特許拒絶査定不服審判
2023-004167
衣服内冷却用送風機、送風機付衣服
- 審判番号
- 2023-004167
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-111526外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年03月10日
- 審決日
- 2024年07月12日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (F04D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-111526「衣服内冷却用送風機、送風機付衣服」拒絶査定不服審判事件〔令和 元年12月19日出願公開、特開2019-214948〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
この出願(以下、「本願」という。)は、平成30年6月12日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 3月 2日付け 拒絶理由通知書
令和4年 4月 6日 意見書、手続補正書の提出
令和4年 8月22日付け 拒絶理由通知書
令和4年 9月 6日 意見書、手続補正書の提出
令和4年12月15日付け 拒絶査定
令和5年 3月10日 審判請求書、手続補正書の提出
令和6年 3月22日付け 拒絶理由通知書
令和6年 5月13日 意見書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~3に係る発明は、令和5年3月10日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「衣服本体に設けられた穴に取り付けられて、前記衣服本体内に外気を送り込むための衣服内冷却用送風機であって、
モータと、
前記モータの回転軸に連結された羽根車と、
前記モータ及び前記羽根車の周囲を囲うガードと、
を具備してなり、
前記モータと前記羽根車との連結が、
前記モータの回転軸に取り付けられた雄部材と前記羽根車の回転中心に設けられた雌部との嵌合と、
前記雄部材と前記雌部との嵌合状態を維持する係止部材としてのネジと、
によってなされ、
前記雄部材と前記雌部とを締結する前記係止部材の螺合によって、前記雄部材と前記雌部との嵌合状態が維持された際、前記係止部材としてのネジの頭部が前記羽根車のボスに対して突出した状態となり、前記頭部を操作することによって工具無しで前記係止部材を締結できるようになされたことを特徴とする衣服内冷却用送風機。」
第3 拒絶の理由
令和6年3月22日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)のうち、請求項1に係る発明(本願発明)に対して通知したものの概略は、次のとおりである。
本願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2及び引用文献3に記載されるような周知の技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特許第5958923号公報
引用文献2:実願昭52-106980号(実開昭54-34106号)のマイクロフィルム
引用文献3:実公昭50-10214号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載及び引用発明
(1) 当審拒絶理由で引用された引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付加した。以下、同様である。)。
ア 「【0001】
本発明は、高温環境下でも快適に作業できる冷却衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄工所や夏の屋外の工事現場のような、高温環境下で作業する場合、体温の上昇を抑制することが必要となる。
