されており(【0095】~【0111】)、「表中、「溶融特性」における数字(最大:3、最小:1)が大きいほど、メルトマスフローレイトのばらつきが大きいことを意味する。「溶融特性」における数字が小さいほど、すなわち、メルトマスフローレイトのばらつきが小さいほど、溶融特性が良好であり、成形加工性に優れることを意味する。」(【0103】)と記載されている。
以上、本願明細書の記載から、本願発明、特に「樹脂廃材に、1.0質量%以上2.0質量%以下のポリテトラフルオロエチレン含有粉体を添加」したリサイクル樹脂組成物の製造方法が、メルトマスフローレイトのばらつきが最も小さく、良好な溶融特性を示すことが読み取れる。
しかしながら、リサイクル樹脂組成物における溶融特性の評価について、本願明細書には上記【0103】の記載はあるものの、メルトフローレートのばらつきが定量的にどの程度であれば溶融特性が「1」、「2」、「3」であるのかについては何ら記載されておらず、溶融特性が「1」である実施例1-2~1-3、2-2~2-3、3-2~3-3、4-2~4-3が、溶融特性が「2」又は「3」である他の実施例及び比較例に比べて、どの程度優れているのかを定量的に把握できない。
そうすると、本願明細書の記載からは、本願発明、特に「樹脂廃材に、1.0質量%以上2.0質量%以下のポリテトラフルオロエチレン含有粉体を添加」したリサイクル樹脂組成物の製造方法が、メルトマスフローレイトのばらつきが最も小さく、良好な溶融特性を示すとの効果を奏することが読み取れたとしても、その効果が当業者が予測できないほど顕著であるとまでは読み取ることができない。
2 引用文献Aに記載された事項等
(1)引用文献Aに記載された事項
引用文献Aには、次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】 ポリテトラフルオロエチレン(A)および炭素数5~30のアルキル(メタ)アクリレート系ポリマー(B)からなるポリオレフィン樹脂用リサイクル性向上剤。
【請求項2】 ポリオレフィン樹脂製品の廃棄物を細断または粉砕し、加熱溶融成形してリサイクル使用するにあたり、該ポリオレフィン樹脂製品の廃棄物を構成するポリオレフィン樹脂100重量部に対し請求項1記載のリサイクル性向上剤をポリテトラフルオロエチレン(A)の含有量が0.001~20重量部となるように添加することを特徴とするポリオレフィン樹脂製品のリサイクル使用方法。」
イ 「【0004】これまでも、ポリオレフイン樹脂製品の廃棄物をリサイクルすることが行なわれており、廃棄物の分別・破砕・異物除去等の工程を経た後、酸化防止剤、加工安定剤などの添加剤を配合し加熱溶融成形して、丸棒、角材、板材あるいは各種の複雑形状の成形品へと加工され、測量杭、標識杭、ベンチ、土留め材、パッキング、コンテナーなどとして利用されている。」
ウ 「【0014】従って、本発明の目的は、ポリオレフイン樹脂製品の廃棄物を加熱溶融成形してリサイクル使用するに当たり、劣化により低下した溶融張力を向上させ良好な成形加工性を付与し、コストも安く、成形体の表面外観を損なうこともないリサイクル性向上剤とその使用方法を提供することにある。」
エ 「【0018】・・・上記オレフィン系単量体の単独重合体または共重合体の具体例としては、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超々低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブテン等を挙げることができる。また、これらのオレフィン系重合体は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用される。これらの中でポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体からなる群より選ばれる1種または2種以上の混合物を主成分とするポリオレフィン樹脂が特に好ましい。」
オ 「【0023】本発明のリサイクル性向上剤中のポリテトラフルオロエチレンの量はリサイクル性向上剤の総重量の0.05~40重量%であることが好ましい。0.05%未満では充分な溶融張力を得るための添加量が多くなりすぎポリオレフィン樹脂の剛性、耐熱性等を損なう恐れがある。また40重量%を超えるとポリテトラフルオロエチレンの分散性が低下する恐れがある。
【0024】このようなリサイクル性向上剤をリサイクルされるポリオレフィン樹脂の100重量部あたりポリテトラフルオロエチレンの含有量が0.001~20重量部になるように配合することによりポリオレフィン樹脂中でポリテトラフルオロエチレン成分が微細フィブリル状に均一分散し、成型品の表面外観を損なうことなく溶融張力が向上し成形性良好な再生ポリオレフィン樹脂組成物が得られる。
