特許無効審判
2022-800035
樹脂ファイバの製造方法、これに用いられるノズルヘッド及び製造装置
- 審判番号
- 2022-800035
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2016-221401
- 登録番号
- 6171072
- 請求日
- 2022年04月07日
- 審決日
- 2023年06月13日
- 公報発行日
- 2023年11月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヤマシンフィルタ 株式会社
- 【請求人代理人】石井 琢哉
- 【被請求人】関西電子 株式会社
- 【被請求人代理人】弁理士法人むつきパートナーズ
- 審判長/審判官
- 審判長 山崎 勝司
- 審判官 中野 裕之
- 審判官 藤井 眞吾
- 分類
- P1113.113-YAA(D01D) / P1113.121-YAA(D01D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第123条第1項第2号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第134条の2第1項、特許法第131条の2第1項、特許法第131条の2第2項第1号、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第6171072号発明「樹脂ファイバの製造方法、これに用いられるノズルヘッド及び製造装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第6171072号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2~4〕について訂正することを認める。
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨
1 請求の趣旨
特許第6171072号発明の特許請求の範囲の請求項1から10に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。
2 答弁の趣旨
本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。
第2 手続の経緯
1 本件特許の出願から設定登録までの経緯
本件特許第6171072号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る発明についての、出願から本件無効審判請求の前までの手続の経緯の概略は、次のとおりである。
平成28年11月14日 :出願(特願2016-221401号)
平成29年 6月13日付け:特許査定
同年 7月 7日 :設定登録
2 本件無効審判の手続の経緯
本件無効審判における手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
令和4年 4月 7日 :審判請求書の提出
同年 6月30日 :答弁書の提出
同年 9月13日付け:審理事項通知書
同年10月 4日 :口頭審理陳述要領書の提出(請求人)
同月 5日 :口頭審理陳述要領書の提出(被請求人)
同月26日 :口頭審理
同年12月 7日付け:審決の予告
令和5年 2月 3日 :訂正請求書(被請求人)
同月24日 :手続補正書(被請求人)
同年 4月 5日 :審判事件弁駁書
同年 5月23日付け:補正許否の決定
第3 訂正の請求について
1 請求の趣旨及び請求の理由(訂正の内容)
令和5年2月24日提出の手続補正書により補正された同月3日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求は、本件特許の特許請求の範囲を上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである。下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「高圧ガス流で熱可塑性樹脂を延伸させる極細長繊維である樹脂ファイバの製造方法であって、
溶融樹脂が押し出される吐出口近傍に設けた高圧ガス噴出口からのガス流が前記吐出口に負圧を与えて前記吐出口内部の前記溶融樹脂をその外部に引き出し延伸させながら空中に放出させることを特徴とする樹脂ファイバの製造方法。」
と記載されているのを、
「高圧ガス流で熱可塑性樹脂を延伸させる極細長繊維である樹脂ファイバの製造方法であって、
溶融樹脂が供給されて押し出される吐出口近傍に設けた高圧ガス噴出口からのガス流がその量を前記吐出口に供給される前記溶融樹脂の量に応じて調整されて、前記吐出口に負圧を与えて前記吐出口内部の前記溶融樹脂をその外部に引き出し延伸させながら空中に放出させることを特徴とする樹脂ファイバの製造方法。」
に訂正する。
(2)訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項2に、
「前記吐出口から押し出される前記溶融樹脂は押出機から供給され、前記押出機からの前記溶融樹脂の供給を停止させたときにあっても前記吐出口内部に残留する前記溶融樹脂が負圧によって外部に引き出され延伸されることを特徴とする請求項1記載の樹脂ファイバの製造方法。」
と記載されているのを、独立形式に改め、
「高圧ガス流で熱可塑性樹脂を延伸させる極細長繊維である樹脂ファイバの製造方法であって、
溶融樹脂が押し出される吐出口近傍に設けた高圧ガス噴出口からのガス流が前記吐出口に負圧を与えて前記吐出口内部の前記溶融樹脂をその外部に引き出し延伸させながら空中に放出させるにあたって、
前記吐出口から押し出される前記溶融樹脂は押出機から供給され、前記押出機からの前記溶融樹脂の供給を停止させたときにあっても前記吐出口内部に残留する前記溶融樹脂が負圧によって外部に引き出され延伸されることを特徴とする樹脂ファイバの製造方法。」
に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3、4も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項3に、
「前記吐出口は前記ガス流による負圧によって前記溶融樹脂を引き出し得るよう前記溶融樹脂の流動抵抗を低下させる径であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂ファイバの製造方法。」
と記載されているのを、
「前記吐出口は前記ガス流による負圧によって前記溶融樹脂を引き出し得るよう前記溶融樹脂の流動抵抗を低下させる径であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂ファイバの製造方法。」
に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)。
(4)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~4は、請求項2~4が、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~4〕について訂正されたものである。
なお、訂正後の請求項2及びそれを引用する訂正後の請求項3、4について、特許権者は、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
2 訂正の適否についての当審の判断
(1)訂正事項1について
ア 「溶融樹脂が供給されて押し出される吐出口」については、溶融樹脂が吐出口に押し出される際に供給されることを特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)には、以下の記載がある。
「図1を再び参照すると、製造装置9によって樹脂ファイバを製造する場合には、押出機1によって溶融した樹脂をノズルヘッド10に供給して吐出口12から吐出させつつ、ガス供給部6及びガス加熱部7によって加熱された高圧ガスをノズルヘッド10に供給してガス噴出口13からガスを噴出させてガス流を形成させる。」(【0030】)
明細書等の上記記載によれば、この訂正は、明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、この訂正は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 「高圧ガス噴出口からのガス流がその量を前記吐出口に供給される前記溶融樹脂の量に応じて調整されて、前記吐出口に負圧を与えて」についても、高圧ガス噴出口からガス流が負圧を与える際に、その量を吐出口に供給される溶融樹脂の量に応じて調整されることを特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、明細書等には、以下の記載がある。
「供給される溶融した樹脂の量に応じて、ガス流の量を調整することで、噴出口13からの流速や負圧が調整される。」(【0034】)
明細書等の上記記載によれば、この訂正は、明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、この訂正は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
「高圧ガス流で熱可塑性樹脂を延伸させる極細長繊維である樹脂ファイバの製造方法であって、
溶融樹脂が押し出される吐出口近傍に設けた高圧ガス噴出口からのガス流が前記吐出口に負圧を与えて前記吐出口内部の前記溶融樹脂をその外部に引き出し延伸させながら空中に放出させる」との訂正事項は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、この訂正は、明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
「請求項2に記載の樹脂ファイバの製造方法」との訂正事項は、引用する請求項の数を減少させるものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、この訂正は、明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 小括
