特許拒絶査定不服審判
2022-020023
医薬組成物用のドラッグデリバリーデバイス
- 審判番号
- 2022-020023
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-246776
- 請求日
- 2022年12月09日
- 審決日
- 2024年04月16日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】サン ファーマシューティカル インダストリーズ リミテッド
- 【請求人代理人】小野 誠
- 【請求人代理人】金山 賢教
- 【請求人代理人】坪倉 道明
- 【請求人代理人】重森 一輝
- 【請求人代理人】安藤 健司
- 【請求人代理人】市川 英彦
- 【請求人代理人】櫻田 芳恵
- 【請求人代理人】川嵜 洋祐
- 【請求人代理人】飯野 陽一
- 【請求人代理人】市川 祐輔
- 【請求人代理人】岩瀬 吉和
- 【請求人代理人】城山 康文
- 審判長/審判官
- 審判長 佐々木 正章
- 審判官 栗山 卓也
- 審判官 井上 哲男
- 分類
- P18 .121-WZ (A61J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-246776「医薬組成物用のドラッグデリバリーデバイス」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 7月11日出願公開、特開2019-111112〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年12月22日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和 3年 9月 2日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 4月 4日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 4年 8月 4日付け:拒絶査定
令和 4年12月 9日 :審判請求書及び手続補正書の提出
令和 5年 5月23日付け:拒絶理由通知書
令和 5年11月29日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1~9に係る発明は、令和 5年11月29日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
持続放出型の経口懸濁液をイン・サイチュ(in situ)調製するためのドラッグデリバリーデバイスであって、該デバイスは、
a)懸濁ベースを含む第一のチャンバーと、
b)放出制御剤でコーティングされた有効成分のコアを含む固体組成物を含むプランジャー内に入れられたリザーバー、但し、前記固体組成物は、第二のチャンバー内で40℃/75%相対湿度で少なくとも3ヶ月間にわたり安定であり、前記プランジャーは、60°以下の角度で実質的に尖っていない連続領域と共に1以上の鋭い突起部を含む、及び、内部に前記プランジャーを収容するプラグ、但し、前記プラグは、第一のチャンバーと第二のチャンバーとを隔てる高分子膜を含み、前記高分子膜は、約0.10mm以上の厚さを有し、約5.0g/m2/日未満の水蒸気透過度を有し、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、及び高密度ポリエチレン(HDPE)からなる群から選択される高分子材料から成る、を含む第二のチャンバーと、
を備え、
プランジャーの作動により高分子膜が破壊され、第二のチャンバーから懸濁ベースへの固体組成物の流れが生じ、その結果、第一のチャンバー内に持続放出型の経口懸濁液が形成され、
高分子膜の周囲の少なくとも一部であって但し50%以下が、プランジャーの作動後、プラグに張り付いたままである、
前記ドラッグデリバリーデバイス。」
第3 拒絶の理由
当審が令和 5年 5月23日付けで通知した拒絶理由は、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
記
引用文献
1.国際公開第2017/191485号
2.特開2003-159328号公報
3.特開2001-9006号公報
4.特開2005-6945号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載事項
上記引用文献1には、次の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。付記した訳文は、上記引用文献1のパテントファミリーである特表2019-514573号公報の記載に基づき、当審が作成した。
ア「Liquid pharmaceutical compositions are convenient dosage forms for oral administration particularly for geriatric and pediatric patients in comparison to solid dosage forms such as tablets and capsules. They are easy to administer which leads to enhanced patient compliance. Additionally, liquid pharmaceutical compositions provide a unique advantage of having a flexible dosing regimen. Liquid pharmaceutical compositions are generally in the form of a solution or a suspension, wherein the active ingredient remains in the dissolved or dispersed form in a pharmaceutically acceptable vehicle such as water.」(第1ページ第12-19行)(液体医薬組成物は、固体剤形、例えば錠剤及びカプセル剤と比較して、特に老人患者及び小児患者への経口投与のための好適な剤形である。それらは投与し易く、患者コンプライアンスの向上につながる。更に、液体医薬組成物は、柔軟な投薬計画を有する独自の利点を提供する。液体医薬組成物は、一般に、薬学的に許容される媒体、例えば水に有効成分が溶解又は分散した形態のまま存在する溶液又は懸濁液の形態をとる。)
イ「Further, the pack also ensures that there is no permeation of moisture into the chamber having solid composition comprising the active ingredient, and the stability of the active ingredient remains unaffected during storage.」(第2ページ第23-26行)(パックは更に、有効成分を含む固体組成物を有するチャンバー内への湿分の浸透が一切なく、且つ貯蔵中に有効成分の安定性が影響を受けないままであることを保証する。)
ウ「A first aspect of the invention provides a dual-chamber pack comprising:
(a) a first chamber comprising a container; and
(b) a second chamber comprising a reservoir, a biphasic connector, a plunger, and a plug with a breakable polymeric membrane.
