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特許拒絶査定不服審判

2022-021180

配列検出システム

審判番号
2022-021180
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-568597
請求日
2022年12月27日
審決日
2025年03月11日
公報発行日
2025年08月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】イルミナ インコーポレイテッド
  • 【請求人代理人】松谷 道子
  • 【請求人代理人】佐藤 剛
  • 【請求人代理人】西下 正石
審判長/審判官
  • 審判長 上條 肇
  • 審判官 加々美 一恵
  • 審判官 小暮 道明
分類
P18 .536-WZ (C12M) / P18 .537-WZ (C12M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-568597「配列検出システム」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月21日国際公開、WO2019/055867、令和 2年10月22日特許出願公表、特表2020-530257〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成30年9月14日(パリ条約による優先権主張 2017年9月15日 (US)米国)を国際出願日とする出願であって、令和4年8月25日付けで拒絶査定がなされ、令和4年12月27日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。 その後、令和6年5月15日付けで拒絶理由通知書が通知され、それに対し、令和6年11月21日に手続補正書が提出されるとともに、その後、意見書も提出された。 第2 本願発明 本願の請求項1~21に係る発明は、令和6年11月21日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~21に記載されたとおりのものであるところ、その請求項7に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである(下線は補正箇所である。)。 「【請求項7】 線形配列のデオキシヌクレオチドモノマーを含むターゲット内のヌクレオチドのタイプの配列を検出する配列検出システムであって、 デオキシヌクレオチドモノマーは(1)デオキシアデニル酸もしくは7-デアザアデニル、(2)デオキシチミジル酸、(3)デオキシシチジル酸および(4)デオキシグアニル酸から選択され、 (a)活性部位内のヌクレオチドポリリン酸と特異的に会合する場合に機械的変化を示す核酸-ポリメラーゼの機械的変化センサー; (b)核酸ポリメラーゼの機械的変化センサーの機械的変化を出力信号に変換する機械 的変化-信号変換器; (c)一端が核酸ポリメラーゼの機械的変化センサーに結合し、レポーター領域を含有するDNAポリマーテザー;および (d)出力信号を使用して、核酸ポリマーターゲット内のモノマーのタイプの配列を決定する分析サブシステムを含み、 (a)前記核酸-ポリメラーゼの機械的変化センサーは、ポリメラーゼフラグメントであり; (b)前記機械的変化-信号変換器は、前記DNAポリマーテザーのレポーター領域の位置によって変化するイオンの流れに対する抵抗値を電気信号に変換し; (c)前記DNAポリマーテザーは、ポリンチャネル内を通り、前記レポーター領域は、前記ポリンチャネルの狭い狭窄部にまたがる前記DNAポリマーテザーの小さな領域であって、少なくとも4つのデオキシヌクレオチドモノマーを含み;および (d)前記分析サブシステムは、特定の配列検出器のコンピュータシステムで実行されるコンピュータプログラムとして実装され、電気信号を処理してターゲット内のオブジェクトタイプの配列を決定し、オブジェクトタイの決定した配列をコンピュータディスプレイデバイス上に出力する。別の実施形態においては、分析サブシステムは、汎用コンピュータシステム以外のプロセッサー制御サブシステムによって実装される、 配列検出システム。」 第3 当審で通知した拒絶理由の概要 当審が、本願発明の補正前の請求項7に係る発明に対して令和6年5月15日付けで通知した拒絶理由の概要は、以下のとおりである。 1.理由1(実施可能要件) 本願請求項7に係る発明の「機械的変化-信号トランスデューサー」、「分析サブシステム」を具現化し、それらを請求項7に記載されたように機能させること、更に、それらを用いることで、実際にヌクレオチド配列を決定することは、当業者に過度の試行錯誤・実験を要するものと認められる。 したがって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、「第2のタイプ」の「分析システム」に関する請求項7に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。 2.理由2(サポート要件) 本願明細書の記載及び本願の出願時の技術常識より、本願請求項7に係る発明の「第2のタイプ」の「機械的変化-信号トランスデューサー」及び「分析サブシステム」が、具体的にどのような装置、システムであるのかについて、当業者は理解、特定することができない。 よって、「機械的変化-信号トランスデューサー」及び「分析サブシステム」について、請求項7に係る発明が解決しようとする課題を解決できることを当業者が認識できるように、本願明細書の発明の詳細な説明が記載されたものであるとは認められない。 第4 本願明細書の記載 この出願の願書に添付した明細書及び図面(以下、これらを総称して「本願明細書」という。)には、以下の記載がある(下線は当審において付与した。)。 本a 「【0003】 概要 本明細書では、ターゲット内のエンティティと特異的に相互作用する場合に1つまたはそれを超える機械的変化を示す機械的変化センサーを含む検出システムを論じる。各エンティティは、タイプ、1つまたはそれを超える機械的変化を信号に変換する機械的変化-信号変換器、および信号を使用してターゲット内のエンティティのタイプを決定する分析サブシステムを有する。本明細書は、活性部位内のヌクレオチドポリリン酸と特異的に会合する場合に機械的変化を示す核酸-ポリメラーゼ機械的変化コンポーネント;核酸-ポリメラーゼ機械的変化コンポーネントにおける機械的変化を出力信号に変換する機械的変化-信号変換器、および核酸ポリマーターゲット内のモノマーのタイプの配列を外部信号を使用して決定する分析サブシステムを含む、配列検出システムをさらに論じる。」 