特許拒絶査定不服審判
2022-021235
動力式ホイール付きボード
- 審判番号
- 2022-021235
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-003397
- 請求日
- 2022年12月27日
- 審決日
- 2024年06月21日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】レイザー・ユーエスエー・エルエルシー
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 審判長/審判官
- 審判長 殿川 雅也
- 審判官 藤本 義仁
- 審判官 嵯峨根 多美
- 分類
- P18 .121-WZ (A63C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 行政事件訴訟法46条特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021- 3397「動力式ホイール付きボード」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 4月15日出願公開、特開2021- 58737〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成27年11月24日(パリ条約による優先権主張2014年11月26日(以下「基準日」という。)、米国、2015年3月24日、米国)に出願した特願2017-547383号の一部を令和3年1月13日に新たな特許出願としたものであって、同年5月7日に手続補正書が提出され、令和4年1月31日付けで拒絶理由が通知され、同年5月9日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月22日付けで拒絶査定がなされたのに対し、同年12月27日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、令和5年1月6日に手続補正書(方式)が提出され、その後、当審において、令和6年2月7日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年5月9日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和6年5月9日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるつぎのとおりのものである。
「【請求項1】
動力式ボードビークルアセンブリであって、
前部および後部を有するフレキシブルデッキと、
前記前部の下方で前記デッキに連結された少なくとも一つのフロントホイールであって、前記フロントホイールは、第1の軸線を中心として旋回しかつ第2の軸線を中心として回転するよう構成された、少なくとも一つのフロントホイールと、
前記デッキと連結されたリアホイールと、
前記ビークル上の制御ユニットと、
前記制御ユニットと無線通信するよう構成された遠隔制御装置と、
前記制御ユニットを介して、前記遠隔制御装置によって制御可能なブレーキであって、前記ブレーキによる制動機能はモーターによって提供されるようになっている、ブレーキと
を備え、
前記デッキは、前記ビークルを操縦しまたは推進させるために、前記デッキの前後方向軸線を中心とした交互方向に、ユーザーが前記後部に対して前記前部をねじることを可能とするために、前記後部に対する前記前部の回転を可能とし、
前記フロントホイールおよび前記リアホイールは、前記ビークルの前後方向軸線と整列させられ、
前記遠隔制御装置はトリガーを含み、前記トリガーの移動量は前記遠隔制御装置内のセンサーによって検出され、前記センサーによって検出された前記トリガーの移動量は、前記モーターによって前記ビークルに対して供給される動力の大きさを決定するために使用される、動力式ボードビークルアセンブリ。」
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由において通知した理由は、次に概略を記した理由を含むものである。
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
<引用文献等一覧>
1.米国特許出願公開第2007/0273118号明細書
2.国際公開第2014/009760号
第4 当審の判断
1 引用例
(1)引用例1
本願の基準日前である2007年11月29日に公開された米国特許第2007/0273118号明細書(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付した。括弧内の日本語訳は当審で作成した。以下同じ。)
ア 「[0026] Each platform 22, 24 includes a relatively flat top surface 26, a bottom surface 30 and a wheel caster 34 connected to the bottom surface 30. A front end of the front platform 22 and a rear end of the rear platform are upwardly curved. Each platform 22, 24 of the skateboard 20 also includes a wedge-shaped wheel caster support 38 on the bottom surface 30 thereof such that the wheel caster 34 extends from the support 38 at an angle ranging from about thirty to sixty degrees relative to the bottom surface 30 of the respective platform 22, 24.」
(各プラットフォーム22、24は、比較的平坦な頂部表面26、底部表面30と底部表面30に接続されたホイールキャスター34を備えている。運転台22の前部プラットフォームの前端部および後部プラットフォームの後端部が上方に湾曲している。スケートボード20の各プラットフォーム22、24は、底面30に楔形ホイールキャスター支持体38を含むことでホイールキャスター34はプラットフォーム22、24の底面30に対して約30度~60度の範囲の角度で支持体38から延びるようになっている。)
イ 「[0027] The front and rear platforms 22, 24 are interconnected by a bar 42 having front and rear platform-engaging ends 44, 46. The bar 42 interconnects the front and rear platforms 22, 24 in an aligned, spaced-apart relation along a common axis 48 defined by the bar 42.…
[0028] …This engagement of the first elastomeric plug 50 with the front platform 22 and the bar 42 allows the first elastomeric plug 50 to rotationally flex relative to the common axis 48 which in turn allows the front platform 22 to rotate about the common axis 48.
