特許無効審判
2022-800096
太陽光発電モジュール用シーリング材及びその製造方法
- 審判番号
- 2022-800096
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2018-544937
- 登録番号
- 6752537
- 請求日
- 2022年12月28日
- 審決日
- 2024年07月18日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ディーエーエス エナジー リミティド
- 【請求人代理人】青木 篤
- 【請求人代理人】三橋 真二
- 【請求人代理人】中村 和広
- 【請求人代理人】関根 宣夫
- 【請求人代理人】青木 修二郎
- 【請求人代理人】村上 智史
- 【被請求人】老虎表面技術新材料(蘇州)有限公司
- 【被請求人代理人】園田・小林弁理士法人
- 【被請求人】上邁(上海)新能源科技有限公司
- 【被請求人代理人】園田・小林弁理士法人
- 審判長/審判官
- 審判長 山村 浩
- 審判官 吉野 三寛
- 審判官 後藤 孝平
- 分類
- P1113.121-YAA(H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第1項、特許法第134条の2第9項、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第6752537号発明「太陽光発電モジュール用シーリング材及びその製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第6752537号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨
本件審判の請求の趣旨及び答弁の趣旨は、次のとおりである。
1 請求の趣旨
特許第6752537号の請求項1~9に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。
2 答弁の趣旨
本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。
第2 手続の経緯
1 本件特許の出願の経緯の概略
特許第6752537号(以下「本件特許」という。)についての出願は、2017年(平成29年)1月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年8月18日、中国)を国際出願日とする出願であって、令和2年8月21日に設定登録がされた。
2 本件審判の手続の経緯
本件審判における手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
令和4年12月28日付け:審判請求書(以下、単に「請求書」という。
)の提出
令和5年 5月15日付け:審判事件答弁書及び訂正請求書(以下、単に
「訂正請求書」といい、この訂正請求書によ
る訂正を「本件訂正」という。)の提出
同年 7月26日付け:弁駁書(以下、単に「弁駁書」という。)
の提出
同年10月13日付け:審理事項通知書
同年11月21日付け:口頭審理陳述要領書(以下「請求人要領書」
という。)の提出(請求人)
同日付け:口頭審理陳述要領書の提出(被請求人)
同年12月12日 :第1回口頭審理期日
同月18日付け:上申書の提出(請求人)
令和6年 2月 9日付け:上申書の提出(請求人。以下「請求人上申書
1」という。)
同日付け:上申書の提出(被請求人)
同年 3月 8日付け:上申書の提出(請求人。以下「請求人上申書
2」という。)
同日付け:上申書の提出(被請求人)
同月29日付け:上申書の提出(請求人。以下「請求人上申書
3」という。)
同日付け:上申書の提出(被請求人)
同年 4月 5日付け:上申書の提出(請求人)
第3 訂正請求について
1 訂正請求の趣旨
訂正請求の趣旨は、次のとおりである。
特許第6752537号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求める。
2 訂正の内容
本件訂正は、次のとおりである(下線は、訂正箇所として被請求人が付したものである。)。
なお、本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項1~9について訂正されたものである。
(1) 訂正事項1
請求項1に、「繊維材料によるシーリング材の重量の30~50%を占める繊維布」と記載されているのを、「繊維材料によるシーリング材の重量の30~45%を占める繊維布」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~9も同様に訂正する。)。
(2) 訂正事項2
請求項1に、「アクリル樹脂、硬化剤及び添加剤を含むシーリング材の重量の50~70%を占めるアクリル粉体塗料」と記載されているのを、「アクリル樹脂、硬化剤及び添加剤を含むシーリング材の重量の55~70%を占めるアクリル粉体塗料」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~9も同様に訂正する。)。
3 訂正の適否についての判断
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の「繊維布」について、「シーリング材の重量の30~50%を占める」としていたものを、「シーリング材の重量の30~45%を占める」とするものであって、その重量比の範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無
本件特許の登録時の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の【0061】には、「実施例4では、シーリング材はシーリング材の重量の45%を占める線形すの目織りによる繊維布及びアクリル樹脂、硬化剤及び添加剤を含み、シーリング材の重量の55%を占めるアクリル粉体塗料を含む。」と記載されている。このように、本件明細書等には、シーリング材に対する繊維布の重量の割合について、「30~50%」であることが記載された上で、45%である実施例も記載されていたことから、訂正事項1に係る訂正は、当該重量の割合の上限を実施例として記載されていた数値にするにすぎないのであり、したがって、新たな技術的事項を導入するものではなく、新規事項を追加するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張、変更の存否
前記ア及びイにも照らせば、訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 小括
よって、訂正事項1は、訂正要件を満たす。
(2) 訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2に係る訂正は、訂正前の「アクリル粉体塗料」について、「シーリング材の重量の50~70%を占める」としていたものを、「シーリング材の重量の55~70%を占める」とするものであって、その重量比の範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無
前記(1)イで説示したとおり、本件明細書等の【0061】には、アクリル粉体塗料が、シーリング材の重量の55%を占めることが記載されており、本件明細書等には、シーリング材に対するアクリル粉体塗料の重量の割合について、「50~70%」であることが記載された上で、55%である実施例も記載されていたことから、訂正事項2に係る訂正は、当該重量の割合の下限を実施例として記載されていた数値にするにすぎないのであり、したがって、新たな技術的事項を導入するものではなく、新規事項を追加するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張、変更の存否
前記ア及びイにも照らせば、訂正事項2に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 小括
よって、訂正事項2は、訂正要件を満たす。
4 訂正の適否についての判断のまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。なお、本件訂正は、それに係るいずれの請求項も特許無効審判の請求がされたものであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第7項に規定されるいわゆる独立特許要件は課されない。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを認める。
第4 本件訂正発明について
前記第3のとおり本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1~9に係る発明(以下、それぞれ、「本件訂正発明1」~「本件訂正発明9」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~9によって特定されるものであって、その各請求項の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
