特許異議申立
2022-700626
位置検出装置、及び位置検出システム
- 審判番号
- 2022-700626
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-133235
- 登録番号
- 6990280
- 請求日
- 2022年07月12日
- 審決日
- 2023年04月13日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社京三製作所
- 【権利者代理人】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
- 【異議申立人】稲穂 貴
- 審判長/審判官
- 審判長 河端 賢
- 審判官 山本 信平
- 審判官 鈴木 充
- 分類
- P1651.121-YAA(B61L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第5項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6990280号発明「位置検出装置、及び位置検出システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6990280号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3について訂正することを認める。
特許第6990280号の請求項1、2及び4-7に係る特許を維持する。
特許第6990280号の請求項3に係る特許についての特許異議申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6990280号の請求項1-7に係る特許についての出願は、令和2年8月5日に出願され、令和3年12月7日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月12日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許に対し、令和4年7月12日に特許異議申立人稲穂貴(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和4年12月14日付け(発送日:同年12月20日)で取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和5年2月6日に意見書の提出及び訂正の請求を行った。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和5年2月6日の訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、「特許請求の範囲の請求項3を削除する。」というものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
本件訂正請求は、請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、請求項3について削除することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1-7に係る発明(以下、「本件発明1」-「本件発明7」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
車両の速度情報に基づいて車両位置を演算する演算手段を備える位置検出装置であって、
磁気の強度及び極性を検知する磁気センサと、
磁気マーカの敷設位置を含むデータベースを記憶する記憶手段と、を備え、
前記演算手段は、前記磁気センサで検知した磁気の極性と、前記速度情報から算出される前記車両の走行距離とに基づいて、磁気の誤検知であるか否かを判定し、誤検知ではないと判定した場合に、前記磁気センサで検知された前記磁気マーカの検知個数をカウントするとともに、前記検知個数と前記データベースとに基づいて、前記車両位置を補正する、
ことを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記演算手段は、前記磁気センサで検知した磁気の極性と、前記走行距離とに基づいて、前記車両位置の補正を実行するか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
車両位置を検出する位置検出システムであって、
軌道内に敷設された磁気マーカと、
請求項1又は2に記載の位置検出装置と、を含み、
前記磁気マーカは、複数の同じ極性でグループを形成し、
隣り合うグループは、互いに異なる極性で敷設される、
