特許拒絶査定不服審判
2023-004247
噴霧ビークル
- 審判番号
- 2023-004247
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-134863
- 請求日
- 2023年03月13日
- 審決日
- 2024年10月29日
- 公報発行日
- 2025年04月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】バイエル アクチェンゲゼルシャフト
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 【請求人】モンサント テクノロジー エルエルシー
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 審判長/審判官
- 審判長 中村 浩
- 審判官 加々美 一恵
- 審判官 小暮 道明
- 分類
- P18 .113-Z (A01H) / P18 .121-Z (A01H)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-134863「噴霧ビークル」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 5月 9日出願公開、特開2022- 68099〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和1年12月5日を国際出願日とする特願2021-532945号(パリ条約に基づく優先権主張 2018年12月10日 欧州特許庁(EP)、2019年9月27日 アメリカ合衆国(US))の一部を,令和3年8月20日に特願2021-134863号として新たに出願したものであって,その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和4年 9月 2日付け 拒絶理由通知書
令和4年 10月27日提出 意見書,手続補正書
令和5年 1月 6日付け 拒絶査定
令和5年 3月13日提出 審判請求書、手続補正書
令和5年 3月17日提出 審判請求書を対象とする手続補正書
令和5年 7月21日提出 上申書
第2 令和5年3月13日に提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和5年3月13日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正のうち、請求項1に係る補正(以下、「本件補正1」という。)により、次の(1)に示す本件補正1前の請求項1が、後記の(2)に示す本件補正1後の請求項1に補正された。(下線は、補正に関する箇所を示す。)
(1)本件補正1前の請求項1
【請求項1】
噴霧ビークルであって、
a.少なくとも花粉を運ぶことが可能な容器と、花粉を、受け取る物体に散布することが可能な少なくとも1つのブームと、を備え、
b.前記ブームは、前記噴霧ビークルによって引き起こされる空気の下向きの力の影響を受けない位置まで延びるような長さである、噴霧ビークル。
(2)本件補正1後の請求項1
【請求項1】
噴霧ビークルであって、
a.少なくとも花粉を運ぶことが可能な容器と、花粉を、受け取る物体に散布することが可能な少なくとも1つのブームと、を備え、
b.前記少なくとも1つのブームの長さは垂直方向に調整可能である、噴霧ビークル。
2 本件補正1の適否について
(1)補正の目的
補正前の「前記ブームは、前記噴霧ビークルによって引き起こされる空気の下向きの力の影響を受けない位置まで延びるような長さである、」はブームがどの位置まで延びるか、すなわちブームの調整範囲を規定したものであったところ、補正後の「前記少なくとも1つのブームの長さは垂直方向に調整可能である、」はブームの長さの調整可能な方向について規定するものであって、その調整範囲がどの位置までであるかについては全く規定していない。とすると、本件補正1は、ブームの調整範囲がどの位置までであるかについての規定を削除した上で、ブームの長さの調整可能な方向についての規定を追加するものであって、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものに該当しない。このため、特許請求の範囲の減縮に該当しない。
また、ブームの調整範囲がどの位置までであるかについての規定を削除した上で、それとは無関係なブームの長さの調整可能な方向についての規定を追加するものは、ブームの調整範囲の釈明とはいえず、本件補正1は明瞭でない記載の釈明に該当しない。このため、本件補正1の目的は、明瞭でない記載の釈明に該当しない。