本b 「【発明を実施するための形態】 【0034】 本明細書では、ターゲット内のエンティティのタイプの配列を決定し得る信号を生成する配列検出器を論じる。…配列検出器は、信号を分析してエンティティタイプの配列を決定する、マイクロプロセッサ制御の信号分析コンポーネントなどのコンポーネントを含んでもよい。ターゲットにはエンティティの配列が含まれ、各エンティティにはタイプがある。…本明細書においては、ターゲットおよび対応する配列検出器の2つの異なる例について、以下の2つのサブセクションで論じている。第1の例のターゲットは、ストリングまたはワイヤで一緒に接続されたマクロスケールオブジェクトの線形配列である。各オブジェクトは、4つの異なる形状のいずれか1つを有する。オブジェクトのタイプは、オブジェクトの形状に対応する。第1の対応する配列検出器は、ターゲットが機械的変化センサーを通過し、機械的変化センサーが各オブジェクトと特異的に相互作用し、可変レジスターによるオブジェクトの形状の電気信号特性に変換される機械的変化センサーにおける機械的変化を生じる際に、時間変化する電気信号を生成する。第2の例のターゲットは、共有結合によって互いに結合したモノマーの配列を含む生体高分子である。以下の説明で例として使用するDNAおよびRNAポリマーにおいては、化学組成および構造が互いに異なる4つの一般的に発生する異なるタイプのモノマーがあり、追加のタイプのモノマーはあまり発生しない。第2の対応する配列検出器は、ターゲット生体高分子が機械的変化センサーを通過し、機械的変化センサーがモノマーと特異的に会合して機械的変化センサー内における機械的変化を生じ、ついでそれがカップラーによって可変レジスターに連絡される際に、時間変化する電気信号を生成する。これらの2つのタイプの検出器は例であって、他の構成も存在し、実施し得る。」 本c 「第2のタイプの機械的変化ベースの電気機械配列検出器 【0047】 本明細書で論じている第2の(タイプの)配列検出システムは、マクロスケール、マイクロスケール、およびナノスケールのコンポーネントを含む混合スケールのデバイスである。第2の配列検出システムは、核酸ポリマー内のデオキシヌクレオチドモノマーの配列を決定する。 【0048】 …第1の配列検出システムでは、ターゲットの機械翻訳の電源はバッテリーまたは線電流から得られる電流であるのに対し、第2の配列検出システムでは、ターゲットの機械翻訳の電源はホスホアンヒドリド結合の加水分解および無機ピロリン酸塩の加水分解により生成された化学エネルギーである。第1の配列検出システムでは、ターゲットを翻訳する機械翻訳器は2対の逆回転電気モーター駆動ギアドラムであり、表2の行1210に示されているとおり、第2の配列検出システムでは、機械翻訳器はE.coli DNAポリメラーゼのクレノウ・フラグメントである。第1の配列検出システムにおいては、機械的変化コンポーネントは一連の漏斗様のばねまたは剛毛であり、第2の配列検出システムでは、表の3行目1212に示すように、機械的変化コンポーネントはDNAポリメラーゼIのクレノウ・フラグメントである。第1の配列検出システムにおいては、カプラーはコードまたはワイヤであり、第2の配列検出システムでは、表の4行目1214に示すように、カプラーはDNAポリマーである。第1の配列検出システムでは、可変レジスターはポテンショメーターであり、第2の配列検出システムでは、表の5行目1216に示すように、可変レジスターはMspA-ポリンチャネル内に存在するDNAポリマーカップラーの一部分である。…したがって、第1および第2の配列検出システムは、構成と操作が互いに似ているが、異なる特定のタイプのコンポーネントを含む。 【0049】 図13は、1つの例において、第2の配列検出システムに含まれる機械的変化ベースの配列検出器を示す。以下の議論では、機械的変化ベースの配列検出器1302を「セル」という。図13の図は、さまざまなコンポーネントの相対的なサイズおよび体積を反映していない。多くの実施形態においては、セル1302はマクロスケールまたはマイクロスケールのデバイスであるが、機械的変化センサーコンポーネント1304はナノスケールのコンポーネントである。図13は、コンポーネントの相対的なスケールを正確に描写するのではなく、機械的変化ベースの配列検出器のさまざまなコンポーネントの全体的な構成ならびに相対的な位置および向きを示すことを目的としている。 【0050】 セル1302は、テフロンバリア1312および脂質二重層1314によって第2の溶液含有チャンバー1310から分離された第1の溶液含有チャンバー1308を備えた2部分容器1306を含む。1つの実施形態において、脂質二重層は、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロール-3-ホスホコリンを含む。テフロンバリアは、脂質二重層で覆われた開口部1316を含むため、第1の溶液含有チャンバー1308および第2の溶液含有チャンバー1310は、開口部1316内の脂質二重層のみによって分離される。脂質二重層を通る狭いチャネル1316は、マイコバクテリアのポリン(「MspAポリン」)、8回転対称性を有する8量体のタンパク質凝集体によって提供される。狭いチャネルは、2つの溶液含有チャンバー間でイオンの受動拡散を可能にするのに十分な幅である。第1および第2の溶液含有チャンバー1308および1310は、pH 8.0の緩衝液を含む。…第1の溶液含有チャンバー1308には、デオキシヌクレオチド三リン酸およびプライマー関連デオキシリボ核酸テンプレートがさらに含まれる。プライマー関連デオキシリボ核酸テンプレート1318~1319は、第2の配列検出システムによってデオキシヌクレオチドモノマーの配列が決定されるターゲットである。ある種の実施形態において、第2の溶液含有チャンバー1310には、以下に論じるロックコンポーネントがさらに含まれる。第2の溶液含有チャンバー1310内の溶液は正電極または参照電極1320と流体接触し、第1の溶液含有チャンバー1308内の溶液は、負電極1322と流体接触する。…電極を通してセルに電圧が印加されると、負イオンはポリンチャネルを通って正の陽極に向かって流れ、正イオンはポリンチャネルを通って負の電極に向かって流れる。1つの例において、DNAまたはRNAポリマーが細孔内に存在する場合、マイナスイオンの下向きの流れを抑制し得る。… 【0051】 別の実施形態において、テフロンバリアおよび脂質二重層を使用するのではなく…合成ポリマー膜が使用する。1つの例において、トリブロックコポリマーを膜に使用し得る。… 【0052】 1つの実施形態において、機械的変化センサーコンポーネント1304は、E.coli DNAポリメラーゼIのクレノウ・フラグメントである。