上記2のとおり、各訂正事項に係る訂正は、特許法134条の2第1項ただし書1号又は4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条9項において準用する同法126条5項及び6項に適合するものである。
また、訂正請求書において別の訂正単位とする求めがあったところ、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2~4〕について訂正することを認める。
第4 本件訂正発明
前記第3で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~10に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本件訂正発明1」等という。また、これらを総称して「本件訂正発明」という。)。
「【請求項1】
高圧ガス流で熱可塑性樹脂を延伸させる極細長繊維である樹脂ファイバの製造方法であって、
溶融樹脂が供給されて押し出される吐出口近傍に設けた高圧ガス噴出口からのガス流がその量を前記吐出口に供給される前記溶融樹脂の量に応じて調整されて、前記吐出口に負圧を与えて前記吐出口内部の前記溶融樹脂をその外部に引き出し延伸させながら空中に放出させることを特徴とする樹脂ファイバの製造方法。
【請求項2】
高圧ガス流で熱可塑性樹脂を延伸させる極細長繊維である樹脂ファイバの製造方法であって、
溶融樹脂が押し出される吐出口近傍に設けた高圧ガス噴出口からのガス流が前記吐出口に負圧を与えて前記吐出口内部の前記溶融樹脂をその外部に引き出し延伸させながら空中に放出させるにあたって、
前記吐出口から押し出される前記溶融樹脂は押出機から供給され、前記押出機からの前記溶融樹脂の供給を停止させたときにあっても前記吐出口内部に残留する前記溶融樹脂が負圧によって外部に引き出され延伸されることを特徴とする樹脂ファイバの製造方法。
【請求項3】
前記吐出口は前記ガス流による負圧によって前記溶融樹脂を引き出し得るよう前記溶融樹脂の流動抵抗を低下させる径であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂ファイバの製造方法。
【請求項4】
前記吐出口の径は0.5mm以上であることを特徴とする請求項3記載の樹脂ファイバの製造方法。
【請求項5】
高圧ガス流で熱可塑性樹脂を延伸させる極細長繊維である樹脂ファイバの製造装置であって、
バレル内のスクリューで樹脂を溶融させながら前記バレル先端のノズルから溶融樹脂を押し出す押出機と、
前記ノズルの先端に取り付けられたノズルヘッドと、を含み、
前記ノズルヘッドは、略鉛直なフェイス面に、
前記溶融樹脂を押し出す吐出口と、
前記吐出口近傍にあって略水平にガス流を形成する高圧ガス噴出口と、を一対として、複数対を与えられ、
前記吐出口内部の前記溶融樹脂をその外部に引き出し延伸させながら空中に放出させるよう、前記高圧ガス噴出口を前記吐出口近傍に位置させるとともに前記吐出口の径を0.5mm以上としたことを特徴とする樹脂ファイバの製造装置。
【請求項6】
前記複数対は水平線に沿って前記フェイス面に与えられていることを特徴とする請求項5記載の樹脂ファイバの製造装置。
【請求項7】
前記複数対の前記高圧ガス噴出口はそれぞれの軸線を噴出方向に向けて互いに扇状に広がるように設けられていることを特徴とする請求項6記載の樹脂ファイバの製造装置。
【請求項8】
高圧ガス流で熱可塑性樹脂を延伸させる極細長繊維である樹脂ファイバの製造装置において、バレル内のスクリューで樹脂を溶融させながら前記バレル先端のノズルから溶融樹脂を押し出す押出機に用いられ、前記ノズルの先端に取り付けられるノズルヘッドであって、
前記製造装置に取り付けられたときに略鉛直となるフェイス面に、
前記溶融樹脂を押し出す吐出口と、
前記吐出口近傍にあって略水平にガス流を形成する高圧ガス噴出口と、を一対として、複数対を与えられ、
前記吐出口内部の前記溶融樹脂をその外部に引き出し延伸させながら空中に放出させるよう、前記高圧ガス噴出口を前記吐出口近傍に位置させるとともに前記吐出口の径を0.5mm以上としたことを特徴とするノズルヘッド。
【請求項9】
前記製造装置に取り付けられたときに前記複数対が水平線に沿うように前記フェイス面に与えられていることを特徴とする請求項8記載のノズルヘッド。
【請求項10】
前記複数対の前記高圧ガス噴出口はそれぞれの軸線を噴出方向に向けて互いに扇状に広がるように設けられていることを特徴とする請求項9記載のノズルヘッド。」
第5 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
請求人は、以下の無効理由を主張している(以下、甲第1号証~甲第8号証を「甲1」~「甲8」という。)。
(1)無効理由1(新規性欠如)
本件訂正発明1は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本件訂正発明1に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(2)無効理由2(進歩性欠如)
本件訂正発明2~6、8及び9は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件訂正発明2~6、8及び9に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(3)無効理由3(進歩性欠如)
本件訂正発明7及び10は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件訂正発明7及び10に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(4)無効理由4(進歩性欠如)
本件訂正発明1について、甲1に記載された発明及び令和5年4月5日の審判事件弁駁書に新たに添付された甲8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
当該理由は、上記審判事件弁駁書により追加され、新たな無効理由を追加するものであり、特許法第131条の2第1項に規定される審判請求書の請求の理由の要旨を変更する補正に該当するものである。
しかしながら、当該理由は、上記訂正の請求により請求の理由を補正する必要が生じたものであり、上記(1)無効理由1(新規性欠如)についての判断に基づいて審理することができるので、当該補正により、審理が不当に遅延されることはない。
したがって、特許法第131条の2第2項第1号の規定により、令和5年5月23日付けの補正許否の決定のとおり、補正を許可したものである。
2 証拠方法
請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
甲1:特開昭49-55913号公報
甲2:特開2016-183435号公報
甲3:特開2009-102794号公報
甲4:米国特許第3704198号明細書
甲5:八木健吉、「第1章 細い繊維への流れ」、2017年6月、p.1~6
甲6:島司、池田昌孝、「メルトブロー法による超極細繊維の性能と用途」、SEN-I GAKKAISHI(繊維と工業)、繊維学会、1989年、Vol.45、No.5、p.229~233
甲7:特開平1-221520号公報
甲8:国際公開第2016/013052号
第6 被請求人の主張
被請求人は、請求人の主張する上記無効理由1~3について、理由がない旨主張している。
第7 当審の判断
1 甲号証の記載事項
(1)甲1の記載事項及び記載された発明
ア 甲1記載事項
「2.特許請求の範囲
ノズルの回りに高速気流により負圧を生成させて熱熔融した粘性流動体の合成樹脂を吸い出すと同時に高速気流で線状に延伸して冷却固化することにより繊維を形成することを特徴とする合成繊維連続製造法。
3.発明の詳細な説明
本発明は加熱により熔融して粘性流動体となる合成樹脂、一般的に熱可塑性合成樹脂と称される材料から繊維を連続して製造する方法に関するものである。
即ち、本発明の最も基本となる構成は高速空気流により生ずる負圧を利用して熱熔融した粘性流動体の合成樹脂をノズルから線状で吸い出すと同時に冷却固化することにより繊維を形成することを特徴とするものである。
ここ(当審注:原文では「ここ」は「玄」を2個横に並べた一文字として表記されている。)に本発明の方法を実施例図により以下詳細に説明する。
先ず、第1図及び第2図は単一色の合成繊維を連続製造する装置の一例であって、熔融釜1の外周には隔壁2により加熱室3を形成し、加熱室3の外周には外壁4により圧空室5を形成し、熔融釜1の内部に連通する様に適宜な配列で隔壁2に突設した多数のノズル6は加熱室3及び圧空室5を串通して外壁4より突出させると共に各ノズル6の先端外周は先細形状7に形成し、その各ノズル6の外周に配置して圧空室5に連通する噴気孔8を外壁4に設け、加熱室3の一端から他端に別の箇所に設置された高熱油生成循環装置(図示していない)からの高熱油9が循環する様に送油管10と戻油管11とを隔壁2に連結し、圧空室5に高圧空気発生装置(図示していない)からの高圧空気を供給する様に圧空管12を外壁4に連結することにより構成する。
従って熔融釜1の内部にポリアミド樹脂、オレフイン樹脂、ビニール樹脂等の熱可塑性合成樹脂13を着色、末着色で収容して加熱室3を循循する高熱油9により熔融し、粘性流動状態を保ち、次いで圧空室5内に圧空管12により高圧空気を送り込めば、各ノズル6外周の噴気孔8から高圧、高速空気を噴出するためにノズル6の先端口には負圧を生じ、熔融釜1内の粘性流動状態の熱可塑性合成樹脂13を連続して吸い出すと同時に噴気孔8からの高圧、高速空気流により線状で外方に飛ばされて繊維を生成する。
この線状で飛ばされる際に噴出気流により冷却されて粘性流動状態の熱可塑性合成樹脂13は成形固化し且つ成形固化時に噴出気流による牽引で延伸効果が与えられて分子配向は整えられる。
しかも、粘性流動状態の熱可塑性合成樹脂13が線状で飛ばされる際に噴出気流でランダムな長さに千切れるが、噴出気流の牽引力による引き千切り状態のために切断部は徐々に細くなる先細形状を形成した特殊形状の繊維15が得られるものである。
