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特許異議申立

2022-700334

放送音形成装置、及び情報提示システム

審判番号
2022-700334
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-012024
登録番号
6955452
請求日
2022年04月25日
審決日
2023年06月21日
公報発行日
2023年09月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】TOA株式会社
  • 【権利者代理人】濱名 哲也
  • 【異議申立人】▲高▼橋 公志
審判長/審判官
  • 審判長 土居 仁士
  • 審判官 寺谷 大亮
  • 審判官 丸山 高政
分類
P1651.113-YAA(H04H) / P1651.121-YAA(H04H) / P1651.536-YAA(H04H) / P1651.537-YAA(H04H) / P1651.851-YAA(H04H) / P1651.853-YAA(H04H)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第113条、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条、特許法第29条、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6955452号発明「放送音形成装置、及び情報提示システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6955452号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2~4〕、5について訂正することを認める。 特許第6955452号の請求項1~4に係る特許を維持する。 同請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6955452号(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成30年1月26日に出願され、令和3年10月5日にその特許権の設定登録がされ、令和3年10月27日に特許掲載公報が発行された。その請求項1~5に係る特許に対して、特許異議申立人 高橋公志(当審注:「高」は正しくは異字体のいわゆる「はしごだか」。)(以下「申立人」という。)が、本件特許異議の申立てを行った。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和4年 4月25日 :特許異議申立書の提出 令和4年 8月25日付け:取消理由通知書 令和4年10月28日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和5年 1月19日 :申立人による意見書の提出 令和5年 3月 9日付け:特許権者に対する審尋 令和5年 3月24日 :特許権者との面接 令和5年 4月 5日 :特許権者による回答書の提出 以下では、令和4年4月25日の特許異議申立書を単に「申立書」といい、令和4年10月28日の訂正請求書による訂正を「本件訂正」といい、令和5年1月19日の意見書を「申立人意見書」という。 第2 申立理由及び申立人意見の概要 1 申立理由の概要 申立人は、本件訂正前の請求項1~5について、特許異議の申立てをした。具体的には、以下の申立理由1-1~申立理由5-2のように主張する。なお、以下では、甲第1号証~甲第5号証を、それぞれ「甲1」~「甲5」という。 申立理由1-1 本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明(以下「甲1発明」という。)と同一であるから、本件訂正前の請求項1に係る特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条1項3号の規定に違反してされたものである。 仮に相違点があるとしても、本件訂正前の請求項1に係る発明は、当業者が甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項1に係る特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである。(申立書36頁) 申立理由1-2 本件訂正前の請求項1に係る発明は、当業者が甲2に記載された発明(以下「甲2発明」という。)と甲3の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項1に係る特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである。(申立書42頁) 申立理由2-1 本件訂正前の請求項2に係る発明は、当業者が甲1発明と甲3の記載事項と甲4に示される周知慣用技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項2に係る特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである。(申立書43頁) 申立理由2-2 本件訂正前の請求項2に係る発明は、当業者が甲2発明と甲3の記載事項と甲4に示される周知慣用技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項2に係る特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである。(申立書43頁) 申立理由3-1 本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲1発明と同一であるから、本件訂正前の請求項3に係る特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条1項3号の規定に違反してされたものである。 仮に相違点があるとしても、本件訂正前の請求項3に係る発明は、当業者が甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項3に係る特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである。(申立書44頁) 申立理由3-2 本件訂正前の請求項3に係る発明は、当業者が甲2発明と甲3の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項3に係る特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである。(申立書44頁) 申立理由4-1 本件訂正前の請求項4に係る発明は、甲1発明と同一であるから、本件訂正前の請求項4に係る特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条1項3号の規定に違反してされたものである。 仮に相違点があるとしても、本件訂正前の請求項4に係る発明は、当業者が甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項4に係る特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである。(申立書45頁) 申立理由4-2 本件訂正前の請求項4に係る発明は、当業者が甲2発明と甲3の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項4に係る特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである。(申立書45頁) 申立理由5-1 本件訂正前の請求項5に係る発明は、甲3に記載された発明(以下「甲3発明」という。)と同一であるから、本件訂正前の請求項5に係る特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条1項3号の規定に違反してされたものである。(申立書45頁) 仮に相違点があるとしても、本件訂正前の請求項5に係る発明は、当業者が甲3発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項5に係る特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである。(申立書48頁) 申立理由5-2 本件訂正前の請求項5に係る発明は、甲5に記載された発明(以下「甲5発明」という。)と同一であるから、本件訂正前の請求項5に係る特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条1項3号の規定に違反してされたものである。(申立書45頁) 仮に相違点があるとしても、本件訂正前の請求項5に係る発明は、当業者が甲5発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項5に係る特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである。(申立書48頁) 2 申立人意見の概要 申立人は、本件訂正について、以下の申立人意見1及び申立人意見2のように主張し、本件訂正後の請求項1~4について、以下の申立人意見3~申立人意見6のように主張する。 申立人意見1 本件訂正の訂正事項1は、特許請求の範囲を拡張または変更するものであるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の要件を充足しないものである。(申立人意見書2頁) 申立人意見2 本件訂正の訂正事項2は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の要件を充足しないものである。(申立人意見書3頁) 申立人意見3 本件訂正後の請求項1に係る発明は、依然として甲1発明と同一であり、仮に相違点があるとしても、当業者が甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、その特許は取り消されるべきである。(申立人意見書3~7頁) 申立人意見4 本件訂正後の請求項2に係る発明は、当業者が甲1発明と甲4、特開2009-71582号公報、特開2009-44376号公報及び特開平3-141800号公報に示される周知慣用技術に基いて容易に発明をすることができたものあり、また、甲1発明と実質的に同一であるから、その特許は取り消されるべきである。(申立人意見書7~8頁) 申立人意見5 本件訂正後の請求項3に係る発明は、本件訂正前の請求項3に対応するから、その特許は申立理由3-1及び申立理由3-2により取り消されるべきである。(申立人意見書8頁) 申立人意見6 本件訂正後の請求項4に係る発明は、本件訂正前の請求項4に対応するから、その特許は申立理由4-1及び申立理由4-2により取り消されるべきである。(申立人意見書9頁) 第3 証拠方法 申立人は、以下の甲1~甲5を提出した。この決定では、特に、甲1~甲3の記載を引用する。 甲1 国際公開第2017/130795号 甲2 特開2016-218980号公報 甲3 特開2017-212750号公報 甲4 特開2009-71775号公報 甲5 特開2017-63330号公報 第4 取消理由の概要 当審が取消理由通知書で通知した取消理由の概要は、以下の取消理由1-1~取消理由4-2のとおりである。 取消理由1-1 特許請求の範囲の記載は、本件訂正前の請求項1~4に係る発明の端末装置の「種類」の意味が明確でなく、さらに、該端末装置の「種類」と「前記端末装置の用途、機能、属性、前記端末装置にインストールされている前記識別情報の関連情報を提示する情報提示アプリケーション、並びに前記端末装置の所有者若しくは管理者の情報、の少なくとも1つ」との関係が明確でないから、本件特許は、特許法113条4号に掲げる、同法36条6項2号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 取消理由1-2 特許請求の範囲の記載は、本件訂正前の請求項3に係る発明の「前記放送音の帯域幅」の「前記」の対象が明確でないから、本件特許は、特許法113条4号に掲げる、同法36条6項2号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 取消理由1-3 特許請求の範囲の記載は、本件訂正前の請求項4に係る発明の「前記放送音の帯域幅」の「前記」の対象が明確でなく、さらに、請求項3を引用する場合の「放送音の帯域幅」が明確でないから、本件特許は、特許法113条4号に掲げる、同法36条6項2号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 取消理由2 発明の詳細な説明の記載は、「放送受信機」が一般的なテレビ受信機やラジオ受信機である場合において、「前記放送受信機に備わるスピーカーまたは前記放送受信機に接続されたスピーカー」から放送される放送音に「識別情報」を含めるための構成が具体的に示されておらず、当業者が本件訂正前の請求項4に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、本件特許は、特許法113条4号に掲げる、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 取消理由3 本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、本件訂正前の請求項1に係る特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条1項3号の規定に違反してされたものである。 取消理由4-1 本件訂正前の請求項1に係る発明は、当業者が甲1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項1に係る特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである。 取消理由4-2 本件訂正前の請求項5に係る発明は、当業者が甲5に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項1に係る特許は、特許法113条2号に掲げる、同法29条2項の規定に違反してされたものである。 第5 本件訂正の適否についての判断 1 本件特許における端末装置の「種類」の意味 後記2のとおり、本件訂正は、端末装置の「種類」についての訂正事項1及び2を含むものである。 そこで、はじめに、本件訂正前の本件特許における端末装置の「種類」の技術的意味について検討する。 (1)明細書等の記載 本件訂正前の本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)には、次の記載がある。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 放送音に含まれる識別情報に基づいて情報を提示する情報提示システムにおいて、 前記識別情報を含む前記放送音を放送する放送装置と、空間内に配置され得る複数種類の端末装置とを含み、 前記端末装置のそれぞれは、前記端末装置の用途、機能、属性、前記端末装置にインストールされている前記識別情報の関連情報を提示する情報提示アプリケーション、並びに前記端末装置の所有者若しくは管理者の情報、の少なくとも1つに応じた異なるテーブルであってかつ前記識別情報と前記関連情報とを関連付けるテーブルを有し、 複数種類の前記端末装置のテーブルそれぞれにおいて、共通する前記識別情報には、前記識別情報に対応する関連情報が関連づけられ、 第1の前記端末装置は、第1の前記端末装置が有する前記テーブルを参照し、前記放送装置から放送された放送音に含まれる識別情報に基づいて、前記放送音の前記識別情報に関連する第1の関連情報を提示し、 第2の前記端末装置は、第2の前記端末装置が有する前記テーブルを参照し、前記放送装置から放送された放送音に含まれる識別情報に基づいて、前記放送音の前記識別情報に関連する第2の関連情報を提示し、 前記第1の関連情報は、前記第2の関連情報とは異なる態様の情報である ことを特徴とする情報提示システム。 【請求項2】 前記放送装置は、前記識別情報を放送形態によって特定される放送音の帯域幅内に埋め込む放送音形成装置と、前記放送音形成装置に接続されるスピーカーとを備え、 前記放送音形成装置と前記スピーカーとはハイインピーダンス方式で接続される 請求項1に記載の情報提示システム。 【請求項3】 前記放送装置は、防災無線システムを含み、 前記放送音の帯域幅は、前記防災無線システムに繋がるスピーカーから放送される放送音の帯域幅である 請求項1または2に記載の情報提示システム。 【請求項4】 前記放送装置は、放送受信機を含み、 前記放送音の帯域幅は、前記放送受信機に備わるスピーカーまたは前記放送受信機に接続されたスピーカーから放送される放送音の帯域幅である 請求項1~3のいずれか一項に記載の情報提示システム。 【請求項5】 状況及び各種のサービスを表す種類情報と識別情報とを関連付けしたテーブルを有し、放送音の帯域幅内に識別情報を埋め込み、放送形態によって特定される前記放送音を形成する放送音形成装置であって、 前記種類情報に関連する情報を取得するとき、前記放送音の帯域幅内に前記種類情報に関連付けされた前記識別情報を埋め込むことにより、前記放送音を形成する 放送音形成装置。」 イ 「【技術分野】 【0001】 本発明は、音を介して情報提示可能な放送音形成装置、及び情報提示システムに関する。 【背景技術】 【0002】 放送音により端末装置に情報を取得させるシステムとして、特許文献1に記載の技術が知られている。 特許文献1に記載の技術では、情報提示システムは、識別情報が含まれる放送音を出力することにより、携帯電話機やスマートフォン等の端末装置に、識別情報を伝える。端末装置は、インターネット等を介して情報提示システムと通信し、識別情報に関連する情報を取得する。」 ウ 「【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 ところで、非常放送のように、公衆に広く、早く情報を伝達したい場合がある。このような情報は、様々な形態で情報が伝達されることが好ましい。そこで、機能、用途、及び属性等が異なる端末装置のそれぞれにおいて異なる情報を提示できる、放送音形成装置、及び情報提示システムを提供する。 【課題を解決するための手段】 【0005】 (1)上記課題を解決する情報提示システムは、放送音に含まれる識別情報に基づいて情報を提示する情報提示システムにおいて、前記識別情報を含む前記放送音を放送する放送装置と、空間内に配置され得る複数の端末装置とを含み、第1の前記端末装置は、前記放送装置から放送された放送音に含まれる識別情報に基づいて、前記放送音の前記識別情報に関連する第1の関連情報を提示し、第2の前記端末装置は、前記放送装置から放送された放送音に含まれる識別情報に基づいて、前記放送音の前記識別情報に関連する第2の関連情報を提示し、前記第1の関連情報は、前記第2の関連情報とは異なる態様の情報である。この構成によれば、異なる端末装置それぞれで、異なる情報が提示されるため、人は、様々な態様で情報を得ることができる。 【0006】 (2)上記情報提示システムにおいて、前記端末装置は、前記端末装置の用途、機能、属性、前記端末装置にインストールされている前記識別情報の関連情報を提示する情報提示アプリケーション、並びに前記端末装置の所有者若しくは管理者の情報の少なくとも1つによって異なるテーブルであってかつ前記識別情報と前記関連情報とを関連付けるテーブルを有する。この構成によれば、端末装置は、識別情報から簡単に関連情報を取得できる。」 エ 「【発明の効果】 【0013】 上記端末装置及び情報提示システムによれば、異なる情報を提示できる。放送音形成装置は、端末装置に情報を伝達できる。 【図面の簡単な説明】 【0014】 【図1】第1実施形態に係る情報提示システムの模式図。 【図2】第2実施形態に係る情報提示システムの模式図。 【図3】識別情報と種類情報との関係を示す識別情報テーブル。 【図4】端末装置の種類と端末用テーブルとを関連付けする管理テーブル。 【図5】スマートフォンが有する端末用テーブル。 【図6】サイネージが有する端末用テーブル。 【図7】スマートフォンが実行する設定処理のフローチャート。 【図8】サイネージが実行する設定処理のフローチャート。 【図9】スマートフォンが実行する情報取得処理のフローチャート。 【図10】サイネージが実行する情報取得処理のフローチャート。 【図11】第3実施形態に係る情報提示システムについて、放送装置が有する識別情報テーブル。 【図12】第3実施形態に係る情報提示システムについて、情報管理装置が有する管理テーブル。 【図13】第3実施形態に係る情報提示システムについて、端末装置が有する端末用テーブル。 【図14】放送装置の変形例の模式図。 【図15】放送装置の変形例の模式図。」 