According to one embodiment of the above aspect, the container of the first chamber is prefilled with a pharmaceutically acceptable vehicle and the reservoir of the second chamber is prefilled with a solid composition of an active ingredient. Alternatively, the reservoir of the second chamber is prefilled with a liquid concentrate composition of an active ingredient.
According to another embodiment of the above aspect, the solid composition is mixed with the pharmaceutically acceptable vehicle to form a liquid pharmaceutical composition upon activation of the dual-chamber pack.
According to another embodiment of the above aspect, the liquid pharmaceutical composition is a solution or a suspension.」(第3ページ第15-28行)(本発明の第1の態様は、
(a)容器を含む第1のチャンバーと、
(b)リザーバー、二相性コネクター、プランジャー、及び破壊可能な高分子膜を有するプラグを含む第2のチャンバーと、
を含むデュアルチャンバーパックを提供する。
上記態様の1つの実施形態によれば、第1のチャンバーの容器には、薬学的に許容される媒体がプレフィルドされており、且つ第2のチャンバーのリザーバーには、有効成分の固体組成物がプレフィルドされている。あるいは、第2のチャンバーのリザーバーには、有効成分の液体濃縮組成物がプレフィルドされている。
上記態様の別の実施形態によれば、固体組成物は、デュアルチャンバーパックをアクティベーションさせると、薬学的に許容される媒体と混合されて液体医薬組成物を形成する。
上記態様の別の実施形態によれば、液体医薬組成物は溶液又は懸濁液である。)
エ「According to another embodiment of the above aspect, the plunger ensures the breakable polymeric membrane remains attached to the plug during activation.
According to another embodiment of the above aspect, the plunger comprise of one or more sharp projections with an essential continuous blunt area.」(第4ページ第7-10行)(上記態様の別の実施形態によれば、プランジャーは、破壊可能な高分子膜がアクティベーション中にプラグに張り付いたままであることを保証する。
上記態様の別の実施形態によれば、プランジャーは、実質的に尖っていない連続領域と共に1以上の鋭い突起部で構成される。)
オ「a reservoir (1) adapted to fit into a plunger (2) prefilled with a solid composition of an active ingredient; the plunger (2) is further adapted to fit into a plug (3) having a top flat surface,」(第5頁第11-13行)(有効成分の固体組成物がプレフィルドされた、プランジャー(2)に嵌合するように適合されたリザーバー(1)であって、プランジャー(2)は更に、上部平面を有するプラグ(3)に嵌合するように適合されており)
カ「The active ingredient used to form a solid composition of the present invention may be present in a form to provide an immediate release or an extended release. The solid composition may comprise of an active ingredient directly mixed with one or more pharmaceutically acceptable excipients. Alternatively, the solid composition may comprise of cores of an active ingredient, optionally admixed with one or more pharmaceutically acceptable excipients. The cores may be coated with an immediate release or an extended release coating.」(第7ページ第9-15行)(本発明の固体組成物を形成するために用いられる有効成分は、即時放出又は持続放出を提供する形態で存在し得る。固体組成物は、1種以上の薬学的に許容される医薬品添加物(excipients)と直接混合された有効成分を含むことができる。あるいは、固体組成物は、任意に1種以上の薬学的に許容される医薬品添加物と混合された有効成分のコアを含むこともできる。コアは、即時放出又は持続放出コーティングでコーティングされていてもよい。)
キ「The term "activation," as used herein means a process which reconstitutes the solid composition with the pharmaceutically acceptable vehicle to form a liquid pharmaceutical composition. The activation can be done by the end-users such as patients or pharmacists or caregiver. The activation process starts by screwing the reservoir.」(第9ページ第11-14行)(本明細書中で用いられる「アクティベーション」という用語は、薬学的に許容される媒体で固体組成物を再構成して液体医薬組成物を形成するプロセスを意味する。アクティベーションは、患者又は薬剤師又は介護者等のエンドユーザーによって行われることができる。アクティベーションプロセスは、リザーバーをねじ込むことによって開始される。)
ク「The term "stable," as used herein, refers to chemical stability, wherein not more than 5% w/w of total related substances are formed on storage at 40°C and 75% relative humidity (R.H.) or at 25°C and 60% R.H. for a period of at least three months to the extent necessary for the sale and use of the composition.