この様に製出した合成樹脂の繊維はフエルト、カーペット用として、その特殊形状を最も有効的に発揮する用途に使用するものである。」(第1ページ左下欄第4行~第2ページ右上欄第3行。下線は、参考のため、当審で付与したものである。以下同様である。)
「さて、本発明の方法に於いて、最も重要な役割を果たすノズル6と噴気孔8との関連構造は要求される製品繊維の長さ、太さ、形状により種々なタイプのものが採用されるが、その二三例を図面に依って示すと、第4図及び第5図はノズル6先端の先細形状7に沿う噴気間隙16を形成する様にノズル6外周に同心円で配置した外周噴気管17を外壁4に突設して構成したものであり、第6図及び第7図はノズル6先端を取り囲む様に若干数の小さな独立噴気管18を外壁4に突設して構成したものであり、ノズル6と独立噴気管18との先端突出長は同一か、或いはいずれか一方を大にするものである。」(第2ページ左下欄第2~14行)
「そして、粘性流動状態の熱可塑性合成樹脂13を繊維15に形成するための高圧、高速気流の圧力、温度は要求される製品の条件に従って適宜設定するものである。」(第2ページ左下欄第19行~右下欄第2行)
「
[図:0001403499000001.jpg]
」
「
[図:0001403499000002.jpg]
」
「
[図:0001403499000003.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
上記アの記載事項を総合すると、甲1には、以下の2つの発明(以下、前者を「甲1方法発明」、後者を「甲1装置発明」という。)が記載されていると認められる。
【甲1方法発明】
「高圧、高速空気流で熱可塑性合成樹脂13を延伸することにより特殊形状の繊維15を形成する合成繊維連続製造法であって、
噴気孔8をノズル6先端を取り囲む様に若干数の小さな独立噴気管18を外壁4に突設して構成したものであり、
各ノズル6外周の噴気孔8から高圧、高速空気を噴出するためにノズル6の先端口には負圧を生じ、熔融釜1内の粘性流動状態の熱可塑性合成樹脂13を連続して吸い出すと同時に噴気孔8からの高圧、高速空気流により線状で外方に飛ばされ、この線状で飛ばされる際に噴出気流により冷却されて粘性流動状態の熱可塑性合成樹脂13は成形固化し且つ成形固化時に噴出気流による牽引で延伸効果が与えられて分子配向は整えられ、
熱可塑性合成樹脂13が線状で飛ばされる際に噴出気流でランダムな長さに千切れ、噴出気流の牽引力による引き千切り状態のために切断部は徐々に細くなる先細形状を形成した特殊形状である、合成繊維連続製造法。」
【甲1装置発明】
「高圧、高速空気流で熱可塑性合成樹脂13を延伸することにより特殊形状の繊維15を形成する合成繊維を連続製造する装置であって、
熔融釜1の内部に連通する様に適宜な配列で隔壁2に突設した多数のノズル6は加熱室3及び圧空室5を串通して外壁4より突出させると共に各ノズル6の先端外周は先細形状7に形成し、その各ノズル6の外周に配置して圧空室5に連通する噴気孔8を外壁4に設け、
噴気孔8をノズル6先端を取り囲む様に若干数の小さな独立噴気管18を外壁4に突設して構成したものであり、
熔融釜1の内部にポリアミド樹脂、オレフイン樹脂、ビニール樹脂等の熱可塑性合成樹脂13を着色、末着色で収容して加熱室3を循循する高熱油9により熔融し、各ノズル6外周の噴気孔8から高圧、高速空気を噴出するためにノズル6の先端口には負圧を生じ、熔融釜1内の粘性流動状態の熱可塑性合成樹脂13を連続して吸い出すと同時に噴気孔8からの高圧、高速空気流により線状で外方に飛ばされ、この線状で飛ばされる際に噴出気流により冷却されて粘性流動状態の熱可塑性合成樹脂13は成形固化し且つ成形固化時に噴出気流による牽引で延伸効果が与えられて分子配向は整えられ、
熱可塑性合成樹脂13が線状で飛ばされる際に噴出気流でランダムな長さに千切れ、噴出気流の牽引力による引き千切り状態のために切断部は徐々に細くなる先細形状を形成した特殊形状である、合成繊維を連続製造する装置。」
(2)甲2の記載事項及び記載された技術事項
ア 甲2の記載事項
「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の非特許文献1内にも記載の通り、旧来のメルトブロー法によるナノファイバーの製造方法においてその繊維径を細くしようとするには、高温エアを高速で噴出する方法と、ポリマーの吐出を低く抑える方法が考えられるが、高温エアを高速で噴出した場合繊維径は細くなるものの繊維の長さが短く細切れ状となってしまい、その一方でポリマーの吐出を低く抑えた場合は単位時間当たりの生産量が著しく落ちてしまい、何れの場合においても品質の良いナノファイバーの大量生産は困難であった。これに対し、電界紡糸法では生産性は向上するものの、装置が複雑化し、引火・爆発の対策が必要となり製造コストが高くなってしまっていた。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、メルトブロー方式のナノファイバー製造方法において、良質なナノファイバーを大量に供給することができ、さらに引火や爆発の要因を排除して安全性を向上させたナノファイバー製造方法及びナノファイバー製造装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のナノファイバー製造装置は、高圧ガス噴出手段から噴出する高圧ガス流に対して液状性原料を吐出する液状性原料吐出手段を備えるナノファイバー製造装置であって、当該液状性原料吐出手段は、前記高圧ガス噴出手段から噴出する高圧ガス流を中心にして複数配置されたことを特徴とする。」
「【0024】
図11において、各構成要件の配置状態は以上のとおりであり、位置関係は次のとおりである。これらを高圧ガスのガス噴出口71(開口ノズル)の位置を基準として、それよりも下流側に後退した位置関係で表現すれば、aは吐出手段73aの吐出口からの原料吐出口後退距離であり、bは吐出手段73aの吐出口からの吐出原料が交差する位置の後退距離であり、cは吐出手段73aの吐出口の開口径であり、dはガス噴出口離間距離である。
ここで、高圧ガス流90の中心線91に対して、液状性原料を吐出する吐出手段73aの供給角度はθで配置されており、
tanθ=d/(b-a) (1)
で表される原料供給正接角度θが 0°<θ<90°の範囲で調整可能に構成するものである。一例として、原料吐出口後退距離a=30mm、吐出口開口径=2mm、ガス噴出口離間距離d=7mm、噴出高圧ガスの圧力を約0.15MPaとした場合、θ=20°±10°が望ましい。」
「【0029】
本発明の実施例1として図1に示すナノファイバー製造装置1は、ナノファイバーの素材となる樹脂(微細粒径の粒体状合成樹脂)をナノファイバー製造装置1へ投入するためのホッパー2と、ホッパー2から樹脂の供給を受けてこれを加熱溶融させるための加熱シリンダー3と、加熱シリンダーを外側から加熱する加熱手段としてのヒーター4と、加熱シリンダー3内にて回転可能に収容され、回転することで溶融樹脂を加熱シリンダー3の先端へ移動させるための押出装置としてのスクリュー5と、スクリュー5を連結部61(詳細は図示せず)を介して回転させる駆動手段としてのモーター6と、加熱シリンダー3の先端に設けられると共に、後述の溶融樹脂を周囲から吐出するための樹脂吐出手段を内部に具備し、中心部からガス状の熱風を噴射するガス噴出口71(開口ノズル)を備えた円筒状のヘッド部7とからなる。この円筒状ヘッド部7には、中心部から噴射ガスを噴射するために、ガス供給管としてのガス配管部8に連結されたパイプ81を介して高圧ガスが供給される。ガス配管部8にはヒーター等の図示しない加熱手段を設けており、ガス噴出口71(開口ノズル)から熱風を噴射するよう構成されている。尚、ヘッド部7と加熱シリンダー3とはOリングやドーナツ状のシート部材等のシール部9を介して接続されており、溶融樹脂が装置外に漏れ出さない構成を備えている。」
「【図3】
[図:0001403499000004.jpg]
」
「【図4】
[図:0001403499000005.jpg]
」
「【図11】
[図:0001403499000006.jpg]
」
イ 甲2に記載された技術事項
上記アの記載事項を総合すると、甲2には、以下の技術事項(以下「甲2技術事項」という。)が記載されていると認められる。
【甲2技術事項】
「メルトブロー法において、液状性原料を吐出する吐出手段73aの吐出口開口径=2mmであること。」
(3)甲5の記載事項
「
[図:0001403499000007.jpg]
」(第3ページ)
(4)甲6の記載事項
「
[図:0001403499000008.jpg]
」(第232ページ左欄)
(5)甲7の記載事項
「熔融紡糸において極めて高速の紡糸が可能な方法として、紡糸孔の周辺から高速の気流を流出させて、この気流によって牽引し、繊維を形成させる、いわゆるメルトブロー法と呼ばれる方法が知られている。」(第1ページ左下欄第19行~右下欄第3行)
「(ニ)問題点を解決する手段
本発明は紡糸孔から吐出する熔融ピッチを、紡糸孔の周辺から流出する高速の気流によって牽引して繊維化する際に、紡糸口金として、該熔融ピッチを吐出させなかった時に該高速の気流によって熔融ピッチの流路に生じる負圧が、水柱10~5000mmであるものを用いることを特徴とするピッチの紡糸方法である。」(第2ページ左下欄第5~12行)
「実施例 2
実施例 1と同じノズル、同じピッチを用い、加熱空気の圧力を変えて運転を行った。その結果を表1に示す。」(第3ページ左下欄第16~19行)
「
[図:0001403499000009.jpg]
」(第3ページ右下欄)
(6)甲8の記載事項及び記載された技術事項
ア 甲8の記載事項
「[0001] 本発明は、高分子材料製ナノファイバーの製造方法に関し、より詳細には、安全かつ安定的に連続的な細径化が可能な高分子材料製ナノファイバーの製造方法に関する。」
