特許拒絶査定不服審判
2023-005699
撥水性柔軟剤
- 審判番号
- 2023-005699
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-569421
- 請求日
- 2023年04月07日
- 審決日
- 2025年10月01日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ダイキン工業株式会社
- 【請求人代理人】川本 真由美
- 【請求人代理人】式見 真行
- 【請求人代理人】畠中 省伍
- 審判長/審判官
- 審判長 金丸 治之
- 審判官 秋山 誠
- 審判官 岩谷 一臣
- 分類
- P18 .113-WZ (D06M) / P18 .121-WZ (D06M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-569421「撥水性柔軟剤」拒絶査定不服審判事件〔令和2年8月6日国際公開、WO2020/158191〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
特願2020-569421「撥水性柔軟剤」拒絶査定不服審判事件〔令和2年8月6日国際公開、WO2020/158191〕について、次のとおり審決する。
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)12月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2019年1月30日 中国(CN))を国際出願日とする出願であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和4年 5月11日付け:拒絶理由通知
同年 9月16日 :意見書、手続補正書の提出
同年12月26日付け:拒絶査定
令和5年 4月 7日 :審判請求、手続補正書の提出(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)
令和7年 3月 6日付け:拒絶理由通知
同年 5月12日 :意見書
第2 本願発明
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「撥水剤と組み合わせて使用するための柔軟剤組成物であって、
(1)シリコーン重合体、
(2)シリコーン重合体の存在下で重合されており、含フッ素重合体および非フッ素重合体からなる群から選択された少なくとも1種の撥水性重合体、
(3)水または水と有機溶媒の混合物である液状媒体、および
(4)乳化剤
を含んでなり、シリコーン重合体の量が、シリコーン重合体と撥水性重合体の合計に対して、20重量%以上であって、
非フッ素重合体が、式:
CH2=C(-X21)-C(=O)-Y21-(R21)k (a1)
[式中、R21は、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X21は、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、
Y21は、2価~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基( 但し、炭化水素基を除く)であり、
kは1~3である。]
で示される長鎖(メタ)アクリル単量体(但し、ベヘニル(メタ)アクリレートを除く)である長鎖炭化水素基含有非フッ素単量体から誘導された繰り返し単位を有する非フッ素重合体であり、
長鎖(メタ)アクリル単量体から誘導された繰り返し単位の量が、撥水性重合体に対して、40~100重量%である柔軟剤組成物。」
第3 拒絶の理由
令和7年3月6日付けの拒絶理由は、概略、以下のとおりである。
(進歩性)この出願の請求項1~13に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
引用文献1:国際公開第2018/054712号
引用文献2:特表2012-503029号公報
第4 引用文献等について
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている(当審訳の下線は、特に参酌すべき箇所を示すものとして付した。以下同じ。)。
ア「
[図:0001429245000001.jpg]
」(第13ページ、請求項1)
(当審訳:
1.以下を含む、フッ素化合物を含まない水性分散液。
(A)次のモノマーの重合によって得られる少なくとも1つのコポリマー
a)炭素原子数16乃至18のアルコールの少なくとも1種のフッ素原子を含まない(メタ)アクリル酸エステル
b)炭素原子数18乃至22のアルコールの少なくとも1種のフッ素原子を含まない(メタ)アクリル酸エステル
c)塩化ビニル及び塩化ビニリデンの群から選択される少なくとも1種のモノマー、及び任意の、