クレノウ・フラグメントは、プロテアーゼで処理するかまたは遺伝子組み換え細菌株から目的の断片を発現させることにより、E.coli DNAポリメラーゼIから5’→3’エキソヌクレアーゼ構造ドメインを除去することにより得られる。クレノウ・フラグメントは、5’→3’重合機能を保持している。さらに後述するように、プライマー関連DNAテンプレートおよびデオキシヌクレオチド三リン酸を供給すると、E.coli DNAポリメラーゼIのクレノウ・フラグメントは、デオキシヌクレオチド三リン酸の逐次重合を触媒して、配列に相補的なコピーDNA鎖をテンプレートDNA鎖に形成する。結合成分1324は、DNAポリマーテザーである。それは、DNAポリマーは負に帯電し、印加電圧下で正極に向かって移動するため、機械的変化センサーコンポーネント1304に取り付き、電極に印加される電圧によってポリンチャネルに引き込まれる。以下にさらに論じるように、ポリンチャネル内の狭いくびれにまたがるDNAポリマーテザーの小さな領域は、狭いくびれに沿って、2つの溶液含有チャンバー間のイオンの流れを調整する可変レジスターとして、狭いくびれに対するDNA-ポリマーテザーの小さな領域の位置に依存して異なる程度で一緒に作用する。E.coli DNAポリメラーゼIのクレノウ・フラグメントおよびポリンを含むシステムはE.coli DNAポリメラーゼIのクレノウ・フラグメント内の活性部位を占める各々の異なるタイプのデオキシヌクレオチド三リン酸に対して差異を示すため、異なるデオキシヌクレオチド三リン酸が活性部位と特異的に会合した場合にDNA-ポリマーテザーはポリンチャネル内の狭いくびれに対して異なる動的位置を有し、それは伸長するDNAポリマー鎖内に逐次的に取り込まれる各々の異なるタイプのデオキシヌクレオチド三リン酸についてポリンチャネルを通る異なる動的電流に反映される。分子と活性部位との間の特異的な会合にはキーインロックまたは誘導適合型の会合が含まれ、そこでは、分子の特定の静電気的および化学的な特徴が相補的な静電気的および化学的特徴の活性部位と関連して、活性部位と特異的に会合しない分子に対してよりも分子または分子のクラスに対してより大きな結合親和性に通じる。違いは、1つまたはそれを超えるコンホメーション変化、ポリンチャネルに対するクレノウ・フラグメントの動き、およびその他の変化に起因し得る。以下に論じる電流検出回路は、ポリンチャネルを流れる電流の変化に対応して変化する電圧信号を生成する。別の実施形態においては、上記のクレノウ・フラグメントの代わりに、多くの異なるポリメラーゼ、ポリメラーゼフラグメント、および配列決定のために生体高分子ターゲットと相互作用する他のタイプの生体分子を使用できる。デオキシヌクレオチドヘキサホスフェートなどのより大きなリン酸エステル、異なる炭水化物成分、異なる塩基、および異なる官能基を有するヌクレオチドなど、さまざまなタイプの天然および合成ヌクレオチドを使用できる。多くのさらなるタイプの機械的変化コンポーネントを使用して、さまざまな種類のターゲット生体高分子および合成ポリマーを配列決定することができる。これには、酵素やその他のタンパク質、配列特異的な様式でターゲットタンパク質と相互作用するタンパク質/核酸複合体が含まれる。また、第2の配列検出システムに適用する場合のフレーズ「機械的変化センサーコンポーネント」は、第2の配列検出システムに適用する場合、1つの例として、信号生成が、ポリメラーゼフラグメントの形状の変化、ポリンに関するポリメラーゼフラグメントの相対的位置の変化、および/またはポリンに関するポリメラーゼフラグメントの向きの変化を示すことを示すことに注意されたい。ある種の実施形態において、ポリメラーゼフラグメントの形状の変化は、可変レジスターの動きに通じる機械的変化を提供する。最終的に、機械的変化センサーコンポーネント、および機械的変化センサーコンポーネントとターゲットおよび細孔含有成分との相互作用により、可変レジスターの位置に機械的変化が生じる。別の実施形態において、DNAポリマー以外の結合コネクタおよび可変レジスターを使用できる。 【0053】 第1の配列検出システムはマクロスケールシステムであり、第2の配列検出システムはマクロスケールおよびナノスケールのコンポーネントを含む混合スケールシステムであるが、第2の配列検出システムは第1の配列検出システムに類似している。両方の配列検出システムは、機械的変化センサーコンポーネントを使用して、機械的変化センサーコンポーネントによって現在処理または関連付けられているオブジェクトまたはエンティティの種類によって異なる機械的信号を生成する。両方の配列検出システムは、機械的変化センサーコンポーネントによって処理する、またはそれと会合する現在のオブジェクトまたはエンティティのタイプで変化する機械的信号を生成するために機械的変化センサーコンポーネントを用いる。両方の配列検出システムは、可変抵抗コンポーネントに機械的変化センサーコンポーネントを結合するために機械的結合を採用する。両方の配列検出システムは、機械的変化センサーコンポーネントによって生成された機械信号を電気信号に変換することにより、出力電圧信号を生成する。両方の配列検出システムは、出力信号の計算分析を使用して、ターゲット配列内のオブジェクトまたはエンティティのタイプの配列を識別するために一緒に使用される複数の派生値を生成する。第2の配列検出システムでは、検出したデオキシヌクレオチド-モノマーのタイプの配列は、テンプレート鎖ターゲット内のデオキシヌクレオチド-モノマーのタイプの配列に相補的であり、逆の極性を有している。」 本d 「【0054】 図14A~14Bは、第2の配列検出システムの種々の実施形態において別々にまたは一緒に使用される2つの異なる電流-電圧コンバーター回路を示す。… 【0055】 図15は、1つの例において、並列配列決定を提供するセルのアレイを示す。並列配列決定は、システムの配列決定スループットを増大するために使用できる。セルのアレイには、セル1502などの複数のセルと、複数のセルからの電圧信号出力を並行して処理および分析する分析サブシステム1504が含まれる。一般に、配列検出システムによって出力される配列には、機械的変化センサーコンポーネント、機械的に結合し可変抵抗コンポーネント、および電流または電位測定回路を含む、配列検出システムコンポーネントにしばしば存在する種々の異なる操作エラーソースによるエラーが含まれ得る。したがって、望ましい精度のレベルに応じて、複数の同一のターゲットを配列決定し、複数の同一のターゲットについて決定した複数の配列からコンセンサス配列を計算で生成できる。多くの場合、複数のターゲットの配列が望ましい。図15に示すセルのアレイでは、各セルに複数の異なるタイプのターゲットのそれぞれの複数のコピーをロードし得る。セルは、E.coli DNAポリメラーゼIのクレノウ・フラグメントとプライマー会合テンプレートとのランダムな会合に基づいて非決定的な順序で処理され、複数のタイプのターゲットから配列情報を連続的に生成する。