審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2022-019037

動き推定を用いた一時的な穴のあるレンダリング

審判番号
2022-019037
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-527885
請求日
2022年11月25日
審決日
2024年04月17日
公報発行日
2024年10月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】アドバンスト・マイクロ・ディバイシズ・インコーポレイテッド
  • 【請求人代理人】早川 裕司
  • 【請求人代理人】佐野 良太
  • 【請求人代理人】村雨 圭介
  • 【請求人】エーティーアイ・テクノロジーズ・ユーエルシー
  • 【請求人代理人】早川 裕司
  • 【請求人代理人】佐野 良太
  • 【請求人代理人】村雨 圭介
審判長/審判官
  • 審判長 高橋 宣博
  • 審判官 川崎 優
  • 審判官 畑中 高行
分類
P18 .121-WZ (G06T) / P18 .537-WZ (G06T)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-527885「動き推定を用いた一時的な穴のあるレンダリング」拒絶査定不服審判事件〔令和 元年 5月23日国際公開、WO2019/099101、令和 3年 2月12日国内公表、特表2021-503669〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2018年(平成30年)9月19日を国際出願日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年11月20日 米国(US))とするものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 3年 9月17日 :手続補正書の提出 令和 4年 2月14日付け :拒絶理由通知書 同年 5月16日 :手続補正書及び意見書の提出 同年 7月19日付け :拒絶査定 同年11月25日 :拒絶査定不服審判請求書の提出 令和 5年 2月28日付け :拒絶理由通知(当審) 同年 6月28日 :手続補正書及び意見書の提出 同年 7月28日付け :最後の拒絶理由通知書(当審) 令和 6年 1月23日 :意見書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1~19に係る発明は、令和5年6月28日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~19の記載により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は特許請求の範囲の請求項1に記載される、次のとおりのものである。(記号A~Dは分説するために審判合議体が付したものであり、請求項1の記載を、記号A~Dを用いて、以下、「構成A」~「構成D」と称する。) 「【請求項1】 A 動き推定エンジンにおいて、第1画像の複数のユニット毎に、第2画像及び第3画像の対応するユニットを比較することによって動きベクトルを推定することであって、 A1 各ユニットは1つ以上のピクセルを含み、 A2 前記第2画像は、前記第1画像の直前にレンダリングされた画像を含み、前記第3画像は、前記第2画像の直前にレンダリングされた画像を含む、ことと、 B レンダリングプロセッサにおいて、前記複数のユニット毎に、前記ユニットの前記動きベクトルの大きさに基づいて、前記ユニットの前記1つ以上のピクセルがレンダリングされない確率を識別することと、 C 前記レンダリングプロセッサにおいて、識別された確率に基づいて、結果として得られるレンダリング画像の前記複数のユニットの各々のピクセルを選択的にレンダリングすることと、を含む、 D 方法。」 第3 引用文献の記載、及び引用発明、引用文献記載事項の認定 1 引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献1である特開2016-12354号公報には、以下の記載がある。(下線を強調のため当審で付した。以下同様。) (1)「【0001】 本発明は、グラフィックスシステムが行う適応的レンダリングに関する。 ・・・ 【0005】 本発明が解決しようとする課題は、適応的レンダリングを行うグラフィックスシステム及び方法を提供するところにある。本実施形態がなすべき技術的課題は、前述のところのような技術的課題に限定されるものではなく、以下の実施形態から他の技術的課題が類推される。 