d) 2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび3-クロロ-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのグループから選ばれる少なくとも1つのモノマー
(B)55℃乃至75℃の融解範囲を有するパラフィンワックス及び25℃乃至55℃の融解範囲を有するシリコンワックスの群から選択される少なくとも1種の成分、
(C)少なくとも1種の界面活性剤、及び
(D)水
ここで、コポリマー(A)のモノマーa)とb)とは異なるものであり、そして、該コポリマー(A)は、スチレン又はα-メチルスチレンの何れの重合ユニットを含まない。)
イ「
[図:0001429245000002.jpg]
」(第13ページ、請求項3)
(当審訳:
3.請求項1に記載の水性分散液は、
前記水性分散液における成分(A)及び成分(B)の総質量に基づいて、
60乃至95質量%の成分(A)、及び5乃至40質量%の成分(B)としての25℃乃至55℃の融解範囲を有するシリコンワックスを含む。)
ウ「
[図:0001429245000003.jpg]
」(第1ページ第2~7行。ただし、行数にはタイトル行を含み、空行は含まない。以下同様。)
(当審訳:
本発明は、2つの異なる長鎖炭化水素(メタ)アクリル酸エステル、ワックス成分及び界面活性剤をベースとするコポリマーを含む水性分散液、該コポリマーの製造並びにコポリマーの前記水性分散液を使用する織物布地の処理方法に関する。本発明に従う水性分散液は、フッ素含有化学物質を含まず、そして、天然及び合成の織物布地に撥水性を与える。)
エ「
[図:0001429245000004.jpg]
」(第2ページ下から2行~第3ページ第14行)
(当審訳:
少なくとも1種のコポリマー(A)のモノマーa)は、少なくとも1種、例えば、1種、2種又は3種の直鎖又は分岐鎖の炭素原子数16乃至18のアルコールの(メタ)アクリル酸エステルである。そのような直鎖又は分岐鎖の炭素原子数16乃至18のアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、例えば、ヘキサデシルメタクリレート、ヘプタデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ヘプタデシルアクリレート及びオクタデシルアクリレート、又は炭素原子数16乃至18のアルコールの少なくとも2種の異なる(メタ)アクリル酸エステルの混合物、例えば、工業用グレードのステアリルメタクリレート(CAS:90551-83-0)として市販で入手可能である、ヘキサデシルメタクリレート及びオクタデシルメタクリレートの混合物が考慮される。
少なくとも1種のコポリマー(A)のモノマーb)は、少なくとも1種、例えば、1種、2種又は3種の直鎖又は分岐鎖の炭素原子数18乃至22のアルコールの(メタ)アクリル酸エステルである。そのような直鎖又は分岐鎖の炭素原子数18乃至22のアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、例えば、オクタデシルメタクリレート、エイコシルメタクリレート、ドコシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、エイコシルアクリレート、ドコシルアクリレート、
又は炭素原子数18乃至22のアルコールの少なくとも2種の異なる(メタ)アクリル酸エステルの混合物、例えば、工業用グレードのベヘニルメタクリレート(CAS:90551-86-3)として市販で入手可能である、オクタデシルメタクリレート、エイコシルメタクリレート及びドコシルメタクリレートの混合物が考慮される。」
オ「
[図:0001429245000005.jpg]
」(第5ページ第1行~第8行)
(当審訳:
少なくとも1種のコポリマー(A)は、
重合反応において使用されるモノマーa)、b)、c)及びd)の総質量に基づいて、
20質量%乃至50質量%、好ましくは、30質量%乃至40質量%のモノマーa)、
20質量%乃至50質量%、好ましくは、30質量%乃至40質量%のモノマーb)、
10質量%乃至40質量%、好ましくは、20質量%乃至30質量%のモノマーc)、
0質量%乃至10質量%、好ましくは、0質量%乃至5質量%のモノマーd)
を互いに重合することから得られるが、重合反応において使用されるモノマーa)、b)、c)及びd)の合計は、100質量%である。)
カ「
[図:0001429245000006.jpg]
」(第5ページ下から1行~第6ページ第2行)
(当審訳:
本発明の分散液のために有用な少なくとも1種のワックス(B)は、例えば、適切なパラフィンワックスとしてのSasol Wax GmbHのSasolwax 7040、及び適切なシリコンワックスとしてのSiltech CorporationのSilwax D222が市販で入手可能である。)
キ「
[図:0001429245000007.jpg]
」(第7ページ下から7行~第8ページ第2行)
(当審訳:
本発明の別の態様において、ワックス(B)がシリコンワックスである場合、一段階法が適用される。従って、水性分散液は、容器に、少なくとも1種の界面活性剤(C)、適切には少量の適切な溶媒、例えば、ジプロピレングリコール、シリコンワックス(B)、モノマーa)、b)及び任意のd)並びに温水を、Turraxを用いる撹拌下で添加することによって調製される。分散液は、混合物を、例えば、250バール及び50乃至60℃で高圧分散することにより得られる。分散液は室温に冷却され、重合開始剤及びモノマーc)が添加され、そして、重合は、例えば、55乃至65℃の温度で数時間行われて、安定な水性分散液が得られる。)
ク「
[図:0001429245000008.jpg]
」(第8ページ第12~19行)
(当審訳:
本発明に従う分散液は、天然及び合成の織物布地に撥水性を付与するために特に有用である。驚くべきことに、所望の撥水効果レベルは、ポリエステル布地又は綿とポリエステルの混合布地のような合成織物布地においてさえも達成される。効果レベルは、本発明の水性分散液との組み合わせにおいて、撥油及び撥水製品のための増量剤、例えば、PHOBOL(登録商標)XAN extender(Huntsman Corp)を使用することにより増強し得る。本発明に従う水性分散液で処理された織物布地は、特に上着に適している。)
(2)引用文献1に記載の発明
上記(1)からみて、ア(請求項1)、イ(請求項3)に着目し、特にア(請求項1)における(B)の成分としてシリコンワックスを採用した場合の発明として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「1.以下を含む、フッ素化合物を含まない水性分散液。
(A)次のモノマーの重合によって得られる少なくとも1つのコポリマー
a)炭素原子数16乃至18のアルコールの少なくとも1種のフッ素原子を含まない(メタ)アクリル酸エステル
b)炭素原子数18乃至22のアルコールの少なくとも1種のフッ素原子を含まない(メタ)アクリル酸エステル
c)塩化ビニル及び塩化ビニリデンの群から選択される少なくとも1種のモノマー、及び任意の、
d) 2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび3-クロロ-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのグループから選ばれる少なくとも1つのモノマー
(B)25℃乃至55℃の融解範囲を有するシリコンワックス
(C)少なくとも1種の界面活性剤、及び
(D)水
ここで、コポリマー(A)のモノマーa)とb)とは異なるものであり、そして、該コポリマー(A)は、スチレン又はα-メチルスチレンの何れの重合ユニットを含まず、
前記水性分散液における成分(A)及び成分(B)の総質量に基づいて、60乃至95質量%の成分(A)、及び5乃至40質量%の成分(B)としての25℃乃至55℃の融解範囲を有するシリコンワックスを含む。」
2 技術常識
(1)日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったウェブページ(「TECHNICAL DATA SHEET Silwax(登録商標)D222 Alkylated Silicone」、[online]、SILTECH CORPORATION、2017年6月、[令和7年8月8日検索]、インターネット<URL:https://www.siltech.com/wp-content/uploads/2024/01/TD-5028-Silwax-D222.pdf>)には、次の事項が記載されている。
「
[図:0001429245000009.jpg]
」(第1ページ第1行~第5行)
(当審訳:
製品概要
Silwax(登録商標)D222はアルキル化シリコーンです。アルキルペンダント基により、多くの有機系との相溶性が向上します。パーソナルケア製品に光沢と柔らかさを与えるほか、繊維やティッシュペーパーなど、多くの工業用途において潤滑剤や柔軟剤として使用できます。Silwax D222のINCI名はベヘニルジメチコンです。)
(2)本願の優先日前に、日本国内又は外国において頒布された刊行物(特開2011-256401号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【0066】
静電気防止および柔軟化(上記第四級材料)および布の芳香付けのために必要な有効成分に加えて、柔軟剤区画はシリコーン化合物およびアミノシリコーン化合物、ベタイン、デンプン、カチオン性ポリマーおよび両性ポリマー、しわ防止添加物、粘土(例えば、ベントナイト)、カチオン性シリカ、ワックスまたは石鹸のような溶融可能なマトリックス材料(好ましくは、脂肪アルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンエステル、シリコーンワックス、ポリエチレンワックス)、バインダー、担体材料、染料および着色料、蛍光増白剤、溶媒、乳白剤、ビタミンおよび他の有益剤、油、ナノ粒子、可視プラスチック粒子、可視ビーズまたは柔軟剤マトリックスに閉じ込められる他の装飾性材料なども含むことができる。例えば、C10~C18アルコールなどの脂肪アルコール乳化性ワックスを溶融された第四級に加えて基材に塗布することができる柔軟剤溶融組成物を形成することができる。・・・」