【0025】本発明のリサイクル性向上剤は、粒子径0.05~1.0μmのポリテトラフルオロエチレン粒子水性分散液と炭素数5~30のアルキル(メタ)アクリレート系ポリマー粒子水性分散液とを混合して凝固またはスプレードライする第一の製法により粉体として得られる。また、粒子径0.05~1.0μmのポリテトラフルオロエチレン粒子水性分散液と炭素数5~30のアルキル(メタ)アクリレート系ポリマー粒子水性分散液とを混合した分散液中でさらにエチレン性不飽和結合を有する単量体を重合した後に凝固またはスプレードライする第二の製法によっても粉体として得られる。
・・・
【0029】本発明のリサイクル性向上剤の第二の製法における粒子径0.05~1.0μmのポリテトラフルオロエチレン粒子水性分散液と炭素数5~30のアルキル(メタ)アクリレート系ポリマー粒子水性分散液とを混合した分散液中でさらに重合させるエチレン性不飽和結合を有する単量体としては特に制限はなく、スチレン、p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-クロルスチレン、o-クロルスチレン、p-メトキシスチレン,o-メトキシスチレン、2,4-ジメチルスチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2ーヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン単量体;ブタジエン、イソプレン、プレン、ジメチルブタジエン等のジエン系単量体等の中から選択することができる。これらの単量体は、単独であるいは2種以上混合して用いることができる。」
カ 「【0035】本発明のリサイクル性向上剤を添加した再生ポリオレフィン樹脂組成物を用いて得られる有用な成形体としては、シート、フィルム、熱成形体、中空成形体、発泡体、射出成型品、繊維などを挙げることができる。」
キ 「【実施例】各記載中、「部」は重量部を、また「%」は重量%を示す。
【0038】参考例、実施例および比較例に記載の諸物性の測定は下記の方法による。
【0039】(1)固形分濃度:粒子分散液を170℃で30分乾燥して求めた。
【0040】(2)粒子径分布、重量平均粒子径:粒子分散液を水で希釈したものを試料液として、動的光散乱法(大塚電子(株)製ELS800、温度25℃、散乱角90度)により測定した。
【0041】(3)ゼータ電位:粒子分散液を0.01mol/lのNaCl水溶液で希釈したものを試料液として、電気泳動法(大塚電子(株)製ELS800、温度25℃、散乱角10度)により測定した。
【0042】(4)溶融張力:樹脂組成物のペレットを降下式フローテスター(東洋精機社製キャピログラフ)を用い、一定押出量(降下速度10mm/分)で押し出し、ストランドを一定速度(4m/分)で引き取り、溶融張力を測定した。ダイスのL/Dは10.0mm/Φ2.0mm、測定温度は200℃とした。
【0043】(5)スウェリングレシオ:樹脂組成物のペレットを降下式フローテスター(東洋精機社製キャピログラフ)を用い、一定押出量(降下速度1.5mm/min)で押し出し、ノズルの下5mmの位置でのストランドの径(D)を測定し、下式により算出した。ダイスのL/Dは10.0mm/Φ2.0mm、測定温度は190℃とした。
【0044】(スウェリングレシオ)=D(mm)/2.0
(6)メルトフローレート:樹脂組成物のペレットを用いて、ASTM D 1238に準じて230℃、2.16kgにて測定した。
【0045】(7)曲げ弾性率:樹脂組成物のペレットを200℃でロール混練、プレス成形して試験片を得て、ASTM D790に準じて測定した。
【0046】(8)ロールシート外観:樹脂組成物のペレットを用いて、ロール混連時のロールシート外観を目視にて判定した。
○:表面に凹凸がなく光沢が優れる
△:表面に少し凹凸があり光沢が少し劣る
×:表面に凹凸が著しく光沢が劣る
参考例1
<ポリドデシルメタクリレート系ポリマー粒子分散液(B-1)の製造>ドデシルメタクリレート50部とメチルメタクリレート50部の混合液にアゾビスジメチルバレロニトリル0.1部を溶解させた。これにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0部と蒸留水300部の混合液を添加し、ホモミキサーにて10000rpmで2分間攪拌した後、ホモジナイザーに300kg/cm2の圧力で2回通し、安定な予備分散液を得た。これを、攪拌翼、コンデンサー、熱伝対、窒素導入口を備えたセパラブルフラスコに仕込み、窒素気流下で内温を80℃に昇温して3時間攪拌してラジカル重合させ、ポリマー粒子分散液(以下B-1と称する)を得た。
【0047】B-1の固形分濃度は25.1%で、粒子径分布は単一のピークを示し、重量平均粒子径は191nm、表面電位は-58mVであった。
【0048】参考例2