分析サブシステム1502は、セル1504などの複数のセルから配列情報を連続的に収集し、各配列を特定のターゲットによって生成された配列のグループに割り当て、その後、各ターゲットのタイプから得られた配列のグループから各々の異なるタイプのターゲットについてコンセンサス配列を集める。並列処理を使用すると、複数のターゲットについて迅速かつ効率的なコンセンサス配列決定ができる。 … 【0065】 図22A~22Bは、1つの例において、第2の配列検出システムの可変抵抗コンポーネントを示す。図22Aに示すように、DNA-ポリマーテザー2202はDNAポリメラーゼ2204に付着し、ポリンチャネルを通って脂質二重層2206の下方のセルの第2の溶液含有チャンバー1310まで伸びている。デオキシヌクレオチド三リン酸は、コピー鎖伸長の間にDNAポリメラーゼの活性部位に特異的に会合しているため、DNAポリメラーゼの動的コンホメーションの変化は、ポリンチャネルの狭い構造2208と比較してDNA-ポリマーテザーの翻訳をもたらす。 【0066】 図22Bは、ポリンチャネルの狭い狭窄に関するDNA-ポリマーテザーの翻訳が、ポリンチャネルを通るイオンの流れに対する抵抗を変化させることを示す。図22Bは、ポリンチャネル2210~2213内のDNAポリマーテザーの4つの異なる位置を示す。DNA-ポリマーテザーは、直径の異なる一連の円として表される。円2216などの大径の円は、1つまたはそれを超えるデオキシヌクレオチドモノマーを表し、それは生まれたチャネルの狭い狭窄2218内に位置する場合に、ポリンチャネルを通るイオン流に高い抵抗を与える。直径が次第に小さくなる円は、1つまたはそれを超えるデオキシヌクレオチドモノマーを表し、狭い狭窄部内に位置する場合にポリンチャネルを通るイオン流に対する抵抗がますます小さくなる。第1の位置2210では、1つまたはそれを超える低抵抗のデオキシヌクレオチドモノマーは狭い狭窄部2218内に位置し、その結果、ポリンチャネルを通るイオン電流の割合が比較的高くなる。ポリンチャネルに入る多数の正の2220および負の2222イオン記号が示されている。DNAポリマーテザーが狭い狭窄に対して上方に移動すると、位置2211~2213で、イオン流に対してますます大きな抵抗を与える1つまたはそれを超えるデオキシヌクレオチドモノマーが狭い狭窄に移動し、ポリンチャネルを通るイオン-電流の割合がますます小さくなる。したがって、ポリンチャネル内のDNAポリマーテザーの位置付けは、ポリンチャネルを通るイオン流に対する抵抗を変化させ、DNAポリメラーゼの活性側へのデオキシヌクレオチド三リン酸の特異的な取り込みによって生成される機械的な機械的-変化信号を、図14A~14Bを参照して先に論じた電流-電圧変換回路により、出力電圧信号に変換される。 第2のタイプの機械的変化ベースの電気機械的配列検出器の詳細 【0067】 図23A~23Bは、DNAポリマーテザーをDNAポリメラーゼ機械的変化センサー構成要素1304に取り付けるための1つの方法を示す。… 【0068】 図24は、DNAポリメラーゼを可変抵抗コンポーネントに機械的に結合し、さらに可変抵抗コンポーネントの一部分を形成するDNAポリマーテザーのいくつかの特徴を示している。DNAポリマーテザー2402には、ある種の実施形態において、介してDNAポリマーテザーがDNAポリメラーゼに結合するリンカー2404、ポリメラーゼフラグメントがポリン内に落ち着いた(seat)場合にポリメラーゼフラグメントおよびレポーター領域上の結合点からの距離に広がる十分な数のデオキシヌクレオチドモノマーを含むプレレポーター領域2406、一般に少なくとも4つのデオキシヌクレオチドモノマーを含むレポーター領域2408、および数個から数十個のデオキシヌクレオチドモノマー2410を含み得るポスト-レポーター領域が含まれる。レポーター領域2408は、DNAポリメラーゼが種々の異なるコンホメーションを示し、ポリンに対して異なる位置を示し、および/または第2の配列検出システムの機械的変化センサーコンポーネントによって示される機械的変化を一緒に含むポリンに対して異なる方向を示す場合にポリンチャネル内の狭窄部内にある領域である。種々のDNAポリマーテザー領域の長さは、異なるポリンおよび/または異なるDNAポリメラーゼを用いる実施形態によって変化し得る。領域は、DNAポリメラーゼに対するDNAポリマーテザーの結合点とポリンチャネル中の狭い狭窄部との間の距離、ならびにDNAポリメラーゼのコンホメーション変化によって誘導されるDNAポリマーテザーの位置の変位によって定義される。 【0069】 図24の下部に示すように、DNAポリマーテザーは、機械的システムの弾性部材またはバネ部材と同様に、ある程度の量の寸法柔軟性を有している。セル2412に比較的低い電圧が印加される場合、DNAポリマーテザーが伸張状態または緊縮状態2418にある場合、ポリンチャネル狭窄部内のDNAポリマーテザーの部分は、より高い電圧がセル2416に印加される場合のポリンチャネル狭窄部内のテザーの部分と異なり得る。所定のデオキシヌクレオチドモノマー2420は、リラックス状態ではプレレポーター領域とレポーター領域との境界に存在する可能性があるが、伸張状態または緊縮状態では、同じデオキシヌクレオチドモノマーがレポーター領域内に十分に存在する可能性がある。セルへの印加電圧を変えることにより、DNAテザーの静止位置またはベースライン位置、特にポリンチャネルの狭い狭窄部に対するレポーター領域の静止位置またはベースライン位置に対して、比較的細かい調整が行われる。これにより、出力電圧の大きさ、およびセルの機械信号から電気信号への変換応答性に関してセルを較正する機構が提供される。 【0070】 レポーター領域内のデオキシヌクレオチドモノマーの異なる配列は、ポリンチャネルを通るイオン-電流フローに対して異なる抵抗を与える。異なるレポーター領域デオキシヌクレオチドモノマー配列を有するDNA-ポリマーテザーを用いた実験は、多数の低電流で高抵抗のレポーター領域配列および多数の高電流で低抵抗のレポーター領域配列の同定につながった。図25に、低電流、高抵抗の4デオキシヌクレオチドモノマー配列および高電流、低抵抗の4デオキシヌクレオチドモノマー配列の多数の例を示す。低電流配列は第1列2502に示され、高電流配列は第2列2504に示されている。「X」は塩基を有さない(baseless)、破壊されたデオキシヌクレオチド2506を表す。したがって、レポーター領域のデオキシヌクレオチド-モノマー配列を変化させることによって、ポリンチャネル内のDNA-ポリマーテザーに関する可変抵抗コンポーネントの抵抗プロフィールを正確に設計し得る。