【課題を解決するための手段】 【0006】 一側面によって、グラフィックス・プロセッシングを行う方法において、以前フレームと現在フレームとの比較を介して、現在フレームの各タイルに含まれた客体の相対的なスピードを決定する段階と、該決定に基づいて、各タイルを、既定義のスピードカテゴリーに分類する段階と、該分類に基づいて、各タイルに適用されるサンプリングを決定する段階と、決定されたサンプリングに基づいて、各タイルに対するレンダリングを行う段階と、を含んでもよい。」 (2)「【0034】 図2は、本開示によるグラフィックスパイプライン200を示す。グラフィックスパイプライン200は、グラフィックス・ハードウェアを含むグラフィックス・プロセッシングユニット(GPU:graphics processing unit)を利用して遂行される。また、グラフィックスパイプライン200は、グラフィックスシステム(graphics system)に含まれてもよい。・・・タイルという用語は、イメージ内の隣接したピクセルセットを意味し、一実施形態によってタイルは、四角形状のブロックになる。・・・ 【0035】 一実施形態によって、ADサンプル生成部(adaptive desampling sample generator)205は、イメージの領域に係わるサンプリングパターン(sampling pattern)を調整することができる。イメージの領域は、4X4ピクセルブロックまたは16X16ピクセルブロックのようなピクセルブロックに対応するタイルになる。デサンプリング(desampling)は、現在フレームにおいてレンダリングまたはサンプリングされる各タイル当たりサンプルの個数を減らすことを意味する。・・・ 【0036】 一実施形態によって、n番目フレームにおいて、客体に係わるピクセルデータが、(n+1)番目フレームで再使用される(215)。また、n番目フレームにおいて、客体に係わるピクセルデータは、(n+1)番目フレームで再使用される可能性のために保存される。また、n番目フレームのバーテックス座標データは、(n+1)番目フレームにおいて、ピクセルのフレーム間モーションベクトルを決定するために利用される(220)。一実施形態によって、n番目フレームにおいて、ピクセルデータ及びバーテックス座標データは、(n+1)番目フレームでの使用のためにバッファメモリに保存される。 【0037】 図3は、一実施形態によるADサンプル生成部205を示す。一実施形態によって、速度(velocity)及びエッジ探知(edge detection)に基づいて、タイル領域内でのデサンプリング決定がなされる。例えば、エッジ探知は、深さ(depth/Z)でのエッジ探知を意味する。速度バッファ310は、現在フレーム及び以前フレームから、各バーテックス当たり座標情報を受信することができる。各ピクセルの速度は、現在フレーム及び以前フレームから受信された各バーテックス当たり座標情報を比較して決定される。 ・・・ 【0040】 ・・・速度及びエッジの存在に係わる情報は、タイルに係わるサンプルパターンを決定するために、サンプル生成部315によって利用される。一実施形態によって、エッジが探知される場合、フルサンプリング解像度が活用される。また、エッジが探知されず、タイルが第1臨界速度より速い速度を有する場合、第1低下サンプリングレートが利用される。また、エッジが探知されず、タイルが第2臨界速度より速い速度を有する場合、第2低下サンプリングレートが利用される。また、サンプリングレートの決定に、他の付加的な要素が考慮される。サンプルパターンの例としては、各ピクセル当たり少なくとも1つのサンプルであるフルサンプル解像度、各タイル内のピクセルの半分がサンプリングされる2分の1解像度(one-half resolution)、各タイル内のピクセルの4分の1がサンプリングされる4分の1解像度(one-quarter resolution)になる。また、各サンプリングレートのために、臨界パラメータによって調節される複数のサンプリングレートが提供される。さらに、選択されたサンプリングレートは、選択されたブロック/タイルサイズに対して最適化される。例えば、4X4ブロックについては、4サンプル、8サンプルまたは16サンプルのサンプリングレートが適用される。また、一実施形態によって、1セットに含まれたサンプリングレートそれぞれは、臨界パラメータによって調節される。従って、サンプリングレートの個数Nは、ブロック/タイルの大きさ、または他の要素のような細部事項に基づいて決定される。 ・・・ 【0043】 図4は、一実施形態によるスピード体制(speed regimes)を示す。スピード体制という用語は、スピードカテゴリーという用語と混用される(代替的に使用されてもよい)。モーション(すなわち、動き)は、客体のモーションとカメラのモーションとの組み合わせにもなる。スピードは、タイル内のモーションベクトルの大きさ(magnitude)に対応する。例えば、該スピードは、受容可能な視覚的クオリティを有するピクセルブロックで必要とするサンプルの個数を示す指示子(indicator)でもある。