繊維材料によるシーリング材の重量の30~45%を占める繊維布及び、アクリル樹脂、硬化剤及び添加剤を含むシーリング材の重量の55~70%を占めるアクリル粉体塗料を含み、前記のアクリル粉体塗料は均一して前記の繊維布に塗装されて前記の繊維布と熱接着され、
前記の硬化剤が前記のアクリル粉体塗料の重量の5~25%を占め、前記の硬化剤がブロックイソシアネート、無水フタル酸、無水トリメリット酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、カルボキシルポリエステル、水素化エポキシ、GMAアクリルのいずれかまたは自由割合の混合物であることを特徴とする、太陽光発電モジュール用シーリング材。
【請求項2】
前記の繊維布の単位面積当りの重量の範囲が30~400g/m2、前記の繊維布に塗装された前記のアクリル粉体塗料の単位面積当りの重量の範囲が100~400g/m2にあることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電モジュール用シーリング材。
【請求項3】
前記の繊維材料がガラス繊維、炭素繊維及びアラミド繊維のいずれかまたは複数の組合せであることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電モジュール用シーリング材。
【請求項4】
前記の繊維材料の糸単位の直径範囲が3~23μmであることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電モジュール用シーリング材。
【請求項5】
前記の繊維布は繊維材料は平織り、あや織り、シルク織り、線形すの目織りまたはマット織りのいずれかまたは複数の組合せによるものであることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電モジュール用シーリング材。
【請求項6】
前記の添加剤が前記のアクリル粉体塗料の重量の10~50%を占め、前記の添加剤がポリアミドワックス、ポリオレフィンワックス、アミド変性フェノール尿素界面活性剤、ベンゾイン、ポリジメチルシロキサン、ビニルトリクロロシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、メチルオルトシリケート、モノアルコキシピロリン酸、フタレイン、フェノール樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ジステアリルエチレンジアミン、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの混合物、ヒンダードフェノール、チオジプロピオン酸ダブル エステル、ベンゾフェノン、サリチレート誘導体、ヒンダードアミン、アルミナのいずれかまたは自由割合の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電モジュール用シーリング材。
【請求項7】
前記のアクリル粉体塗料の粒径範囲が35~300μmであることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電モジュール用シーリング材。
【請求項8】
操作手順が下記の通りであることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の太陽光発電モジュール用シーリング材の製造方法。
a)塗装装置で前記のアクリル粉体塗料を均一して前記の繊維布に塗装する。
b)加圧加熱で前記のアクリル粉体塗料が繊維布と熱接着に達成するようにする。
c)前記の手順b)で熱接着に達成したアクリル粉体塗料及び繊維布を複数に切断する。
d)太陽光発電モジュール用シーリング材を取得する。
【請求項9】
前記の熱接着プロセスにおける加圧範囲が0.05~0.25Mpa、前記の熱接着プロセスにおける加熱温度範囲が90~130℃、加熱時間範囲が5~20秒であることを特徴とする請求項8に記載の太陽光発電モジュール用シーリング材の製造方法。」
第5 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
請求人の主張する請求の理由(無効理由)は、次のとおりである。以下、証拠番号を示すときは、「第」及び「号証」を略する。
本件訂正発明1~9に対する主引用例である甲1-1に記載された発明及び周知技術(甲2及び8)、並びに必要に応じて甲6及び7に記載された技術的事項に基づく進歩性欠如。
2 証拠方法
請求人が提出した証拠は、次のとおりである。
甲1-1:国際公開第2015/055750号
甲1-2:特表2016-535439号公報
甲2:欧州特許出願公開第2623314号明細書
甲3:TIGER Drylac(RegisteredTrademark) 250/00108クリアの仕様書(2011年5月18日発行)なお、甲3の3枚目以降は、第1回口頭審理期日において撤回された。
甲3-A:TIGER Drylac(RegisteredTrademark) 250/00108クリアの安全データシート
甲4:TIGER Drylac(RegisteredTrademark) 250/00108クリアの仕様書(2012年8月15日発行)
甲5:TIGER Drylac(RegisteredTrademark) 260/00108クリアの仕様書
甲6:Powder Coatings Chemistry and Technology 3rd, Revised Edition
甲6-A:ISBN検索ウェブサイトhttps://isbnsearch.org/isbn/9783866308244
甲6-B:アップルブックスのウェブサイトhttps://books.apple.com/us/book/powder-coatings-chemistry-and-technology/id6444104358
甲7:粉体塗料の開発とその応用
甲8:国際公開第2013/094585号
甲9:TIGER Coatings GmbH & Co. KGのWebサイトhttps://www.advantageaustria.org/us/company/en/tiger-coatings-gmbh-co-kg
甲10:JPS Composite Materialsのウェブサイト https://www.pccomposites.com/products/e-glass-s-glass-s-glass/#:~:text=E%2Dglass%E2%80%94also%20known%20as,(158.6%20lb%2Fft3)
甲11:第2版 繊維便覧、丸善株式会社、1995年2月15日発行
甲12:プラスチック・データブック、株式会社 工業調査会、1990年12月1日
甲13:Allied Market Researchのウェブサイト https://www.alliedmarketresearch.com/press-release/acrylic-resins-market.html
甲14:TECHNICAL DATA SHEET POWDER COATING https://thermaset.co.uk/web_pdf/tds/tds_epoxy_powder_coating_thermaset.pdf
甲15:Communication pursuant to Article 94 (3) EPC
甲16:第4回 材料科学及び工学の国際会議のウェブサイト
甲17:コンクリート強化のためのガラス/天然ジュート繊維強化ポリマーバーの張力特性
甲17-A:IOP出版のウェブサイト https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1757-899X/103/1/012009
甲18:特開2014-67918号公報
甲19:国際公開第2012/030560号
甲20:特開2010-13838号公報
甲21:複合材料工学、日科技連、1998年12月8日
甲22:特開2011-14889号公報
甲23:特開2011-61151号公報
甲24:特開2011-91081号公報
甲25:国際公開第2015/012238号
甲26:JIS 2139-3-1:2018
甲27:GB/T31838.2-2019
第6 被請求人の主張及び証拠方法
1 被請求人の主張の概要
被請求人の主張する答弁の理由(無効理由に対する反論)は、請求人の主張する無効理由は成り立たないというものである。
2 証拠方法
被請求人が提出した証拠は、次のとおりである。
乙1:比較実験成績書とその翻訳
乙2:甲1-1の和訳(第2頁下から第6行~第3行)
乙3:比較実験成績書の補充説明とその翻訳
第7 当審の判断
1 提出された証拠に記載された事項の認定
(1) 甲1-1(主引用例)
ア 甲1-1に記載された事項
甲1-1には、次の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。なお、摘記は、原則として、甲1-1の日本語ファミリである甲1-2の記載によるものとし、末尾に甲1-1の記載箇所を括弧内に付してある。
以下、甲1-1に係る記載箇所は、甲1-2の段落番号等をもって特定することとする。
「【請求項1】
