2022-019414
パケット通信システム
- 審判番号
- 2022-019414
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-111204外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年12月01日
- 審決日
- 2023年11月07日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (H04L) / P18 .113-WY (H04L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 18項目
第1 手続の経緯
本願は、平成30年6月11日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 原査定の概要
原査定(令和4年8月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
1 理由1
本願請求項1~13,15,17~23(当審注: 原査定の表記上は理由1の対象は請求項1~23であるが、令和3年12月7日付け拒絶理由通知書の記載及び令和4年4月8日提出の手続補正書による特許請求の範囲の補正内容から、実際にはこれらの請求項が対象であるものと解される。)に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2 理由2
本願請求項1~23に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第3 当審拒絶理由の概要
当審が令和5年6月20日付けで通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。
本願請求項1~11,17~23に係る発明は、以下の引用文献1~3に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 本願発明
本願請求項1~22に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明22」という。)は、令和4年8月23日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~22に記載された事項により特定されるものであり、本願発明1~3,18,19,21,22は次のとおりの発明である。
「【請求項1】アクセスの対象となる対象サーバ装置に対してネットワークを介して接続し、パケット通信を行うためのパケット通信システムであって、前記対象サーバ装置との間でパケット通信を行うクライアント装置と、前記クライアント装置と前記対象サーバ装置との間のパケット通信を中継する中継サーバ装置と、を備え、前記クライアント装置は、続きを表示(全66行)前記クライアント装置を送信元とし前記対象サーバ装置をあて先として、前記対象サーバ装置に対して送信すべき所定の送信データをデータ部に含む第1のパケットを作成する処理を行う通信制御部と、前記第1のパケットの少なくとも一部を暗号化して送信用暗号データを作成するクライアント用暗号化処理部と、前記クライアント装置を送信元とし前記中継サーバ装置をあて先として、暗号化した前記第1のパケットをカプセル化し、前記送信用暗号データをデータ部に含み、所定のパケット識別コードが書き込まれた第2のパケットを作成して送信するパケット送信部と、を有し、前記中継サーバ装置は、前記第2のパケットを受信し、受信した第2のパケットに前記所定のパケット識別コードが書き込まれている場合、そのデータ部に含まれている前記送信用暗号データを復号して前記第1のパケットを復元する中継サーバ用復号処理部と、復元された前記第1のパケットの送信元を前記中継サーバ装置に変更することにより第3のパケットを作成し、作成した前記第3のパケットを送信するパケット転送部と、前記第3のパケットに対する応答として前記対象サーバ装置から返信され、前記所定のパケット識別コードが書き込まれていない第4のパケットを受信し、受信した第4のパケットに前記所定のパケット識別コードが書き込まれていない場合、その少なくとも一部を暗号化して返信用暗号データを作成する中継サーバ用暗号化処理部と、前記中継サーバ装置を送信元とし前記クライアント装置をあて先として、前記返信用暗号データをデータ部に含む第5のパケットを作成し、作成した前記第5のパケットを送信するパケット返信部と、を有し、前記クライアント装置は、更に、前記第5のパケットを受信し、そのデータ部に含まれている前記返信用暗号データを復号して前記第4のパケットを復元するクライアント用復号処理部と、復元された前記第4のパケットのあて先を前記クライアント装置に変更することにより第6のパケットを作成するパケット受信部と、を有し、前記通信制御部は、更に、前記第6のパケットのデータ部に含まれている返信データを取り出す処理を行い、複数n台のクライアント装置とこれらn台のクライアント装置のそれぞれに対応づけられたn台の中継サーバ装置とを備え、各クライアント装置のパケット送信部は、それぞれ対応づけられた特定の中継サーバ装置宛に第2のパケットを送信し、各中継サーバ装置のパケット返信部は、それぞれ対応づけられた特定のクライアント装置宛に第5のパケットを送信することを特徴とするパケット通信システム。