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特許拒絶査定不服審判

2022-020192

大規模分配タイミング、較正、および制御システム

審判番号
2022-020192
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-542811外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年12月13日
審決日
2023年09月20日
公報発行日
2023年10月27日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (H04L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-542811「大規模分配タイミング、較正、および制御システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 元年 8月15日国際公開、WO2019/153048、令和 3年 5月20日国内公表、特表2021-513277、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、2019年(平成31年)2月8日(優先権主張 外国庁受理 2018年2月8日 オーストラリア)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。

令和 3年10月 5日付け 拒絶理由通知書

12月23日 意見書・手続補正書

令和 4年 1月18日付け 拒絶理由通知書(最後)

4月13日 意見書

8月30日付け 拒絶査定

12月13日 審判請求書

第2 本願発明

本願の請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明4」という。)は、令和3年12月23日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりである。

「 【請求項1】
一連の遠隔光受信機点と光送信点とを有するフェイズドアレイレーダの距離同期の方法であって、
(a)前記光送信点から前記一連の遠隔光受信機点の各々に送信された光タイミングパルスを、前記一連の遠隔光受信機点の各々から前記光送信点に返送することと、
(b)前記光タイミングパルスの往復時間を決定することと、
続きを表示(全17行)
(c)前記光タイミングパルスの前記往復時間の指標尺度を格納し、前記一連の遠隔光受信機点の各々と前記光送信点との間の前記指標尺度をフェイズドアレイ計算に入れることによって前記一連の遠隔光受信機点によって受信された信号のタイミングを調整することと
を行うステップを含む、方法。
【請求項2】
前記遠隔光受信機点において受信された信号のタイミングを調整するために、前記ステップ(a)~(c)を反復的に繰り返すことをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フェイズドアレイレーダのタイミングシステムであって、
送信ユニットから一連の受信機ユニットに光タイミング信号を送信するための前記送信ユニットと、
前記送信ユニットに相互接続され、前記光タイミング信号を受信し、前記光タイミング信号を前記送信ユニットに再送信して返すように適応された前記一連の受信機ユニットと、
前記送信ユニットと前記一連の受信機ユニットとの間の信号遅延を反復的に決定するための遅延計算ユニットと、
前記一連の受信機ユニットの各々と前記送信ユニットとの間の前記決定された信号遅延をフェイズドアレイ計算に入れることによって前記一連の受信機ユニットによって受信された信号のタイミングを調整するための信号調整ユニットと
を含む、タイミングシステム。
【請求項4】
前記受信機ユニットは、前記光タイミング信号を受信し、前記受信機ユニットによる使用のための対応する電気タイミング信号に変換するための光変換ユニットをさらに含む、請求項3に記載のタイミングシステム。」

第3 原査定の概要

令和4年8月30日付け拒絶査定(以下、「原査定」という。)の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の請求項1~4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の文献2に記載された発明及び文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