さらに、本件補正1が請求項の削除や誤記の訂正に該当しないことは、明らかである。
とすると、本件補正1は特許法17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもない。
(2)独立特許要件
上記(1)のとおり、本件補正1は特許法17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもないが、仮に、本件補正1が特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものだったとして、本件補正1は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかについて、以下検討する。
ア 引用文献
(ア)引用文献2
a 引用文献2の記載
本願の最先の優先日前に公知となった、中国実用新案第206984373号明細書(以下、原査定と同様に「引用文献2」という。)には以下の記載がある。なお、引用文献2は中国語文献のため、当審による翻訳文を以下に示す。下線は当審が付した。
(a)「背景技術
[0002] 現在、植物保護用ドローンは、現代の農業作業にますます進出しており、主に平原や丘陵地帯での散布作業である。一般的な農作物に散布を行う場合、植物保護用ドローンの散布ブームを水平に設定することで、より均一な散布が可能となる。しかし、果樹園や森林に散布を行う場合、植物保護用ドローンの散布ブームが長すぎると、周辺の樹木に接触し、ブームが損傷する可能性がある。一般的な苗床に散布を行う場合、より広い範囲に散布を行うために、より長い散布ブームが必要となる。現在、上記のような異なる散布状況に対しては、その都度、散布ブームを交換して対応する必要がある。散布ブームを交換する際には、散布時間に影響が出るだけでなく、絶え間ない取り付けと取り外しのプロセスにより、散布ブームやドローン自体が簡単に損傷する可能性がある。そのため、長さを調節できる植物保護用散布ブームが必要とされている。さらに、既存の植物保護用ドローンには、以下の問題がある。既存のノズルのほとんどはプロペラに近接している。プロペラの回転中、ノズルから噴霧された農薬はプロペラの回転により生じた風によりあちこちに吹き飛ばされ、一部の農薬は機体に付着したり、遠くの非散布区域に吹き飛ばされたりし、噴霧効果に影響を与え、農薬を浪費する。」
(b)「[0014] 実施形態1
[0015] 添付の図面1、2に示すように、伸縮式植物保護用ドローンノズルは、ドローン1、薬液ボックス2、支持ロッド3、伸縮ロッド4、およびノズル5を含む。ドローン1は、下部に薬液ボックス2が取り付けられ、支持ロッド3、伸縮ロッド4は当該支持ロッド3に取付けられ、伸縮ロッド4は後傾姿勢に設定され、伸縮ロッド4の下部にはノズル5が取付けられ、ノズル5はホース6を介して薬液ボックス2に接続され、ホース6は結束バンド7を介して伸縮ロッド4および支持ロッド3に固定されている。
[0016] 伸縮ロッド4の傾斜方向は、ドローン1の飛行方向と反対方向である。
[0017] 伸縮ロッド4と鉛直方向とのなす角度は26°である。
[0018] 支持ロッド3は、ドローン1の両側に左右対称に配置されている。
[0019] ドローン1はクワッドコプターである。
[0020] 本実用新案の使用時:伸縮式植物保護用ドローンノズルは、ドローン、薬液ボックス、支持ロッド、伸縮ポール、ノズルで構成され、薬液ボックスはドローンの下部に搭載され、支持ロッドはドローンの下部ブラケットにドローンに対して左右対称に配置し、支持ロッドの両側に3本の伸縮ロッドを設置し、伸縮ロッドを後ろに傾けて垂直方向に対して26°の角度を形成し、伸縮ロッドの下端にノズルを取り付け、ホースでノズルと薬液ボックスを接続する。ホースが落下しないよう、伸縮ロッドと支持ロッドに結束バンドで固定する。伸縮ロッドが伸び縮みしてもホースが傷つかないよう、伸縮ロッド上のホースの長さは伸縮ロッドの長さよりも長くし、隣り合う2つの結束バンドの間にあるホースはたるんだ状態にしておく。ドローンで噴霧を行う際には、伸縮ロッドを最大限に伸ばし、ノズルとドローンのプロペラの距離を最大限に広げ、噴霧中のノズルから噴霧される液体に対するプロペラの風の影響を効果的に低減し、液体が吹き飛ばされて噴霧効果に影響を与えることを防ぎ、液体が機体を汚すことを防ぐ。噴霧が完了し、伸縮ロッドを使用しない場合は、ロッドを収納し、スペースを削減し、保管や持ち運びを容易にすることができる。