【請求項2】アクセスの対象となる対象サーバ装置に対してネットワークを介して接続し、パケット通信を行うためのパケット通信システムであって、前記対象サーバ装置との間でパケット通信を行うクライアント装置と、前記クライアント装置と前記対象サーバ装置との間のパケット通信を中継する中継サーバ装置と、を備え、前記クライアント装置は、前記クライアント装置を送信元とし前記対象サーバ装置をあて先として、前記対象サーバ装置に対して送信すべき所定の送信データをデータ部に含む第1のパケットを作成する処理を行う通信制御部と、前記第1のパケットの少なくとも一部を暗号化して送信用暗号データを作成するクライアント用暗号化処理部と、前記クライアント装置を送信元とし前記中継サーバ装置をあて先として、暗号化した前記第1のパケットをカプセル化し、前記送信用暗号データをデータ部に含み、所定のパケット識別コードが書き込まれた第2のパケットを作成して送信するパケット送信部と、を有し、前記中継サーバ装置は、前記第2のパケットを受信し、受信した第2のパケットに前記所定のパケット識別コードが書き込まれている場合、そのデータ部に含まれている前記送信用暗号データを復号して前記第1のパケットを復元する中継サーバ用復号処理部と、復元された前記第1のパケットの送信元を前記中継サーバ装置に変更することにより第3のパケットを作成し、作成した前記第3のパケットを送信するパケット転送部と、前記第3のパケットに対する応答として前記対象サーバ装置から返信され、前記所定のパケット識別コードが書き込まれていない第4のパケットを受信し、受信した第4のパケットに前記所定のパケット識別コードが書き込まれていない場合、その少なくとも一部を暗号化して返信用暗号データを作成する中継サーバ用暗号化処理部と、前記中継サーバ装置を送信元とし前記クライアント装置をあて先として、前記返信用暗号データをデータ部に含む第5のパケットを作成し、作成した前記第5のパケットを送信するパケット返信部と、を有し、前記クライアント装置は、更に、前記第5のパケットを受信し、そのデータ部に含まれている前記返信用暗号データを復号して前記第4のパケットを復元するクライアント用復号処理部と、復元された前記第4のパケットのあて先を前記クライアント装置に変更することにより第6のパケットを作成するパケット受信部と、を有し、前記通信制御部は、更に、前記第6のパケットのデータ部に含まれている返信データを取り出す処理を行い、前記パケット転送部が、復元された第1のパケットの送信元を示す情報を第3のパケットに埋め込む処理を行い、前記中継サーバ用暗号化処理部が、受信した第4のパケットに埋め込まれていた前記送信元を示す情報を読み出してパケット返信部に伝達する処理を行い、前記パケット返信部が、前記送信元を示す情報をあて先となるクライアント装置とする第5のパケットを作成することを特徴とするパケット通信システム。【請求項3】アクセスの対象となる対象サーバ装置に対してネットワークを介して接続し、パケット通信を行うためのパケット通信システムであって、前記対象サーバ装置との間でパケット通信を行うクライアント装置と、前記クライアント装置と前記対象サーバ装置との間のパケット通信を中継する中継サーバ装置と、を備え、前記クライアント装置は、前記クライアント装置を送信元とし前記対象サーバ装置をあて先として、前記対象サーバ装置に対して送信すべき所定の送信データをデータ部に含む第1のパケットを作成する処理を行う通信制御部と、前記第1のパケットの少なくとも一部を暗号化して送信用暗号データを作成するクライアント用暗号化処理部と、前記クライアント装置を送信元とし前記中継サーバ装置をあて先として、暗号化した前記第1のパケットをカプセル化し、前記送信用暗号データをデータ部に含み、所定のパケット識別コードが書き込まれた第2のパケットを作成して送信するパケット送信部と、を有し、前記中継サーバ装置は、前記第2のパケットを受信し、受信した第2のパケットに前記所定のパケット識別コードが書き込まれている場合、そのデータ部に含まれている前記送信用暗号データを復号して前記第1のパケットを復元する中継サーバ用復号処理部と、復元された前記第1のパケットの送信元を前記中継サーバ装置に変更することにより第3のパケットを作成し、作成した前記第3のパケットを送信するパケット転送部と、前記第3のパケットに対する応答として前記対象サーバ装置から返信され、前記所定のパケット識別コードが書き込まれていない第4のパケットを受信し、受信した第4のパケットに前記所定のパケット識別コードが書き込まれていない場合、その少なくとも一部を暗号化して返信用暗号データを作成する中継サーバ用暗号化処理部と、前記中継サーバ装置を送信元とし前記クライアント装置をあて先として、前記返信用暗号データをデータ部に含む第5のパケットを作成し、作成した前記第5のパケットを送信するパケット返信部と、を有し、前記クライアント装置は、更に、前記第5のパケットを受信し、そのデータ部に含まれている前記返信用暗号データを復号して前記第4のパケットを復元するクライアント用復号処理部と、復元された前記第4のパケットのあて先を前記クライアント装置に変更することにより第6のパケットを作成するパケット受信部と、を有し、前記通信制御部は、更に、前記第6のパケットのデータ部に含まれている返信データを取り出す処理を行い、前記中継サーバ装置が、更に、通信情報記録部を有し、前記パケット転送部が、第3のパケットを送信する際に、復元された第1のパケットの送信元を示す情報と前記第3のパケットとの対応関係を示す対応関係情報を前記通信情報記録部に記録する処理を行い、前記パケット返信部が、第5のパケットを送信する際に、前記通信情報記録部に記録されている前記対応関係情報に基づいて、第5のパケットの送信先を決定することを特徴とするパケット通信システム。」
「【請求項18】請求項1~16のいずれかに記載のパケット通信システムにおける1台のクライアント装置。【請求項19】請求項1~16のいずれかに記載のパケット通信システムにおけるクライアント用暗号化処理部、パケット送信部、クライアント用復号処理部およびパケット受信部としてコンピュータを機能させるプログラム。」
「【請求項21】請求項1~16のいずれかに記載のパケット通信システムにおける1台の中継サーバ装置。【請求項22】請求項1~16のいずれかに記載のパケット通信システムにおける中継サーバ用復号処理部、パケット転送部、中継サーバ用暗号化処理部およびパケット返信部としてコンピュータを機能させるプログラム。」
なお、本願発明4~17,20は、本願発明1~3のいずれかを減縮した発明である。
第5 引用文献の記載、引用発明等
1 引用文献1、引用発明
(1)引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。)。
