特許拒絶査定不服審判
2023-003975
1,1-二活性化ビニル化合物生成物を含有する複数層硬化性組成物および関連方法
- 審判番号
- 2023-003975
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-161014
- 請求日
- 2023年03月08日
- 審決日
- 2025年02月26日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】山本 秀策
- 【請求人代理人】森下 夏樹
- 審判長/審判官
- 審判長 関根 裕
- 審判官 安藤 倫世
- 審判官 瀬下 浩一
- 分類
- P18 .121-WY (C09D) / P18 .537-WY (C09D) / P18 .161-WY (C09D) / P18 .57 -WY (C09D) / P18 .572-WY (C09D) / P18 .575-WY (C09D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条の2、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-161014「1,1-二活性化ビニル化合物生成物を含有する複数層硬化性組成物および関連方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 1月28日出願公開、特開2021- 8623、請求項の数(23)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
この出願は、2017年(平成29年)7月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年7月26日 (US)米国 2016年8月9日 (US)米国 2017年2月6日 (US)米国)を国際出願日とする特願2019-503710号の一部を令和2年9月25日に新たな特許出願としたものであって、当該特許出願と同日に上申書が提出され、令和3年8月11日付けで拒絶理由が通知され、同年11月8日に意見書及び手続補正書が提出され、令和4年3月30日付けで拒絶理由が通知され、同年7月1日に意見書が提出され、同年11月2日付けで拒絶査定(謄本送達は11月8日)がされ、令和5年3月8日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 原査定の概要
原査定(令和4年11月2日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
1 (進歩性)本願請求項1-6、9-11、15、17-18、22-23に係る発明は、その優先日願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物(引用文献5~8)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献5:特表2015-517973号公報
引用文献6:国際公開第2013/140893号
引用文献7:特開2007-084730号公報
引用文献8:国際公開第2006/104094号
また、原査定において、原査定の理由以外に新たに発見した拒絶の理由として以下の理由が挙げられている。
2 (明確性要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
本願の、ジアルキルメチレンマロネート等の複数官能性形態のものも、メチレンマロネートとポリオール等との重合生成物といえるから、本願発明1等の「重合反応生成物」とは、硬化前後で重合したもののみを意味するのか、前記ジアルキルメチレンマロネート等の複数官能性形態のもののように、硬化前のコーティング組成物に、重合反応前のものとして存在していたものも含むのかが明瞭でない。
3 (拡大先願)本願発明は、その優先日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた下記の日本語特許出願(先願9)の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)。
先願9:特願2018-557366号(国際公開2017/210415号、特表2019-518104号公報)
第3 令和5年3月8日にされた手続補正について
令和5年3月8日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)が適法に行われたものであるか、以下検討する。
本件補正は、令和3年11月8日に提出された手続補正書により補正された本件補正前の請求項1の「コーティング組成物」について、「ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、ポリカルバメート、またはそれらの任意の組合せ、および、硬化した場合、ジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、またはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態の重合反応生成物」に加え、「前記ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、ポリカルバメート、またはそれらの任意の組合せとジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、またはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組み合わせとのマイケル付加反応生成物」を含むことを特定するものであり、本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)における、段落【0021】の記載に基づくものであるから、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであって、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。
そして、下記の第4から第8までに示すように、本件補正後の請求項1に係る発明は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する(いわゆる独立特許要件を満たす)ものである。
以上のとおりであるから、本件補正は適法に行われたものである。
第4 本願発明
本願の請求項1~23に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明23」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~23に記載された事項により特定される次のとおりの発明である。