<ポリオレフィン樹脂用リサイクル性向上剤(C-1)の製造>ポリテトラフルオロエチレン系粒子分散液として旭ICIフロロポリマーズ社製フルオンAD936を用いた。AD936の固形分濃度は63.0%であり、ポリテトラフルオロエチレンに対して5%のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルを含むものである。AD936の粒子径分布は単一のピークを示し、重量平均粒子径は290nm、表面電位は-20mVであった。
【0049】83.3部のAD936に蒸留水116.7部を添加し、固形分濃度26.2%のポリテトラフルオロエチレン粒子分散液A-1を得た。A-1は25%のポリテトラフルオロエチレン粒子と1.2%のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルを含むものである。
【0050】120部のA-1(ポリテトラフルオロエチレン30部)と199.2部のB-1(ドデシルメタクリレート/メチルメタクリレートコポリマー50部)とを攪拌翼、コンデンサー、熱伝対、窒素導入口を備えたセパラブルフラスコに仕込み、窒素気流下に室温で1時間攪拌した。その後系内を80℃に昇温し、1時間保持した後、硫酸鉄(II)0.001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.003部、ロンガリット塩0.24部、蒸留水60.8部の混合液を加え、メチルメタクリレート20部とターシャリーブチルパーオキサイド0.4部の混合液を1時間かけて滴下し、滴下終了後内温を80℃で1時間保持してラジカル重合を完了させた。一連の操作を通じて固形物の分離は見られず、均一な粒子分散液を得た。粒子分散液の固形分濃度は、25.2%で、粒子径分布は比較的ブロードであり重量平均粒子径は252nmであった。この粒子分散液を塩化カルシウム5部を含む90℃の熱水400部に投入し、固形物を分離させ、濾過、乾燥してポリオレフィン樹脂用溶融張力向上剤(以下C-1と称する)の粉体98部を得た。
【0051】実施例1
ポリオレフィン樹脂として日本ポリケム(株)製ホモポリプロピレンペレットEA9(メルトフローレート0.5g/10分)を用いて、溶融張力、スウェリングレシオ、メルトフローレート、曲げ弾性率、ロールシート外観を評価した結果を表1に未使用品として示す。次に、未使用品をプレス成形して得た試験片を粉砕したもの100部に対して、参考例1で得たリサイクル性向上剤C-1を0.2部添加してハンドブレンドした後、二軸押出機(WERNER&PFLEIDERER社製ZSK30)を用いて、バレル温度200℃、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練しペレット状に賦形した。得られたペレットを再生品a1と称する。再生品a1を用いて諸物性を評価した。さらに、再生品a1をプレス成形して得た試験片を粉砕したもの100部に対して、参考例1で得たC-1を0.2部添加して再生品a1と同様にして再生品a2のペレットを得た。再生品a2を用いて諸物性を評価した。同様にして再生品a2より再生品a3のペレットを得て、諸物性を評価した。再生品a1~3の結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
[図:0001421748000001.jpg]
【0053】比較例1
比較のため、リサイクル性向上剤C-1を添加しないこと以外は実施例1と同様にして再生品b1~3のペレットを得て諸物性を評価した。結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
[図:0001421748000002.jpg]
【0055】比較例2
比較のため本発明のリサイクル性向上剤C-1のかわりに粉末状ポリテトラフルオロエチレン0.2部を用いて実施例1と同様に再生品c1~3のペレットを得た。諸物性を評価した結果を表3に示す。粉末状ポリテトラフルオロエチレンとしては旭ICIフロロポリマーズ(株)製、フルオンCD123を用いた。
【0056】
【表3】
[図:0001421748000003.jpg]
」
ク 「【0057】本発明のリサイクル性向上剤を配合した組成物は、再生時の溶融張力低下に代表される物性変化が全く見られず、カレンダー加工時の引き取り性、熱成形性、ブロー成形性、発泡成形性などが未使用品と同様に良好なことが確認できる。また、組成物の外観も良好であることが確認できる。」
(2)引用文献Aに記載された発明
引用文献Aには、摘記アの請求項1に記載のオレフィン樹脂用リサイクル向上剤を用いた請求項2のポリオレフィン樹脂製品のリサイクル使用方法、及び、摘記オの【0024】の「再生ポリオレフィン樹脂組成物が得られる」の記載に着目すると、次の発明が記載されていると認める。