しかし、このような環境では、安全性や機能性の面から、生地が厚い衣服が着用されている。高温環境下で長時間の作業を行う場合、体外に熱を充分に放出することができないため、過度の体温上昇を引き起こして熱中症に陥るおそれがある。
【0003】
このような環境で作業する時に着用する衣服として、従来から、冷却衣服が使用されている。例えば、ファンによって風を発生させる平行風発生装置(風発生装置)を備えた冷却衣服が提案されている(特許文献1)。この平行風発生装置は、衣服の表面よりも内側に取り付けられており、空気を取り込む方向に形成されている底部と取り込んだ空気を排出する空気排出口(平行風送出部)が形成されている側部とからなる内部ファンガードを有している。平行風発生装置は、取り込んだ空気を底部に衝突させ、空気排出口から略側面方向に空気を送風する。そのため、平行風発生装置は、外部の空気を取り込み、冷却衣服と下着又は体との間に平行な空気の流れを発生させることができる。また、内部ファンガードにおいて、空気排出口は同じ大きさで等間隔に形成されているため、平行風発生装置は、その周囲に同量(同じ風速)の空気を均一に排出する。
このように、冷却衣服等の間に平行な空気が流れることで、汗の蒸発による人体の生理的冷却機能の有効範囲を大幅に拡大することができる。そのため、冷却衣服を着用することで、高温環境下であっても、過度な体温上昇を防止することができる。」
イ 「【0005】
冷却衣服においては、冷却衣服の内部に取り込んだ空気を外部に流出させることで、内部の空気の循環を向上させ、体温が上昇することを抑制するため、冷却衣服に送り込まれた空気は、効率よく冷却衣服の外部に流出されることが望ましい。
しかし、特許文献1の冷却衣服においては、平行風発生装置の周囲に均一に空気を排出するため、冷却衣服の下方向に流れる空気は裾にぶつかり、外部に流出されず、滞留してしまう。そのため、取り込んだ空気を効率的に利用することができない。
また、身体に対して平行な空気の流れを発生させた場合、空気の流れは身体の表面に境界層を形成することが知られている。この境界層が形成されると、身体の表面を流れる空気の風速が著しく低下し、流れる風と身体との間で効率よく熱交換することができない。
【0006】
従来の冷却衣服では、風発生装置の大部分が冷却衣服の表面から内側に装着される構造であるため、風発生装置の重心の位置が冷却衣服の内側(内部側)に片寄ってしまい、未使用時には風発生装置の空気の取込み口が上方向を向いてしまう。また、風発生装置は、多量の風を発生させている間は冷却衣服に対して垂直を保つが、風量を少なく調節した場合には上方向を向いてしまう。そのため、未使用時と使用時で風発生装置の取り付けた角度の見た目が変化し、外観上好ましくない。なお、風発生装置が上方向を向かないようにするためには、風発生装置の一部を上からひもによって吊り下げる必要があった。
また、ファンが自重で上方向を向いた場合、ファンとモータの重力は、モータ軸を押し込む方向に働く。一方で、ファンが回転すると、推力が働くためモータ軸を引き抜く方向に力が働く。そうすると、モータ軸の摩擦音やモータ本体が近接する部材に衝突する衝突音が発生し、風発生装置の使用時に雑音が生じるという問題がある。
【0007】
本発明は、未使用時と使用時で外観上変化せず、使用時に雑音が生じず、効率よく身体を冷却することができる冷却衣服を提供することを目的とする。」
ウ 「【0008】
本発明に係る冷却衣服は、使用者が着用するものであり、軸流ファン、使用者の側で軸流ファンを支持するモータ、空気取込口、空気排出口を有する風発生手段と、風発生手段を装着する取付け孔と、を備える。そして、冷却衣服は、発生手段が作動したときに、風発生手段の斜め下方向から空気取込口を介して空気が取り込まれ、風発生手段の上方向に空気排出口を介して使用者に向けて送風され、風発生手段が取付け孔に対して斜め下方向に5°~35°傾斜させて装着されていることを特徴とする。
【0009】
さらに本発明に係る冷却衣服は、風発生手段が取付け孔に回転可能に取り付けられ、風発生手段を回転させたときに、空気取込口を介して取り込まれる空気の方向が変更されると共に、空気排出口を介して送風される空気の方向が変更されることを特徴とする。」
エ 「【0013】
