2023-000464
収縮および非収縮ポリマーフィルム用水系インキ
- 審判番号
- 2023-000464
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-520436外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年01月12日
- 審決日
- 2023年11月08日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】サン・ケミカル・コーポレーション
- 【請求人代理人】稲葉 良幸
- 【請求人代理人】大貫 敏史
- 【請求人代理人】江口 昭彦
- 【請求人代理人】内藤 和彦
- 分類
- P18 .537-WZ (B41M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 6項目
第1 手続の経緯
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本願は、2017年10月17日(パリ条約による優先権主張2016年10月20日、米国)を国際出願日とする出願であって、令和2年10月13日に手続補正書が提出され、令和3年9月21日付けで拒絶理由が通知され、同年12月24日に意見書及び手続補正書が提出され、令和4年4月22日付けで拒絶理由が通知され、同年7月21日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和4年9月8日付けで拒絶査定がされ、これに対して、令和5年1月12日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その後、当審において、同年5月17日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年8月18日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1乃至25に係る発明は、令和5年8月18日付けで提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至25に記載された事項により特定されるとおりのものであって、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】ポリマー基材に印刷するためのプロセスであって、a)i)少なくとも1つの自己架橋アクリルポリマー、ii)少なくとも1つの合一剤、続きを表示(全12行)iii)少なくとも1つのシリコーンエマルジョン、およびiv)水を含み、前記自己架橋アクリルポリマーは0℃超のガラス転移温度を有する、インキまたはコーティング組成物を提供することと、b)前記a)のインキまたはコーティング組成物をポリマー基材に塗布することと、c)前記ポリマー基材上の前記インキまたはコーティング組成物を乾燥させることとを含み、前記水の含有量は、前記インキまたはコーティング組成物の全重量に基づいて、25wt%~50wt%であり、前記ポリマー基材は収縮性ポリマー基材である、プロセス。」
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由において通知した理由は、次に概略を記した理由を含むものである。
(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
第4 当審の判断
1 発明の詳細な説明の記載
願書に添付した明細書、特許請求の範囲、及び図面(以下「明細書等」という。)の発明の詳細な説明には、以下のとおり記載されている(下線は当審で付した。)。
「【0002】発明の分野本発明は、オーバープリントワニスを含む、水系インキおよびコーティング組成物に関する。組成物は、食品および医薬品包装の収縮包装ラベルに使用されるフィルムのような、収縮性ポリマーフィルムへの印刷に特に適する。場合によっては、組成物は収縮性でないポリマーフィルムにも印刷され得る。」
「【0053】本発明のインキおよびオーバープリントワニスは水を含む。水は直接添加されてもよく、またはアクリルもしくはシリコーンエマルジョンの一部として組成物中に含まれてもよい。典型的には、本発明のインキおよびオーバープリントワニスは、インキまたはオーバープリントワニスの全重量に基づいて、約25wt%~約50wt%の水を含む。例えば、本発明のインキおよびオーバープリントワニスは、約25wt%~約45wt%;または約25wt%~約40wt%;または約25wt%~約35wt%;または約25wt%~約30wt%;または約30wt%~約50wt%;または約30wt%~約45wt%;または約30wt%~約40wt%;または約30wt%~約35wt%;または約35wt%~約50wt%;または約35wt%~約45wt%;または約35wt%~約40wt%;または約40wt%~約50wt%;または約40wt%~約45wt%;または約45wt%~約50wt%の量の水を含んでよい。」