「 【請求項1】
コーティング組成物であって、ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、ポリカルバメート、またはそれらの任意の組合せ、および、硬化した場合、ジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、またはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態の重合反応生成物、および前記ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、ポリカルバメート、またはそれらの任意の組合せとジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、またはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組み合わせとのマイケル付加反応生成物を含む、コーティング組成物。
【請求項2】
前記コーティング組成物が、硬化した場合、ジエチルメチレンマロネートおよびジエチルメチレンマロネートの複数官能性形態の重合反応生成物を含み、ここで、前記ジエチルメチレンマロネートの複数官能性形態が、ジエチルメチレンマロネートおよび少なくとも1つのポリオールのエステル交換付加物を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記ジエチルメチレンマロネートおよび少なくとも1つのポリオールのエステル交換付加物が、ジエチルメチレンマロネートおよびジオールのエステル交換付加物を含む、請求項2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記ジオールが、1,5-ペンタンジオールおよび/または1,6-ヘキサンジオールを含む、請求項3に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
活性化剤化合物をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記活性化剤化合物が、第三級アミン化合物を含む、請求項5に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記活性化剤化合物が、2-(ジメチルアミノ)エタノールおよび/または1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを含む、請求項6に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記活性化剤化合物が、イオン性液体を含む、請求項5に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記コーティング組成物が、500℃未満の温度で加熱されると硬化する、請求項1~8のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
前記コーティング組成物が、メラミン樹脂を含まず、かつホルムアルデヒド縮合物を含まない、請求項9に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
前記コーティング組成物が、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ尿素樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリチオエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリカルバメート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、もしくはアミノプラスト樹脂、またはそれらの任意の組合せを含む熱硬化性樹脂を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
前記コーティング組成物が、エクステンダーをさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
前記エクステンダーが、無水物含有ビニルポリマーを含む、請求項12に記載のコーティング組成物。
【請求項14】
前記無水物含有ビニルポリマーが、無水マレイン酸モノマー残基を含む、請求項13に記載のコーティング組成物。
【請求項15】
物品の表面にわたって堆積された請求項1~14のいずれか1項に記載のコーティング組成物を含む、物品。
【請求項16】
前記物品が金属基材である、請求項15に記載の物品。
【請求項17】
前記物品が非金属基材である、請求項15に記載の物品。
【請求項18】
前記非金属基材が、ポリマー性である、請求項17に記載の物品。
【請求項19】
前記物品が、自動車部品である、請求項15~18のいずれか1項に記載の物品。
【請求項20】
前記物品が、電着硬化性組成物層を含みそして前記コーティング組成物が、前記電着硬化性組成物層にわたって塗布される、請求項15のいずれか1項に記載の物品。
【請求項21】
前記物品が、車両部品または自立構造体を含む、請求項20に記載の物品。
【請求項22】
請求項1~14のいずれか1項に記載のコーティング組成物を硬化することによって生成されるコーティング層。
【請求項23】
硬化性組成物を基材に塗布するための方法であって、
基材の少なくとも一部にわたって請求項1~14のいずれか1項に記載の硬化性組成物を塗布すること、および
前記硬化性組成物を硬化して、コーティング層を形成すること
を含む、方法。」
第5 本願発明の優先権主張及び基準日について
前記第1における特願2019-503710号(以下、「原出願」という。)は2016年7月26日を出願日とする米国特許仮出願62/366781号(以下、「本願基礎出願」という。)を優先権主張の基礎の1つとするものである。
ここで、本願発明1及び本願発明1を引用する本願発明2~23で特定される事項は、本願基礎出願に最初に添付した明細書にも記載されており、特に、前記第2の本願発明1のコーティング組成物が、さらに、前記ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、ポリカルバメート、またはそれらの任意の組合せとジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、またはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組み合わせとのマイケル付加反応生成物を含むことについては、本願基礎出願に最初に添付した明細書の段落[0019]に、1,1-二活性化ビニル化合物および/またはその複数可能性形態は、多官能性ポリマー樹脂または多官能性モノマー化合物を架橋し、硬化させる、マイケル付加反応および重合性反応の両方を含む複数の硬化機序を提供することができるとの趣旨のことが記載されているから、本願発明1及び本願発明1を引用する本願発明2~23について、優先権主張の効果が認められる。