(3)上記(1)及び(2)からみて、次の事項は技術常識であるといえる。
「シリコンワックスは、繊維への柔軟剤として機能すること。」
第5 対比、判断
1 対比
(1)本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりである。
ア 引用発明の「(B)25℃乃至55℃の融解範囲を有するシリコンワックス」は、本願発明の「(1)シリコーン重合体」に相当し、同様に、「(C)少なくとも1種の界面活性剤」は「(4)乳化剤」に、「(D)水」は「(3)水または水と有機溶媒の混合物である液状媒体」に、それぞれ相当する。
イ 引用発明において、「a)炭素原子数16乃至18のアルコールの少なくとも1種のフッ素原子を含まない(メタ)アクリル酸エステル」、「b)炭素原子数18乃至22のアルコールの少なくとも1種のフッ素原子を含まない(メタ)アクリル酸エステル」を含む「(A)」「コポリマー」は、本願発明における「(2)シリコーン重合体の存在下で重合されており、含フッ素重合体および非フッ素重合体からなる群から選択された少なくとも1種の撥水性重合体」との関係において、その択一的な記載も考慮すれば、「(2)」「含フッ素重合体および非フッ素重合体からなる群から選択された少なくとも1種の撥水性重合体」に限り一致する。
また、引用発明のモノマー「a)」、「b)」の「(メタ)アクリル酸エステル」は、その構造からみて、本願発明における、
「非フッ素重合体が、式:
CH2=C(-X21)-C(=O)-Y21-(R21)k (a1)
[式中、R21は、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X21は、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、
Y21は、2価~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基(但し、炭化水素基を除く)であり、
kは1~3である。]で示される長鎖(メタ)アクリル単量体」に相当する。
ウ 上記イに関連し、引用発明の、「a)」、「b)」の「(メタ)アクリル酸エステル」の「重合により得られる」「(A)」「コポリマー」は、本願発明における「長鎖(メタ)アクリル単量体(但し、ベヘニル(メタ)アクリレートを除く)である長鎖炭化水素基含有非フッ素単量体から誘導された繰り返し単位を有する非フッ素重合体」と、「長鎖(メタ)アクリル単量体である長鎖炭化水素基含有非フッ素単量体から誘導された繰り返し単位を有する非フッ素重合体」に限り一致する。
エ 引用発明の「水性分散液」と、本願発明の「撥水剤と組み合わせて使用するための柔軟剤組成物」とは、「組成物」という限りで一致する。
(2)そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致する。
「組成物であって、
(1)シリコーン重合体、
(2)含フッ素重合体および非フッ素重合体からなる群から選択された少なくとも1種の撥水性重合体、
(3)水または水と有機溶媒の混合物である液状媒体、および
(4)乳化剤
を含んでなり、
非フッ素重合体が、式:
CH2=C(-X21)-C(=O)-Y21-(R21)k (a1)
[式中、R21は、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X21は、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、
Y21は、2価~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基(但し、炭化水素基を除く)であり、
kは1~3である。]
で示される長鎖(メタ)アクリル単量体である長鎖炭化水素基含有非フッ素単量体から誘導された繰り返し単位を有する非フッ素重合体である、組成物。」
(3)一方、本願発明と引用発明は、次の相違点1~5で相違する。
<相違点1>
「組成物」に関し、本願発明が「撥水剤と組み合わせて使用するための柔軟剤組成物」であるのに対し、引用発明は「水性分散液」であり、柔軟剤組成物とは特定されていない点。
<相違点2>
本願発明の「撥水性重合体」は、「シリコーン重合体の存在下で重合されて」いるのに対し、引用発明の「(A)次のモノマーの重合により得られる少なくとも1種のコポリマー」は、そのように重合されたものであるか特定されていない点。
<相違点3>
本願発明では、「シリコーン重合体の量が、シリコーン重合体と撥水性重合体の合計に対して、20重量%以上であ」るのに対し、引用発明の「(B)」「シリコンワックス」の量は、「前記水性分散液における成分(A)及び成分(B)の総質量に基づいて、」「5乃至40質量%」とされている点。
<相違点4>