複合材料(5a,5b)が、ガラス繊維(6a,6b)で強化された、エポキシ基を含むアクリレートに基づくプラスチック(7a,7b)であることを特徴とする、少なくとも光に面する面(3)及び光に面しない反対側の面(4)において、透明な複合材料(5a,5b)で覆われた少なくとも1つの太陽電池(2)を備える、光起電性パネル(1)。
【請求項2】
エポキシ基を含むアクリレートがグリシジルメタクリレートであることを特徴とする、請求項1に記載の光起電性パネル(1)。」(甲1-1の12頁2~11行)
「【0002】
太陽放射から電気的エネルギーを得ることに関する光起電性パネルは、一般的に知られている。太陽エネルギーを電気的エネルギーに変換することに関するこれらのパネルは、太陽電池、特に具体的には、各々が通常適切なドープシリコンで製造され、合わさってモジュールを形成する修飾無機半導体又は半導体ウェハーを含む。有機半導体、又はテルル化カドミウム、銅/インジウム/(ジ)セレナイド、又は銅/インジウム/ガリウム/スルフィド/セレナイド若しくはアモルファスシリコンを含む真空蒸着薄膜半導体層を用いることも知られている。モジュールは、ハウジング中に組み入れられた適切なデバイスによりラミネートされ、例えば雨や雪等の環境の影響からそれらを保護するガラスプレートで覆われる。この方法で製造された光起電性パネルは、太陽放射の電気的エネルギーへの変換に好適な場所に設置されてよい。しかし、光起電性パネルは、概して剛直であり、実質的に柔軟性がなく、かつ、大きな質量を有するように設計される。その質量は光起電性モジュールのハウジングとカバーにより主に決定される。
【0003】
従来技術において、光起電性パネルは、これらの不利益の幾らかに関して既に改善されていることが知られている。
【0004】
WO2013/119113A1は、繊維強化熱可塑性ポリマー、特にポリメチルメタクリレートを含む透明な複合材料のシースにより、環境の影響、例えば機械的損傷から太陽電池が保護される光起電性パネルを開示する。製造に関して、パネルは強化繊維の織物(TISSUE)に沿って型上に配置され、液状熱可塑性ポリマーが、150~250℃、かつ1~500BARの圧力において型に導入される。ガラスカバーを備えるパネルと比較すると、より薄く、より軽量で機械的強度の高いパネルを製造することが可能である。しかし、平らでない、及び/又は曲がったパネルの製造に関して、適切な設計の型が要求される。
【0005】
DT2445642A1は、太陽電池及びその接続要素が、単一の材料により全ての面で包囲された太陽電池発電機に関する。ガラス繊維強化剤を含む、又は含まないポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリマーアクリル系ポリエステル及びエポキシ樹脂、並びにポリカーボネートの群の熱可塑性樹脂が、材料として言及される。製造に関して、太陽電池は、太陽電池が合成樹脂の硬化の後に均一なシースで包囲されるように、合成樹脂を含浸させたガラス繊維層上に配置され、同一の合成樹脂を含浸させた第二のガラス繊維層で覆われる。しかし、文書は、太陽電池発電機の強度、厚さ又は質量に関する詳細を何も開示しない。
【0006】
EP0071181A2は、太陽電池を備えた柔軟な光起電性太陽モジュールを開示する。ここで、少なくとも太陽電池が、薄層状の補強材により基礎とされ、及び/又はその保護用の薄い補強用ガラス層で覆われる一方、太陽モジュール面の残りは補強されない。太陽モジュールは、例えば、金属ファブリック、柔軟な繊維強化複合材料、又は強化プラスチックフォイル等の柔軟なキャリア要素を含む。太陽電池は、プラスチックフォイル又は柔軟な複合材料で囲まれる。太陽モジュールの複雑な構造と制限された柔軟性は、ここでは不利益である。
【0007】
本発明の目的は、従来技術の不利益を回避し、又は少なくとも低減する、軽量で厚さの小さい光起電性パネルを与えることである。特に、光起電性パネルが可能な限り柔軟な設計を有すること、及び太陽電池が、例えば雹による機械的損傷等の環境の影響から保護されることが意図される。さらに、パネルが可能な限り高い効率を有すること、及び簡易でコスト効率のよい方法で製造されることが意図される(当審注:甲1-2には「例えば霧による機械的損傷」と記載されているが、「例えば雹による機械的損傷」の誤訳であると認められる(乙2)ので、誤訳を正して摘記した。)。
【0008】
本発明によれば、目的は、複合材料が、エポキシ基を含むアクリレートに基づくガラス繊維強化プラスチックであることを特徴とする、少なくとも光に面する面及び光に面しない面において、透明な複合材料で覆われた少なくとも1つの太陽電池を備える光起電性パネルで解決される。…(中略)…。本開示でガラス繊維という場合、これは概して、エポキシ基を含むアクリレートに基づくプラスチックを強化するのに要求される強度を有する透明な強化繊維を意味する。…(後略)…。
【0009】
本発明の好ましい実施態様によれば、エポキシ基を含むアクリレートはグリシジルメタクリレートである。
【0010】
ガラス繊維のフィラメント直径が3~15μm、好ましくは6~12μm、特に好ましくは9μmである場合、ガラス繊維で形成された強化層、したがって複合材料の層も、特に薄く柔軟であり、かつ、軽量であるように設計されてよい。
【0011】
好ましくは、少なくとも1つの太陽電池の光に面する面において、ガラス繊維は、50~300g/m2、好ましくは100~200g/m2、特に好ましくは160~165g/m2の目付を有するファブリックとして設計される。ファブリックとしてのガラス繊維の設計は、複合材料、したがってパネルの積載量を増大させる。さらに、係る軽量ファブリックは、軽量のパネルの製造も可能にする。」(甲1-1の1頁8行~5頁12行)
「【0015】
本発明によれば、目的は、前記の光起電性パネルの製造方法でさらに解決され、方法は、
ガラス繊維の第一のファブリックにエポキシ基を含む粉末アクリレートを適用する工程と、
少なくとも1つの太陽電池と、太陽電池に接続された電気的分岐線と、エポキシ基を含む粉末アクリレート、又はエポキシ基を含む粉末アクリレートに適用されたエチレンビニルアセテートの層上の複数の太陽電池を接続する可能な接続線とを配置する工程と、
少なくとも1つの太陽電池、分岐線、及び可能な接続線上にガラス繊維の第二のファブリックを配置する工程と、
第二のファブリックにエポキシ基を含む粉末アクリレートを適用する工程と、
全体の構造をラミネートする工程と、
を含む。
【0016】
ラミネートすることにより、エポキシ基を含む粉末アクリレートは、融合し、透明であり、構造の個々の層は、互いに結合する。この方法によれば、少なくとも1つの太陽電池又は複数の太陽電池は、ラミネートした後に、光に面する面と光に面しない面において各々透明な複合材料で覆われ、及び/又は、複合材料で包囲される。さらに、1つ又は複数の太陽電池の分岐線及び複数の太陽電池を接続する可能な接続線も、透明な複合材料で少なくとも部分的に包囲される。複合材料は、ここでは各々ガラス繊維ファブリックとエポキシ基を含むアクリレートとを含む。構造は、製造するのに簡易かつコスト効率がよい。エポキシ基を含む粉末アクリレートは、好ましくは粉末スプレッダーで各ファブリックに適用され、さらに適切に計測されてよい。エポキシ基を含むアクリレートは、ファブリックのメッシュ開口部に部分的に侵入してよく、したがってラミネートする間にファブリックのガラス繊維の周りでよりよく融合してよい。粉末が、非常に小さい粒径を有してよいこと、及び「粉末」はしたがって「微細粉末」も含んでよいことが指摘される。さらに、環境の影響からの追加の保護のために、エチレンビニルアセテートの層が、第一のファブリックに適用されたエポキシ基を含む粉末アクリレートと、太陽電池及び/又はその分岐線及び可能な接続線との間に与えられてよい。
【0017】
好ましくは、グリシジルメタクリレートが、エポキシ基を含むアクリレートとして適用される。ラミネートした後に、グリシジルメタクリレートは透明であり、その透明性は光起電性パネルの寿命の間に実質的に変化しないままであり、黄色くならない。さらにそれは、ガラス繊維ファブリックに沿ってパネルの高い強度を与え、かつ、柔軟性を維持する。
【0018】
150~200℃の温度、最大500mbarの圧力において、0~300mbarの真空下でラミネートを実施する場合が特に好ましい。最大500mbarの圧力は、言及された真空下にある構造の層に働く。例えば、圧力は、真空に供された層に作用するプレートに適用されてよい。特定の理論を参照することなく、粉末形態のエポキシ基を含むアクリレートをファブリックに適用することにより、換気チャンネルは、粉末により最初は塞がれていないファブリック中に残り、それは、真空の適用で、ラミネートされた複合材料中のエアロックをほとんど完全に回避することに寄与すると考えられる。」(甲1-1の6頁12行~7頁35行)
「【0021】
粒径が10~500μm、好ましくは25~100μm、特に好ましくは40~50μmである、エポキシ基を含む粉末アクリレートが、第一及び第二のファブリックに適用される場合が特に有利である。粒径の好適な選択は、ファブリックに適用された粉末が、ファブリックのメッシュ開口部に部分的に侵入することを可能にし、したがって粒子が小さすぎる場合に過度に滴ることも、粒子が大きすぎる場合にファブリック上及びメッシュの上方に過度に残ることもない。このように、粉末とファブリックとの接着が追加的に向上する。」(甲1-1の8頁12~22行)