「ポリオレフィン樹脂製品の廃棄物を細断または粉砕し、加熱溶融成形してリサイクル使用するにあたり、該ポリオレフィン樹脂製品の廃棄物を構成するポリオレフィン樹脂100重量部に対し、ポリテトラフルオロエチレン(A)および炭素数5~30のアルキル(メタ)アクリレート系ポリマー(B)からなるポリオレフィン樹脂用リサイクル性向上剤を、ポリテトラフルオロエチレン(A)の含有量が0.001~20重量部となるように添加する、再生ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。」(以下、「引用発明」という。)
3 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、次の事項が記載されている。
ケ 「【0006】
しかし、無機物質粉末(炭酸カルシウム等)が高充填された熱可塑性樹脂を含む廃材においては、溶融特性のばらつきが生じやすく、安定した成形加工が困難であった。特に、従来の再生方法では改質剤を比較的多く用いるため、成形品の表面が荒れやすく、外観に優れる成形品を得ることが困難だった。」
コ 「【0019】
<本発明の製造方法>
本発明の樹脂廃材成形体の製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう。)は、樹脂廃材に、ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンを、該樹脂廃材に対して0.004質量%以上0.200質量%以下添加する添加工程を含む。該樹脂廃材は、熱可塑性樹脂と無機物質粉末とを50:50~10:90の質量比で含む。
【0020】
樹脂廃材の再生においては、溶融成形時の熱履歴や機械的な負荷により、得られる成形品の機械的強度が低くなる等の問題がある。この様な問題を解決するため、各種改質剤の使用が知られている。また、この様な改質剤は、比較的多量(例えば、樹脂廃材に対して1質量%以上)で使用しなければ機能しない傾向にある。しかし、この様な量で改質剤を使用すると、得られる成形品の表面が荒れやすくなり、コストも上がってしまうという問題がある。かかる問題は、無機物質粉末が高充填された熱可塑性樹脂を含む廃材において特に顕著であった。
・・・
【0022】
本発明において「均一な溶融特性」とは、メルトマスフローレイトのばらつきが小さいことを意味する。メルトマスフローレイトは実施例に示した方法で特定される。・・・」
サ 「【0050】
無機物質粉末としては、炭酸カルシウムが好ましい。炭酸カルシウムが高充填された熱可塑性樹脂を含む廃材においては、かさ比重が大きい等の理由から溶融特性のばらつきが生じやすく、安定した成形加工が特に困難であった。したがって、樹脂廃材が炭酸カルシウムを含む場合、本発明の効果を特に奏しやすい。
【0051】
炭酸カルシウムとしては、合成法により調製されたもの(いわゆる軽質炭酸カルシウム)や、石灰石等CaCO3を主成分とする天然原料を機械的に粉砕分級して得られるもの(いわゆる重質炭酸カルシウム)のいずれであってもよく、これらを組み合わせたものでも良い。経済性の観点で、炭酸カルシウムとしては、重質炭酸カルシウムが好ましい。
【0052】
炭酸カルシウムの平均粒子径は、好ましくは、0.5μm以上13.5μm以下が好ましく、1.0μm以上3.0μm以下がより好ましい。」
4 本願発明と引用発明との対比
引用発明の「ポリオレフィン樹脂製品の廃棄物」は、本願発明の「樹脂廃材」に相当し、引用発明の「ポリオレフィン樹脂」は、本願発明の「熱可塑性樹脂」に相当する。
引用発明の「ポリテトラフルオロエチレン(A)」及び「炭素数5~30のアルキル(メタ)アクリレート系ポリマー(B)」は、本願発明の「ポリテトラフルオロエチレン」及び「有機系重合体」に相当し、引用発明の「ポリオレフィン樹脂用リサイクル性向上剤」は、本願発明の「ポリテトラフルオロエチレン含有粉体」と、「ポリテトラフルオロエチレンと、有機系重合体と、からなる」「ポリテトラフルオロエチレン含有」物である限りにおいて一致する。
引用発明の「再生ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法」は、本願発明の「リサイクル樹脂組成物」「の製造方法。」に相当する。
引用発明の「該ポリオレフィン樹脂製品の廃棄物を構成するポリオレフィン樹脂100重量部に対し、ポリテトラフルオロエチレン(A)および炭素数5~30のアルキル(メタ)アクリレート系ポリマー(B)からなるポリオレフィン樹脂用リサイクル性向上剤を、ポリテトラフルオロエチレン(A)の含有量が0.001~20重量部となるように添加する」ことは、本願発明の「樹脂廃材に、前記樹脂廃材に対して、1.0質量%以上2.0質量%以下のポリテトラフルオロエチレン含有粉体を添加する工程」と、「樹脂廃材に、ポリテトラフルオロエチレン含有」物「を添加する工程」である限りにおいて一致する。