「【0097】例1および例2。水系白色インキおよび水系シアンインキ水系白色インキ、例1、を本発明のプロセスで使用するために調製した。例1の配合を下の表1に示す。【表1】続きを表示(全56行)[図:0001408649000001.jpg]Neocryl XK14アクリルエマルジョンは約50℃のTgを有する自己架橋アクリルエマルジョンである。Neocryl A1125は0℃未満のMFFTを有する水系自己架橋アクリルコポリマーエマルジョンである。Joncryl 8052は-35℃のTgを有するアクリルエマルジョンである。Disperbyk 190はスチレンブロックコポリマー湿潤剤である。Tego Foamexはポリエーテルシロキサンコポリマーエマルジョン消泡剤である。Aquacer 531は水中の変性PEワックスエマルジョンである。Surfynol AD01はジェミニ技術に基づく非イオン性界面活性剤である。DC209Sは水中のシリコーンエマルジョンである。【0098】水系シアンインキ、例2、を本発明のプロセスで使用するために調製した。例2の配合を下の表2に示す。水は別個の構成成分として記載されていないが、アクリルエマルジョン、ワックスエマルジョン、およびシリコーンエマルジョンは水を含有するため、組成物は水を含有することに留意されたい。【表2】[図:0001408649000002.jpg]Joncryl ECO2124は-35℃のTgを有するグリコールエーテルを含まないアクリルエマルジョンである。Crayvallac WW1001は水中のPEワックス分散体である。 【0099】比較例1A(白色)および比較例2A(シアン)を、NeoCryl XK14自己架橋アクリルエマルジョン(0℃超のTgを有する)がWallpol 01B自己架橋アクリルエマルジョン(0℃未満のTgを有する)で置き換えられたこと除いて、例1および例2と同様に調製した。比較例1B(白色)および比較例2B(シアン)は、Sun Chemicalから市販されている溶剤系Sleeve Flexインキである。【0100】試験インキ試料を、水で印刷粘度(19秒 ザーン#2カップ)に下げた。例1および例2、ならびに比較例1Aおよび比較例2Aを50μmのPET収縮フィルム上へ印刷し、上記のように試験した。結果を表3~8に示す。基本的な初期試験、製品滴下試験、製品試験、カール試験、およびブロッキング試験を収縮の前に実施した。熱水試験の結果は熱水中での収縮の後である。【表3】[図:0001408649000003.jpg]【表4】[図:0001408649000004.jpg]【表5】[図:0001408649000005.jpg]【表6】[図:0001408649000006.jpg]【表7】[図:0001408649000007.jpg]【表8】[図:0001408649000008.jpg]【0101】例3.水系オーバープリントワニス本発明のオーバープリントワニスを表9の配合に従って調製した。【表9】[図:0001408649000009.jpg]【0102】市販の比較インキ、Aquathene CB赤色/青色手提げ袋インキ(Sun Chemical)を様々な基材:PE、PET、およびPP上に印刷した。その後、本発明のオーバープリントワニスを比較インキの上に塗布した。オーバープリントワニスなしの、別個のPE上の比較インキの印刷物も作製した。上述のように、本発明は、WO2016/028850のように調製されたインキは収縮性ポリマー可撓性フィルム基材への印刷に適しているという驚くべき発見である。これらのインキは、ポリエチレンコーティングボード基材にのみ適していると考えられていた。インキ1(赤色)およびインキ2(青色)(WO 2016/028850の表1から)がPE基材上へ印刷され、結果は、驚くべきことに、Satra耐摩擦性は本発明のオーバープリントワニスに匹敵することを示す。印刷物のSatra耐摩擦性結果を表10に示す。結果は完全なインキ除去に必要な摩擦の数として報告され、より大きい摩擦の数はより良好な耐摩擦性を示す。結果は赤色インキ試料と青色インキ試料の平均であることに留意されたい。【表10】[図:0001408649000010.jpg]【0103】1Aquathene CB赤色および青色の両方の別個の印刷物(比較インキ)を作製した。表10の結果は2つの印刷物の平均である。【0104】2これは目視試験であり、OPVは透明(無色)であるため、正確な結果を得るために、劣った抵抗特性を有する赤色および青色インキを基材上へ最初に印刷し、OPVを塗布した。使用されたこれらの劣った耐性の赤色および青色インキは、ポリエチレン手提げ袋で使用するための市販のAquathene CB(Sun Chemical)である。最初に、Aquathene CB赤色および青色の両方の別個の印刷物を、表10の指定のポリマー基材で作製し、その後、続いて例3のOPVでオーバープリントした。表10の結果は、本発明のOPVが、例3のOPVなしでは比較的悪い抵抗特性を有するインキに優れた抵抗特性を提供することを示す。表10のOPV結果は赤色インキと青色インキの平均である。比較目的で、Aquathene CB手提げ袋赤色/青色インキ(OPVなし)の摩擦も表10に示す。これらの結果は、抵抗特性がOPVに由来することを示す。【0105】3赤色および青色インキをWO 2016/028850の表1からの配合を使用して調製し、続いて別個に印刷および乾燥し、耐摩擦性を試験した。結果は、これらの配合に基づき、本発明の発明プロセスに従って収縮性ポリマー基材上へ印刷されたインキが、オーバープリントされなかったAquatheneインキよりはるかに優れていることを示す。【0106】例3のOPVおよびWO 2016/028850で例示されたSunインキの物性を試験した。結果は、PE基材上に印刷された2つの印刷物(1つは赤色、1つは青色)の平均に基づく。結果を表11に示す。【表11】[図:0001408649000011.jpg]【0107】これらの結果は、本発明のOPVが、本発明およびWO 2016/028850のインキと同様の耐性の改善を達成することを確認する。【0108】概して、結果は、本発明のインキおよびオーバープリントワニスは収縮性可撓性ポリマーフィルム基材(非収縮性ポリマーフィルム基材にも)に適していることを示す。本発明のインキおよびオーバープリントワニスは、市販のインキに比べて優れた特性を示す。」
