2023-001662
生産管理装置、生産管理システムおよび生産管理方法
- 審判番号
- 2023-001662
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-086984外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年02月01日
- 審決日
- 2024年07月17日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】i Smart Technologies株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人明成国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (G05B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 19項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成29年4月26日の出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
同年 4月 9日 :意見書、手続補正書の提出
同年 7月15日 :意見書の提出
同年 4月16日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~4に係る発明は、令和6年4月16日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】製造ラインの生産状況を管理するための生産管理装置であって、前記製造ラインから製品が繰り出される度に出力される検出信号を取得する検出信号取得部と、取得した前記検出信号から、前記製造ラインの遅延または停止に相当する予め定められた検出間隔を超える検出信号を除外し、前記予め定められた検出間隔を超える検出信号が除外された前記検出信号を用いてサイクルタイムの統計値を求め、求めた前記統計値を用いて実際のサイクルタイムである実サイクルタイムを決定する実サイクルタイム決定部と、前記実サイクルタイムを用いて生産管理情報を生成する生産管理情報生成部と、前記生産管理情報を表示するための表示部と、を備え、前記生産管理情報生成部は、前記生産管理情報として、前記実サイクルタイムを用いて算出した目標生産個数と、実際に生産された実生産個数とを用いて算出された可動率の情報を生成し、前記可動率と、前記実サイクルタイムと、予め設定された設定サイクルタイムとを前記表示部に表示するための表示情報を生成する、生産管理装置。」
第3 当審における拒絶の理由
本願発明は、令和6年4月16日の手続補正前(すなわち、令和3年12月17日の手続補正後)の請求項1に、請求項2~4に係る事項を限定し、さらに発明特定事項を付加したものと認められるところ、当審が、令和6年2月13日付けで通知した拒絶理由のうち、請求項1~4に係る発明に対する特許法29条2項(進歩性)に係る理由2の概要は、次のとおりである。
この出願の請求項1~4に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1~2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載事項
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当審における拒絶理由で示した引用文献1には、次の事項が記載されている。
「【0001】本発明は、複数の生産装置が連結して構成されている実装ラインにおいて、実装ライン全体の稼働率を算出する稼働率算出装置に関する。」
「【0019】以下、本発明の実施の形態に係る稼働率算出装置について図面を参照しながら説明を行う。(実施の形態1)図1は、本発明に係る稼働率算出装置100を含み、複数の生産装置を連結して構成される実装ラインの一例を示す外観図である。図1(a)は、基板検出センサ202の開始/終了信号を手動で検出する場合であり、図1(b)は、基板検出センサ202の開始/終了信号がリフローに設けられる開始/終了検出部101において自動的に検出される場合の外観図となる。【0020】稼働率算出装置100は、基板検出センサ202からの基板の検出信号に基づいて、実装ラインの稼働率を算出するための装置であって、例えば、パーソナルコンピュータなどの汎用コンピュータに専用のソフトウェアがインストールされることによって構成される。即ち、稼働率算出装置100は、一連の作業を行う一群のマシンから構成される実装ライン毎に、その稼働率を評価するものである。」