文献1.特開2009-206735号公報

文献2.特開2013-76665号公報

第4 引用文献の記載事項

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1 引用文献の記載

原査定の拒絶の理由に引用された特開2013-76665号公報(以下、「引用文献」という。)には、次の記載がある。なお、下線は強調のために当審で付した。

(1)「【背景技術】
【0002】
近年、レーダの分解能向上のため、複数のアンテナを広範囲に分散させて配置し、各分散配置されたアンテナを光ファイバ等で接続する構成が必要とされている。配置する範囲が広範囲になるため、各分散配置アンテナへ接続する複数本の光ファイバの長さは非常に長くなり、また、上記の複数本の光ファイバの配置形状は並行ではなく、放射状にする必要が有る。分散配置アンテナでは、各々の光ファイバの設置場所が異なっているため、光ファイバは、温度差や温度変化等により、長さが変化する。光ファイバの長さの変化については、全ての光ファイバが一様に膨張あるいは収縮するようであればビーム形成の際の位相は一様に変化するため問題にならないが、長さの変動が各光ファイバで一様にならなければ、複数の分散配置アンテナの設定位相が等位相にならず、合成利得が減少する問題がある。このため、従来、複数の分散配置アンテナを接続する伝送路の温度差や温度変化等による位相の変化を補償する通信装置としては、送信信号を各伝送路経由でそれぞれの各分散配置アンテナに送信し、複数系統のうち1系統のみをスイッチで導通から短絡に切り替えて、導通系と短絡系を含む各系統の反射波を合成器で合成後の反射成分から位相を検出し、補正する構成のもの(例えば、特許文献1参照)がある。」
(2)「【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明を実施するための実施の形態1におけるレーダ装置の構成を示すものである。図1においてアンテナ設備1はそれぞれ分散した位置に配置され、たとえば、同一の目標を探知する場合など、各アンテナ設備1間の送信信号の位相差を制御することでビーム合成を行い、実質的に、各アンテナ設備1を設置した範囲と同等の大きさを持ったアンテナを使用すると同様の効果を得ることができる。また、地上設備2は、上記機能を実現するため、分散した位置に配置されたアンテナ設備1に伝送路3を使用して、位相を制御した送信信号を供給するが、アンテナ設備1の分散する範囲が広く、長距離の伝送を低損失で行う必要があるため、地上設備2からアンテナ設備1への通信伝送は、送信信号を光信号に変換して行っている。伝送路3については、図に示すように、それぞれのアンテナ設備1と地上設備2間は異なる場所どうしを接続するものであるため、日なた、日陰の違いなど、温度等の環境も異なるものとなり、地上設備2では、前記機能のほか、送信信号の、伝送路3間の透過位相やその透過位相の変化による信号位相のずれを補正する機能も必要である。
【0012】
図2は、本発明を実施するための実施の形態1における通信装置およびレーダ装置の回路系統図を示すものである。
図2において、レーダ送信を行う信号を発生する信号出力部4は、送信信号を電気信号として発生する信号発生手段5、電気信号を光信号に変換する電光変換手段6を信号生成部として備え、光信号に変換された送信信号を送信する光ファイバ7、光ファイバ7から出力される光信号を複数の送信信号に分配する分配手段としての光分配手段8で構成される。
信号出力部4から出力される複数の送信信号は、各々光伝送路9a、9bに入力される。送信信号を伝送する光伝送路9aは、光信号を伝送する光ファイバ10aと、光信号の遅延を調整する光遅延手段11aで構成され、同様に光伝送路9bは、光信号を伝送する光ファイバ10bと、光信号の遅延を調整する光遅延手段11bで構成される。光伝送路9aに参照信号出力部12a経由で入力し、信号反射部13a経由で出力される送信信号は、光電変換手段14aにより電気信号に変換されてアレイアンテナ15aに伝送され、アレイアンテナ15aにより空間に送信される。同様に、光伝送路9bに参照信号出力部12b経由で入力し、信号反射部13b経由で出力される送信信号は、光電変換手段14bにより電気信号に変換されてアレイアンテナ15bに伝送され、アレイアンテナ15bにより空間に送信される。」
(3)「【0018】
光伝送路9a、9bの透過位相を比較するための光参照信号は、信号発生手段17で発生され、電力分配手段18で複数系統に分配され、電光変換手段19a、19bで電気信号から、送信信号とは周波数が異なる光信号に変換される。その後、光伝送路9a、9bの透過位相を測定するため、光サーキュレータ20a、20b、光合波手段21a、21b経由で光伝送路9a,9bに入力され、光遅延手段11a、11b、光ファイバ10a、10bを経由後、光分波手段22a、22bで送信信号から分波され、光参照信号のみ光反射手段23a、23bで反射する。光参照信号の反射信号は、再度光分波手段22a、22b、光ファイバ10a、10b、光遅延手段11a、11bを経由後、光合波手段21a、21bで分波され、光サーキュレータ20a、20bを経由して出力される。
光サーキュレータ20a、20bから出力した反射信号はそれぞれ、光電変換手段24a、24bで光信号から電気信号に変換後、位相比較手段25にて位相比較される。
遅延制御手段26では、位相比較手段25の出力した位相差を基に、光伝送路9a、9bについて補正する光路長を算出し、光遅延手段11a、11bの遅延量を制御する。」

(4)図1

[図:0001402576000001.jpg]

図1及び【0011】の「図1は、本発明を実施するための実施の形態1におけるレーダ装置の構成を示すものである。」との記載によれば、「レーダ装置」は、「アンテナ設備1」、「地上設備2」及び「伝送路3」から構成される。

(5)図2

[図:0001402576000002.jpg]

図1及び図2を参照すると、図1における「伝送路3」は、明らかに図2における「光伝送路9a、9b」に対応すると解される。

また、図2における「アレイアンテナ15a、15b」は、明らかに図1の「アンテナ設備1」に備わると解される。

そうすると、図2において「光伝送路9a、9b」の右側に接続される「光分波手段22a、22b」、「光反射手段23a、23b」、「光変換手段14a、14b」及び「アレイアンテナ15a、15b」は、図1における「アンテナ設備1」を構成すると解される。