したがって、後記第6の進歩性及び後記第8の拡大先願の判断の基準日は、前記本願基礎出願の出願日である2016年7月26日である。
第6 前記第2 1(進歩性)について
1 引用文献に記載された事項
(1)引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された前記引用文献5には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
式:
【化1】
[図:0001419664000001.jpg]
(式中、
R1およびR2の各例は、独立してC1-C15アルキル、C2-C15アルケニル、ハロ-(C1-C15アルキル)、C3-C6シクロアルキル、ハロ-(C3-C6シクロアルキル)、ヘテロシクリル、ヘテロシクリル-(C1-C15アルキル)、アリール、アリール-(C1-C15アルキル)、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール-(C1-C15アルキル)またはアルコキシ-(C1-15アルキル)であり、これらの各々は、場合によりC1-C15アルキル、ハロ-(C1-C15アルキル)、C3-C6シクロアルキル、ハロ-(C3-C6シクロアルキル)、ヘテロシクリル、ヘテロシクリル-(C1-C15アルキル)、アリール、アリール-(C1-C15アルキル)、ヘテロアリール、C1-C15アルコキシ、C1-C15アルキルチオ、ヒドロキシル、ニトロ、アジド、シアノ、アシルオキシ、カルボキシまたはエステルで置換されてよい;
[A]は、-(CRARB)n-、-(CRARB)n-O(C=O)-(CH2)1-15-(C=O)O-(CRARB)n-、-(CH2)n-[CY]-(CH2)n、ポリブタジエニル連結基、ポリエチレングリコール連結基、ポリエーテル連結基、ポリウレタン連結基、エポキシ連結基、ポリアクリル酸連結基またはポリカーボネート連結基を表す;
RAもしくはRBの各例は、独立してH、C1-C15アルキル、C2-C15アルケニル、式:
【化2】
[図:0001419664000002.jpg]
または
【化3】
[図:0001419664000003.jpg]
(式中、
Lは、アルキレン、アルケニレン、ハロアルキレン、シクロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクリレン、ヘテロシクリルアルキレン、アリール-アルキレン、ヘテロアリーレンもしくはヘテロアリール-(アルキレン)またはアルコキシ-(アルキレン)からなる群から選択される連結基であり、これらの各々は、場合により分枝状であってよく、およびこれらの各々は、場合によりアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ハロシクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリル-(アルキル)、アリール、アリール-(アルキル)、ヘテロアリール、C1-C15アルコキシ、C1-C15アルキルチオ、ヒドロキシル、ニトロ、アジド、シアノ、アシルオキシ、カルボキシ、エステルで置換されてよく、これらの各々は、場合により分枝状であってよい;
R3は、独立して上記のR2に規定した群から選択される;および
R4は、アルキル、アルケニル、ハロアルキル、シクロアルキル、ハロシクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル)、アリール-(アルキル)、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール-(アルキル)またはアルコキシ-(アルキル)であり、これらの各々は、場合により分枝状であってよく、これらの各々は、場合によりアルキル、ハロアルキル)、シクロアルキル、ハロシクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリル-(アルキル)、アリール、アリール-(アルキル)、ヘテロアリール、C1-C15アルコキシ、C1-C15アルキルチオ、ヒドロキシル、ニトロ、アジド、シアノ、アシルオキシ、カルボキシ、エステルで置換されてよく、これらの各々は、場合により分枝状であってよい。)によって表される成分である;
[CY]は、アルキル、アルケニル、ハロアルキル、シクロアルキル、ハロシクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリル-(アルキル)、アリール-(アルキル)、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール-(アルキル)またはアルコキシ-(アルキル)基を表す、
nの各例は、独立して1から25の整数である;および
Qの各例は、-O-もしくは直接結合を表す。)を有する多官能性モノマー。
・・・
【請求項33】
請求項1から15または32のいずれか一項に記載の多官能性モノマーを含み、接着剤、コーティング組成物、インクおよびシーラントからなる群の少なくとも1つである、重合性組成物。」
「【0067】
合成方法
本発明は、多官能性メチレンマロネート(MMM)モノマーを合成するための2つの経路を提供する。特定の実施形態では、本方法、特に、(a)は、代替生成物の形成を有意に減らす、もしくは取り除く、(b)は、MMMモノマーの望ましくない消費を有意に減らす、もしくは取り除く、および(c)は、反応ならびにこの後の回収および貯蔵段階におけるMMMモノマーの分解を減らす、もしくは取り除く。さらに、多官能性メチレンβ-ケトエステル(MBK)モノマーを合成するための経路を開示する。MMMおよびMBKは、集合的に「多官能性モノマー」と呼ばれる。
【0068】
概して、多官能性モノマーを合成するために本明細書に開示した化学反応は、複数の高反応性二重結合をこの後の反応のために1つの分子に提供するという問題を解決する。詳細には、例えば架橋結合もしくは側鎖重合をもたらす重合のための、場合によりさらに特異的骨格官能基を組み込む2つ以上のメチレンマロネートもしくはβ-ケトエステル官能基を組み込む工程は:
1.耐溶剤性もしくは適合性を改良できる;
2.耐熱性を改良もしくは低下させられる;
3.特定の性能特性、例えば靱性、耐衝撃性、所定の耐薬品性、光学特性、特性の組み合わせなどを組み込める;
4.安価な骨格原料を組み込める;