The term "pharmaceutically acceptable excipients," as used herein, refers to excipients that are routinely used in pharmaceutical compositions.」(第9ページ第20-25行)(本明細書中で用いられる「安定」という用語は、化学的安定性を指し、ここで、5%w/w以下の関連物質全体が、少なくとも3ヶ月~組成物の販売及び使用に必要な範囲までの期間にわたる40℃及び75%の相対湿度(R.H.)又は25℃及び60%のR.H.での貯蔵中に安定である。
本明細書中で用いられる「薬学的に許容される医薬品添加物」という用語は、医薬組成物において日常的に用いられる医薬品添加物を指す。)
ケ「The compositions of the first and second chambers of the container are separated by a polymeric breakable membrane of the plug. The plunger used in the instant invention helps to rupture the breakable polymeric membrane upon the application of pressure by a screw-based mechanism. When pressure is applied on the reservoir, the breakable polymeric membrane is ruptured by the plunger. The intact polymeric membrane remains attached to the circumference of the plug.」(第15ページ第7-12行)(容器の第1のチャンバーの組成物と第2のチャンバーの組成物とは、プラグの破壊可能な高分子膜によって隔てられている。本発明において用いられるプランジャーは、ねじ込み式機構により圧力を印加して破壊可能な高分子膜を破裂させるのに役立つ。リザーバーに圧力が印加されると、破壊可能な高分子膜は、プランジャーによって破裂させられる。破裂させられていない高分子膜は、プラグの周囲に張り付いたままである。)
コ「
[図:0001414583000001.jpg]
」
サ「
[図:0001414583000002.jpg]
」
シ 図1、3から、プラグ3が内部にプランジャー2を収容する点が看取される。
2 引用発明
上記1の記載事項ア~シを総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「容器を含む第1のチャンバーと、プランジャー、プランジャーに嵌合するように適合されたリザーバー、及び容器の第1のチャンバーの組成物と第2のチャンバーの組成物とを隔てる破壊可能な高分子膜を有し、内部にプランジャーを収容するプラグを含む第2のチャンバーとを含むデュアルチャンバーパックであって、
プランジャーは、実質的に尖っていない連続領域と共に1以上の鋭い突起部で構成され、
第1のチャンバーの容器には、媒体がプレフィルドされており、且つ第2のチャンバーのリザーバーには、有効成分の固体組成物がプレフィルドされており、
固体組成物を形成するために用いられる有効成分は、持続放出を提供する形態で存在し、固体組成物は、有効成分のコアを含み、コアは、持続放出コーティングでコーティングされており、
固体組成物は、
デュアルチャンバーパックをアクティベーションさせると、すなわち、媒体で固体組成物を再構成して液体医薬組成物を形成するプロセスとして、リザーバーをねじ込むことによって開始され、ねじ込み式機構により圧力を印加してリザーバーに圧力が印加され、破壊可能な高分子膜がプランジャーによって破裂させられると、
媒体と混合されて、患者への経口投与のための懸濁液の形態の液体医薬組成物を形成し、
破裂させられていない高分子膜は、プラグの周囲に張り付いたままである、
デュアルチャンバーパック。」
3 引用文献2の記載事項
上記引用文献2には、次の記載がある。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、2室型プレフィルドシリンジに関する。具体的には、粉末状もしくは凍結乾燥した薬剤と、この薬剤を溶解するための薬剤溶解用液体とを分離して収容しておき、使用時に薬剤を溶解用液体より溶解した後投与することができる2室型プレフィルドシリンジに関する。」