ことを特徴とする位置検出システム。
【請求項5】
前記演算手段は、前記磁気センサで検知した磁気の極性と、前記走行距離とに基づいて、検知した磁気が同じグループ内のものであるか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の位置検出システム。
【請求項6】
前記演算手段は、前記グループ内の前記磁気マーカを1つでも検知すると、前記車両位置の補正を実行する、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の位置検出システム。
【請求項7】
前記演算手段は、前記グループ内の前記磁気マーカのいずれか、最初に検知した前記磁気マーカのみに基づいて、前記車両位置の補正を実行する、
ことを特徴とする請求項4から5までのいずれか1項に記載の位置検出システム。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の本件請求項3に係る特許に対して、当審が令和4年12月14日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
本件特許の請求項3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
記
《引用文献等一覧》
甲第6号証.特開2003-261028号公報
甲第5号証.特開平7-108937号公報
甲第3号証.特開2020-17035号公報(周知技術を示す文献)
2 当審の判断
令和4年12月14日付けで通知した取消理由の対象である本件請求項3に係る特許は、本件訂正請求による訂正により削除された。
したがって、上記取消理由はなくなった。
第4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要
本件訂正請求による訂正により削除されていない本件発明1、2及び4-7に対する、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
本件発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明4-7は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証、甲第3号証及び甲第5号証に記載された事項を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。
甲第1号証:特開2018-36797号公報
甲第2号証:特開2018-165856号公報
甲第3号証:特開2020-17035号公報
甲第4号証:特開2019-211304号公報
甲第5号証:特開平7-108937号公報
甲第6号証:特開2003-261028号公報
甲第7号証:特開2003-52105号公報
甲第8号証:特開平6-265617号公報
2 当審の判断
(1)甲第1-3号証に記載された事項
ア 甲第1号証
甲第1号証には、次の事項が記載されている(下線は当審において付与した。以下同様。)。
(ア)「【0024】
次に、車両用システム1を構成するセンサユニット11、制御ユニット12について説明する。
センサユニット11は、図1~図3のごとく、車両5の底面に当たる車体フロア50に取り付けられるユニットである。センサユニット11は、例えば、フロントバンパーの内側付近に取り付けられる。例えばセダンタイプの車両5の場合、路面100Sを基準とした取付け高さが約200mmとなっている。
【0025】
センサユニット11は、図3のごとく、車幅方向に沿って一直線上に配列された15個の磁気センサCnと、図示しないCPU等を内蔵した検出処理回路110と、を備えている。
検出処理回路110は、磁気マーカ10を検出するためのマーカ検出処理などの各種の演算処理を実行する演算回路である。この検出処理回路110は、各種の演算を実行するCPU(central processing unit)のほか、ROM(read only memory)やRAM(random access memory)などのメモリ素子等を含む電子回路である。」
(イ)「【0029】
磁気センサCnは、磁束密度の測定レンジが±0.6ミリテスラであって、測定レンジ内の磁束分解能が0.02マイクロテスラという高感度のセンサである。このような高感度は、アモルファスワイヤ211のインピーダンスが外部磁界に応じて敏感に変化するというMI効果を利用するMI素子21により実現されている。さらに、この磁気センサCnは、3kHz周期での高速サンプリングが可能で、車両の高速走行にも対応している。本例では、センサユニット11による磁気計測の周期が3kHzに設定され、センサユニット11は、磁気計測を実施する毎にセンサ信号を制御ユニット12に入力する。」
