特許拒絶査定不服審判
2023-002898
統合されたスポットカラー及びプロセスカラーを用いたインクジェット印刷方法
- 審判番号
- 2023-002898
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-004079
- 請求日
- 2023年02月20日
- 審決日
- 2024年04月16日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エイブリィ・デニソン・コーポレイション
- 【請求人代理人】弁理士法人深見特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 殿川 雅也
- 審判官 藤本 義仁
- 審判官 嵯峨根 多美
- 分類
- P18 .121-Z (B41J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021- 4079「統合されたスポットカラー及びプロセスカラーを用いたインクジェット印刷方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 6月17日出願公開、特開2021- 91222〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)3月13日(パリ条約による優先権主張2016年3月17日(以下「優先日」という。)、米国)を国際出願日とする特願2018-548781号の一部を令和3年1月14日に新たな特許出願としたものであって、同年2月10日に手続補正書及び物件提出書が提出され、令和4年3月15日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年6月21日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年10月13日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされたのに対し、令和5年2月20日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同年4月3日に手続補正書(方式)が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項31に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和4年6月21日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項31に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項31】
基材上に印刷イメージを生成する方法であって、前記方法は、
カラーセットを提供するステップを含み、前記カラーセットは、
6つ以下のプロセスカラーと、
2つ以上のスポットカラーとを含み、前記プロセスカラーの数に対する前記スポットカラーの数の割合は、1:1よりも大きく、前記方法はさらに、
前記カラーセットを用いてイメージを印刷するステップとを含む、方法。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の理由は、この出願の請求項31に係る発明(本願発明に対応)は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された特表2012-525766号公報に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
第4 当審の判断
1 引用例
本願の優先日前の2012年(平成24年)10月22日に公報が発行され、原査定の拒絶の理由に引用された特表2012-525766号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審決で付した。)。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
m色のプロセスカラーとn色のスポットカラーで、合計でNの色を使用して、基体または物品に印刷イメージを形成する方法、ここでN>2、m>2、およびn>0であり、N、m、nは整数である。
…
【請求項29】
m のプロセスカラーインクステーションとnのスポットカラーインクステーションを含むNのインクステーションを含み、イメージが請求項1から7と11から28のいずれか1項記載の方法により印刷される、印刷システム。」
(2)「【0002】
技術分野
本発明はマルチカラープロセス印刷技術に関する。特にプロセスカラー(process color)とスポットカラー(spot color)の両方を使用した多色印刷の方法とシステムに関する。」
(3)「【0031】
多くの印刷機が現在、6、8またはより多くの印刷ステーションで構成される。例えば、このサイズのプレスは、多くのハウスカラーまたはブランドカラー(しばしば上で説明したソリッドカラーまたはビネットとして)でパッケージを印刷するのに使用されている。そのようなブランドカラーは、まさに希望のブランドカラーを達成するために注文により配合したインクを使用し、その結果、ブランドの高価値を維持する。そのような専用印刷機(すなわち、特別のスポットカラーのためのもの)の使用は低い能率システムを提供し、(次の仕事が特別なスポットカラーを利用しないとき)それぞれの仕事の間に全ての連結された印刷機を解体し、完全に洗浄し、再組み立てをしなければならない。」
(4)「【0037】