高抵抗デオキシヌクレオチド-モノマー配列は、さまざまな異なる可能性のあるデオキシヌクレオチド-モノマー配列により示される平均抵抗よりも大きいポリンチャネルを通る電流に対する抵抗を示し、一方、低抵抗デオキシヌクレオチド-モノマー配列はさまざまな異なる可能性のあるデオキシヌクレオチドモノマー配列によって示される平均抵抗よりも少ないポリンチャネルを通る電流に抵抗を示すことは注意すべきである。 【0071】 図26A~26Bは、1つの例において、DNAポリマーテザー配列設計を介した機械的-電気的信号変換の応答性の調整を示している。図26Aおよび図26Bの両方で、図の左手側にレポーター領域2602および2632が示され、図2604および2605の右手側部分の対応する出力信号がプロットされている。一対の矢印2606~2607などの矢印のペアは、基準位置にあるレポーター領域に対するポリンチャネル内の狭い狭窄部の位置を示している。この例では、レポーター領域は、両方向矢印2608で示されるように、さまざまな距離または変位でポリンチャネル内を上下に移動し得る。電流信号プロット2604は、基準位置に対するレポーター領域の変位を表す水平軸2610と、ポリンチャネルを通る電流フローの大きさを表す垂直軸2612とを有する。レポーター領域2602は、正方形2614などの一連の標識した正方形で表される。各正方形は、単一のデオキシヌクレオチドモノマーまたはデオキシヌクレオチドモノマーの短い配列を表す。文字「L」は低電流を表し、文字「M」は中電流を表し、文字「H」は高電流を表す。図26Aのレポーター領域2602は、低電流高抵抗部2616から高電流低抵抗部2618へ、そして低電流高抵抗部2620へと抵抗がゆっくりと対称的に変化する。結果として、電流信号は、小さな負の変位、または上向きの変位2620から、より大きな正または下向きの変位2624まで比較的ゆっくりと増大する。セルの操作中、レポーターの変位がdmin 2626からdmax 2628まで変化すると仮定すると、電流フローの大きさは両方向矢印2630で示される応答レンジ内に収まる。対照的に、図26Bのレポーター領域2632は、抵抗の急激な低下と上昇を特徴としており、したがって、同様の変位範囲2636および2638で非常に急な電流増加2634とそれに対応するより大きな電流応答範囲2640を生成する。したがって、DNAポリメラーゼのコンホメーション変化に起因するレポーター領域の変位に対する電流フロー応答は、DNAポリマーテザーレポーター領域内のデオキシヌクレオチドの注意深い設計を通して正確に仕立てることができる。一般に、急勾配および非線形の応答曲線は、DNAポリメラーゼのコンホメーション変化に対する感度を高め、DNAポリメラーゼおよびMspAポリン間の相互作用によってさらに修飾され得るDNAポリメラーゼによる動的振動および相対的ドメイン間運動の検出が可能となる。 【0072】 図27は、1つの例において、反復デオキシヌクレオチド配列を特徴とするDNAポリマーテザーを示している。図27では、図26A~26Bで使用したのと同じ図の規則を使用している。DNA-ポリマー-テザー配列2702は、低電流、中電流、および高電流のデオキシヌクレオチドテザー部分の繰り返し配列を含む。矢印2704~2706は、繰り返し配列間の境界を示している。矢印2708は、ポリンチャネル狭窄に対するDNAポリマーテザーの基準位置を表す。DNAポリマーテザーを基準変位2708から上下に変位させることにより生成される電流信号のプロット2710は、対応する繰り返し信号形態2712を示す。繰り返し抵抗配列テザーの利点は、図24を参照して先に論じたように、セルに印加される電圧を調整することにより、出力信号曲線の所望の位置に対応する電流フローを、ポリンチャネル内のDNAポリマーテザーのおおまかな位置にかかわりなく出力信号曲線上の望ましい位置に対応する電流フローが得られることである。換言すれば、印加電圧の調整は、セル応答の微調整とみなすことができ、DNAポリマーテザーの繰り返し配列の性質のため、微調整はポリンチャネル内のDNAポリマーテザーの絶対的な位置を決定することが困難または不可能な場合であっても、DNAポリマーテザーの多くの同じ最適なベースライン位置の1つを選択するのに十分である。 【0073】 図6A~図10に参照して先に論じたごとく、ターゲット内のオブジェクトまたはエンティティを同定するのに使用するために、配列検出システムの分析サブシステムによって種々の派生値が生成する。第2の配列検出システムのある種の実施形態については、図14A~14Bに参照して先に論じた、電流-電圧変換器回路によって生成される電圧信号の中央部分内の平均電流の大きさおよび標準偏差は、コピー鎖に付加した各デオキシヌクレオチドについて生成された電圧-信号曲線の解析サブシステムによって生成される。しかしながら、付加された各デオキシヌクレオチドを識別するには、さらなる技術が必要である。 【0074】 図28A~28Cは、1つの例において、第2の配列検出システムのある種の実施形態におけるDNAポリメラーゼによりコピー鎖に付加された異なるデオキシヌクレオチドを識別するために使用されるアプローチを示す。図28Aは、DNAポリメラーゼの活性側内にある4タイプのデオキシヌクレオチド三リン酸の平均電圧範囲(mean-voltage-magnitude range)のプロットを示している。4つの範囲すべてがある程度重複しており、デオキシチミジン三リン酸、デオキシアデノシン三リン酸、およびデオキシシトシン三リン酸の平均電圧信号範囲(average voltage-signal-magnitude range)は互いに大きく重複している。図28Bは、先に論じた図9のように、平均電圧と標準偏差の両方を使用した2次元プロットを示している。2次元プロットは、デオキシグアノシン三リン酸2802をデオキシシトシン三リン酸2804から効果的に区別するが、デオキシチミジン三リン酸およびデオキシアデノシン三リン酸の面積範囲は本質的に同一の広がり2806である。4つのデオキシヌクレオチド三リン酸を完全に区別するために、アデニン2812の代わりに、修飾アデニン塩基2810、7-デアザアデニンが使用される。修飾デオキシアデノシン様三リン酸がDNAポリメラーゼの活性部位内に存在する場合、DNAポリメラーゼは、デオキシアデノシン三リン酸が活性部位内に存在する場合にDNAポリメラーゼが占めるコンホメーションとは著しく異なるコンホメーションを占める。その結果、2次元プロット2816の修飾デオキシアデノシン様三リン酸2814の面積範囲は、デオキシチミジン三リン酸2818の面積範囲ともはや同一の広がりを有さず、それが活性部位に存在する場合に生成する出力電圧信号から生成する平均電圧信号および標準偏差派生値に基づいて4つの異なるデオキシヌクレオチド三リン酸すべてが明確に識別できる。 