引用発明は、ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンを含有していないことから、本願発明の「(ただし、ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンを含むものを除く。)」との特定事項を満たす。
そうすると、両者は次の点で一致する。
・一致点
「樹脂廃材に、ポリテトラフルオロエチレン含有物を添加する工程を含み、
前記樹脂廃材が、熱可塑性樹脂を含み、
前記ポリテトラフルオロエチレン含有物が、ポリテトラフルオロエチレンと、有機系重合体と、からなる、
リサイクル樹脂組成物(ただし、ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンを含むものを除く。)の製造方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
・相違点1
ポリテトラフルオロエチレン含有物について、本願発明は「前記ポリテトラフルオロエチレンの含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレン含有粉体に対して、10質量%以上70質量%以下であり、前記有機系重合体の含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレン含有粉体に対して、30質量%以上90質量%以下であり、前記ポリテトラフルオロエチレン含有粉体が、アクリル変性ポリテトラフルオロエチレンである、」「ポリテトラフルオロエチレン含有粉体」であるのに対し、引用発明はそのような特定がない点
・相違点2
熱可塑性樹脂について、本願発明は「ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を含」むものであるのに対し、引用発明は「ポリオレフィン樹脂」である点
・相違点3
樹脂廃材について、本願発明は「熱可塑性樹脂と無機物質粉末とを10:90~50:50の質量比で含み、」「前記無機物質粉末が、重質炭酸カルシウムを含み、」「前記重質炭酸カルシウムの平均粒子径が、0.5μm以上13.5μm以下」であるのに対し、引用発明は無機物質粉末を含有していない点
・相違点4
ポリテトラフルオロエチレン含有物の含有量について、本願発明は「樹脂廃材に対して、1.0質量%以上2.0質量%以下」であるのに対し、引用発明はそのような特定がない点
5 相違点についての判断
(1)相違点1について
引用文献Aには、引用発明の「ポリオレフィン樹脂用リサイクル性向上剤」が、参考例2の「ポリオレフィン樹脂用リサイクル性向上剤(C-1)」であることが記載され(摘記キ)、当該「ポリオレフィン樹脂用リサイクル性向上剤(C-1)」は、ポリテトラフルオロエチレン30部、ドデシルメタクリレート/メチルメタクリレートコポリマー50部を混合した後、メチルメタクリレート20部を添加してラジカル重合することにより得られた粉体であること(摘記キ)が記載されている。
そして、上記「ポリオレフィン樹脂用リサイクル性向上剤(C-1)」は、メチルメタクリレートで変性されており、ここで「アクリル変性ポリテトラフルオロエチレン」における「アクリル変性」が、アクリレートを主成分とする重合体のみならず、メタクリレートを主成分とする重合体も含むことは、本願出願時における技術常識であるといえることから(例えば、特開2016-125029号公報の【0019】、特開2003-231780号公報の【0020】、特開2015-40235号公報の【0044】を参照されたい。)、本願発明の「アクリル変性ポリテトラフルオロエチレン」に相当し、上記「ポリオレフィン樹脂用リサイクル性向上剤(C-1)」中のポリテトラフルオロエチレンの含有量は30重量%、有機系重合体であるドデシルメタクリレート/メチルメタクリレートコポリマーとメチルメタクリレートがラジカル重合されて得られるポリマーの合計含有量は70重量%であるから、本願発明の「前記ポリテトラフルオロエチレンの含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレン含有粉体に対して、10質量%以上70質量%以下であり、前記有機系重合体の含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレン含有粉体に対して、30質量%以上90質量%以下」に相当し、「ポリオレフィン樹脂用リサイクル性向上剤(C-1)」は、相違点1に係る特定事項をすべて備えるポリテトラフルオロエチレン含有粉体である。