肉眼は、動く客体において、高い頻度(frequency)を認知することができないために、ピクセルブロックにおいて、モーションが所定の臨界スピードKfast1より速い場合、サンプルの個数は減少する。例えば、4X4タイルにおいて、8個のサンプルになる。また、スピードが、所定の臨界スピードKfast2より速い場合、サンプルの個数はさらに減少する。例えば、4X4タイルにおいて4個のサンプルになる。 ・・・ 【0045】 一実施形態によって、現在フレームと以前フレームとのバーテックス位置データの差分(differencing)によって、カメラスクリーン空間での動きが獲得される。客体のピクセルが、フレーム間でいかほど動いたかということに基づいたモーションベクトルの大きさを計算し、タイルのスピード体制を、タイル対タイル基盤に分類することができる。」 (3)「【0046】 ・・・また、グラフィックスパイプライン200は、シーンジオメトリ(scene geometry)のために、モーションベクトルを計算する(520)。また、グラフィックスパイプライン200は、ピクセル当たりモーションベクトルを計算する(525)。グラフィックスパイプライン200は、タイル内でモーションの範囲を計算する(530)。段階535では、グラフィックスパイプライン200は、以前の段階から獲得された情報に基づいて、1)4X4ブロック内において、4サンプル、8サンプルまたは16サンプルに対するレンダリング及び補間(interpolation)を行うか、2)4X4ブロック内において、8個サンプルに対するレンダリング及び8個サンプルに対する移送を行うか否かということを決定することができる。」 (4)引用文献1の図2、3、4には以下の記載がある。 「【図2】 [図:0001414569000001.jpg] 」 「【図3】 [図:0001414569000002.jpg] 」 「【図4】 [図:0001414569000003.jpg] 」 2 引用発明の認定 (1)上記1の(1)の記載から、引用文献1には、 「グラフィックスシステムが行う適応レンダリング方法において、以前フレームと現在フレームとの比較を介して、現在フレームの各タイルに含まれた客体の相対的なスピードを決定する段階と、該決定に基づいて、各タイルを、既定義のスピードカテゴリーに分類する段階と、該分類に基づいて、各タイルに適用されるサンプリングを決定する段階と、決定されたサンプリングに基づいて、各タイルに対するレンダリングを行う段階と、を含」むこと が記載されているといえる。 (2)上記1の(4)の図2、3の記載から、引用文献1において、グラフィックスパイプライン200は、ADサンプル生成部205を含むことが、ADサンプル生成部205はサンプル生成部315を含むことが見てとれる。また、上記1の(4)の図4の記載から、Kfast2はKfast1より大きな値であることが見てとれる。 さらに、上記1の(2)の記載から、引用文献1には、 「グラフィックスシステム」「に含まれ」る「グラフィックスパイプライン200」について(【0034】)、「タイルは、四角形状のブロック」であり(【0034】)、 「ADサンプル生成部205は、イメージの領域に係わるサンプリングパターン」「を調整」し(【0035】)、「速度」「に基づいて、タイル領域内でのデサンプリング決定がなされ」、「各ピクセルの速度は、現在フレーム及び以前フレームから受信された各バーテックス当たり座標情報を比較して決定され」(【0037】)、「速度」「に係わる情報は、タイルに係わるサンプルパターンを決定するために、サンプル生成部315によって利用され」、「サンプルパターンの例としては、各ピクセル当たり少なくとも1つのサンプルであるフルサンプル解像度、各タイル内のピクセルの半分がサンプリングされる2分の1解像度」、「各タイル内のピクセルの4分の1がサンプリングされる4分の1解像度」「にな」り、「4X4ブロックについては、4サンプル、8サンプルまたは16サンプルのサンプリングレートが適用され」(【0040】)、 「スピードは、タイル内のモーションベクトルの大きさ」「に対応」し、「ピクセルブロックにおいて、モーションが所定の臨界スピードKfast1より速い場合」、「4X4タイルにおいて、8個のサンプルにな」り、「所定の臨界スピードKfast2より速い場合」、「4X4タイルにおいて4個のサンプルにな」り、(【0043】)、 「現在フレームと以前フレームとのバーテックス位置データの差分」「によって」「動きが獲得され」「客体のピクセルが、フレーム間でいかほど動いたかということに基づいたモーションベクトルの大きさを計算し、タイルのスピード体制を、タイル対タイル基盤に分類することができ」る(【0045】)こと が記載されているといえる。 