【0075】 図29A~29Cは、1つの例において、ポリンチャネル内にDNAポリマーテザーをしっかりと保持するためのロックコンポーネントとしてのロックオリゴヌクレオチドの使用を示している。…ある種の実施形態において、ロックオリゴヌクレオチド以外のロックコンポーネントを使用し得る。例えば、ビオチン部分をテザーに結合し、ストレプトアビジンをロックコンポーネントとして使用できる。他のタイプの生体高分子ロックコンポーネントも別の実施形態において使用し得る。 【0076】 ロックオリゴヌクレオチドを使用して、ポリンチャネル内にDNAポリマーテザーつなぐことによって、いくつかの重要な利点が得られる。ある種のタイプのDNAポリメラーゼでは、DNAポリメラーゼとDNAポリマーテザーベースの可変抵抗コンポーネントによって生成される電圧信号は、ノイズの増加期間が長くなり、DNAポリメラーゼの活性部位に特異的に結合した異なるタイプのデオキシヌクレオチド三リン酸を区別するために使用される電流信号の変動をマスクする。…図30は、1つの実施形態において、出力電圧信号に混乱を引き起こすノイズの発生を防ぐために使用される印加電圧サイクルを示す。… 【0077】 …例えば、ある種の配列検出システムは、さまざまな種類の機械的変化センサーコンポーネント、機械的カプラー、可変抵抗コンポーネント、および電気信号生成コンポーネントおよび回路を使用できる。例えば、上記した第2の配列検出システムは、異なるDNAポリメラーゼおよびDNAポリメラーゼフラグメントを使用し、異なるポリンを使用し、異なるタイプのポリマーを含む異なるタイプの機械的カプラーを使用し、多くの異なる形状、サイズ、および構成のセルを使用し得る。MspA-ポリンの代わりに使用できるポリペプチドポアの例には、α-ヘモリシン…が含まれる。先に論じたクレノウ・フラグメントの代わりに使用できるポリメラーゼまたはそのフラグメントの例には、T7 DNAポリメラーゼ…などの真核生物RNAポリメラーゼが含まれる。別のテザーの例には、PEG(ポリエチレングリコール)、PPG(ポリプロピレングリコール)、PVA(ポリビニルアルコール)、PE(ポリエチレン)などの合成ポリマーが含まれる。さらに、DNA、RNA、PNAまたはLNAラベル、モルホリノ、または鏡像異性DNAなどが含まれる。…出力電圧信号に由来する種々の異なる値は、ターゲット配列内のオブジェクトまたはエンティティのタイプを一意に識別するための異なるディメンションとして使用できる。平均電圧信号の大きさ、信号電圧から計算される分散、および標準偏差は、オブジェクトまたはエンティティのタイプの識別に使用できるさまざまなタイプの派生値のほんの数例である。7-デアザデオキシアデノシン三リン酸に加えて、多くの異なるタイプの修飾デオキシヌクレオチド三リン酸をコピー鎖伸長に使用できる。コピー鎖伸長はテンプレート鎖配列を決定するためにのみ使用するため、配列決定中に生成されるコピー鎖の化学組成は第2の配列検出システムの正常な動作とは無関係である。 【0078】 前述の概念および追加の概念のすべての組み合わせ(そのような概念が相互に矛盾しない限り)は、本明細書で開示される本発明の主題の一部として企図されることを理解されたい。…」 本e 「 [図:0001424880000001.jpg] 」(図12) 「 [図:0001424880000002.jpg] 」(図13) 「 [図:0001424880000003.jpg] 」(図15) 「 [図:0001424880000004.jpg] 」(図22A) 「 [図:0001424880000005.jpg] 」(図22B) 「 [図:0001424880000006.jpg] 」(図24) 「 [図:0001424880000007.jpg] 」(図25) 「 [図:0001424880000008.jpg] 」(図26A) 「 [図:0001424880000009.jpg] 」(図26B) 「 [図:0001424880000010.jpg] 」(図28A) 「 [図:0001424880000011.jpg] 」(図28B) 「 [図:0001424880000012.jpg] 」(図28C) 第5 当審の判断 1.理由1(実施可能要件)の検討 本願発明の配列検出システムは、「(a)…核酸-ポリメラーゼの機械的変化センサー」、「(b)核酸ポリメラーゼの機械的変化センサーの機械的変化を出力信号に変換する機械的変化-信号変換器」、「(c)一端が核酸ポリメラーゼの機械的変化センサーに結合し、レポーター領域を含有するDNAポリマーテザー」および「(d)出力信号を使用して、核酸ポリマーターゲット内のモノマーのタイプの配列を決定する分析サブシステム」を含むものである。 そして、本願発明の発明特定事項によると、上記(b)の「機械的変化-信号変換器」は、DNAポリマーテザーのレポーター領域の位置によって変化するイオンの流れに対する抵抗値を電気信号に変換するものであり、上記(c)の「DNAポリマーテザー」は、ポリンチャネル内を通り、当該テザーが有するレポーター領域は、前記ポリンチャネルの狭い狭窄部にまたがる小さな領域であって、少なくとも4つのデオキシヌクレオチドモノマーを含むものであり、上記(d)の「分析サブシステム」は、当該電気信号を処理してターゲット内のオブジェクトタイプの配列を決定し、その配列をコンピュータディスプレイデバイス上に出力するものである。 上記(b)~(d)に関する説明として、本願明細書の【0034】には「第2の例のターゲットは、共有結合によって互いに結合したモノマーの配列を含む生体高分子である。以下の説明で例として使用するDNAおよびRNAポリマーにおいては、化学組成および構造が互いに異なる4つの一般的に発生する異なるタイプのモノマーがあり、追加のタイプのモノマーはあまり発生しない。第2の対応する配列検出器は、ターゲット生体高分子が機械的変化センサーを通過し、機械的変化センサーがモノマーと特異的に会合して機械的変化センサー内における機械的変化を生じ、ついでそれがカップラーによって可変レジスターに連絡される際に、時間変化する電気信号を生成する。」(本b。下線は当審で付与した。以下も同様である。)、同【0052】には「第2の配列検出システムに適用する場合のフレーズ「機械的変化センサーコンポーネント」は、第2の配列検出システムに適用する場合、1つの例として、信号生成が、ポリメラーゼフラグメントの形状の変化、ポリンに関するポリメラーゼフラグメントの相対的位置の変化、および/またはポリンに関するポリメラーゼフラグメントの向きの変化を示すことを示すことに注意されたい。ある種の実施形態において、ポリメラーゼフラグメントの形状の変化は、可変レジスターの動きに通じる機械的変化を提供する。最終的に、機械的変化センサーコンポーネント、および機械的変化センサーコンポーネントとターゲットおよび細孔含有成分との相互作用により、可変レジスターの位置に機械的変化が生じる。」