「[0029]図2に示すように、熱可塑性樹脂供給部14は、内部に熱可塑性樹脂の混練搬送スペース26を構成する筒体のバレルを有し、バレルには、ビーズ状またはペレット状の熱可塑性樹脂原料を受け入れるホッパー28が設けられ、混練搬送スペース26には、熱可塑性樹脂原料を混練搬送する螺旋状スクリュー30が配置され、筒体の混練搬送スペース26に相当する部分の外周面には、バンド状ヒーター32A、B、Cが、バレルの軸線方向に互いに間隔を隔てた状態で巻き付けられ、ナノファイバー形成用噴射ノズルヘッド12は、その軸線方向が、螺旋状スクリュー30の軸線方向と一致するように、他方の端面54Bが筒体の端面と突き合わせられることにより、螺旋状スクリュー30の前方に設けられる。
ナノファイバー形成用噴射ノズルヘッド12は、螺合形態で複数のねじ穴57を介して、バレル側に連結固定される。
螺旋状スクリュー30の先端は、後に説明するナノファイバー形成用噴射ノズルヘッド12の熱可塑性樹脂溜まり部62に臨むように設けられる。
[0030]螺旋状スクリュー30はその基端でスクリュー駆動モーター31と連結され、回転軸受(図示せず)を介してバレルにより支持され、スクリュー駆動モーター31により、バレルの軸線方向を中心に回転駆動される。」
「[0041] さらに、図15に示すように、混練搬送スペース26内の熱可塑性樹脂の温度を検出する熱可塑性樹脂温度検出手段80と、混練搬送スペース26から複数の熱可塑性樹脂用貫通孔に向かって混練搬送される熱可塑性樹脂の流量を検出する熱可塑性樹脂流量検出手段82と、エア流路内のエアの温度を検出するエア温度検出手段84と、エア流路内のエアの流量を検出するエア流量検出手段86とが設けられ、熱可塑性樹脂温度検出手段80により検出される熱可塑性樹脂の温度、および熱可塑性樹脂流量検出手段82により検出される熱可塑性樹脂の流量に基づいて、バンド式ヒーター32A、B、C、Dの加熱量および螺旋状スクリュー30の回転数を制御するとともに、エア温度検出手段84により検出されるエアの温度、およびエア流量検出手段86により検出されるエアの流量に基づいて、バンド式エアヒーター22の加熱量およびエアコンプレッサー16の吐出圧力を制御する制御部88を有する。
制御部88は、CPU、メモリ、ディスプレイを備えるコンピュータでよく、エアコンプレッサー16、駆動モーター31、バンド式ヒーター32A、B、C、D、冷却装置35、およびバンド式ヒーター22を集中制御するとともに、操作者にナノファイバー製造装置10の動作状態を知らせる。ナノファイバー製造装置10の動作状態は、たとえば、操作パネルのディスプレイに表示される。
この場合、制御部88において、熱可塑性樹脂温度検出手段80により検出される熱可塑性樹脂の温度、および熱可塑性樹脂流量検出手段82により検出される熱可塑性樹脂の流量に基づいて、バンド式ヒーター32A、B、C、Dの加熱量および螺旋状スクリュー30の回転数を制御するとともに、エア温度検出手段84により検出されるエアの温度、およびエア流量検出手段86により検出されるエアの流量に基づいて、バンド式エアヒーター22の加熱量およびエアコンプレッサー16の吐出圧力を制御する際、エアの目標温度と熱可塑性樹脂の目標温度との温度差、エアの目標流量と熱可塑性樹脂の目標流量との流量差を予め設定しておき、熱可塑性樹脂の目標温度および目標流量を設定すれば、エアの目標温度およびエアの目標流量が自動的に設定されるようにしてもよい。あるいは、用いる熱可塑性樹脂材料の種類に応じて、熱可塑性樹脂材料の融点データとともに、エアの目標温度と熱可塑性樹脂の目標温度との温度差、およびエアの目標流量と熱可塑性樹脂の目標流量との流量差のテーブルを作成しておくのもよい。」
「[0045]以上の構成を有するナノファイバー製造装置10について、ナノファイバーの製造方法を含めその作用について、特に図6を参照しながら、以下に詳細に説明する。
ナノファイバーの製造方法は、ナノファイバー製造装置10を用いて、所定粘度以下となるように加熱溶融した熱可塑性樹脂を糸状に噴射させつつ、熱可塑性樹脂の流れを巻き込むように、熱可塑性樹脂の噴射速度より高い噴射速度で、熱可塑性樹脂の噴射方向と同じ向きに平行に、熱可塑性樹脂の溶融温度より高い温度に加熱したエアを噴射し、それにより、噴射方向に沿って、高速の中心流れ領域と、そのまわりの、中心流れ領域より低速の周辺流れ領域とが生じ、溶融状態に維持された糸状の熱可塑性樹脂が、周辺流れ領域の外側周辺から中心流れ領域に向かって徐々に巻き込まれることにより、延伸化され、空中で生成したナノファイバーを受け止めて捕集する。より具体的に、以下に説明する。
[0046] まず、エアコンプレッサー16を駆動して、熱可塑性樹脂の噴射速度より高い噴射速度となるように、外部搬送管61を通じてエアをナノファイバー形成用噴射ノズルヘッド12に向かって供給する。その際、バンド式ヒーター22により、熱可塑性樹脂の溶融温度より高い温度となるようにエアを加熱する。次いで、内部搬送管60を通じて、単一エア噴射口44から高温高圧エアが水平方向に噴射する。その際、高温高圧エアにより中心流れAが発生し、中心流れAのまわりに、気圧差を発生し、中心流れAより低速低圧エアの周辺流れBが生じる。」
「[0051]図6に示すように、より具体的には、熱可塑性樹脂噴射口42Aないし42Eそれぞれから糸状に噴射する溶融状態の熱可塑性樹脂原料は、単一エア噴射口44から噴射されるエア流れに巻き込まれることにより、延伸化される。
より詳細には、熱可塑性樹脂の流れCを、まず低速の周辺流れBに中心流れAに向かって巻き込み、ここで、糸状の熱可塑性樹脂が延伸化され、さらに、中心流れAに巻き込まれて、より延伸化され、糸状の熱可塑性樹脂が細径化され、D3が延伸化領域を形成する。
このようにして、溶融状態に維持された糸状の熱可塑性樹脂の流れが徐々に段階的に延伸化されて、空中で絡み合いながら捕集部50まで進むことにより、従来のように、熱可塑性樹脂の流れが急激に延伸化されることにより、短繊維化あるいは粒子化するのを有効に防止することが可能となる。
[0052]以上のように、熱可塑性樹脂噴射口42Aないし42Eを単一エア噴射口44のまわりに、単一エア噴射口44を中心とする同心配置することにより、熱可塑性樹脂噴射口42Aないし42Eそれぞれにおいて、単一エア噴射口44を共用化しており、それにより、熱可塑性樹脂噴射口とエア噴射口とを一対一対応させる場合に比べて、ナノファイバーを製造するのに、必要なエア量を低減することが可能であり、製造されるナノファイバーを安価にて製造することが可能である。
単一エア噴射口44と熱可塑性樹脂噴射口42との噴射方向の距離D1を調整することにより、単一エア噴射口44から噴射するエアが、熱可塑性樹脂噴射口42を直撃して、熱可塑性樹脂が糸状に噴射するのを阻害し、場合により、熱可塑性樹脂が端面54A上で液だれするのを防止するのが可能である。
一方、単一エア噴射口44と熱可塑性樹脂噴射口42との半径方向の距離D2を調整することにより、エアの噴射流量が一定の場合、熱可塑性樹脂のエア流れへの巻き込みの程度を調整することが可能である。」
「[0054]熱可塑性樹脂製ナノファイバーの仕様に応じて、どのように製造するかについて、以下に説明する。
熱可塑性樹脂製ナノファイバーの要求径、および熱可塑性樹脂の種類に応じて、熱可塑性樹脂の加熱温度および噴射流量を決定し、決定した熱可塑性樹脂の加熱温度および噴射流量に基づいて、エアの加熱温度および噴射流量を決定する。
その際、エアの噴射流量を調整することにより、高速の中心流れ領域および低速の周辺流れ領域の及ぶ範囲を調整する段階を有する。
主として、時間当たりのナノファイバーの製造量およびナノファイバー径に注目して、熱可塑性樹脂の温度、噴射流量、およびエアの温度、噴射流量を制御パラメータとして、熱可塑性樹脂の種類、特に融点に応じて、試行錯誤を通じて、所望の時間当たりのナノファイバーの製造量および/またはナノファイバー径を達成するために、熱可塑性樹脂を加熱するバンド式ヒーター32、螺旋状スクリュー30を回転駆動する駆動モーター31、エアを加熱するバンド式ヒーター22およびエアを供給するエアエアコンプレッサー16を制御する。
[0055]より具体的には、時間当たりのナノファイバーの製造量を一定に、ナノファイバー径をより細径化する場合には、駆動モーター31により螺旋状スクリュー30の回転数を増大して、熱可塑性樹脂の噴射流量を増大するとともに、熱可塑性樹脂を溶融状態に維持するために、それに応じて、バンド式ヒーター32A、B、C、Dの時間当たりの加熱量を増大する。一方、熱可塑性樹脂の噴射流量増大に応じて、それに見合うように、エアエアコンプレッサー16によりエアの噴射流量を増大し、その分、噴射する熱可塑性樹脂が噴射するエアにより、さらに空冷されて粘度低下を引き起こすことから、バンド式ヒーター22によりエアをより加熱する。
[0056]時間当たりのナノファイバーの製造量を増大しつつ、ナノファイバー径をより細径化する場合には、駆動モーター31により螺旋状スクリュー30の回転数を増大して、熱可塑性樹脂の噴射流量を増大するとともに、熱可塑性樹脂を溶融状態に維持するために、それに応じて、バンド式ヒーター32A、B、C、Dの時間当たりの加熱量を増大する。一方、熱可塑性樹脂の延伸化をより促進するために、熱可塑性樹脂の噴射流量増大に見合う分以上に、エアエアコンプレッサー16によりエアの噴射流量を増大し、その分、噴射する熱可塑性樹脂が噴射するエアにより、さらに空冷されて粘度低下を引き起こすことから、バンド式ヒーター22によりエアをさらにより加熱する。
[0057]特に、エアの加熱段階は、熱可塑性樹脂の流れを巻き込むまでに、エアの温度が低下する分を見込んで、糸状の熱可塑性樹脂を溶融状態に維持した状態で延伸可能なように、エアを加熱するのでもよく、エアの加熱段階は、エアに巻き込まれるまでに、熱可塑性樹脂の温度が低下する分を見込んで、巻き込みの際、熱可塑性樹脂を再溶融するように、エアを加熱するのでもよい。
そのため、エアの加熱段階は、エアの噴射速度に応じて、熱可塑性樹脂の流れを巻き込むまでに、エアの温度が低下する分、および/または、熱可塑性樹脂の噴射速度に応じて、エアに巻き込まれるまでに、熱可塑性樹脂の温度が低下する分を見込んで、エアの目的温度を決定し、エアが目的温度となるようにエアを加熱するのがよい。」
「[図2]
[図:0001403499000010.jpg]
」
「[図6]
[図:0001403499000011.jpg]
」
イ 甲8に記載された技術事項