【0027】
グリシジルメタクリレートの例は、TIGER Drylac U.S.A.,Inc.のTiger Drylac(コピーライト)250/00108クリアである。…(後略)…。」(甲1-1の9頁33~34行)
「図1
[図:0001419608000001.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明の認定
前記アによれば、甲1-1には、
(i) 請求項2が引用する請求項1に記載された光起電性パネル(1)の太陽電池(2)を覆う透明な複合材料(5a、5b)であって、ガラス繊維(6a、6b)がファブリックであり(【0015】)、エポキシ基を含むアクリレートとしてエポキシ基を含む粉末アクリレートを用いること(【0015】、【0016】)についての発明(以下「甲1発明1」という。)と、
(ii) 前記(i)の発明において、【0027】に記載された、グリシジルメタクリレートとして「TIGER Drylac U.S.A.,Inc.のTiger Drylac(コピーライト)250/00108クリア」を用いたものについての発明(以下「甲1発明2」という。)が記載されており、
甲1発明1及び甲1発明2(以下、これらを総称して「甲1発明」ということがある。)は、次のとおりであると認められる(なお、甲1発明の認定に用いた甲1-2に係る段落番号等を、参考までに、括弧内に付してある。)。
<甲1発明1>
「ガラス繊維(6a、6b)で強化された、エポキシ基を含むアクリレートに基づくプラスチック(7a、7b)であり、太陽電池(2)を覆う、複合材料(5a、5b)であって、(請求項1)
エポキシ基を含むアクリレートが、グリシジルメタクリレートであり、(請求項2)
ガラス繊維(6a、6b)は、ファブリックであり、(【0015】)
複合材料(5a、5b)は、ガラス繊維(6a、6b)にエポキシ基を含む粉末アクリレートを適用し、ラミネートすることにより、エポキシ基を含む粉末アクリレートが融合して製造されるものである、(【0015】、【0016】)
複合材料(5a、5b)。」
<甲1発明2>
「ガラス繊維(6a、6b)で強化された、エポキシ基を含むアクリレートに基づくプラスチック(7a、7b)であり、太陽電池(2)を覆う、複合材料(5a、5b)であって、(請求項1)
エポキシ基を含むアクリレートが、グリシジルメタクリレートであり、(請求項2)
ガラス繊維(6a、6b)は、ファブリックであり、(【0015】)
複合材料(5a、5b)は、ガラス繊維(6a、6b)にエポキシ基を含む粉末アクリレートを適用し、ラミネートすることにより、エポキシ基を含む粉末アクリレートが融合して製造されるものであり、(【0015】、【0016】)
前記グリシジルメタクリレートが、TIGER Drylac U.S.A.,Inc.のTiger Drylac(コピーライト)250/00108クリアである、(【0027】)
複合材料(5a、5b)。」
(2) 甲2及び8に記載された事項の認定
ア 甲2
次の記載がある。
「[0022]本発明で使用される熱可塑性ポリマーは繊維で強化されている。繊維強化複合材料は透明であるため、繊維材料自体も透明であることが好ましい。したがって、有利な実施形態では、繊維はガラス繊維である。繊維強化材は、5~25μmの範囲のフィラメント直径を適切に有することができる。繊維は、フェルト、シートまたはマットの形態などのウェブプリフォームで有利に構造化され得る。したがって、繊維織物、繊維マット(細断繊維および/又は連続繊維を含む)、繊維シート、および繊維フェルトを適用することができる。ガラス繊維ウェブは、織布ウェブまたは不織ウェブの形態であってもよい。これらの事前に構造化されたウェブ状の補強材は、封止材料に追加の機械的強度を与えることができる。」
「[0027]透明複合材料は、20体積%~80体積%、好ましくは40体積%~60体積%の範囲の繊維強化材の含有量を有することができる。カプセル化材料中の繊維強化材の含有量が非常に多いと、透明性に不利になり得、一方、繊維強化材の含有量が比較的少ないと、カプセル化材料の機械的強度が低下しうる。」
イ 甲8
次の記載がある。
「[0014] また、本発明のガラス繊維複合化樹脂基板としては、前記硬化性樹脂組成物を前記ガラス繊維に含浸させた後に前記硬化性樹脂組成物を硬化せしめたものであることが好ましい。さらに、前記硬化性樹脂組成物の硬化物と前記ガラス繊維との質量比(硬化物の質量:ガラス繊維の質量)が20:80~70:30であることが好ましく、厚さが0.03~0.5mmであることが好ましい。」
「[0063] 本発明のガラス繊維複合化樹脂基板としては、1m2当たりの前記硬化性樹脂組成物の硬化物と前記ガラス繊維との質量比(硬化物の質量:ガラス繊維の質量)が20:80~70:30であることが好ましく、40:60~60:40であることがより好ましい。前記硬化物に対するガラス繊維の割合が前記下限未満である場合には、ガラス繊維複合化樹脂基板の耐熱性が低下し、熱膨張係数が20ppm/Kを越える傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、ガラス繊維への含浸が不十分となり、繊維間に空隙が残存してガラス繊維複合化樹脂基板の透明性が低下(ヘイズ増加)する傾向にある。そのため、前記含浸においては、硬化後の前記硬化性樹脂組成物の質量と前記ガラス繊維の質量との比が前記範囲内となるように含浸せしめることが好ましい。」
(3) 請求人が提出したその他の証拠に記載された事項の認定
ア 甲3
Tiger Drylac(登録商標)250/00108クリアが、アクリルであること(1頁、ベース)。
イ 甲3-A
Tiger Drylac(登録商標)250/00108クリアが、ドデカン二酸を含むこと(3頁、組成・成分情報)。
ウ 甲4
Tiger Drylac(登録商標)250/00108クリアの製品データシートは定期的に更新されること(1頁、下欄)。
エ 甲5
Tiger Drylac(登録商標)260/00108クリアが、CFRP/GFRP用のマトリクスパウダー樹脂であること(冒頭箇所)。
オ 甲6
プライマーサーフェーサー樹脂は、通常、アクリル/スチレン/メタクリル酸メチル混合物で作られ、ドデカン二酸(DDDA)で硬化されること(18頁4段落)。
カ 甲6-A
甲6が、2014年に出版されたこと(1頁、書誌事項)。
キ 甲6-B
甲6が、2014年1月15日に出版されたこと(1頁、リリース)。
ク 甲7
アクリル粉体塗料は、グリシジル基を有するアクリル樹脂と硬化剤として脂肪族二塩基酸化化合物を配合し加熱硬化させる塗料であること(17頁、「3.1.4 アクリル粉体塗料」の項)
ケ 甲9
TIGER Drylac U.S.A.,Inc.及びTIGER Coatings GmbH & KGが、TIGER Coatings(オーストラリア)の子会社であること(1頁)。
コ 甲10
ガラス繊維に使用される標準的なガラス組成物であるE-ガラスの密度が、2.54g/cm3であること(3頁)。
サ 甲11
ガラス繊維であるEガラスの比重が、2.54であること(121頁、表1・51)。
シ 甲12
メタクリル樹脂(PMMA)の比重が、1.17~1.20であること(9頁、表中の「メタクリル樹脂」の欄)。
ス 甲13
アクリル樹脂の密度が、1.02~1.19g/ccであること(1頁1段落)。
セ 甲14
エポキシ粉体塗料の密度が、1.3~1.8g/cm3であること(1頁、粉体特性の欄)。
ソ 甲15
欧州特許庁の拒絶理由通知において、ガラス繊維の体積%が、40~60体積%である場合に、その重量%は、およそ33~89重量%程度であることが認定されたこと(4頁4~10行)。
タ 甲16
CMSE2015(第4回材料科学及び工学の国際会議)が、2015年8月3~6日に開催されたこと(冒頭)。
チ 甲17
「コンクリート強化のためのガラス/天然ジュート繊維強化ポリマーバーの張力特性」と題する論文の頁の上部に、「第4回材料科学及び工学の国際会議(CMSE2015)」という記載があること(1頁)
ガラス繊維の密度が、2.56g/cm3であること(2頁6~9行)。
ツ 甲17-A
「IOSサイエンス」において、「コンクリート強化のためのガラス/天然ジュート繊維強化ポリマーバーの張力特性」と題する論文のタイトルと、「IOP会議シリーズ:材料科学及び工学の国際会議、103巻、第4回 材料科学及び工学の国際会議(CMSE2015)2015年8月3~6日」の記載があること(1頁、書誌事項)。
テ 甲18
次の記載がある。
「酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、硫黄系、リン系、アミン系、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ヒドラジン系等の酸化防止剤が挙げられる。」(【0074】)、「光安定化剤としては、特に限定されないが、変色しにくいため透明性を確保できるという観点から、ヒンダードアミン系光安定化剤が好ましい。」(【0075】)
ト 甲19
次の記載がある。