(本c)、同【0053】には「両方の配列検出システムは、機械的変化センサーコンポーネントによって生成された機械信号を電気信号に変換することにより、出力電圧信号を生成する。両方の配列検出システムは、出力信号の計算分析を使用して、ターゲット配列内のオブジェクトまたはエンティティのタイプの配列を識別するために一緒に使用される複数の派生値を生成する。」(本c)、同【0055】には「分析サブシステム1502は、セル1504などの複数のセルから配列情報を連続的に収集し、各配列を特定のターゲットによって生成された配列のグループに割り当て、その後、各ターゲットのタイプから得られた配列のグループから各々の異なるタイプのターゲットについてコンセンサス配列を集める。並列処理を使用すると、複数のターゲットについて迅速かつ効率的なコンセンサス配列決定ができる。」(本d)、同【0066】には「ポリンチャネル内のDNAポリマーテザーの位置付けは、ポリンチャネルを通るイオン流に対する抵抗を変化させ、DNAポリメラーゼの活性側へのデオキシヌクレオチド三リン酸の特異的な取り込みによって生成される機械的な機械的-変化信号を、図14A~14Bを参照して先に論じた電流-電圧変換回路により、出力電圧信号に変換される。」(本d)、同【0068】には「DNAポリマーテザー2402には、ある種の実施形態において、介してDNAポリマーテザーがDNAポリメラーゼに結合するリンカー2404、ポリメラーゼフラグメントがポリン内に落ち着いた(seat)場合にポリメラーゼフラグメントおよびレポーター領域上の結合点からの距離に広がる十分な数のデオキシヌクレオチドモノマーを含むプレレポーター領域2406、一般に少なくとも4つのデオキシヌクレオチドモノマーを含むレポーター領域2408、および数個から数十個のデオキシヌクレオチドモノマー2410を含み得るポスト-レポーター領域が含まれる。レポーター領域2408は、DNAポリメラーゼが種々の異なるコンホメーションを示し、ポリンに対して異なる位置を示し、および/または第2の配列検出システムの機械的変化センサーコンポーネントによって示される機械的変化を一緒に含むポリンに対して異なる方向を示す場合にポリンチャネル内の狭窄部内にある領域である。」(本d)との記載があり、これらの記載に対応する図面として図13、図22A、図22B、図24(いずれも本e)が開示されている。 そして、本願明細書の【0070】には「異なるレポーター領域デオキシヌクレオチドモノマー配列を有するDNA-ポリマーテザーを用いた実験は、多数の低電流で高抵抗のレポーター領域配列および多数の高電流で低抵抗のレポーター領域配列の同定につながった。図25に、低電流、高抵抗の4デオキシヌクレオチドモノマー配列および高電流、低抵抗の4デオキシヌクレオチドモノマー配列の多数の例を示す。低電流配列は第1列2502に示され、高電流配列は第2列2504に示されている。」(本e)、同【0071】には「図26A~26Bは、1つの例において、DNAポリマーテザー配列設計を介した機械的-電気的信号変換の応答性の調整を示している。」(本e)との記載があり、それらに対応する図25、図26A~26Bが開示されていることからすると、DNAポリマーテザーのレポーター領域のヌクレオチド配列を調整すれば、機械的-電気的信号変換の応答性の調整を行えることが一応説明されているといえる。 しかし、本願明細書には、【0070】及び【0071】の記載並びに図25及び図26A~26Bが、具体的な実験結果に基づくものであることを窺わせる記載は見当たらないし、「低電流、高抵抗」と「高電流、低抵抗」を区別する基準等も何ら具体的に記載されてない。加えて、実際に、一意的にターゲット内のヌクレオチド配列を決定できる電気信号(電圧信号)を提供する「レポーター領域」が具体的に如何なるヌクレオチド配列を有するのか、当該「レポーター領域」と「プレレポーター領域」及び「ポスト-レポーター領域」とが如何にして区別されるのか等についても、本願明細書で何ら具体的に説明されていない。 一方、本願明細書の【0073】には「しかしながら、付加された各デオキシヌクレオチドを識別するには、さらなる技術が必要である。」(本d)と記載され、同【0074】に「図28Aは、DNAポリメラーゼの活性側内にある4タイプのデオキシヌクレオチド三リン酸の平均電圧範囲(mean-voltage-magnitude range)のプロットを示している。4つの範囲すべてがある程度重複しており、デオキシチミジン三リン酸、デオキシアデノシン三リン酸、およびデオキシシトシン三リン酸の平均電圧信号範囲(average voltage-signal-magnitude range)は互いに大きく重複している。…4つのデオキシヌクレオチド三リン酸を完全に区別するために、アデニン2812の代わりに、修飾アデニン塩基2810、7-デアザアデニンが使用される。修飾デオキシアデノシン様三リン酸がDNAポリメラーゼの活性部位内に存在する場合、DNAポリメラーゼは、デオキシアデノシン三リン酸が活性部位内に存在する場合にDNAポリメラーゼが占めるコンホメーションとは著しく異なるコンホメーションを占める。その結果、2次元プロット2816の修飾デオキシアデノシン様三リン酸2814の面積範囲は、デオキシチミジン三リン酸2818の面積範囲ともはや同一の広がりを有さず、それが活性部位に存在する場合に生成する出力電圧信号から生成する平均電圧信号および標準偏差派生値に基づいて4つの異なるデオキシヌクレオチド三リン酸すべてが明確に識別できる。」(本e)との記載があり、4タイプのデオキシヌクレオチド三リン酸の平均電圧範囲のすべてがある程度重複しているものの、修飾デオキシアデノシン様三リン酸を用いれば、電気信号の2以上の派生値のマッピングで完全に識別できることが一応説明されている。 しかし、図28A(本e)等の結果が、具体的に如何なる「プレレポーター領域」、「レポーター領域」、「ポスト-レポーター領域」を含むDNAポリマーテザーを用いて得られたものであるのか、具体的に如何なる平均電圧信号範囲、派生値に基づき作成されたものか等の詳細は、本願明細書で何ら説明されていないし、4つのデオキシヌクレオチド三リン酸を完全に区別し得るとされる「7-デアザアデニル」も、本願発明では、「選択され」る「デオキシヌクレオチドモノマー」の一つに過ぎないことが規定されているため、本願発明の「デオキシヌクレオチドモノマー」を用いても、4つの異なるデオキシヌクレオチド三リン酸を明確に識別できると理解することはできない。 