上記アの記載事項を総合すると、甲8には、以下の技術事項(以下「甲8技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「螺旋状スクリュー30の先端に設けられたナノファイバー形成用噴射ノズルヘッド12の熱可塑性樹脂噴射口42Aないし42Eから熱可塑性樹脂を噴射するとともに、当該ナノファイバー形成用噴射ノズルヘッド12の単一エア噴射口44から高温高圧エアを噴射する熱可塑性樹脂製ナノファイバーの製造方法において、熱可塑性樹脂製ナノファイバーの要求径、および熱可塑性樹脂の種類に応じて、熱可塑性樹脂の加熱温度および噴射流量を決定し、決定した熱可塑性樹脂の加熱温度および噴射流量に基づいて、エアの加熱温度および噴射流量を決定すること。」
2 無効理由1(新規性欠如)及び無効理由4(進歩性欠如)について
(1)無効理由1 (新規性欠如)について
ア 対比
本件訂正発明1と甲1方法発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
甲1方法発明の「高圧、高速空気流」、「熱可塑性合成樹脂13」、「延伸する」、「合成繊維連続製造法」、「ノズル6の先端口」は、本件訂正発明1の「高圧ガス流」及び「ガス流」、「熱可塑性樹脂」、「延伸させる」、「樹脂ファイバの製造方法」、「吐出口」にそれぞれ相当する。
そうすると、甲1方法発明の「合成繊維連続製造法」が「高圧、高速空気流で熱可塑性合成樹脂13を延伸することにより特殊形状の繊維15を形成する」ことと、本件訂正発明1の「樹脂ファイバの製造方法」が「高圧ガス流で熱可塑性樹脂を延伸させる極細長繊維」を製造することとは、「樹脂ファイバの製造方法」が「高圧ガス流で熱可塑性樹脂を延伸させる繊維」を製造することという限りで一致する。
また、甲1方法発明の「熱可塑性合成樹脂13」が「粘性流動状態」である態様は、本件訂正発明1の「溶融樹脂」である態様に相当する。
そうすると、甲1方法発明の「各ノズル6外周の噴気孔8から高圧、高速空気を噴出するためにノズル6の先端口には負圧を生じ、熔融釜1内の粘性流動状態の熱可塑性合成樹脂13を連続して吸い出す」態様と、本件訂正発明1の「溶融樹脂が供給されて押し出される吐出口」を有する態様とは、「溶融樹脂が出される吐出口」を有する態様という限りで一致する。
甲1方法発明の「ノズル6先端を取り囲む様に若干数の小さな独立噴気管18を外壁4に突設して構成した」「噴気孔8」は、「独立噴気管18」から「高圧、高速空気を噴出」することは明らかであるから、本件訂正発明1の「吐出口近傍に設けた高圧ガス噴出口」に相当する。
甲1方法発明の「各ノズル6外周の噴気孔8から高圧、高速空気を噴出するためにノズル6の先端口には負圧を生じ、熔融釜1内の粘性流動状態の熱可塑性合成樹脂13を連続して吸い出すと同時に噴気孔8からの高圧、高速空気流により線状で外方に飛ばされ、この線状で飛ばされる際に噴出気流により冷却されて粘性流動状態の熱可塑性合成樹脂13は成形固化し且つ成形固化時に噴出気流による牽引で延伸効果が与えられて分子配向は整えられ」ることと、本件訂正発明1の「ガス流がその量を前記吐出口に供給される前記溶融樹脂の量に応じて調整されて、前記吐出口に負圧を与えて前記吐出口内部の前記溶融樹脂をその外部に引き出し延伸させながら空中に放出させる」こととは、「ガス流が前記吐出口に負圧を与えて前記吐出口内部の前記溶融樹脂をその外部に引き出し延伸させながら空中に放出させる」限りで一致する。
そうすると、本件訂正発明1と甲1方法発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。
【一致点】
「高圧ガス流で熱可塑性樹脂を延伸させる繊維である樹脂ファイバの製造方法であって、
溶融樹脂が出される吐出口近傍に設けた高圧ガス噴出口からのガス流が前記吐出口に負圧を与えて前記吐出口内部の前記溶融樹脂をその外部に引き出し延伸させながら空中に放出させる樹脂ファイバの製造方法。」
【相違点1-1】
「繊維」について、本件訂正発明1では「極細長繊維」であるのに対して、甲1方法発明では「熱可塑性合成樹脂13が線状で飛ばされる際に噴出気流でランダムな長さに千切れ、噴出気流の牽引力による引き千切り状態のために切断部は徐々に細くなる先細形状を形成した特殊形状である」点。
【相違点1-2】
「溶融樹脂が出される吐出口」を有する態様について、本件訂正発明1では溶融樹脂が「供給されて押し出される」のに対して、甲1方法発明では溶融樹脂が「吸い出される」点。
【相違点1-3】
ガス流が吐出口に負圧を与えて吐出口内部の溶融樹脂をその外部に引き出し延伸させながら空中に放出させることについて、本件訂正発明1では、「ガス流がその量を前記吐出口に供給される前記溶融樹脂の量に応じて調整され」るのに対して、甲1方法発明ではそのような特定はなされていない点。
イ 判断
(ア)相違点1-1について
本件訂正発明1の「極細長繊維」について、請求項1には、その太さや長さについて特定されていない。そこで、「極細長繊維」の用語の意味内容を把握するために本件特許明細書を参照すると、「極細長繊維」について以下の記載がある。
「【0032】
図4に示すように、製造装置9によって製造された樹脂ファイバは、ミクロンオーダーから数百ナノメートル程度の直径を有する、いわゆるナノファイバのような極細長繊維となっていることが判る。また、樹脂ファイバ同士が適度に絡み合うとともに、短く分断された繊維や粒子状の樹脂をほとんど生じていない。」
まず、「極細長繊維」の太さについて検討する。
本件特許明細書には、上記記載のとおり、繊維の直径が「ミクロンオーダーから数百ナノメートル程度」であることが記載されている。本件特許明細書では、「ミクロンオーダー」が具体的にどの程度の範囲を包含するかは記載されていないが、通常、「ミクロンオーダー」は、マイクロメートルの単位で表記できる程度の長さで用いられる用語であると理解できる。
他方、甲1には、繊維15の直径について具体的な説明はないものの、「この様に製出した合成樹脂の繊維はフエルト、カーペット用として、その特殊形状を最も有効的に発揮する用途に使用するものである。」(第2ページ右上欄第1~3行)と記載されている。一般に、フェルトやカーペットに用いられるような繊維の直径は、通常、ミリオーダーといえるようなものではなく、ミクロンオーダーであるから(参考として、フェルト、カーペットの製造に用いられる羊毛の直径参照(甲5表1.1))、フェルトやカーペットの用途に有効とされる甲1方法発明の繊維15は、ミクロンオーダー程度の直径を有するといえる。
次に、「極細長繊維」の長さについて検討する。
本件特許明細書には、「極細長繊維」について、上記記載のとおり「樹脂ファイバ同士が適度に絡み合うとともに、短く分断された繊維や粒子状の樹脂をほとんど生じていない。」と記載されている程度であり、具体的な長さについて説明されていない。また、本件特許明細書には、「溶融樹脂を空中に放出させて冷却させながら延伸する一種のメルトブロー法により樹脂ファイバを製造することができる。」(【0030】)と記載され、メルトブロー法による繊維の長さが、通常、500mm以下のものであることを踏まえると(甲6表1中MB不織布HEPAフィルター繊維長、甲7表1平均繊維長参照。)、一種のメルトブロー法による本件訂正発明1の「極細長繊維」が、1000m以上にも及ぶ絹のように細長く連続したきわめて長い繊維の「長繊維」を意味するものでなく、「樹脂ファイバ同士が適度に絡み合う」程度の長さを有すればよいことが明らかである。
他方、甲1方法発明の「熱可塑性合成樹脂13が線状で飛ばされる際に噴出気流でランダムな長さに千切れ」たものは、フェルト、カーペット用に用いられ(第2ページ右上欄第1~3行)、織り地や編み地でないフェルト、カーペットは、ランダムな長さに千切れたものが、絡み合ってなすものである。そして、甲1には、「熱可塑性合成樹脂13を連続して吸い出す」こと(第2ページ左上欄第6、7行)、「高速気流で線状に延伸して・・・繊維を形成すること」(第1ページ左下欄第7、8行)が記載されているから、甲1方法発明の「繊維」は、連続して線状に延伸された長さを有するとともに、上記用途の記載から、少なくともフェルトやカーペットに用いられる繊維同士が適度に絡み合う程度の長さを有するものである。
以上より、甲1方法発明の「繊維15」は、ミクロンオーダー程度の直径を有し、繊維同士が適度に絡み合う程度の所定の長さを有するから、太さや長さを具体的に特定するものではない本件訂正発明1の「極細長繊維」と相違するといえる理由はなく、「極細長繊維」であるといえる。
そうすると、相違点1-1は実質的な相違点ではない。
(イ)相違点1-2について
甲1には、溶融樹脂が供給されて押し出されるとの記載はない。
しかし、甲1の第2図を参照すると、熔融釜1に収容された熱可塑性合成樹脂13には、熱可塑性樹脂の液面からの各ノズルまでの高低差に起因する重力による圧力が作用しているのは明らかであるし、加熱室3を循循する高熱油9により熱可塑性合成樹脂13が加熱されることで、熱可塑性合成樹脂13の熱膨張に伴う圧力も作用すると考えられる。また、熱可塑性合成樹脂13を連続して吸い出すためには、少なくとも負圧が作用するノズル6の先端口まで熱可塑性合成樹脂13が供給され続けることになる。よって、ノズル6の先端口に位置する熱可塑性合成樹脂13には、負圧によって吸われる力のみならず、上記圧力によって押される力も作用し、熱可塑性合成樹脂13が供給されているといえる。
したがって、甲1方法発明の溶融樹脂は、負圧で吸い出される際、押される力も作用するから、供給されて押し出されているともいえる。
そうすると、相違点1-2は実質的な相違点ではない。
(ウ)相違点1-3について
甲1には「粘性流動状態の熱可塑性合成樹脂13を繊維15に形成するための高圧、高速気流の圧力、温度は要求される製品の条件に従って適宜設定するものである」との記載はある(上記「1(1)ア」参照。)。
しかしながら、吐出口に供給される溶融樹脂の量に応じてガス流の量を調整することは、甲1には記載も示唆もされていない。
したがって、相違点1-3は実質的な相違点である。
(エ)以上検討のとおりであるから、本件訂正発明1は、甲1方法発明ではない。
(2)無効理由4(進歩性欠如)について
本件訂正発明1について上記2(1)アで述べた相違点1-3を検討する。