[0021] 全体として、本実用新案は、液体を上方に噴霧することによる無駄や、液体の噴霧効果に影響を与える問題を効果的に解決できるという利点があり、また持ち運びも容易である。」
(c) 図1
[図:0001420728000001.jpg]
(d) 上記(c)の図1より、伸縮ロッド4は、垂直方向に延びていることが見て取れる。
b 引用発明
上記aより、引用文献2には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、参考のため、認定の根拠となった主な箇所を括弧内に示す。
(引用発明)
「ドローン1、薬液ボックス2、支持ロッド3、伸縮ロッド4、およびノズル5を含む、伸縮式植物保護用ドローンであって、([0015]、図1)
伸縮ロッド4は、垂直方向に延びており、(上記(d))
ドローンで薬液噴霧を行う際には、伸縮ロッドを最大限に伸ばし、ノズルとドローンのプロペラの距離を最大限に広げ、噴霧中のノズルから噴霧される液体に対するプロペラの風の影響を効果的に低減し、液体が吹き飛ばされて噴霧効果に影響を与えることを防ぎ、液体が機体を汚すことを防ぐ、([0020])
伸縮式植物保護用ドローン」
(イ)引用文献3
a 引用文献3の記載
本願の最先の優先日前に公知となった、登録実用新案第3217561号公報(以下、原査定と同様に「引用文献3」という。)には以下の記載がある。下線は当審が付した。
【実用新案登録請求の範囲】
【請求項 1】
機体本体と、該機体本体中心部から水平放射状に伸びる複数のロータアームと、該ロータアームの先端に固定される複数の電動モータと、該電動モータに接続される複数のプロペラと、該機体本体の底面から下方に伸びる複数の脚部とからなるドローンにおいて、ポンプにより圧送される液状噴霧物を任意の方向に向けて噴射可能な噴射ノズルを有する噴霧装置を備える、ことを特徴とするドローン搭載噴霧装置。
・・・
【請求項 6】
前記液状噴霧物は液状の害虫駆除薬剤又は液状の授粉用花粉である、ことを特徴とする請求項1、2に記載のドローン搭載噴霧装置。
【0015】
本考案の噴射ノズル11a、11bは、電動モータ17、ロータリーエンコーダ18に接続されて回転軸16を支点にして、上下方向に90度回動するように構成され、本考案に適用される液状噴霧物は、液状の害虫駆除薬剤又は液状の授粉用花粉である。
【0022】
本考案においては、噴射ノズルから噴射される噴霧物として、液状の害虫駆除薬剤や液状の授粉用花粉を主として使用するが、噴霧物としてはこれらに限定されることなく、液状の除草剤等の農薬、樹木成長促進剤、肥料等も使用することができる。なお、使用する花粉は増量剤を混ぜた人工授粉用の液状花粉である。散布対象領域は果樹園、植木畑、街路樹、庭木等であり、噴霧対象物は果樹園のリンゴ,ナシ等の様々な果樹、植木、植栽の幹、葉、授粉対象となる花びらである。なお、噴射ノズルについては後述する。
b 引用文献3から読み取れる技術的事項
上記aより、引用文献3には以下の技術的事項が記載されていると認められる。
(引用文献3から読み取れる技術的事項)
ドローン搭載噴霧装置において、害虫駆除薬と受粉用花粉は、同等に噴射物として利用されること。
イ 対比
本件補正1後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)と、引用発明とを対比する。
引用発明の「薬液噴霧」を行う「ドローン1、薬液ボックス2、支持ロッド3、伸縮ロッド4、およびノズル5を含む、伸縮式植物保護用ドローン」は、本願補正発明の「噴射ビークル」に相当する。
引用発明の「ロッド」は、本願補正発明の「ブーム」に相当する。
引用発明の「薬液ボックス」は、本願補正発明の「少なくとも花粉を運ぶことが可能な容器」と、「物質を運ぶことが可能な容器」である点で共通する。
引用発明の「伸縮ロッド」は「薬液噴霧」を行うものであって、本願補正発明の「花粉を、受け取る物体に散布することが可能な少なくとも1つのブーム」とは、「物質を、受け取る物体に散布することが可能な少なくとも1つのブーム」である点で共通する。
引用発明の「伸縮ロッド」は「垂直方向に延びて」おり、「ドローンで薬液噴霧を行う際には、伸縮ロッドを最大限に伸ばし」て使用するものであるから、本願補正発明の「少なくとも1つのブームの長さは垂直方向に調整可能である」に相当する。
とすると、本願補正発明と引用発明とを対比すると、以下の点で一致し、また相違する。
(一致点)
噴霧ビークルであって、
a.少なくとも物質を運ぶことが可能な容器と、物質を、受け取る物体に散布することが可能な少なくとも1つのブームと、を備え、
b.前記少なくとも1つのブームの長さは垂直方向に調整可能である、噴霧ビークル。
(相違点)