本実施形態に係る冷却衣服1を、図1~図3を参照し説明する。
冷却衣服1は、図1に示すとおり、風発生手段としての風発生装置2と、風発生装置2を装着するための取付け孔3を備えている。冷却衣服1は、使用者が直接着用し、または下着を着用した上から着用する。本実施形態では、使用者が冷却衣服1を直接着用した場合について説明する。
【0014】
風発生装置2は、取付け孔3に装着されることで冷却衣服1の胴体の腰部に2つ設けられている。風発生装置2は、図2に示すとおり、空気取込口11が形成されている外側ファンガード4と、空気排出口12が形成されている内側ファンガード5と、冷却衣服1の外部の空気を取込み、冷却衣服1の内部に空気を排出する軸流ファン6、軸流ファン6を駆動させ、使用者の側(身体9の側)で軸流ファン6を支持するモータ7と、モータ7を覆うキャップ8と、を備えている。この風発生装置2は、空気取込口11が斜め下方向を向くように取付け孔3に装着されている。
風発生装置2は、環状の固定リング17を使用して、取付け孔3に装着される。この固定リング17の内周面には、図3に示すとおり、突起18が形成されている。突起18は、2つ設けられ、互いに対向する位置に形成されている。
【0015】
外側ファンガード4は、有底円筒状を有し、その側面が内側ファンガード5に嵌め合わされる。外側ファンガード4の前面13には、空気取込口11が直線状に形成されている(図1)。
内側ファンガード5は、ドーム型のカバー部14と円環部19を有する有底円筒状をしている。カバー部14には、空気排出口12が直線状に形成されている。この空気排出口12は、空気取込口11の位置と対向する位置に形成されている。また、内側ファンガード5の側面には、図3(a)に示すとおり、爪15を有するフランジ16が、内側ファンガード5と一体として形成されている。
また、風発生装置2は、モータ7に電力を供給し、軸流ファン6と接続されるバッテリ(図示しない)を備え、モータ7の側面にはハーネス(図示しない)とバッテリを接続するための端子穴21が形成されている。端子穴21にバッテリを接続するために、カバー部14は、一部がくり抜かれている。
【0016】
風発生装置2は、空気取込口11が斜め下方向に所定の角度(5°~35°)だけ傾斜するように装着されている。そのため、風発生装置2は、軸流ファン6を回転させることで斜め下方向から外部の空気を取り込み、その空気は軸流ファン6の軸方向に沿って斜め上方向に移動し、空気排出口12から身体9に向けて排出される。
【0017】
次に、風発生装置2の装着および取り外しの方法について、図2および図3を参照して説明する。
風発生装置2は、冷却衣服1の外側から取付け孔3に装着される。風発生装置2は取付け孔3に挿入され、フランジ16と固定リング17で冷却衣服1を挟み込み、固定リング17に形成されている突起18をフランジ16の爪15に係合させることで固定される。
風発生装置2を装着する際、カバー部14と円環部19が接続される部分付近を、冷却衣服1に取り付ける。つまり、風発生装置2の上端部22(内側ファンガード5の円環部19の一部)を冷却衣服1の外側に突出させて装着する。一方、風発生装置2の下端部23(円環部19の一部)は、冷却衣服1の内側に配置されるように装着する。このように装着することで、風発生装置2(空気取込口11)は、冷却衣服1に対して斜め下方向を向いて取り付けられる。
一方、風発生装置2を取り外すときは、図3(a)に示すように、フランジ16を内側ファンガード5の径方向の内側(矢印Aの方向)に向けて力を加える。矢印Aの方向に力を加えると、図3(b)に示すとおり、爪15と突起18の係合状態が解除され、風発生装置2を取付け穴3から取り外すことができる。」
オ 引用文献1には、以下の図面が示されている。
「【図1】
[図:0001413826000001.jpg]
【図2】
[図:0001413826000002.jpg]
【図3】
[図:0001413826000003.jpg]
」
(2) 引用文献1の上記ア~オで示した内容を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「冷却衣服1の取付け孔3に装着されて、外部の空気を取込み、前記冷却衣服1の内部に空気を排出する風発生装置2であって、