(ウ)「【0039】
(2)車両用システム1の全体動作
車両用システム1の全体動作について、主に制御ユニット12を主体として、図8のフロー図を用いて説明する。
制御ユニット12は、磁気マーカ10を検出するまで、センサユニット11に上記のマーカ検出処理を繰り返し実行させる(S101、第1の検出ステップ→S102:NO)。制御ユニット12は、センサユニット11から磁気マーカ10を検出した旨の入力を受けたとき(S102:YES)、センサユニット11に新たなマーカ検出処理を実行させる時間的な期間である検出期間を設定する(S103、期間設定ステップ)。
【0040】
具体的には、制御ユニット12は、図9のごとく、まず、車速センサで計測した車速(車両の速度)V(m/秒)によりマーカスパンS(図1参照。磁気マーカ10の敷設間隔。本例では2m)を除算した所要時間δtaを、センサユニット11が1つ目の磁気マーカ10を検出した時点である時刻t1に加算する。このように時刻t1に所要時間δtaを加算すれば、センサユニット11が新たな磁気マーカ10を検出できる時点の時刻t2を予測できる。そして、制御ユニット12は、基準距離(例えば0.2(m))を車速V(m/秒)で除算した区間時間δtbを時刻t2から差し引いた時刻(t2-δtb)を始期とし、区間時間δtbを時刻t2に加算した時刻(t2+δtb)を終期とした時間的な区間を検出期間として設定する。なお、基準距離については、センサユニット11の検出範囲等を考慮して適宜変更すると良い。」
(エ)「【0050】
本例では、1つ目の磁気マーカ10を検出した後、2つ目の磁気マーカ10の検出を試みる検出期間を設定している。この検出期間は必須の構成ではなく省略しても良い。あるいは、検出期間を設定せず、磁気マーカ10の検出を常時試みることも良い。この場合、2つ目の磁気マーカ10が検出された時点が、1つ目の磁気マーカ10の検出時点を基準として上記の検出期間に相当する期間に含まれていない場合には、誤検出である可能性があるといった信頼性の判断を行うことも良い。」
(オ)「【0063】
また例えば、片側2車線の4車線の道路であるという地図情報を地図データベース等から取得すると共に、走行中の車線が中央寄りの車線であるという情報をインフラ側から取得できれば、領域Cを並走車線の領域と推定できる。インフラ側から情報を提供する方法としては、例えば、磁気マーカ10の極性を車線毎に異ならせて車線の情報を提供する方法等がある。
なお、その他の構成及び作用効果については実施例1と同様である。」
(カ)「【0079】
(実施例6)
本例は、実施例1の車両用システムに基づいて、車両の進行方向の偏差を推定した時点の車両の絶対位置を特定可能としたシステムの例である。
本例の車両用システムでは、磁気マーカの絶対位置を表す情報を地図データベースから取得可能であり、検出した磁気マーカの絶対位置から車両の絶対位置を特定可能である。地図データベースとしては、車両に搭載された記憶媒体に格納された地図データベースであっても良く、インターネット等を介して接続可能なサーバ装置の記憶媒体に格納された地図データベースであっても良い。」
(キ)「【図1】
[図:0001399366000001.jpg]
」
(ク)上記(オ)の極性を車線毎に異ならせて車線の情報を提供する場合には、磁気センサCnが磁気の極性を検知するものである必要があることは明らかである。
上記記載事項から、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
〔甲1発明〕
「車速センサで計測した車速に基づき新たな磁気マーカ10の検出処理を実行させる時間的な期間である検出期間を設定する制御ユニット12を備える車両の絶対位置を特定する車両用システムであって、
磁気の磁束密度及び極性を検知する磁気センサCnと、
磁気マーカの絶対位置を表す情報を含む地図データベースを格納する記憶媒体と、を備え、
2つ目の磁気マーカ10が検出された時点が、1つ目の磁気マーカ10の検出時点を基準として車速センサで計測した車速に基づき設定された検出期間に相当する期間に含まれていない場合には、誤検出である可能性があるとの判断を行い、
地図データベースから取得した磁気マーカの絶対位置から車両の絶対位置を特定する、
車両の絶対位置を特定する車両用システム。」
イ 甲第2号証
甲第2号証には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0018】