物質を運ぶことが可能な容器が、本願補正発明では「少なくとも花粉を運ぶことが可能な容器」であるのに対し、引用発明では「薬液ボックス」であり、それに伴い、ブームが受け取る物体に散布するものが、本願補正発明では「花粉」であるのに対し、引用発明では「薬液」である点。
ウ 判断
上記ア(イ)bの引用文献3から読み取れる技術的事項にあるように、ドローン搭載噴霧装置において、害虫駆除薬と受粉用花粉は、同等に噴射物として利用されることは、既に知られている。このため、引用発明において薬液に代えて花粉を噴霧するために、引用発明の薬液ボックスに代えて、受粉用花粉を運ぶことが可能な容器を採用し、上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。
また、ドローン搭載噴霧装置において、害虫駆除薬と受粉用花粉は、同等に噴射物として利用されることが既に知られていることに鑑みるに、本願補正発明に、引用発明に比して進歩性の存在を推認させるような格別な効果が奏されているとも認めることができない。
エ 審判請求書、上申書での主張
(ア)審判請求書、上申書での主張
審判請求書と令和5年7月21日提出の上申書で、審判請求人は概ね以下の主張をしている。
「引用文献2に記載されたドローンと引用文献3に記載されたドローンとは、基本構造が本質的に大きく異なるために、引用文献3に記載された周知技術を引用文献2に記載された発明に適用するのは著しく困難である。そもそも、引用文献3に記載された周知技術を引用文献2に記載された発明に適用した場合には、引用文献2の記載されたドローンは、もはや、本来意図された通りに機能し得ないので、本願発明が解決しようとする課題と向き合った当業者が、引用文献3に記載された周知技術を引用文献2に記載された発明に適用しようと試みることはあり得ない。」
(イ)(ア)の主張に対する判断
上記ウの判断は、引用発明の薬液ボックスに代えて、受粉用花粉を運ぶことが可能な容器を採用することについて判断しているのであって、引用発明のドローン自体の構造に引用文献3のドローン自体の構造を適用することについて判断しているものではないため、引用文献2と引用文献3のドローンの構造の相違に基づく審判請求人の主張は採用することができない。
(ウ)上申書での補正案について
審判請求人は令和5年7月21日提出の上申書で、本願補正発明に「前記少なくとも1つのブームは、花粉が前記少なくとも1つのブームから出るときに空気が花粉の移動を妨げることがないように前記噴霧ビークルによって引き起こされる空気の下向きの力が減少されるような長さまで伸長できるように構成される」という構成を付加した補正案を提示しているので、これについて検討する。
引用文献2の[0002]には、既存技術の問題点として「既存の植物保護用ドローンには、以下の問題がある。既存のノズルのほとんどはプロペラに近接している。プロペラの回転中、ノズルから噴霧された農薬はプロペラの回転により生じた風によりあちこちに吹き飛ばされ、一部の農薬は機体に付着したり、遠くの非散布区域に吹き飛ばされたりし、噴霧効果に影響を与え、農薬を浪費する。」とあり、当該問題点を解決すべく引用発明に係る伸縮式植物保護用ドローンが発明され、引用発明は「ドローンで薬液噴霧を行う際には、伸縮ロッドを最大限に伸ばし、ノズルとドローンのプロペラの距離を最大限に広げ、噴霧中のノズルから噴霧される液体に対するプロペラの風の影響を効果的に低減し、液体が吹き飛ばされて噴霧効果に影響を与えることを防ぎ、液体が機体を汚すことを防ぐ」ものである。とすると、引用発明の「ドローンで薬液噴霧を行う際には、伸縮ロッドを最大限に伸ばし、ノズルとドローンのプロペラの距離を最大限に広げ、噴霧中のノズルから噴霧される液体に対するプロペラの風の影響を効果的に低減し、液体が吹き飛ばされて噴霧効果に影響を与えることを防ぎ、液体が機体を汚すことを防ぐ」構成は、上記補正案で新たに付加された構成に相当し、新たな相違点は発生しない。このため、当該補正案に進歩性を見いだすことはできない。
オ 小括
したがって、本願補正発明は、引用発明および引用文献3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(3)補正却下についてのむすび
以上のとおり、本件補正1は、特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反するものであるから、本件補正における他の補正部分について検討するまでもなく、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