モータ7と、
前記モータ7により駆動される軸流ファン6と、
外側ファンガード4及び内側ファンガード5と、
を備えている前記冷却衣服1に装着される風発生装置2。」
2 引用文献2の記載
当審拒絶理由で引用された引用文献2には、図面とともに、次の記載がある。
(1) 「 本考案は固定子を内設したケーシングの閉塞端部に回転子を支承軸を介して支承させ且つこの回転子によつて回転される送風羽根のボス部が前記ケーシングの少なくとも開放端部外周を囲繞する構成の送風機の改良に関する。
この種従来の送風機例えば換気扇は、上記構成とすることにより全体の薄形化を図つたもので、送風羽根は、そのボス部の略中央部を複数本のねじによつて回転子の短絡環に取付けることにより該回転子に固定するようにしている。ところが、上記従来の構成では、送風羽根のボス部を複数本のねじによつて回転子の短絡環に取付ける関係上回転子と送風羽根の軸心を一致させることが面倒で、しかも送風羽根を清掃等のために回転子から取外す場合には複数本のねじをドライバ等の工具により外さなければならず、取外し操作が面倒であり、勿論再取付けは取外し時と逆の操作を行なわなければならないのでこれも面倒であつた。
本考案は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、回転子に同心的に連結筒を突設して、この連結筒の内周にねじ部を形設し、この連結筒のねじ部に送風羽根のボス部の中心部を貫通して螺挿されるねじ部を有する摘み部材を設けて、この摘み部材により前記送風羽根のボス部を連結筒に着脱可能に取付ける構成とすることによつて、回転子と送風羽根の軸心を容易に一致させることができ、しかも回転子に対する送風羽根の取付け、取外しを容易に行ない得る送風機を提供するにある。」(明細書第2頁第1行~第3頁第9行)
(2) 「 1は略矩形状の外枠であり、その中央部に四本の支持腕2を介してケーシング3を一体に形成する。このケーシング3は一端を閉塞した短円筒状をなし、その閉塞端部の中心部に軸筒部4を内方に向けて突設し、この軸筒部4に支承軸5の一端部を圧入或は挿入接着等により嵌着固定する。6は励磁コイル6aを有する固定子であり、これを前記ケーシング3の開放端部内周に圧入により嵌着固定する。7は両端面外周に短絡環7aを有する回転子、8は径小部9及び径大部10からなる段付円管状をなす熱伝導性のよい金属例えばアルミニウム製の連結筒であり、その径小部9を回転子7の軸孔7bに圧入により嵌着固定する。そして、この連結筒8の径大部10の内周にはねじ部10aを形設するとともに、外周には複数個(図では一個のみを示す)の係合部としての係合突起10bを突設する。11は前記支承軸5に嵌め込んだスペーサ、12及び13は玉軸受であり、これらの玉軸受12及び13により連結筒8の径小部9を前記支承軸5に挿通支承させ、玉軸受12の一方の端面を軸筒部4によつて移動が規制されたスペーサ11に当接させるとともに、該玉軸受12の他方の端面に径小部9内周に嵌着固定した止め輪14を当接させ、更に玉軸受13の一方の端面を前記径小部9内周に嵌着固定した止め輪15に当接させるとともに、該玉軸受13の他方の端面と支承軸5の先端部に嵌着固定した止め輪16との間にワツシヤ17及びばねワツシヤ18を介装し、以つて回転子7を固定子6の界磁空間内に位置するようにして支承軸5に回転自在に支承させる。19は送風羽根であり、これは一端を閉塞した短円筒状のボス部20の外周に複数個(図では五個)の翼片21を突設してなるもので、そのボス部20の内径を前記ケーシング3の外径より若干大となるように設定する。更に、ボス部20の閉塞端部の中心部には前記径大部10のねじ部10aの谷径と略等しい径を有する円形状の貫通孔22を形設するとともに、該ボス部20の閉塞端部における貫通孔22の周囲部位に前記径大部10の外径と略等しい内径を有する円形状の嵌合筒部23を内方に向けて突設し、この嵌合筒部23に前記径大部10の係合突起10bと回転方向に対して挿通係合する係合部としての係合溝23aを形設する。