「本発明の硬化性組成物には、紫外線吸収剤を使用することができる。紫外線吸収剤を使用すると硬化物の表面耐候性を高めることができる。紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチレート系、置換トリル系及び金属キレート系化合物等が例示できるが、特にベンゾトリアゾール系が好ましい。」([0149])
ナ 甲20
次の記載がある。
「(E)無機充填剤
本発明の樹脂組成物に配合される無機充填剤としては、通常エポキシ樹脂組成物及びシリコーン樹脂組成物に配合されるものを使用することができる。例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド等が挙げられ、更にガラス繊維、ウォラステナイトなどの繊維状充填剤、三酸化アンチモン等が挙げられる。」(【0055】)
ニ 甲21
ガラス繊維強化プラスチックの力学特性はガラス含量に依存すること、及びガラス含量と特性値(弾性率)の関係が、下記の図6.8に示されること(278頁)。
「図6.8
[図:0001419608000002.jpg]
」
ヌ 甲22
光電変換装置に用いられる繊維体を含む構造体(【0009】)は、無機化合物の繊維体106に有機樹脂107を含浸することで形成することができ(【0033】)、当該繊維体106としてガラス繊維が挙げられ(【0080】)、繊維体106は、平織り、綾織り、しゅす織り等を適宜用いた織布であってよいこと(【0081】)。
ネ 甲23
太陽電池用裏面保護シートの基材である複合材料層11(【0014】)は、繊維基材および熱硬化性樹脂の硬化物を含有する層であり、繊維基材を構成する繊維はガラス繊維であり、繊維基材の形態は、平織り、綾織、朱子織り、目抜き平織り、目抜きカラミ織り等、長繊維を用いた織物が好ましいこと(【0015】)。
ノ 甲24
太陽電池用裏面保護シートは複合材料基材11を有し(【0013】)、複合材料基材11は、繊維基材に熱硬化性樹脂が含浸され、乾燥されたプリプレグが硬化された硬化物を含む基材であり、繊維基材はガラス繊維であり、繊維基材における繊維形状は、平織り、綾織、朱子織り、目抜き平織り、目抜きカラミ織り等、長繊維を用いた織物が好ましいこと(【0014】)。
ハ 甲25
積層シート10は、マトリックス12と、マトリックス12に埋設されたガラス繊維布帛14とからなるが繊維強化樹脂シートの層を有し(【0015】)、ガラス繊維布帛は、ガラス繊維からなる織布であり(【0030】)、織布の組織としては、平織り、綾織り、絡み織り、編織り等が挙げられること(【0034】)。
ヒ 甲26
体積抵抗及び体積抵抗率の測定において、試験の再現精度は、測定値に対して50%以上、繰返し精度は、20~50%であること(9頁、「8 再現精度及び繰返し精度」の項)。
フ 甲27
体積抵抗及び体積抵抗率の測定において、試験の再現精度は、測定値に対して50%以上、繰返し精度は、20~50%であること(11頁、「8 再現精度及び繰返し精度」)。
(4) 被請求人が提出した証拠に記載された事項の認定
ア 乙1
「粉末含有率50%のフロントパネルと通常のフロントパネルとの性能比較」と題する実験結果が記載されている。
イ 乙2
甲1-1の【0007】の和訳は、「本発明の目的は、従来技術の不利益を回避し、又は少なくとも低減する、軽量で厚さの小さい光起電性パネルを与えることである。特に、光起電性パネルは可能な限り柔軟であるように設計されるべきであり、かつ、太陽電池は、例えば霧からの機械的損傷等の環境の影響から保護されるべきである。さらに、パネルは、可能な限り高い効率を有し、かつ製造するのに簡易であり、高価にはならないべきである。」であること。
ウ 乙3
乙1の実験成績書についての補足事項が記載されている。
2 無効理由に対する判断
(1) 本件訂正発明1について
ア 本件訂正発明1と甲1発明1との対比(一致点及び相違点の認定)
(ア) 本件訂正発明1の「繊維材料によるシーリング材の重量の30~45%を占める繊維布及び、アクリル樹脂、硬化剤及び添加剤を含むシーリング材の重量の55~70%を占めるアクリル粉体塗料を含み、」及び「太陽光発電モジュール用シーリング材」との特定事項について
a 甲1発明1の「ガラス繊維(6a、6b)」は、「ファブリック」であるから、本件訂正発明1の「繊維材料による」「繊維布」に相当する。
b 甲1発明1の「エポキシ基を含む粉末アクリレート」は、本件訂正発明1の「アクリル粉体塗料」とは、アクリル樹脂を含むアクリル粉体塗料である点で共通する。
すなわち、甲1発明1の「エポキシ基を含む粉末アクリレート」は、「粉末」とされることにも照らせば、本件訂正発明1の「アクリル樹脂」に相当する構成が含まれると解される。そして、甲1発明1の「複合材料(5a、5b)」は、「ガラス繊維(6a、6b)にエポキシ基を含む粉末アクリレートを適用し、ラミネートすることにより、エポキシ基を含む粉末アクリレートが融合して製造される」ものであるところ、「ガラス繊維(6a、6b)にエポキシ基を含む粉末アクリレートを適用」するとの工程に照らせば、当該「エポキシ基を含む粉末アクリレート」は、粉体の塗料としてガラス繊維に塗布されるものと解されるから、本件訂正発明1の「アクリル粉体塗料」に相当し、上記のとおり「アクリル樹脂」を含むものといえる。
c 甲1発明1の「複合材料(5a、5b)」は、「太陽電池(2)を覆う」ものであり、「ガラス繊維(6a、6b)にエポキシ基を含む粉末アクリレートを適用し、ラミネートすることにより、エポキシ基を含む粉末アクリレートが融合して製造されるもの」であるから、本件訂正発明1の「シーリング材」に相当する。そして、当該「複合材料(5a、5b)」は、前記a及びbに照らせば、本件訂正発明1でいう「繊維布及び」「アクリル粉体塗料を含」むものであり、「太陽光発電モジュール用」であるといえる。
これに対して、被請求人は、甲1発明1の「複合材料(5a、5b)」が本件訂正発明1の「シーリング材」に相当するとはいえない旨主張し、その根拠として、本件訂正発明1の「シーリング材」の役割及び位置づけは、従来のシーリングの構成の強化ガラスを代替するものであることを挙げる。しかしながら、「シーリング材」とは、シールする材、つまり、封止材程度の意味合いであると解されることから、強化ガラスの代替などといった意味合いをそこに読み込むことはできず、被請求人の主張は、本件訂正発明1の特定事項に基づかないものである。そして、甲1発明1の「複合材料(5a、5b)」も、上記のとおりに、ラミネート等されることで製造されるから、封止材ということができる。したがって、被請求人の主張は採用できない。
d 甲1発明1の「複合材料(5a、5b)」は、「ガラス繊維(6a、6b)にエポキシ基を含む粉末アクリレートを適用し」て製造されるものであるから、当該「ガラス繊維(6a、6b)」及び「エポキシ基を含む粉末アクリレート」のそれぞれの重量が、「複合材料(5a、5b)」の重量に対して所定の割合を有することは明らかである。そうすると、本件訂正発明1と甲1発明1は、「シーリング材」の重量に対する「繊維布」及び「アクリル粉体塗料」の重量が、それぞれ所定の割合を有する点で共通する。
e 甲1発明1の「エポキシ基を含む粉末アクリレート」が、本件訂正発明1でいう「硬化剤」及び「添加剤」を含むのかは明らかでない。
f したがって、本件訂正発明1の前記特定事項と甲1発明1は、「繊維材料によるシーリング材の重量の」所定の割合「を占める繊維布及び、アクリル樹脂」「を含むシーリング材の重量の」所定の割合「を占めるアクリル粉体塗料を含」む「太陽光発電モジュール用シーリング材」である点で共通する。
しかしながら、「シーリング材」の重量に対する所定の割合について、本件訂正発明1は、「繊維布」の重量の所定の割合及び「アクリル粉体塗料」の重量の所定の割合が、それぞれ「30~45%」及び「55~70%」であるのに対して、甲1発明1は、そのような割合か明らかではない。また、アクリル樹脂を含むアクリル粉体塗料が、本件訂正発明1は「硬化剤」及び「添加剤」を含むのに対し、甲1発明1はそうであるのか不明である。
(イ) 本件訂正発明1の「前記のアクリル粉体塗料は均一して前記の繊維布に塗装されて前記の繊維布と熱接着され、」との特定事項について
a 甲1発明1の「複合材料(5a、5b)」は、「ガラス繊維(6a、6b)で強化された、エポキシ基を含むアクリレートに基づくプラスチック」であって、プラスチックの中にガラス繊維が入ることで強化されるものであることに照らせば、当該プラスチックの中には、ガラス繊維が均一に存在していると理解することが自然である。そして、このようにガラス繊維が均一に存在する「複合材料(5a、5b)」が製造される以上、ガラス繊維にエポキシ基を含む粉末アクリレートを適用する際には、当該エポキシ基を含む粉末アクリレートが前記ガラス繊維に均一に塗布されると理解することが自然である。そうすると、甲1発明1は、本件訂正発明1でいう「前記のアクリル粉体塗料は均一して前記の繊維布に塗装され」るものといえる。
b 甲1発明1の「複合材料(5a、5b)」は、「ラミネートすることにより、エポキシ基を含む粉末アクリレートが融合して製造される」のであるから、ラミネートによる熱によりエポキシ基を含む粉末アクリレートが溶融し、ガラス繊維(6a、6b)と融合して複合材料(5a、5b)が製造されるものと理解できるのであり、そのため、甲1発明1は、本件訂正発明1でいう「前記のアクリル粉体塗料は、」「前記の繊維布と熱接着され」るものといえる。