5.硬化速度および特性構築を増加および/または加速させられる;および
6.接着を増加もしくは減少させられる。
【0069】
そこで、形成できる製品は、接着剤、コーティング、シーラント、インクおよび結合剤から光学ポリマー、工学ポリマー、複合体、反応射出成形ポリマーおよび水膨潤性ポリマーまで広範囲に及んでいる。さらに、製造される特定の製品には、組立物品、剛性および柔軟性積層板、印刷物および印刷面、複合品、水および溶剤吸収性プラスチックおよびデバイス、織物、フィルム、シート品、構造材料などが含まれる。
【0070】
さらに、組み込まれたメチレン二重結合との反応は、例えばMichael付加反応による:
1.色素を組み込むための反応;
2.薬剤を組み込むための反応;
3.抗真菌薬もしくは類似物を組み込むための反応;
4.触媒または他の官能基、例えば酸性基を組み込むための反応;および
5.キレート剤もしくは凝集剤を組み込むための反応などの追加の化学的官能基を組み込む工程を促進できる。」
「【0153】
一般的方法。エステル交換反応
エステル交換工程によって多官能性モノマー(例、メチレンマロネートおよびメチレンβ-ケトエステル)を提供する研究を実施した。多官能性モノマーは、物理的特性を強化するために架橋結合する、およびより広範な適用性のために該分子を官能化する機会を提供する。
【0154】
一般的実験手順を以下に略述する:
1)例えば機能性換気フード内で作業することなどの合理的な安全上に関する注意に従い、安全性データシート勧告を精査して従い、液体窒素を用いて作業する場合は適切に注意を払い、個人保護装置を使用し、高温ガラス器具を取り扱う場合は細心の注意を払う。
【0155】
2)他に特に規定されない限り、試験条件および測定条件は以下の通りである:
a.手順1:
i.約55℃
ii.約50トルの真空
b.手順2:
i.約70℃
ii.約100トルの真空
【0156】
3)手順:
a.適切なサイズの丸底フラスコを洗浄して乾燥させる。
b.触媒(例、Novazym 435)を20重量%の容積の出発物質(例、ジエチルメチレンマロネートDEMM);適切な量の出発物質(例、DEMM)および適切な量のOH含有連結基(例、ジオール、ポリオール、ポリマー樹脂など)を含むフラスコに加える。ジオールについては、出発物質は、適正な化学量論的量+所望の過剰を保証するためにジオールの5倍モル比で加える。
c.適切な撹拌機構、真空設定および収集装置を提供する。
d.反応容器を真空下および緩徐に撹拌しながら加熱する。真空を利用して副生成物として生成されたアルコールを取り出す。
e.反応の進行を監視するために適切な時間間隔(例、4時間、6時間、8時間)で反応サンプルを収集する。適切な安定剤を用いて反応複合体を安定化させる(サンプルを最初にH-NMRおよびTLCを用いて分析して生成物の形成を証明した。)。
f.反応複合体は、触媒をろ過しながら非反応性ボトル(例、HDPE)へ移す。
g.適切な分離技術を使用して反応生成物(例、多官能性モノマー)を過剰な出発物質(例、DEMM)から単離して除去する。
【0157】
4)結果および分析:
他に特に規定されない限り、以下で考察する反応におけるジエチルメチレンマロネート(DEMM)出発物質は、不純物として少量のジエチルマロネート(DEM)を含有していた。DEMおよびDEMMはどちらもエステル交換反応に関与できる。マロネートCH2は、1H NMRにおいて3.3ppmで、および13C NMRスペクトルでは41ppmで出現する。該マロネートのためのカルボニルは、166ppmで出現する。これらのピークは、これらの混合物の全スペクトル内で見いだすことができる。
【0158】
DEMM:
【0159】
【化24】
[図:0001419664000004.jpg]
【0160】
DEM:
【0161】
【化25】
[図:0001419664000005.jpg]
【0162】
NMR分析のために、サンプルは、300MHzでの1H NMR分光法(Bruker社)にかける前に重水素化クロロホルム中で希釈した。より高濃度のサンプルもまた重水素化クロロホルム中の0.01M Cr(acac)3の溶液中で調製し、定量的13C NMR分光法によって75MHzで分析した。
【0163】
[実施例1]
DEMMおよび1,6-ヘキサンジオール(HD)のエステル交換による反応
本明細書に開示した反応スキームは、DEMMおよび1,6-ヘキサンジオールを用いて実施した。以下のモノマーを入手した。
【0164】
【化26】
[図:0001419664000006.jpg]
【0165】
NMR:1H NMRスペクトルは、図1に示した。ピーク同定を注記した。遊離1,6-ヘキサンジオールは、3.6ppmでピークを示す。NMRスペクトルは、該ヘキサンジオールの本質的に完全な消費を示している。2.5ppmでの幅広い特徴は、反応中の二重結合の一部の消失に起因する。13C NMRスペクトル(下方)およびDEPT-135スペクトル(上方)は、図2に示した。遊離1,6-ヘキサンジオールは、63ppmでピークを有するであろう。該エステルは、65ppmで明白に示されている。NMRスペクトルは提案された構造を支持するが、拡張構造(つまり、より高次のオリゴマー)を除外することはできない。
【0166】
ESI/MS:1%ギ酸を含むアセトニトリル中のDEMM-1,6-ヘキサンジオール多官能性(モノマー)の1:20000希釈液をエレクトロスプレー源中に直接注入した。プロトン化イオンの質量およびDEMM-1,6-ヘキサンジオール多官能性合成生成物についてのこれらの対応する相対強度は、図14および15に示した。図14および15は、同一サンプルであるが、走査した質量範囲が相違する。存在する主要イオンおよびこれらのイオンの元素式は表1に列挙した。」
(2)引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された前記引用文献6には、次の事項が記載されている。
「[請求項1]
ノボラック型エポキシ樹脂及びビスフェノール型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ樹脂(a1-1)と、酸基及び重合性不飽和基を有する単量体(a1-2)とを反応させて得られるビニルエステル樹脂(a1)が、親水性基を有する重合体(a2)によって水性媒体(B)中に分散されたものであることを特徴とする水性樹脂組成物。
・・・
[請求項5]
さらに架橋剤(C)としてポリアミンを含むものである請求項1に記載の水性樹脂組成物。
[請求項6]
請求項5に記載の水性樹脂組成物を70℃~150℃で加熱することによって、前記ビニルエステル樹脂(a1)と、前記ポリアミンとをマイケル付加反応させて得られる硬化物。」
「[0014]
本発明の水性樹脂組成物は、比較的低温で加熱した場合であっても耐水性及び耐溶剤性に優れた塗膜を形成できることから、例えばコーティング剤及び接着剤をはじめとする様々な用途で使用することができる。」