上で述べたように、4色刷インクセット(CMYK)と1種以上のスポットカラーインキ(ブランドカラーの印刷に使用される)の組み合わせの印刷は周知である。しかしながら、より良い解決策は、注文して作られたブレンドされたスポットカラーインキでブランドカラーを印刷して、ハイファイプロセスインクセットを使用して次に、グラフィック画像の残りを印刷することである。ハイファイの印刷システムの完全な融通性を取り戻すために、複数のブランドイメージをウエブにまたがって印刷できるので、プレスは、ハイファイプロセスインクのために必要な6~8つの印刷ステーションに加え、それぞれのブランド色インキのための1種以上の追加の印刷ステーションを必要とするだろう。これは明らかにほとんどの印刷所に、そのようなプレスの過度の費用と複雑さを考えて、支持できない状況をもたらす。
【0038】
プロセスインキセットの色域の拡張
本発明の例示の実施態様では、ハイファイのプロセスインキのそれぞれの同等なメンバーのための1種以上のスポットカラーインクの置き換えでこのジレンマを解決できる。例えば、ハイファイインクセットはCMYKOGセットを含むことができる。ここでCはシアンインクであり、Mはマゼンタインクであり、Yは黄色いインクであり、Kは黒いインクであり、Oはオレンジのインクであり、Gは緑色のインクである。グラフィックデザインはオレンジのブランドカラーと赤のブランドカラーを含むことができる。ブランド(スポット)の赤を作成するためにYMを重ね塗りし、ブランド(スポット)オレンジを作成するためにYMOを重ね塗りすることの代わりに、Mプロセスインクをスポットカラー赤に置き換え、Oプロセスインクを特別なスポットカラーオレンジで置き換えることができる。この置き換えに適合するために、イメージのプロセス印刷された領域は「再-バランス」をとることができる。たとえば赤の印刷に幾分かCを加え、当初のMプロセスインクとマッチさせ、オレンジのプリントに幾分かのYまたはMを加えて当初のOプロセスインクとマッチさせる。プロセス印刷されたカラーがそれらの許容度により寛容であるので、プロセスセットの一部としてブランド赤およびオレンジを使用した重ね塗りされたハーフトーンのインクは、完全に許容できるイメージを製造する。」
(6)「【0043】
図2は標準のCNYKプロセスセットへの3つのスポットカラーの追加が、そのセットから選択可能な色の色域をどう増加させるかを表現する。それを参照すれば、CMYインクに加え、図1のオレンジのスポットカラー、シアンとグリーンのほぼ中間のスポットカラー、および本質的にはマゼンダとブルーのほぼ中間の3番目のスポットカラーの3つスポットカラーが追加される。利用可能な6つの基本色を使用して、追加の色合いを達成できる。それぞれの3個の追加スポットカラーの端で約直角を含む三角形が見られる。これらの3つの三角形の中は、3つのそれぞれの追加スポットカラーを使用することで達成できる追加の色合いである。
【0044】
したがって、本発明の例示の実施態様では、当初のプロセスセットに1種以上のスポットカラーを加えることができ、重ね刷りせずにスポットカラーを印刷するだけではなく、さらに{当初プロセスセット+追加のスポットカラー}から利用可能な色合いを増加させる。本発明の好ましい例示の実施態様では、FMスクリーニングを利用することで全体のイメージを印刷できる。また、さらなる例示の実施態様では、AMスクリーニングも使用できる。AMスクリーンにはほとんど周期的なミスマッチによるモアレ効果を防ぐために、角度を有するオリエンテーションを必要とする平行線のパターンがあることに注意される。したがって、特定の角度のスクリーンでそれぞれのプレートを作成しなければならない。これは、ハーフトーンドットの完全なオーバーラップを防いで、プリンタロゼットとして知られている六角形のパッキングを作成する。FMスクリーンは推計学的であり、したがってランダムであり、それらはモワレを供しない。その結果、この技術でイメージのすべての部分を印刷できる。それは、デジタル(インクジェットまたは電子写真エンジン)のプリンタでのカラー画像印刷と同様である。あるいはまた、本発明の例示の実施態様では、AMまたはFMまたはAMとFMスクリーニングの組み合わせですべてのイメージ部を印刷することを選ぶことができる。」
(7)「【0046】
したがって、本発明の例示の実施態様では、CMYK+S1、S2、S3(後者の3つのカラーがスポットカラーである)を使用する印刷が意図するように完了され、CMYK+S1、S2、S4を必要とする次の仕事は印刷の前に最後の印刷ステーションを掃除しセットアップすることだけを必要とする。スペクトル色マッチング法によって予測されるように、例えば、S1、S2、およびS3の印刷ステーションはユニークな印刷組版を有するので、インクをCMYKと組み合わせることができる。例えば、S1+{CまたはM}、S2と{MまたはY}、S3と{CまたはY}の2つの色の重ね塗りが、イメージ中のブランドカラーおよびロゴの高い品質と色忠実度を維持しつつ、大幅な色域増大を達成するのに使用できる。」
(8)「【0050】
したがって、本発明の例示の実施態様では、適切なプロセスインキセットを選択することにおける目標は、例えば妥当なグレー・バランス(C+M+Y=中立)を得ることであることができる。したがって、例えば、そのようなバランスを維持するためにインクの比率を調整するのに製版ソフトウェアを使用できる。先の図2に示したように、5番目、6番目または7番目のプロセスプライマリーインクはいくつかの追加の再現カラーを得る。この点で、CMYKに加えて{オレンジ+青}、{赤+グリーン+青}または{オレンジ+グリーン+バイオレット}を使用したHiFiカラーセットを作るための種々の公知のテクニックが存在する。これらのすべては、所望の色合いの与えられたセットについて最も適当なものとして、既存の{シアン+マゼンダ+黄色}の原色の間の差を分解するように意図される。しかしながらスポットカラーがオレンジ、グリーン、バイオレットのいずれでもない場合、本発明の例示の実施態様では、製版ソフトウェアは再調整されなければならず、スポットカラーとプロセスカラーインキの両方のカラーとトーンの特性が、再現テーブルまたはICCプロファイルで得られなければならない。本発明の例示の実施態様では、典型的なHiFiインクセットについてこの色挙動を得るためのソフトウェアが使用され、オフセットまたはフレキソ版製造するため、またはグラビアシリンダを刻むためのデジタルファイルを提供することができる。」