「【0023】このように、本発明に係る稼働率算出装置100は、実装ラインの最終位置に基板の通過を検出する基板検出センサ202を設け、この基板検出センサ202からの基板の通過信号や基板の通過間隔を検出することにより実装ライン全体の稼働率を算出することを特徴とする。尚、この通過間隔は、実装ラインにトラブルが発生していない場合においては、ボトルネックとなる生産装置の生産タクトとなる。【0024】図2は、本発明に係る稼働率算出装置100の全体構成を示す機能ブロック図である。稼働率算出装置100は、実装ライン全体の稼働率を算出する装置であって、データ記憶部203と、演算部204と、稼働率蓄積部205と、画面制御部206とを内部に備え、外付け装置として開始/終了スイッチ201と、基板検出センサ202と、表示部207とが備えられている。」
「【0026】基板検出センサ202は、実装ラインの最下流位置に設置され、基板の通過を検出して基板検出時刻をデータ記憶部203側に送信する。また、基板検出センサ202は、開始/終了スイッチ201からの開始信号を受信すると生産開始時刻をデータ記憶部203に送信し、終了信号を受信すると生産終了時刻をデータ記憶部203に送信する。尚、後述する図3(a)は基板検出センサ202において検出された検出データの例を示している。【0027】データ記憶部203は、基板検出センサ202において検出された基板検出時刻と生産開始時刻と生産終了時刻とを一時的に記憶するためのハードディスク等の記憶部である。【0028】演算部204は、データ記憶部203に記憶されているデータに基づいて、基板の通過間隔の最頻値を求めると共に、この最頻値の通過間隔に基づいて演算式を用いて稼働率を算出するための処理部である。具体的には、演算部204は、通過間隔の最頻値を検出する最頻値検出部204aと、最頻値検出部204aにおいて検出された最頻値に基づいて稼働率を算出するための稼働率算出部204bとを備えている。」
「【0030】画面制御部206は、キーボードやマウスなどから構成される入力部からのオペレータ指示に従って表示部207に表示する稼働率に関する画面表示の制御を行なうための処理部となる。【0031】表示部207は、画面表示部206からの制御に応じた稼働率に関する画像を表示するための画面であり、本発明においては、後述するメインメニュー、生産実績入力画面、稼働率集計画面、及び稼働率履歴表示画面が表示される。」
「【0046】そして、本発明に係る稼働率算出装置100の稼働率算出部204bは、最頻値検出部204aにおいて検出された最頻値のデータを用いて、下記の(式6)~(式10)に基づいて設備性能稼働率、時間稼働率等を算出する(S509)。【0047】稼働時間=(生産終了基板検出時刻-生産開始基板検出時刻)×検出数/(検出数-1)・・・(式6)設備性能稼働率=最頻値×検出数/稼働時間・・・(式7)時間稼働率=稼働時間/操業時間・・・(式8)生産タクト=最頻値・・・(式9)正味稼働時間=生産タクト×検出数・・・(式10)このように、本発明に係る稼働率算出装置100の稼働率演算部204bは、稼働時間を検出数を用いて算出すると共に、最頻値検出部204aで検出された最頻値を用いて設備性能稼働率を算出することを特徴とする。尚、具体的な実測データによる説明は図10及び図11を用いて後述する。」
「【0054】図8は、本発明の稼働率算出装置100の表示部207に表示される稼働率集計画面800の参考図である。【0055】この稼働率集計画面800には、例えばワークシート形式で、ロットNo801、機種名802、ライン名803、生産予定804、生産開始時間805、生産終了時間806、生産実績807、設備性能稼働率808等の情報が表示され、オペレータは、このような設定画面への入力処理によって、要求する画面への表示項目を選択することが可能となる。そして、オペレータは、例えば、「ライン名(803)」を指定することにより、ある実装ライン名毎にソートしたり、「設備性能稼働率(808)」でソートすることにより、設備性能稼働率の低い実装ライン順に画面表示することが可能となる。」
図1
「[図:0001414654000001.jpg]」
図2
「[図:0001414654000002.jpg]」
図8
「[図:0001414654000003.jpg]」
2 引用文献1の記載事項の整理
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上記1の記載事項から見て、以下の技術的事項を理解することができる。
(1)引用文献1には、実装ライン全体の稼働率を算出する稼働率算出装置100が記載されており、稼働率算出装置100は、データ記憶部203(【0027】)、最頻値検出部204a、稼働率算出部204b(【0028】)、画面制御部206(【0030】)を内部に備え(【0024】)、表示部207(【0031】)を外付け装置として備えている(【0024】、図2)。