c したがって、甲1発明1は、本件訂正発明1の前記特定事項を満たしている。
(ウ) 本件訂正発明1の「前記の硬化剤が前記のアクリル粉体塗料の重量の5~25%を占め」、「前記の硬化剤がブロックイソシアネート、無水フタル酸、無水トリメリット酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、カルボキシルポリエステル、水素化エポキシ、GMAアクリルのいずれかまたは自由割合の混合物である」との特定事項について
前記(ア)eのとおり、甲1発明1の「エポキシ基を含む粉末アクリレート」は、硬化剤を含むのかすら明らかでないから、甲1発明1が、本件訂正発明1の前記特定事項を満たすかも、明らかでない。
(エ) 以上によれば、本件訂正発明1と甲1発明1の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「繊維材料によるシーリング材の重量の所定の割合を占める繊維布及び、アクリル樹脂を含むシーリング材の重量の所定の割合を占めるアクリル粉体塗料を含み、前記のアクリル粉体塗料は均一して前記の繊維布に塗装されて前記の繊維布と熱接着される、
太陽光発電モジュール用シーリング材。」
<相違点>
・相違点1
「アクリル粉体塗料」について、本件訂正発明1は、「硬化剤」及び「添加剤」を含み、前記「硬化剤」が「前記のアクリル粉体塗料の重量の5~25%を占め、前記の硬化剤がブロックイソシアネート、無水フタル酸、無水トリメリット酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、カルボキシルポリエステル、水素化エポキシ、GMAアクリルのいずれかまたは自由割合の混合物である」のに対して、甲1発明1は、硬化剤及び添加剤を含むのかすら明らかでない点。
・相違点2
「シーリング材」の重量に対する所定の割合について、本件訂正発明1は、「繊維布」の重量の所定の割合及び「アクリル粉体塗料」の重量の所定の割合が、それぞれ「30~45%」及び「55~70%」であるのに対して、甲1発明1は、そのような割合か明らかではない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点2から判断する。
(ア) 検討すべき事項について
相違点2に係る本件訂正発明1の構成は、「シーリング材」の重量に対する「繊維布」及び「アクリル粉体塗料」の重量の所定の割合が、それぞれ、「30~45%」及び「55~70%」である(以下、「シーリング材」の重量に対する「繊維布」の重量の割合を「本件繊維布重量比」といい、同じく「アクリル粉体塗料」の重量の割合を「本件アクリル粉体塗料重量比」という。)。しかるに、甲1発明1から出発した当業者が相違点2に係る本件訂正発明1の構成に至るためには、「複合材料(5a、5b)」(以下、単に「複合材料」ということがある。本件訂正発明1の「シーリング材」に相当。)の重量に対する「エポキシ基を含む粉末アクリレート」(以下、単に「粉末アクリレート」ということがある。本件訂正発明1の「アクリル粉体塗料」に相当。)の重量、つまり、本件アクリル粉体塗料重量比を「55~70%」とすることを少なくとも要することになる。
そして、この検討に際しては、本件訂正発明1において相違点2に係る構成、つまり、本件繊維布重量比を「30~45%」とし、本件アクリル粉体塗料重量比を「55~70%」とする構成を採用した技術的意義、及び甲1発明1において「ガラス繊維6a、6b」(以下、単に「ガラス繊維」ということがある。)に粉末アクリレートを適用して、ラミネートすることにより複合材料を製造した技術的意義を考慮すべきであることから、以下、これらを認定した上で、相違点2の容易想到性について判断する。
(イ) 本件訂正発明1において相違点2に係る構成(本件繊維布重量比を「30~45%」とし、本件アクリル粉体塗料重量比を「55~70%」とする構成)を採用した技術的意義について
a 本件特許の発明の詳細な説明には、従来技術と解決すべき課題、当該課題を解決する手段に関連する記載として、以下の記載がある。
「【0004】
太陽光発電分野用シーリング材として、耐紫外線、耐劣化などの性能が必要である。図5によると、従来の太陽光発電モジュールはシーリングの構成が上から下へ順序に強化ガラス層30c、上EVA層21c、太陽光発電バッテリーボード層10c、下EVA層22c、背板層40cがある。その中、強化ガラス層は密度が2.5g/cm3であるが、強化ガラスの常用厚さが3.2mmであるので、強化ガラスの平方メートルごとの重量が8kgに達し、それによるシーリングで完成される太陽光発電モジュールは質量が大きく、平方メートルごとの質量が10kg以上に達し、スタンドを加え、太陽光発電モジュール平方メートルごとの重量が12kg以上に達し、建物の頂部または壁面などに用いられる場合、太陽光発電モジュールのスタンドに対する要求が高く、工事の難しさ及び取付コストが増加する。具体的に言えば、建物の頂部または壁面に取り付ける場合、重量が重く、労働強さが大きく、実施しがたい。特に、建物の耐荷重に制限され、太陽光発電モジュールを取り付けることができない場合がある。それと同時に、従来の太陽光発電モジュールはシーリングの構成の外観が単一であり、建物の美観に対する要求に達成しがたい。
【0005】
現在、シーリング材を変更して太陽光発電モジュールの軽量化の課題を解決しようとするソリューションがあるが、即ち、高い光透過性フィルムや透明背板で強化ガラスを取り替える。但し、実際に利用する過程に、前記の高い光透過性フィルムや透明背板でEVA、POEなどのフィルムだけを利用するので、シーリングされた太陽光発電モジュールは耐衝撃及び耐火などの性能で太陽光発電業種の技術基準に満たすことができない。
【0006】
太陽光発電モジュールの重量を削減するソリューションもある。例えば、特許文献1では、耐候性が高く、伝熱率の高い塗層及び放熱太陽エネルギー背板を開示したが、その塗層の生産プロセスで溶剤が多く利用され、汚染がひどく、エコ基準に満たさない。また、特許文献2でUV硬化耐候塗層の太陽エネルギー電池背板を開示したが、その液体塗装プロセスが複雑であり、不良率が高く、機器上の投資が多額である。更に、特許文献3、4、5、6、7でフッ素含有ポリマーを利用するが、フッ素含有ポリマーは価格が高いので、生産コストが向上する。それだけでなく、前記の特許で開示したものは太陽光発電背板用材料だけであり、透光性がなく、硬度が低く、剛性が弱く、従来の強化ガラスの代替に適しない。
【0007】
よって、従来の太陽光発電モジュールのシーリングの構成にあるシーリング材の重量が重いという課題を解決する同時に、耐紫外線、耐劣化、耐衝撃及び耐火など太陽光発電業種の技術基準の要求に満たす太陽光発電モジュール用シーリング材を探し出すことは課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国特許出願公開第102516852号公報
【特許文献2】中国特許出願公開第102610680号公報
【特許文献3】中国特許出願公開第102712184号公報
【特許文献4】中国特許出願公開第103346182号公報
【特許文献5】中国特許第102969382号公報
【特許文献6】中国特許第101290950号公報
【特許文献7】中国特許出願公開第103958196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって、本発明は製造コストが低いだけでなく、耐紫外線、耐劣化、耐衝撃及び耐火など太陽光発電業種の技術基準に満たす前提で、効果的に太陽光発電モジュールのシーリング材の軽量化に達成し、便利に取り付けられるようになり、取り付けるコストが低くなるので、非常に太陽光発電分野における規模的利用に適する太陽光発電モジュール用シーリング材を提供することを目的にする。」
「【0026】
本発明によると、シーリング材の重量の30~50%を占める繊維布及び均一して繊維布に塗装され、シーリング材の重量の50~70%を占めるアクリル粉体塗料を太陽光発電モジュールのシーリング材にし、耐紫外線、耐劣化、耐衝撃及び耐火など太陽光発電業種の技術基準に満たす前提で効果的に太陽光発電モジュールのシーリング材の軽量化に達成し、且つ製造コストが低く、従来のシーリングの構成の強化ガラスを代替し、太陽光発電モジュールに決まった剛性を提供して太陽光発電電池を保護する。それによると、大いに太陽光発電モジュールの重量を軽減して更に多くの場合に太陽光発電製品の取付に適することができるだけでなく、製品を取り付ける場合に労働強度が低くなり、便利に取り付けられるようになり、全体的に太陽光発電モジュールの取付コストを削減する。」
b 前記aの各記載によれば、本件訂正発明1において相違点2に係る構成を採用した技術的意義は、強化ガラスを用いたシーリング材は重量が重く(【0004】)、高い光透過性フィルムや透明背板を用いたシーリング材は軽量であるが、太陽発電業種の技術基準を満たすことができず(【0005】)、太陽光発電モジュールの重量を削減するソリューションも従来の強化ガラスの代替に適しない(【0006】)ことから、相違点2に係る構成である「30~45%」の本件繊維布重量比と「55~70%」の本件アクリル粉体塗料重量比を満たす「シーリング材」を採用して、(i)シーリング材の重量が重いという課題を解決することと(ii)太陽光発電業種の技術基準(耐紫外線、耐劣化、耐衝撃及び耐火など)を満たすことを両立すること(【0007】・【0009】・【0026】)にあると認められる。