「【0007】図1は本発明の一実施形態の匿名通信システムの構成図である。【0008】本匿名通信システムはクライアント端末101,102と主装置110とサーバX(120),Y(121),Z(122)で構成されている。【0009】主装置110は識別情報インターフェイス設定部111とユーザ認証部112とアクセス制御部113と識別情報制御部114と識別情報データベース115とローカルIDデータベース116とグローバルIDデータベース117で構成されている。【0010】主装置110と通信先は他の通信先とは隔離された独立のネットワークを介して接続されており、その独立のネットワーク内部では通信先毎に重複するプライベートアドレスが利用可能である。そのため、主装置110は通信先毎に個別のネットワーク・インターフェイスを持っている。続きを表示(全19行)【0011】ユーザ認証部112はユーザ認証機能付きIPsecトンネルの終端機能を持ち、あらかじめユーザ毎に登録された情報にしたがってユーザを認証する。図2はユーザ認証部112の処理を示している。ステップ201でトンネル接続確立要求を受け取ると、ステップ202でユーザを認証し、ステップ203でVPNトンネルを確立する。ステップ204でユーザからパケットを受け取ると、ステップ205でパケットを復号し、ステップ206でパケットをアクセス制御部113に送信し、ステップ207でユーザへ向かうパケットを受け取ると、ステップ208で、パケットをVPNトンネル経由でユーザに向けて送信する。【0012】アクセス制御部113は図3に示す処理を行う。ステップ301に、ユーザからのパケットを受け取ると、ステップ302にパケットは通信ポリシに適合するかどうか判定し、適合すれば識別情報制御部114にパケットを送信し、適合しなければステップ304にパケットを破棄する。ステップ305に、ユーザに向けてのパケットを受け取ると、ステップ306にパケットは適合ポリシに適合するかどうか判定し、適合すれば、ステップ307に、ユーザ認証部112にパケットを送信し、適合しなければステップ308にパケットを破棄する。【0013】識別情報データベース121はユーザと通信先の組毎に、送信するユーザ識別情報を保持するもので、表1に示すように、送信元と、送信先と、提供する識別情報の種別と、変換用アドレスと、一時保存IDを含む。【0014】【表1】[図:0001404455000001.jpg]ローカルIDデータベース116は特定の通信先内で一意となるユーザ識別用IDとしてのIDを保持するもので、表2に示すように、サーバ名とローカルIDの集合からなる。【0015】【表2】[図:0001404455000002.jpg]グローバルIDデータベース117は、ユーザを識別するためのグローバルIDを保持するもので、表3に示すように、ユーザ名とグローバルIDからなる。【0016】【表3】[図:0001404455000003.jpg]識別情報制御部114は主装置110を経由して送信されるユーザからのパケットに対してユーザを識別する情報を隠蔽または埋め込むもので、図4に示す処理を行う。ステップ401で、ユーザからのパケットを受け取ったのであれば、ステップ402に、IPsecトンネルの利用ユーザと送信元をキーとして識別情報データベース115を検索し、変換用アドレスを取得し、ステップ403に、パケットの送信元情報を変換用アドレスに示された値に変換し、ステップ404に、パケットに示された送信先に向けてのパケットを送信し、ステップ405にユーザに向けてのパケットを受け取ったのであれば、ステップ406にパケットの送信先をユーザのアドレスに戻し、ステップ407にアクセス制御部113に向けてパケットを送信する。」
「【0019】ユーザA、ユーザBは、それぞれクライアント端末101、クライアント端末102を使い、主装置110の識別情報設定インターフェイス部111に対して、通信先毎に提供する識別情報提供ポリシを設定する。識別情報設定インターフェイス部111は、ユーザはWebブラウザを介して設定を行なうものとする。設定の際には、事前にユーザA、ユーザBはユーザ認証部112に対してユーザ認証を行なうものとし、ユーザを送信元とするポリシの内容は、ユーザ本人のみ設定を変更可能であるとする。【0020】ユーザ認証部112は、ユーザ認証機能につきIPsecトンネルの終端機能を持つ。ユーザA、ユーザBはユーザ認証を行なうために、ユーザ認証部112と、自らが使用するクライアント端末101、102との間で、ユーザ認証機能つきIPsecトンネルを確立する(ステップ201、202、203)。IPsecトンネル確立の際にあらかじめ登録したIDとパスワードを入力することによりユーザ認証が行なわれる。IPsecによる暗号通信機能があるため、不正ユーザが、ユーザAからの送信されたものであるとなりすましたパケットを主装置110に送った場合でも、そのパケットはユーザ認証における復号処理(ステップ205)のエラーパケットとして廃棄され、不正を防ぐことができる。」
「【0025】以上の事前設定を終え、実際に各ユーザが各サーバに通信する場合の動作を説明する。実際の通信を行なうにあたっても、上に示したユーザ認証およびIPsecトンネルの確立がすでに行なわれているものとする。ユーザA、ユーザBから送信されたパケットは、ユーザ認証部112と、ユーザA、ユーザBが使用するクライアント端末101、クライアント端末102との間で確立されたIPsecトンネルを経由して、ユーザ認証部112に送られる。」
「【0031】ユーザAがサーバZにパケットを送った場合、IPアドレスでサーバが識別されないように、識別情報制御部114は、送信元アドレスをユーザによらないある一つのアドレスAAに変換する。」
「【0035】各サーバ120、121、122からの返答パケットに対しては、上に述べたものと逆の手順で、クライアント端末101、102にパケットが送られる(ステップ405~407、305~308、207~208)。このとき、識別情報制御部114では、IPアドレスの復元処理(ステップ405、406)が行なわれる。」
「【図1】[図:0001404455000004.jpg]」
(2)引用文献1の段落【0013】に記載されている「識別情報データベース121」は、「識別情報データベース115」の誤記と認められる。