[0029] …The engagement of the second elastomeric plug 64 with the rear platform 24 and the bar 42 allows the second elastomeric plug 64 to rotationally flex relative to the common axis 48 which in turn allows the rear platform 24 to rotate about the common axis 48.」
([0027] 前部および後部プラットフォーム22、24は、前部および後部プラットフォーム係合端部44、46を有するバー42によって相互接続されている。バー42は、バー42によって形成される共通軸48に沿って前部および後部プラットフォーム22、24を整列し、離間して相互接続する。…
[0028] …第1の弾性プラグ50は、前部プラットフォーム22およびバー42と係合することにより、第1の弾性プラグ50を共通軸48に対して屈曲回転が可能となり、その結果、前部プラットフォーム22を共通軸48の周りで回転可能とする。
[0029] …第2の弾性プラグ64の係合は、後部プラットフォーム24およびバー42と係合することにより、第2の弾性プラグ64を共通軸48に対して屈曲回転が可能となり、その結果、後部プラットフォーム24を共通軸48の周りで回転可能とする。)
ウ 「[0036] A ground-engaging roller 134 is rotatably connected to the roller arms 122 by an axle 136 extending between the pair of roller arms 122, in a conventional manner.…Each roller arm plate 118 is connected to the wheel caster support plate 98 and includes a conventional ball-bearing roller assembly, allowing each wheel caster 34 to freely rotate about the wheel caster common axis 138 relative to the support plate 98.…The pair of roller arms 122 pivot with the roller arm plate 118 about the wheel caster common axis 138 relative to the caster support plate 98.…」
([0036] 接地ローラ134は、一対のローラアーム122の間に延びる軸136によってローラアーム122に回転可能に接続される。…各ローラアームプレート118は、車輪キャスタ支持プレート98に接続されており従来のボールベアリングローラアセンブリを包含し、各車輪のキャスター34は支持板98に対して相対的にキャスター共通軸138の回りに自由に回転することを可能にする。…一対のローラアーム122はローラアーム板118とともに、キャスタ支持プレート98に対してキャスター共通軸138を中心に回転する。…)
上記記載事項ア乃至ウより、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「相互接続された同一平面上の前部および後部プラットフォーム22、24を含み、プラスチックからなるスケートボード20であって、
前部および後部プラットフォーム22、24は、前部および後部プラットフォーム係合端部44、46を有するバー42によって相互接続され、バー42によって形成される共通軸48に沿って前部および後部プラットフォーム22、24を整列、離間し、
前部プラットフォーム22は、共通軸48の周りで回転可能であり、
後部プラットフォーム24は、共通軸48の周りで回転可能であり、
各プラットフォーム22、24には、それぞれ、各キャスター34が備えられ、
各キャスター34は、キャスター共通軸138の回りに自由に回転可能であるとともに、一対のローラアーム122は、キャスター共通軸138を中心に回転し、接地ローラ134が、一対のローラアーム122の間に延びる軸136によってローラアーム122に回転可能に接続される、スケートボード20。」
(2)引用例2
本願の基準日前である2014年1月16日に公開された国際公開第2014/009760号(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「The subject of the invention relates to a foot-propelled wheeled hobby and/or sport device without handlebars which has a central wheel, a frame including side plates connected to each other and located on both sides of the central wheel at a distance from it and foot plates on the lower part of the side plates protruding outwards from them, located below the wheel axle which has a wheel hub and, furthermore, a satellite wheel, connected to the frame, with a diameter smaller than the central wheel.」(1ページ3~11行)