甲8技術事項は「熱可塑性樹脂の加熱温度および噴射流量を決定し、決定した熱可塑性樹脂の加熱温度および噴射流量に基づいて、エアの加熱温度および噴射流量を決定する」ことに言及するものである。
しかしながら、上記2(1)イ(イ)でも述べたように、溶融樹脂のノズルからの吐出について、甲1には、熔融釜1の内部に収容した熱可塑性合成樹脂13が、熔融釜1の内部に連通する多数のノズル6の先端口に生じる負圧によって吸い出すことが記載されているのみであり、溶融樹脂を吐出口から他の装置を用いて供給することまでは想定されていない。そのため、熔融釜1内の溶融樹脂を負圧によって吸い出すことを前提とする甲1方法発明において、甲8技術事項のように熱可塑性樹脂を螺旋状スクリュー30から供給しようとする動機付けがあるとはいえない。
また、仮に螺旋状スクリュー30を用いるとしても、熔融釜1の内部に収容した熱可塑性合成樹脂13が、熔融釜1の内部に連通する多数のノズル6の先端口に生じる負圧によって吸い出されるものである甲1方法発明に、どのように配置すればよいのか、その手がかりはないし、組み合わせたとしても、吐出口に供給される溶融樹脂の量に応じてガス流の量を調整することは、当業者が容易に想到し得ない。
そして、本件訂正発明1は、「前記吐出口から押し出される前記溶融樹脂は押出機から供給され」るとの構成を有することで、「樹脂の押し出し量に対応させてガス流を調整するだけで操業が安定し、高い操業性を得られ、押し出し量を増やすることも容易であるから、高い操業性をもって生産量をさらに大きく高めることができる。」(【0010】)との効果を奏するものである。
よって、本件訂正発明1は、甲1方法発明と甲8に記載された事項との組み合わせに基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(3)小括
よって、本件訂正発明1は、甲1方法発明ではなく、また、甲1方法発明と甲8に記載された事項との組み合わせから容易に発明をすることができたものでないから、本件訂正発明1についての特許は、特許法第29条第1項第3号及び第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
3 無効理由2(進歩性欠如)について
(1)本件訂正発明2について
ア 対比
本件訂正発明2と甲1方法発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
甲1方法発明の「高圧、高速空気流」、「熱可塑性合成樹脂13」、「延伸する」、「合成繊維連続製造法」、「ノズル6の先端口」は、本件訂正発明2の「高圧ガス流」及び「ガス流」、「熱可塑性樹脂」、「延伸させる」、「樹脂ファイバの製造方法」、「吐出口」にそれぞれ相当する。
そうすると、甲1方法発明の「合成繊維連続製造法」が「高圧、高速空気流で熱可塑性合成樹脂13を延伸することにより特殊形状の繊維15を形成する」ことと、本件訂正発明2の「樹脂ファイバの製造方法」が「高圧ガス流で熱可塑性樹脂を延伸させる極細長繊維」を製造することとは、「樹脂ファイバの製造方法」が「高圧ガス流で熱可塑性樹脂を延伸させる繊維」を製造することという限りで一致する。
また、甲1方法発明の「熱可塑性合成樹脂13」が「粘性流動状態」である態様は、本件訂正発明2の「溶融樹脂」である態様に相当する。
そうすると、甲1方法発明の「各ノズル6外周の噴気孔8から高圧、高速空気を噴出するためにノズル6の先端口には負圧を生じ、熔融釜1内の粘性流動状態の熱可塑性合成樹脂13を連続して吸い出す」態様と、本件訂正発明2の「溶融樹脂が押し出される吐出口」を有する態様とは、「溶融樹脂が出される吐出口」を有する態様という限りで一致する。
甲1方法発明の「ノズル6先端を取り囲む様に若干数の小さな独立噴気管18を外壁4に突設して構成した」「噴気孔8」は、「独立噴気管18」から「高圧、高速空気を噴出」することは明らかであるから、本件訂正発明2の「吐出口近傍に設けた高圧ガス噴出口」に相当する。
甲1方法発明の「各ノズル6外周の噴気孔8から高圧、高速空気を噴出するためにノズル6の先端口には負圧を生じ、熔融釜1内の粘性流動状態の熱可塑性合成樹脂13を連続して吸い出すと同時に噴気孔8からの高圧、高速空気流により線状で外方に飛ばされ、この線状で飛ばされる際に噴出気流により冷却されて粘性流動状態の熱可塑性合成樹脂13は成形固化し且つ成形固化時に噴出気流による牽引で延伸効果が与えられて分子配向は整えられ」ることは、本件訂正発明2の「ガス流が前記吐出口に負圧を与えて前記吐出口内部の前記溶融樹脂をその外部に引き出し延伸させながら空中に放出させる」ことに相当する。
そうすると、本件訂正発明2と甲1方法発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。
【一致点】
「高圧ガス流で熱可塑性樹脂を延伸させる繊維である樹脂ファイバの製造方法であって、
溶融樹脂が出される吐出口近傍に設けた高圧ガス噴出口からのガス流が前記吐出口に負圧を与えて前記吐出口内部の前記溶融樹脂をその外部に引き出し延伸させながら空中に放出させる樹脂ファイバの製造方法。」
【相違点2-1】
「繊維」について、本件訂正発明2では「極細長繊維」であるのに対して、甲1方法発明では「熱可塑性合成樹脂13が線状で飛ばされる際に噴出気流でランダムな長さに千切れ、噴出気流の牽引力による引き千切り状態のために切断部は徐々に細くなる先細形状を形成した特殊形状である」点。
【相違点2-2】
「溶融樹脂が出される吐出口」を有する態様について、本件訂正発明2では溶融樹脂が「押し出される」のに対して、甲1方法発明では溶融樹脂が「吸い出される」点。
【相違点2-3】
「溶融樹脂が出される吐出口近傍に設けた高圧ガス噴出口からのガス流が前記吐出口に負圧を与えて前記吐出口内部の前記溶融樹脂をその外部に引き出し延伸させ」ることについて、本件訂正発明2では「押出機から供給され、前記押出機からの前記溶融樹脂の供給を停止させたときにあっても前記吐出口内部に残留する前記溶融樹脂が負圧によって外部に引き出され延伸される」のに対して、甲1方法発明では吐出口から押し出される溶融樹脂が押出機から供給されない点。
イ 判断
(ア)相違点2-1について
上記2(1)イ(ア)で相違点1-1について述べたとおり、相違点2-1は実質的な相違点でない。
(イ)相違点2-2について
甲1には、溶融樹脂が押し出されるとの記載はない。
しかし、甲1の第2図を参照すると、熔融釜1に収容された熱可塑性合成樹脂13には、熱可塑性樹脂の液面からの各ノズルまでの高低差に起因する重力による圧力が作用しているのは明らかであるし、加熱室3を循循する高熱油9により熱可塑性合成樹脂13が加熱されることで、熱可塑性合成樹脂13の熱膨張に伴う圧力も作用すると考えられる。また、熱可塑性合成樹脂13を連続して吸い出すためには、少なくとも負圧が作用するノズル6の先端口まで熱可塑性合成樹脂13が供給され続けることになる。よって、ノズル6の先端口に位置する熱可塑性合成樹脂13には、負圧によって吸われる力のみならず、上記圧力によって押される力も作用しているといえる。
したがって、甲1方法発明の溶融樹脂は、負圧で吸い出される際、押される力も作用するから、押し出されているともいえる。
そうすると、相違点2-2は実質的な相違点ではない。
(ウ)相違点2-3について
甲2の【0029】には、吐出口から押し出される溶融樹脂が押出機から供給されることが記載されている。
しかし、溶融樹脂のノズルからの吐出について、甲1には、熔融釜1の内部に収容した熱可塑性合成樹脂13が、熔融釜1の内部に連通する多数のノズル6の先端口に生じる負圧によって吸い出すことが記載されているのみであり、溶融樹脂を吐出口から他の装置を用いて押し出すことまでは想定されていない。そのため、溶融樹脂を負圧によって吸い出すことを前提とする甲1方法発明において、溶融樹脂を押出機から供給しようとする動機付けがあるとはいえない。
また、仮に押出機を用いるとしても、熔融釜1の内部に収容した熱可塑性合成樹脂13が、熔融釜1の内部に連通する多数のノズル6の先端口に生じる負圧によって吸い出されるものである甲1方法発明に、どのように配置すればよいのか、その手がかりはないし、組み合わせたとしても、溶融樹脂が押出機から供給され、押出機からの溶融樹脂の供給を停止させたときにあっても吐出口内部に残留する溶融樹脂が負圧によって外部に引き出され延伸されることは、当業者が容易に想到し得ない。
そして、本件訂正発明2は、「前記吐出口から押し出される前記溶融樹脂は押出機から供給され」るとの構成を有することで、「樹脂の押し出し量に対応させてガス流を調整するだけで操業が安定し、高い操業性を得られ、押し出し量を増やすることも容易であるから、高い操業性をもって生産量をさらに大きく高めることができる。」(【0010】)との効果を奏するものである。
よって、本件訂正発明2は、甲1方法発明と甲2に記載された事項との組み合わせに基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(2)本件訂正発明3について
ア 対比
本件訂正発明3は、本件訂正発明2を引用するものであり、上記相違点2-1、相違点2-2及び相違点2-3に加え、本件訂正発明3と甲1方法発明とは、次の点で相違する。
【相違点3】
本件訂正発明3では「前記吐出口は前記ガス流による負圧によって前記溶融樹脂を引き出し得るよう前記溶融樹脂の流動抵抗を低下させる径である」のに対して、甲1方法発明ではノズル6の先端口がそのような径であるか明らかでない点。
イ 判断
そして、相違点2-3は、上記検討したとおり、当業者が容易に想到し得たものではないから、相違点3を検討するまでもなく本件訂正発明3も同様に、甲1方法発明と甲2に記載された事項との組み合わせに基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
(3)本件訂正発明4について
ア 対比
本件訂正発明4は、本件訂正発明3を引用するものであり、上記相違点2-1、相違点2-2相違点2-3及び相違点3に加え、本件訂正発明4と甲1方法発明とは、次の点で相違する。
【相違点4】
本件訂正発明4では「前記吐出口の径は0.5mm以上である」のに対して、甲1方法発明ではノズル6の先端口の径が0.5mm以上であるか明らかでない点。
イ 判断