「[0121]
前記硬化剤は、前記硬化剤が有するアミノ基の活性水素原子に対する、前記ビニルエステル樹脂(a1)が有する重合性不飽和基の当量割合[重合性不飽和基/前記硬化剤が有するアミノ基の活性水素原子]が、100/80~100/300の範囲で使用することが、マイケル付加反応によって耐水性や耐溶剤性に優れた塗膜等の硬化物を形成するうえで好ましい。」
(3)引用文献7について
原査定の拒絶の理由に引用された前記引用文献7には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
(A)成分として、(a)ジイソシアネート化合物に(b)末端水酸基を有し炭素間不飽和結合と隣接カルボニル基を有する化合物と(c)活性水素基を有す脂肪酸及び(d)数平均分子量が3,000~6,000であるポリアルキレングリコールエーテルジオールを反応させた樹脂であって、中和処理後のウレア反応及びマイケル付加反応によるアミン残基を含む水系ポリアミン樹脂、並びに(B)成分として(A)成分に分散可能なポリイソシアネート化合物を含有することを特徴とする、柔軟性に優れた水系ポリウレタン樹脂被覆剤組成物。」
「【0020】
本発明では、水系ポリウレタン樹脂組成物におけるポリアミンの使用において、末端水酸基を有するα,β-不飽和カルボニル化合物とのマイケル付加反応を利用して、一級ア
ミンを二級アミンに変えてイソシアネート基との反応を制御し、また、特定のポリアルキレングリコールエーテルジオールを使用することなどにより、水系ポリウレタン樹脂組成物において、常温硬化でもジオール化合物を用いた場合よりも、ゲル化時間が延伸され、外観が良好であり、高強度で耐水性及び耐溶剤性などが優れて柔軟性も向上された被覆を形成できる。
さらに、ソフトフィール性を充分に顕現して高機能性を備えることができ、自動車のステアリングやシフトレバー或いはパソコンのキーボードやマウス及び携帯電話のタッチパネルなど、使用者の手のひらや指先に触れて使用される塗装製品の樹脂塗料として有効に利用することができる。」
(4)引用文献8について
原査定の拒絶の理由に引用された前記引用文献8には、次の事項が記載されている。
「請求の範囲
[1](A)成分として、(a)ジイソシアネート化合物に(b)末端水酸基を有し炭素間不飽和結合と隣接カルボニル基を有する化合物と(c)活性水素基を有す脂肪酸及び(d)ポリオール化合物を反応させた樹脂であって、中和処理後のウレア反応及びマイケル付加反応によるアミン残基を含む水系ポリアミン樹脂、並びに(B)成分として(A)成分に分散可能なポリイソシアネート化合物を含有することを特徴とする、水性ポリウレタン樹脂組成物。
・・・
[3]請求項1又は請求項2に記載された水性ポリウレタン樹脂組成物が二液型塗料組成物又は二液型接着剤組成物であることを特徴とする、水性ポリウレタン樹脂組成物。」
「[0012]
本発明では、水性ポリウレタン樹脂組成物におけるポリアミンの使用において、末端水酸基を有するα,β-不飽和カルボニル化合物とのマイケル付加反応を利用して、一級アミンを二級アミンに変えてイソシアネート基との反応を制御することなどにより、常温硬化でもジオール化合物を用いた場合よりも、ゲル化時間が延伸され、外観が良好であり、高強度で耐水性及び耐溶剤性などの優れた被覆を形成でき、有用で卓越したポリウレタン樹脂塗料又は接着剤として利用することができる。」
2 引用文献5に記載された発明
引用文献5の実施例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる(【0163】及び【0164】参照)。
「DEMMおよび1,6-ヘキサンジオール(HD)のエステル交換による反応で得た以下のDEMM-1,6-ヘキサンジオール多官能性モノマー。
[図:0001419664000007.jpg]
」
3 判断
(1)本願発明1
ア 引用発明との対比
引用発明の「DEMM」は、ジエチルメチレンマロネートであるから(【0157】参照)、本願発明1の「ジアルキルメチレンマロネート」に相当する。
引用発明の「1,6-ヘキサンジオール(HD)」は本願発明1の「ポリオール」に相当する。
引用発明の「DEMMおよび1,6-ヘキサンジオール(HD)のエステル交換による反応で得た以下のDEMM-1,6-ヘキサンジオール多官能性モノマー」は、本願発明1の「ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、ポリカルバメート、またはそれらの任意の組合せ、および、硬化した場合、ジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、またはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態の」「反応生成物」に相当する。
そうすると、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点及び相違点を認めることができる。
(一致点)
「ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、ポリカルバメート、またはそれらの任意の組合せ、および、硬化した場合、ジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、またはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態の反応生成物。」
(相違点1-1)
反応生成物が、本願発明1では重合反応生成物であるのに対し、引用発明ではエステル交換による反応で得たモノマーである点。
(相違点1-2)
本願発明1は、さらに、ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、ポリカルバメート、またはそれらの任意の組合せとジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、またはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組み合わせとのマイケル付加反応生成物を含む、コーティング組成物であるのに対し、引用発明はそのような特定がない点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、まず、相違点1-2について検討する。