ここで、上記1の(2)の【0035】の「デサンプリング」「は、現在フレームにおいてレンダリングまたはサンプリングされる各タイル当たりサンプルの個数を減らすことを意味する」という記載から、上記【0037】の「速度」「に基づいて、タイル領域内でのデサンプリング決定がなされ」は、「速度」「に基づいてタイル領域内での現在フレームにおいてレンダリング又はサンプリングされる各タイル当たりサンプルの個数を減らす決定がなされ」と言い換えることができる。 また、【0043】に「スピード体制という用語は、スピードカテゴリーという用語と」「代替的に使用され」ることから、上記【0045】の「客体のピクセルが、フレーム間でいかほど動いたかということに基づいたモーションベクトルの大きさを計算し、タイルのスピード体制を、タイル対タイル基盤に分類することができ」は、「客体のピクセルが、フレーム間でいかほど動いたかということに基づいたモーションベクトルの大きさを計算し、タイルのスピードカテゴリーを、タイル対タイル基盤に分類することができ」ると言い換えることができる。 (3)上記1の(3)の【0046】から、引用文献1には、「グラフィックスパイプライン200は、ピクセル当たりモーションベクトルを計算」し、「タイル内でモーションの範囲を計算」し、「4X4ブロック内において、4サンプル、8サンプルまたは16サンプルに対するレンダリング」「を行うか」「否か」「を決定」すること が記載されているといえる。 (4)以上の記載によれば、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。(符号a~dは合議体が付した。以下、「構成a」~「構成d」等という。) (引用発明) a グラフィックスシステムが行う適応レンダリング方法において、以前フレームと現在フレームとの比較を介して、現在フレームの各タイルに含まれた客体の相対的なスピードを決定する段階と、該決定に基づいて、各タイルを、既定義のスピードカテゴリーに分類する段階と、該分類に基づいて、各タイルに適用されるサンプリングを決定する段階と、決定されたサンプリングに基づいて、各タイルに対するレンダリングを行う段階と、を含み(【0001】、【0005】、【0006】)、 b グラフィックスシステムに含まれるグラフィックスパイプライン200は、ADサンプル生成部205を含み、ADサンプル生成部205はサンプル生成部315を含み、(図2、図3) b1 グラフィックスパイプライン200は、ピクセル当たりモーションベクトルを計算し、タイル内でモーションの範囲を計算し、4X4ブロック内において、4サンプル、8サンプルまたは16サンプルに対するレンダリングを行うか否かを決定し(【0046】)、 b11 現在フレームと以前フレームとのバーテックス位置データの差分によって動きが獲得され、客体のピクセルが、フレーム間でいかほど動いたかということに基づいたモーションベクトルの大きさを計算し、タイルのスピードカテゴリーを、タイル対タイル基盤に分類することができ、(【0045】) b2 ADサンプル生成部205は、イメージの領域に係わるサンプリングパターンを調整し、速度に基づいて、タイル領域内での現在フレームにおいてレンダリング又はサンプリングされる各タイル当たりサンプルの個数を減らす決定がなされ、(【0037】) b3 各ピクセルの速度は、現在フレーム及び以前フレームから受信された各バーテックス当たり座標情報を比較して決定され、速度に係わる情報は、タイルに係わるサンプルパターンを決定するために、サンプル生成部315によって利用され、(【0040】) b31 サンプルパターンの例としては、各ピクセル当たり少なくとも1つのサンプルであるフルサンプル解像度、各タイル内のピクセルの半分がサンプリングされる2分の1解像度、各タイル内のピクセルの4分の1がサンプリングされる4分の1解像度になり、4X4ブロックについては、4サンプル、8サンプルまたは16サンプルのサンプリングレートが適用され、(【0040】) b32 スピードは、タイル内のモーションベクトルの大きさに対応し、ピクセルブロックにおいて、モーションが所定の臨界スピードKfast1より速い場合、4X4タイルにおいて、8個のサンプルになり、所定の臨界スピードKfast1より速い所定の臨界スピードKfast2より速い場合、4X4タイルにおいて4個のサンプルになる、(【0043】、図4) a 適応レンダリング方法。 3 引用文献2の記載 同じく原査定の拒絶の理由に周知技術として引用された、引用文献2である、特表2012-525042号公報には、以下の記載がある。 「【0038】 図4は、モーメント候補がどのように発生されるかを示す。ブロック401は、オブジェクト402を含む。手前のフレームにおけるオブジェクトの位置も、ピクセルエリア404に示されている。ブロック401に対する動き推定の間に、システムは、候補ベクトルのセットから動きベクトル403を選択する。この動きベクトルは、オブジェクトの動きを、手前のフレームインターバル中にピクセルエリア404からブロック401へ反射する。