本願発明の「長鎖(メタ)アクリル単量体」は、「(但し、ベヘニル(メタ)アクリレートを除く)」ものであるのに対して、引用発明の「a)」、「b)」における「(メタ)アクリル酸エステル」は、ベヘニル(メタ)アクリレートを除くものであるか不明であり、また、その繰り返し単位の量も不明である点。
<相違点5>
本願発明では、「長鎖(メタ)アクリル単量体から誘導された繰り返し単位の量が、撥水性重合体に対して、40~100重量%」とされているのに対して、引用発明の「(A)」「コポリマー」は、「a)」、「b)」における「(メタ)アクリル酸エステル」の繰り返し単位の量が不明である点。
2 判断
(1)相違点1について
相違点1について検討するに、引用発明における「水性分散液」は、「シリコンワックス」を含むものであるところ、このような「シリコンワックス」は、上記第4、2(3)で述べたように、繊維への柔軟剤として機能することが技術常識である。してみれば、引用発明における「水性分散液」は、柔軟剤として機能するものといえ、その意味では、柔軟剤組成物であるといえる。
その上で、上記第4、1(1)クのとおり、引用文献1には、引用発明に関し他の撥水剤と組み合わせることで、撥水効果を増強することが記載されている。そうすると、引用文献1に記載の当該事項に基づき、引用発明の「水性分散液」を他の撥水剤と組み合わせて使用するためのものとし、当該相違点1に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得たものである。
(2)相違点2について
相違点2について検討するに、引用発明における「水性分散液」の調製に関し、引用文献1には、上記第4、1(1)キのとおり、容器に界面活性剤、シリコンワックス(B)、モノマーa)、b)、温水を入れ撹拌し、さらに重合開始剤及びモノマーc)を添加し、55~65℃で数時間、重合させることにより得られることが記載されている。そして、これは、シリコンワックス(B)、すなわちシリコーン重合体の存在下で、非フッ素のモノマーa)、b)を重合させ、コポリマー(A)が形成されていることを意味するものである。そして、引用発明において、当該引用文献1に記載の教示に基づき、これを調製し、当該相違点2に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得たものである。
(3)相違点3について
相違点3について検討するに、引用発明の「(B)」「シリコンワックス」は、「前記水性分散液における成分(A)及び成分(B)の総質量に基づいて、」「5乃至40質量%とされている。そして、「40質量%」を上限とする範囲内で、本願発明における「20重量%以上」のものとすることは、当業者が適宜設定し得る事項である。
(4)相違点4について
相違点4について検討するに、上記第4、1(1)エには、引用発明のモノマー「a)」、「b)」として、様々な(メタ)アクリル酸エステルが例示されているところ、確かに、「b)」については、その例示の一つとしてベヘニル(メタ)アクリレートがあげられている。
しかし、引用発明におけるモノマー「b)」として、ベヘニル(メタ)アクリレートは必須のものではなく、例示されている他の材質を採用することは、当業者が容易になし得たものである。
(5)相違点5について
相違点5について検討するに、上記第4、1(1)オには、引用発明の「(A)」「コポリマー」のうち、モノマー「a)」、「b)」をそれぞれ30~40重量%とすることが好ましい旨記載されている。
そうすると、引用文献1に記載の当該教示に基づき、モノマー「a)」、「b)」をそれぞれ30~40重量%とする、すなわちこれらを合算して60~80重量%の値で調整し、当該相違点5に係る本願発明の発明特定事項における数値範囲を満足させることは、当業者が容易に想到し得たものである。
(6)効果について
上記(1)のとおり、引用発明の「水性分散液」は、柔軟材組成物であるということができる上、特に同(2)のとおり、本願発明において「撥水性重合体」が「シリコーン重合体の存在下で重合されて」いる点は、そもそも引用文献1に記載された事項であり、当業者にとって容易想到である。そして、引用発明は、シリコンワックスの存在下で、非フッ素のコポリマーによる優れた撥水性を与えるために所与の構成を採用したものである。そうすると、本願発明が奏する効果について、引用発明及び引用文献1に記載されている事項と比して、異質な、あるいは格別顕著なものということはできない。
3 請求人の主張について
請求人は、令和7年5月12日の意見書において、引用文献1にはシリコーン重合体の存在下で重合されており、含フッ素重合体および非フッ素重合体からなる群から選択された少なくとも1種の撥水性重合体を柔軟剤として用い、撥水剤と組み合わせるという技術的思想は記載も開示もされていない旨主張する。
しかし、これらについては、上記2で判断したとおりである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献1に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-005699