本願発明1は、本願明細書段落【0021】を参照すると、ジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、またはジアリールメチレンマロネート等(すなわち、1,1-二活性化ビニル化合物)におけるビニル基が、ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、および/もしくはポリカルバメート樹脂、または他の化合物(すなわち、多官能性ポリマー樹脂または多官能性モノマー化合物)におけるヒドロキシル基、アミン基、メルカプト基、および/またはカルバメート基とマイケル付加機序を介して反応し、それによって安定な共有結合連結を形成し、さらに、1,1-二活性化ビニル化合物が自己重合反応を受け、それによって重合反応生成物を形成することができ、その重合反応生成物は、ヒドロキシル基、アミン基、メルカプト基、および/またはカルバメート基とのマイケル付加反応によって形成された連結を介して多官能性ポリマー樹脂または多官能性モノマー化合物に共有結合によって結合するものである。
これに対し、引用発明を認定した引用文献5には、引用発明の多官能性モノマーを重合させてコーティングを形成できること(【請求項33】、【0069】参照)、ポリマーのメチレン二重結合とのMichael付加反応により、色素、薬剤、抗真菌薬もしくは類似物、触媒または他の官能基、例えば酸性基を組み込むこと(【0070】参照)が記載されているが、コーティング層を形成するためのポリオール、ポリアミン、ポリチオール、ポリカルバメートとのマイケル付加反応については記載されていない。これら引用文献5の重合反応やMichael付加反応は、前記した本願発明1の、マイケル付加機序を介して反応して安定な共有結合連結を形成し、さらに、自己重合反応を受けて重合反応生成物を形成し、その重合反応生成物がマイケル付加反応によって形成された連結を介して多官能性ポリマー樹脂または多官能性モノマー化合物に共有結合によって結合することによりコーティング層を形成するものものとは異なるから、引用発明において、さらに、ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、ポリカルバメート、またはそれらの任意の組合せとジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、またはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組み合わせとのマイケル付加反応生成物を含むものとする動機付けがあるとはいえない。
また、引用文献7及び8には、(A)成分として、(a)ジイソシアネート化合物に(b)末端水酸基を有し炭素間不飽和結合と隣接カルボニル基を有する化合物と(c)活性水素基を有す脂肪酸及び(d)ポリオール化合物を反応させた樹脂であって、中和処理後のウレア反応及びマイケル付加反応によるアミン残基を含む水系ポリアミン樹脂、並びに(B)成分として(A)成分に分散可能なポリイソシアネート化合物を含有する水系ポリウレタン樹脂被覆剤組成物において、水系のポリウレタン樹脂被覆剤組成物におけるポリアミンの使用に際して、α,β-不飽和カルボニル化合物とのマイケル付加反応を利用して、一級アミンを二級アミンに変えてイソシアネート基との反応を制御することが記載されている(引用文献7の【請求項1】及び【0011】、引用文献8の特許請求の範囲[8]及び[0005]参照)。
しかし、引用文献7及び8に記載されるのは、水系のポリウレタン樹脂被覆剤組成物におけるポリアミンの使用に際して、α,β-不飽和カルボニル化合物とのマイケル付加反応を利用して、一級アミンを二級アミンに変えてイソシアネート基との反応を制御することであり、一級アミンを二級アミンに変えてイソシアネート基との反応を制御しない引用発明において、引用文献7及び8のようにマイケル付加反応を利用して、マイケル付加反応生成物を含むものとする動機付けがあるとはいえない。
さらに、引用文献6には、ノボラック型エポキシ樹脂及びビスフェノール型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ樹脂(a1-1)と、酸基及び重合性不飽和基を有する単量体(a1-2)とを反応させて得られるビニルエステル樹脂(a1)と、ポリアミンとをマイケル付加反応させて得られる硬化物が、マイケル付加反応によって耐水性や耐溶剤性に優れた塗膜等の硬化物を形成することが記載されているが([請求項1]、[請求項6]及び[0121]参照)、引用発明のジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、またはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態を重合反応生成物は、引用文献6に記載のようなビニルエステル樹脂ではないから、引用発明において、引用文献6のようなマイケル付加反応を利用して、マイケル付加反応生成物を含むものとする動機付けがあるとはいえない。
そうすると、上記相違点1-2に係る本願発明1の発明特定事項は、当業者が容易に想到し得るものであるということはできない。
したがって、本願発明1は、相違点1-1について検討するまでもなく、引用発明及び引用文献6~8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本願発明2~23について
本願発明2~23は、本願発明1の発明特定事項のすべてを備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明及び引用文献6~8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)小括
以上のとおり、本願発明1~23は、引用文献5に記載された発明及び引用文献6~8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第7 前記第2 2(明確性要件)について
本願発明1において、「硬化した場合・・・ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、またはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態の重合反応生成物」と特定されている以上、その「重合反応生成物」は重合反応により硬化した後のものであることは明確であり、「ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、またはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態」自体は、硬化していないものであるから、「硬化した場合・・・重合反応生成物」ではないことも明らかである。そうすると、本願発明1のコーティング組成物は重合反応生成物として何が含まれるのかが明確であるといえるから、本願発明1及び本願発明1を引用する本願発明2~23も明確である。
第8 前記第2 3(拡大先願)について
1 先願9の明細書に記載された事項
(1)先願9の拡大先願の判断の基準日