そして、一つのヌクレオチドの大きさが1nm程度で、しかも、ヌクレオチドが予測不能なランダムかつ高速な動きをすることが当業者に知られており、本願出願日当時、各ヌクレオチドの形状を識別できるレベルで正確に把握し得る一般的な技術手段がなかったことを勘案すると、【0052】(本c)に記載された「ポリメラーゼフラグメントの形状の変化、ポリンに関するポリメラーゼフラグメントの相対的位置の変化、および/またはポリンに関するポリメラーゼフラグメントの向きの変化」、「ポリメラーゼフラグメントの形状の変化」に応じた「DNAポリマーテザーのレポーター領域の位置によって変化するイオンの流れに対する抵抗値」から生じる電気信号(出力電圧信号)だけで、実際にターゲット内のヌクレオチド配列を決定できるとは、本願出願時の当業者といえども理解できないといえる。 そうすると、本願明細書の記載及び本願出願時の技術常識に照らしても、当業者はターゲット内のヌクレオチド配列を一意的に決定できる電気信号(電圧信号)を提供する「(c)…DNAポリマーテザー」が、具体的に如何なる「プレレポーター領域」、「レポーター領域」、「ポスト-レポーター領域」を含むのか、理解できないので、本願発明の「機械的変化-信号変換器」と「分析サブシステム」を用いても、実際にターゲット内のヌクレオチド配列を決定することは当業者にとって技術的に困難であったと解される。 したがって、本願発明の「(b)…機械的変化-信号変換器」、「(d)…分析サブシステム」を具現化し、本願発明で規定されているように、「機械的変化-信号変換器」が、DNAポリマーテザーのレポーター領域の位置によって変化するイオンの流れに対する抵抗値を電気信号に変換し、「分析サブシステム」が、その電気信号を処理してターゲット内のオブジェクトタイプの配列(ヌクレオチド配列)を決定し、その配列をコンピュータディスプレイデバイス上に出力するように実際に機能させることは、当業者に過度の試行錯誤・実験を要するものと認められ、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるとはいえない。 2.理由2(サポート要件)の検討 (1)本願発明が解決しようとする課題 本願明細書の【0003】に「本明細書では、ターゲット内のエンティティと特異的に相互作用する場合に1つまたはそれを超える機械的変化を示す機械的変化センサーを含む検出システムを論じる。各エンティティは、タイプ、1つまたはそれを超える機械的変化を信号に変換する機械的変化-信号トランスデューサー、および信号を使用してターゲット内のエンティティのタイプを決定する分析サブシステムを有する。」と記載されていることと、本願発明の発明特定事項を合わせ考慮すると、本願発明が解決しようとする課題は、ターゲット内のヌクレオチドのタイプの配列を決定できる配列検出システムを提供することにあると認められる。 (2)本願発明のサポート要件の判断 上記の1で検討したとおり、本願明細書の記載及び本願の出願時の技術常識に照らしても、ターゲット内のヌクレオチド配列を一意的に決定できる電気信号(電圧信号)を提供する「(c)…DNAポリマーテザー」が、具体的に如何なる「プレレポーター領域」、「レポーター領域」、「ポスト-レポーター領域」を含むのか、本願出願時の当業者は理解できない。 そうすると、DNAポリマーテザーのレポーター領域の位置によって変化するイオンの流れに対する抵抗値を電気信号に変換する「(b)…機械的変化-信号変換器」、及びその電気信号を処理してターゲット内のオブジェクトタイプの配列を決定し、その配列をコンピュータディスプレイデバイス上に出力する「(d)…分析サブシステム」を含む本願発明の「配列検出システム」が、上記(1)で示した課題を解決できることを当業者が理解できるとはいえない。 したがって、本願発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であるとは認められない。 3.審判請求人の主張について 審判請求人は、令和6年5月15日付けで当審が通知した拒絶理由に対する意見書において、 (1)本願の図面およびそれらの説明文の記載事項を述べ、それらの記載に基づき、「第2のタイプ」の「ターゲット」、「エンティティ」、「機械的変化センサー」、「機械的カプラー」を具体的なものに特定することで各要素が明確になったこと、 (2)レポーター領域はレポーター領域内のデオキシヌクレオチドモノマーの特定の配列に応じて、ポリンチャネルを通るイオン電流の流れに異なる抵抗を提供し、段落【0069】~【0071】および関連図を参照すると、高電流・低抵抗のレポーター領域または低電流・高抵抗のレポーター領域は、レポーター領域内の特定のデオキシヌクレオチドモノマー配列に関連しており、機械的変化-信号変換器の応答性を変化させることができ、DNAポリメラーゼの構造変化によるレポーター領域の変位に応答する電流の流れは、DNAポリマーテザーのレポーター領域内のデオキシヌクレオチド配列を慎重に設計することで正確に調整可能なこと 等を縷々述べ、拒絶理由はすべて解消している旨主張する。 しかし、上記(2)の主張は、本願明細書の記載を繰り返しているに過ぎず、ターゲット内のヌクレオチド配列を一意的に決定できる電気信号(電圧信号)を提供する「(c)…DNAポリマーテザー」が、具体的に如何なる「プレレポーター領域」、「レポーター領域」、「ポスト-レポーター領域」を含むのかを明らかにするものではない。 そして、上記(1)の主張である「ターゲット」、「エンティティ」、「機械的変化センサー」、「機械的カプラー」が、本願明細書に記載されたものに限定されたとしても、上記1で検討したとおり、本願発明の「(b)…機械的変化-信号変換器」、「(d)…分析サブシステム」を具現化し、本願発明で規定されているように、「機械的変化-信号変換器」が、DNAポリマーテザーのレポーター領域の位置によって変化するイオンの流れに対する抵抗値を電気信号に変換し、「分析サブシステム」が、その電気信号を処理してターゲット内のオブジェクトタイプの配列(ヌクレオチド配列)を決定し、その配列をコンピュータディスプレイデバイス上に出力するように機能させることは、当業者に過度の試行錯誤・実験を要するものであって、理由1(実際可能要件)を充足するものとはいえない。 また、そのような具現化することが困難な本願発明は、本願明細書に記載された発明であるとはいえず、加えて、「機械的変化-信号変換器」及び「分析サブシステム」を含む本願発明が、上記2(1)で示した課題を解決できることを当業者が理解することもできないから、理由2(サポート票件)を充足するものともいえない。 したがって、審判請求人の主張は、いずれも理由がない。 第6 むすび 以上のとおり、本願は、本願発明(請求項7に係る発明)について、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載が、同法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-021180

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