そうすると、引用文献Aには、引用発明の「ポリオレフィン樹脂用リサイクル性向上剤」として参考例2の「ポリオレフィン樹脂用リサイクル性向上剤(C-1)」しか記載されていないことから、引用発明の「ポリオレフィン樹脂用リサイクル性向上剤」は実質的に「前記ポリテトラフルオロエチレンの含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレン含有粉体に対して、10質量%以上70質量%以下であり、前記有機系重合体の含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレン含有粉体に対して、30質量%以上90質量%以下であり、前記ポリテトラフルオロエチレン含有粉体が、アクリル変性ポリテトラフルオロエチレンである、」「ポリテトラフルオロエチレン含有粉体」であるといえる。
したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。
また、仮に、上記「ポリオレフィン樹脂用リサイクル性向上剤(C-1)」が、本願発明の「アクリル変性ポリテトラフルオロエチレン」に相当しないとしても、引用文献Aには、当該「ポリオレフィン樹脂用リサイクル性向上剤(C-1)」の製法である「粒子径0.05~1.0μmのポリテトラフルオロエチレン粒子水性分散液と炭素数5~30のアルキル(メタ)アクリレート系ポリマー粒子水性分散液とを混合した分散液中でさらにエチレン性不飽和結合を有する単量体を重合した後に凝固またはスプレードライする第二の製法」(摘記オの【0025】)において、エチレン性不飽和結合を有する単量体として、「メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2ーヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系単量体」(摘記オの【0029】)と記載され、(メタ)アクリレート系単量体としてアクリレート系単量体を用いることが示唆されていることから、上記「ポリオレフィン樹脂用リサイクル性向上剤(C-1)」におけるメチルメタクリレートに代えてアクリレート系単量体を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
(2)相違点2について
引用文献Aには、引用発明の「ポリオレフィン樹脂」として、「これらの中でポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体からなる群より選ばれる1種または2種以上の混合物を主成分とするポリオレフィン樹脂が特に好ましい」(摘記エ)ことが記載されており、実施例において、「日本ポリケム(株)製ホモポリプロピレンペレットEA9」を用いる記載もある(摘記キの【0051】)。
そうすると、引用発明において、「ポリオレフィン樹脂」として、「ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂を含」むことは、当業者が適宜選択し得る程度のことである。
(3)相違点3について
引用文献Aには、「ポリオレフイン樹脂製品の廃棄物をリサイクルすること」が従来から行われてきたことが記載され(摘記イ)、「ポリオレフイン樹脂製品の廃棄物を加熱溶融成形してリサイクル使用するに当たり、劣化により低下した溶融張力を向上させ良好な成形加工性を付与し、コストも安く、成形体の表面外観を損なうこともないリサイクル性向上剤とその使用方法を提供すること」(摘記ウ)を発明の目的とすることが記載され、実施例1において、リサイクル性向上剤C-1を添加した再生品a1~再生品a3のペレットが未使用品と同じくメルトフローレートが0.5g/10分であるのに対し、比較例1において、リサイクル性向上剤C-1を添加しない再生品b1~b3のペレットのメルトフローレートが0.6~0.8g/10分であり、比較例2において、粉末状ポリテトラフルオロエチレンを添加した再生品c1~c3のメルトフローレートが0.6~0.8g/10分であることが記載され(摘記カ)、「本発明のリサイクル性向上剤を配合した組成物は、再生時の溶融張力低下に代表される物性変化が全く見られ」ないこと(摘記ク)も記載されている。
そして、メルトフローレートの上昇がない実施例1は、メルトフローレートが上昇する比較例1及び2と比べて、メルトフローレートの変化がないため、メルトフローレートのばらつきが小さいことは、当業者にとって技術常識であるといえる。
そうすると、引用文献Aには、上記記載から、ポリオレフィン樹脂製品の廃棄物を加熱溶融成形してリサイクルする技術分野において、引用発明における「ポリテトラフルオロエチレン(A)および炭素数5~30のアルキル(メタ)アクリレート系ポリマー(B)からなるポリオレフィン樹脂用リサイクル性向上剤」の添加により、再生ポリオレフィン樹脂組成物の再生時の溶融張力低下に代表されるメルトフローレートのばらつきが小さくなることが示唆されているといえる。