先願9の優先権主張の基礎となる4つの出願のうち、米国特許仮出願62/345334号(以下、「先願優先権基礎出願」という。)のみが本件出願の優先日である2016年7月26日以前の2016年6月3日を出願日とする特許出願である。
そして、先願9の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲、又は図面(以下、「先願明細書等」という。)と、先願優先権基礎出願の出願日における出願の明細書、特許請求の範囲、又は図面(以下、「先願優先権基礎出願の明細書等」という。)とを比較すると、両者で共通する記載があるのは、先願明細書等の対応する記載箇所で示すと、後記のとおりである。
【0002】、【0003】、【0005】、【0022】~【0032】、【0034】【0036】、【0038】~【0043】、【0045】、【0046】、【0051】の一部(先願公開公報第26ページ第30行まで)、【0052】、【0057】~【0075】、【0077】、【0081】~【0090】
ここで、先願明細書等と先願優先権基礎出願の明細書等に共通して記載された事項から、先願に記載された発明を認定することにより、特許法第29条の2の規定の適用に関しては、先願9は、先願優先権基礎出願の出願日である、2016年6月3日に出願がなされたものとして扱う。
(2)先願9に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された前記先願9の明細書には、次の事項が記載されている。
「【0051】
本明細書に開示するポリエステルマクロマー組成物は、コーティングを調製するために使用することができる。かかる構造体は、硬化及び/または架橋されてもよい。架橋された組成物は、マクロマー鎖から懸垂するアルケン基を通して架橋されてもよい。架橋は、近傍のマクロマー鎖のアルケン基間の直接結合であってもよい。マクロマー鎖は、プレポリマーまたはポリマー鎖に含まれてもよい。マクロマー鎖は、アニオンまたは遊離基重合によって重合する不飽和を有する任意の化合物を通して架橋されてもよい。ポリエステルマクロマー鎖は、1,1-ジエステルアルケンを通して架橋されてもよく、該架橋は、1,1-ジエステルアルケンの残基を含む。ポリエステルマクロマー鎖は、多官能性モノマーを通して架橋されてもよく、該架橋は、多官能性モノマーの残基を含む。鎖間の架橋は、式16によって図示し得る:
【化16】
[図:0001419664000008.jpg]
式中、Fは、出現する度に別々に、直接結合、アニオン重合または遊離基重合によって不飽和基と重合する化合物の残基であり得る。Fは、出現する度に別々に、直接結合、1,1-ジエステル-1-アルケンまたは多官能性モノマーの残基であり得る。点線は、重合したマクロマーの骨格を指す。ポリエステルマクロマーを含有する架橋組成物の架橋密度は、組成物の所望の特性をもたらすような任意の密度であり得る。」
「【0086】
成分及び生成物
ペンタンジオール
DEM マロン酸ジエチル
DEMM メチレンマロン酸ジエチル(ジエチル1-メチレン-1,1-ジカルボキシレート)
MeHQ モノメチルエーテルヒドロキノン
MSA メタンスルホン酸
触媒 CALBリパーゼ酵素
・・・
【0088】
実施例1-ペンタンジオール及びDEMMからの二官能性モノマーの調製
丸底フラスコに、DEMM(172g、1mol)、ペンタンジオール(26g、0.25mol)、及びDEMMに基づいて5重量パーセントのCALBリパーゼ酵素(8.6g)(CLEAから購入)を入れる。この丸底フラスコを45℃に予熱したロータリーエバポレーターに設置し、150mmHgの圧力をかける。1時間後に、GCMS及びHNMRによって反応の完了を調べる。ペンタンジオールが消費されていれば、反応は完了している。生成物混合物は、GCMS分析によれば、二官能性モノマー及びDEMMの約65/35混合物である。反応混合物をろ過して酵素を除去する。機械式撹拌器、温度計、及び冷却器を備えた三つ口の丸底フラスコに、形成した反応混合物を入れる。反応混合物を、65℃及び<0.800mmHgの圧力で、2時間または二官能性モノマーの量が溶液の65重量パーセントより大きくなるまで蒸留する。典型的な生成物の組成は、67%のDEMM-ペンタンジオール多官能性モノマー、及び33%のDEMMである。
【0089】
実施例2-ペンタンジオールで末端処理したマロン酸ジエチル
丸底フラスコに、ペンタンジオール(260g 2.5mol)、DEM(159g、1mol)、及びペンタンジオールに基づいて7重量パーセントのCALBリパーゼ酵素(18g)(CLEAから購入)を入れる。この丸底フラスコを45℃に予熱したロータリーエバポレーターに設置し、150mmHgの圧力をかける。1時間後に、GCMS及びHNMRによって反応の完了を調べる。DEMが消費されていれば、反応は完了している。反応混合物をろ過して酵素を除去する。機械式撹拌器、温度計、及び冷却器を備えた三つ口の丸底フラスコに、反応混合物を入れ、それを、100℃及び0.800mmHg未満で、2時間またはペンタンジオールの量が反応混合物の約10重量パーセントになるまで(GCMSで判定した場合)蒸留する。典型的な生成物の組成は、約90重量パーセントのペンタンジオール末端処理マロン酸ジエチル、及び約10重量パーセントのペンタンジオールである。
【0090】
実施例3-ポリエステルマクロマーの調製
丸底フラスコに、DEMM-ペンタンジオール二官能性モノマー(142g、0.4mol)及びペンタンジオール末端処理マロン酸ジエチル(27.6g 0.1mol)、メチレンマロン酸ジエチル、(70g、0.4mol)、ペンタンジオール(2.7g、0.025mol)、ならびにDEMM-ペンタンジオール二官能性モノマーに基づいて7重量パーセントのCALBリパーゼ酵素(10g)を入れる。この丸底フラスコを、45℃に予熱したロータリーエバポレーターに150mmHgの圧力で設置する。1時間後に、GCMSによって反応の完了を調べる(ペンタンジオール-二官能性モノマーの消失)。反応混合物をろ過して酵素を除去する。得られた溶液をGPCによって検査する。生成物の組成は、概して以下から構成される:60~75重量パーセントのポリエステルマクロマー、20~30重量パーセントのペンタンジオール-二官能性モノマー、0~10重量パーセントのDEMM。100ppmのMEHQ及び10ppmのMSAを最終生成物に添加する。MSAは、1重量パーセントのMSA:DEMM溶液から正確に量り取る。反応は、この反応式によって図示される:
【化19】
[図:0001419664000009.jpg]
実施例4-ポリエステルマクロマーの調製