オ 「【発明を実施するための形態】 【0015】 <第1実施形態> 図1を参照して、情報提示システムについて説明する。 情報提示システム1は、放送音に含まれる識別情報IDに基づいて情報を提示する。 【0016】 情報提示システム1は、識別情報IDを含む放送音を放送する放送装置2と、空間内に配置され得る複数の端末装置3とを含む。放送装置2は、識別情報IDを記憶する。好ましくは、放送装置2は、後述の種類情報ICに関連付けて識別情報IDを記憶する。 【0017】 放送装置2のスピーカー11は、天井または壁に設置される。例えば、駅内の通路、駅のホーム、イベント会場、宴会場、コンサートホール、学校、ビル、運動場、等に設置され得る。駅内の通路等の公共空間においては、公共空間に1または複数のスピーカー11が設置される。学校またはビルにおいては、複数の部屋それぞれに1または複数のスピーカー11が設置される。放送音は、複数の人及び物(マイクを有する物)に伝達される。 【0018】 識別情報IDは、様々な状況、各種のサービス等を表す情報(以下、種類情報IC)毎に付与される情報である。識別情報IDは予め設定されている。例えば、各種の災害(状況の例)について個別に識別情報IDが設定される。各種の事故(状況の例)について個別に識別情報IDが設定される。また、各種のサービスについて識別情報IDが設定される。また、電車の遅延や自動車の渋滞(状況の例)について識別情報IDが設定される。このうち災害に関する識別情報IDは、国内または世界中で標準化されてもよい。災害の情報は、世界中のどこにいても必要とされるからである。 【0019】 識別情報IDは、識別情報IDに対応する状況が生じたときに、音声信号に埋め込まれる。例えば、災害や事故等の非常事態が生じたとき、人に詳しい情報を知らせるために、公共空間に放送される放送音の音声信号に識別情報IDが埋め込まれる。また、来店客にサービス情報を知らせるために、店舗に放送される放送音の音声信号に識別情報IDが埋め込まれる。 【0020】 放送装置2は、識別情報IDを含む放送音を出力する。放送装置2は、電子透かし法により、放送音の元の音声信号に識別情報IDを埋め込む。識別情報IDは、放送音の帯域幅内に埋め込まれる。放送音の帯域とは、放送システムにおいてスピーカー11から出力する音について、予め設定されている音声周波数帯域幅を示す。各種の放送システムにおいて、放送音の帯域幅が予め設定されており、帯域幅から外れたところに識別情報IDを埋め込まれると、識別情報IDが伝達され難くなるからである。好ましくは、識別情報IDは、放送音の可聴帯域内に埋め込まれる。 【0021】 電子透かし法として、例えば、エコー拡散、スペクトラム拡散が挙げられる。好ましくは、放送装置2は、エコー拡散で、放送音の可聴帯域内に識別情報IDを埋め込む。なお、放送装置2は、スペクトラム拡散により放送音の非可聴帯域(可聴帯域よりも周波数が高い領域)に識別情報IDを埋め込み得る。可聴帯域とは、20Hz以上20,000Hz以下の帯域である。 【0022】 放送装置2は、放送音形成装置10と、放送音形成装置10に接続されるスピーカー11とを備える。放送音形成装置10は、放送形態によって特定される帯域の放送音を形成する。放送形態によって特定される帯域は、各種の放送システム(例えば、防災放送等)によって設定されている。 【0023】 放送音形成装置10とスピーカー11とはハイインピーダンス方式で接続される。好ましくは、放送音形成装置10とスピーカー11との間のインピーダンスは、100Ω以上とされる。また、好ましくは、放送音形成装置10とスピーカー11との間のインピーダンスは、20kΩ以下とされる。 【0024】 端末装置3は、放送音を受信するマイク6を有し、また、情報を提示する提示手段を有する。端末装置3として、例えば、スマートフォン21、携帯電話、マイク付きのサイネージ23、マイク付きのテレビ、マイク付きのパーソナルコンピュータ、マイク付きのスピーカー(端末装置3としてのスピーカー)等が挙げられる。これら端末装置3は、情報を提示する手段として、表示部、音声出力部、等を有する。 【0025】 端末装置3は、マイク6で受信した音声信号から識別情報IDを抽出する。端末装置3は、識別情報IDに関連する情報と識別情報IDとが関係付けられたテーブル(以下、端末用テーブル)を有する。端末装置3は、抽出した識別情報IDに関連する情報を表示部等で提示する。 【0026】 識別情報IDは、放送音を受信できる端末装置3に対して共通化されている。複数の端末装置3が同じ放送音を受信するときは、複数の端末装置3は、同じ識別情報IDを抽出する。一方、端末装置3は、端末装置3の機能、用途、属性等に応じた端末用テーブルを有する。すなわち、端末装置3の機能、用途、属性等に対応する端末用テーブルがある。そして、識別情報IDに関連付けされている情報は、端末装置3の機能、用途、属性等によって異なる。ここで、端末装置3の機能、用途、属性等とは、端末装置3の機能、用途、属性、端末装置3にインストールされている情報提示アプリケーションのタイプ、端末装置3の所有者または管理者の情報、である。 【0027】 識別情報IDを抽出する識別情報抽出プログラム及び端末装置3が有する端末用テーブルは、CDやSD等の記憶媒体またはインターネット4により提供される。例えば、スマートフォン21の場合、インターネット4を介して情報提示アプリケーションが提供される。情報提示アプリケーションは、識別情報抽出プログラムとスマートフォン21用の端末用テーブルとを含む。情報提示アプリケーションは、起動により、識別情報抽出プログラムを動作させる。したがって、スマートフォン21のユーザーは、識別情報IDが含まれる放送音(例えば、災害情報の放送)を聞いたときに、情報提示アプリケーションを起動させることで、放送音に含まれる識別情報IDに関連する情報を得ることができる。 【0028】 放送音が複数種類の端末装置3に受信される場合を説明する。 第1の端末装置3Aは、第1の端末装置3A自身が有する端末用テーブルを参照して、放送装置2から放送された放送音に含まれる識別情報IDに基づいて、放送音の識別情報IDに関連する第1の関連情報を提示する。第2の端末装置3Bは、第2の端末装置3B自身が有する端末用テーブルを参照して、放送装置2から放送された放送音に含まれる識別情報IDに基づいて、放送音の識別情報IDに関連する第2の関連情報を提示する。第1の関連情報は、第2の関連情報とは異なる態様の情報である。 【0029】 例えば、スマートフォン21とサイネージ23とが同じ放送音を受信し、同じ識別情報IDを抽出するとき、スマートフォン21には、識別情報IDに対応するスマートフォン21用の関連情報が示され、サイネージ23には、識別情報IDに対応するサイネージ23用の関連情報が表示される。このように、情報提示システム1によれば、複数種類の端末装置3に同時に情報を伝達できる。また、複数種類の端末装置3は、端末装置3の機能に応じた情報を提示できる。 【0030】 本実施形態の作用を説明する。 複数の端末装置3は、識別情報IDを含む放送音を受信する。複数の端末装置3は、識別情報IDを取得すると、識別情報IDに関連した情報であって端末装置3自体の機能用途属性等に応じた関連情報を提示する。したがって、複数の端末装置3が提示する情報は異なる。このように、複数の端末装置3は、端末装置3自体の機能用途属性等に応じた情報を提示する。これにより次のように複数の効果がある。」 カ 「【0047】 端末装置3は、識別情報IDに関連する関連情報を取得ときに参照するテーブル(以下、「端末用テーブル」)を記憶する。端末用テーブルは、機能が異なる端末装置3毎に異なる。端末用テーブルは、インターネット4上の情報管理装置5で管理されている。端末用テーブルは、情報管理装置5から端末装置3に提供される。 【0048】 図4は、端末装置3と端末用テーブルとを関連付けするテーブル(以下、「管理テーブル」)である。情報管理装置5は、端末装置3毎に、端末用テーブルを用意している。情報管理装置5は、端末装置3からのアクセスがあるとき、管理テーブルを参照して、端末装置3に対応した端末用テーブルを当該端末装置3に提供する。 【0049】 例えば、図4に示されるように、情報管理装置5には、スマートフォン21用の端末用テーブルと、サイネージ23用の端末用テーブルとが用意される。さらに、端末用テーブルは、スマートフォン21で使用される標準言語毎に別々に用意されている。これにより、情報管理装置5は、スマートフォン21を使用するユーザーが言語として理解可能な関連情報を提供できる。また、サイネージ23においては、サイネージ23の表示画面の大きさに応じて、別々の端末用テーブルが用意されている。これにより、情報管理装置5は、サイネージ23の表示画面の大きさに応じた関連情報を提供できる。 【0050】 このようにして、端末装置3は、端末装置3自体の機能、属性に応じた内容の関連情報を提示する。例えば、スマートフォン21は、災害の種類(例えば、地震)とともに災害の詳細情報を有するサイトのURL(Uniform Resource Locator)を表示する。サイネージ23は、災害の種類(地震)及びその注意情報を複数の言語で表示する。例えば、サイネージ23は、「地震発生」という内容を、日本語、英語、中国語で、表示する。 【0051】 図5は、スマートフォン21が有する端末用テーブルの一例である。この例では、スマートフォン21の標準言語に日本語のテーブルが設定されている例である。例えば、スマートフォン21が、識別情報IDとして「002」を抽出すると、スマートフォン21の表示画面には、「地震」と表示されるとともに、日本語の関連リンク先が表示される。これにより、スマートフォン21のユーザーは、放送音を聞き漏らしているときでも、何が生じているのかを直ぐに理解でき、詳細な情報を直ぐに得ることができる。 【0052】 図6は、サイネージ23が有する端末用テーブルの一例である。例えば、サイネージ23が、識別情報IDとして「002」を抽出すると、サイネージ23の表示画面には、「地震」が日本語、英語、中国語で表示される。このため、日本語を聴き取れない外国人でも、英語または中国語を理解できる場合、状況を直ぐに把握できる。」 キ 「【0062】 <第3実施形態> 図11図13を参照して、本実施形態に係る情報提示システム1について説明する。 情報提示システム1は、サービスを人に提供するシステムである。情報提示システム1は、例えば、店舗に設置される。店舗には、スピーカー11が配置される。これらスピーカー11は、日常で、音楽放送やアナウンスのために用いられる。 【0063】 情報提示システム1は、第1実施形態と同様に、放送装置2と、端末装置3とを備える。本実施形態において、第1の端末装置3A及び第2の端末装置3Bは、個人が使うスマートフォン21である。第1の端末装置3Aと第2の端末装置3Bとは、属性が異なる。例えば、第1の端末装置3Aは、男性が保有するものであり、第1の端末装置3Aには、男性が使用していることを示す情報を記憶する。第2の端末装置3Bは、女性が保有するものであり、第2の端末装置3Bは、女性が使用していることを示す情報を記憶する。各端末装置3A,3Bは、情報管理装置5に属性に関する情報を送信することにより、属性に対応する端末用テーブル(図13参照)を取得する。 【0064】 放送装置2は、放送音形成装置10と、放送音形成装置10に接続されるスピーカー11とを備える。スピーカー11は、放送音形成装置10から出力される信号を放送音として出力する。スピーカー11は、店舗の天井、壁等に設置される。放送音形成装置10の構造は、第1実施形態に示された放送音形成装置10に準ずる。 【0065】 図11に示されるように、識別情報IDは、サービスの種類情報ICに関連付されている。例えば、店舗Aのサービスについて、「010」が設定され、店舗Aとは別の店舗Bのサービスについて、「020」が設定される。なお、1つの店舗が複数のサービスを提供する場合、各サービスに識別情報IDが設定される。サービスとは、例えば、割引等を示すポイントの付与である。 【0066】 端末装置3は、識別情報IDに関連する関連情報を取得ときに参照する端末用テーブル(図13参照)を記憶する。端末用テーブルは、端末装置3の属性で異なる。実施形態では、属性が異なるスマートフォン21毎に端末用テーブルが用意されている。なお、本実施形態では、属性が異なるスマートフォン21は、異なる端末装置3として扱われる。 【0067】 図12は、端末装置3と端末用テーブルとを関連付けする管理テーブルである。端末装置3の属性毎に、端末用テーブルが用意される。例えば、図12に示されるように、店舗Aサービス1について、属性が男性のスマートフォン21に、男性用テーブルC1が設定され、属性が女性のスマートフォン21に、女性用テーブルC2が設定される。このような管理テーブルは情報管理装置5で管理される。情報管理装置5は、端末装置3からのアクセスがあるとき、当該端末装置3の属性に対応する端末用テーブルを当該端末装置3に提供する。 【0068】 図13は、属性が男性のスマートフォン21が有する端末用テーブルの一例である。この例では、スマートフォン21が、識別情報IDとして「002」を抽出すると、スマートフォン21の表示画面には、「男性用、ポイントサービス2」と表示されるとともに、関連リンク先が表示される。これにより、スマートフォン21のユーザーは、放送音の受信により、割引のポイントを稼ぐことができる。」 ク 「【0072】 <その他の実施形態> 上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。 【0073】 ・端末用テーブルは、端末装置3の機能、用途、属性等によって、異なる。上述のように、用途が異なる端末装置3(スマートフォン21とサイネージ23)とでは、異なる端末用テーブルがインストールされる。また、上述のように、男女別で、スマートフォン21には、異なる端末用テーブルがインストールされる。また、同種の端末装置3であっても、端末装置3それぞれにおいてバージョンまたは機能が異なる情報提示アプリケーションがインストールされている場合がある。この場合、端末装置3には、情報提示アプリケーションのタイプに対応する端末用テーブルがインストールされるため、端末装置3毎に、端末用テーブルが異なるようになる。 【0074】 また、同種のスマートフォン21が団体内の人に使用させる場合がある。この場合において、団体を纏める管理者と、団体に属する人とでは、異なる情報を提供することが好ましい場合がある。このような場合、スマートフォン21に団体名と管理者であるか否かの情報とが登録される。そして、団体に属する人のスマートフォン21と、団体に属しかつ団体を管理する管理者のスマートフォン21とでは、異なる端末用テーブルが提供され得る。例えば、管理者の端末用テーブル(災害に関するテーブル)には、災害の種類(例えば、地震)とともに災害時の団体の危機管理方法等の情報を示すURLが関連情報として識別情報IDに関連付けられる。」 ケ 「【図4】 [図:0001401612000001.jpg] 【図5】 [図:0001401612000002.jpg] 【図6】 [図:0001401612000003.jpg] 」 コ 「【図12】 [図:0001401612000004.jpg] 【図13】 [図:0001401612000005.jpg] 」 (2)本件発明の技術的意義 ア 解決しようとする課題 明細書等に記載された発明は、従来、放送音により端末装置に情報を取得させるシステムが存在していたところ(【0002】)、非常放送のように公衆に広く早く伝達すべき情報は、様々な形態で情報が伝達されることが望ましいとの知見に基づいて、機能、用途及び属性等が異なる端末装置のそれぞれにおいて異なる情報を提示できるようにすること(【0004】)であると認められる。 イ 課題解決手段及び作用効果 前記アの課題を解決するための手段は、放送音に含まれる識別情報に基づいて、第1及び第2の端末装置がそれぞれ異なる態様の関連情報を提示すること(【0005】)であり、それによって、異なる端末装置それぞれで、異なる情報が提示されるという作用効果を有する(【0005】)。さらに、各端末装置が、該端末装置の用途、機能、属性、該端末装置にインストールされている識別情報の関連情報を提示する情報提示アプリケーション、並びに該端末装置の所有者若しくは管理者の情報の少なくとも1つ(以下「端末装置の用途、機能、属性等」という。)によって異なるテーブルであって、識別情報と関連情報とを関連付けるテーブルを有すること(【0006】)によって、端末装置が、識別情報から簡単に関連情報を取得できるという作用効果を有する(【0006】)と認められる。 ウ 端末用テーブルの実施態様 前記課題解決手段の端末装置が有するテーブル(以下「端末用テーブル」ともいう。)に関して、明細書等には、以下の実施態様が記載されていると認められる。 (ア)【0047】~【0052】、図4~6の実施態様 端末用テーブルとして、「スマートフォン21用」と「サイネージ23用」が用意され、「スマートフォン21用」の端末用テーブルは、「スマートフォン21で使用される標準言語」毎に別々に用意され、「サイネージ23用」の端末用テーブルは、「サイネージ23の表示画面の大きさ」に応じて別々に用意される(【0049】、【図4】)。 これにより、端末装置3は、端末装置自体の機能、属性に応じた内容の関連情報を提示する(【0050】)。 (イ)【0062】~【0071】、図12及び13の実施態様 端末装置3A、3Bはスマートフォン21であり(【0063】)、スマートフォン21の属性は、スマートフォン21のユーザーの「性別」である(【0071】)。 端末用テーブルは、属性が男性のスマートフォン21に、男性用テーブルC1が、属性が女性のスマートフォン21に、女性用テーブルC2が用意される(【0067】、【図12】)。 これにより、スマートフォン21の属性毎に異なる情報を提示できる(【0070】)。 (ウ)【0073】~【0074】の実施態様 用途が異なる端末装置3であるスマートフォン21とサイネージ23とで、異なる端末用テーブルがインストールされる(【0073】)。 端末装置3には、情報提示アプリケーションのタイプに対応する異なる端末用テーブルがインストールされる(【0073】)。 団体に属する人のスマートフォン21と、団体に属する団体の管理者のスマートフォン21とで、異なる端末用テーブルが提供される(【0074】)。 (3)端末装置の「種類」についての明細書等の記載事項 端末装置の「種類」について、明細書等に以下の記載事項が認められる。 ア 図4は、端末装置の「種類」と端末用テーブルとを関連付けする管理テーブルを示す(【0014】)。 イ 例えば、スマートフォン21とサイネージ23とが同じ放送音を受信し、同じ識別情報を抽出するとき、スマートフォン21、サイネージ23には、それぞれ識別情報IDに対応するスマートフォン用21の関連情報、サイネージ23用の関連情報が表示される。このように、複数「種類」の端末装置3は、端末装置3の機能に応じた情報を提示できる(【0029】)。 ウ 端末装置3と端末用テーブルとを関連付けするテーブルを示す図4(【0048】)には、「端末装置の種類」と記載され、その左列に「スマートフォン用」と「サイネージ用」、右列に「言語X」~「言語Z」と「大きさS1」~「大きさS3」との記載がある。 エ 端末装置3と端末用テーブルとを関連付けする管理テーブルを示す図12(【0067】)には、「端末装置の種類」と記載された列に「スマートフォン(属性)男性」と「スマートフォン(属性)女性」との記載がある。 (4)端末装置の「種類」と「端末装置の用途、属性、機能等」との関係 前記(2)イのとおり、端末用テーブルは「端末装置の用途、属性、機能等」に応じて異なるものであるから、端末用テーブルは「端末装置の用途、属性、機能等」によって区分されるものといえる。 他方、前記(3)アによれば、図4は、端末用テーブルが、端末装置の「種類」と関連付けられることを示すものである。 そこで、図4に係る実施態様(前記(2)ウ(ア)の実施態様)に着目して、端末装置の「種類」と「端末装置の用途、属性、機能等」との関係を検討する。 ア 図4に係る実施態様について (ア)前記(2)ウ(ア)のとおり、図4に係る実施態様は、端末用テーブルが「スマートフォン21で使用される標準言語」毎及び「サイネージ23の表示画面の大きさ」毎に別々に用意され、これにより「端末装置自体の機能、属性」に応じた内容の関連情報が提示できるのであるから、「スマートフォン21で使用される標準言語」及び「サイネージ23の表示画面の大きさ」は、端末装置3の「機能、属性」と解釈される。 (イ)また、前記(2)ウ(ア)によれば、図4に係る実施態様は、端末用テーブルが、「スマートフォン21用」と「サイネージ23用」とに用意されるから、該端末用テーブルは、「スマートフォン21用」と「サイネージ23用」とに区分されるものといえる。 この区分に関して、前記(2)ウ(ウ)によれば、スマートフォンとサイネージは「用途」が異なる端末装置3であるから、前記「スマートフォン21用」と「サイネージ23用」との区分は、端末装置3の「用途」による区分と解釈することができる。 (ウ)前記(ア)及び(イ)を踏まえると、図4に係る実施態様は、端末用テーブルが、端末装置3の「機能、属性」及び「用途」によって区分された態様を示すものであり、該端末装置3の「機能、属性」及び「用途」は、前記(2)イの端末用テーブルを区分する「端末装置の用途、属性、機能等」の一例であると解釈される。 イ 図4の記載について (ア)前記(3)ウのとおり、図4には、「端末装置の種類」の記載の下の左列に左列に「スマートフォン用」と「サイネージ用」、右列に「言語X」~「言語Z」と「大きさS1」~「大きさS3」との記載があり、該記載からは、端末装置の「種類」が、「スマートフォン用」と「サイネージ用」、「言語X」~「言語Z」、「大きさS1」~「大きさS3」に区分されるものであることが読み取れる。 (イ)他方、図4の「スマートフォン用」と「サイネージ用」、「言語X」~「言語Z」及び「大きさS1」~「大きさS3」が、前記アの図4に係る実施態様のそれぞれ「スマートフォン21用」と「サイネージ23用」、「スマートフォン21で使用される標準言語」及び「サイネージ23の表示画面の大きさ」のことであることは明らかである。 (ウ)このうち、前記「スマートフォン21用」と「サイネージ23用」は、前記ア(イ)のとおり、端末装置3の「用途」の区分を示すものであり、「スマートフォン21で使用される標準言語」及び「サイネージ23の表示画面の大きさ」は、前記ア(ア)のとおり、端末装置3の「機能、属性」である。 そして、前記「スマートフォン21用」と「サイネージ23用」、前記「スマートフォン21で使用される標準言語」及び前記「サイネージ23の表示画面の大きさ」は、前記ア(ウ)のとおり、端末用テーブルを区分する「端末装置の用途、属性、機能等」の一例である。 (エ)したがって、前記(ア)~(ウ)によれば、図4は、端末装置の「種類」が、「端末装置の用途、属性、機能等」によって区分されることを示すものと解釈される。 ウ 明細書等のその他の記載について 前記イ(エ)に示した、端末装置の「種類」が「端末装置の用途、属性、機能等」によって区分されるとの解釈は、例えば、「端末装置の種類」の記載がある図12(前記(3)エ)の記載とも整合する。 すなわち、図12の記載は、端末装置の「種類」が、「端末装置の用途、属性、機能等」の一例であるスマートフォン(端末装置)の「属性」で区分されたものを示すと解される。 その他、明細書等に、端末装置の「種類」が「端末装置の用途、属性、機能等」によって区分されるとの解釈と矛盾する記載は存在しない。 (5)小括 以上のとおりであるから、明細書等によれば、本件訂正前の本件特許における端末装置の「種類」は、「該端末装置の用途、機能、属性、該端末装置にインストールされている識別情報の関連情報を提示する情報提示アプリケーション、並びに該端末装置の所有者若しくは管理者の情報の少なくとも1つ」によって区分されるものである、と解釈される。 2 本件訂正の内容 本件訂正の内容は、以下の訂正事項1~5のとおりである(下線部は変更箇所を示し、当審で付与したものである。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「 放送音に含まれる識別情報に基づいて情報を提示する情報提示システムにおいて、 前記識別情報を含む前記放送音を放送する放送装置と、空間内に配置され得る複数種類の端末装置とを含み、 前記端末装置のそれぞれは、前記端末装置の用途、機能、属性、前記端末装置にインストールされている前記識別情報の関連情報を提示する情報提示アプリケーション、並びに前記端末装置の所有者若しくは管理者の情報、の少なくとも1つに応じた異なるテーブルであってかつ前記識別情報と前記関連情報とを関連付けるテーブルを有し、 複数種類の前記端末装置のテーブルそれぞれにおいて、共通する前記識別情報には、前記識別情報に対応する関連情報が関連づけられ、 第1の前記端末装置は、第1の前記端末装置が有する前記テーブルを参照し、前記放送装置から放送された放送音に含まれる識別情報に基づいて、前記放送音の前記識別情報に関連する第1の関連情報を提示し、 第2の前記端末装置は、第2の前記端末装置が有する前記テーブルを参照し、前記放送装置から放送された放送音に含まれる識別情報に基づいて、前記放送音の前記識別情報に関連する第2の関連情報を提示し、 前記第1の関連情報は、前記第2の関連情報とは異なる態様の情報である ことを特徴とする情報提示システム。」 とあるのを、 「 放送音に含まれる識別情報に基づいて情報を提示する情報提示システムにおいて、 前記識別情報を含む前記放送音を放送する放送装置と、空間内に配置され得る用途が異なる複数の端末装置とを含み、 前記端末装置のそれぞれは、前記端末装置の用途に応じた異なるテーブルであってかつ前記識別情報と関連情報とを関連付けるテーブルを有し、 用途が異なる複数の前記端末装置のテーブルそれぞれにおいて、共通する前記識別情報には、前記識別情報に対応し、かつ、前記端末装置の用途に応じた前記関連情報が関連づけられ、 前記放送装置から前記識別情報を含む放送音が出された場合、 第1の前記端末装置は、第1の前記端末装置が有する前記テーブルを参照し、前記放送装置から放送された放送音に含まれる前記識別情報に基づいて、前記放送音の前記識別情報に関連する第1の関連情報を提示し、 第1の前記端末装置と用途が異なる第2の前記端末装置は、第2の前記端末装置が有する前記テーブルを参照し、前記放送装置から放送された放送音に含まれる前記識別情報に基づいて、前記放送音の前記識別情報に関連する第2の関連情報を提示し、 前記第1の関連情報は、前記第2の関連情報とは異なる態様の情報である ことを特徴とする情報提示システム。」 に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に 「 前記放送装置は、前記識別情報を放送形態によって特定される放送音の帯域幅内に埋め込む放送音形成装置と、前記放送音形成装置に接続されるスピーカーとを備え、 前記放送音形成装置と前記スピーカーとはハイインピーダンス方式で接続される 請求項1に記載の情報提示システム。」 とあるのを、 「 放送音に含まれる識別情報に基づいて情報を提示する情報提示システムにおいて、 前記識別情報を含む前記放送音を放送する放送装置と、 空間内に配置され得るものであって、端末装置の用途、機能、属性、前記端末装置にインストールされている前記識別情報の関連情報を提示する情報提示アプリケーション、並びに前記端末装置の所有者若しくは管理者の情報、の少なくとも1つによって区別される複数種類の端末装置と、を含み、 前記複数種類の端末装置のそれぞれは、前記端末装置自体の用途、機能、属性、前記端末装置にインストールされている前記識別情報の関連情報を提示する情報提示アプリケーション、並びに前記端末装置の所有者若しくは管理者の情報、の少なくとも1つに応じた異なるテーブルであってかつ前記識別情報と前記関連情報とを関連付けるテーブルを有し、 複数種類の前記端末装置のテーブルそれぞれにおいて、共通する前記識別情報には、前記識別情報に対応する関連情報が関連づけられ、 第1の前記端末装置は、第1の前記端末装置が有する前記テーブルを参照し、前記放送装置から放送された放送音に含まれる識別情報に基づいて、前記放送音の前記識別情報に関連する第1の関連情報を提示し、 第2の前記端末装置は、第2の前記端末装置が有する前記テーブルを参照し、前記放送装置から放送された放送音に含まれる識別情報に基づいて、前記放送音の前記識別情報に関連する第2の関連情報を提示し、 前記第1の関連情報は、前記第2の関連情報とは異なる態様の情報であり、 前記放送装置は、前記識別情報を放送形態によって特定される放送音の帯域幅内に埋め込む放送音形成装置と、前記放送音形成装置に接続されるスピーカーとを備え、 前記放送音形成装置と前記スピーカーとはハイインピーダンス方式で接続される 情報提示システム。」 に訂正する。 (請求項2の記載を引用する請求項3及び4も同様に訂正する。) (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に 「 前記放送装置は、防災無線システムを含み、 前記放送音の帯域幅は、前記防災無線システムに繋がるスピーカーから放送される放送音の帯域幅である 請求項1または2に記載の情報提示システム。」 とあるのを、 「 前記放送装置は、防災無線システムを含み、 前記放送音の帯域幅は、前記防災無線システムに繋がるスピーカーから放送される放送音の帯域幅である 請求項2に記載の情報提示システム。」 に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に 「 前記放送装置は、放送受信機を含み、 前記放送音の帯域幅は、前記放送受信機に備わるスピーカーまたは前記放送受信機に接続されたスピーカーから放送される放送音の帯域幅である 請求項1~3のいずれか一項に記載の情報提示システム。」 とあるのを、 「 前記放送装置は、放送受信機を含み、 前記放送音の帯域幅は、前記放送受信機に備わるスピーカーまたは前記放送受信機に接続されたスピーカーから放送される放送音の帯域幅であり、 前記放送受信機は、緊急放送を受信できかつ緊急放送の音声帯域幅に識別情報を埋め込むことができる緊急告知ラジオである、 請求項2に記載の情報提示システム。」 に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (6)一群の請求項及び訂正単位 前記訂正事項1~4に係る本件訂正前の請求項1~4のうち、請求項2~4はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 また、特許権者は、訂正後の請求項2~4について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とすることを求めている。 3 訂正の目的、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の有無 (1)訂正事項1 訂正事項1は、以下の訂正事項1-1~訂正事項1-6からなるといえる。 〈訂正事項1-1〉本件訂正前の請求項1の「複数種類の端末装置」を、「用途が異なる複数の端末装置」に訂正する。 〈訂正事項1-2〉本件訂正前の請求項1の「前記端末装置の用途、機能、属性、前記端末装置にインストールされている前記識別情報の関連情報を提示する情報提示アプリケーション、並びに前記端末装置の所有者若しくは管理者の情報、の少なくとも1つに応じた異なるテーブルであってかつ前記識別情報と前記関連情報とを関連付けるテーブル」を「前記端末装置の用途に応じた異なるテーブルであってかつ前記識別情報と関連情報とを関連付けるテーブル」に訂正する。 〈訂正事項1-3〉本件訂正前の請求項1の「複数種類の前記端末装置のテーブルそれぞれにおいて、共通する前記識別情報には、前記識別情報に対応する関連情報が関連づけられ」を「用途が異なる複数の前記端末装置のテーブルそれぞれにおいて、共通する前記識別情報には、前記識別情報に対応し、かつ、前記端末装置の用途に応じた前記関連情報が関連づけられ」に訂正する。 〈訂正事項1-4〉本件訂正前の請求項1の「第1の前記端末装置は、…(中略)…第1の関連情報を提示し、」の前に「前記放送装置から前記識別所情報を含む放送音が出された場合、」を追加する。 〈訂正事項1-5〉本件訂正前の請求項1の「放送音に含まれる識別情報」を「放送音に含まれる前記識別情報」に訂正する(2箇所)。 〈訂正事項1-6〉本件訂正前の請求項1の「第2の前記端末装置」を「第1の前記端末装置と用途が異なる第2の前記端末装置」に訂正する。 ア 訂正の目的 (ア)訂正事項1-1 訂正前の「複数種類の端末装置」及び「複数種類の前記端末装置」における「種類」は、前記1(5)のとおり、「端末装置の機能、用途、属性、端末装置にインストールされている情報提示アプリケーションのタイプ、端末装置の所有者または管理者の情報の少なくとも1つ」(以下「機能、用途、属性等」とも略す。)により区分されるものであるから、訂正前の「複数種類の端末装置」及び「複数種類の前記端末装置」は、用途、機能、属性等によって「複数」に区分される「端末装置」、換言すると、用途、機能、属性等が異なる「複数」の「端末装置」であると解釈される。 そうすると、訂正事項1-1は、訂正前の端末装置の機能、用途、属性、端末装置にインストールされている情報提示アプリケーションのタイプ、端末装置の所有者または管理者の情報の少なくとも1つが異なる複数の端末装置を、「用途が異なる」複数の端末装置に限定するものといえるから、特許請求の範囲の限縮を目的とするものである。 (イ)訂正事項1-2 訂正事項1-2は、訂正前の「テーブル」が、「端末装置の用途、機能、属性、前記端末装置にインストールされている前記識別情報の関連情報を提示する情報提示アプリケーション、並びに前記端末装置の所有者若しくは管理者の情報、の少なくとも1つ」に応じて異なっていたものを、「端末装置の用途」に応じて異なるものに限定するものといえる。 したがって、訂正事項1-2は、特許請求の範囲の限縮を目的とするものである。 (ウ)訂正事項1-3 訂正事項1-3は、訂正前の「テーブル」が「複数種類の前記端末装置」のものであったのを、「用途が異なる複数の前記端末装置」のものに訂正するものであり、前記(ア)を踏まえると、該訂正は「テーブル」を限定するものといえる。 加えて、訂正事項1-3は、訂正前の「テーブル」において「識別情報」に関連付ける「関連情報」が「識別情報に対応し」たものであったのを、さらに、「端末装置の用途に応じた」ものであるとの限定を付すものである。 したがって、訂正事項1-3は、訂正前の「テーブル」を限定するものといえるから、特許請求の範囲の限縮を目的とするものである。 (エ)訂正事項1-4 訂正事項1-4は、訂正前の「第1の端末装置」が「第1の関連情報を提示し」、「第2の端末装置」が「第2の関連情報を提示し」との動作に、「前記放送装置から前記識別情報を含む放送音が出された場合」との条件を付すものであるから、特許請求の範囲の限縮を目的とするものである。 (オ)訂正事項1-5 訂正事項1-5は、訂正前の「放送音に含まれる識別情報」との記載の「識別情報」が、「放送音に含まれる識別情報に基づいて情報を提示する情報提示システムにおいて、」との記載の「放送音に含まれる識別情報」と同じものであることを明確にするためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (カ)訂正事項1-6 訂正事項1-6は、「第2の前記端末装置」に、「第1の前記端末装置と用途が異なる」との限定を付すものであるから、特許請求の範囲の限縮を目的とするものである。 (キ)小括 前記(ア)~(カ)のとおり、訂正事項1は、特許法120条の5第2項ただし書き1号及び3号に掲げる「特許請求の範囲の限縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無 (ア)新規事項の追加の有無 訂正事項1-1及び訂正事項1-6は、前記1のとおり、明細書等の記載に基づくものである。 訂正事項1-2は、訂正前の択一的に記載された事項の一つに限定するものである。 訂正事項1-3のうち、端末装置に係るものは、前記訂正事項1-1と同様であり、また、関連情報に係るものは、明細書【0026】の「そして、識別情報IDに関連付けされている情報は、端末装置3の機能、用途、属性等によって異なる。」との記載に基づくものといえる。 訂正事項1-4及び訂正事項1-5は、明細書【0028】の「放送音が複数種類の端末装置3に受信される場合を説明する。第1の端末装置3Aは、第1の端末装置3A自身が有する端末用テーブルを参照して、放送装置2から放送された放送音に含まれる識別情報IDに基づいて、放送音の識別情報IDに関連する第1の関連情報を提示する。第2の端末装置3Bは、第2の端末装置3B自身が有する端末用テーブルを参照して、放送装置2から放送された放送音に含まれる識別情報IDに基づいて、放送音の識別情報IDに関連する第2の関連情報を提示する。」との記載に基づくといえる。 したがって、訂正事項1は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 (イ)特許請求の範囲の拡張・変更の有無 訂正事項1は、前記アのとおり特許請求の範囲を減縮するものであり、また、明瞭でない記載を釈明するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものではない。 (ウ)小括 以上のとおり、訂正事項1は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合する。 (2)訂正事項2 訂正事項2は、以下の訂正事項2-1~訂正2-4からなるといえる。 〈訂正事項2-1〉請求項2を、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする。 〈訂正事項2-2〉本件訂正前の請求項2の「空間内に配置され得る複数種類の端末装置とを含み」を、「空間内に配置され得るものであって、端末装置の用途、機能、属性、前記端末装置にインストールされている前記識別情報の関連情報を提示する情報提示アプリケーション、並びに前記端末装置の所有者若しくは管理者の情報、の少なくとも1つによって区別される複数種類の端末装置と、を含み」に訂正する。 〈訂正事項2-3〉本件訂正前の請求項2の「前記端末装置のそれぞれは」の「前記端末装置」を、「前記複数種類の端末装置」に訂正する。 〈訂正事項2-4〉本件訂正前の請求項2の「前記端末装置の用途、機能、属性」を、「前記端末装置自体の用途、機能、属性」に訂正する。 ア 訂正の目的 (ア)訂正事項2-1 訂正事項2-1は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 (イ)訂正事項2-2 訂正事項2-2における端末装置の「種類」は、前記1(5)によれば「該端末装置の用途、機能、属性、該端末装置にインストールされている識別情報の関連情報を提示する情報提示アプリケーション、並びに該端末装置の所有者若しくは管理者の情報の少なくとも1つ」によって区分されるものを意味するのであるから、訂正事項2-2は、文言のみから必ずしも明確ではなかった端末装置の「種類」の意味を、前記1(5)のとおりに明確な表現に訂正するものと認められる。 加えて、本件訂正前の「端末装置とを含み」の「端末装置と」との記載は、この記載より前の「放送装置と、」との対応を示していたところ、端末装置の「種類」についての前記訂正によって、当該対応が直ちに明確なものとはいえなくなるため、「端末装置と、」と訂正することによって、「放送装置と、」との対応を明確にするものである。 したがって、訂正事項2-2は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (ウ)訂正事項2-3 訂正事項2-3に関し、訂正前の「前記端末装置」は、複数種類の端末装置のことであると文脈から理解できたものの、当該「前記端末装置」という文言のみからは、端末装置が複数種類のものであるか否かが直ちには明らかではなかったので、訂正事項2-3は、これを明確化するために「前記複数種類の端末装置」に訂正するものと認められる。 したがって、訂正事項2-3は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (エ)訂正事項2-4 訂正事項2-4に関し、訂正前の「前記端末装置の用途、機能、属性」の「用途、機能、属性」は、「前記端末装置」それ自体の用途、機能、属性のことであることは、明細書等の記載から理解できたものの、当該「前記端末装置の用途、機能、属性」という文言のみからは、「用途、機能、属性」が「前記端末装置」自体についてのものか否かが直ちには明らかではなかったので、訂正事項2-4は、これを明確化するために「前記端末装置自体の用途、機能、属性」に訂正するものと認められる。 したがって、訂正事項2-4は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (オ)小括 前記(ア)~(エ)のとおり、訂正事項2は、特許法120条の5第2項ただし書き3号及び4号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものでる。 イ 新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無 (ア)新規事項の追加の有無 訂正事項2-1及び訂正事項2-4が、明細書等に記載した事項の範囲内であることは明らかである。 訂正事項2-2は、前記1のとおり、明細書等の記載に基づくものである。 また、訂正事項2-3について、明細書【0030】には「端末装置3自体の機能用途属性等(機能、用途、属性、情報提示アプリケーションの種類、所有者か管理者化を示す情報)」との記載に基づくものといえる。 したがって、訂正事項2は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 (イ)特許請求の範囲の拡張・変更の有無 訂正事項2は、明瞭でない記載の釈明及び請求項間の引用関係の解消をするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものではない。 (ウ)小括 以上のとおり、訂正事項2は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合する。 (3)訂正事項3 訂正事項3は、請求項3が引用する請求項を、本件訂正前の「請求項1または2」から「請求項2」に限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる「特許請求の範囲の限縮」を目的とするものである。 また、訂正事項3は、前記のとおり、訂正前の請求項3で引用する請求項を限定するのみであるから、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。 したがって、訂正事項5は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合する。 (4)訂正事項4 訂正事項4は、以下の訂正事項4-1及び訂正事項4-2からなるといえる。 〈訂正事項4-1〉請求項4が引用する請求項を、本件訂正前の「請求項1~3のいずれか一項」から「請求項2」に訂正する。 〈訂正事項4-2〉請求項4に「前記放送受信機は、緊急放送を受信できかつ緊急放送の音声帯域幅に識別情報を埋め込むことができる緊急告知ラジオである、」を追加する。 ア 訂正の目的 (ア)訂正事項4-1 訂正事項4-1は、請求項4が引用する請求項を、「請求項2」に限定するものであるから、特許請求の範囲の限縮を目的とするものである。 (イ)訂正事項4-2 訂正事項4-2は、本件訂正前の請求項4の「放送受信機」について、「緊急放送を受信できかつ緊急放送の音声帯域幅に識別情報を埋め込むことができる緊急告知ラジオである」との限定を付すものであるから、特許請求の範囲の限縮を目的とするものである。 (ウ)小括 前記(ア)及び(イ)のとおり、訂正事項4は、特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる「特許請求の範囲の限縮」を目的とするものである。 イ 新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無 訂正事項4-1が、明細書等に記載した事項の範囲内であることは明らかである。 訂正事項4-2は、明細書【0079】の「放送装置2は、テレビ又はラジオ等の放送受信機を含むように構成され得る。」との記載及び【0080】の「放送装置2は、緊急告知ラジオ(「防災ラジオ」ともいう)として構成され得る。緊急告知ラジオは、災害時にコミュニティFM放送を通じて、緊急放送を受信して、自動的に起動し緊急情報をスピーカーから放送する。識別情報IDは、繰り返し放送される緊急放送の音声帯域幅内に埋め込まれる。」に基づくものといえる。 したがって、訂正事項4は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 また、訂正事項4は、前記アのとおり特許請求の範囲を限縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。 以上のとおり、訂正事項4は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合する。 (5)訂正事項5 訂正事項5は、請求項5を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる「特許請求の範囲の限縮」を目的とするものである。 また、訂正事項5が、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことは明らかであるから、訂正事項5は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合する。 4 申立人の意見について (1)申立人意見1について ア 申立人は、訂正事項1の「複数種類の端末装置」を「用途が異なる複数の端末装置」にする訂正(訂正事項1-1)について、訂正前の請求項1は、「端末装置」の種類が相違するものに限られていたところ、訂正後の請求項1は、「端末装置」の種類(仕様、型式)が一致する場合でも、用途が異なれば「用途が異なる複数の端末装置」を充足するから、訂正事項1は、特許請求の範囲を拡張または変更するものに該当すると主張する。(申立人意見書1~2頁)。 また、申立人は、訂正事項1の前記訂正について、端末装置の種類が相違するという技術的な限定を、用途が異なるという技術的な限定を含まないものに変更するものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲を拡張または変更するものに該当すると主張する。(申立人意見書2頁) イ しかしながら、前記1(5)のとおり、本件特許における端末装置の「種類」は、「端末装置の機能、用途、属性、端末装置にインストールされている情報提示アプリケーションのタイプ、端末装置の所有者または管理者の情報の少なくとも1つ」により区分されるものと解釈される。 そうすると、前記3(1)ア(ア)及びイのとおり、訂正事項1-1は、訂正前の端末装置の機能、用途、属性、端末装置にインストールされている情報提示アプリケーションのタイプ、端末装置の所有者または管理者の情報の少なくとも1つが異なる複数の端末装置を、「用途が異なる」複数の端末装置に限定するものといえるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しない。 したがって、申立人の主張は、採用することができない。 (2)申立人意見2ついて ア 申立人は、訂正事項2の「空間内に配置され得る複数種類の端末装置」を、「空間内に配置され得るものであって、端末装置の用途、機能、属性、前記端末装置にインストールされている前記識別情報の関連情報を提示する情報提示アプリケーション、並びに前記端末装置の所有者若しくは管理者の情報、の少なくとも1つによって区別される複数種類の端末装置」にする訂正(訂正事項2-2)について、明細書等には、「端末装置の用途、機能、属性、前記端末装置にインストールされている前記識別情報の関連情報を提示する情報提示アプリケーション、並びに前記端末装置の所有者若しくは管理者の情報」と「種類」との関係は記載されていないから、訂正事項2は、明細書等に記載された事項の範囲を逸脱するものであると主張する。(申立人意見書2~3頁) イ しかしながら、前記1のとおり、本件特許における端末装置の「種類」は、「端末装置の機能、用途、属性、端末装置にインストールされている情報提示アプリケーションのタイプ、端末装置の所有者または管理者の情報の少なくとも1つ」により区分されるものであることが、明細書等の記載から把握することができるため、前記3(2)イ(ア)のとおり、訂正事項2-2は、明細書等に記載された事項の範囲内の訂正である。 したがって、申立人の主張は、採用することができない。 5 まとめ 以上のとおり、訂正事項1~5に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号、3号及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2~4〕、5について一群の請求項ごとに訂正することを認める。 第6 本件訂正後の本件発明 本件訂正により、請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。なお、後の参照の便宜のため、請求項1及び2を、当審で1A~2Kの記号を付して分説し、「発明特定事項1A」等という。 【請求項1】 1A 放送音に含まれる識別情報に基づいて情報を提示する情報提示システムにおいて、 1B 前記識別情報を含む前記放送音を放送する放送装置と、空間内に配置され得る用途が異なる複数の端末装置とを含み、 1C 前記端末装置のそれぞれは、前記端末装置の用途に応じた異なるテーブルであってかつ前記識別情報と関連情報とを関連付けるテーブルを有し、 1D 用途が異なる複数の前記端末装置のテーブルそれぞれにおいて、共通する前記識別情報には、前記識別情報に対応し、かつ、前記端末装置の用途に応じた前記関連情報が関連づけられ、 1E 前記放送装置から前記識別情報を含む放送音が出された場合、 1F 第1の前記端末装置は、第1の前記端末装置が有する前記テーブルを参照し、前記放送装置から放送された放送音に含まれる前記識別情報に基づいて、前記放送音の前記識別情報に関連する第1の関連情報を提示し、 1G 第1の前記端末装置と用途が異なる第2の前記端末装置は、第2の前記端末装置が有する前記テーブルを参照し、前記放送装置から放送された放送音に含まれる前記識別情報に基づいて、前記放送音の前記識別情報に関連する第2の関連情報を提示し、 1H 前記第1の関連情報は、前記第2の関連情報とは異なる態様の情報である 1I ことを特徴とする情報提示システム。 【請求項2】 2A 放送音に含まれる識別情報に基づいて情報を提示する情報提示システムにおいて、 2B 前記識別情報を含む前記放送音を放送する放送装置と、 2C 空間内に配置され得るものであって、端末装置の用途、機能、属性、前記端末装置にインストールされている前記識別情報の関連情報を提示する情報提示アプリケーション、並びに前記端末装置の所有者若しくは管理者の情報、の少なくとも1つによって区別される複数種類の端末装置と、を含み、 2D 前記複数種類の端末装置のそれぞれは、前記端末装置自体の用途、機能、属性、前記端末装置にインストールされている前記識別情報の関連情報を提示する情報提示アプリケーション、並びに前記端末装置の所有者若しくは管理者の情報、の少なくとも1つに応じた異なるテーブルであってかつ前記識別情報と前記関連情報とを関連付けるテーブルを有し、 2E 複数種類の前記端末装置のテーブルそれぞれにおいて、共通する前記識別情報には、前記識別情報に対応する関連情報が関連づけられ、 2F 第1の前記端末装置は、第1の前記端末装置が有する前記テーブルを参照し、前記放送装置から放送された放送音に含まれる識別情報に基づいて、前記放送音の前記識別情報に関連する第1の関連情報を提示し、 2G 第2の前記端末装置は、第2の前記端末装置が有する前記テーブルを参照し、前記放送装置から放送された放送音に含まれる識別情報に基づいて、前記放送音の前記識別情報に関連する第2の関連情報を提示し、 2H 前記第1の関連情報は、前記第2の関連情報とは異なる態様の情報であり、 2I 前記放送装置は、前記識別情報を放送形態によって特定される放送音の帯域幅内に埋め込む放送音形成装置と、前記放送音形成装置に接続されるスピーカーとを備え、 2J 前記放送音形成装置と前記スピーカーとはハイインピーダンス方式で接続される 2K 情報提示システム。 【請求項3】 前記放送装置は、防災無線システムを含み、 前記放送音の帯域幅は、前記防災無線システムに繋がるスピーカーから放送される放送音の帯域幅である 請求項2に記載の情報提示システム。 【請求項4】 前記放送装置は、放送受信機を含み、 前記放送音の帯域幅は、前記放送受信機に備わるスピーカーまたは前記放送受信機に接続されたスピーカーから放送される放送音の帯域幅であり、 前記放送受信機は、緊急放送を受信できかつ緊急放送の音声帯域幅に識別情報を埋め込むことができる緊急告知ラジオである、 請求項2に記載の情報提示システム。 【請求項5】 (削除) 第7 取消理由通知の理由について 取消理由通知書で通知した理由は、前記第4に示した取消理由1-1~取消理由4-2のとおりである。 以下、事案に鑑み、甲1を主引例とする請求項1に対する取消理由3(特許法29条1項3号)及び取消理由4-1(同法29条2項)、取消理由1-1~1-3(同法36条6項2号)、取消理由2(同法36条4項1号)、甲5を主引例とする請求項5に対する取消理由4-2(同法29条2項)の順に検討する。 1 甲1の記載事項及び甲1発明 甲1には、次の事項が記載されている(下線は強調のため当審にて付与したものである。以下、同じ。)。 「[0007] <第1実施形態> 図1は、本発明の第1実施形態における案内システム100の構成図である。図1に例示される通り、第1実施形態の案内システム100は、電車またはバスを含む交通機関等の各種の施設(以下「案内対象施設」という)に関する情報を利用者に提供するためのコンピュータシステムであり、配信装置10と放音システム12と端末装置14とを具備する。配信装置10は、例えば移動体通信網またはインターネット等を含む通信網200に接続されたサーバ(典型的にはウェブサーバ)である。放音システム12は案内対象施設(例えば交通機関の車内)に設置される。利用者は、端末装置14を携帯した状態で案内対象施設に所在する。端末装置14は、例えば携帯電話機またはスマートフォン等の可搬型の情報処理端末である。また、例えば鉄道事業者の施設内に設置される電光掲示板または商業施設に設置される電子看板(例えばデジタルサイネージ)等の案内掲示板も端末装置14として好適に利用される。なお、実際には案内対象施設内の複数の利用者が案内システム100のサービスを利用し得るが、以下の説明では便宜的に1個の端末装置14に着目する。 [0008] 放音システム12は、案内対象施設に関する案内を利用者に報知するための音声(以下「案内音声」という)Vを放音する音響システムである。案内音声Vは、例えば直後の停車地点(駅もしくはバス停)の名称もしくは他路線への乗換を案内する音声、直後の停車地点の周辺に位置する各種の施設を案内する音声(例えば観光案内)、交通機関の運行状況(例えば停止信号の発生もしくは遅延状況等)を通知する音声、乗車中もしくは降車時の注意事項を通知する音声、または、災害もしくは事故等の緊急事態の発生を通知する音声など、交通機関の運行に関する各種の音声である。 [0009] 図1に例示される通り、第1実施形態の放音システム12は、制御装置22と記憶装置24と放音装置26とを具備する。記憶装置24は、例えば半導体記録媒体または磁気記録媒体等の公知の記録媒体で構成され、相異なる発話内容の案内音声Vに対応する複数の音響信号Xを記憶する。任意の1個の案内音声Vに対応する音響信号Xは、当該案内音声Vの音響成分と、当該案内音声Vを一意に識別するための識別情報Dを示す音響成分とを含有する。なお、端末装置14に対して着脱可能な記録媒体を記憶装置24として利用することも可能である。 [0010] 識別情報Dは、所定の周波数帯域の音響成分として音響信号Xに含有される。具体的には、識別情報Dの音響成分の周波数帯域は、利用者が通常の環境で聴取する音声(例えば案内音声V)または楽音等の音響の周波数帯域を上回る範囲(例えば18kHz以上かつ20kHz以下)に包含される。音響信号Xの生成には公知の技術が任意に採用され得るが、例えば、識別情報Dを適用した変調処理で生成された信号と案内音声Vを収録した信号とを混合することで音響信号Xが生成される。変調処理は、例えば、所定の周波数の正弦波等の搬送波を識別情報Dにより変調する周波数変調、または、拡散符号を利用した識別情報Dの拡散変調である。 [0011] 制御装置22は、記憶装置24に記憶された複数の音響信号Xの何れかを放音装置26に供給する。例えば、案内対象施設の従業員等の案内者から指示された案内音声Vに対応する音響信号Xを制御装置22は記憶装置24から選択して放音装置26に供給する。放音装置26は、制御装置22から供給される音響信号Xに応じた音響を放音する音響機器(スピーカ)である。以上の説明から理解される通り、第1実施形態の放音装置26は、案内音声Vを放音する音響機器として機能するほか、空気振動としての音響を伝送媒体とする音響通信で当該案内音声Vの識別情報Dを周囲に送信する送信機としても機能する。以上の構成によれば、放音装置26の音量の調整または遮音壁の設置により識別情報Dの受信可能範囲を容易かつ詳細に制御できるという利点がある。なお、音響信号Xをデジタルからアナログに変換するD/A変換器の図示は便宜的に省略した。 [0012] 図1の配信装置10は、案内データGAを記憶する。案内データGAは、複数の情報(以下「関連情報」という)Rを包含する。関連情報Rは、案内音声Vに関連する情報(コンテンツ)であり、例えば音声または画像(例えば静止画,動画,文字列)で表現される。第1実施形態の配信装置10は、図1に例示される通り、放音システム12が放音し得る複数の案内音声Vの各々の識別情報D(D1,D2,……)について、当該案内音声Vの発話内容を相異なる言語で表現した複数の関連情報Rを記憶する。すなわち、相異なる言語(図1の例示では日本語,英語,中国語)で表現された複数の関連情報Rが識別情報D毎に配信装置10に記憶される。任意の1種類の言語に対応する関連情報Rは、例えば、案内音声Vの発話内容を当該言語で表現した翻訳文の文字列と、翻訳文の文字列を発音した音声とを表す。 [0013] 図1に例示される通り、第1実施形態の端末装置14は、制御装置32と記憶装置34と通信装置36と収音装置42と入力装置44と出力装置46とを具備する。制御装置32は、記憶装置34に記憶されたプログラムを実行することで各種の演算処理および制御処理を実行する。通信装置36は、通信網200を介して配信装置10または他の端末装置14と通信する通信機器である。 [0014] 記憶装置34(記憶部の例示)は、制御装置32が実行するプログラムと制御装置32が使用する各種のデータとを記憶する。具体的には、第1実施形態の記憶装置34は、放音システム12が放音する案内音声Vに対応する関連情報Rを端末装置14の利用者に提供するためのアプリケーションプログラム(以下「案内プログラム」という)を記憶する。半導体記録媒体または磁気記録媒体等の公知の記録媒体または複数種の記録媒体の組合せが記憶装置34として任意に採用される。 [0015] 第1実施形態の記憶装置34は、配信装置10が記憶する案内データGAと同様の案内データGBを記憶する。図1に例示される通り、案内データGBは、相異なる言語に対応する複数の関連情報Rを案内音声Vの識別情報D毎に包含する。すなわち、識別情報Dと言語との相異なる組合せに対応する複数の関連情報Rが記憶装置34に記憶される。案内データGBは、例えば案内プログラムとともに配信装置10から端末装置14に配信されて記憶装置34に格納される。 [0016] 収音装置42は、周囲の音響を収音して音響信号Yを生成する音響機器(マイクロホン)である。具体的には、収音装置42は、放音システム12の放音装置26が放音した音響(すなわち、案内音声Vと識別情報Dの音響成分との混合音)を表す音響信号Yを生成する。第1実施形態の収音装置42は、端末装置14の相互間の音声通話または動画撮影時の音声収録に利用されるほか、音響通信による識別情報Dの受信に利用される。なお、収音装置42が生成した音響信号Yをアナログからデジタルに変換するA/D変換器の図示は便宜的に省略した。 [0017] 入力装置44は、端末装置14に対する各種の指示のために利用者が操作する入力機器である。例えば利用者が操作する複数の操作子または利用者による接触を検知するタッチパネルが入力装置44として好適に利用される。出力装置46は、案内音声Vの関連情報Rを出力する。第1実施形態の出力装置46は、関連情報Rが表す文字列を表示する表示装置462(例えば液晶表示パネル)と、関連情報Rが表す音声を放音する放音装置464(例えばスピーカまたはイヤホン)とを具備する。 [0018] 図1に例示される通り、記憶装置34に記憶された案内プログラムを制御装置32が実行することで、案内音声Vに対応する関連情報Rを提供するための複数の機能(情報抽出部52,情報選択部54,出力制御部56,関連情報取得部58)が実現される。なお、制御装置32の各機能を複数の装置に分散した構成、または、制御装置32の機能の一部を専用の電子回路が実現する構成も採用され得る。 [0019] 情報抽出部52は、収音装置42が生成した音響信号Yから識別情報Dを抽出する。具体的には、情報抽出部52は、音響信号Yのうち識別情報Dを含む周波数帯域の音響成分を例えば帯域通過フィルタで選択し、識別情報Dの変調処理に対応する復調処理を当該音響成分に対して実行することで識別情報Dを抽出する。以上の例示の通り、放音装置26から放音された案内音声Vの識別情報Dが情報抽出部52により抽出される。 [0020] 情報選択部54は、情報抽出部52が抽出した識別情報Dと端末装置14にて指定された言語(以下「指定言語」という)Lとに対応する関連情報Rを記憶装置34から選択する。具体的には、情報選択部54は、情報抽出部52が抽出した識別情報Dについて言語毎に記憶された複数の関連情報Rのうち指定言語Lに対応する関連情報Rを選択する。例えば、図1の例示において、情報抽出部52が識別情報D2を抽出するとともに指定言語Lが「英語」である場合、情報選択部54は、英語の「Thank you.」を示す関連情報Rを選択する。情報選択部54が指定言語Lを特定する方法は任意であるが、例えば端末装置14のOS(Operating System)の言語設定を参照することで情報選択部54は指定言語Lを特定し得る。また、端末装置14の利用者が入力装置44に対する操作で任意に指定した指定言語Lを情報選択部54が取得することも可能である。 [0021] 出力制御部56は、情報選択部54が選択した関連情報Rを出力装置46に出力させる。具体的には、出力制御部56は、情報選択部54が選択した関連情報Rが表す文字列を表示装置462に表示させ、当該関連情報Rが表す音声を放音装置464に放音させる。以上の説明から理解される通り、放音システム12による案内音声Vの放音毎に、当該案内音声Vの発話内容を指定言語Lで表現した文字列が表示装置462に表示されるとともに、指定言語Lの文字列を発音した音声が放音装置464から出力される。」 「[0027] 例えば電車またはバス等の交通機関では、乗降または乗換等に関する情報を利用者に案内する案内音声が随時に再生される。案内音声の発音内容の翻訳文等の情報を案内音声の放音ととともに利用者に提供できれば、例えば案内音声の言語の理解が困難な外国人等の利用者も案内音声の内容を把握できて便利である。第1実施形態では、案内音声Vを放音する放音装置26が放音した音響を表す音響信号Yから当該案内音声Vの識別情報Dが抽出され、当該識別情報Dと端末装置14の指定言語Lとに対応する関連情報Rが記憶装置34から選択されたうえで出力装置46から出力される。したがって、案内音声Vに関連する関連情報Rを端末装置14の利用者の言語(指定言語L)で提供することが可能である。」 「[0031] <第2実施形態> 本発明の第2実施形態について以下に説明する。以下に例示する各形態において作用または機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。 [0032] 図3は、第2実施形態における案内システム100の構成図である。第1実施形態と同様に、第2実施形態の配信装置10は、相異なる言語で表現された複数の関連情報Rを案内音声Vの識別情報D毎に含む案内データGAを記憶する。第1実施形態における端末装置14の記憶装置34は、前述の通り、配信装置10が記憶する案内データGAと同様の内容の案内データGBを記憶する。 [0033] 他方、第2実施形態における端末装置14の記憶装置34は、配信装置10が記憶する案内データGAのうち端末装置14にて指定された指定言語Lに対応する一部の関連情報Rを案内データGBとして記憶する。すなわち、指定言語Lについて相異なる識別情報Dに対応する複数の関連情報Rが配信装置10から端末装置14に配信されたうえで記憶装置34に記憶される。例えば指定言語Lが「英語」である場合、図3の例示の通り、相異なる識別情報D(D1,D2,……)に対応する複数の英語の関連情報Rが案内データGBとして記憶装置34に記憶される。指定言語Lに対応する複数の関連情報R(案内データGB)は、例えば案内プログラムとともに配信装置10から端末装置14に配信されて記憶装置34に格納される。 [0034] 以上の例示の通り、指定言語Lに対応する複数の関連情報Rが記憶装置34に記憶されるから、第2実施形態の情報選択部54は、情報抽出部52が抽出した識別情報Dに対応する関連情報Rを記憶装置34の案内データGBから選択する。情報抽出部52が音響信号Yから識別情報Dを抽出する構成、または、情報選択部54が選択した関連情報Rを出力制御部56が出力装置46に出力させる構成は、第1実施形態と同様である。 [0035] 図4は、第2実施形態における端末装置14の制御装置32が案内プログラムにより実行する案内処理のフローチャートである。例えば入力装置44に対する利用者からの指示を契機として図4の案内処理が開始される。放音装置26から放音された案内音声Vが到達する範囲内に端末装置14の利用者が移動すると、情報抽出部52は、第1実施形態と同様に、収音装置42が生成する音響信号Yから当該案内音声Vの識別情報Dを抽出する(SB1)。 [0036] 情報選択部54は、情報抽出部52が抽出した識別情報Dに対応する関連情報Rが記憶装置34に記憶されているか否かを判定する(SB2)。識別情報Dに対応する関連情報Rが記憶装置34に記憶されていない場合(SB2:NO)、関連情報取得部58は、新規音声Vに対応する指定言語Lの関連情報Rを配信装置10から取得して記憶装置34に格納する(SB3)。具体的には、関連情報取得部58は、指定言語Lの通知を含む関連情報Rの要求を通信装置36から配信装置10に送信し、当該要求に応じて配信装置10から指定言語Lについて配信された複数の関連情報Rを通信装置36から取得する。例えば、案内データGAのうち指定言語Lに対応する複数の関連情報Rの集合と端末装置14の案内データGBとの差分に相当する関連情報Rを配信装置10から端末装置14に配信することが可能である。他方、識別情報Dに対応する関連情報Rが記憶装置34に記憶されている場合(SB2:YES)には、配信装置10に対する関連情報Rの要求(SB3)は実行されない。 [0037] 以上の処理を実行すると、情報選択部54は、情報抽出部52が抽出した識別情報Dに対応する関連情報Rを記憶装置34から選択する(SB4)。出力制御部56は、情報選択部54が選択した関連情報Rを出力装置46に出力させる(SB5)。したがって、第1実施形態と同様に、放音システム12の放音装置26による案内音声Vの放音に並行または後続して、当該案内音声Vの発話内容を指定言語Lで表現した文字列の表示と当該文字列を発音した音声の放音とが実行される。 [0038] 第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第2実施形態では、端末装置14の指定言語Lに対応する複数の関連情報Rが端末装置14の記憶装置34に記憶される(指定言語L以外の言語の関連情報Rは記憶装置34に記憶されない)から、識別情報Dと言語との組合せが相違する全部の関連情報Rを記憶装置34に記憶させる第1実施形態と比較して、記憶装置34に必要な記憶容量が削減されるという利点がある。他方、相異なる言語に対応する複数の関連情報Rが記憶装置34に記憶される第1実施形態によれば、第2実施形態と比較して、複数種の指定言語Lに対応する関連情報Rを端末装置14の利用者に提供できるという利点がある。」 「[0045] (5)前述の各形態では、相異なる言語で表現された複数の関連情報Rの何れかを端末装置14から出力した。しかし、案内音声Vの関連情報Rを端末装置14から出力しても、例えば視覚障碍者または聴覚障碍者等の障碍者は、関連情報Rを知覚できない可能性がある。以上の事情を考慮すると、案内音声Vに対応する複数の関連情報Rを選択的に出力する構成を、種々の障碍者の案内に利用することも想定される。 [0046] 例えば、視覚障碍または聴覚障碍等の障碍の種類に応じた複数の関連情報Rが案内音声Vの識別情報D毎に端末装置14の記憶装置34に案内データGB(さらには配信装置10の案内データGA)として格納される。障碍の種類毎の関連情報Rは、その障碍のある利用者が知覚し得る形式で作成される。例えば、視覚障碍に関する関連情報Rは、視覚障碍者が知覚可能な音声で表現され、聴覚障碍に関する関連情報Rは、聴覚障碍者が知覚可能な画像または文字列で表現される。 [0047] 端末装置14の利用者は、入力装置44を適宜に操作することで自身の障碍の種類を指定することが可能である。情報選択部54は、情報抽出部52が抽出した識別情報Dに対応する複数の関連情報(相異なる障碍の種類に対応する複数の関連情報R)から利用者の障碍の種類に対応した関連情報Rを選択する。出力制御部56は、情報選択部54が選択した関連情報Rを出力装置46に出力させる。例えば、端末装置14の利用者が視覚障碍者であれば、関連情報Rが音声として放音装置464から放音され、端末装置14の利用者が聴覚障碍者であれば、関連情報Rが画像または文字列として表示装置462に表示される。以上の構成によれば、案内音声Vに関連する関連情報Rを、障碍のある利用者が知覚可能な方法で出力できるという利点がある。」 「[図3] [図:0001401612000006.jpg] [図4] [図:0001401612000007.jpg] 」 図3は、第2実施形態における案内システム100の構成図であるところ、「作用または機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する」旨の記載がある([0031])から、第2実施形態の「案内システム100」は、「配信装置10」と「放音システム12」と「端末装置14」を備え、「配信装置10」は「案内データGA」を保持し、「放音システム12」は「制御装置22」、「記憶装置24」、「放音装置26」を備え、「端末装置14」は「制御装置32」、「記憶装置34」、「通信装置36」、「収音装置42」、「入力装置44」及び「出力装置46」を備え、「制御装置32」は「情報抽出部52」、「情報選択部54」、「出力制御部56」及び「関連情報取得部58」を含み、「記憶装置34」は「案内プログラム」及び「案内データGB」を保持し、「出力装置46」は「表示装置462」及び「放音装置464」を含む。 したがって、甲1には、第2実施形態として次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲1発明を1a~1pに分説した。 <甲1発明> 1a 配信装置10と放音システム12と端末装置14とを具備する案内システム100であって([0007])、 1b 配信装置10は、例えば移動体通信網またはインターネット等を含む通信網200に接続されたサーバであり、放音システム12は案内対象施設に設置され、利用者は、端末装置14を携帯した状態で案内対象施設に所在し、端末装置14は、例えば携帯電話機またはスマートフォン等の可搬型の情報処理端末であり、また、電子看板(例えばデジタルサイネージ)等の案内掲示板も端末装置14として好適に利用され、案内対象施設内の複数の利用者が案内システム100のサービスを利用し得([0007])、 1c 放音システム12は、案内対象施設に関する案内を利用者に報知するための案内音声Vを放音する音響システムであり([0008])、制御装置22と記憶装置24と放音装置26とを具備し([0009])、 1d 記憶装置24は、相異なる発話内容の案内音声Vに対応する複数の音響信号Xを記憶し、任意の1個の案内音声Vに対応する音響信号Xは、当該案内音声Vの音響成分と、当該案内音声Vを一意に識別するための識別情報Dを示す音響成分とを含有し([0009])、識別情報Dは、所定の周波数帯域の音響成分として音響信号Xに含有され、識別情報Dの音響成分の周波数帯域は、利用者が通常の環境で聴取する音声(例えば案内音声V)または楽音等の音響の周波数帯域を上回る範囲(例えば18kHz以上かつ20kHz以下)に包含され([0010])、 1e 制御装置22は、記憶装置24に記憶された複数の音響信号Xの何れかを放音装置26に供給し([0011])、 1f 放音装置26は、制御装置22から供給される音響信号Xに応じた音響を放音する音響機器(スピーカ)であり([0011])、 1g 配信装置10は、案内データGAを記憶し、案内データGAは、関連情報Rを包含し、関連情報Rは、案内音声Vに関連する情報(コンテンツ)であり、例えば音声または画像(例えば静止画,動画,文字列)で表現され([0012])、配信装置10は、相異なる言語で表現された複数の関連情報Rを案内音声Vの識別情報D毎に含む案内データGAを記憶し([0032])、 1h 端末装置14は、制御装置32と記憶装置34と通信装置36と収音装置42と入力装置44と出力装置46とを具備し([0013])、 1i 記憶装置34は、放音システム12が放音する案内音声Vに対応する関連情報Rを端末装置14の利用者に提供するためのアプリケーションプログラム(以下「案内プログラム」という)を記憶し([0014])、配信装置10が記憶する案内データGAのうち端末装置14にて指定された指定言語Lに対応する一部の関連情報Rを案内データGBとして記憶し、例えば指定言語Lが「英語」である場合、相異なる識別情報D(D1,D2,……)に対応する複数の英語の関連情報Rが案内データGBとして記憶装置34に記憶され([0033])、端末装置14のOS(Operating System)の言語設定を参照することで指定言語Lを特定し得([0020])、 1j 収音装置42は、周囲の音響を収音して音響信号Yを生成する音響機器(マイクロホン)であり、放音システム12の放音装置26が放音した音響(すなわち、案内音声Vと識別情報Dの音響成分との混合音)を表す音響信号Yを生成し([0016])、 1k 出力装置46は、案内音声Vの関連情報Rを出力し、関連情報Rが表す文字列を表示する表示装置462(例えば液晶表示パネル)と、関連情報Rが表す音声を放音する放音装置464(例えばスピーカまたはイヤホン)とを具備し([0017])、 1l 記憶装置34に記憶された案内プログラムを制御装置32が実行することで、案内音声Vに対応する関連情報Rを提供するための複数の機能(情報抽出部52、情報選択部54、出力制御部56、関連情報取得部58)が実現され([0018])、 1m 情報抽出部52は、収音装置42が生成した音響信号Yのうち識別情報Dを含む周波数帯域の音響成分を帯域通過フィルタで選択し、識別情報Dの変調処理に対応する復調処理を当該音響成分に対して実行することで識別情報Dを抽出し([0019])、 1n 情報選択部54は、情報抽出部52が抽出した識別情報Dに対応する関連情報Rを記憶装置34の案内データGBから選択し([0034])、 1o 出力制御部56は、情報選択部54が選択した関連情報Rを出力装置46に出力させる([0021])、 1p 案内システム100。 2 取消理由3及び取消理由4-1についての当審の判断 (1)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 ア 発明特定事項1Aについて (ア)甲1発明の「音響信号Xに応じた音響」は、「放音システム12」が具備する「放音装置26」(分説1c)により放音されるものである(分説1f)。前記「音響信号X」には、「案内音声Vの音響成分」が含まれ(分説1d)、該「案内音声V」は、「案内対象施設に関する案内を利用者に報知するための」ものである(分説1c)。そうすると、前記「音響信号Xに応じた音響」の放音は、案内放送といえるものであるから、前記「音響信号Xに応じた音響」は、本件発明1の「放送音」に相当する。 甲1発明の「音響信号Xに応じた音響」の「音響信号X」には、「識別情報Dを示す音響成分」も含まれ(分説1d)、該「識別情報D」は、本件発明1の「識別情報」に相当する。 したがって、本件発明1と甲1発明とは、「識別情報」が「放送音に含まれる」点で一致する。 (イ)甲1発明の「端末装置14」は、「制御装置32」、「収音装置42」及び「出力装置46」を具備し(分説1h)、「制御装置32」により「情報抽出部52」及び「情報選択部54」の機能を実現するものである(分説1l)。 甲1発明の「収音装置42」は、周囲の音響を収音して「音響信号Y」を生成し、ここで、「音響信号Y」は、「放音装置26」が放音した「音響」すなわち、案内音声Vと識別情報Dの音響成分の混合音である(分説1j)から、「音響信号Xに応じた音響」と実質的に等しいものである。 甲1発明の「端末装置14」において、「情報抽出部52」の機能が「音響信号Y」から「識別情報D」を抽出し(分説1m)、「情報選択部54」の機能が「識別情報D」に対応する「関連情報R」を選択する(分説1n)から、「関連情報R」は「識別情報D」に基づいた情報である。 甲1発明の「端末装置14」は、「出力装置46」が「関連情報R」を出力する(分説1k)ことにより、「関連情報Rを端末装置14の利用者に提供する」(分説1i)から、利用者へ「関連情報R」すなわち「識別情報D」に基づいた情報の提示をしている。 よって、「端末装置14」は、「音響信号Xに応じた音響」と実質的に等しい「音響信号Y」に含まれる「識別情報D」に基づいて情報すなわち「関連情報R」を提示するものであるから、「端末装置14」を具備する「案内システム100」(分説1a)は、「情報提示システム」である。 (ウ)前記(ア)及び(イ)によれば、本件発明1と甲1発明とは、「放送音に含まれる識別情報に基づいて情報を提示する情報提示システム」である点で一致する。 イ 発明特定事項1Bについて (ア)前記アによれば、甲1発明の「放音システム12」は、「識別情報D」を含む「音響信号Xに応じた音響」を放音すなわち放送するものである。 そして、「放音システム12」は、「制御装置22」、「記憶装置24」及び「放音装置26」を具備し(分説1c)、これらの装置により前記放送を実現している(分説1e、1f)から、甲1発明の「制御装置22」、「記憶装置24」及び「放音装置26」は、本件発明1の「放送装置」に相当する。 (イ)甲1発明の「端末装置14」は、「携帯電話機またはスマートフォン等の可搬型の情報処理端末」であり、利用者が「携帯した状態で案内対象施設に所在」する(分説1b)から、案内対象施設の「空間内に配置され得る」「端末装置」といえる。 同じく「端末装置14」として「好適に利用され」る「電子看板(例えばデジタルサイネージ)等の案内掲示板」(分説1b)も、案内対象施設の「空間内に配置され得る」ものである。 したがって、甲1発明の「端末装置14」と本件発明1の「端末装置」とは、「空間内に配置され得る」「端末装置」である点で一致する。 (ウ)甲1発明の「端末装置14」である「携帯電話機またはスマートフォン等の可搬型の情報処理端末」は、「利用者」が「携帯した状態」(分説1b)で使用されるものであり、該「可搬型の情報処理端末」は、利用者個人が情報の取得や通話等を行うために用いられるものである。 一方、甲1発明の「端末装置14」である「電子看板(例えばデジタルサイネージ)等の案内掲示板」は、「案内対象施設」の不特定多数の利用者に情報を伝達するために用いられるものである。 そうすると、甲1発明は、「端末装置14」として、「携帯電話機またはスマートフォン等の可搬型の情報処理端末」と「電子看板(例えばデジタルサイネージ)等の案内掲示板」という用途が異なる複数のものを備えているといえるから、本件発明1と甲1発明とは、「用途が異なる複数の端末装置」を含む点で一致する。 (エ)前記(ア)~(ウ)によれば、本件発明1と甲1発明とは、「前記識別情報を含む前記放送音を放送する放送装置と、空間内に配置され得る用途が異なる複数の端末装置とを含」む点で一致する。 ウ 発明特定事項1Cについて (ア)甲1発明の「端末装置14」に記憶される「案内データGB」は、「相異なる識別情報D(D1,D2,……)」と「関連情報R」とを対応付けた(分説1i)ものであり、図3の案内データGBの形態が、「D1」、「D2」、「D3」等を含む左列と「Hello.」、「Thank you.」「Good bye.」等を含む右列とで構成された([0033])表形式であることも勘案すると、甲1発明の「案内データGB」はテーブルであるといえる。 よって、本件発明1の「テーブル」と甲1発明の「案内データGB」とは、「前記識別情報と前記関連情報とを関連付けるテーブル」である点で一致する。 (イ)他方で、甲1発明の「案内データGB」は、「配信装置10が記憶する案内データGAのうち端末装置14にて指定された指定言語Lに対応する一部の関連情報Rを案内データGBとして記憶し」たものである(分説1i)から、「指定言語L」が相異なる「端末装置14」は、相異なる「案内データGB」を記憶していると認められる。 (ウ)甲1発明の「端末装置14にて指定された指定言語L」(分説1i)は、「OS(Operating System)の言語設定」(分説1i)で設定された言語であり、該「端末装置14」の利用者が普段使用する言語と解されるものである。 他方、「端末装置14」の利用者が普段使用する言語は、用途が同じ2つの「端末装置14」(例えば、前記イ(ウ)に示した「携帯電話機またはスマートフォン等の可搬型の情報処理端末」)でも異なり得ることは明らかであるから、甲1発明の「端末装置14にて指定された指定言語L」の異同は、「端末装置14」の用途の異同と一致するものではない。 よって、甲1発明の「案内データGB」は、用途に応じて異なるものではない。 エ 発明特定事項1Dについて 甲1発明の「案内データGA」は「相異なる言語で表現された複数の関連情報Rを案内音声Vの識別情報D毎に含む」(分説1g)ものであり、他方、「案内データGB」は、前記ウ(イ)のとおり、「案内データGAのうち端末装置14にて指定された指定言語Lに対応する一部の関連情報R」であるから、各「端末装置14」の「案内データGB」は、共通の「識別情報D」(すなわち「案内データGA」の「識別情報D」)に対応している。 したがって、本件発明1と甲1発明とは、「用途が異なる複数の前記端末装置のテーブルそれぞれにおいて、共通する前記識別情報には、前記識別情報に対応」する「関連情報が関連づけられ」ている点で一致する。 他方、甲1発明の「関連情報R」は、「端末装置14にて指定された指定言語L」に対応する(分説1i)ものであって、前記ウ(ウ)のとおり、「端末装置14」の用途に応じたものではない。 