一方、引用文献1には、「樹脂廃材の再生においては、溶融成形時の熱履歴や機械的な負荷により、得られる成形品の機械的強度が低くなる等の問題がある。この様な問題を解決するため、各種改質剤の使用が知られている。」(摘記コ)と記載され、「無機物質粉末(炭酸カルシウム等)が高充填された熱可塑性樹脂を含む廃材においては、溶融特性のばらつきが生じやすく、安定した成形加工が困難であった。」(摘記ケ)と記載され、「「均一な溶融特性」とは、メルトマスフローレイトのばらつきが小さいことを意味する。」(摘記コ)ことが記載され、「該樹脂廃材は、熱可塑性樹脂と無機物質粉末とを50:50~10:90の質量比で含む」(摘記コ)こと、「無機物質粉末としては、炭酸カルシウムが好ましい」こと、「経済性の観点で、炭酸カルシウムとしては、重質炭酸カルシウムが好ましい」こと、及び「炭酸カルシウムの平均粒子径は、好ましくは、0.5μm以上13.5μm以下」であること(摘記サ)が記載されている。
そうすると、熱可塑性樹脂と無機物質粉末とを50:50~10:90の質量比で含む無機物質粉末(炭酸カルシウム等)が高充填された熱可塑性樹脂を含む廃材であって、無機物質粉末が重質炭酸カルシウムであり、その平均粒子径が0.5μm以上13.5μm以下である廃材は、溶融特性のばらつき、すなわちメルトマスフローレイトのばらつきが生じやすいことが、引用文献1に記載されているように本願出願前に公知の課題であるといえる。
そして、引用文献Aと引用文献1とは、樹脂廃材を再生するリサイクル樹脂組成物の製造方法である点で技術分野が同じであり、かつ、樹脂廃材を再生する際に、溶融成形に起因して溶融特性が低下する、すなわちメルトマスフローレートのばらつきが生じるという共通の課題を有するものである。
したがって、引用発明の「ポリオレフィン樹脂製品の廃棄物」として、引用文献1に記載の上記公知の課題にかんがみ、「熱可塑性樹脂と無機物質粉末とを50:50~10:90の質量比で含み、」「前記無機物質粉末が、重質炭酸カルシウムを含み、」「前記重質炭酸カルシウムの平均粒子径が、0.5μm以上13.5μm以下」である廃材を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
(4)相違点4について
引用文献Aには、「本発明のリサイクル性向上剤中のポリテトラフルオロエチレンの量はリサイクル性向上剤の総重量の0.05~40重量%であることが好ましい」こと、及び「リサイクル性向上剤をリサイクルされるポリオレフィン樹脂の100重量部あたりポリテトラフルオロエチレンの含有量が0.001~20重量部になるように配合すること」(摘記エ)が記載されていることから、引用発明において、当該記載にかんがみ、本願発明の「樹脂廃材」に相当するポリオレフィン樹脂に対して、ポリオレフィン樹脂用リサイクル性向上剤の割合を調整することは、当業者が適宜選択し得る程度のことである。
そして、引用文献Aには、実施例1において、ポリオレフィン樹脂からなる再生品をプレス成形して得た試験片を粉砕したもの100部に対して、ポリオレフィン用リサイクル向上剤C-1を0.2部添加すること(摘記キの段落【0051】)が記載されており、さらに、引用文献1には、「この様な改質剤は、比較的多量(例えば、樹脂廃材に対して1質量%以上)で使用しなければ機能しない傾向にある。」(摘記コ)と記載されている。
そうすると、引用発明の「ポリオレフィン樹脂製品の廃棄物」として、「熱可塑性樹脂と無機物質粉末とを50:50~10:90の質量比で含み、」「前記無機物質粉末が、重質炭酸カルシウムを含み、」「前記重質炭酸カルシウムの平均粒子径が、0.5μm以上13.5μm以下」である廃材を適用する際に、ポリオレフィン樹脂用リサイクル性向上剤の割合について、摘記キの実施例1の配合量に近い配合量であり、かつ、摘記コの改質剤の配合割合を参考にして、樹脂廃材に対して1.0質量%以上2.0質量%以下の範囲内とすることは、当業者が通常選択し得る程度のことである。
6 本願発明の効果についての検討
本願明細書の【0018】には、発明の効果として「無機物質粉末が高充填された樹脂廃材を使用しつつも、良好な溶融特性を備えるリサイクル樹脂組成物を得るための技術が提供される」ことが記載され、同【0026】には、「「良好な溶融特性」とは、メルトマスフローレイトのばらつきが小さいことを包含する」ことが記載されている。
一方、引用文献Aには、上記5(3)で述べたとおり、「ポリテトラフルオロエチレン(A)および炭素数5~30のアルキル(メタ)アクリレート系ポリマー(B)からなるポリオレフィン樹脂用リサイクル性向上剤」の添加により、再生ポリオレフィン樹脂組成物の再生時の溶融張力低下に代表されるメルトフローレートの変化が全く見られない、すなわちメルトフローレートのばらつきが小さくなることが示唆されていることから、本願発明の上記発明の効果は、引用文献Aの記載から当業者が容易に予測し得るものである。
そして、本願発明の効果については、上記1で検討したとおり、当業者が予測できないほど顕著であるとはいえないし、本願明細書の記載を見ても、無機物質粉末が高充填された樹脂廃材を用いたことによる特有の効果が認められるともいえない。