また、図2において「光伝送路9a、9b」の左側に接続される「信号発生手段5」、「電光変換手段6」、「光ファイバ7」、「光分配手段8」、「信号発生手段17」、「電力分配手段18」、「電光変換手段19a、19b」、「光サーキュレータ20a、20b」、「光合波手段21a、21b」、「光電変換手段24a、24b」、「位相比較手段25」及び「遅延制御手段26」は、図1における「地上設備2」を構成すると解される。

2 引用発明の認定

前記1の記載によれば、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、引用発明を構成a~hに分説し、「構成a」のようにして参照する。

「a 各アンテナ設備1間の送信信号の位相差を制御することでビーム合成を行い、実質的に、各アンテナ設備1を設置した範囲と同等の大きさを持ったアンテナを使用すると同様の効果を得ることができるレーダ装置であって、(【0011】)
b レーダ装置は、アンテナ設備1、地上設備2及び伝送路3から構成され、(図1)
c 光分波手段22a、22b、光反射手段23a、23b、光変換手段14a、14b及びアレイアンテナ15a、15bは、アンテナ設備1を構成し、(図2)
d 信号発生手段17、電力分配手段18、電光変換手段19a、19b、光サーキュレータ20a、20b、光合波手段21a、21b、光電変換手段24a、24b、位相比較手段25及び遅延制御手段26は、地上設備2を構成し、
e 光伝送路9a、9bの透過位相を比較するための光参照信号は、信号発生手段17で発生され、電力分配手段18で複数系統に分配され、電光変換手段19a、19bで電気信号から、送信信号とは周波数が異なる光信号に変換され、その後、光サーキュレータ20a、20b、光合波手段21a、21b経由で光伝送路9a,9bに入力され、光遅延手段11a、11b、光ファイバ10a、10bを経由後、光分波手段22a、22bで送信信号から分波され、(【0018】)
f 光参照信号のみ光反射手段23a、23bで反射し、光参照信号の反射信号は、再度光分波手段22a、22b、光ファイバ10a、10b、光遅延手段11a、11bを経由後、光合波手段21a、21bで分波され、光サーキュレータ20a、20bを経由して光電変換手段24a、24bで光信号から電気信号に変換後、位相比較手段25にて位相比較され、(【0018】)、
g 遅延制御手段26では、位相比較手段25の出力した位相差を基に、光伝送路9a、9bについて補正する光路長を算出し、光遅延手段11a、11bの遅延量を制御する、(【0018】)
h レーダ装置。」

第5 本願発明1の進歩性の有無

後の参照の便宜のため、本願の請求項1を次の1A~1Eのように分説し、「発明特定事項1A」のようにして参照する。

【請求項1】

1A 一連の遠隔光受信機点と光送信点とを有するフェイズドアレイレーダの距離同期の方法であって、

1B (a)前記光送信点から前記一連の遠隔光受信機点の各々に送信された光タイミングパルスを、前記一連の遠隔光受信機点の各々から前記光送信点に返送することと、

1C (b)前記光タイミングパルスの往復時間を決定することと、

1D (c)前記光タイミングパルスの前記往復時間の指標尺度を格納し、前記一連の遠隔光受信機点の各々と前記光送信点との間の前記指標尺度をフェイズドアレイ計算に入れることによって前記一連の遠隔光受信機点によって受信された信号のタイミングを調整することと

1E を行うステップを含む、方法。

1 引用発明との対比

本願発明1と引用発明とを対比すると、次の(1)~(6)のとおりである。

(1)発明特定事項1Aについて

ア 本願明細書の「送信光制御ユニット(TOCU)2は、受信光コントローラユニット(ROCU)、例えば3、4、5を備える一連の受信機への光送信を提供する。ROCUは、光信号の伝送を提供するためにTOCUと相互作用する。伝送光ファイバ6は、100MHzのクロック、1PPS(one pulse per second)エポッククロック、およびイーサネット(登録商標)制御ならびにステータス信号を含む。」(【0020】)との記載によれば、本願発明1の「光送信点」及び「遠隔光受信機点」は、それぞれ本願明細書の「TOCU」及び「ROCU」に対応するものであり、本願発明1の「光送信点」は、伝送光ファイバ6に対して光信号を送信する装置であり、本願発明1の「遠隔光受信機点」は、伝送光ファイバ6から光信号を受信する装置であると解される。

イ 本願明細書の「光信号は、一連のデジタル受信機10との相互接続のために、ROCU、例えば3によって、対応する銅ワイヤベースの信号8に変換される。」(【0021】)との記載によれば、本願発明1の「遠隔光受信機点」は、光信号を電気信号に変換する装置であると解される。