本例のマーカ検出システム1は、図1のごとく、道路に敷設された磁気マーカ10を車両5に取り付けられた磁気検出ユニットの一例であるセンサユニット11で検出するためのシステムである。
このマーカ検出システム1は、車両5の前後方向に離隔して配置された2つのセンサユニット11と、この2つのセンサユニット11が同時に検出できるよう、この2つのセンサユニット11と同数、かつ、等しい間隔で配置された2つの磁気マーカ10と、を含んで構成されている。以下、磁気マーカ10を説明した後、磁気センサCn(図3)を含むセンサユニット11、磁気発生源が磁気マーカ10であるか否か判断する検出ユニット12を説明する。」
(イ)「【0023】
次に、マーカ検出システム1を構成するセンサユニット11及び検出ユニット12について説明する。
センサユニット11は、図1及び図3のごとく、車両5の底面に取り付けられる磁気検出ユニットである。センサユニット11は、車両5の前後方向において2mの間隔(センサスパンS)を空けた2箇所に配置されている。前側のセンサユニット11は、フロントアクスルの後ろ側に取り付けられ、後ろ側のセンサユニット11は、リヤアクスルの前側に取り付けられている。本例の車両5の場合、路面100Sを基準とした取付け高さがいずれも200mmとなっている。
【0024】
各センサユニット11は、図3のごとく、車幅方向に沿って一直線上に配列された15個の磁気センサCn(nは1~15の整数)と、図示しないCPU等を内蔵した検出処理回路110と、を備えている。
【0025】
本例で採用した磁気センサCnは、アモルファスワイヤなどの感磁体のインピーダンスが外部磁界に応じて敏感に変化するという公知のMI効果(Magnet Impedance Effect)を利用して磁気を検出するMIセンサである。磁気センサCnは、鉛直方向の磁気を検出できるよう、鉛直方向に感磁体が沿うようにセンサユニット11に組み込みされている。」
(ウ)「【0034】
なお、センサユニット11が磁気発生源を検出した際、いずれの磁気センサCnの磁気計測値がピーク値であったかが特定される。そして、センサユニット11の中央位置からのピーク値の磁気センサCnの車幅方向の位置ずれ量が特定され、磁気マーカ10に対する車両5の横ずれ量として計測される。」
(エ)「【0037】
なお、前側及び後ろ側のセンサユニット11が磁気発生源を検出する時点が同時とは、厳密な物理的な同時を意味するものではない。例えば2mのマーカスパンMの1/4の0.5m程度を車両5が走行する時間的範囲内であれば、前側及び後ろ側のセンサユニット11が同じ磁気発生源を検出することがない。そこで、マーカ検出処理では、この時間的範囲内に前側及び後ろ側のセンサユニット11が磁気発生源を検出したとき、同時と取り扱いしている。
【0038】
具体的には、検出ユニット12は、前側及び後ろ側のセンサユニット11のうち、瞬間的に先行して磁気発生源を検出した一方のセンサユニット11の検出時点(第1の時点)を基準として、車両が0.5m走行するのに要する時間的範囲を検出期間として設定する。他方のセンサユニット11が磁気発生源を検出する検出時点(第2の時点)がこの検出期間内に含まれていれば、前側及び後ろ側のセンサユニット11が同時に磁気発生源を検出したとみなすことができる。この場合、検出ユニット12は、前側及び後ろ側のセンサユニット11が同時に検出した各磁気発生源について、磁気マーカ10であると判断する。
【0039】
検出ユニット12は、センサユニット11が検出した磁気発生源を磁気マーカ10であると判断したとき、磁気マーカ10を検出した旨のマーカ検出結果を車両ECUに入力する。なお、このとき検出ユニット12は、各センサユニット11が上記のように計測した横ずれ量を同時に入力する。磁気マーカ10が検出された旨と共に横ずれ量を取得した車両ECUは、横ずれ量を制御入力として車線追従制御等の運転支援制御を実施可能である。」
(オ)「【0040】
一方、いずれかのセンサユニット11が磁気発生源を検出したものの、他方のセンサユニット11が同時に磁気発生源を検出できなかった場合では、検出ユニット12は、前記いずれかのセンサユニット11が検出した磁気発生源について磁気マーカ10ではなく誤検出の可能性があると判断する。」
(カ)「【0042】
以上のように本例のマーカ検出システム1では、道路側のマーカスパンMと車両側のセンサスパンSとが一致している。このような構成を採用すれば、前側及び後ろ側のセンサユニット11が同時に磁気発生源を検出したときに、それらの磁気発生源を磁気マーカ10であると判断できる。」
(キ)「【0044】