(2)基板検出センサ202は、実装ラインを基板が通過することを検出して基板検出時刻をデータ記憶部203に送信する。(【0026】)
(3)データ記憶部203は、送信された基板検出時刻を記憶する(【0027】)から、基板検出時刻を取得しているといえる。
(4)最頻値検出部204aは、データ記憶部203に記憶されているデータに基づいて、基板の通過間隔の最頻値を検出する。(【0028】)
(5)稼働率算出部204bは、基板の通過間隔の最頻値を生産タクトとして決定している。(【0046】、【0047】の(式9))
(6)稼働率算出部204bは、また、最頻値検出部204aにおいて検出された基板の通過間隔の最頻値に基づいて設備性能稼働率を算出する(【0028】、【0047】の式(7))ところ、基板の通過間隔の最頻値は生産タクトともいえる(上記(5))から、生産タクトに基づいて設備性能稼働率を算出するといえる。
(7)表示部207は、稼働率集計画面800に設備性能稼働率808を表示する。(【0030】~【0031】、【0054】~【0055】、図8)
(8)稼働率算出部204bは、設備性能稼働率として、最頻値×検出数/稼働時間という数式を用いて算出された稼働率の情報を生成する。(【0047】の(式7))
(9)画面制御部206は、表示部207に設備性能稼働率808を表示するように制御する(【0030】)から、表示のための表示情報を生成することは明らかである。
3 引用発明
上記2をまとめると、引用文献1には、次の発明が記載されているということができる。
「実装ラインの稼働率を算出する稼働率算出装置100であって、前記実装ラインを基板が通過することを基板検出センサ202により検出して送信される基板検出時刻を取得するデータ記憶部203と、取得した前記基板検出時刻に基づいて基板の通過間隔の最頻値を検出し、検出した基板の通過間隔の最頻値を用いて生産タクトを決定する最頻値検出部204aと、前記生産タクトに基づいて設備性能稼働率808を算出する稼働率算出部204bと、前記設備性能稼働率808を表示する表示部207と、を備え、前記稼働率算出部204bは、前記設備性能稼働率808として、最頻値×検出数/稼働時間という数式を用いて算出された稼働率の情報を生成し、画面制御部206は、前記設備性能稼働率808を前記表示部207に表示するための表示情報を生成する、稼働率算出装置100。」(以下「引用発明」という。)
4 引用文献2の記載事項
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「【0001】本発明は、電子部品実装装置のサイクルタイムから改善点や問題を発見する技術に関するものである。」
「【0025】請求項8に係る電子部品実装装置システムによれば、実測平均サイクルタイム算出手段は、所定時間以上のサイクルタイムを除外して、実測平均サイクルタイムを算出する。これにより、深刻な問題の発生による電子部品実装装置の長時間の停止や、実装するプリント基板の種類の切替による電子部品実装装置の長時間の停止に起因する長いサイクルタイムが、実測平均サイクルタイムの算出において除外される。このため、突出して長いサイクルタイムにより、実測平均サイクルタイムが長期間に渡って長くなってしまうという悪影響が防止され、実測平均サイクルタイムを用いた各電子部品実装装置の実装状態の分析を精度高く行うことができる。」
「【0028】・・・【図4】記憶部に記憶され画像表示装置に表示されるサイクルタイム一覧を表した図である。・・・」
「【0041】(生産管理装置の説明)次に、生産管理装置500の説明をする。生産管理装置500は、各種プログラムを実行するCPU500a、CPU500aで実行されるプログラムや各種設定値が記憶される記憶部500b、各電子部品実装装置101~104から出力された情報が入力され取得するインターフェース500c、及び、画像が表示される画像表示装置500dを備えている。記憶部500bには、後述する「最速サイクルタイム選択処理」、「ボトルネック装置特定処理」、「サイクルタイムバランスイメージ生成処理」、「サイクルタイム変移イメージ生成処理」、「性能効率処理」の各処理を実行可能にするプログラムが記憶され、図4に示す「サイクルタイム一覧」が記憶される。なお、図4に示す「サイクルタイム一覧」は、画像表示装置500dで表示される。【0042】記憶部500bに記憶されているプログラム及び当該プログラムを実行するCPU500aが、特許請求の範囲に記載の「最速サイクルタイム選択手段」、「実装状態分析情報生成手段」、「実測平均サイクルタイム算出手段」、「ボトルネック装置特定手段」、「実測ボトルネック装置特定手段」、及び、後述のサイクルタイムシミュレータに相当し得る。