(3)上記(1)、(2)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「クライアント端末101,102と主装置110とサーバX(120),Y(121),Z(122)で構成される匿名通信システムであって、主装置110は識別情報インターフェイス設定部111とユーザ認証部112とアクセス制御部113と識別情報制御部114と識別情報データベース115とローカルIDデータベース116とグローバルIDデータベース117で構成されており、主装置110と通信先は他の通信先とは隔離された独立のネットワークを介して接続されており、ユーザ認証部112はユーザ認証機能付きIPsecトンネルの終端機能を持ち、ユーザからパケットを受け取ると、パケットを復号し、パケットをアクセス制御部113に送信し、ユーザへ向かうパケットを受け取ると、パケットをVPNトンネル経由でユーザに向けて送信し、続きを表示(全13行)アクセス制御部113は、ユーザからのパケットを受け取ると、識別情報制御部114にパケットを送信し、ユーザに向けてのパケットを受け取ると、ユーザ認証部112にパケットを送信し、識別情報データベース115は、送信元と、送信先と、変換用アドレスを含み、識別情報制御部114は、ユーザからのパケットを受け取ったのであれば、IPsecトンネルの利用ユーザと送信元をキーとして識別情報データベース115を検索し、変換用アドレスを取得し、パケットの送信元情報を変換用アドレスに示された値に変換し、パケットに示された送信先に向けてのパケットを送信し、ユーザに向けてのパケットを受け取ったのであれば、パケットの送信先をユーザのアドレスに戻し、アクセス制御部113に向けてパケットを送信し、ユーザAはクライアント端末101を使い、ユーザ認証部112は、IPsecによる暗号通信機能があり、実際に各ユーザが各サーバに通信する場合の動作において、ユーザAがサーバZにパケットを送った場合、IPアドレスでサーバが識別されないように、識別情報制御部114は、送信元アドレスをユーザによらないある一つのアドレスAAに変換し、サーバ122からの返答パケットに対しては、上に述べたものと逆の手順で、クライアント端末101にパケットが送られる、匿名通信システム。」
2 周知技術
例えば、引用文献2(段落【0027】~【0033】、図3等参照)、引用文献3(段落[0192]~[0199]、図12等参照)に示されているように、IPsecトンネルにおいて、暗号化したパケットをカプセル化して、新たなパケットを作成すること、及び、IPsecトンネルにおいて、パケット識別コード(ESPプロトコルのパケットであることを識別するコード)を書き込むことは、いずれも周知技術であると認められる。
第6 当審拒絶理由について(引用発明との対比・判断)
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
(ア)引用発明は、「ユーザAはクライアント端末101を使い」、「ユーザAがサーバZにパケットを送った場合、IPアドレスでサーバが識別されないように、識別情報制御部114は、送信元アドレスをユーザによらないある一つのアドレスAAに変換」するものであるから、「サーバZ」は「クライアント端末101」のアクセスの対象であるといえる。
また、引用発明では、「識別情報制御部114」等が「匿名通信システム」を構成する「主装置110」に含まれ、「主装置110と通信先は他の通信先とは隔離された独立のネットワークを介して接続されて」いるから、引用発明において、「匿名通信システム」は、「サーバZ」に対してネットワークを介して接続し、「ユーザAがサーバZにパケットを送」る、すなわちパケット通信を行うためのものであり、具体的には、「クライアント端末101」が「サーバZ」との間でパケット通信を行い、「主装置110」は、「クライアント端末101」と「サーバZ」との間のパケット通信を中継するといえる。
そして、引用発明の「サーバZ」、「クライアント端末101」、「主装置110」は、それぞれ、本願発明1の「対象サーバ装置」、「クライアント装置」、「中継サーバ装置」に相当する。
また、引用発明の「匿名通信システム」は、後述する相違点を除き、本願発明1の「パケット通信システム」に相当する。
以上のことから、引用発明は、本願発明1の
「アクセスの対象となる対象サーバ装置に対してネットワークを介して接続し、パケット通信を行うためのパケット通信システムであって、前記対象サーバ装置との間でパケット通信を行うクライアント装置と、前記クライアント装置と前記対象サーバ装置との間のパケット通信を中継する中継サーバ装置と、を備え」る
ことに相当する構成を含むものである。
(イ)引用発明の「主装置110」に含まれる「ユーザ認証部112」は、「ユーザ認証機能付きIPsecトンネルの終端機能を持ち、ユーザからパケットを受け取ると、パケットを復号し、パケットをアクセス制御部113に送信」するものであり、かつ「IPsecによる暗号通信機能があ」るとされるものであるから、「ユーザ」が「ユーザA」である場合、「ユーザ認証部112」が「受け取る」、「復号」前の「パケット」は、「クライアント端末101」を送信元とし、「主装置110」をあて先として、「クライアント端末101」において暗号化されたデータをデータ部に含むものである。
そうすると、引用発明の「クライアント端末101」は、暗号化を行って送信用の暗号化されたデータを作成する手段、及び、「クライアント端末101」を送信元とし「主装置110」をあて先として、送信用の暗号化されたデータをデータ部に含む「復号」前の「パケット」を作成して送信する手段を有するといえる。
また、引用発明では、「パケットを復号し、パケットをアクセス制御部113に送信」することに引き続き、それぞれ「主装置110」に含まれる構成の動作である、「アクセス制御部113は、ユーザからのパケットを受け取ると、識別情報制御部114にパケットを送信し」、「識別情報制御部114は、ユーザからのパケットを受け取ったのであれば、IPsecトンネルの利用ユーザと送信元をキーとして識別情報データベース115を検索し、変換用アドレスを取得し、パケットの送信元情報を変換用アドレスに示された値に変換し、パケットに示された送信先に向けてのパケットを送信」することがなされるところ、「ユーザAがサーバZにパケットを送った場合」では、「識別情報制御部114」が「受け取」る「ユーザからのパケット」は、「復号」により暗号化が解除されて復元された、「クライアント端末101」が作成した暗号化前の「パケット」であること、暗号化の対象が暗号化前の「パケット」の少なくとも一部であること、「パケットの送信元情報」により示される暗号化前のパケットの送信元は、「クライアント端末101」であり、あて先は、「パケットに示された送信先」であって、「サーバZ」であること、及び、暗号化前のパケットが、「サーバZ」に対して送信すべき所定の送信データをデータ部に含むことが、いずれも明らかである。