(ウ) 甲1発明1において「ガラス繊維6a、6b」に「エポキシ基を含む粉末アクリレート」を適用して、ラミネートすることにより「複合材料(5a、5b)」を製造した技術的意義について
a 前記1(1)アの甲1の各記載によれば、甲1発明1は、軽量で厚さが小さく、可能な限り柔軟な設計を有し、例えば雹による機械的損傷等の環境の影響から保護される光起電力パネルを与えることを課題とする(【0007】)ところ、その課題を解決するために、太陽電池を、ガラス繊維で強化された、エポキシ基を含むアクリレートに基づくプラスチックである透明な複合材料で覆うという構成を採用したものと認められる。
そして、複合材料は、ガラス繊維によって強化されていることから、パネルの機械的強化をもたらすことができ(【0008】)、このガラス繊維は、そのフィラメント直径が3~15μm、好ましくは6~12μm、特に好ましくは9μmである場合、ガラス繊維で形成された強化層(複合材料の層)も、特に薄く柔軟であり、かつ、軽量であるように設計されてよいものである(【0010】)。加えて、軽量ファブリックは、軽量のパネルの製造も可能にするものである(【0011】)。
また、複合材料には、グリシジルメタクリレートといったエポキシ基を含む粉末アクリレートが適用されている(【0016】・【0017】)ところ、当該アクリレートは、ラミネートすることにより、融合し、透明である(【0016】)ものである。当該アクリレートは、透明であり、その透明性は光起電性パネルの寿命の間に実質的に変化しないままであり、さらに、ガラス繊維ファブリックに沿ってパネルの高い強度を与えており、かつ、柔軟性を維持する(【0017】)。そして、粉末形態のエポキシ基を含むアクリレートをファブリックに適用することにより、換気チャンネルが粉末により最初は塞がれていないファブリック中に残り、それは、真空の適用で、ラミネートされた複合材料中のエアロックをほとんど完全に回避することに寄与する(【0018】)。
b 前記aによれば、甲1発明1に係る複合材料は、軽量、柔軟で、厚さが小さく機械的強度が大きいものといえるところ、これらの特性は、ガラス繊維として、柔軟かつ軽量なものを用いた上で、グリシジルメタクリレートといったエポキシ基を含む粉末アクリレートをラミネートすることにより、当該アクリレートが、融合し、それと同時に、柔軟性を維持することによって実現されていると解される。そして、粉末アクリレートは、粉末形態であることから、ラミネートされた複合材料中のエアロックがほとんど完全に回避されるものである。そして、甲1-1には、本件訂正発明1のような、ガラス繊維と粉末アクリレートの重量比を調整することによって、複合材料の柔軟性を実現するとの記載は存在しない。
このようなことからすれば、甲1発明1においては、粉末アクリレートは、ガラス繊維に存在する隙間を埋めるための材料であって、それが適用されてもガラス繊維がもともと持っている柔軟性及び軽量性をさほど低下させず、その状態を維持することによって、複合材料としての柔軟性及び軽量性が実現されていると解するのが相当であって、甲1には、この理解を否定するに足りる記載があるとは認められない。
(エ) 検討
a 甲1発明1に係る複合材料においては、前記(ウ)bのとおり、粉末アクリレートは、ガラス繊維に存在する隙間を埋めるための材料であって、それが適用されてもガラス繊維がもともと持っている柔軟性及び軽量性をさほど低下させず、その状態を維持することによって、複合材料としての柔軟性及び軽量性が実現されている。そうすると、甲1発明1では、ある所定の形状及び大きさを有するガラス繊維を使用することを前提として、そのガラス繊維に対して粉末アクリレートを適用することを念頭においていると解される。
そして、上記のようなある所定の形状及び大きさを有するガラス繊維に対して粉末アクリレートを適用するときには、その適用する量を増加させればさせるほど、完成された複合材料は、重量が重くなるとともに厚さが厚くなり、柔軟ではなくなることが明らかである。
そうすると、甲1発明1から出発した当業者は、粉末アクリレートの量としては、柔軟かつ軽量なガラス繊維に存在する隙間を埋めるのに必要な程度を採用するにとどまるのであり、その程度を超えると、前記のとおり、複合材料としての柔軟性及び軽量性が低下してしまい、その結果、前記(ウ)aで認定した甲1発明1の技術的意義(軽量で厚さが小さく、可能な限り柔軟な設計を有すること)が奏されなくなることから、当該当業者は、その程度を越えるような量を用いることはないというべきである。
b しかるに、相違点2に係る本件訂正発明1の構成である本件アクリル粉体塗料重量比が「55~70%」というのは、50%よりも大きいという意味で相当程度大きな値であるし、しかも、甲1発明1の「エポキシ基を含む粉末アクリレート」と「ガラス繊維」の比重の比率が1.4倍を超える(この「1.4倍を超える」との数値は、エポキシ粉体塗料の密度が1.3~1.8g/cm3であり(甲14)、ガラス繊維に使用される標準的なガラス組成物であるE-ガラスの比重が2.54である(甲10及び11)ことから算出できる。)ことに照らせば、体積比でみると、「エポキシ基を含む粉末アクリレート」の量は、「ガラス繊維」の量と比べて少なくとも1.7倍(55/45×1.4)となる。
そして、このような体積比で1.7倍を超える量は、柔軟かつ軽量なガラス繊維に存在する隙間を埋めるのに必要な程度を超えているとみるのが自然であり、それを超えていないことを認めるに足りる証拠はない。
そうすると、甲1発明1から出発した当業者は、相違点2に係る本件訂正発明1の構成に至るとはいえない。
c これに対し、請求人は、以下のとおり主張するが、いずれも採用できない。
(a) 請求人は、甲1-1には、エポキシ基を含む粉末アクリレートの量をどのように定めるべきか具体的な数値は記載されていないから、原則的に任意の値を採用できるのであるところ、甲2及び8に記載された数値範囲内の値は周知であって、この値を適宜選択し、エポキシ基を含む粉末アクリレートの重量を複合材料の重量に対して「55~70%」とすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項である旨主張する。
しかしながら、前記aのとおり、甲1発明1から出発した当業者は、粉末アクリレートの量としては、柔軟かつ軽量なガラス繊維に存在する隙間を埋めるのに必要な程度を採用するというべきであるから、任意の値を採用できるとはいえないし、甲2及び8に記載された数値範囲内の値を適宜選択できるともいえない。
さらに、請求人は、相違点2に係る本件訂正発明1の構成における本件繊維布重量比及び本件アクリル粉体塗料重量比の数値範囲には臨界的意義がない旨も主張するが、前記bで説示したとおり、甲1発明1から出発した当業者は、そもそも相違点2に係る本件訂正発明1の構成に至るとはいえないから、前記数値範囲に臨界的意義がないか否かは、前記の説示を左右するものではない。
(b) 請求人は、甲1-1に記載された発明は、複合材料に柔軟性を持たせることを意図しているところ、ガラス繊維強化プラスチックにおいてガラス繊維の割合を多くすると柔軟性が失われるとの技術常識(甲21)に照らせば、当該複合材料に柔軟性を持たせるのであれば、ガラス繊維の量を減らし、粉末アクリレートの量を増やすはずである旨主張する。
この点、甲21における柔軟性を表す指標は、強さ及び弾性率であるところ、その単位はいずれも「kg/mm2」、つまり、単位面積当たりの量である。これを甲1発明1で典型的に想定されているといえる薄板状の「複合材料」でみると、甲21は、複合材料の上底面の形状及び大きさ、並びに複合材料の厚さを一定にするという条件においては、ガラス繊維の量を減らし、粉末アクリレートの量を増やせば、柔軟性が増えるということを意味していることになる。
しかしながら、甲1発明1から出発した当業者が、粉末アクリレートの量を決定する場面というのは、前記a及びbのとおり、柔軟かつ軽量なガラス繊維が既に選択された後に(つまり、ガラス繊維の形状及び大きさが決まった後に)、それに存在する隙間を埋めるための粉末アクリレートの量を決定しようとする場面である。この場面においては、粉末アクリレートの量を増やせば増やすほど、(複合材料の)厚さが厚くなっていくのであるから、甲21におけるような厚さを一定にするという条件が少なくとも成り立っていないことになる。
このように、甲21において想定されている条件は、甲1発明1から出発した当業者が粉末アクリレートの量を決定する場面においては成り立っていないのであるから、請求人が主張する技術常識が存在することをもって、前記bの説示が左右されることはない。