イ「【0006】本発明のプレフィルドシリンジ1は、注射針取付部21と内部に設けられ後端方向に突出する破損用突出部14bとを備える外筒2と、注射針取付部21に取り付けられた封止部材と、外筒2内に収納され両端が開口した筒状の内筒5と、内筒5の先端部付近に設けられ、外筒2内を摺動可能である環状の第1のガスケット6と、内筒5の先端部を気密に封止しかつ外筒2に設けられた破損用突出部14bにより破損可能なシール部材13とを備える内筒組立体20と、内筒5内に摺動可能に収納された第2のガスケット7と、第2のガスケット7の後端部に取り付けられたもしくは取り付け可能なプランジャー8と、シール部材13と第2のガスケット7と内筒5との間に形成された第1の収納部9と、内筒組立体20と外筒2との間に形成された第2の収納部11と、第1の収納部9に収納された薬剤溶解用液体10と、第2の収納部11に収納された粉末状もしくは凍結乾燥薬剤12とを備える。」
ウ「【0029】内筒組立体20は、図1、図2に示すように、内筒5と、第1のガスケット6と、シール部材13とを備えている。内筒5は、図1、図2に示すように、先端及び後端が開口した筒状体であり、先端部には先端側に向かって縮径して先端は拡径したガスケット取付部26が形成され、後端には環状のフランジ27が形成されている。そして、内筒5の先端開口はシール部材13により気密に封止されている。内筒5の構成材料としては、外筒2と同様のものを使用することが好ましい。また、内筒5の構成材料としては、第1の収納部9内の薬剤溶解用薬液10により、第2の収納部11内の薬剤12の乾燥状態が妨げられないように、水蒸気透過性の低いものを使用することが好ましい。内筒5の長さとしては、5~200mm程度のものが好適であり、内筒5の容量としては、1~60ml程度のものが好適である。
【0030】シール部材13は、円形かつ薄肉状に形成され、内筒5の先端開口を気密に封止するように設けられている。シール部材13は、水蒸気不透過性もしくは水蒸気難透過性を備えている。具体的には、シール部材13は、水蒸気不透過性材料もしくは水蒸気難透過性材料からなる被覆層を備えている。水蒸気不透過材料としては、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素等を使用することが好ましい。また、シール部材13は、破損用突出部14bにより破断された際飛散しないように、合成樹脂層を備えていることが好ましい。合成樹脂層に使用される合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等が好ましい。このようなシール部材13としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等のフィルムの片面もしくは両面にアルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素等水蒸気不透過性材料もしくは水蒸気難透過性材料を蒸着もしくは積層した多層フィルム等、特に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の樹脂フィルムの片面に酸化アルミニウムを蒸着もしくはアルミニウム箔を積層したフィルムが好ましい。なお、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素等の蒸着は、CVD法等により行うことが好ましい。
【0031】樹脂フィルムの両面に酸化アルミニウムが蒸着されたアルミナ蒸着フィルムのそれぞれのアルミ層の厚さは、1~50μm、樹脂フィルムの厚さは、10~100μmであることが好ましい。さらに、シール部材13は、内筒5への固着のために接着層を備えていることが好ましい。接着層としては、低融点ポリエチレンなどのホットメルト接着層が使用できる。シール部材13は、熱融着、高周波融着、超音波溶着等により内筒5の先端開口部に融着されている。接着層を備えない場合には、シアノアクリレート系等の瞬間接着剤、UV硬化型接着剤等の接着剤を用いて接着してもよい。なお、本発明の実施例では、シール部材は薄肉状であるが、破損用突出部により貫通可能であれば、ある程度肉厚に形成されていてもよい。」
4 引用文献3の記載事項
上記引用文献3には、次の記載がある。