そうすると、引用発明の「クライアント端末101」は、「クライアント端末101」を送信元とし「サーバZ」をあて先として、「サーバZ」に対して送信すべき所定の送信データをデータ部に含む暗号化前の「パケット」を作成する処理を行う手段を有するといえる。
また、「クライアント端末101」における送信用の暗号化されたデータを作成する手段の暗号化の対象は、暗号化前の「パケット」の少なくとも一部であるといえる。
(ウ)上記(イ)から、引用発明の「クライアント端末101」は、
「クライアント端末101」を送信元とし「サーバZ」をあて先として、「サーバZ」に対して送信すべき所定の送信データをデータ部に含む暗号化前の「パケット」を作成する処理を行う手段と、
暗号化前の「パケット」の少なくとも一部を暗号化して送信用の暗号化されたデータを作成する手段と、
「クライアント端末101」を送信元とし「主装置110」をあて先として、送信用の暗号化されたデータをデータ部に含む「復号」前の「パケット」を作成して送信する手段と、
を有するものである。
そして、引用発明の上記構成において、暗号化前の「パケット」を作成する処理を行う手段、送信用の暗号化されたデータを作成する手段、「復号」前の「パケット」は、それぞれ、本願発明1の「第1のパケットを作成する処理を行う通信制御部」、「送信用暗号データを作成するクライアント用暗号化処理部」、「第2のパケット」に相当する。
以上の点について、上記(ア)を踏まえると、引用発明は、本願発明1の
「前記クライアント装置は、前記クライアント装置を送信元とし前記対象サーバ装置をあて先として、前記対象サーバ装置に対して送信すべき所定の送信データをデータ部に含む第1のパケットを作成する処理を行う通信制御部と、前記第1のパケットの少なくとも一部を暗号化して送信用暗号データを作成するクライアント用暗号化処理部と」
を有することに相当する構成を含むものである。
また、引用発明の上記構成における、「クライアント端末101」が、「クライアント端末101」を送信元とし「主装置110」をあて先として、送信用の暗号化されたデータをデータ部に含む、「復号」前の「パケット」を作成して送信する手段を有することと、本願発明1の
「前記クライアント装置」は、
「前記クライアント装置を送信元とし前記中継サーバ装置をあて先として、暗号化した前記第1のパケットをカプセル化し、前記送信用暗号データをデータ部に含み、所定のパケット識別コードが書き込まれた第2のパケットを作成して送信するパケット送信部」
を有することとは、
「前記クライアント装置」は、
「前記クライアント装置を送信元とし前記中継サーバ装置をあて先として、前記送信用暗号データをデータ部に含む第2のパケットを作成して送信するパケット送信部」
を有することである点で共通する。
(エ)引用発明は、「ユーザAがサーバZにパケットを送った場合」の「サーバ122からの返答パケットに対しては、上に述べたものと逆の手順で、クライアント端末101にパケットが送られる」ものであるから、それぞれ「主装置110」に含まれる構成の動作である、「識別情報制御部114」が「ユーザに向けてのパケットを受け取ったのであれば、パケットの送信先をユーザのアドレスに戻し、アクセス制御部113に向けてパケットを送信」し、「アクセス制御部113」が「ユーザに向けてのパケットを受け取ると、ユーザ認証部112にパケットを送信し」、「ユーザ認証部112」が「ユーザへ向かうパケットを受け取ると、パケットをVPNトンネル経由でユーザに向けて送信」することにおいて、「識別情報制御部114」が「ユーザに向けてのパケットを受け取」ることは、「主装置110」が、「パケットに示された送信先に向けてのパケット」に対する「返答」すなわち応答として、「サーバ122」(「サーバZ」)から返信された「ユーザに向けてのパケット」を受信することであるといえる。
また、「ユーザ認証部112」が「ユーザへ向かうパケットを受け取ると、パケットをVPNトンネル経由でユーザに向けて送信」することにおける「ユーザへ向かうパケット」は、「識別情報制御部114」が「受け取った」「ユーザに向けてのパケット」の「送信先をユーザのアドレスに戻し」たものであり、「ユーザ認証部112」は「IPsecによる暗号通信機能があ」ることから、「ユーザ認証部112」が「パケットをVPNトンネル経由でユーザに向けて送信」することは、当該「送信先をユーザのアドレスに戻し」た「パケット」を暗号化して返信用の暗号化されたデータを作成し、「主装置110」を送信元とし「ユーザAが」すなわち「クライアント端末101」をあて先として、返信用の暗号化されたデータをデータ部に含む「VPNトンネル経由」で「送信」する「パケット」を作成し、作成した「VPNトンネル経由」で「送信」する「パケット」を「送信」することであるといえる。
また、上記暗号化の対象が「送信先をユーザのアドレスに戻し」た「パケット」の少なくとも一部であることは明らかである。
(オ)上記(イ)、(エ)から、引用発明の「主装置110」は、
「復号」前の「パケット」を受信し、そのデータ部に含まれている「クライアント端末101」で作成された送信用の暗号化されたデータを「復号」して暗号化前の「パケット」を復元する手段と、
復元された暗号化前の「パケット」の送信元を「変換用アドレス」に変更することにより「パケットに示された送信先に向けてのパケット」を作成し、作成した「パケットに示された送信先に向けてのパケットを送信」する手段と、
「パケットに示された送信先に向けてのパケット」に対する応答として「サーバZ」から返信された「ユーザに向けてのパケット」を受信し、「送信先をユーザのアドレスに戻し」た「パケット」の少なくとも一部を暗号化して返信用の暗号化されたデータを作成する手段と、