そして、相違点2-3は、上記検討したとおり、当業者が容易に想到し得たものではないから、相違点4を検討するまでもなく本件訂正発明4も同様に、甲1方法発明と甲2に記載された事項との組み合わせに基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
(4)本件訂正発明5について
ア 対比
本件訂正発明5と甲1装置発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
甲1装置発明の「高圧、高速空気流」、「熱可塑性合成樹脂13」、「延伸する」、「合成繊維を連続製造する装置」、「熔融釜1」、「ノズル6」、「ノズル6の先端口」は、本件訂正発明5の「高圧ガス流」及び「ガス流」、「熱可塑性樹脂」、「延伸させる」、「樹脂ファイバの製造装置」、「バレル」、「ノズル」、「吐出口」にそれぞれ相当する。
そうすると、甲1装置発明の「合成繊維を連続製造する装置」が「高圧、高速空気流で熱可塑性合成樹脂13を延伸することにより特殊形状の繊維15を形成する」ことと、本件訂正発明5の「樹脂ファイバの製造装置」が「高圧ガス流で熱可塑性樹脂を延伸させる極細長繊維」を製造することとは、「樹脂ファイバの製造装置」が「高圧ガス流で熱可塑性樹脂を延伸させる繊維」を製造することという限りで一致する。
甲1装置発明の「熱可塑性合成樹脂13」が「粘性流動状態」である態様は、本件訂正発明5の「溶融樹脂」である態様に相当する。
そうすると、甲1装置発明の「熔融釜1の内部にポリアミド樹脂、オレフイン樹脂、ビニール樹脂等の熱可塑性合成樹脂13を着色、末着色で収容して加熱室3を循循する高熱油9により熔融し、各ノズル6外周の噴気孔8から高圧、高速空気を噴出するためにノズル6の先端口には負圧を生じ、熔融釜1内の粘性流動状態の熱可塑性合成樹脂13を連続して吸い出す」態様と、本件訂正発明5の「バレル内のスクリューで樹脂を溶融させながら前記バレル先端のノズルから溶融樹脂を押し出す押出機」を含む態様とは、「バレル内で樹脂を溶融させながら前記バレル先端のノズルから溶融樹脂を出す構成」を含む態様という限りで一致する。
甲1装置発明の「独立噴気管18」は、「独立噴気管18」から「高圧、高速空気を噴出」することは明らかであるから、本件訂正発明5の「高圧ガス噴出口」に相当する。
そうすると、甲1装置発明の「熔融釜1の内部に連通する様に適宜な配列で隔壁2に突設した多数のノズル6は加熱室3及び圧空室5を串通して外壁4より突出させると共に各ノズル6の先端外周は先細形状7に形成し、その各ノズル6の外周に配置して圧空室5に連通する噴気孔8を外壁4に設け、噴気孔8をノズル6先端を取り囲む様に若干数の小さな独立噴気管18を外壁4に突設して構成したもの」である態様と本件訂正発明5の「前記ノズルの先端に取り付けられたノズルヘッドと、を含み、前記ノズルヘッドは、略鉛直なフェイス面に、前記溶融樹脂を押し出す吐出口と、前記吐出口近傍にあって略水平にガス流を形成する高圧ガス噴出口と、を一対として、複数対を与えられ」る態様とは、「前記溶融樹脂を出す吐出口と、前記吐出口近傍にあってガス流を形成する高圧ガス噴出口と、を一対として、複数対を与えられ」る態様という限りで一致する。
甲1装置発明の「各ノズル6外周の噴気孔8から高圧、高速空気を噴出するためにノズル6の先端口には負圧を生じ、熔融釜1内の粘性流動状態の熱可塑性合成樹脂13を連続して吸い出すと同時に噴気孔8からの高圧、高速空気流により線状で外方に飛ばされ、この線状で飛ばされる際に噴出気流により冷却されて粘性流動状態の熱可塑性合成樹脂13は成形固化し且つ成形固化時に噴出気流による牽引で延伸効果が与えられて分子配向は整えられ」、「噴気孔8をノズル6先端を取り囲む様に若干数の小さな独立噴気管18を外壁4に突設して構成したもの」であることと本件訂正発明5の「前記吐出口内部の前記溶融樹脂をその外部に引き出し延伸させながら空中に放出させるよう、前記高圧ガス噴出口を前記吐出口近傍に位置させるとともに前記吐出口の径を0.5mm以上とした」こととは、「前記吐出口内部の前記溶融樹脂をその外部に引き出し延伸させながら空中に放出させるよう、前記高圧ガス噴出口を前記吐出口近傍に位置させる」ことという限りで一致する。
そうすると、本件訂正発明5と甲1装置発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。
【一致点】
「高圧ガス流で熱可塑性樹脂を延伸させる繊維である樹脂ファイバの製造装置であって、
バレル内で樹脂を溶融させながら前記バレル先端のノズルから溶融樹脂を出す構成を含み、
前記溶融樹脂を出す吐出口と、
前記吐出口近傍にあってガス流を形成する高圧ガス噴出口と、を一対として、複数対を与えられ、
前記吐出口内部の前記溶融樹脂をその外部に引き出し延伸させながら空中に放出させるよう、前記高圧ガス噴出口を前記吐出口近傍に位置させる樹脂ファイバの製造装置。」
【相違点5-1】
「繊維」について、本件訂正発明5では「極細長繊維」であるのに対して、甲1装置発明では「熱可塑性合成樹脂13が線状で飛ばされる際に噴出気流でランダムな長さに千切れ、噴出気流の牽引力による引き千切り状態のために切断部は徐々に細くなる先細形状を形成した特殊形状である」点。
【相違点5-2】
「バレル内で樹脂を溶融させながら前記バレル先端のノズルから溶融樹脂を出す構成」を含むことについて、本件訂正発明5では「バレル内のスクリューで樹脂を溶融させながら前記バレル先端のノズルから溶融樹脂を押し出す押出機」を含むのに対して、甲1装置発明ではそのような押出機を含まない点。
【相違点5-3】
本件訂正発明5では、「前記ノズルの先端に取り付けられたノズルヘッド」を含み、「前記ノズルヘッドは、略鉛直なフェイス面に、前記溶融樹脂を押し出す吐出口と、前記吐出口近傍にあって略水平にガス流を形成する高圧ガス噴出口と、を一対として、複数対を与えられ」るのに対して、甲1装置発明では、ノズルの先端に取り付けられたノズルヘッドを含んでおらず、ノズル6の先端口と噴気孔8が略鉛直なフェイス面に与えられるものでない点。
【相違点5-4】
「前記溶融樹脂を出す吐出口」を有する態様について、本件訂正発明5では溶融樹脂を「押し出す」のに対して、甲1装置発明では溶融樹脂を「吸い出す」点。
【相違点5-5】
本件訂正発明5では「前記吐出口の径を0.5mm以上とした」のに対して、甲1装置発明ではノズル6の先端口の径を0.5mm以上としたか明らかでない点。
イ 判断
(ア)相違点5-1及び相違点5-4について
上記3(1)イ(ア)、(イ)で相違点2-1及び相違点2-2について述べたのと同様、これらは実質的な相違点でない。
(イ)相違点5-5について
甲1装置発明は、ノズル6の先端口は高圧、高速空気流により負圧が生じ、熱可塑性合成樹脂13を連続して吸い出すものである。そのため、ノズル6の先端口の径が狭すぎると、熱可塑性合成樹脂13を連続して吸い出す力に抵抗する力が大きくなり、熱可塑性合成樹脂13を連続して吸い出すことができなくなるから、当該径はある程度の大きさを有するように調整されるものといえる。他方、甲2には、メルトブロー法において、液状性原料を吐出する吐出手段73aの吐出口開口径=2mmであること(甲2技術事項)が記載されており、溶融した液状性原料の吐出口開口径を2mm程度とすることは公知であった。
よって、甲1装置発明において、熱可塑性合成樹脂13を連続して吸い出すことができる程度の大きさを有するノズル6の先端口の径に対して、甲2技術事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものである。
また、「吐出口の径は0.5mm以上である」ことについて、本件特許明細書では「上記した発明において、前記吐出口の径は0.5mm以上であることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、高圧ガス噴出口からのガス流による負圧によって確実に溶融樹脂を引き出し極細長繊維に延伸させることができるとともに、さらに生産量を高め得るのである。」(【0012】)と記載されるものの、「0.5mm以上」の数値範囲に(0.5mm未満の場合に比して)顕著な効果や技術的意義を見いだせる具体的な記載はない。よって、甲1装置発明において、ノズル6の先端口の径を0.5mm以上とし、単にその下限を定めることは、熱可塑性合成樹脂13を連続して吸い出すことができるように、当業者が適宜なし得た設計的事項である。
(ウ)相違点5-2について
上記(1)イ(ウ)で相違点2-3について述べたのと同様、相違点5-2に係る本件訂正発明5の特定事項は、甲1装置発明と甲2に記載された事項との組み合わせに基いて当業者が容易に想到し得たものではない。
(エ)相違点5-3について
相違点5-3に係る本件訂正発明5の特定事項は、甲2~7にも記載も示唆もされていない。甲2には、加熱シリンダー3の先端に設けられるヘッド部7を含み、ヘッド部7は、溶融樹脂を周囲から吐出するための樹脂吐出手段73と中心部からガス状の熱風を噴射するガス噴出口71を備えるナノファイバー製造装置1が記載されている(【0029】、【図3】、【図4】、【図11】等)。しかし、ヘッド部7の略鉛直なフェイス面に樹脂吐出手段73とガス噴出口71とを一対として複数対を備えるものでない。
よって、相違点5-3に係る本件訂正発明5の特定事項は、当業者が容易に想到し得たものではない。
(オ)以上検討のとおりであるから、本件訂正発明5は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(5)本件訂正発明6について
本件訂正発明6は、本件訂正発明5を引用するものであり、上記相違点5-1~相違点5-5に加え、本件訂正発明6と甲1装置発明とは、次の点で相違する。
【相違点6】
本件訂正発明6では「前記複数対は水平線に沿って前記フェイス面に与えられている」のに対して、甲1装置発明ではそのように構成されていない点。
そして、相違点5-2及び相違点5-3は、上記(4)イ(ウ)、(エ)で検討したとおり、当業者が容易に想到し得たものではないから、相違点6を検討するまでもなく本件訂正発明6も同様に、甲1装置発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