(本発明の目的は、中央ホイール、相互に接続され、かつ中央ホイールの両側にそれから距離をおいて配置されたサイドプレート、ホイールハブを有するホイール軸の下方に位置し、サイドプレートから外方に突出しサイドプレートの下方にある足プレートを含むフレームと、さらに、中央ホイールよりも小さな直径を備え、フレームに連結された衛星ホイール、を備えたハンドルのない足推進式ホイール付きホビー用具及び/又はスポーツ用具に関する。)
イ 「The optional propulsion of the device with a motor may also be imagined by replacing the central part of the wheel hub with a wheel hub motor, which structurally complies with the solution applied in the case of bicycle wheel hub motors.…Such a compact drive and brake operation structure may operate the motor 30 with radio signals via the control circuit 33, using the same technology used in the case of motorised models and toys. In the case that the radio signal receiver operating the motor does not receive a signal from the compact radio control device 42, the safety brake operates automatically.」(35ページ12行~36ページ13行)
(そのモータを有するデバイスの任意の推進力は、ホイールハブの中央部をホイールハブモータに置き換えることで想定でき、自転車にホイールハブモータを適用する解決策と構造的に準拠する。…このような小型の駆動およびブレーキ操作構造は制御回路33を介して無線信号によって、モータ30を作動させ、電動模型及び玩具の場合に使用される技術と同じ技術を使用してもよい。モータを作動させる無線信号受信機は、小型の無線制御装置42からの信号を受信していない場合、安全ブレーキは自動的に作動する。)
上記記載事項ア及びイより、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「中央ホイールを備え、中央ホイールの両側にはサイドプレートを備え、ホイールハブを有するホイール軸の下方に位置し、サイドプレートの下方に足プレートを備え、
中央ホイールよりも小さな直径を備えた衛星ホイールが、フレームに連結された、ホイール付きホビー用具であって、
ホイールハブの中央部のホイールハブモータにより推進力を得、
無線制御装置からの無線信号によって、ホイールハブモータを作動させ、無線信号を受信していない場合、安全ブレーキが自動的に作動する、ホイール付きホビー用具。」
2 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
(1)後者の「前部プラットフォーム22」、「後部プラットフォーム24」、「軸136」、「キャスター共通軸138」、「『前部プラットフォーム22』に備えられた『キャスター34』」及び「『後部プラットフォーム24』に備えられた『キャスター34』」は、それぞれ、前者の「前部」、「後部」、「第2の軸線」、「第1の軸線」、「フロントホイール」及び「リアホイール」に相当する。
(2)後者の「スケートボード20」の「前部プラットフォーム22」は、共通軸48の周りで回転可能であり、「後部プラットフォーム24」は、共通の軸48の周りで回転可能であるから、「前部プラットフォーム22」及び「後部プラットフォーム24」を含む後者の「スケートボード20」は、前者の「フレキシブルデッキ」に相当し、ビークルを操縦しまたは推進させるために、デッキの前後方向軸線を中心とした交互方向に、ユーザーが後部に対して前部をねじるために、後部に対して前部が回転するものといえる。
(3)後者の「前部プラットフォーム22」に係合した「キャスター34」は、キャスター共通軸138の回りに自由に回転可能であるとともに、一対のローラアーム122は、キャスター共通軸138を中心に回転し、接地ローラ134が、一対のローラアーム122の間に延びる軸136によってローラアーム122に回転可能に接続されるものであるから、前者の「フロントホイール」と後者の「前部プラットフォーム22」に係合した「キャスター34」とは、第1の軸線を中心として旋回しかつ第2の軸線を中心として回転するよう構成されたものとの概念で一致する。