なお、本例は、磁気マーカ10を一定の間隔(マーカスパンM)で道路に配置した例である。これに代えて、図8のごとく、マーカスパンMだけ離れた2つの磁気マーカ10を1か所の敷設箇所101に敷設する一方、マーカスパンMよりも長い10m、20mなどの間隔で敷設箇所101を配置することも良い。磁気マーカ10が一定の間隔(マーカスパンM=2m)で敷設された本例については、2つの磁気マーカ10を配置した敷設箇所101を2m間隔で連続的に設けた構成例であると言い換えることができる。」
(ク)「【0046】
N極の磁気マーカ10Nを黒丸で示しS極の磁気マーカ10Sを白丸で示す図9のごとく、磁気マーカ10の表面側の磁極性が所定のパターンをなすように構成しても良い。この場合には、前側のセンサユニット11と後ろ側のセンサユニット11とで、所定の磁極性のパターンをなす2つの磁気マーカ10を同時に検出できる。同時に検出できたという条件に加えて、同時に検出された2つの磁気マーカ10の磁極性が所定のパターンをなしているという条件を追加設定すれば、磁気マーカ10以外の磁気発生源の誤検出をさらに低減できる。」
ウ 甲第3号証
甲第3号証には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0014】
作業エリア1Aでは、作業車両5が移動可能な通路108が縦横10m間隔の格子状に設けられ、通路108が交差する格子点毎に磁気マーカ10が配置されている。作業車両システム1では、例えば港湾管理施設109内に設置されたサーバ装置18による管理の下、複数の作業車両5が相互に干渉しないように作業エリア1A内を移動してコンテナ102の運搬作業を実施する。」
(イ)「【0025】
(2.4)マーカデータベース(マーカDB)185M:マーカDB185Mは、作業エリア1Aに配置された各磁気マーカ10の情報が格納されたデータベースである。磁気マーカ10の情報としては、磁気マーカ10の番地、絶対位置、磁極性などの情報がある。さらに、タグ付きマーカ10の情報には、付設されたRFIDタグ15の識別情報であるタグID(タグ情報)が紐付け(対応付け)られている。
(2.5)地図データベース(地図DB)185T:地図DB185Tには、作業エリア1Aを表すエリアマップ上に各磁気マーカ10が対応付けられた地図データが格納されている。エリアマップ上の各磁気マーカ10には、番地、絶対位置、磁極性などの情報が紐付けられている。
(2.6)車両位置記憶部185R:上記の位置特定部が特定した車両位置を記憶する。」
(ウ)「【0041】
上記のごとく、磁気センサCnは、作業車両5の進行方向及び車幅方向の磁気成分を計測するように構成されている。例えばこの磁気センサCnが、進行方向に移動して磁気マーカ10の真上を通過するとき、進行方向の磁気計測値は、図7のごとく磁気マーカ10の前後で正負が反転すると共に、磁気マーカ10の真上の位置でゼロを交差するように変化する。したがって、作業車両5の走行中では、いずれかの磁気センサCnが検出する進行方向の磁気について、その正負が反転するゼロクロスZcが生じたとき、検出ユニット2が磁気マーカ10の真上に位置すると判断できる。検出処理回路212は、このように検出ユニット2が磁気マーカ10の真上に位置し進行方向の磁気計測値のゼロクロスZcが生じたときに磁気マーカ10を検出したと判断する。」
(エ)「【0044】
なお、図7及び図8の磁気計測値の分布におけるゼロクロスZcの両側の正負は、磁気マーカ10の磁極性がN極であるS極であるかによって入れ替わる。検出処理回路212は、図7あるいは図8の磁気計測値の分布において、ゼロクロスZcの両側の正負の位置関係に応じて磁気マーカ10の磁極性を検出する。」
(オ)「【0096】
バスレーンや連結バス等を利用することにより適時性の確保や輸送能力の増強を図る図18に例示のBRT(Bus Rapid Transit)に実施例1の車両用システムの構成を適用することも良い。例えば市街地と居住区を結ぶバスの運行ルートのうち、市街地に向かう上りのルートにN極の磁気マーカ10Nを配置する一方、居住区に向かう下りのルートにS極の磁気マーカ10Sを配置すると良い。一部の磁気マーカ10(図18において外側に円を設けた磁気マーカ)にRFIDタグ15を付設する一方、上記の図17の場合と同様、マーカDBにおいて各磁気マーカ10の番地や敷設位置等を管理すると良い。タグ付きマーカ10を通過した後のマーカ通過数を計数すれば、新たに検出された磁気マーカ10の番地を特定でき、敷設位置を特定できる。また、同じ磁極性の磁気マーカ10の検出の繰り返しにより、上りあるいは下りのルートに沿うバスの移動を確認できる。
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例1と同様である。」