24は円板状をなす熱伝導性のよい金属例えばアルミニウム製の摘み部材であり、その裏面に短円筒状をなす螺合部24aを突設し、この螺合部24aの外周に前記径大部10のねじ部10aに螺合するねじ部24bを形設する。而して、前記送風羽根19の嵌合筒部23を連結筒8の径大部10の外周に嵌合させ且つその係合溝23aを係合突起10bに挿通係合させ、ボス部20の開放端部が径大部10の少なくとも開放端部外周を囲繞するようになし、しかる後摘み部材24の螺合部24aをボス部20の貫通孔22に貫通させて、そのねじ部24bを径大部10のねじ部10aに螺合挿通させ、以つて摘み部材24によりボス部20を押圧してその貫通孔22の周囲部を径大部10の端面に圧接させ、送風羽根19を連結筒8従つて回転子7に着脱可能に取付ける。尚、25は外枠1の室内側の開口部に着脱可能に装着した化粧枠である。」(明細書第3頁第12行~第6頁第9行)
(3) 「 次に、上記構成の本実施例の作用につき説明する。送風運転たる換気運転を行なわせるべく固定子6の励磁コイル6aに通電すると、この固定子6の界磁空間内に位置する回転子7は支承軸5の周りに回転し、従つて送風羽根19は連結筒8に摘み部材24によつて挟持固着されているので、更には連結筒8の係合突起10bとボス部20の係合溝23aとの係合を介して回転され、室内の空気を吸引し室外に吐出するようになる。而して、このような換気運転を行なうべく長期間使用すると、外枠1、ケーシング3、送風羽根19及び化粧枠25に油塵等が附着するものであり、清掃を行なう必要がある。このような場合には、外枠1から化粧枠25を取外し、摘み部材24を手指等で回してそのねじ部24bを連結筒8のねじ部10aから螺脱させ、該連結筒8から送風羽根19を取外す。この送風羽根19の取外し時には、送風羽根19のボス部20若しくは翼片21を手指等で押えて該送風羽根19が摘み部材24と共回りしないようにしておけば、ボス部20の係合溝23aと係合突起10bが係合状態にある連結筒8も共回りが阻止され即ち回転子7も共回りが阻止される。このことは送風羽根19を連結筒8従つて回転子7に取付ける時も同様である。」(明細書第6頁10行~第7頁第12行)
(4) 「 このように本実施例によれば、回転子7の軸孔7bに連結筒8の径小部9を嵌着固定し、この連結筒8の径大部10の外周に送風羽根19のボス部20の嵌合筒部23を嵌合させ、更にボス部20の貫通孔22に摘み部材24の螺合部24aを貫通させてそのねじ部24bを前記径大部10の内周のねじ部10aに螺挿することにより送風羽根19を連結筒8従つて回転子7に取付けるようにしたものである。従つて、摘み部材24を手指等によつて回すだけで送風羽根19を連結筒8従つて回転子7に対して取付け、取外しを行なうことができ、従来に比し取付け、取外し操作が容易であり、しかも連結筒8の径大部10に送風羽根19の嵌合筒部23を嵌合させるだけで送風羽根19と回転子7との軸心が一致することになるので、従来に比し軸心合せが容易になる。」(明細書第7頁第17行~第8頁11行)
(5) 引用文献2には、以下の図が示されている。
「第1図
[図:0001413826000004.jpg]
第2図
[図:0001413826000005.jpg]
」
3 引用文献3の記載
当審拒絶理由で引用された引用文献3には、図面とともに、次の記載がある。
(1) 「 本考案は扇風機、換気扇等のフアン着脱装置に関し、構成を簡単化し安価に提供する事を目的とする。」(第1頁左欄第15~17行)
(2) 「 以下実施例を図面に従つて説明する、1はモーターシヤフトにして先端には雄ネジ部2が形設されている。3はモーターシヤフト1に嵌挿されるフアン取付用のスリーブで、前端の雌ネジ部4が前記雄ネジ部2に螺着し、モーターシヤフト1に固定される。5はフアンでそのボス6がスリーブ3に被嵌する。ボス6の後端と、スリーブ3後端のフランジ部7には夫々端面に凹凸結合する溝8及び突起9が形設され、両者が係合した状態ではスリーブ3とフアン5が一体に回転する事になる。10はフアン5のボス6前面を覆うフアン押え用のスピンナーで、内面のボス11がモーターシヤフト1の雄ネジ部2の残余端に螺着し、フアン5のボス6を後方へ押圧して、フアン5とスリーブ3とを固着状態に保持せしめるものである。モーターシヤフト1の雄ネジ部2には、モーターシヤフト1が前方より見て時計方向に回転するものであれば左ネジを反時計方向に回転するものであれば右ネジを選ぶのがよい。これはモーターシヤフト1の回転トルクによりスリーブ3及びスピンナー10の螺着が緩められるのを防止するためである。スリーブ3及びスピンナー10の螺着力がモーターシヤフト1の回転トルクに充分抗し得る設計であれば必ずしも上記の如くする必要はない。