【0043】サイクルタイムシミュレータは、各電子部品実装装置101~104の「理論サイクルタイム」を算出する。サイクルタイムシミュレータは、各電子部品実装装置101~104から入力された「レシピ切替情報」(プリント基板Pの情報や、プリント基板Pに実装する電子部品の情報、電子部品のプリント基板Pにおける実装位置の情報を含む)に基づき、電子部品実装装置101~104にプリント基板Pが搬入されてから、電子部品のプリント基板Pへの実装が完了し、次の電子部品実装装置101~104に搬出されるまでの、理想的なサイクルタイムである「理論サイクルタイム」を算出する。【0044】(最速サイクルタイム選択処理)次に、図3に示すフローチャート及び図4に示す「サイクルタイム一覧」を参照して、上述した生産管理装置500が実行する「最速サイクルタイム選択処理」について説明する。なお、図4に示す「サイクルタイム一覧」は、各電子部品実装装置101~104毎の「サイクルタイム」が実装順に順次記憶されるとともに、各電子部品実装装置1001~104毎の「理論サイクルタイム」が記憶される。」
「【0047】S115において、サイクルタイムシミュレータは、「レシピ切替情報」に対応する電子部品実装装置101~104の「理論サイクルタイム」を、前記「レシピ切替情報」に基づいて算出させ、当該「理論サイクルタイム」を、「暫定最速サイクルタイム」として、記憶部500bの「サイクルタイム一覧」(図4示)に記憶させる。S115が終了すると、プログラムは、S126に進行する。」
「【0056】(ボトルネック装置特定処理)次に、図4~図6を参照して、上述した生産管理装置500が実行するボトルネック装置特定処理について説明する。・・・【0057】S134において、生産管理装置500は、各電子部品実装装置101~104の「サイクルタイム」の平均値である「実測平均サイクルタイム」を算出する。具体的には、生産管理装置500は、図4に示す「サイクルタイム一覧」に記憶されている「サイクルタイム」のうち、所定時間以上の「サイクルタイム」を除外して(例えば電子部品実装装置103の5枚目の200秒)、各電子部品実装装置101~104について、「実測平均サイクルタイム」を算出する。なお、本実施形態では、所定時間以上の「サイクルタイム」とは、図6に示すように、ある電子部品実装装置101~104の「サイクルタイム」の集合のうち、当該集合の平均値μから当該集合の標準偏差σ以上の長さの「サイクルタイム」のことである。或いは、所定秒数(例えば50秒)以上のサイクルタイムを除外することにしても差し支え無い。S134が終了すると、プログラムはS136に進行する。」
図4
「[図:0001414654000004.jpg]」
5 引用文献2の記載事項の整理
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上記4の記載事項から見て、以下の技術的事項を理解することができる。
なお、括弧内に引用文献2の記載箇所等を付記する。
(1)引用文献2には、電子部品実装装置のサイクルタイムから改善点や問題を発見する技術が記載されており(【0001】)、画像表示装置500dに理論サイクルタイムと実測平均サイクルタイムを含むサイクルタイム一覧を表示する(【0028】、【0041】、図4)。
(2)理論サイクルタイムは、電子部品実装装置にプリント基板が搬入されてから、電子部品のプリント基板への実装が完了し、次の電子部品実装装置に搬出されるまでの、理想的なサイクルタイムであり(【0043】)、生産管理装置500のCPU500aであるサイクルタイムシミュレータにより算出される。(【0041】~【0043】)
(3)実測平均サイクルタイムは、所定時間以上のサイクルタイムを除外した、サイクルタイムの平均値であり(【0057】)、生産管理装置500のCPU500aである実測平均サイクルタイム算出手段により算出される。(【0025】、【0041】~【0042】、【0056】~【0057】)
6 引用文献2記載の技術的事項
上記5をまとめると、引用文献2には、次の技術的事項が記載されているということができる。
(1)「所定時間以上のサイクルタイムを除外して、サイクルタイムを平均することで、実測平均サイクルタイムを算出すること。」(以下「引用文献2記載の技術的事項1」という。)
(2)「理論サイクルタイムと実測平均サイクルタイムを算出して、画像表示装置に表示すること。」(以下「引用文献2記載の技術的事項2」という。)
第5 対比並びに一致点及び相違点
1 対比
本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりである。
(1)引用発明の「実装ライン」が本願発明の「製造ライン」に相当することは明らかである。