ア「【0026】図1および図2に示すように、本発明の複室容器1は、輸液剤26等の液体を収容する第1の空間21を有する軟質材料で構成されたバッグ2と、内部に薬剤を収容する第2の空間33を有する薬剤容器3と、前記第1の空間21と前記第2の空間33とを仕切り、かつ、必要時に第1の空間21と第2の空間33とを連通することが可能な連通機構4と、連通機構4の連通により生じた分離部分(破断分離されたレバー42)を保持する保持手段6とを有している。」
イ「【0074】容器本体31の先端には、先端開口312を気密的に封止する膜53を設けることが好ましい。この膜53としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等で構成された樹脂フィルムが挙げられる。」
ウ「【0077】第2の空間33は、膜53および弾性体51により気密的に密封され、これにより、薬液が外部へ漏出することがなく、また、O2ガス、CO2ガス、水蒸気等の気体や、細菌等の微生物が内部に侵入することも防止される。」
5 引用文献4の記載事項
上記引用文献4には、次の記載がある。
ア「【0006】
そこで、本発明の主要な目的の一つは、保存時には薬剤と溶解液とを液密に分離し、使用時には薬剤と溶解液とを無菌的に混合可能な輸液用容器において、薬剤を収納する薬剤収納室内への外部空気中の湿気の透過を確実に防止して薬剤の吸湿による変質を防止する輸液用容器を提供することにある。」
イ「【0008】
つまり、本発明は、薬剤が収納された薬剤収納室と、溶解液が収納された溶解液収納室とが液密に区画された輸液用容器であるため、保存状態(使用前)には薬剤収納室内の薬剤を、溶解液収納室内の湿気のみならず外部空気中の湿気からも保護する必要があり、そのために薬剤収納室の構成壁を3層樹脂構造とし、その中間層を内面層、外面層よりも透湿度が小さい低透湿性樹脂にて構成して外部空気中の湿気が構成壁を透過するのを防止し、薬剤収納室内を乾燥状態に保持するようにしているわけである。この場合、中間層は、具体的には、透湿度(膜厚:300μm、温度:40℃、相対湿度:90%)が0.3g/m2・24hr以下の低透湿性樹脂からなるのが好ましい(JIS Z 0208参照)。」
ウ「【0013】
本発明において、薬剤収納室の構成壁の3層樹脂構造は、公知のサンドイッチ成形法によりスキン層として内面層及び外面層が形成され、かつコア層として中間層が形成されたものとすることができ、3層樹脂構造に構成壁を成形することができる。例えば、内面層及び外面層(スキン層)を、日本薬局方プラスチック製医薬品容器試験法に記載されているポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂にて形成し、中間層を上述のシクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマーなどの低透湿性樹脂にて形成することができる。
また、中間層の厚みは50μm~3mmに設定することが、薬剤収納室内の薬剤の吸湿防止を十分に行える上で好ましい。なお、中間層の厚みが50μmよりも小さいと薬剤収納室内の薬剤が湿気るおそれがあり、3mmよりも大きいと剛性を確保する厚みとして過剰であり、かつ原料樹脂コストにおける高価な低透湿性樹脂(例えばシクロオレフィンポリマー)が占める割合が大きくなり、輸液用容器全体としてコスト高となる。」
6 引用文献5の記載事項
当審が新たに示す引用文献5(特開2014-23772号公報)には、次の記載がある。
ア「【0018】
本実施形態の二室容器1は、2つの異なる内容物を個別に収容する収容室を備え、少なくとも一方の収容室にガスバリア性が付与され、使用時において、区分けされた2つの収容室を連通させて2つの異なる内容物が混合される。
【0019】
この二室容器1は、図1及び図2に示すように、包装体(本願の容器本体)10と、この包装体10に取り付けられる注出具30と、を備えている。注出具30には、一方の内容物としての嫌気性剤が収容される収容室(本願の第2の収容部)として機能する収容体45が設けられる。また、包装体10の内部は、他方の収容室(本願の第1の収容部)として機能し、他方の内容物としての前記嫌気性剤と混合される液体が収容される。…
【0020】
ここで、嫌気性剤は酸素との接触により酸化、変質、吸湿等し易いものであり、一般に粉状、粒状、顆粒状を呈する。より具体的には、嫌気性剤は薬剤のほかビタミン剤、茶、インスタントコーヒー等である。一方、当該嫌気性剤と混合される液体は、生理食塩水のほかブドウ糖液、水等である。」