本考案の構成は以上のようであり、第1図に示される取付状態において、モーターシヤフトの回転力はスリーブを介してフアンに伝達される。フアンの清掃、あるいは収納の必要があつて、フアンの分離を必要とする時は、スピンナーを緩めてモーターシヤフトより外し後フアンをスリーブより抜き取ればよい。フアンを取付ける場合はこの逆の操作を行えばよい。
本考案によれば、モーターシヤフトの雄ネジ部に予めフアン取付用スリーブを螺着しておき、フアンをこのスリーブに被嵌すれば、スリーブ後端のフランジ面に衝合し位置決めされると共に係合状態となり、この係合状態を保持するためモーターシヤフト雄ネジ部の残余端にフアン押え用スピンナーを螺着したもので、フアン着脱は単にスピンナーの螺着操作のみにより行われ、非常に容易であると共に構成自体も簡略化されて安価に提供でき実用的効果大である。」(第1頁左欄第18行~右欄第22行)
(3) 引用文献3には、以下の図が示されている。
「第1図
[図:0001413826000006.jpg]
第2図
[図:0001413826000007.jpg]
」
第5 対比・判断
1 対比
以下、本願発明と引用発明とを対比する。
(1) 引用発明の「冷却衣服1」は、本願発明の「衣服本体」に相当する。また、引用発明の「取付け孔3」は、「冷却衣服1」に備えられたものであることから、本願発明の「穴」に相当する。さらに、引用発明の「風発生装置2」は、外部の空気を取込み、冷却衣服1の内部に空気を排出するものであることから、本願発明の「衣服内冷却用送風機」に相当する。
してみると、引用発明の「冷却衣服1の取付け孔3に装着されて、外部の空気を取込み、前記冷却衣服1の内部に空気を排出する風発生装置2」は、本願発明の「衣服本体に設けられた穴に取り付けられて、前記衣服本体内に外気を送り込むための衣服内冷却用送風機」に相当する。
(2) 引用発明の「モータ7」は、本願発明の「モータ」に相当する。また、引用発明の「軸流ファン6」は、図2より羽根を備えていることが看取できることから、本願発明の「羽根車」に相当し、引用発明の「前記モータ7により駆動される軸流ファン6」は、「モータ7」により駆動されることから、「モータ7」の回転軸に連結されているといえ、本願発明の「前記モータの回転軸に連結された羽根車」に相当する。さらに、引用発明の「外側ファンガード4及び内側ファンガード5」は、引用文献1の図2よりモータ7及び軸流ファン6の周囲を囲んでいることが看取できることから、本願発明の「前記モータ及び前記羽根車の周囲を囲うガード」に相当する。
(3) そうすると、本願発明と引用発明とは、
「衣服本体に設けられた穴に取り付けられて、前記衣服本体内に外気を送り込むための衣服内冷却用送風機であって、
モータと、
前記モータの回転軸に連結された羽根車と、
前記モータ及び前記羽根車の周囲を囲うガードと、
を具備する衣服内冷却用送風機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点>
モータと羽根車との連結に関して、本願発明は、「前記モータと前記羽根車との連結が、前記モータの回転軸に取り付けられた雄部材と前記羽根車の回転中心に設けられた雌部との嵌合と、前記雄部材と前記雌部との嵌合状態を維持する係止部材としてのネジと、によってなされ、前記雄部材と前記雌部とを締結する前記係止部材の螺合によって、前記雄部材と前記雌部との嵌合状態が維持された際、前記係止部材としてのネジの頭部が前記羽根車のボスに対して突出した状態となり、前記頭部を操作することによって工具無しで前記係止部材を締結できるようになされた」ものであるのに対し、引用発明は「モータ7」と「軸流ファン6」との具体的な連結構成が不明である点。
2 判断