2 ここで、本願発明において、「水」は、「前記水の含有量は、前記インキまたはコーティング組成物の全重量に基づいて、25wt%~50wt%であり」と特定されている。(「25wt%~50wt%」について以下「数値範囲」という。)
3 また、上記明細書等の発明の詳細な説明に記載された「例1の白色インキ」、「例2のシアンインキ」、及び「例3のオーバープリントワニス」における「水」の配合は、それぞれ、3.8wt%、0wt%、0wt%と示されている。
4 さらに、上記明細書等の発明の詳細な説明に「水は直接添加されてもよく、またはアクリルもしくはシリコーンエマルジョンの一部として組成物中に含まれてもよい。」(段落【0053】参照。)、及び「水系シアンインキ、例2、を本発明のプロセスで使用するために調製した。例2の配合を下の表2に示す。水は別個の構成成分として記載されていないが、アクリルエマルジョン、ワックスエマルジョン、およびシリコーンエマルジョンは水を含有するため、組成物は水を含有することに留意されたい。」(段落【0098】参照。)と記載されていることから、「例1の白色インキ」における「水」の配合は、3.8wt%以上54.5wt%以下の範囲内であると推認できる。
同様に、「例2のシアンインキ」は、59.6wt%以下の範囲内であり、「例3のオーバープリントワニス」は、85.2wt%以下の範囲内であると推認できる。
5 そうすると、上記(3)及び(4)より、インキに含まれる水については、25wt%~50wt%の範囲に包含される実施例は示されているとはいえない。
6 そして、「例1の白色インキ」、「例2のシアンインキ」、及び「例3のオーバープリントワニス」についての上限値が、それぞれ、54.5wt%以下、59.6wt%以下、及び85.2wt%以下であることから、「水」の配合について、25wt%~50wt%の範囲に包含される余地があるにとどまる。
7 しかし、「水」の配合の下限値が「25wt%」で、上限値が「50wt%」であるとする根拠は、発明の詳細な説明には、何ら記載されていないし、水の含有量の数値限定(25wt%~50wt%)の全範囲について、所望の物性を有することは、発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。
8 さらに、発明の詳細な説明に、当該技術分野における技術常識から、25wt%~50wt%の水を含む本発明のインキおよびオーバープリントワニスが所望の物性を有することが裏付けられている記載もないことから、「前記水の含有量は、前記インキまたはコーティング組成物の全重量に基づいて、25wt%~50wt%であり」との事項は、発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。
9 請求人は、令和5年8月18日に提出された意見書において、「各請求項に記載された発明を実施例のみに限定することを要求することは適切ではない。また、所定の範囲内の例として所望の特性を有するものが示されている限り、当該範囲内の全ての実施形態が示されている必要はない。なお、25wt%~50wt%のいずれかにおいて所望の特性を有しないことを積極的に示唆するような事情は見当たらず、そのような技術常識も提示されていないと思料する。したがって、2つのインキの例が、請求項1における水の含有量の数値範囲(25wt%~50wt%)の全てをサポートするのに十分であると思料する。」旨、主張する。
10 しかし、請求人は、「各請求項に記載された発明を実施例のみに限定することを要求することは適切ではない。」こと、及び「また、所定の範囲内の例として所望の特性を有するものが示されている限り、当該範囲内の全ての実施形態が示されている必要はない。」と単に主張するだけで、その理由は何ら示しておらず、当該請求人の主張の根拠が理解できないことから採用するに至らない。
また、「25wt%~50wt%のいずれかにおいて所望の特性を有しないことを積極的に示唆するような事情は見当たらず、そのような技術常識も提示されていないと思料する。」との立証責任は、請求人が負うべきものであることから、当該主張も採用できない。
11 したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
第5 まとめ
以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載が、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていないものであるから、本願は、特許を受けることができない。
よって、その他の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
したがって、結論のとおり審決する。
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