(6)本件訂正発明8について
ア 対比
本件訂正発明8と甲1装置発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
甲1装置発明の「高圧、高速空気流」、「熱可塑性合成樹脂13」、「延伸する」、「合成繊維を連続製造する装置」、「熔融釜1」、「ノズル6」、「ノズル6の先端口」は、本件訂正発明8の「高圧ガス流」及び「ガス流」、「熱可塑性樹脂」、「延伸させる」、「樹脂ファイバの製造装置」、「バレル」、「ノズル」、「吐出口」にそれぞれ相当する。
そうすると、甲1装置発明の「合成繊維を連続製造する装置」が「高圧、高速空気流で熱可塑性合成樹脂13を延伸することにより特殊形状の繊維15を形成する」ことと、本件訂正発明8の「樹脂ファイバの製造装置」が「高圧ガス流で熱可塑性樹脂を延伸させる極細長繊維」を製造することとは、「樹脂ファイバの製造装置」が「高圧ガス流で熱可塑性樹脂を延伸させる繊維」を製造することという限りで一致する。
また、甲1装置発明の「熱可塑性合成樹脂13」が「粘性流動状態」である態様は、本件訂正発明8の「溶融樹脂」である態様に相当する。
そうすると、甲1装置発明の「熔融釜1の内部にポリアミド樹脂、オレフイン樹脂、ビニール樹脂等の熱可塑性合成樹脂13を着色、末着色で収容して加熱室3を循循する高熱油9により熔融し、各ノズル6外周の噴気孔8から高圧、高速空気を噴出するためにノズル6の先端口には負圧を生じ、熔融釜1内の粘性流動状態の熱可塑性合成樹脂13を連続して吸い出す」態様と、本件訂正発明8の「バレル内のスクリューで樹脂を溶融させながら前記バレル先端のノズルから溶融樹脂を押し出す」態様とは、「バレル内で樹脂を溶融させながら前記バレル先端のノズルから溶融樹脂を出す」態様という限りで一致する。
甲1装置発明の「独立噴気管18」は、「独立噴気管18」から「高圧、高速空気を噴出」することは明らかであるから、本件訂正発明8の「高圧ガス噴出口」に相当する。
そうすると、甲1装置発明の「熔融釜1の内部に連通する様に適宜な配列で隔壁2に突設した多数のノズル6は加熱室3及び圧空室5を串通して外壁4より突出させると共に各ノズル6の先端外周は先細形状7に形成し、その各ノズル6の外周に配置して圧空室5に連通する噴気孔8を外壁4に設け、噴気孔8をノズル6先端を取り囲む様に若干数の小さな独立噴気管18を外壁4に突設して構成したもの」である態様と本件訂正発明8の「前記ノズルの先端に取り付けられるノズルヘッドであって、前記製造装置に取り付けられたときに略鉛直となるフェイス面に、前記溶融樹脂を押し出す吐出口と、前記吐出口近傍にあって略水平にガス流を形成する高圧ガス噴出口と、を一対として、複数対を与えられ」る態様とは、「前記溶融樹脂を出す吐出口と、前記吐出口近傍にあってガス流を形成する高圧ガス噴出口と、を一対として、複数対を与えられ」る態様という限りで一致する。
甲1装置発明の「各ノズル6外周の噴気孔8から高圧、高速空気を噴出するためにノズル6の先端口には負圧を生じ、熔融釜1内の粘性流動状態の熱可塑性合成樹脂13を連続して吸い出すと同時に噴気孔8からの高圧、高速空気流により線状で外方に飛ばされ、この線状で飛ばされる際に噴出気流により冷却されて粘性流動状態の熱可塑性合成樹脂13は成形固化し且つ成形固化時に噴出気流による牽引で延伸効果が与えられて分子配向は整えられ」、「噴気孔8をノズル6先端を取り囲む様に若干数の小さな独立噴気管18を外壁4に突設して構成したもの」であることと本件訂正発明8の「前記吐出口内部の前記溶融樹脂をその外部に引き出し延伸させながら空中に放出させるよう、前記高圧ガス噴出口を前記吐出口近傍に位置させるとともに前記吐出口の径を0.5mm以上とした」こととは、「前記吐出口内部の前記溶融樹脂をその外部に引き出し延伸させながら空中に放出させるよう、前記高圧ガス噴出口を前記吐出口近傍に位置させる」ことという限りで一致する。
そうすると、本件訂正発明8と甲1装置発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。
【一致点】
「高圧ガス流で熱可塑性樹脂を延伸させる繊維である樹脂ファイバの製造装置において、バレル内で樹脂を溶融させながら前記バレル先端のノズルから溶融樹脂を出し、
前記溶融樹脂を出す吐出口と、
前記吐出口近傍にあってガス流を形成する高圧ガス噴出口と、を一対として、複数対を与えられ、
前記吐出口内部の前記溶融樹脂をその外部に引き出し延伸させながら空中に放出させるよう、前記高圧ガス噴出口を前記吐出口近傍に位置させる点。」
【相違点8-1】
「繊維」について、本件訂正発明8では「極細長繊維」であるのに対して、甲1装置発明では「熱可塑性合成樹脂13が線状で飛ばされる際に噴出気流でランダムな長さに千切れ、噴出気流の牽引力による引き千切り状態のために切断部は徐々に細くなる先細形状を形成した特殊形状である」点。
【相違点8-2】
「バレル内で樹脂を溶融させながら前記バレル先端のノズルから溶融樹脂を出」す態様について、本件訂正発明8では「バレル内のスクリューで樹脂を溶融させながら前記バレル先端のノズルから溶融樹脂を押し出す押出機」の態様であるのに対して、甲1装置発明ではそのような態様でない点。
【相違点8-3】
本件訂正発明8では、「押出機に用いられ、前記ノズルの先端に取り付けられるノズルヘッドであって、前記製造装置に取り付けられたときに略鉛直となるフェイス面に、前記溶融樹脂を押し出す吐出口と、前記吐出口近傍にあって略水平にガス流を形成する高圧ガス噴出口と、を一対として、複数対を与えられ」る「ノズルヘッド」であるのに対して、甲1装置発明では、「熔融釜1の内部に連通する様に適宜な配列で隔壁2に突設した多数のノズル6は加熱室3及び圧空室5を串通して外壁4より突出させると共に各ノズル6の先端外周は先細形状7に形成し、その各ノズル6の外周に配置して圧空室5に連通する噴気孔8を外壁4に設け、噴気孔8をノズル6先端を取り囲む様に若干数の小さな独立噴気管18を外壁4に突設して構成したもの」であって、ノズルヘッドでない点。
【相違点8-4】
「前記溶融樹脂を出す吐出口」を有する態様について、本件訂正発明8では溶融樹脂を「押し出す」のに対して、甲1装置発明では溶融樹脂を「吸い出す」点。
【相違点8-5】
本件訂正発明8では「前記吐出口の径を0.5mm以上とした」のに対して、甲1装置発明ではノズル6の先端口の径を0.5mm以上としたか明らかでない点。
イ 判断
(ア)相違点8-1及び相違点8-4について
上記3(1)イ(ア)及び(イ)で相違点2-1及び相違点2-2について述べたのと同様、これらは実質的な相違点でない。
(イ)相違点8-5について
上記3(4)イ(イ)で相違点5-5について述べたのと同様、相違点8-5は、甲1装置発明及び甲2技術事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。
(ウ)相違点8-2及び相違点8-3について
上記3(4)イ(ウ)及び(エ)で相違点5-2及び相違点5-3について述べたのと同様、相違点8-2及び相違点8-3は、当業者が容易に想到し得たものではない。
(エ)以上検討のとおりであるから、本件訂正発明8は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(7)本件訂正発明9について
本件訂正発明9は、本件訂正発明8を引用するものであり、上記相違点8-1~相違点8-5に加え、本件訂正発明9と甲1装置発明とは、次の点で相違する。
【相違点9】
本件訂正発明9では「前記製造装置に取り付けられたときに前記複数対が水平線に沿うように前記フェイス面に与えられている」のに対して、甲1装置発明ではそのように構成されていない点。
そして、相違点8-2及び相違点8-3は、上記3(6)イ(ウ)で検討したとおり、当業者が容易に想到し得たものではないから、相違点9を検討するまでもなく本件訂正発明9も同様に、甲1装置発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
(8)小括
よって、本件訂正発明2~6、8及び9は、甲1方法発明又は甲1装置発明、及び甲2~甲7に基いて当業者が容易に発明することができたものではないから、本件訂正発明2~6、8及び9についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
4 無効理由3(進歩性欠如)について
(1)本件訂正発明7について
本件訂正発明7は、本件訂正発明6を引用するものであり、上記相違点5-1~相違点5-5及び相違点6に加え、本件訂正発明7と甲1装置発明とは、次の点で相違する。
【相違点7】
本件訂正発明7では「前記複数対の前記高圧ガス噴出口はそれぞれの軸線を噴出方向に向けて互いに扇状に広がるように設けられている」のに対して、甲1装置発明ではそのように構成されていない点。
そして、相違点5-2及び相違点5-3は、上記3(4)イ(ウ)、(エ)で検討したとおり、当業者が容易に想到し得たものではないから、相違点6及び相違点7を検討するまでもなく本件訂正発明7も同様に、甲1装置発明及び甲2、3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
(2)本件訂正発明10について
本件訂正発明10は、本件訂正発明9を引用するものであり、上記相違点8-1~相違点8-5及び相違点9に加え、本件訂正発明10と甲1装置発明とは、次の点で相違する。
【相違点10】
本件訂正発明10では「前記複数対の前記高圧ガス噴出口はそれぞれの軸線を噴出方向に向けて互いに扇状に広がるように設けられている」のに対して、甲1装置発明ではそのように構成されていない点。
そして、相違点8-2及び相違点8-3は、上記3(6)イ(ウ)で検討したとおり、当業者が容易に想到し得たものではないから、相違点9及び相違点10を検討するまでもなく本件訂正発明10も同様に、甲1装置発明及び甲2、3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
第8 むすび
以上のとおり、本件訂正発明1~10についての特許は、請求人の主張及び証拠方法によっては、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-800035