(4)後者の「後部プラットフォーム24」に係合した「キャスター34」は、デッキに連結されたものといえる。
(5)後者の「前部および後部プラットフォーム22、24」は、バー42によって形成される共通の軸線48に沿って、整列しているものであるから、前者の「フロントホイールおよびリアホイール」と後者の「前部および後部プラットフォーム22、24」とは、ビークルの前後方向軸線と整列させられるものとの概念で一致する。
(6)後者の「スケートボード20」は、「前部プラットフォーム22」、「後部プラットフォーム24」、キャスター34」から組み上げたものであることは明らかであるから、前者の「ボードビークルアセンブリ」にも相当する。
したがって、本願発明と引用発明1とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
[一致点]
「動力式ボードビークルアセンブリであって、
前部および後部を有するフレキシブルデッキと、
前記前部の下方で前記デッキに連結された一つのフロントホイールであって、前記フロントホイールは、第1の軸線を中心として旋回しかつ第2の軸線を中心として回転するよう構成された、少なくとも一つのフロントホイールと、
前記デッキと連結されたリアホイールと、
前記デッキは、前記ビークルを操縦しまたは推進させるために、前記デッキの前後方向軸線を中心とした交互方向に、ユーザーが前記後部に対して前記前部をねじることを可能とするために、前記後部に対する前記前部の回転を可能とし、
前記フロントホイールおよび前記リアホイールは、前記ビークルの前後方向軸線と整列させられる、動力式ボードビークルアセンブリ。」
[相違点]
本願発明が、「前記ビークル上の制御ユニットと、前記制御ユニットと無線通信するよう構成された遠隔制御装置と、前記制御ユニットを介して、前記遠隔制御装置によって制御可能なブレーキであって、前記ブレーキによる制動機能はモーターによって提供されるようになっている、ブレーキ」とを備え、「前記遠隔制御装置はトリガーを含み、前記トリガーの移動量は前記遠隔制御装置内のセンサーによって検出され、前記センサーによって検出された前記トリガーの移動量は、前記モーターによって前記ビークルに対して供給される動力の大きさを決定するために使用される」ものであるのに対し、引用発明1は、制御ユニット、遠隔制御装置、ブレーキ、モーターを備えていない点。
3 判断
引用発明2の「無線信号によって、ホイール付きホビー用具を作動させる『無線制御装置』」及び「無線信号を受信していない場合、自動的に作動する『安全ブレーキ』」は、それぞれ、本願発明の「前記制御ユニットと無線通信するよう構成された遠隔制御装置」、「前記制御ユニットを介して、前記遠隔制御装置によって制御可能なブレーキ」に相当する。
引用発明2の「ホイール付きホビー用具」は、無線制御装置からの無線信号によって、作動するものであるから、制御装置を備えていることは明らかである。
ここで、本願の基準日時点で、遠隔制御装置の操作部の形態は種々あるところ、トリガーの移動量で被制御対象の動作の大きさを制御することは、無線制御分野において、慣用されている技術である(例えば、国際公開第2003/070346号、国際公開第2002/094405号参照。)。
してみると、引用発明2において、無線制御装置の操作部として、慣用技術であるところのトリガー操作部を採用することは、当業者が適宜採用し得る程度の設計的事項であると認める。
そして、引用発明1と引用発明2とは、ホイール付きのビークルという技術分野が共通し、当該技術分野においては、新しい搭乗体験または独特の機能を得ることを自明の課題としていることから、引用発明1に引用発明2を適用する動機付けがあるといえる。
してみると、引用発明2を引用発明1に適用する動機付けがあるところ、上記慣用技術を参酌し、トリガー操作部とした引用発明2を引用発明1に適用し、上記相違点の構成とすることは、当業者が適宜なし得るものである。
そして、本願発明の効果も、引用発明1及び引用発明2から、当業者が予測し得る程度のものといえる。
よって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることが出来ない。
4 請求人の主張について
請求人は、令和6年5月9日に提出した意見書において、“引用文献2には、今回の補正後の本願の請求項1に係る発明が具備する…(中略)…特徴的構成は開示も示唆もされておりません。引用文献2に記載された発明においては、本願発明のごとく高度な動力制御は行われません。”旨、主張する。
しかし、引用発明2は、無線制御装置からの無線信号によって、ホイールハブモータを作動させ、無線信号を受信していない場合、安全ブレーキが自動的に作動する、制御を行っており、単なる信号のON/OFFのような単純な制御を行っているものではなく、ホイールハブモータの制御量をコントロールするなど、トリガーの移動量で制御する対象を備えているから、引用発明1に、引用発明2を適用する動機があるといえる。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
したがって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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