イ「【0026】
また、この仕切体36の上面には、上方に突出する突起体37(本願の第1の突起体)が設けられている。この突起体37は、先端が先鋭状に形成されており、後述する収容体45の下端面を遮蔽しているガスバリア体48に突き刺して破断することにより収容体45を開封する開封具として機能する。」
ウ「【0035】
ガスバリア材47、48、49とは、酸素又は水蒸気の筒体46の内外間の透過を遮断するものであって、例えば金属箔であるアルミニウム箔、ガスバリア性フィルム等で構成される。アルミニウム箔等は単独では破断しやすいので、例えばポリプロピレン樹脂フィルムでサンドイッチ状に積層したガスバリア材として取り扱われる。
【0036】
具体的には、ガスバリア材47、48、49は、例えばPP(ポリプロピレン樹脂)/AL(アルミニウム箔)/PP、PP/アルミニウム蒸着PET(ポリエチレンテレフタレート)/PP等の積層フィルム又はシートとして構成される。」
エ「【0045】
このように構成された二室容器1は、酸素との接触を防止したい内容物を収容し、他の内容物と簡単に混合して、その混合物を外部へと取り出すことが可能である。例えば、嫌気性剤と、当該嫌気性剤と混合される液体とを個別の収容室に収容し、少なくとも嫌気性剤はガスバリア性を有している収容室(収容体45)に収容する。これにより、収容体45の外側から内側への酸素等の通過が防止され、収容体45の内部への外気の侵入が防止されるので、収容体45に収容される嫌気性剤の変質、劣化を防ぎ、開封するまでは長期保存が可能となる。」
オ「【0059】
また、本実施形態の二室容器1に用いられる注出具基部33の仕切体36には、収容体45の下端面(ガスバリア材48)を破断するための部材の一例として先端が尖った突起体37が設けられているが、図11に示すような仕切体36A、36Bを適用しても構わない。」
7 引用文献6の記載事項
同じく新たに示す引用文献6(特開2002-249175号公報)には、次の記載がある。
ア「【0001】
【発明の属する技術の分野】本発明は飲料容器、特に二成分に分けて充填し、飲む直前に混合して飲むことのできるように構成された、飲料容器に関する。」
イ「【0004】前記先行技術は図面を参照しても明らかなように、第2成分を充填する容器の外部との密閉性に欠けている点で第2成分の酸化、吸湿による変質が懸念される。さらに破封手段の爪によって、破裂板が砕片となって混合した飲料内に混入し誤飲の危険性が発生する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は従来のこれらの問題点に鑑みて成されたものであって、第2成分が密封された容器と第1成分が密封された容器を一体とし、直前で混合して、風味色合いの良好な飲料が生成し、容器材料などの異物混入のない、飲料容器を提供することを目的とする。」
ウ「【0017】容器内部に充填する、第1成分、第2成分とも特に限定する必要はなく、飲料用のほか、二成分を混合して機能を発現する、溶液システムの各種に応用可能である。飲料用としては第1成分には水若しくは加工した水が使用可能であり、第2成分としては、天然品の粉末、天然品から抽出、乾燥した物質の粉末若しくは濃縮液などが本目的に適合する。」
エ「【0025】…更にその中央部内側からステム210を垂下し、ステム210下端部にはダブルコーン形円錐体206を取り付け、易破断状に構成した収納部底部分の易破断底部205を持つ第2成分収納部204に第2成分を充填、第1成分容器207と螺合密封する。」
オ「【0027】また、底部の易破断状構成は、材質としてやや弾性のある厚みのあるプラスチックで、細片に破開されないポリエチレン、若しくはシリコーンゴムを用いた。底面中央部から半径方向に放射状エンボス加工を行って、破片が離脱しないような構造とした。」
第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
1 引用発明の「デュアルチャンバーパック」は、「デュアルチャンバーパックをアクティベーションさせると、」「固体組成物は、」「媒体と混合されて、患者への経口投与のための懸濁液の形態の液体医薬組成物を形成」するものであって、使用時にその場で当該形成が行われるものであり、また、当該「固体組成物」は「持続放出を提供する形態で存在」するから、本願発明の「持続放出型の経口懸濁液をイン・サイチュ(in situ)調製するためのドラッグデリバリーデバイス」に相当する。