オ 発明特定事項1E、1F及び1Gについて (ア)甲1発明の「端末装置14」は、「放音システム12」の「放音装置26」が放音した「識別情報Dを示す音響成分」を含む「音響信号Xに応じた音響」に等しい「音響信号Y」から「識別情報D」を抽出し(分説1d、1j、1m)、「識別情報Dに対応する関連情報R」を「端末装置14」が記憶する「案内データGB」から選択し(分説1n)、「出力装置46」から「出力」している(分説1o)から、甲1発明の「端末装置14」による「関連情報R」の「出力」は、「放音システム10」から「識別情報D」を含む「音響信号Xに応じた音響」が放音された場合に、「案内データGB」を参照して「識別情報D」に基づいて行われる、「音響信号Xに応じた音響」に関連する「関連情報R」の「提示」といえる。 (イ)そして、前記(ア)の甲1発明の「関連情報R」の出力は、「案内システム100」の複数の「端末装置14」で行われるものであって、前記イ(ウ)に示した、用途が相異なる2つの「端末装置14」をそれぞれ「第1の端末装置」及び「第2の端末装置」と称し、それぞれの「端末装置14」から出力される「関連情報R」を「第1の関連情報」及び「第2の関連情報」と称することは任意である。 (ウ)したがって、本件発明1と甲1発明とは「前記放送装置から前記識別情報を含む放送音が出された場合」、「第1の前記端末装置は、第1の前記端末装置が有する前記テーブルを参照し、前記放送装置から放送された放送音に含まれる識別情報に基づいて、前記放送音の前記識別情報に関連する第1の関連情報を提示し」、及び「第1の前記端末装置と用途が異なる第2の前記端末装置は、第2の前記端末装置が有する前記テーブルを参照し、前記放送装置から放送された放送音に含まれる識別情報に基づいて、前記放送音の前記識別情報に関連する第2の関連情報を提示し」ている点で一致する。 カ 発明特定事項1Hについて (ア)発明特定事項1Hの「前記第1の関連情報」は、「第1の端末装置」が有する「テーブル」を参照することで提示されるものであり(発明特定事項1F)であり、発明特定事項1Hの「前記第2の関連情報」は、「第1の端末装置と用途が異なる」「第2の端末装置」が有する「テーブル」を参照することで提示されるものである(発明特定事項1G)。 (イ)甲1発明において、用途が相異なる2つの「端末装置14」からそれぞれ出力される「関連情報R」は、前記エのとおり、それぞれの「端末装置14にて指定された指定言語L」に応じたものであり、「関連情報R」の言語は、「関連情報R」を表現する「態様」の一種である。 (ウ)前記(ア)及び(イ)を踏まえると、甲1発明において、用途が相異なる2つの「端末装置14」から出力される「関連情報R」が相異なる態様の情報であるか否かは、「端末装置14にて指定された指定言語L」に依るため、用途が相異なる2つの「端末装置14」から出力される「関連情報R」は、相異なる態様の情報であるとはいえない。 したがって、甲1発明は、本件発明1の発明特定事項1Hに対応する構成を有さない。 キ 発明特定事項1Iについて 前記アのとおり、本件発明1と甲1発明とは、「情報提示システム」である点で一致する。 ク 前記ア~キによれば、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。 [一致点] 放送音に含まれる識別情報に基づいて情報を提示する情報提示システムにおいて、 前記識別情報を含む前記放送音を放送する放送装置と、空間内に配置され得る用途が異なる複数の端末装置とを含み、 前記端末装置のそれぞれは、前記識別情報と関連情報とを関連付けるテーブルを有し、 用途が異なる複数の前記端末装置のテーブルそれぞれにおいて、共通する前記識別情報には、前記識別情報に対応した前記関連情報が関連づけられ、 前記放送装置から前記識別情報を含む放送音が出された場合、 第1の前記端末装置は、第1の前記端末装置が有する前記テーブルを参照し、前記放送装置から放送された放送音に含まれる前記識別情報に基づいて、前記放送音の前記識別情報に関連する第1の関連情報を提示し、 第1の前記端末装置と用途が異なる第2の前記端末装置は、第2の前記端末装置が有する前記テーブルを参照し、前記放送装置から放送された放送音に含まれる前記識別情報に基づいて、前記放送音の前記識別情報に関連する第2の関連情報を提示する、 ことを特徴とする情報提示システム。 [相違点1] 本件発明1の「テーブル」は「端末装置の用途に応じた異なる」ものであって、該「テーブル」において識別情報に関連づけられる「関連情報」が「端末装置の用途に応じた」「異なる態様の情報」であるのに対し、甲1発明の「案内データGB」及び「関連情報R」は、「端末装置14にて指定された指定言語L」に応じたものである点。 (2)相違点についての判断 甲1発明は、「案内音声Vに関連する関連情報Rを端末装置14の利用者の言語(指定言語L)で提供すること」([0027]、[0038])を目的とするものであり、その達成のために「端末装置14」の「案内データGB」として記憶される「関連情報R」を、「端末装置14にて指定された指定言語」に応じたものとしている。 そのため、前記「関連情報R」を、「端末装置14」の用途に応じたものに変更することは、前記目的に照らして阻害事由があるともいえる。 また、甲1には、前記「関連情報R」を「端末装置14」の用途に応じたものとすることについて記載も示唆もないから、前記「関連情報」を「指定言語L」に応じつつ、かつ、「端末装置14」の用途に応じたものとすることの動機付けもない。 その他、相違点1に係る本件発明1の構成を記載又は示唆する証拠はない。 したがって、相違点1に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。 (3)申立人の主張(申立人意見3、申立理由1-1)について ア 申立人意見3について 申立人は、本件発明1は、甲1発明と同一であり、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張し(申立人意見3)、その理由として、次の(i)~(iii)を挙げている。 (i)甲1発明の「携帯電話機またはスマートフォン等の可搬型の情報処理端末」と「電子看板(例えばデジタルサイネージ)等の案内掲示板」は用途が互いに異なり、「案内掲示板」の「案内データGB」を不特定の利用者の言語に対応したものとすべきことは当然である。(申立人意見書3~5頁) (ii)甲1には、障碍の種類に応じた関連情報Rを出力する態様も記載され、そのために使用される端末装置14は、用途が異なるものである。(申立人意見書5~6頁)。 (iii)甲1に記載された技術は、翻訳を目的としたものに限定されない。(申立人意見書6~7頁) 以下、検討する。 (ア)理由(i)について 甲1発明において、「案内掲示板」の「案内データGB」としての「関連情報R」を不特定の利用者の言語に対応したものにしたとしても、該「関連情報R」は、「端末装置14」である「案内掲示板」「にて指定された指定言語L」(「案内掲示板」の利用者が普段使用する言語)に応じたものであって、前記(1)ウ(ウ)及びエのとおり、「端末装置14」の用途に応じたものではない。 (イ)理由(ii)について 甲1の[0045]~[0047]に記載された態様は、「関連情報R」を「障碍の種類毎」の「その障碍のある利用者が知覚し得る形式」とするものであるが、該「関連情報R」は、利用者の「障碍の種類」に応じたものであって、甲1発明における利用者が普段使用する言語に応じた「関連情報R」と同様、端末装置14の利用者の特性に応じたものといえる。 他方、甲1には、前記「障碍の種類」が、端末装置14の用途と対応するものであることの記載も示唆もない。また、「関連情報R」を「障碍の種類」に応じたものから、端末装置14の用途に応じたものに変更することの動機付けも存在しない。 したがって、甲1の[0045]~[0047]に記載された態様は、本件発明1を開示するものでも示唆するものでもない。 (ウ)理由(iii)について 甲1に記載された技術が、翻訳を目的としたものに限定されないとしても、前記(2)のとおり、甲1には、「案内データGB」及び「関連情報R」を、「端末装置14」の用途に応じて異なるものとすることの記載も示唆もない。 (エ)前記(ア)~(ウ)のとおりであるから、申立人の主張は採用できない。 イ 申立理由1-1について 申立人は、甲1発明の案内データGBは、指定言語L又は障碍の種類に対応したものであって、指定言語Lは端末装置14の属性であり、利用者の障碍の種類は端末装置14の所有者もしくは管理者の情報であるから、本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲1発明と同一であり、また、甲1発明から当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する。(申立書31~36頁) しかしながら、本件訂正後の本件発明1の「テーブル」及び「関連情報」は、端末装置の用途に応じたものであるから、申立人の主張は採用することができない。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明と同一ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 3 取消理由1-1~取消理由1-3についての当審の判断 (1)取消理由1-1について ア 取消理由通知書で通知した取消理由1-1(特許法36条6項2号)は、本件訂正前の請求項1~4の「複数種類の端末装置」の端末装置の「種類」の意味が明確でなく、さらに、端末装置の該「種類」と「前記端末装置の用途、機能、属性、前記端末装置にインストールされている前記識別情報の関連情報を提示する情報提示アプリケーション、並びに前記端末装置の所有者若しくは管理者の情報、の少なくとも1つ」との関係が明確でない、というものである。 イ これに対し、本件訂正後の本件発明1には、端末装置の「種類」との記載は存在しない。 また、本件発明2~4は、端末装置の「種類」が「端末装置の用途、機能、属性、前記端末装置にインストールされている前記識別情報の関連情報を提示する情報提示アプリケーション、並びに前記端末装置の所有者若しくは管理者の情報、の少なくとも1つによって区別される」ものであることが特定され、端末装置の「種類」の意味、及び「端末装置の用途、機能、属性、前記端末装置にインストールされている前記識別情報の関連情報を提示する情報提示アプリケーション、並びに前記端末装置の所有者若しくは管理者の情報、の少なくとも1つ」との関係は、明確に規定されている。 ウ したがって、本件特許は、取消理由1-1により取り消すことはできない。 (2)取消理由1-2について 取消理由通知で通知した取消理由1-2(特許法36条6項2号)は、本件訂正前の請求項3の「前記放送音の帯域幅」の「前記」の対象が明確でない、というものである。 これに対し、本件訂正後の本件発明3の「前記放送音の帯域幅」は、引用する請求項2の「前記識別情報を放送形態によって特定される放送音の帯域幅内に埋め込む」との記載の「放送音の帯域幅」のことであることは明確であるから、本件特許は、取消理由1-2により取り消すことはできない。 (3)取消理由1-3について 取消理由通知で通知した取消理由1-3(特許法36条6項2号)は、本件訂正前の請求項4の「前記放送音の帯域幅」は明確でない、というものである。 これに対し、本件訂正後の本件発明4の「前記放送音の帯域幅」は、引用する請求項2の「前記識別情報を放送形態によって特定される放送音の帯域幅内に埋め込む」との記載の「放送音の帯域幅」であることは明確であるから、本件特許は、取消理由1-3により取り消すことはできない。 (4)小括 以上のとおり、本件特許は、取消理由1-1~取消理由1-3により取り消すことはできない。 4 取消理由2についての当審の判断 取消理由通知書で通知した取消理由2(特許法36条4項1号)は、本件訂正前の請求項4に係る発明の「放送受信機」が、一般的なテレビ受信機やラジオ受信機である場合について、発明の詳細な説明は、請求項4に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでない、というものである。 これに対し、本件訂正後の本件発明4の「放送受信機」は、「緊急放送を受信できかつ緊急放送の音声帯域幅に識別情報を埋め込むことができる緊急告知ラジオ」であり、本件発明4について、発明の詳細な説明の【0079】~【0080】等に、当業者がその実施をできる程度に十分かつ明確に記載されている。 したがって、本件特許は、取消理由2により取り消すことはできない。 5 取消理由4-2についての当審の判断 取消理由通知書で通知した取消理由4-2(特許法29条2項)は、本件訂正前の請求項5に係る発明は、甲5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである、というものである。 しかしながら、前記第6のとおり、本件訂正により請求項5は削除された。 6 まとめ 以上のとおり、本件特許は、取消理由通知書で通知した取消理由で取り消すことはできない。 第8 取消理由通知において採用しなかった甲1に基づく申立理由について 以下では、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由のうち、甲1を主たる証拠とする申立理由2-1、申立理由3-1及び申立理由4-1について判断する。 1 本件発明2についての当審の判断 (1)対比 本件発明2と甲1発明とを対比する。 ア 発明特定事項2Aについて 発明特定事項2Aは、本件発明1の発明特定事項1Aと同一であるから、前記第7、2(1)アのとおり、本件発明2と甲1発明とは、「放送音に含まれる識別情報に基づいて情報を提示する情報提示システム」である点で一致する。 イ 発明特定事項2Bについて 発明特定事項2Bは、本件発明1の発明特定事項1Bの前半部分と同一であるから、前記第7、2(1)イのとおり、本件発明2と甲1発明とは、「前記識別情報を含む前記放送音を放送する放送装置」を含む点で一致する。 ウ 発明特定事項2Cについて (ア)前記第7、2(1)イ(イ)のとおり、甲1発明の「端末装置14」は、案内対象施設の「空間内に配置され得る」ものである。 (イ)本件明細書の「本実施形態では、スマートフォン21の属性は「性別」であるが、属性はこれに限定されない。例えば、国、住所、年齢等であってもよい。」(【0071】)との記載によれば、本件発明2の端末装置の「属性」には、端末装置のユーザーの属性が含まれると解釈される。 前記解釈によれば、甲1発明の「端末装置14にて指定された指定言語L」(分説1i)は、ユーザーが普段使用する言語という「属性」であるといえる。 あるいは、甲1発明の「指定言語L」は、「OS(Operating System)の言語設定」(分説1i)で設定された言語であるから、「端末装置14」のユーザーインターフェースの機能に影響を与えるという意味で「機能」ともいえるものである。 甲1発明では、「端末装置14」は、「配信装置10」が記憶する「案内データGA」のうち「指定言語L」に対応する一部の「関連情報R」を「案内データGB」として記憶するところ(分説1i)、「配信装置10」が記憶する「案内データGA」は、「相異なる言語で表現された複数の関連情報R」を含む(分説1g)から、甲1発明に「指定言語L」が異なる「端末装置14」が含まれることは明らかである。つまり、甲1発明は、「属性」あるいは「機能」が異なる「端末装置14」を含むものといえる。 (ウ)前記(ア)及び(イ)によれば、本件発明2と甲1発明とは、「空間内に配置され得るものであって、端末装置の用途、機能、属性、前記端末装置にインストールされている前記識別情報の関連情報を提示する情報提示アプリケーション、並びに前記端末装置の所有者若しくは管理者の情報、の少なくとも1つによって区別される複数種類の端末装置」を含む点で一致する。 エ 発明特定事項2Dについて (ア)前記第7、2(1)ウ(ア)のとおり、甲1発明の「端末装置14」に記憶される「案内データGB」は、「相異なる識別情報D(D1,D2,……)」と「関連情報R」とを対応付けた(分説1i)テーブルといえる。 (イ)前記ウ(イ)で示したとおり、甲1発明の「端末装置14にて指定された指定言語L」(分説1i)は、「端末装置14」の「属性」であり、あるいは、「機能」であるといえる。 そして、「案内データGB」は、「配信装置10が記憶する案内データGAのうち端末装置14にて指定された指定言語Lに対応する一部の関連情報Rを案内データGBとして記憶し」たものである(分説1i)から、「指定言語L」が相異なる「端末装置14」は、相異なる「案内データGB」を記憶していると認められる。 そうすると、甲1発明の「案内データGB」は、「端末装置14」の「機能」ないし「属性」(すなわち「指定言語L」)に応じて異なるものである。 以上によれば、本件発明2の「テーブル」と甲1発明の「案内データGB」とは、「前記端末装置の」「機能」、「属性」、「の少なくとも1つに応じた異なるデータであるテーブル」である点で一致するから、甲1発明の「案内データGB」は、本件発明2の「前記端末装置自体の用途、機能、属性、前記端末装置にインストールされている前記識別情報の関連情報を提示する情報提示アプリケーション、並びに前記端末装置の所有者若しくは管理者の情報、の少なくとも1つに応じた異なるテーブル」に包含される。 (ウ)前記(ア)及び(イ)によれば、本件発明2と甲1発明とは、「前記複数種類の端末装置のそれぞれは、前記端末装置自体の用途、機能、属性、前記端末装置にインストールされている前記識別情報の関連情報を提示する情報提示アプリケーション、並びに前記端末装置の所有者若しくは管理者の情報、の少なくとも1つに応じた異なるテーブルであってかつ前記識別情報と前記関連情報とを関連付けるテーブルを有」する点で一致する。 オ 発明特定事項2Eについて 甲1発明の「案内データGA」は「相異なる言語で表現された複数の関連情報Rを案内音声Vの識別情報D毎に含む」(分説1g)ものであり、他方、「案内データGB」は、前記エ(イ)のとおり、「案内データGAのうち端末装置14にて指定された指定言語Lに対応する一部の関連情報R」であるから、各「端末装置14」の「案内データGB」は、共通の「識別情報D」(すなわち「案内データGA」の「識別情報D」)に対応している。 したがって、本件発明2と甲1発明とは、「複数種類の前記端末装置のテーブルそれぞれにおいて、共通する前記識別情報には、前記識別情報に対応する関連情報が関連づけられ」ている点で一致する。 カ 発明特定事項2F及び2Gについて 発明特定事項2Fは、本件発明1の発明特定事項1Fと同じであり、発明特定事項2Gは、本件発明1の発明特定事項1Gから「第2の前記端末装置」についての「第1の前記端末装置と用途が異なる」との限定を削除したものと同じである。 したがって、前記第7、2(1)オのとおり、本件発明2と甲1発明とは、「第1の前記端末装置は、第1の前記端末装置が有する前記テーブルを参照し、前記放送装置から放送された放送音に含まれる識別情報に基づいて、前記放送音の前記識別情報に関連する第1の関連情報を提示し」、及び「第2の前記端末装置は、第2の前記端末装置が有する前記テーブルを参照し、前記放送装置から放送された放送音に含まれる識別情報に基づいて、前記放送音の前記識別情報に関連する第2の関連情報を提示し」ている点で一致する。 キ 発明特定事項2Hについて 前記エを踏まえれば、甲1発明において、「指定言語L」が相異なる「端末装置14」からは、相異なる言語の「関連情報R」が出力されることは明らかである。 そして、「関連情報R」の言語は、「関連情報R」を表現する「態様」の一種であるから、本件発明2と甲1発明とは、「前記第1の関連情報は、前記第2の 関連情報とは異なる態様の情報である」という点で一致する。 ク 発明特定事項2Iについて (ア)甲1発明の「放音システム12」は、「案内対象施設に関する案内を利用者に放置するための音声」である「案内音声V」を放音する音響システムである(分説1c)から、「放音システム12」による放音は、案内放送の放送形態であるといえる。 よって、前記「案内音声V」の音響の周波数帯域(分説1c)は、本件発明2の「放送形態によって特定される放送音の帯域幅」に相当する。 (イ)甲1発明の「音響信号X」は、「案内音声Vの音響成分」と「識別情報Dの音響成分」とを含有する(分説1d)ものであるが、「識別情報Dの音響成分」の周波数帯域は、前記(ア)の「案内音声V」の「音響の周波数帯域を上回る範囲(例えば18kHz以上かつ20kHz以下)」に包含される(分説1d)ものであって、案内音声Vの周波数帯域内には包含されない。 (ウ)甲1発明の「放音システム12」に備わる「記憶装置24」は、複数の前記「音響信号X」を記憶し(分説1d)、「放音システム12」に備わる「制御装置22」は、「記憶装置24」に記憶されたいずれかの「音響信号X」を「放音装置26」に供給する(分説1e)から、該「制御装置22」と「記憶装置24」は、音響信号Xを供給する装置を構成しているといえる。そうすると、本件発明2の「前記識別情報を放送形態によって特定される放送音の帯域幅内に埋め込む放送音形成装置」と甲1発明の「制御装置22」と「記憶装置24」からなる装置とは、「装置」である点で共通する。 (エ)甲1発明の「放音システム12」に備わる「放音装置26」は、「音響信号Xに応じた音響を放音する音響機器(スピーカ)」(分説1f)であるから、本件発明2の「スピーカー」に相当する。また、「放音装置26」は、「制御装置22」から「音響信号X」が供給される(分説1e、1f)から、「制御装置22」に接続されていることは明らかである。 (オ)前記(ア)~(エ)によれば、本件発明2と甲1発明とは、「前記放送装置は、装置と、前記装置に接続されるスピーカーとを備え」る点で一致する。 ケ 発明特定事項2Jについて 甲1発明において、「制御装置22」と「放音装置26」との接続方式は明らかでない。 コ 発明特定事項2Kについて 前記アのとおり、本件発明2と甲1発明とは、「情報提示システム」である点で一致する。 サ 前記ア~コによれば、本件発明2と甲1発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。 [一致点] 放送音に含まれる識別情報に基づいて情報を提示する情報提示システムにおいて、 前記識別情報を含む前記放送音を放送する放送装置と、 空間内に配置され得るものであって、端末装置の用途、機能、属性、前記端末装置にインストールされている前記識別情報の関連情報を提示する情報提示アプリケーション、並びに前記端末装置の所有者若しくは管理者の情報、の少なくとも1つによって区別される複数種類の端末装置と、を含み、 前記複数種類の端末装置のそれぞれは、前記端末装置自体の用途、機能、属性、前記端末装置にインストールされている前記識別情報の関連情報を提示する情報提示アプリケーション、並びに前記端末装置の所有者若しくは管理者の情報、の少なくとも1つに応じた異なるテーブルであってかつ前記識別情報と前記関連情報とを関連付けるテーブルを有し、 複数種類の前記端末装置のテーブルそれぞれにおいて、共通する前記識別情報には、前記識別情報に対応する関連情報が関連づけられ、 第1の前記端末装置は、第1の前記端末装置が有する前記テーブルを参照し、前記放送装置から放送された放送音に含まれる識別情報に基づいて、前記放送音の前記識別情報に関連する第1の関連情報を提示し、 第2の前記端末装置は、第2の前記端末装置が有する前記テーブルを参照し、前記放送装置から放送された放送音に含まれる識別情報に基づいて、前記放送音の前記識別情報に関連する第2の関連情報を提示し、 前記第1の関連情報は、前記第2の関連情報とは異なる態様の情報であり、 前記放送装置は、装置と、前記装置に接続されるスピーカーとを備える 情報提示システム。 [相違点2] 「識別情報」の「帯域幅」が、本件発明2では、「放送形態によって特定される放送音の帯域幅内」であるのに対し、甲1発明では、「案内音声V」の「音響の周波数帯域を上回る範囲(例えば18kHz以上かつ20kHz以下)」に包含されるものである点。 これに付随し、放送装置に備わる「装置」が、本件発明2は、「前記識別情報を放送形態によって特定される放送音の帯域幅内に埋め込む放送音形成装置」であるのに対し、甲1発明は、「案内音声Vの音響成分」と「識別情報Dの音響成分」を含む「音響信号X」を記憶する「記憶装置24」と「制御装置22」で構成される点。 [相違点3] スピーカーの接続方式について、本件発明2は、ハイインピーダンス方式であるのに対し、甲1発明は、接続方式が明らかでない点。 (2)相違点についての判断 相違点2について検討する。 甲1発明は、「識別情報Dの音響成分の周波数帯域」を、「案内音声V」の音響の周波数帯域、すなわち「利用者が通常の環境で聴取する音声」の音響の周波数帯域を上回る範囲(分説1d)にすることで、「識別情報D」の音響が利用者に知覚されないようにするという作用効果を有することは、例えば、甲1と同一出願人による甲3【0027】の「したがって、識別情報Dを含む第2音響信号S2の再生音は端末装置300の利用者に殆ど知覚されない。」との記載等からも明らかである。 そして、甲1発明において、前記作用効果を喪失ないし低減させてまで、「識別情報D」の音響成分を、「案内音声V」の周波数帯域内にする動機付けは見出せないから、甲1発明を、相違点2に係る本件発明2の構成とすることは、当業者といえども容易になし得ないものである。 (3)申立人の主張(申立理由2-1、申立人意見4)について ア 申立理由2-1について 申立人は、訂正前の請求項2に係る発明は、当業者が甲1発明と甲3の記載事項と甲4に示される周知慣用技術に基づいて容易に発明をすることができたものである、と主張する(申立理由2-1)ので、以下、甲1発明と甲3の記載事項との組み合わせについて検討する。 (ア)甲3の記載事項及び甲3技術 甲3には、次の事項が記載されている。 「【0006】 ところで、音波を伝送媒体として端末装置に情報を配信する技術が提供されている(以下「音響通信」という)。音響通信では、音響信号のうち高域側(例えば非可聴域内の約18kHz以上かつ20kHz以下)の周波数帯域に配信情報を含有する音響信号を表す音響を放音することで、端末装置に情報が配信(収音)される。音響通信を特許文献1および特許文献2に例示される路線バスの音声案内システムに適用することを想定する。通常、路線バスの車内にはエンジン音や振動音等の車外音が到来するから、案内音声が明瞭に利用者に知覚されるように、音響信号の低域側(例えば可聴域内の約16kHz以下)の成分が濾過(フィルタ)され、高域側の成分はカットされる場合がある。このため、特許文献1および特許文献2に音響通信を適用した場合、高域側の周波数帯域に包含された配信情報を出力(放音)することができない、という問題がある。なお、以上の説明では、公共交通機関の路線バスを例示したが、他の公共交通機関や公共施設等、利用者に様々な情報を提供する任意の状況において同様の問題が発生し得る。以上の事情を考慮して、本発明の好適な態様は、特定の周波数帯域が抑圧される環境でも適切に音響通信を実現することを目的とする。 【0007】 以上の課題を解決するために、本発明の好適な態様に係る音響処理装置は、対象音を表す対象信号と当該対象音の識別情報を含む変調信号とを含有する第1周波数帯域の第1音響信号から識別情報を抽出する情報抽出手段と、前記情報抽出手段が抽出した識別情報を含む信号であって前記第1周波数帯域とは相違する第2周波数帯域の第2音響信号を生成する信号処理手段とを具備する。以上の構成では、対象音(例えば利用者に提供される案内音声)を表す対象信号と、案内音声の識別情報が包含される変調信号とが第1周波数帯域の第1音響信号に含有され、第1音響信号から抽出された識別情報が第2周波数帯域の第2音響信号に包含される。以上の構成によれば、第1音響信号において第2周波数帯域が抑圧された環境でも第2周波数帯域を利用した音響通信により適切に識別情報を送信することが可能である。なお、「対象音」の例示としては、公共施設や公共交通機関の利用者に提供される案内情報(例えば、開館時間や閉館時間等の施設情報、乗降案内、運賃案内等)の音声が挙げられる。」 「【0013】 <第1実施形態> 第1実施形態の音声案内システム1の概要について説明する。以下の説明では、第1実施形態の音声案内システム1を公共交通機関の車内放送に利用した構成を例示する。音声案内システム1では、路線バスの利用者に対して案内情報(乗降案内,運賃情報,観光案内,周辺情報等)を表す案内音声(対象音)が提供される。 【0014】 図1は、第1実施形態の音声案内システム1の構成図である。音声案内システム1は、再生システム100と音響処理装置200と端末装置300とを含んで構成される。再生システム100および音響処理装置200は、路線バスの車輌C内に設置される。 【0015】 再生システム100は、相異なる複数の案内音声の各々に対応する識別情報を含む周波数帯域B1の音響を当該案内音声とともに車輌C内に放音する。車輌Cに乗車する利用者は音声案内を聴取する。他方、音響処理装置200は、再生システム100が放音する音響から識別情報を抽出し、当該識別情報を含む周波数帯域B2の音響を放音する。周波数帯域B1と周波数帯域B2とは相違する。すなわち、音響処理装置200は、識別情報を含む音響の周波数帯域を変換する信号処理装置である。 【0016】 端末装置300は、車輌Cに乗車する利用者が携行する可搬型の通信端末(例えば携帯電話機やスマートフォン)であり、音響処理装置200が放音する音響から案内音声の識別情報を抽出し、当該識別情報に対応する案内情報を案内情報サーバー500から通信網(例えば移動通信網やインターネット)400を介して受信する。案内情報は、案内音声による案内に関連する情報であり、例えば、利用案内(施設案内,運賃案内等),交通案内(乗降案内,乗換案内等),案内対象の地点の付近の観光案内(観光施設,宿泊施設,名所旧跡等の周辺案内等)の文字列や画像(静止画または動画),案内音声を表す文字列(例えば難聴者が視覚的に案内を確認するための文字列),案内音声による案内を他言語に翻訳した音声や文字列が、案内情報として端末装置300に提供されて再生(放音または表示)される。音声案内システム1の各要素の詳細を以下に説明する。 【0017】 <再生システム100> 図1に例示される通り、再生システム100は、操作部110と再生処理装置120と放音装置130とを含んで構成される。操作部110は、路線バスの運転手OPからの指示を受付ける入力装置である。車輌Cが任意の停留所に接近するたびに、運転手OPは、操作部110を適宜に操作することで、当該停留所に関する案内音声の再生を指示することが可能である。再生処理装置120は、相異なる複数の案内音声のうち運転手OPが操作部110に対する操作で指示した案内音声と、当該案内音声の識別情報を含む音響との混合音を表す音響信号(以下「再生信号」という)A2を生成する。放音装置130(例えばスピーカ)は、再生処理装置120が生成した再生信号A2に応じた音響を放音する。なお、図1では1個の放音装置130のみが図示されているが、実際には車輌C内に複数の放音装置130が設置されて再生処理装置120から各々に再生信号A2が並列に供給される。 【0018】 図2は、再生システム100の構成を示すブロック図である。第1実施形態の再生処理装置120は、図2に例示される通り、制御部102と信号合成部104と記憶部106とフィルタ108とを含んで構成される。記憶部106は、例えば半導体記録媒体や磁気記録媒体等の公知の記録媒体で構成され、車輌Cが停車する地点(停留所)毎に、当該地点に関連する案内音声を表す音響信号(以下「対象信号」という)AG(AG1,AG2,……)と当該地点に関連する案内情報の識別情報D(D1,D2,……)とを記憶する。なお、対象信号AGと識別情報Dとは、再生処理装置120の記憶部106に記憶される構成に限られるものではない。例えば再生処理装置120が外部装置(サーバ装置)と通信を実行することにより外部装置から対象信号AGと識別情報Dとを受信する構成としてもよい。 停留所には、路線バスの走行区間の経路上に存在する停留所の他、乗降地点となる場所(例えば、公共交通機関の駅、空港、任意の公道上の地点)が含まれ得る。識別情報Dは、案内情報を識別するための固有の符号であり、車輌Cが停車する地点(停留所)毎に設定される。例えば、相異なる案内情報の間で相互に重複しないように公知の方法で生成された乱数の系列が識別情報Dとして案内情報毎に設定される。 【0019】 図2の制御部102は、車輌Cの停留所への接近にともない操作部110が運転手OPから受付けた再生指示に応じて、当該停留所に対応する案内音声の対象信号AGと識別情報Dとを記憶部106から読み出して信号合成部104に供給する。信号合成部104は、識別情報Dを対象信号AGに重畳することで再生信号A1を生成する。対象信号AGに対する識別情報Dの重畳(音響透かし)には公知の方法が任意に採用され得るが、例えば国際公開第2010/016589号に開示された方法が好適である。 【0020】 図3は、信号合成部104の構成を示すブロック図である。図3に例示される通り、信号合成部104は変調処理部1042と混合処理部1044とを包含する。変調処理部1042は、拡散符号を利用した識別情報Dの拡散変調と所定の周波数の搬送波を利用した周波数変換とを順次に実行することで、識別情報Dを特定の周波数帯域の音響成分として含有する音響信号(以下「変調信号」という)ADを生成する。変調信号ADの周波数帯域は、放音装置130による放音と、音響処理装置200による収音とが可能な周波数帯域であり、かつ、利用者が通常の環境で聴取する音響(音声や楽音)の周波数帯域(例えば可聴域内の約16kHz以下)の範囲内に包含される。混合処理部1044は、制御部102から供給された対象信号AGと、変調処理部1042によって生成された変調信号ADとを混合(典型的には加算)することで再生信号A1を生成する。 【0021】 図2のフィルタ108は、再生信号A1のうち高域側の周波数成分を抑圧することで再生信号A2を生成する低域通過フィルタ(LPF)である。図4は、第1実施形態のフィルタ108の特性図である。エンジン音や振動音等の雑音が到来する車輌Cの内部でも利用者に案内音声が明瞭に知覚されるように、フィルタ108は、図4に例示される通り、再生信号A1のうち高域側(例えば18kHz以上かつ20kHz以下)の周波数帯域の成分を抑圧し、案内音声に対応した低域側の周波数帯域B1(例えば可聴域内の約16kHz以下)の成分を維持する。周波数帯域B1は、放音装置130による放音と音響処理装置200による収音とが可能な周波数帯域であり、かつ、利用者が通常の環境で聴取する音響(音声や楽音)の周波数帯域(例えば可聴域内の約16kHz以下)の範囲内に包含される。識別情報Dを含む変調信号ADの周波数帯域bは、フィルタ108の通過帯域(周波数帯域B1)に包含される。以上の説明から理解される通り、対象信号AGおよび変調信号ADの周波数帯域B1はフィルタ108を通過する帯域に設定される。」 「【0024】 <音響処理装置200> 図7は、音響処理装置200の構成を示すブロック図である。第1実施形態の音響処理装置200は、再生システム100の放音装置130の近傍(例えばスピーカーネットの表面)に設置された音響機器であり、図7に例示される通り、収音装置202と情報抽出部206と記憶部208と信号処理部210と放音装置214とを含んで構成される。収音装置202は、再生システム100の放音装置130から放音される再生信号A2の再生音を収音して第1音響信号S1を生成する。以上の説明から理解される通り、第1音響信号S1は、識別情報Dを含む変調信号ADの音響成分(通知音)と案内音声の音響成分とを周波数帯域B1に含有する。第1実施形態では、音響処理装置200が放音装置130の近傍に配置されるから、第1音響信号S1は雑音の影響を受けにくい。 【0025】 図7の情報抽出部206および信号処理部210は、例えば記憶部208に記憶されたプログラムを演算処理装置(CPU)が実行することで実現される。情報抽出部206は、収音装置202が生成した第1音響信号S1の復調で識別情報Dを抽出する。具体的には、情報抽出部206は、第1音響信号S1のうち識別情報Dを含む周波数帯域bの帯域成分を例えば帯域通過フィルタで選択し、識別情報Dの拡散変調に利用された拡散符号を係数とする整合フィルタを通過させることで識別情報Dを抽出する。第1実施形態では、音響処理装置200が、放音装置130の近傍に配置されるから、通知音の時間長TDが案内音声の時間長TGと比較して充分に短い時間に設定されても識別情報Dを精度良く抽出することが可能である。情報抽出部206により抽出された識別情報Dは記憶部208(メモリ)に格納される。以上の説明から理解される通り、空気振動としての音響(音波)を伝送媒体とする音響通信で再生システム100から音響処理装置200に識別情報Dが通知される。 【0026】 信号処理部210は、情報抽出部206が抽出した識別情報Dを記憶部208から読み出して、拡散符号を利用した識別情報Dの拡散変調と所定の周波数の搬送波を利用した周波数変換とを順次に実行することで、識別情報Dを高域側の周波数帯域B2の音響成分として含有する第2音響信号(変調信号)S2を生成する。放音装置214は、信号処理部210が生成した第2音響信号S2に応じた音響を放音する。なお、図7では、再生信号A2をアナログからデジタルに変換するA/D変換器や、第2音響信号S2をデジタルからアナログに変換するD/A変換器の図示は便宜的に省略されている。 【0027】 図4に例示される通り、第2音響信号S2の周波数帯域B2は、第1音響信号S1の周波数帯域B1とは相違する。すなわち、第2音響信号S2の周波数帯域B2は、第1音響信号S1の周波数帯域B1を上回る。具体的には、周波数帯域B2は、放音装置214による放音と端末装置300による収音とが可能な周波数帯域であり、且つ、利用者が通常の環境で聴取する音声や楽音等の音響の周波数帯域(例えば可聴域内の約16kHz以下)を上回る周波数帯域(例えば18kHz以上かつ20kHz以下)の範囲内に包含される。したがって、識別情報Dを含む第2音響信号S2の再生音は端末装置300の利用者に殆ど知覚されない。すなわち、利用者により案内音声の聴取に影響することなく音響通信により識別情報Dを端末装置300に送信することが可能である。以上の説明から理解される通り、第1実施形態では、再生信号A2の周波数帯域B1とは相違する周波数帯域B2の音響成分として識別情報Dを含有する第2音響信号S2が生成されるから、再生システム100(フィルタ108)において案内音声の周波数帯域B1を強調するために周波数帯域B2を抑圧する構成でも、周波数帯域B2を利用した音響通信により識別情報Dを各端末装置300に通知することが可能である。」 「【0032】 <端末装置300> 図9は、端末装置300の構成を示すブロック図である。図9に例示される通り、端末装置300は、収音装置302と特定部304と取得部306と提示部308とを具備する。収音装置302は、周囲の音響を収音する音響機器(マイクロホン)であり、音響処理装置200の放音装置214から放音された音響を収音し、当該音響の時間波形を表す音響信号(以下「収音信号」という)Xを生成する。収音信号Xは、識別情報Dの音響成分を含有する。なお、収音装置302が生成した収音信号Xをアナログからデジタルに変換するA/D変換器の図示は便宜的に省略されている。 【0033】 特定部304は、収音装置302が生成した収音信号Xの復調で案内情報の識別情報Dを抽出する。具体的には、特定部304は、収音信号Xのうち識別情報Dを含む周波数帯域B2の帯域成分を例えば高域通過フィルタで強調し、識別情報Dの拡散変調に利用された拡散符号を係数とする整合フィルタを通過させることで識別情報Dを抽出する。」 「【0035】 案内情報サーバー500は、図10の案内情報テーブルTB1を保持する。案内情報テーブルTB1は、識別情報D(D1,D2,……)と案内情報G(G1,G2,……)とを対応付ける。案内情報サーバー500は、識別情報Dを含む情報要求Rを端末装置300から受信すると、案内情報テーブルTB1のうち情報要求R内の識別情報Dに対応付けられた案内情報Gを読み出すとともに情報要求Rの送信元の端末装置300に当該案内情報Gを送信する。図9の提示部308は、取得部306によって取得された案内情報Gを例えば表示装置に表示させて利用者に提示する。」 「【0052】 (5)実施形態では、端末装置300の取得部306は、通信網400を介して案内情報サーバー500と通信し、識別情報Dを含む情報要求Rを案内情報サーバー500に送信する一方、情報要求Rに応じて案内情報サーバー500から送信された案内情報Gを受信する構成を例示したが、端末装置300における案内情報Gの取得の方法は以上の例示に限定されない。例えば、端末装置300の記憶装置に案内情報テーブルTB1を格納し、識別情報Dに対応する案内情報Gを取得部306が記憶装置から取得してもよい。」 「【図1】 [図:0001401612000008.jpg] 」 したがって、甲3には、次の技術(以下「甲3技術」という。)が記載されていると認められる。 <甲3技術> 音声案内システム1は、再生システム100と音響処理装置200と端末装置300とを含んで構成され(【0014】)、 再生システム100は、再生処理装置120と放音装置130とを含んで構成され(【0017】)、 再生処理装置120は、案内音声の対象信号AGと識別情報Dとを記憶部106から読み出して(【0018】、【0019】)、識別情報Dを、放音装置130による放音と、音響処理装置200による収音とが可能で、かつ、利用者が通常の環境で聴取する音響(音声や楽音)の周波数帯域(例えば可聴域内の約16kHz以下)の範囲内に包含される周波数帯域の音響成分として含有する音響信号(以下「変調信号」という)ADを生成し(【0020】)、対象信号AGと変調信号ADとを混合(典型的には加算)することで再生信号A1を生成し(【0020】)、再生信号A1のうち高域側(例えば18kHz以上かつ20kHz以下)の周波数成分を抑圧することで再生信号A2を生成し(【0021】)、 放音装置130(例えばスピーカ)は、再生処理装置120が生成した再生信号A2に応じた音響を放音し(【0017】)、 音響処理装置200は、再生システム100の放音装置130から放音される再生信号A2の再生音を収音して第1音響信号S1を生成し(【0024】)、第1音響信号S1の復調で識別情報Dを抽出し(【0025】)、抽出した識別情報Dを高域側の周波数帯域B2の音響成分として含有する第2音響信号(変調信号)S2を生成し(【0026】)、第2音響信号S2に応じた音響を放音し(【0026】)、 端末装置300は、音響処理装置200から放音された音響を収音し、当該音響の時間波形を表す音響信号(以下「収音信号」という)Xを生成し(【0032】)、収音信号Xの復調で案内情報の識別情報Dを抽出し(【0033】)、識別情報Dに対応する案内情報Gを、識別情報D(D1,D2,……)と案内情報G(G1,G2,……)とを対応付ける案内情報テーブルTB1を格納した端末装置300の記憶装置から取得する(【0035】、【0052】)技術。 (イ)甲1発明と甲3技術の組み合わせについて a 甲3技術の「再生システム100」は、「再生処理装置120」により案内音声の対象信号AGと識別情報Dの変調信号ADとを含む再生信号A2を生成し、「放音装置130」により該再生信号A2に応じた音響を放音するものであるから、甲1発明の「放音システム12」に対応するものである。 b 他方、甲3技術の「端末装置300」は、収音した音響から案内情報の識別情報Dを抽出する点で、甲1発明の「端末装置14」に対応するものである。 しかしながら、該「端末装置300」が識別情報Dを抽出する対象は、「再生システム100」から放音された音響ではなく、「音響処理装置200」から放音された音響である。加えて、「音響処理装置200」から放音される音響は、案内音声を含まないものであるから、放送音といえるものでもない。 c そのため、甲1発明に甲3技術を組み合わせると、少なくとも、本件発明2の発明特定事項2F及び2Gの構成、具体的には、「第1の前記端末装置」及び「第2の前記端末装置」による「第1の関連情報」及び「第2の関連情報」の提示が、「前記放送装置」から放送された「放送音に含まれる識別情報に基づ」くとの構成には至らない。 d よって、甲1発明及び甲3技術から、本件発明2が容易に発明をすることができたとはいえない。これは、スピーカーの接続方式を開示する甲4の存在には左右されない。 したがって、申立人の主張は採用できない。 イ 申立人意見4について 申立人は、本件発明2は、当業者が甲1発明と甲4、特開2009-71582号公報、特開2009-44376号公報及び特開平3-141800号公報に示される周知慣用技術に基いて容易に発明をすることができたものあると主張する。 しかしながら、申立人が前記文献により周知慣用技術であると主張する技術は、相違点3のスピーカーの接続方式についてのものであるから、前記文献によっても、相違点2に係る本件発明2の構成が容易であったということはできない。 したがって、申立人の主張は結論を左右しない。 (4)小括 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本件発明3及び4についての当審の判断 本件発明3及び4は、本件発明2を引用して更に限定する構成を付加したものであるから、本件発明2と同様、本件発明3及び4は、甲1発明と同一ではなく、また、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 申立人は、本件訂正前の請求項3及び4に係る発明は、甲1発明と同一であり、仮に、相違点があるとしても、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり(申立理由3-1、申立理由4-1)、本件発明3及び4は、訂正前の請求項3及び4に対応するから、申立理由3-1及び申立理由4-1のとおり取り消されるべきである(申立人意見5、申立人意見6)、と主張する。 しかしながら、前記のとおりであるから、申立人の主張は採用できない。 第9 取消理由通知において採用しなかった申立理由(甲1に基づく申立理由を除く)について 1 甲2の記載事項及び甲2発明 申立理由1-2、申立理由2-2、申立理由3-2及び申立理由4-2の主たる証拠である甲2には、次の事項が記載されている。 「【0005】 このように、従来の技術では、発生している所定の事象に対応する情報を提供する情報処理装置において、複数の利用者のそれぞれに、利用者に応じた適切な情報を提供することには困難を伴っていた。 【0006】 本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、発生している事象に対応した情報を提供する情報処理装置において、複数の利用者のそれぞれに、利用者に応じた適切な情報を提供することを容易にすることを目的とする。」 「【0053】 図6は、一実施形態に係る情報処理システムの機能構成図である。図6において、情報処理システム100は、管理サーバ101、出力装置102、ゲートウェイ103、及び情報端末104を含む。 【0054】 (管理サーバの機能構成) 管理サーバ(情報処理装置)101は、通信部601、位置情報管理部602、登録情報管理部603、対応情報管理部604、事象情報収集部605、提供情報選択部606、情報提供部607、日程情報管理部608、アプリ提供部609、及び記憶部610を有する。」 「【0056】 位置情報管理部602は、情報端末104から送信される送信元(情報端末104又はアプリ等)の識別情報と、送信元が取得した出力装置102の情報とを含む送信元情報を、通信部601を介して取得する。送信元が取得した出力装置102の情報には、例えば、出力装置102の識別情報である出力装置IDや、出力装置102が設置された場所の位置を示す情報等が含まれる。ここでは、出力装置102の情報が、出力装置102の出力装置IDを含むものとして以下の説明を行う。」 「【0064】 登録情報管理部603は、各情報端末104の利用者の識別情報(例えばアプリID)と、情報端末104の登録情報(例えば利用者の情報)とを対応づけて、記憶部610に登録情報612として記憶して、管理する。登録情報管理部は、例えば、図2のCPU201で動作するプログラムによって実現される。 【0065】 図8は、一実施形態に係る登録情報管理部が管理する登録情報の例を示す図である。」 「【0071】 対応情報管理部(管理手段)604は、出力装置102の位置に係る情報、及び出力装置102の位置に対応する提供情報を、所定の事象と対応づけて記憶した対応情報613を記憶部610等に記憶し、管理する。対応情報管理部604は、例えば、図2のCPU201で動作するプログラムによって実現される。 【0072】 図9、10は、一実施形態に係る対応情報管理部が管理する対応情報の例を示す図である。 【0073】 図9(a)は、一般の利用客向けの対応情報613の例である。一般の利用客とは、例えば、図8の登録情報612の利用者情報が「一般の利用客」、又は未登録の利用者等が含まれる。図9(a)の例では、対応情報613には、「事象」に対応づけて、「出力装置ID」、「位置」、「提供情報」等が記憶されている。 【0074】 この対応情報613は、例えば、管理サーバ101の管理者等によって予め設定されているものとする。例えば、対応情報管理部604は、管理者のPCや、情報端末104等のウェブブラウザに、対応情報613の登録用のウェブページを表示させて、登録された対応情報613を記憶部610等に記憶しておく。或いは、対応情報管理部604は、管理者のPCや、情報端末104等で動作するアプリ等で登録された対応情報613を受信し、受信した対応情報613を記憶部610等に記憶しておくもの等であっても良い。 【0075】 「事象」は、予め設定された事象の情報であり、例えば、火災や地震等の災害、列車遅延や渋滞等の交通機関の遅れ等の事象を含む。さらに、「事象」は、利用者が所定の地点で検知された場合や、予定された時刻になった場合等、様々な形態の事象を含むことができる。 【0076】 「出力装置ID」は、図7の「出力装置ID」に対応する。また、「位置」は、図7の「位置」に対応し、出力装置が設置された位置を示す。「出力装置ID」及び「位置」は、出力装置102の位置に係る情報の一例である。 【0077】 「提供情報」は、「事象」が発生しているときに、各「位置」にある情報端末104に提供する情報を示す。例えば、「事象」の一例である火災が発生しているとき、「位置」の一例である地点1にある情報端末104には、「提供情報」として「出口Aへの経路情報」が提供される。なお、図9(a)に示す対応情報には、提供情報の概要のみが示されているが、提供情報には、利用者や情報端末104に提供される画像、音声等の情報が含まれていても良い。」 「【0084】 好ましくは、対応情報管理部604は、図8の登録情報に登録された利用者情報等に対応する複数の対応情報613を管理している。」 「【0086】 事象情報収集部(収集手段)605は、発生している所定の事象に関する事象情報を収集する。事象情報収集部605は、例えば、図2のCPU201で動作するプログラムによって実現される。なお、所定の事象とは、例えば、図9、10に示した対応情報の「事象」に登録されている「火災」、「地震」等の複数の事象を示す。事象情報収集部605は、これらの事象のうち、現在発生している事象に関する事象情報を収集する。」 「【0092】 提供情報選択部(選択手段)606は、位置情報管理部602が取得した送信元情報と、事象情報収集部605が収集した事象情報とに基づいて、対応情報613に記憶された提供情報の中から、送信元に提供する提供情報を選択(決定)する。提供情報選択部606は、例えば、図2のCPU201で動作するプログラムによって実現される。」 「【0095】 情報提供部(提供手段)607は、提供情報選択部606によって選択された提供情報を、送信元の情報端末104に提供する。情報提供部607は、例えば、図2のCPU201で動作するプログラムによって実現される。」 「【0100】 (出力装置の機能構成) 出力装置102は、無線通信部621、音波出力部622、及び装置情報記憶部623を有する。」 「【0102】 音波出力部622は、出力装置102の情報(例えば、出力装置ID、出力装置の位置情報等)を含む音波を出力する。本実施形態では、出力装置102の情報が、出力装置IDであるものとして説明を行う。なお、音波出力部622は、例えば、図3の音波制御部305、音波出力部306、及び図3のCPU301で動作するプログラム等によって実現される。」 「【0106】 (情報端末の機能構成) 情報端末104は、通信部631、音波取得部632、情報抽出部633、識別情報送信部634、識別情報記憶部635、提供情報受信部636、表示制御部637、表示入力部638、音声出力部639、及び振動発生部640等を有する。」 「【0108】 音波取得部632は、出力装置102から出力された音波を取得する手段であり、例えば、図5のマイク部507、及び図5のCPU501で動作するプログラム等によって実現される。 【0109】 情報抽出部633は、音波取得部632が取得した音波に含まれる情報を抽出する手段であり、例えば、図5のCPU501で動作するプログラムによって実現される。例えば、情報抽出部633は、音波取得部632が取得した音波に含まれる出力装置102の出力装置IDや、提供情報等を抽出する。」 「【0112】 識別情報送信部634は、識別情報記憶部635に記憶された送信元の識別情報(例えばアプリID)と、情報抽出部633が抽出した出力装置102の出力装置IDとを、通信部631を介して、管理サーバ101に送信する。識別情報送信部634は、例えば、図5のCPU501で動作するプログラムによって実現される。」 「【0114】 提供情報受信部636は、例えば、通信部631を介して、管理サーバ101から通知される提供情報を受信する。或いは、提供情報受信部636は、情報抽出部633から通知された提供情報を受信する。提供情報受信部636は、例えば、図5のCPU501で動作するプログラムによって実現される。 【0115】 表示制御部637は、提供情報受信部636が受信した提供情報に基づく表示画面を表示入力部638に表示させる。表示制御部637は、図5のCPU501で動作するプログラムによって実現される。」 「【図6】 [図:0001401612000009.jpg] 」 「【図8】 [図:0001401612000010.jpg] 【図9】 [図:0001401612000011.jpg] 」 したがって、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲2発明を2a~2rに分説した。 <甲2発明> 2a 情報処理システム100は、管理サーバ101、出力装置102、ゲートウェイ103、及び情報端末104を含み(【0053】)、 2b 管理サーバ101は、通信部601、位置情報管理部602、登録情報管理部603、対応情報管理部604、事象情報収集部605、提供情報選択部606、情報提供部607、及び記憶部610を有し(【0054】)、 2c 位置情報管理部602は、情報端末104から送信される送信元(アプリ)の識別情報と、送信元が取得した出力装置102の情報とを含む送信元情報を、通信部601を介して取得し、出力装置102の情報には、出力装置102の識別情報である出力装置IDが含まれ(【0056】)、 2d 登録情報管理部603は、各情報端末104の利用者の識別情報(アプリID)と、情報端末104の登録情報(利用者の情報)とを対応づけて、記憶部610に登録情報612として記憶して、管理し(【0064】)、 2e 対応情報管理部604は、出力装置102の位置に係る情報、及び出力装置102の位置に対応する提供情報を、所定の事象と対応づけて記憶した対応情報613を記憶部610等に記憶し、管理し(【0071】)、 2f 対応情報管理部604は、登録情報に登録された利用者情報等に対応する複数の対応情報613を管理し(【0084】)、 2g 事象情報収集部605は、発生している所定の事象に関する事象情報を収集し(【0086】)、 2h 提供情報選択部606は、位置情報管理部602が取得した送信元情報と、事象情報収集部605が収集した事象情報とに基づいて、対応情報613に記憶された提供情報の中から、送信元に提供する提供情報を選択(決定)し(【0092】)、 2i 情報提供部607は、提供情報選択部606によって選択された提供情報を、送信元の情報端末104に提供し(【0095】)、 2j 出力装置102は、無線通信部621、音波出力部622、及び装置情報記憶部623を有し(【0100】)、 2k 音波出力部622は、出力装置102の情報(出力装置ID)を含む音波を出力し(【0102】)、 2l 情報端末104は、通信部631、音波取得部632、情報抽出部633、識別情報送信部634、識別情報記憶部635、提供情報受信部636、表示制御部637、表示入力部638を有し(【0106】)、 2m 音波取得部632は、出力装置102から出力された音波を取得し(【0108】)、 2n 情報抽出部633は、音波取得部632が取得した音波に含まれる出力装置102の出力装置IDを抽出し(【0109】)、 2o 識別情報送信部634は、識別情報記憶部635に記憶された送信元の識別情報(アプリID)と、情報抽出部633が抽出した出力装置102の出力装置IDとを、通信部631を介して、管理サーバ101に送信し(【0112】)、 2p 提供情報受信部636は、通信部631を介して、管理サーバ101から通知される提供情報を受信し(【0114】)、 2q 表示制御部637は、提供情報受信部636が受信した提供情報に基づく表示画面を表示入力部638に表示させる(【0115】) 2r 情報処理システム。 2 本件発明1についての当審の判断 (1)対比 以下、本件発明1の発明特定事項1Cに注目して、本件発明1と甲2発明とを対比する。 ア 甲2発明は、「管理サーバ101」の対応情報管理部604が記憶、管理する「対応情報613」は、出力装置102の位置に係る情報である「出力装置ID」及び出力装置102の位置に対応する「提供情報」を、所定の「事象」と対応付けたものである(分説2e、2k)。 イ 甲2発明の前記「出力装置ID」は、識別情報であるという点で、本件発明1の「識別情報」と共通する。 また、前記「提供情報」は、「情報端末104」の表示入力部638により表示される情報であるから(分説2q)、端末装置で提示される情報であるという点で、本件発明1の「関連情報」と共通する。 そして、前記アのとおり、前記「対応情報613」は、前記「出力装置ID」と「提供情報」とを対応付けており、図9を参照すると、「対応情報613」は、テーブル形式であるから、本件発明1の「識別情報と関連情報とを関連付けるテーブル」に一応対応するものといえる。 ウ 他方、甲2発明の前記「対応情報613」は、「管理サーバ101」が記憶、管理するものであって、「情報端末104」が有するものではない。 エ したがって、本件発明1と甲2発明とは、少なくとも次の相違点があるといえる。 [相違点4] 本件発明1は、「識別情報と関連情報とを関連付けるテーブル」を「端末装置」のそれぞれが有するのに対し、甲2発明は、「対応情報613」を「情報端末104」ではなく「管理サーバ101」が記憶、管理する点。 (2)相違点についての判断 甲2発明の「対応情報613」は、前記(1)アのとおり、「出力装置ID」と「提供情報」を「事象」と対応付けたものであり、「管理サーバ101」の提供情報選択部606が、事象情報収集部605が収集した事象情報と、「情報端末104」から送信される送信元情報(出力装置ID、アプリID)とに基づいて、送信元に提供する「提供情報」を選択する(分説2c、2h、2o)ために使用されるものである。 そのため、事象情報収集部605及び提供情報選択部606を備えない「情報端末104」に、前記「対応情報613」を記憶、管理させることは合理的ではなく、また、動機付けもない。さらに、仮に、事象情報収集部605等の「管理サーバ101」の機能を「情報端末104」に備えさせようとすると、「情報処理システム」全体の構成及び動作を改変する必要があるが、そのような改変を示唆する証拠は存在しない。 したがって、相違点4に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。 (3)申立人の主張(申立理由2-1)について 申立人は、本件訂正前の請求項1に係る発明は、当業者が甲2発明と甲3の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである(申立理由2-1)、と主張する。 しかしながら、前記第8、1(3)ア(ア)に示したように、甲3技術は、識別情報Dに基づいて案内情報テーブルTB1から案内情報Gを選択する(甲3【0035】、【0052】)ものであって、該選択に事象情報を用いるものではないから、甲3技術を甲2発明に組み合わせる動機付けはない。 よって、申立人の主張は採用できない。 (4)小括 以上のとおり、本件発明1は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 本件発明2についての当審の判断 本件発明2も、「前記識別情報と前記関連情報とを関連付けるテーブル」を「端末装置」のそれぞれが有する(発明特定事項2D)ものであるから、本件発明2と甲2発明とは、少なくとも相違点4が存在し、本件発明1と同様、本件発明2は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 申立人は、本件訂正前の請求項2に係る発明は、当業者が甲2発明と甲3の記載事項と甲4に示される周知慣用技術に基いて容易に発明をすることができたものである(申立理由2-2)、と主張するが、甲3については、前記2(3)のとおりであり、また、甲4により主張する周知慣用技術は、スピーカーの接続方式についてのものであるから、申立人の主張は採用できない。 4 本件発明3及び4についての当審の判断 本件発明3及び4は、本件発明2を引用して更に限定する構成を付加したものであるから、本件発明2と同様、本件発明3及び4は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 申立人は、本件訂正前の請求項3及び4に係る発明は、当業者が甲2発明と甲3の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものであり(申立理由3-2、申立理由4-2)、本件発明3及び4は、訂正前の請求項3及び4に対応するから、申立理由3-2及び申立理由4-2のとおり取り消されるべきである(申立人意見5、申立人意見6)、と主張する。 しかしながら、本件発明2について前記3に示したとおり、申立人の主張は採用できない。 第10 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知書で通知した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項5に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700334

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