(c) 請求人は、甲1-1には、粉末アクリレートの量について、ガラス繊維よりも多くなる方向付けが示されている旨主張し、その根拠として、(i)発明の課題の観点において、光起電性パネルの物理的な柔軟性が発明の課題であって、ガラス繊維と樹脂では樹脂の方が柔軟な材料であることが技術常識であること、(ii)製造方法の観点において、【0021】には粒径が小さければ「過度に滴る」ほどにまで多い量の粉末アクリレートが用いられていることが記載されており、仮に粉末アクリレートがファブリックのメッシュ開口部に多く侵入しない程度の少量である場合、製造される光起電性パネルはガラス繊維間に多くの空隙が残ってしまい、透明性が失われてしまうこと、(iii)図面における表現の観点において、図1からは、プラスチックにガラス繊維が埋没しており、プラスチックがガラス繊維よりも多いことが示されていること、を挙げる。
しかしながら、(i)については、前記(b)のとおりである。
この点、請求人は、甲1-1の【0010】に、ガラス繊維のフィラメント直径が3~15μm、好ましくは6~12μm、特に好ましくは9μmである場合、ガラス繊維で形成された強化層(複合材料の層)も、特に薄く柔軟であり、かつ、軽量であるように設計されてよいと記載されているが、これは、ガラス繊維を細くすることで光起電性パネルに更に柔軟性を持たせることができるものにすぎない旨主張する。加えて、請求人は、甲1-1の【0017】の最終文の「それは、ガラス繊維ファブリックに沿ってパネルの高い強度を与え、かつ、柔軟性を維持する。」との記載は、柔軟性が樹脂によって与えられていることを前提に、グリシジルメタクリレートを用いた場合には、樹脂によって与えられる柔軟性を維持できることを意味する旨主張する。
当該主張において請求人は、要するに、甲1-1では、複合材料の柔軟性は、主に樹脂によって得られているのであり、ガラス繊維によって得られる部分があるとしても、それは付加的ないし追加的なものにすぎない旨主張していると解される。しかしながら、甲1-1には、複合材料の柔軟性を粉末アクリレートの配合割合を増やすことによって実現するとの記載はなく、むしろ、ガラス繊維のフィラメント直径を制御することで実現する旨の記載があることから、前記(ウ)bで説示したとおり、甲1発明1に係る複合材料の柔軟性は、ガラス繊維として柔軟なものを用い、粉末アクリレートはそれが適用されてもガラス繊維の柔軟性をさほど低下させないことによって実現されていると解するのが相当であり、この理解を否定する根拠を甲1-1の記載からは見いだせない。そして、当該【0017】の「柔軟性を維持する」の意味が、グリシジルメタクリレートが光起電性パネルの寿命の間に柔軟性を維持するということであるとしても、このことは、複合材料の柔軟性が主に樹脂によって得られていることを意味するのではなく、むしろ、グリシジルメタクリレートといった粉末アクリレートは、光起電性パネルの寿命の間を通して、柔軟性を維持することから、複合材料の柔軟性も、当該寿命の間を通して、(製造当初から)さほど低下させないことを可能にすることを意味すると解するのが相当である。
(ii)については、甲1-1の【0021】には、「粒径の好適な選択は、ファブリックに適用された粉末が、ファブリックのメッシュ開口部に部分的に侵入することを可能にし、したがって粒子が小さすぎる場合に過度に滴ることも、粒子が大きすぎる場合にファブリック上及びメッシュの上方に過度に残ることもない。」と記載されているのであるのであり、この記載は過度に滴ることがないように粒径を好適に選択するということを意味しているにすぎず、あえて、粒子を小さくすることが記載されているとは認められない。また、粉末アクリレートがファブリックのメッシュ開口部に多く侵入しない程度の少量である場合、製造される光起電性パネルはガラス繊維間に多くの空隙が残ってしまい、透明性が失われてしまうのは、請求人の主張のとおりだとしても、前記bの検討は、粉末アクリレートの量として、ガラス繊維に存在する隙間を埋めるのに必要な程度を採用することを前提としたものであることから、請求人の主張によって、前記bの説示が左右されることはない。
(iii)については、確かに、図1からは、プラスチックがガラス繊維よりも多いように見て取れるが、当該図1は単なる模式図にすぎず、これをもって、甲1発明1におけるガラス繊維と粉末アクリレートとの重量比を読み取れるとはいえない。
したがって、請求人の前記主張は、前記bの説示を左右するものではない。
(d) 請求人は、本件訂正発明1と甲1発明1の技術的意義は同じであって、両者とも、「繊維布」と「アクリル粉体塗料」の配合割合について、「繊維布」が多ければ重量が増加して環境への影響に対して強くなり、「繊維布」が少なければ重量が低下して環境への影響に対して強くなくなる傾向にある旨主張する。
そこで検討すると、甲1発明1は、前記(ウ)bのとおり、軽量、柔軟で、厚さが小さく機械的強度が大きい複合材料を提供するものであって、ガラス繊維は、柔軟かつ軽量なものを用いるものであり、また、粉末アクリレートは、ガラス繊維に存在する隙間を埋めるための材料であって、それが適用されてもガラス繊維がもともと持っている柔軟性及び軽量性をさほど低下させないものであることから、柔軟かつ軽量な、ある所定の形状及び大きさを有するガラス繊維をまず定めてから、それに粉末アクリレートを適用するものである。そうすると、粉末アクリレートの適用の量は、ガラス繊維に存在する隙間を埋めるという観点から、(定められたガラス繊維が既に存在する結果としてという意味で)他律的に定まる、換言すれば、自由には定められないものといえる。
他方、本件訂正発明1は、前記(イ)bのとおり、相違点2に係る構成である「30~45%」の本件繊維布重量比と「55~70%」の本件アクリル粉体塗料重量比を満たす「シーリング材」を採用して、(i)シーリング材の重量が重いという課題を解決することと(ii)太陽光発電業種の技術基準(耐紫外線、耐劣化、耐衝撃及び耐火など)を満たすことを両立するものであることから、甲1発明1のようにある所定の形状及び大きさを有する繊維布をまず定めるというものではなく、むしろ、例えば、ある所定の形状及び大きさを有する「シーリング材」をまず念頭に置くなどした上で、「シーリング材」を製造するための、繊維布及びアクリル粉体塗料の重量比を定めていくものである。そうすると、本件訂正発明1では、アクリル粉体塗料の重量比は、繊維布の重量比と同様に、自律的ないし自由に定められるものといえる。
このように、本件訂正発明1と甲1発明1は、シーリング材の耐衝撃性と軽量性を両立させるという意味では類似しているが、その解決手段は、本件訂正発明1は、「シーリング材」を製造するための繊維布及びアクリル粉体塗料の重量比を自律的ないし自由に定めるものである一方、甲1発明1は、所定の形状及び大きさのガラス繊維をまず定めた結果、粉末アクリレートの量が他律的に定まるというものにすぎない。そして、このような解決手段の相違があることから、前記bの説示がもたらされるのであり、そうである以上、技術的意義が同じであることによって、前記bの説示が左右されることはない。
加えて、請求人は、仮に本件訂正発明1と甲1発明1との間において、繊維布とアクリル粉体塗料の配合割合に係る技術的意義が異なる場合であったとしても、本件訂正発明1は、太陽光発電モジュールの耐候性、各種の強度及び絶縁性に寄与する繊維布の量を、それらの性能を所定の範囲より低くならない程度で減らして軽量化を図るにすぎないから、相違点2に係る本件訂正発明1の構成は、設計的事項にすぎない旨も主張するが、本件訂正発明1の技術的意義が請求人の主張するとおりであるとしても、そのことをもって、甲1発明1から出発した当業者が相違点2に係る本件訂正発明1の構成に至るか否かの結論を左右することはない。
(オ) 小括
以上のとおり、甲1発明1から出発した当業者は、相違点2に係る本件訂正発明1の構成に至るとはいえない。そして、甲1発明2も、本件訂正発明1との間に相違点2が存在することが明らかであるから、同様の判断となる。
そして、甲1-1の他の記載及び請求人が提出する他の証拠をみても、前記判断を左右するものはない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1-1に記載された発明及び甲2~27に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ まとめ
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲1-1に記載された発明及び甲2~27に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2) 本件訂正発明2~9について
本件訂正発明2~9は、本件訂正発明1の記載を直接又は間接的に引用することで、本件訂正発明1の構成をすべて備えているものであるから、前記(1)で検討した理由と同じ理由により、甲1-1に記載された発明及び甲2~27に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3) 無効理由に対する判断のまとめ
以上のとおり、本件訂正発明1~9は、甲1-1に記載された発明及び甲2~27に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、無効理由は理由がない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件訂正発明1~9についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-800096