2 引用発明の「容器を含む第1のチャンバー」は、その機能及び構造からみて、本願発明の「第一のチャンバー」に相当し、以下同様に、
「破壊可能な高分子膜」は、「高分子膜」に、
「リザーバー、及び」「内部にプランジャーを収容するプラグを含む第2のチャンバー」は、「リザーバー」「及び、内部に前記プランジャーを収容するプラグ」「を含む第二のチャンバー」に、それぞれ相当する。
そして、「第1のチャンバーの組成物と第2のチャンバーの組成物とを隔てる破壊可能な高分子膜を有し、内部にプランジャーを収容するプラグ」は、「内部に前記プランジャーを収容するプラグ、但し、前記プラグは、第一のチャンバーと第二のチャンバーとを隔てる高分子膜を含み、」に相当する。
3 引用発明の「媒体がプレフィルドされ」た「容器を含む第1のチャンバー」は、当該媒体と「固体組成物」が「混合されて、」「懸濁液の形態の液体医薬組成物を形成」するから、本願発明の「懸濁ベースを含む第一のチャンバー」に相当する。
また、引用発明の「有効成分の固体組成物がプレフィルドされ」た「リザーバー」を含む「第2のチャンバー」は、当該固体組成物が、「固体組成物を形成するために用いられる有効成分は、持続放出を提供する形態で存在し、」「有効成分のコアを含み、コアは、持続放出コーティングでコーティングされて」いるから、本願発明の「放出制御剤でコーティングされた有効成分のコアを含む固体組成物を含む」「リザーバー」「を含む第二のチャンバー」に相当する。
4 本願発明の「プランジャー内に入れられたリザーバー」は、本願明細書【0025】の「プランジャー(2)に嵌合するように適合されたリザーバー(1)」との記載及び図1の記載からみて、プランジャー内にその一部が嵌合されたリザーバーを意味していると解される。
そうすると、引用発明の「プランジャーに嵌合するように適合されたリザーバー」は、上記第4の1コ、サから、リザーバー1の一部がプランジャー2に嵌め込まれることが看取されることから、本願発明の「プランジャー内に入れられたリザーバー」に相当する。
5 引用発明の第2のチャンバー内の「固体組成物は、」「リザーバーをねじ込むことによって開始され、ねじ込み式機構により圧力を印加してリザーバーに圧力が印加され、破壊可能な高分子膜がプランジャーによって破裂させられると、媒体と混合されて、患者への経口投与のための懸濁液の形態の液体医薬組成物を形成」することは、固体組成物が「持続放出を提供する形態で存在」するものであって、圧力の印加によりプランジャーが作動することであるから、本願発明の「プランジャーの作動により高分子膜が破壊され、第二のチャンバーから懸濁ベースへの固体組成物の流れが生じ、その結果、第一のチャンバー内に持続放出型の経口懸濁液が形成され」ることに相当する。
6 引用発明の「破裂させられていない高分子膜は、プラグの周囲に張り付いたままである」ことと、本願発明の「高分子膜の周囲の少なくとも一部であって但し50%以下が、プランジャーの作動後、プラグに張り付いたままである」こととは、「高分子膜の周囲の少なくとも一部が、プランジャーの作動後、プラグに張り付いたままである」ことの限りで一致する。
7 引用発明の「プランジャーは、実質的に尖っていない連続領域と共に1以上の鋭い突起部で構成され」ることと、本願発明の「前記プランジャーは、60°以下の角度で実質的に尖っていない連続領域と共に1以上の鋭い突起部を含む」こととは、「前記プランジャーは、実質的に尖っていない連続領域と共に1以上の鋭い突起部を含む」ことの限りで一致する。
そうすると、両者は、
「持続放出型の経口懸濁液をイン・サイチュ(in situ)調製するためのドラッグデリバリーデバイスであって、該デバイスは、
a)懸濁ベースを含む第一のチャンバーと、
b)放出制御剤でコーティングされた有効成分のコアを含む固体組成物を含むプランジャー内に入れられたリザーバー、但し、前記プランジャーは、実質的に尖っていない連続領域と共に1以上の鋭い突起部を含む、及び、内部に前記プランジャーを収容するプラグ、但し、前記プラグは、第一のチャンバーと第二のチャンバーとを隔てる高分子膜を含む、を含む第二のチャンバーと、
を備え、
プランジャーの作動により高分子膜が破壊され、第二のチャンバーから懸濁ベースへの固体組成物の流れが生じ、その結果、第一のチャンバー内に持続放出型の経口懸濁液が形成され、