このベクトルは、現在フレームのブロック401に存在して一定速度で移動するオブジェクトが、おそらく、次のフレームのブロック406へ移動することを示唆する。オブジェクトが同じ速度で移動し続けるとすれば、サイズ及び方向は403に等しいが空間的にオフセットしている動きベクトル405は、動き続けるという良好な予想である。このベクトル候補は、現在401にあるオブジェクトが次のフレームのブロック406へ移動し続けることを予想する。それ故、ブロック401において動き推定により選択されたベクトルのコピーは、現在ブロック401の位置をベクトルそれ自体の値だけオフセットするときに到達する行先ブロックであるブロック406に対応する位置においてメモリに記憶される。」 4 引用文献2記載事項の認定 上記3の記載から、引用文献2には、周知技術として、 ブロック401は、オブジェクト402を含み、手前のフレームにおけるオブジェクトの位置も、ピクセルエリア404に示されており、ブロック401に対する動き推定の間に、動きベクトル403を選択し、この動きベクトルは、オブジェクトの動きを、手前のフレームインターバル中にピクセルエリア404からブロック401へ反射し、現在フレームのブロック401に存在して一定速度で移動するオブジェクトが、次のフレームのブロック406へ移動することを示唆すること (以下、「引用文献2記載事項」という。) が記載されているものと認められる。 第4 本願発明と引用発明との対比及び相違点に対する判断 1 本願発明と上記引用発明とを対比する。 (1)引用発明の構成a、bを踏まえた構成b1の「グラフィックスパイプライン200」は「ピクセル当たりモーションベクトルを計算し、タイル内でモーションの範囲を計算」するものであり、構成b11において特定されるように「現在フレームと以前フレームのバーテックス位置データの差分によって動きが獲得され、客体のピクセルが、フレーム間でいかほど動いたかに基づいたモーションベクトルの大きさを計算」することで、構成aにおいて特定されるように「以前フレームと現在フレームとの比較を介して、現在フレームの各タイルに含まれた客体の相対的なスピードを決定する」といえる。 そうすると、引用発明の「グラフィックスシステムに含まれるグラフィックスパイプライン200」における「モーションベクトルを計算」するための構成は、構成Aの「動き推定エンジン」に対応し、引用発明において、「現在フレームと以前フレームのバーテックス位置データの差分によって動きが獲得され、客体のピクセルが、フレーム間でいかほど動いたかということに基づいたモーションベクトルの大きさを計算」することで、「以前フレームと現在フレームとの比較を介して、現在フレームの各タイルに含まれた客体の相対的なスピードを決定する」ことは、構成Aにおける「第1画像の複数のユニット毎に」2つの画像の対応するユニットを比較することによって動きベクトルを推定することであって、各ユニットは1つ以上のピクセルを含」むことに対応する。 また、引用発明は、構成b31に「各タイル内のピクセル」について「各タイル内のピクセルの半分(ないし4分の1)がサンプリングされる」という記載があることから、各タイルは1つ以上のピクセルを含むといえるが、これは構成A1の「各ユニットは1つ以上のピクセルを含」むことに相当する。 ただし、動きベクトルを推定するために対応するユニットを比較する2つの画像について、構成A2を踏まえた構成Aでは、「第2画像及び第3画像の対応するユニットを比較する」ものであって、「前記第2画像は、前記第1画像の直前にレンダリングされた画像を含み、前記第3画像は、前記第2画像の直前にレンダリングされた画像を含む」、すなわち、第1画像の直前にレンダリングされた画像と、第2画像の直前にレンダリングされた画像の対応するユニットを比較するのに対して、 引用発明の構成a、b11では、「以前フレームと現在フレームとの比較を介して、現在フレームの各タイルに含まれた客体の相対的なスピードを決定する」ものであって、「現在フレームと以前フレームとのバーテックス位置の差分によって動きが獲得され」「タイルのスピードカテゴリーを、タイル対タイル基盤に分類する」点、すなわち、現在フレームと以前フレームの対応する点を比較することで、対応する四角形のブロックであるタイルの比較を行う点で相違する。 (2)引用発明の構成b1、b11において、「グラフィックスパイプライン200は、ピクセル当たりモーションベクトルを計算し、タイル内でモーションの範囲を計算し、4X4ブロック内において、4サンプル、8サンプルまたは16サンプルに対するレンダリングを行うか否かを決定」するにあたって、「現在フレームと以前フレームとのバーテックス位置データの差分によって動きが獲得され、客体のピクセルが、フレーム間でいかほど動いたかということに基づいたモーションベクトルの大きさを計算し、タイルのスピードカテゴリーを、タイル対タイル基盤に分類する」ものであるから、動きベクトルに基づいてタイルのスピードカテゴリーを得て、タイル毎に分類するものといえる。 