ウ 前記アの解釈によれば、引用発明の「アンテナ設備1」及び「地上設備2」は、それぞれ本願発明1の「遠隔光受信機点」及び「光送信点」に対応すると解される。

さらに、前記イの解釈も考慮すると、引用発明の「アンテナ設備1」のうち、「光分波手段22a、22b」、「光反射手段23a、23b」及び「光電変換手段14a、14b」の部分が本願発明1の「遠隔光受信機点」に相当すると認められる。

エ 引用発明の「レーダ装置」は「アレイアンテナ15a、15b」を備える。よって、本願発明1の「フェイズドアレイレーダ」と引用発明の「レーダ装置」とは、「アレイレーダ」である点で共通する。

オ 引用発明の「レーダ装置」は、「各アンテナ設備1間の送信信号の位相差を制御することでビーム合成を行い、実質的に、各アンテナ設備1を設置した範囲と同等の大きさを持ったアンテナを使用すると同様の効果を得ること」(構成a)を意図するものである。

そして、引用文献には、背景技術として「分散配置アンテナでは、各々の光ファイバの設置場所が異なっているため、光ファイバは、温度差や温度変化等により、長さが変化する。」、「長さの変動が各光ファイバで一様にならなければ、複数の分散配置アンテナの設定位相が等位相にならず、合成利得が減少する問題がある。」(【0002】)との記載がある。

前記背景技術の記載に鑑みれば、引用発明において「送信信号の位相差を制御することでビーム合成を行う」ことは、各光ファイバーの長さ変動が一様でない場合にも、各アンテナの設定位相が等位相となるようにして、合成利得を増大させることだと解される。

そうすると、引用発明における「各アンテナ設備1間の送信信号の位相差を制御すること」(構成a)は、各光ファイバの長さ、すなわち、距離を等しくさせる距離同期をするための方法であると認められる。

カ 前記ウ~オを総合すると、本願発明1と引用発明とは、「一連の遠隔光受信機点と光送信点とを有するアレイレーダの距離同期の方法であ」る点で共通する。

(2)発明特定事項1Bについて

ア 引用発明の「光参照信号」は、本願発明1の「光タイミングパルス」に対応し、両者は、距離同期を取るためのタイミングを測るための信号という意味で、「光タイミング信号」といえる。

イ 引用発明の「光参照信号」は、「電光変換手段19a、19b」、「光サーキュレータ20a、20b」及び「光合波手段21a、21b」を経由して「光伝送路9a,9b」に入力され、「光分波手段22a、22b」に到達する(構成e)。

引用発明の「電光変換手段19a、19b」、「光サーキュレータ20a、20b」及び「光合波手段21a、21b」は、「地上設備2」を構成するものであり(構成d)、本願発明1の「光送信点」に相当する。。

また、前記(1)ウによれば、引用発明の「光分波手段22a、22b」は、本願発明1の「遠隔光受信機点」に相当する。

ウ 引用発明においては、「光参照信号」が「光反射手段23a、23b」で反射され、「光合波手段21a、21b」すなわち「地上設備2」に到達する(構成f)。

前記(1)ウによれば、「光反射手段23a、23b」は、本願発明1の「遠隔光受信機点」に相当する。

エ 前記ア~ウを総合すると、本願発明1と引用発明とは、「(a)前記光送信点から前記一連の遠隔光受信機点の各々に送信された光タイミング信号を、前記一連の遠隔光受信機点の各々から前記光送信点に返送すること」を含む点で共通する。

(3)発明特定事項1Cについて

引用発明においては、「光参照信号の反射信号」は、電気信号に変換後、「位相比較手段25にて位相比較され」る(構成f)。

前記(1)オに示した引用文献の【0002】の記載によれば、光参照信号の位相差は、各光ファイバの長さ変動による光参照信号の往復時間の差であると解され、この差は、それぞれの光ファイバに参照信号を往復させた実際の往復時間によって決定されると認められる。

したがって、引用発明の「位相比較」は、本願発明1の「往復時間を決定すること」に相当する。

以上によれば、本願発明1と引用発明とは、「(b)前記光タイミング信号の往復時間を決定すること」を含む点で共通する。

(4)発明特定事項1Dについて

前記(3)によれば、引用発明の「位相差」(構成g)は、本願発明1の「指標尺度」に対応する。

また、引用発明の「各アンテナ設備1間の送信信号の位相差を制御すること」(構成a)は、引用発明の「前記一連の遠隔光受信機点によって受信された信号のタイミングを調整すること」に相当する。