仮に本件補正1が特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものだったとしても、本件補正1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、本件補正における他の補正部分について検討するまでもなく、本件補正は、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~20に係る発明は、令和4年10月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~20に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2 1(1)に記載されたとおりのものである。
第4 原査定の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2及び引用文献3に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものを含む。
引用文献2:中国実用新案第206984373号明細書
引用文献3:登録実用新案第3217561号公報
第5 判断
1 引用文献
引用文献2、引用文献3の記載事項は、それぞれ上記第2 2(2)ア(ア)、(イ)に記載したとおりである。
2 対比
本願発明と上記第2 2(2)ア(ア)bに記載した引用発明とを対比する。
上記第2 2(2)イで述べたのと同じ理由で、引用発明の「薬液噴霧」を行う「ドローン1、薬液ボックス2、支持ロッド3、伸縮ロッド4、およびノズル5を含む、伸縮式植物保護用ドローン」は、本願発明の「噴射ビークル」に相当し、引用発明の「ロッド」は、本願発明の「ブーム」に相当し、引用発明の「薬液ボックス」は、本願発明の「少なくとも花粉を運ぶことが可能な容器」と、「物質を運ぶことが可能な容器」である点で共通する。
引用発明の「伸縮ロッド」は「薬液噴霧」を行うものであって、本願発明の「花粉を、受け取る物体に散布することが可能な少なくとも1つのブーム」とは、「物質を、受け取る物体に散布することが可能な少なくとも1つのブーム」である点で共通する。
上記第2 2(2)エ(ウ)で述べたように、引用文献2の[0002]には、既存技術の問題点として「既存の植物保護用ドローンには、以下の問題がある。既存のノズルのほとんどはプロペラに近接している。プロペラの回転中、ノズルから噴霧された農薬はプロペラの回転により生じた風によりあちこちに吹き飛ばされ、一部の農薬は機体に付着したり、遠くの非散布区域に吹き飛ばされたりし、噴霧効果に影響を与え、農薬を浪費する。」とあり、当該問題点を解決すべく引用発明に係る伸縮式植物保護用ドローンが発明され、引用発明は「ドローンで薬液噴霧を行う際には、伸縮ロッドを最大限に伸ばし、ノズルとドローンのプロペラの距離を最大限に広げ、噴霧中のノズルから噴霧される液体に対するプロペラの風の影響を効果的に低減し、液体が吹き飛ばされて噴霧効果に影響を与えることを防ぎ、液体が機体を汚すことを防ぐ」ものである。とすると、引用発明における伸縮ロッドについて、「ドローンで薬液噴霧を行う際には、伸縮ロッドを最大限に伸ばし、ノズルとドローンのプロペラの距離を最大限に広げ、噴霧中のノズルから噴霧される液体に対するプロペラの風の影響を効果的に低減し、液体が吹き飛ばされて噴霧効果に影響を与えることを防ぎ、液体が機体を汚すことを防ぐ」ように構成されていることは、本願発明の「ブームは、前記噴霧ビークルによって引き起こされる空気の下向きの力の影響を受けない位置まで延びるような長さである」ことに相当する。
とすると、本願発明と引用発明とを対比すると、以下の点で一致し、また相違する。
(一致点)
噴霧ビークルであって、
a.少なくとも物質を運ぶことが可能な容器と、物質を、受け取る物体に散布することが可能な少なくとも1つのブームと、を備え、
b.前記ブームは、前記噴霧ビークルによって引き起こされる空気の下向きの力の影響を受けない位置まで延びるような長さである、噴霧ビークル。
(相違点)
物質を運ぶことが可能な容器が、本願発明では「少なくとも花粉を運ぶことが可能な容器」であるのに対し、引用発明では「薬液ボックス」であり、それに伴い、ブームが受け取る物体に散布するものが、本願発明では「花粉」であるのに対し、引用発明では「薬液」である点。
3 判断
上記2の相違点は、上記第2 2(2)イで挙げた相違点と同じであり、それに対する判断も上記第2 2(2)ウで述べたとおりである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-004247