また、本願発明は、生産状況を管理することについて、具体的には、生産管理情報を生成して表示することにとどまるところ、生産管理情報には、可動率が含まれる(本件の明細書の【0047】)から、引用発明の「稼働率を算出する」ことは、本願発明の「生産状況を管理する」ことに相当し、引用発明の「稼働率算出装置100」が本願発明の「生産管理装置」に相当する。
(なお、本願発明の「可動」は、製造ラインが「稼働」する状態といえる(本件の明細書の【0047】)から、引用発明の「稼働」と同じ意味であると解される。)
(2)次に、引用発明の「基板」が本願発明の「製品」に相当することは明らかであり、以下同様に、「通過することを基板検出センサ202により検出して送信される」ことが「繰り出される度に出力される」(本件の明細書の【0042】)ことに、「基板検出時刻」が「検出信号」に、「データ記憶部203」が「検出信号取得部」に、それぞれ相当する。
(3)次に、FA(Factory Automation)の技術に関する分野において、「サイクルタイム」は、「任意の繰り返される生産工程の一部又は全部の完結に要する時間」(JIS B 3000:2010「FA-用語」の番号3023)を意味するところ、引用発明の「基板の通過間隔」は、実装ラインの工程の全部の完結に要する時間であるから、本願発明の「サイクルタイム」に相当する。
また、引用発明の「最頻値」は、統計的な手法による数値であるから、本願発明の「統計値」に相当し、「生産タクト」が「実際のサイクルタイムである実サイクルタイム」に相当する。
そして、引用発明の「取得した前記基板検出時刻に基づいて基板の通過間隔の最頻値を検出し、検出した基板の通過間隔の最頻値を用いて生産タクトを決定する最頻値検出部204a」と、本願発明の「取得した前記検出信号から、前記製造ラインの遅延または停止に相当する予め定められた検出間隔を超える検出信号を除外し、前記予め定められた検出間隔を超える検出信号が除外された前記検出信号を用いてサイクルタイムの統計値を求め、求めた前記統計値を用いて実際のサイクルタイムである実サイクルタイムを決定する実サイクルタイム決定部」を対比すると、「取得した前記検出信号から、サイクルタイムの統計値を求め、求めた前記統計値を用いて実際のサイクルタイムである実サイクルタイムを決定する実サイクルタイム決定部」という限りにおいて一致する。
(4)次に、本願発明の生産管理情報には、可動率が含まれる(上記(1))から、引用発明の「設備性能稼働率808」が本願発明の「生産管理情報」に相当し、引用発明の「前記生産タクトに基づいて設備性能稼働率808を算出する稼働率算出部204b」は、本願発明の「前記実サイクルタイムを用いて生産管理情報を生成する生産管理情報生成部」に相当する。
(5)次に、引用発明の「前記設備性能稼働率808を表示する表示部207」が、本願発明の「前記生産管理情報を表示するための表示部」に相当することは明らかである。
(6)次に、引用発明の「最頻値×検出数/稼働時間という数式を用いて算出された稼働率の情報を生成」することと、本願発明の「前記実サイクルタイムを用いて算出した目標生産個数と、実際に生産された実生産個数とを用いて算出された可動率の情報を生成」することを対比すると、「可動率の情報を生成」する限りにおいて一致する。
また、引用発明において、「画面制御部206は、前記設備性能稼働率808を前記表示部207に表示するための表示情報を生成する」ことと、本願発明の「前記生産管理情報生成部は、」「前記可動率と、前記実サイクルタイムと、予め設定された設定サイクルタイムとを前記表示部に表示するための表示情報を生成する」ことを対比すると、「前記可動率を前記表示部に表示するための表示情報が生成される」ことという限りにおいて一致する。
2 一致点及び相違点
以上から、本願発明と引用発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点1~3で相違する。
[一致点]
両発明は、
「製造ラインの生産状況を管理するための生産管理装置であって、前記製造ラインから製品が繰り出される度に出力される検出信号を取得する検出信号取得部と、取得した前記検出信号から、サイクルタイムの統計値を求め、求めた前記統計値を用いて実際のサイクルタイムである実サイクルタイムを決定する実サイクルタイム決定部と、前記実サイクルタイムを用いて生産管理情報を生成する生産管理情報生成部と、前記生産管理情報を表示するための表示部と、を備え、前記生産管理情報生成部は、前記生産管理情報として、可動率の情報を生成し、前記可動率を前記表示部に表示するための表示情報が生成される、生産管理装置。」
である点。
[相違点1]
サイクルタイムの統計値が、本願発明は、「取得した前記検出信号から、前記製造ラインの遅延または停止に相当する予め定められた検出間隔を超える検出信号を除外し、前記予め定められた検出間隔を超える検出信号が除外された前記検出信号を用いて」求められているのに対して、引用発明は、「取得した前記基板検出時刻に基づいて基板の通過間隔の最頻値を検出」して求められている点。