(1) 相違点について
以下、<相違点>について検討する。
モータと送風機の羽根車の取付け構造において、メンテナンスのためにモータに対する羽根車の着脱を容易にすべく、羽根車のボスの回転中心に、モータの回転軸に取り付けられた部材を嵌合し、ボスから突出し、ねじ部を備えた係止部材を手指等で回すことにより、係止部材のねじ部を螺合して、モータの回転軸に羽根車を取り付ける点は、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、引用文献2の上記第4の2(1)~(5)の記載、引用文献3の上記第4の3(1)~(3)の記載参照)。
そして、上記引用文献2や引用文献3等に示されるように、羽根車を有する送風機において、メンテナンスをしやすいように、羽根車とモータの連結を着脱容易な構成にしようとすることは、自明の課題であり、引用発明の「風発生装置2」においても内在する課題であると認められる。してみると、引用発明において、当該課題を解決するために、引用発明の「モータ7」と「軸流ファン6」の連結構成として、上記周知の技術事項を採用して、「モータ7」と「軸流ファン6」との連結を、「モータ7」の軸に取り付けられた部材と「軸流ファン6」のボスの回転中心とを嵌合させて行うとともに、この嵌合を、ボスから突出し、手指等で回すことができる係止部材のねじ部の螺合により維持することは、当業者が容易に想到し得るものである。その際に、「モータ7」の軸に取り付けられた部材とボスの回転中心とを嵌合させるにあたって、「モータ7」の軸に取り付けられた部材を雄部材とし、「軸流ファン6」のボスの回転中心を雌部とすることは、引用文献2の径大部10及び嵌合筒部23や、引用文献3のスリーブ3及びボス6の関係にもみられるように、格別の困難性があるものではない。
以上を踏まえると、引用発明において、上記周知の技術事項を適用し、本願発明の前記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
(2) 本願発明の作用効果について
本願発明の作用効果は、引用発明及び上記周知の技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。
(3) 審判請求人の主張について
審判請求人は、令和6年5月13日に提出した意見書の【意見の内容】2.において、「即ち、換気扇や扇風機において、メンテナンスをしやすいように、羽根車とモータの連結を着脱容易な構成にしようとすることは自明の課題かもしれませんが、送風機付衣服に用いられる送風機において、メンテナンスをしやすいように、羽根車とモータの連結を着脱容易な構成にしようとすることは必ずしも自明の課題とは言い得ず、引用発明1において内在する課題であると直ちに認めることはできない筈です。」と主張している。
しかしながら、引用発明は、引用文献1の段落0002や0003(上記第4の1(1)ア)を参照すると、鉄工所や夏の屋外の工事現場のような、高温環境下で作業する場合に着用される冷却衣服に取り付けられる風発生装置であることから、屋外等の様々な環境下で着用されるものであるといえる。このような場合、風発生装置の軸流ファンに、粉塵や塵埃などの汚れが付着することは明らかであり、メンテナンスの必要性は当然生じ得る課題である。また、冷却衣服に取り付けられる風発生装置を使い捨てユニットとするか、メンテナンスをしながら継続して使用可能なユニットとするかは、冷却衣服の使用者が求めるコストや製品寿命等に応じて選択されるものであり、低コストに長期間使用したい一般の使用者を考慮すると、風発生装置の軸流ファンのメンテナンスをしながら継続して使用可能なユニットとすることは、普通に想到し得たことである。してみると、引用発明の風発生装置においても、メンテナンスをしやすいように、羽根車とモータの連結を着脱容易な構成にしようとする課題は、内在するものといえる。
したがって、審判請求人の上記主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、この出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-004167