「主装置110」を送信元とし「クライアント端末101」をあて先として、返信用の暗号化されたデータをデータ部に含む「VPNトンネル経由」で「送信」する「パケット」を作成し、作成した「VPNトンネル経由」で「送信」する「パケット」を「送信」する手段と
を有するといえる。
そして、引用発明の上記構成において、返信用の暗号化されたデータをデータ部に含む「VPNトンネル経由」で「送信」する「パケット」、「VPNトンネル経由」で「送信」する「パケット」を「送信」する手段は、それぞれ、本願発明1の「前記返信用暗号データをデータ部に含む第5のパケット」、「パケット返信部」に相当する。
また、上記(ア)、(ウ)を踏まえると、引用発明の上記構成における、「主装置110」が、「復号」前の「パケット」を受信し、そのデータ部に含まれている送信用の暗号化されたデータを「復号」して暗号化前の「パケット」を復元する手段を有することと、本願発明1の
「前記中継サーバ装置は、前記第2のパケットを受信し、受信した第2のパケットに前記所定のパケット識別コードが書き込まれている場合、そのデータ部に含まれている前記送信用暗号データを復号して前記第1のパケットを復元する中継サーバ用復号処理部」
を有することとは、
「前記中継サーバ装置は、前記第2のパケットを受信し、そのデータ部に含まれている前記送信用暗号データを復号して前記第1のパケットを復元する中継サーバ用復号処理部」
を有することである点で共通し、引用発明の上記構成における、「主装置110」が、復元された暗号化前の「パケット」の送信元を「変換用アドレス」に変更することにより「パケットに示された送信先に向けてのパケット」を作成し、作成した「パケットに示された送信先に向けてのパケットを送信」する手段を有することと、本願発明1の
「前記中継サーバ装置」は、
「復元された前記第1のパケットの送信元を前記中継サーバ装置に変更することにより第3のパケットを作成し、作成した前記第3のパケットを送信するパケット転送部」
を有することとは、
「前記中継サーバ装置」は、
「復元された前記第1のパケットの送信元を特定のアドレスに変更することにより第3のパケットを作成し、作成した前記第3のパケットを送信するパケット転送部」
を有することである点で共通し、引用発明の上記構成における、「主装置110」が、「パケットに示された送信先に向けてのパケット」に対する応答として「サーバZ」から返信された「ユーザに向けてのパケット」を受信し、「送信先をユーザのアドレスに戻し」た「パケット」の少なくとも一部を暗号化して返信用の暗号化されたデータを作成する手段を有することと、本願発明1の
「前記中継サーバ装置」は、
「前記第3のパケットに対する応答として前記対象サーバ装置から返信され、前記所定のパケット識別コードが書き込まれていない第4のパケットを受信し、受信した第4のパケットに前記所定のパケット識別コードが書き込まれていない場合、その少なくとも一部を暗号化して返信用暗号データを作成する中継サーバ用暗号化処理部」
を有することとは、
「前記中継サーバ装置」は、
「前記第3のパケットに対する応答として前記対象サーバ装置から返信された第4のパケットを受信し、少なくとも一部を暗号化して返信用暗号データを作成する中継サーバ用暗号化処理部」
を有することである点で共通し、また、引用発明の「主装置110」は、本願発明1の
「前記中継サーバ装置を送信元とし前記クライアント装置をあて先として、前記返信用暗号データをデータ部に含む第5のパケットを作成し、作成した前記第5のパケットを送信するパケット返信部」
に相当する構成を有するものである。
(カ)上記(エ)の返信用の暗号化されたデータは、「サーバ122からの返答パケットに対して」、「クライアント端末101にパケットが送られる」際に、「送信先をユーザのアドレスに戻し」た「パケット」を暗号化したものであるから、「クライアント端末101」は、返信用の暗号化されたデータをデータ部に含む「パケット」を受信し、そのデータ部に含まれている返信用の暗号化されたデータを復号して、「送信先をユーザのアドレスに戻し」た「パケット」を復元する手段を有すること、及び、「送信先をユーザのアドレスに戻し」た「パケット」から、そのデータ部に含まれている返信データを取り出す処理を行うことが、いずれも明らかである。
また、本願発明1の「第6のパケット」は、その「あて先」が「前記クライアント装置に変更された」ものであるから、引用発明の「送信先をユーザのアドレスに戻し」た「パケット」は、本願発明1の「第6のパケット」に相当する。
この点について、上記(ア)、(オ)を踏まえると、引用発明の「クライアント端末101」が上記手段を有することと、本願発明1の
「前記クライアント装置は、更に、前記第5のパケットを受信し、そのデータ部に含まれている前記返信用暗号データを復号して前記第4のパケットを復元するクライアント用復号処理部」
を有することとは、
「前記クライアント装置は、更に、前記第5のパケットを受信し、そのデータ部に含まれている前記返信用暗号データを復号してパケットを復元するクライアント用復号処理部」
を有することである点で共通する。
また、引用発明の「クライアント端末101」が上記処理を行うことと、本願発明1の
「前記通信制御部は、更に、前記第6のパケットのデータ部に含まれている返信データを取り出す処理を行う」こととは、
「前記クライアント装置は、あて先が前記クライアント装置に変更された第6のパケットのデータ部に含まれている返信データを取り出す処理を行う」
ことである点で共通する。
イ 上記アから、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致する。
(一致点)