しかしながら、引用発明においては、位相差を格納すること、及び、位相差をフェイズドアレイ計算に入れることを構成として備えない点で、本願発明1と相違する。

よって、本願発明1と引用発明とは、「(c)前記光タイミング信号の前記往復時間の指標尺度によって前記一連の遠隔光受信機点によって受信された信号のタイミングを調整すること」を含む点で共通する。

(5)発明特定事項1Eについて

前記(2)~(4)で本願発明1と共通するとした引用発明の構成は、それぞれがステップであって、「位相差を制御することでビーム合成を行う」(構成a)方法を構成するものである。

そうすると、本願発明1と引用発明とは、「を行うステップを含む、方法」である点で一致する。

(6)前記(1)~(5)によれば、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

〈一致点〉

「一連の遠隔光受信機点と光送信点とを有するアレイレーダの距離同期の方法であって
(a)前記光送信点から前記一連の遠隔光受信機点の各々に送信された光タイミング信号を、前記一連の遠隔光受信機点の各々から前記光送信点に返送することと、
(b)前記光タイミング信号の往復時間を決定することと、
(c)前記光タイミング信号の前記往復時間の指標尺度によって前記一連の遠隔光受信機点によって受信された信号のタイミングを調整することと
を行うステップを含む、方法。」である点。

〈相違点1〉

本願発明1の距離同期は、「フェイズドアレイレーダ」を対象としているのに対し、引用発明の位相同期は、「アレイアンテナ15a、15b」を備える「レーダ装置」を対象とするものであって、「フェイズドアレイレーダ」を対象としているか否かが不明である点。

〈相違点2〉

本願発明1の光タイミング信号すなわち「光タイミングパルス」は、「パルス」であるのに対し、引用発明の光タイミング信号すなわち「参照信号」は、「パルス」であるか否かが不明である点。

〈相違点3〉

本願発明1では「指標尺度」を格納しており、信号のタイミングを調整するために「前記一連の遠隔光受信機点の各々と前記光送信点との間の前記指標尺度をフェイズドアレイ計算に入れる」ものであるのに対し、引用発明は「位相差」を格納しておらず、「位相差」を「フェイズドアレイ計算に入れる」ことはしていない点。

2 相違点についての判断

事案に鑑み、相違点3について検討する。

引用発明は、「光ファイバ10a、10b」の前に「光遅延手段11a、11b」を備えており、「位相差」に基づいて「光伝送路9a、9bについて補正する光路長を算出し、光遅延手段11a、11bの遅延量を制御する」(構成g)ものである。つまり、引用発明においては、「位相差」が決定されると、「光遅延手段11a、11b」の遅延量を制御して、各光伝送路の光路長が等しくなるように制御している。

引用発明において、「アレイアンテナ15a、15b」がフェイズドアレイアンテナとして機能しているか否か、及び複数の「アンテナ設備1」が全体としてフェイズドアレイアンテナとして機能しているか否かは不明であるが、仮にこれらがフェイズドアレイアンテナとして機能しているとしても、各アンテナ設備1への光伝送路の光路長は前述のように等しくなるように制御されているのであるから、引用発明においてフェイズドアレイアンテナの制御を行う上では、各光伝送路の「位相差」はなくなっており、これをフェイズドアレイ計算に用いる必要はないし、「位相差」を格納する必要もない。

したがって、相違点3に係る本願発明1の構成は、引用発明から容易に想到し得るものではない。

3 本願発明1の進歩性の有無についての小括

前記2のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者が引用発明から容易に発明をすることができたものとは認められない。

第6 本願発明2~4の進歩性の有無

本願発明2は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに別の発明特定事項を付加したものであるから、本願発明2と引用発明とは、少なくとも前記第5、1(6)に示した相違点3において相違する。

よって、前記第5、2のとおりであり、本願発明2は、当業者が引用発明から容易に発明をすることができたものとは認められない。

本願発明3は、「前記一連の受信機ユニットの各々と前記送信ユニットとの間の前記決定された信号遅延をフェイズドアレイ計算に入れることによって前記一連の受信機ユニットによって受信された信号のタイミングを調整する」という、発明特定事項1Dと同様の発明特定事項を有するから、本願発明3と引用発明とは、前記第5、1(6)に示した相違点3と同様の相違点を有する。

よって、前記第5、2と同様の理由により、本願発明3は、当業者が引用発明から容易に発明をすることができたものとは認められない。

本願発明4は、本願発明3の発明特定事項を全て含み、さらに別の発明特定事項を付加したものであるから、本願発明4は、当業者が引用発明から容易に発明をすることができたものとは認められない。

第7 むすび

前記第5及び第6のとおり、本願発明1~4は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-020192

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