そうすると、上記摘記事項(1)乃至(8)より、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が示されているものと認められる。
「m色のプロセスカラーとn色のスポットカラーで、合計でNの色を使用して、基体または物品に印刷イメージを形成する方法、ここでN>2、m>2、およびn>0であり、N、m、nは整数である。」
2 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)後者の「プロセスカラー」、「スポットカラー」、「基体」及び「印刷イメージを形成する方法」はそれぞれ、前者の「プロセスカラー」、「スポットカラー」、「基材」及び「印刷イメージを生成する方法」に相当する。
(2)後者の「プロセスカラー」は、m色であって、m>2、mは整数であるところ、mに上限は設定されていないことから、前者の「プロセスカラー」と後者の「プロセスカラー」とは、「6つ以下のプロセスカラー」との概念で一致する。
(3)後者の「スポットカラー」は、n色であって、n>0、nは整数であるから、前者の「スポットカラー」と後者の「スポットカラー」とは、「2つ以上のスポットカラー」との概念で一致する。
(4)後者の「印刷イメージを形成する方法」は、m色のプロセスカラーとn色のスポットカラーで、合計でNの色を使用して印刷イメージを形成する方法であるところ、印刷イメージを形成するステップを備えることは明らかである。
その前提にたって、前記(2)及び(3)を参酌すると、前者の「印刷イメージを生成する方法」と後者の「印刷イメージを形成する方法」とは、「6つ以下のプロセスカラー」と「2つ以上のスポットカラー」とからなる「カラーセット」を用いて「イメージを印刷するステップとを含む、方法」との概念で一致する。
そして、「6つ以下のプロセスカラー」と「2つ以上のスポットカラー」とからなる「カラーセット」を用いていることからすれば、後者の「印刷イメージを形成する方法」が、「6つ以下のプロセスカラー」と「2つ以上のスポットカラー」とからなる「カラーセットを提供するステップ」を含んでいるといえる。
そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
[一致点]
「基材上に印刷イメージを生成する方法であって、前記方法は、
カラーセットを提供するステップを含み、前記カラーセットは、
6つ以下のプロセスカラーと、
2つ以上のスポットカラーとを含み、前記プロセスカラーの数に対する前記スポットカラーの数の割合は、1:1よりも大きく、前記方法はさらに、
前記カラーセットを用いてイメージを印刷するステップとを含む、方法。」
[相違点]
本願発明の「印刷イメージを生成する方法」が、「プロセスカラーの数に対するスポットカラーの数の割合は、1:1よりも大き」いのに対し、引用発明の「印刷イメージを形成する方法」は、プロセスカラーの数(m色)に対する前記スポットカラーの数(n色)の割合は、1:1よりも大きいとまでは特定されていない点。
3 判断
引用発明も、上記において摘記した引用例の【特許請求の範囲】の【請求項29】、段落【0038】、【0043】、【0044】及び【0046】の記載からみて、スポットカラーインクステーションを設けることにより色域を拡大させることを目的とした発明であると認められる。
また、インクジェットプリンタにおいて、色域を拡大することは内在する自明の課題であることは色域の拡大のために新たなインクの開発等が行われてきたところからすれば、明らかである。
さらに、上記相違点のプロセスカラーの数に対するスポットカラーの数の割合は、1:1よりも大き」いことについて、本願発明の課題(色域の拡張(【0003】~【0005】参照。))との関係において臨界的意義を有するものではない。
してみると、引用発明において、求められる色域がより広い範囲である場合に対応できるよう、より色域を拡大させるためにスポットカラーの数を増やすことで、上記相違点の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。
したがって、本願発明は、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
そして、上記相違点の構成とすることで奏する効果も、引用発明から、当業者の予測し得た範囲内の事項である。
4 審判請求人の主張等について
審判請求人は、審判請求書の手続補正書(方式)において「いずれの引用文献1および2においても、本願の独立請求項に係る発明における「前記プロセスカラーの数に対する前記スポットカラーの数の割合は、1:1よりも大きく、」という限定事項を何ら開示も示唆もしていません。さらに、このように引用文献1および2を修正する示唆、動機付けは存在しません。引用文献1において、プロセスカラーとスポットカラートの開示が存在するものの、スポットカラーを多くするという技術的思想は引用文献1および2には存在しないため、引用文献1および2を根拠として本願に容易に想到するものではありません。」(3ページ21~27行)と主張する。
しかし、上記「3 判断」で述べたとおりであるところ、引用例の段落【0037】、【0038】、【0043】、【0046】及び【0050】に記載された実施例がスポットカラーの数がプロセスカラーの数よりも少ないからといって、色域の拡大のためにスポットカラーの数を増やすことで、プロセスカラーの数に対するスポットカラーの数を1:1より大きくするのに阻害要因があるとはいえない。
よって、審判請求人の上記主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、本願の優先日前に出願公開された引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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