(2)対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「車速センサで計測した車速」は、その機能、構成又は技術的意義からみて本件発明1の「車両の速度情報」に相当し、以下同様に、「設定する」は「演算する」に、「制御ユニット12」は「演算手段」に、「車両の絶対位置を特定する車両用システム」は「位置検出装置」に、「磁気の磁束密度」は「磁気の強度」に、「磁気センサCn」は「磁気センサ」に、「磁気マーカの絶対位置を表す情報」は「磁気マーカの敷設位置」に、「地図データベース」は「データベース」に、「格納する」は「記憶する」に、「記憶媒体」は「記憶手段」に、それぞれ相当する。
さらに、甲1発明の「新たな磁気マーカ10の検出処理を実行させる時間的な期間である検出期間」と本件発明1の「車両位置」とは「車両位置に関する情報」という限りで一致している。また、甲1発明の「新たな磁気マーカ10が検出された時点が、車速センサで計測した車速に基づき設定された検出期間に相当する期間に含まれていない場合には、誤検出である可能性があるとの判断を行う」ことと本件発明1の「前記演算手段は、前記磁気センサで検知した磁気の極性と、前記速度情報から算出される前記車両の走行距離とに基づいて、磁気の誤検知であるか否かを判定」することとは「少なくとも前記速度情報から算出される前記車両の走行距離に関する情報に基づいて、磁気の誤検知であるか否かを判定」することという限りで一致している。さらに、甲1発明の「地図データベースから取得した磁気マーカの絶対位置から車両の絶対位置を特定する」ことと本件発明1の「前記検知個数と前記データベースとに基づいて、前記車両位置を補正する」こととは「少なくとも前記データベースに基づいて、前記車両位置を特定する」という限りで一致している。
そうすると、本件発明1と甲1発明との間には、次の一致点、相違点がある。
〔一致点〕
「車両の速度情報に基づいて車両位置に関する情報を演算する演算手段を備える位置検出装置であって、
磁気の強度及び極性を検知する磁気センサと、
磁気マーカの敷設位置を含むデータベースを記憶する記憶手段と、を備え、
少なくとも前記速度情報から算出される前記車両の走行距離に関する情報に基づいて、磁気の誤検知であるか否かを判定し、
少なくとも前記データベースに基づいて、前記車両位置を特定する、
位置検出装置。」
〔相違点1〕
「車両位置に関する情報」が、本件発明1においては「車両位置」であるのに対して、甲1発明においては「新たな磁気マーカ10の検出処理を実行させる時間的な期間である検出期間」である点。
〔相違点2〕
「少なくとも前記速度情報から算出される前記車両の走行距離に関する情報に基づいて、磁気の誤検知であるか否かを判定する」ことが、本件発明1においては「前記演算手段は、前記磁気センサで検知した磁気の極性と、前記速度情報から算出される前記車両の走行距離とに基づいて、磁気の誤検知であるか否かを判定」することであるのに対して、甲1発明においては「2つ目の磁気マーカ10が検出された時点が、1つ目の磁気マーカ10の検出時点を基準として車速センサで計測した車速に基づき設定された検出期間に相当する期間に含まれていない場合には、誤検出である可能性があるとの判断を行う」ことである点。
〔相違点3〕
本件発明1は「誤検知ではないと判定した場合に、前記磁気センサで検知された前記磁気マーカの検知個数をカウントする」ものであるのに対して、甲1発明は誤検知ではないと判定した場合に、どうするのか特定されていない点。
〔相違点4〕
「少なくとも前記データベースに基づいて、前記車両位置を特定する」ことが、本件発明1においては「前記検知個数と前記データベースとに基づいて、前記車両位置を補正する」であるのに対して、甲1発明においては「地図データベースから取得した磁気マーカの絶対位置から車両の絶対位置を特定する」である点。
事案に鑑み、まず相違点2について検討する。
甲第2号証の段落【0046】には、磁気の極性に基づき磁気の誤検知であるか否かを判定することは記載されている。しかし、それは「同時に検出できた」という条件に加えるものであるから、速度情報から算出される車両の走行距離とは無関係に同時に検出された磁気の極性のみに基づき誤検知であるか否かを判定するものに過ぎない。よって、甲第2号証には、「前記磁気センサで検知した磁気の極性と、前記速度情報から算出される前記車両の走行距離とに基づいて、磁気の誤検知であるか否かを判定」することについて記載も示唆もない。