そして、引用発明の構成b2における、グラフィックスパイプライン200に含まれるADサンプル生成部205は、「イメージの領域に係わるサンプリングパターンを調整し、速度に基づいて、タイル領域内での現在フレームにおいてレンダリング又はサンプリングされる各タイル当たりサンプルの個数を減らす決定」を行うものである。 そして、引用発明の構成b3、b31における、グラフィックスパイプライン200に含まれるサンプル生成315において、「速度に係わる情報は、タイルに係わる、タイルに係るサンプリングパターンを決定するために」「利用される」ものであって、「サンプルパターンの例としては、各ピクセル当たり少なくとも1つのサンプルであるフルサンプル解像度、各タイル内のピクセルの半分がサンプリングされる2分の1解像度、各タイル内のピクセルの4分の1がサンプリングされる4分の1解像度になり、4X4ブロックについては、4サンプル、8サンプルまたは16サンプルのサンプリングレートが適用され」る、すなわち、グラフィックスパイプライン200において、速度に基づいてタイルの当たりのサンプルの個数を減らすものであり、サンプルの減らし方としては4X4ブロックについて、4サンプル、8サンプル、16サンプルのサンプリングレートが適用される、すなわち、16サンプルのブロックに対して、4サンプルが残る(サンプルのうち12/16がレンダリングされないようにする)、8サンプルが残る(サンプルのうち8/16がレンダリングされないようにする)、16サンプルが残る(サンプルのうち0/16がレンダリングされないようにする)のいずれかのパターンに決定される。 その結果、引用発明の構成b32にあるように、「スピードは、タイル内のモーションベクトルの大きさに対応し、ピクセルブロックにおいて、モーションが所定の臨界スピードKfast1より速い場合、4X4タイルにおいて、8個のサンプルになり、Kfast1より速い所定の臨界スピードKfast2より速い場合、4X4タイルにおいて4個のサンプルになる」ようにする。すなわち、タイル内の動きベクトルの大きさに対応して、4×4(16サンプルの)タイルに対して、4サンプルが残る(サンプルのうち12/16の確率でレンダリングされないようにする)、8サンプルが残る(サンプルのうち8/16の確率でレンダリングされないようにする)、16サンプルが残る(サンプルのうち0/16の確率でレンダリングされないようにする)、のいずれかに決定されるといえる。 そうすると、引用発明のグラフィックスパイプライン200のうちの「ADサンプル生成部205」と「サンプル生成部315」を含み、かつレンダリングを行う部分を含む構成において、構成Bと同様に「前記複数のユニット毎に、前記ユニットの前記動きベクトルの大きさに基づいて、前記ユニットの前記1つ以上のピクセルがレンダリングされない確率を識別する」ものであり、グラフィックスパイプライン200のうち上記の「「ADサンプル生成部205」と「サンプル生成部315」を含み、かつレンダリングを行う部分を含む構成」が、構成Bの「レンダリングプロセッサ」に相当する。 (3)引用発明の構成aの「グラフィックスシステム」、すなわち、グラフィックスパイプライン200を含む部分において、決定されたサンプリングに基づいて、各タイルに対するレンダリングを行うことから、グラフィックスシステムに含まれるグラフィックスパイプライン200のうち、上記の「「ADサンプル生成部205」と「サンプル生成部315」を含み、かつレンダリングを行う部分を含む構成」が、構成Cの「識別された確率に基づいて、結果として得られるレンダリング画像の前記複数のユニットの各々のピクセルを選択的にレンダリングする」「レンダリングプロセッサ」に相当する。 (4)引用発明は構成aのようにレンダリング方法についての発明であることから、構成Dと同様に「方法」の発明である。 (5)以上(1)~(4)を踏まえて、本願発明と引用発明とを対比すると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 (一致点) A’ 動き推定エンジンにおいて、第1画像の複数のユニット毎に、2つの画像の対応するユニットを比較することによって動きベクトルを推定することであって、 A1 各ユニットは1つ以上のピクセルを含み、 A2’ 前記第2画像は、前記第1画像の直前にレンダリングされた画像を含む、ことと、 B レンダリングプロセッサにおいて、前記複数のユニット毎に、前記ユニットの前記動きベクトルの大きさに基づいて、前記ユニットの前記1つ以上のピクセルがレンダリングされない確率を識別することと、 C 前記レンダリングプロセッサにおいて、識別された確率に基づいて、結果として得られるレンダリング画像の前記複数のユニットの各々のピクセルを選択的にレンダリングすることと、を含む、 D 方法。 (相違点) 動きベクトルを推定することにおける第1画像の複数のユニット毎に、画像の対応するユニットを比較する処理について、 本願発明は「第2画像及び第3画像の対応するユニットを比較する」ものであって、「前記第2画像は、前記第1画像の直前にレンダリングされた画像を含み、前記第3画像は、前記第2画像の直前にレンダリングされた画像を含む」、すなわち、第1画像の直前にレンダリングされた画像と、第2画像の直前にレンダリングされた画像の対応するユニットを比較するのに対して、 引用発明は、「以前フレームと現在フレームとの比較を介して、現在フレームの各タイルに含まれた客体の相対的なスピードを決定する」ものであって、「現在フレームと以前フレームとのバーテックス位置の差分によって動きが獲得され」「タイルのスピードカテゴリーを、タイル対タイル基盤に分類する」点、すなわち、現在フレームと以前フレームの対応する点を比較することで、対応する四角形状のブロックであるタイルの比較を行う点。 2 相違点に対する検討及び判断 上記相違点について検討する。 引用文献2記載事項によれば、 ブロック401は、オブジェクト402を含み、手前のフレームにおけるオブジェクトの位置も、ピクセルエリア404に示されており、ブロック401に対する動き推定の間に、動きベクトル403を選択し、この動きベクトルは、オブジェクトの動きを、手前のフレームインターバル中にピクセルエリア404からブロック401へ反射し、現在フレームのブロック401に存在して一定速度で移動するオブジェクトが、次のフレームのブロック406へ移動することを示唆すること がいえる。 上記の事項は、手前のフレームにおけるオブジェクトのピクセルエリア404が現在フレームのブロック401へと一定速度で移動し、次のフレームのブロック406へ移動することを示唆していることから、次のフレームを現在フレームとして、現在フレームを1つ前のフレームとして、手前のフレームをその1つ前のフレームとして考えると、引用文献2記載事項において示されているのは、 一定速度で移動するオブジェクトの動きについて、1つ前のフレームとその1つ前のフレームにおけるブロックの動きを元にして、現在フレームに含まれるオブジェクトのブロックの速度を得ること といえる。 そして、引用発明における客体のスピード、すなわちオブジェクトの動きベクトルを得るという技術において、周知技術である、オブジェクトの動きベクトルを得るという共通の目的を有する引用文献2記載事項を適用するという動機はあるものといえ、引用発明において、1つ前のフレームとその1つ前のフレームにおけるブロックの動きを元にして、現在フレームと1つ前のフレームの動きを得るように構成することは当業者ならば容易になしえたものといえ、このように構成された発明は、本件明細書【0007】のように、「N画像とN-1画像との間に十分な相関があり、N 画像が直前のN-1画像の続きであると結論付けることができる場合、レンダリングプロセッサは、動きベクトルフィールドが有効である(例えば、シーン変化がなかった)こと、及び、次の画像(「N+1」画像と呼ばれる)のユニットが同じ軌跡に沿って続く」ものである、本願発明に他ならない。 以上を総合すると、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載事項のような周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 3 審判請求人の主張について 審判請求人は、令和4年11月25日付け審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」の「(2)拒絶理由について」において、引用文献1~2には、「ブロック内の個々のピクセル毎に」、レンダリングされない(穴になる)確率を識別することについて何ら言及されておりません」、「したがって、引用文献1~2には、本願請求項1に係る発明の「レンダリングプロセッサにおいて、前記複数のユニット毎に、前記ユニットの前記動きベクトルの大きさに基づいて、前記ユニットを含むピクセルがレンダリングされない確率を識別すること」という構成と同等の構成が何等開示又は示唆されていない」旨の主張をしており、令和5年6月28日付け意見書の「3.拒絶理由通知について」の「(1)理由1及び理由2について」においても同様の主張を行っている。 しかしながら、本願発明は「ブロック内の個々のピクセル毎にレンダリングされない確率を識別する」ことについては特定されていないし、本願明細書の発明の詳細な説明中にも「ブロック内の個々のピクセル毎にレンダリングされない確率を識別する」ことを裏付ける記載は見当たらない。 一方、審判請求人は、令和6年1月23日付け意見書の「2.拒絶理由について」の「(2)理由2について」において、「本願明細書には、画像内のユニット(領域)ごとに、当該ユニット(領域)に対応する動きベクトルに基づいて、当該ユニット(領域)における穴ピクセル(レンダリングされないピクセル)の割合を示す確率マップを生成可能であることが明らかに開示されております。