「アクセスの対象となる対象サーバ装置に対してネットワークを介して接続し、パケット通信を行うためのパケット通信システムであって、前記対象サーバ装置との間でパケット通信を行うクライアント装置と、前記クライアント装置と前記対象サーバ装置との間のパケット通信を中継する中継サーバ装置と、を備え、前記クライアント装置は、前記クライアント装置を送信元とし前記対象サーバ装置をあて先として、前記対象サーバ装置に対して送信すべき所定の送信データをデータ部に含む第1のパケットを作成する処理を行う通信制御部と、続きを表示(全17行)前記第1のパケットの少なくとも一部を暗号化して送信用暗号データを作成するクライアント用暗号化処理部と、前記クライアント装置を送信元とし前記中継サーバ装置をあて先として、前記送信用暗号データをデータ部に含む第2のパケットを作成して送信するパケット送信部と、を有し、前記中継サーバ装置は、前記第2のパケットを受信し、そのデータ部に含まれている前記送信用暗号データを復号して前記第1のパケットを復元する中継サーバ用復号処理部と、復元された前記第1のパケットの送信元を特定のアドレスに変更することにより第3のパケットを作成し、作成した前記第3のパケットを送信するパケット転送部と、前記第3のパケットに対する応答として前記対象サーバ装置から返信された第4のパケットを受信し、少なくとも一部を暗号化して返信用暗号データを作成する中継サーバ用暗号化処理部と、前記中継サーバ装置を送信元とし前記クライアント装置をあて先として、前記返信用暗号データをデータ部に含む第5のパケットを作成し、作成した前記第5のパケットを送信するパケット返信部と、を有し、前記クライアント装置は、更に、前記第5のパケットを受信し、そのデータ部に含まれている前記返信用暗号データを復号してパケットを復元するクライアント用復号処理部を有し、前記クライアント装置は、あて先が前記クライアント装置に変更され第6のパケットのデータ部に含まれている返信データを取り出す処理を行うパケット通信システム。」
ウ また、本願発明1と引用発明とは、以下の点で相違する。
(相違点1)
「第2のパケットを作成」する処理について、本願発明1では、「暗号化した前記第1のパケットをカプセル化」することが行われるものであるのに対して、引用発明では、「クライアント端末101」が「復号」前の「パケット」を作成」する際に、そのような処理が行われることが特定されるものではない点。
(相違点2)
「第2のパケット」の内容について、本願発明1では、「所定のパケット識別コードが書き込まれた」ものであるのに対し、引用発明では、「復号」前の「パケット」にそのようなデータが書き込まれることが特定されるものではない点。
(相違点3)
「前記第1のパケットを復元する」ことが、本願発明1では、「受信した第2のパケットに前記所定のパケット識別コードが書き込まれている場合」に行われるのに対して、引用発明では、そのような場合に暗号化前の「パケット」を復元することが特定されるものではない点。
(相違点4)
「第3のパケットを作成」する処理の「前記第1のパケットの送信元」の「変更」先が、本願発明1では、「前記中継サーバ装置」であるのに対して、引用発明では、「変換用アドレス」である点。
(相違点5)
本願発明1では、「第4のパケット」が、「前記所定のパケット識別コードが書き込まれていない」ものであり、「中継サーバ用暗号化処理部」の「暗号化」が、「受信した第4のパケットに前記所定のパケット識別コードが書き込まれていない場合」に行われるのに対して、引用発明では、「ユーザに向けてのパケット」が、本願発明1のように特定されるものではなく、また、「パケットをVPNトンネル経由でユーザに向けて送信」する際に暗号化が行われるものの、本願発明1のような場合に行われることが特定されるものではない点。
(相違点6)
「中継サーバ用暗号化処理部」の「暗号化」が、本願発明1では、「第4のパケット」を対象として行われるのに対して、引用発明では、「ユーザに向けてのパケット」を対象としてではなく、「送信先をユーザのアドレスに戻し」た「パケット」を対象として行われる点。
(相違点7)
「クライアント用復号処理部」が「復元する」ものが、本願発明1では、「前記第4のパケット」であるのに対して、引用発明では、「送信先をユーザのアドレスに戻し」た「パケット」である点。
(相違点8)
本願発明1の「前記クライアント装置」は、「復元された前記第4のパケットのあて先を前記クライアント装置に変更することにより第6のパケットを作成するパケット受信部」を有するのに対して、引用発明の「クライアント端末101」はそれを有するものではない点。
(相違点9)
「前記クライアント装置」における「データ部に含まれている返信データを取り出す処理」の実行主体が、本願発明1では、「前記通信制御部」であるのに対して、引用発明では、暗号化前の「パケット」を作成する処理の実行主体と同一であることが特定されるものではない点。
(相違点10)
本願発明1は、
「複数n台のクライアント装置とこれらn台のクライアント装置のそれぞれに対応づけられたn台の中継サーバ装置とを備え、各クライアント装置のパケット送信部は、それぞれ対応づけられた特定の中継サーバ装置宛に第2のパケットを送信し、各中継サーバ装置のパケット返信部は、それぞれ対応づけられた特定のクライアント装置宛に第5のパケットを送信する」
ものであるのに対して、引用発明は、「クライアント端末101,102」のそれぞれに対応付けられた複数の「主装置110」を備えることや、対応付けられた「クライアント端末」と「主装置110」との間でパケットを送受信することが特定されるものではない点。
(2)判断
事案に鑑みて、相違点10について先に検討する。
中継サーバ装置が、複数のクライアント装置のいずれかと他の通信装置との間で送受信されるパケットを中継する際、他の通信装置から中継サーバ装置を宛先として送信されたパケットを受信して、複数のクライアント装置のうちの適切なクライアント装置に送信するために、複数n台のクライアント装置とこれらn台のクライアント装置のそれぞれに対応づけられたn台の中継サーバ装置とを備えるものとした上で、各クライアント装置が、それぞれ対応付けられた特定の中継サーバ装置宛にパケットを送信し、かつ、各中継サーバ装置が、それぞれ対応付けられた特定のクライアント装置宛にパケットを送信することは、引用文献1~3には記載されておらず、本願の出願日前において周知技術であったともいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1~3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 本願発明2について