高分子膜の周囲の少なくとも一部が、プランジャーの作動後、プラグに張り付いたままである、
前記ドラッグデリバリーデバイス。」
である点で一致し、次の各点で相違する。
[相違点1]
プランジャーの連続領域が、本願発明は、「60°以下の角度で」実質的に尖っていないのに対し、引用発明は、実質的に尖っていない角度が具体的に特定されていない点。
[相違点2]
本願発明は、「前記固体組成物は、第二のチャンバー内で40℃/75%相対湿度で少なくとも3ヶ月間にわたり安定であり」、「前記高分子膜は、約0.10mm以上の厚さを有し、約5.0g/m2/日未満の水蒸気透過度を有し、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、及び高密度ポリエチレン(HDPE)からなる群から選択される高分子材料から成る」のに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。
[相違点3]
高分子膜の周囲の少なくとも一部が、プランジャーの作動後、プラグに張り付いたままであることに関して、本願発明は、「但し50%以下」がプラグに張り付いたままであるのに対し、引用発明は、プラグの周囲に張り付いたままである範囲が不明である点。
第6 判断
1 相違点1の検討
「1以上の鋭い突起部」を有するとともに「実質的に尖っていない連続領域」をも有する引用発明のプランジャーにおいて、その「実質的に尖っていない」形状を具体的に設計するにあたり、1以上の鋭い突起部を、高分子膜を破裂させるのに適した形状とするために、当該突起部以外の部分である連続領域を60°以下の角度で実質的に尖っていない形状となるように構成し、上記相違点1に係る本願発明の事項とする程度のことは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
2 相違点2の検討
上記第4の1クのとおり、引用文献1には、5%w/w以下の関連物質全体が少なくとも3ヶ月の期間にわたる40℃及び75%の相対湿度での貯蔵中に安定であることが記載されており、引用発明のデュアルチャンバーパックに用いられる媒体や固体組成物を化学的安定性のもとで保存することは内在する課題であるといえるから、引用発明において引用文献1の上記記載事項を参照し、固体組成物を第2のチャンバー内で少なくとも3ヶ月の期間にわたる40℃及び75%の相対湿度での貯蔵中に安定であるように保存することは、当業者であれば通常の創作能力の範囲で着想し得たことである。
そして、固体組成物を保存するために水蒸気不透過性の封止材料を用いることは慣用手段であって、引用文献2~6に記載されるように、シール部材として適宜の材料、厚さ及び水蒸気透過度のものが通常用いられていることを踏まえれば、上記のような化学的安定性をもたせることを念頭に置き、引用発明において上記相違点2に係る本願発明の事項とする程度のことは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
3 相違点3の検討
引用発明は、「破裂させられていない高分子膜は、プラグの周囲に張り付いたままである」ところ、破裂させられずプラグに張り付いたままとなる高分子膜が、その周囲の例えば50%を超えるような割合である場合、プランジャーによるプラグの高分子膜の破断が不十分であって液体医薬組成物の形成に支障を来す恐れがあることに鑑みると、破裂させられていない高分子膜の範囲を相当程度少なくすることは通常のことであるから、高分子膜の周囲の50%以下が、プランジャーの作動後、プラグに張り付いたままとなるよう構成して、上記相違点3に係る本願発明の事項とする程度のことは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
4 効果について
そして、本願発明の奏する効果は、引用発明及び引用文献1~6の記載事項の奏する効果から当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別のものとはいえない。
5 小括
よって、本願発明は、引用発明及び引用文献1~6の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献1~6の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-020023