さらに、本願明細書には、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体として、メタブレン(商標)A-3000である粉体aを用いた実施例しか記載されていないことから、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体が「アクリル変性ポリテトラフルオロエチレン」であるか否かによる上記発明の効果の顕著性を見出すことができず、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体が「前記ポリテトラフルオロエチレンの含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレン含有粉体に対して、10質量%以上70質量%以下であり、前記有機系重合体の含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレン含有粉体に対して、30質量%以上90質量%以下」であるか否かによる上記発明の効果の顕著性を見出すこともできない。
7 審判請求人の主張についての検討
審判請求人は令和6年10月15日提出の意見書において以下の通り主張している。
(1)「そして、相違点4については、引用文献Aの段落[0023]及び[0024]を根拠に、以下の理由から進歩性が否定されています(下線は、本意見書によります)。
・・・
この点に関し、引用文献Aには、拒絶理由が指摘したように、ポリテトラフルオロエチレン含有剤について、「0.2部」の添加例がある一方で、「0.0025~40000重量%の範囲内」という非常に広い範囲内での添加によって課題解決できる点の具体的開示はありません。
さらに、本願発明1は、審理迅速の観点からなされた補正により、ポリテトラフルオロエチレン含有剤の配合量が「1.0質量%以上2.0質量%以下」と特定されています。本願明細書には、かかる範囲の配合によれば、溶融特性に一層優れるリサイクル樹脂組成物を得ることができます。この点は、本願明細書の表1及び2(段落[0104]、[0105])の「実施例1-2」、「実施例1-3」、「実施例2-2」、「実施例2-3」に示されるとおりです。
引用文献Aの開示は、かかる構成やそれによる効果に関し、何ら示唆するものではなく、本願発明1は進歩性を備えるものと思料します。」(3ページ6~29行)
(2)「また、審理迅速の観点から、本願発明1においては、「リサイクル樹脂組成物」に関し、無機物質粉末の種類や、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体の構成について規定されています。これらの要件を満たす発明によれば、上記本願明細書の表1及び2(段落[0104]、[0105])の「実施例1-2」、「実施例1-3」、「実施例2-2」、「実施例2-3」に示される効果を一層安定的に奏することができます。
引用文献のいずれにも、本願発明1に規定される要件を全て組み合わせて備える発明や、それによって奏される良好な溶融特性に関する記載や示唆はなく、本願発明1は一層の進歩性を有するものと思料します。」(3ページ30~37行)
上記(1)の点について検討すると、上記5(4)で述べたとおり、摘記エ、キ及びコから、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体の配合量を樹脂廃材に対して1.0質量%以上2.0質量%以下の範囲内とすることは、当業者が通常選択し得る程度のことであり、引用文献A及び引用文献1の記載から、当該範囲を選択することができない特段の事情があるともいえない。
そして、「溶融特性に一層優れるリサイクル樹脂組成物を得る」という効果については、上記1及び6で述べたとおり、格別顕著なものではない。
上記(2)の点について検討すると、「無機物質粉末の種類や、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体の構成について」の規定については、上記5(1)及び(3)で述べたとおり、当業者が容易に想到し得るものであり、「良好な溶融特性」という効果についても、上記6で述べたとおり、格別顕著なものではない。
以上のとおりであるから、上記(1)及び(2)の主張はいずれも採用しない。
8 まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明並びに引用文献A及び引用文献1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明、すなわち請求項1に係る発明は、引用文献Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-006093