さらに、甲第2号証の段落【0018】から、甲第2号証に記載されたものは、車両の前後方向に離隔して配置された2つのセンサユニットと、この2つのセンサユニットが同時に検出できるよう、この2つのセンサユニットと同数、かつ、等しい間隔で配置された2つの磁気マーカとを含んで構成されているものを前提としていることが理解できる。一方、甲第1号証の段落【0024】、【0025】、【0050】及び【図1】から、甲1発明は、車幅方向に沿って一直線に配列された複数磁気センサCnを備える1つのセンサユニットが、車両の走行中に経時的に複数の磁気マーカを検出するものを前提としていることが理解できる。そうすると、前提を異にしている甲1発明に甲第2号証に記載された事項を適用する動機付けはない。
また、申立人は、異議申立書において甲第1号証には、車線毎に磁気マーカの極性が異なる道路を走行しているとき、極性の判別を含む磁気マーカの検出を繰り返しながら走行し、2つ目の磁気マーカの検出時点が、車速情報に基づく所定の期間に属していなければ、誤検知とする旨が記載されていると判断でき、車両がいずれかの磁気マーカーを検出した後、極性が異なる磁気マーカが新たに検知された場合、仮にその検知時点が前記所定の期間に含まれていたとしても、その新たに検知された極性が異なる磁気マーカを誤検知の磁気マーカと判定することは、当業者であれば当然に考えることである旨主張している。
しかし、甲第1号証には、磁気マーカの極性を車線毎に異ならせることは記載されているが、極性が異なる磁気マーカを誤検知と判断することについては記載も示唆もない。よって、上記申立人の主張も採用することはできない。
また、甲第3号証にも磁気の極性に基づき磁気の誤検知であるか否かを判定することは記載も示唆もない。
よって、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は、甲1発明並びに甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項から、当業者が容易に想到し得たものではない。
次に相違点3についても検討する。
甲第3号証の段落【0096】には、マーカ通過数から敷設位置を特定することは記載されている。しかし、甲第3号証には誤検知であるか否かを判定することについて何ら記載されておらず、「誤検知ではないと判定した場合に、前記磁気センサで検知された前記磁気マーカの検知個数をカウントする」ことについて記載も示唆もない。
申立人は異議申立書において、段落【0041】の記載と段落【0096】の記載の組み合わせは、「誤検知ではないと判定した場合に、前記磁気センサで検知された前記磁気マーカの検知個数をカウントする」ことに相当する旨主張している。しかし、段落【0041】の記載も誤検知であるか否か判定すると解せる部分はなく、上記申立人の主張は採用することができない。
また、甲第2号証にも、「誤検知ではないと判定した場合に、前記磁気センサで検知された前記磁気マーカの検知個数をカウントする」ことについて記載も示唆もない。
よって、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項は、甲1発明並びに甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項から、当業者が容易に想到し得たものではない。
したがって、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明並びに甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお、甲第4-8号証についても、相違点2又は3に係る本件発明1の発明特定事項に関する記載又は示唆はない。よって、さらに甲第4-7号証に記載された事項に基いたとしても、本件発明1が当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2及び4-7について
本件発明2及び4-7は、本件発明1の発明特定事項を全て含むから、上記と同様に、甲1発明及び甲第2-8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)まとめ
したがって、上記理由は採用できない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2及び4-7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2及び4-7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
なお、本件請求項3に係る特許は、本件訂正請求による訂正により削除された。これにより、本件請求項3に係る特許に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700626