(1)対比
本願発明2と引用発明とを対比すると、本願発明2における本願発明1と共通の発明特定事項については上記1(1)アと同様であることから、両者は、同イの一致点において一致し、また、同ウの相違点1~9において相違するほか、次の相違点11において相違する。
(相違点11)
本願発明2は、
「前記パケット転送部が、復元された第1のパケットの送信元を示す情報を第3のパケットに埋め込む処理を行い、前記中継サーバ用暗号化処理部が、受信した第4のパケットに埋め込まれていた前記送信元を示す情報を読み出してパケット返信部に伝達する処理を行い、前記パケット返信部が、前記送信元を示す情報をあて先となるクライアント装置とする第5のパケットを作成する」
ものであるのに対して、引用発明は、「主装置110」に含まれる構成がそのような処理を行うことについて特定されるものではない点。
(2)判断
事案に鑑みて、相違点11について先に検討する。
中継サーバ装置が、複数のクライアント装置のいずれかと他の通信装置との間で送受信されるパケットを中継する際、他の通信装置から中継サーバ装置を宛先として送信されたパケットを受信して、複数のクライアント装置のうちの適切なクライアント装置に送信するために、中継サーバ装置において、クライアント装置から送信されたパケットの送信元を示す情報をパケットに埋め込む処理を行い、他の通信装置に送信し、かつ、他の通信装置から送信されたパケットに埋め込まれている送信元を示す情報を読み出して、当該送信元を示す情報を宛先となるクライアント装置とするパケットを作成することは、引用文献1~3には記載されておらず、本願の出願日前において周知技術であったともいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明2は、当業者であっても、引用文献1~3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 本願発明3について
(1)対比
本願発明3と引用発明とを対比すると、本願発明3における本願発明1と共通の発明特定事項については上記1(1)アと同様であることから、両者は、同イの一致点において一致し、また、同ウの相違点1~9において相違するほか、次の相違点12において相違する。
(相違点12)
本願発明3は、
「前記中継サーバ装置が、更に、通信情報記録部を有し、前記パケット転送部が、第3のパケットを送信する際に、復元された第1のパケットの送信元を示す情報と前記第3のパケットとの対応関係を示す対応関係情報を前記通信情報記録部に記録する処理を行い、前記パケット返信部が、第5のパケットを送信する際に、前記通信情報記録部に記録されている前記対応関係情報に基づいて、第5のパケットの送信先を決定する」
ものであるのに対して、引用発明は、「主装置110」に含まれる構成がそのような処理を行うことについて特定されるものではない点。
(2)判断
事案に鑑みて、相違点12について先に検討する。
中継サーバ装置が、複数のクライアント装置のいずれかと他の通信装置との間で送受信されるパケットを中継する際、他の通信装置から中継サーバ装置を宛先として送信されたパケットを受信して、複数のクライアント装置のうちの適切なクライアント装置に送信するために、中継サーバ装置が、他の通信装置にパケットを送信する際に、クライアント装置から送信されたパケットの送信元を示す情報と他の通信装置に送信するパケットとの対応関係を示す対応関係情報を記録し、クライアント装置にパケットを送信する際に、対応関係情報に基づいて、パケットの送信先を決定することは、引用文献1~3には記載されておらず、本願の出願日前において周知技術であったともいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明3は、当業者であっても、引用文献1~3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
4 本願発明4~17,20について
本願発明4~17,20は、本願発明1~3のいずれかを減縮した発明であり、相違点10~12のいずれかに係る構成を含むことから、本願発明1~3のいずれかと同様の理由により、当業者であっても、引用文献1~3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
5 本願発明18,19,21,22について
本願発明18,19,21,22は、「請求項1~16のいずれかに記載のパケット通信システム」における、それぞれ、「クライアント装置」、(「クライアント装置」に含まれる構成に関する)「プログラム」、「中継サーバ装置」、(「中継サーバ装置」に含まれる構成に関する)「プログラム」の発明であるから、いずれも、本願発明1~16のいずれかの「パケット通信システム」が存在することを前提とするものである。
そして、本願発明1~16については、上記1~4で述べたとおり、引用文献1~3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本願発明18,19,21,22も、引用文献1~3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
6 小括
以上のとおりであるから、当審拒絶理由は解消した。
第7 原査定について
令和5年8月23日に提出された手続補正書により補正された請求項1~22は、相違点10~12のいずれかに係る技術的事項を有するものとなった。
そして、少なくとも相違点10~12は実質的な相違点であるから、請求項1~13,16~22は原査定における引用文献Aに記載された発明ではなく、また、相違点10~12に係る技術的事項は、いずれも原査定における引用文献Aには記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1~22は、当業者であっても、原査定における引用文献Aに基づいて容易に発明をすることができたものではない。
よって、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-019414