具体的に説明すると、例えば、画像内の所定のユニット(領域)に対応する動きベクトルの大きさに基づいて、当該所定のユニット(領域)において穴となるピクセル(レンダリングされないピクセル)の割合が10%であると識別された場合には、当該所定のユニット(領域)内の10%のピクセルが穴(レンダリングされない)となるようにレンダリングされることになります。」 上記主張については、上記1の(2)における本願発明と引用発明との対比において示したように、引用発明において、タイル内の動きベクトルの大きさに対応して、4×4(16サンプルの)タイルに対して、4サンプルが残る(サンプルのうち12/16の確率でレンダリングされないようにする)、8サンプルが残る(サンプルのうち8/16の確率でレンダリングされないようにする)、16サンプルが残る(サンプルのうち0/16の確率でレンダリングされないようにする)、のいずれかに決定されるものであり、これは本願発明の構成Bの「レンダリングプロセッサにおいて、前記複数のユニット毎に、前記ユニットの前記動きベクトルの大きさに基づいて、前記ユニットの前記1つ以上のピクセルがレンダリングされない確率を識別すること」に相当する構成を具備しているといえる。 以上を総合すると、審判請求人の主張は採用できない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載事項のような周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2022-019037

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決39件(アドバンスト・マイクロ・ディバイシズ・インコーポレイテッド、エーティーアイ・テクノロジーズ・ユーエルシー)
  • 2025-010499拒絶査定不服審判 / 2026-04-20 / 原査定取消(特許/登録すべき)マルチチップモジュール上の物理レイヤインタフェースに対するデスキュー方法
    同じ当事者: アドバンスト・マイクロ・ディバイシズ・インコーポレイテッド、エーティーアイ・テクノロジーズ・ユーエルシー
  • 2023-000380拒絶査定不服審判 / 2024-04-18 / 原査定取消(特許/登録すべき)メモリに記憶されたデータにアクセスする方法、メモリシステム、コンピュータシステム
    同じ当事者: アドバンスト・マイクロ・ディバイシズ・インコーポレイテッド、エーティーアイ・テクノロジーズ・ユーエルシー
  • 2019-005027拒絶査定不服審判 / 2020-11-20 / 原査定取消(特許/登録すべき)電源モニタを用いた電源の較正
    同じ当事者: アドバンスト・マイクロ・ディバイシズ・インコーポレイテッド、エーティーアイ・テクノロジーズ・ユーエルシー
  • 2025-007735拒絶査定不服審判 / 2026-06-01 / 原査定取消(特許/登録すべき)複数のデータのストリームを含む圧縮済み入力データを展開する展開エンジン
    同じ当事者: アドバンスト・マイクロ・ディバイシズ・インコーポレイテッド
  • 2025-005327拒絶査定不服審判 / 2026-04-14 / 原査定取消(特許/登録すべき)非可逆復元を伴う非可逆有意圧縮
    同じ当事者: アドバンスト・マイクロ・ディバイシズ・インコーポレイテッド
同じ論点・分野の審決(審決分類)525件(121・G06T、537・G06T)
  • 2025-009927拒絶査定不服審判 / 2026-08-28 / 原査定取消(特許/登録すべき)画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラム
    共通の審決分類: 121・G06T、537・G06T
  • 2025-012898拒絶査定不服審判 / 2026-08-21 / 原査定取消(特許/登録すべき)プログラム
    共通の審決分類: 121・G06T、537・G06T
  • 2025-007911拒絶査定不服審判 / 2026-08-21 / 原査定取消(特許/登録すべき)情報処理方法及びコンピュータプログラム
    共通の審決分類: 121・G06T、537・G06T
  • 2025-012681拒絶査定不服審判 / 2026-08-17 / 原査定取消(特許/登録すべき)画像識別システム、及び画像識別方法
    共通の審決分類: 121・G06T、537・G06T
  • 2025-005392拒絶査定不服審判 / 2026-08-04 / 原査定取消(特許/登録すべき)デジタルメイクアップアーティスト
    共通の審決分類: 121・G06T、537・G06T

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存