[相違点2]
可動率の情報を生成することが、本願発明は、「前記実サイクルタイムを用いて算出した目標生産個数と、実際に生産された実生産個数とを用いて算出」するのに対して、引用発明は、「最頻値×検出数/稼働時間という数式を用いて算出」する点。
[相違点3]
表示情報が生成されることについて、本願発明は、「前記生産管理情報生成部は、」「前記可動率と、前記実サイクルタイムと、予め設定された設定サイクルタイムとを前記表示部に表示するための表示情報を生成」するのに対して、引用発明は、「画面制御部206は、前記設備性能稼働率を前記表示部207に表示するための表示情報を生成」するものであって、実サイクルタイムや設定サイクルタイムを表示するための表示情報を生成しておらず、また、表示情報を稼働率算出部204bで生成していない点。
第6 判断
1 相違点1について
引用文献2記載の技術的事項1(上記第4の6(1))には、「所定時間以上のサイクルタイムを除外して、サイクルタイムを平均することで、実測平均サイクルタイムを算出すること。」が示されている。
実際のサイクルタイムを求める統計的な手法には、引用文献1に示すように、サイクルタイムの最頻値を実際のサイクルタイム(生産タクト)として求める手法のほかに、引用文献2記載の技術的事項1に示すように、サイクルタイムの平均値を実際のサイクルタイムとして求める手法が存在する。
そして、どの手法により実際のサイクルタイムを統計的に求めるかは、各手法の特性等を考慮して、当業者が適宜に決定すればよい程度の事項にすぎないから、引用発明の実サイクルタイムを決定するにあたり、サイクルタイムの最頻値を実際のサイクルタイムとして求める手法に換えて、所定時間以上のサイクルタイムを除外して、実測サイクルタイムの平均値を算出する手法を採用することは、当業者が容易に想到できた事項である。
2 相違点2について
引用発明における可動率(稼働率)の情報は、「最頻値×検出数/稼働時間」という数式で算出されるが、生産タクト=最頻値とされているから、当該数式における「最頻値」「/稼働時間」は、生産タクト/稼働時間を意味し、その逆数(稼働時間/生産タクト)は、本願発明における「前記実サイクルタイムを用いて算出した目標生産個数」に相当する物理量である。また、上記数式の「検出数」は、本願発明の「実際に生産された実生産個数」に相当する物理量であるといえるから、本願発明における「可動率の情報を生成する」こと、すなわち、「実際に生産された実生産個数」/「前記実サイクルタイムを用いて算出した目標生産個数」である可動率の情報を生成することは、実質的に、引用発明の数式に示されている。
したがって、相違点2に係る発明特定事項は、引用発明に含まれているから、相違点2は実質的な相違点とはいえない。
3 相違点3について
引用文献2記載の技術的事項2(上記第4の6(2))には、「理論サイクルタイムと実測平均サイクルタイムを算出して、画像表示装置に表示すること。」が示されている。
サイクルタイムは、引用発明の基板の通過間隔の最頻値や生産タクトに相当し、引用発明では、設備性能稼働率を算出するための数値としてのみ利用されているが、サイクルタイムそれ自体でも、電子部品実装装置の改善点や問題を発見することができることは、引用文献2に示されている。(引用文献2の【0001】、上記第4の4)
引用発明において、設備性能稼働率を算出する理由は、引用文献2と同様に、電子部品実装装置の改善点や問題を発見するためであるといえるから、引用発明に引用文献2記載の技術的事項2を適用して、本願発明の設定サイクルタイムに相当する理論サイクルタイムと、同じく実サイクルタイムに相当する実測平均サイクルタイムを表示するように、表示情報を生成することは、当業者が容易に想到できたものである。
また、引用発明の画面制御部206や稼働率算出部204bは、具体的には、稼働率算出装置100の内部に備えられ、汎用コンピュータに専用のソフトウェアがインストールされることによって構成されている(引用文献1の【0020】、【0024】、【0028】、上記第4の1)から、ソフトウェアの内部において、画面制御部206の機能を実現する部分を、稼働率算出部204bの機能を実現する部分に含めるように認識するかどうかは、人為的な取り決めにすぎない。
したがって、表示情報を、本願発明は生産管理情報生成部が生成し、引用発明は画面制御部206が生成する点は、実質的な相違点とはいえない。
4 小括
以上から、本願発明は、引用発明並びに引用文献2記載の技術的事項1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-001662