丸底フラスコに、DEMM-ペンタンジオール二官能性モノマー(142g、0.4mol)、メチレンマロン酸ジエチル、(70g、0.4mol)、ペンタンジオール(10.8g、0.10mol)、及びDEMM-ペンタンジオール二官能性モノマーに基づいて7重量パーセントのCALBリパーゼ酵素(10g)を入れる。この丸底フラスコを、45℃に予熱したロータリーエバポレーターに150mmHgの圧力で設置する。1時間後に、GCMSによって反応の完了を調べる(ペンタンジオール-二官能性モノマーの消失)。反応混合物をろ過して酵素を除去する。得られた溶液をGPCによって検査する。生成物の組成は、概して以下から構成される:60~75重量パーセントのポリエステルマクロマー、20~30重量パーセントのペンタンジオール-二官能性モノマー、0~10重量パーセントのDEMM。100ppmのMEHQ及び10ppmのMSAを最終生成物に添加する。MSAは、1重量パーセントのMSA DEMM溶液から正確に量り取る。反応は、この反応式によって図示される:
【化20】
[図:0001419664000010.jpg]
」
2 先願9の明細書に記載された発明
先願9の明細書の実施例4には「DEMM-ペンタンジオール二官能性モノマー、メチレンマロン酸ジエチル及びペンタンジオールを反応させて得た、ポリエステルマクロマー、ペンタンジオール-二官能性モノマー及びDEMMを含む組成物。」の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている。
3 判断
(1)本願発明1
ア 先願発明との対比
先願発明の「DEMM-ペンタンジオール二官能性モノマー」は、DEMMはメチレンマロン酸ジエチルであるから(【0086】参照)、本願発明1の「ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態」に相当する。
先願発明の「メチレンマロン酸ジエチル」及び「ペンタンジオール」は、それぞれ、本願発明1の「ジアルキルメチレンマロネート」及び「ポリオール」に相当する。
そうすると、本願発明1と先願発明との間には、次の一致点及び相違点を認めることができる。
(一致点)
「組成物であって、ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、ポリカルバメート、またはそれらの任意の組合せ、および、ジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、またはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態を含む、コーティング組成物。」
(相違点2)
本願発明1は、組成物がコーティング組成物であり、硬化した場合、ジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、またはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態の重合反応生成物、および前記ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、ポリカルバメート、またはそれらの任意の組合せとジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、またはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組み合わせとのマイケル付加反応生成物を含むのに対し、先願発明は、組成物がコーティング組成物であることが特定されておらず、硬化した場合、ジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、またはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態の重合反応生成物、および前記ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、ポリカルバメート、またはそれらの任意の組合せとジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、またはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組み合わせとのマイケル付加反応生成物を含まない点。
イ 相違点についての判断
前記相違点2に係るマイケル付加反応生成物について、先願9の【請求項1】には「a)1つ以上のジオール及び1つ以上のジエステルの残基の1本以上の鎖を含有する1つ以上のポリエステルマクロマーを含むポリエステルマクロマー組成物であって、前記1つ以上のジオール及び前記1つ以上のジエステルの残基が、前記鎖に沿って交互に存在し、前記ジエステルの一部分が1,1-ジエステル-1-アルケンであり、少なくとも1つの末端が、前記1,1-ジエステル-1アルケンの1つの残基を含み、1つ以上の末端が1つ以上のジオールの残基を含んでもよい、前記ポリエステルマクロマー組成物;ならびにb)ペンダント型マイケル付加反応供与基を有する1つ以上のポリマーを含む、組成物。」と記載され、同【0111】には「配合物は、アニオン重合及びマイケル付加反応を使用して硬化し得る。ベースコートの表面上に存在し、アクリルポリオールの鎖長にわたって点在するヒドロキシル基が、ポリオールに存在する反応性メチレン基とマイケル付加反応するので、架橋されたマトリックス中にポリオールが組み込まれる。」と記載されている。
しかしながら、これらの記載は、前記1の先願優先権基礎出願の明細書等には記載されていなかった事項であるから、これらの記載を根拠に、本願発明1が先願発明と同一であるとすることはできない。
そうすると、相違点2は、実質的な相違点であり、課題解決のための具体化手段における微差とはいえない。
したがって、本願発明1は、先願発明と同一であるとはいえないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。
(2)本願発明2~23について
本願発明2~23も、本願発明1の発明特定事項のすべてを備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、先願発明と同一であるとはいえないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。
(3)小括
以上のとおり、本願発明1~23は、先願9に記載された発明と同一であるとはいえないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。
第9 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由及び原査定の理由とともに挙げられた理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-003975