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特許拒絶査定不服審判

2022-018820

内面に潤滑液コーティング層を備えたダイレクトブロー空ボトルおよびボトル詰め水中油型乳化食品

審判番号
2022-018820
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-124361
請求日
2022年11月24日
審決日
2024年10月08日
公報発行日
2024年12月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】東洋製罐株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
  • 【請求人】キユーピー株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
  • 【請求人】メビウスパッケージング株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 田口 傑
  • 審判官 長清 吉範
  • 審判官 藤井 眞吾
分類
P18 .572-Z (B65D) / P18 .575-Z (B65D) / P18 .121-Z (B65D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第5項第1号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-124361「内面に潤滑液コーティング層を備えたダイレクトブロー空ボトルおよびボトル詰め水中油型乳化食品」拒絶査定不服審判事件〔令和2年1月9日出願公開、特開2020-1773〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成30年6月29日の出願であって、その主な手続きの経緯は以下の通りである。 令和4年 3月15日付け:拒絶理由の通知 令和4年 5月18日 :意見書、手続補正書の提出 令和4年 8月16日付け:拒絶査定(謄本送達日:同月23日) 令和4年11月24日 :審判請求書と同時に手続補正書の提出 第2 令和4年11月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和4年11月24日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。以下、請求項1に係る発明から順に「補正後発明1」、「補正後発明2」・・・という。)。 【請求項1】 含水物質が充填されて使用されるダイレクトブロー空ボトルにおいて、 前記含水物質に対する滑性を向上させるための潤滑液により形成された潤滑液コーティング層、該コーティング層の下地となっている内面樹脂層、該潤滑液の拡散を防止するための液拡散防止性酸素バリア層、酸素吸収層、酸素バリア層及び外面樹脂層が、内面から外面に向かってこの順で形成されていると共に、 前記含水物質が粘度30Pa・s以上の水中油型乳化食品であり、 前記内面樹脂層が低密度ポリエチレンにより形成され、且つ該内面樹脂層が、前記潤滑液コーティング層を除いたボトル総質量に対して15~45質量%となる厚みで形成されていると共に、 前記内面樹脂層中には、前記潤滑液コーティング層から潤滑液の一部が浸透しており、 前記液拡散防止性酸素バリア層が、エチレン・ビニルアルコール共重合体と低密度ポリエチレン、さらに、アイオノマーを含有しており、 前記潤滑液として油性液体が使用されることを特徴とするダイレクトブロー空ボトル。 【請求項2】 前記内面樹脂層中には、前記潤滑液が、0.87~2.34g/m2の量で浸透しており、 前記液拡散防止性酸素バリア層は、前記エチレン・ビニルアルコール共重合体と低密度ポリエチレンとを、95:5~50:50の質量比で含み、且つ前記アイオノマーを該エチレン・ビニルアルコール共重合体と低密度ポリエチレンとの合計量100質量部当り、1~49質量部の量で含有している請求項1に記載のダイレクトブロー空ボトル。 【請求項3】 前記油性液体として食用油が使用される請求項1または2に記載のダイレクトブロー空ボトル。 【請求項4】 前記食用油として、該水中油型乳化食品に含まれている植物油が選択されている請求項3に記載のダイレクトブロー空ボトル。 【請求項5】 前記内面樹脂層は、滑剤フリーであるか、または、前記外面樹脂層に比して、滑剤の添加量が少ない請求項1~4の何れかに記載のダイレクトブロー空ボトル。 【請求項6】 請求項1~5の何れかに記載のダイレクトブロー空ボトルに充填されたボトル詰め水中油型乳化食品。 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和4年5月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである(以下、請求項1に係る発明から順に「補正前発明1」、「補正前発明2」・・・という。)。 【請求項1】 含水物質が充填されて使用されるダイレクトブロー空ボトルにおいて、 前記含水物質に対する滑性を向上させるための潤滑液により形成された潤滑液コーティング層、該コーティング層の下地となっている内面樹脂層、該潤滑液の拡散を防止するための液拡散防止性酸素バリア層、酸素吸収層、酸素バリア層及び外面樹脂層が、内面から外面に向かってこの順で形成されていると共に、 前記含水物質が粘度30Pa・s以上の水中油型乳化食品であり、 前記内面樹脂層が低密度ポリエチレンにより形成され、且つ該内面樹脂層が、前記潤滑液コーティング層を除いたボトル総質量に対して15~45質量%となる厚みで形成されていると共に、 前記液拡散防止性酸素バリア層が、エチレン・ビニルアルコール共重合体と低密度ポリエチレン、さらにアイオノマーを含有していることを特徴とするダイレクトブロー空ボトル。 【請求項2】 前記潤滑液コーティング層が、1.0~35.0g/m2の厚みで形成されている請求項1に記載のダイレクトブロー空ボトル。 【請求項3】 前記潤滑液として油性液体が使用される請求項1または2に記載のダイレクトブロー空ボトル。 【請求項4】 前記油性液体として食用油が使用される請求項3に記載のダイレクトブロー空ボトル。 【請求項5】 前記食用油として、該水中油型乳化食品に含まれている植物油が選択されている請求項4に記載のダイレクトブロー空ボトル。 【請求項6】 前記内面樹脂層は、滑剤フリーであるか、または、前記外面樹脂層に比して、滑剤の添加量が少ない請求項1~5の何れかに記載のダイレクトブロー空ボトル。 【請求項7】 前記内面樹脂層中には、前記潤滑液の一部が浸透している請求項1~6の何れかに記載のダイレクトブロー空ボトル。 【請求項8】 請求項1~7の何れかに記載のダイレクトブロー空ボトルに充填されたボトル詰め水中油型乳化食品。 2 補正の適否 本件補正の適否を検討するにあたり、まず、本件補正の目的を検討する。 (1)特許法第17条の2第5項第2号について 特許法第17条の2第5項第2号で規定する特許請求の範囲の減縮は、同法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。そうすると、請求項の発明特定事項を限定して、これを減縮補正することによって、当該請求項がそのままその補正後の請求項として維持されるという態様による補正を定めたものとみるのが相当であって、当該一つの請求項を削除して新たな請求項をたてるとか、当該一つの請求項に係る発明を複数の請求項に分割して新たな請求項を追加するというような態様による補正を予定しているものではないから、補正前の請求項と補正後の請求項とは、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。 また、本件補正には、n項引用形式請求項をn-1以下の請求項に変更する補正や、発明特定事項が択一的なものとして記載された一つの請求項についてその択一的な発明特定事項をそれぞれ限定して複数の請求項に変更する補正は含まれていない。 ここで、審判請求書【請求の理由】<補正の内容>には、補正後発明2に関し、以下の記載がある。 「補正された請求項2には、潤滑液コーティング層の厚みの代わりに、次の限定事項(ハ)及び(ニ)が規定されている。 (ハ)内面樹脂層中には、前記潤滑液が、0.87~2.34g/m2の量で浸透していること。 (ニ)液拡散防止性酸素バリア層は、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)と低密度ポリエチレン(LDPE)とを、95:5~50:50の質量比で含み、且つアイオノマーを(EVOH)とLDPEとの合計量100質量部当り、1~49質量部の量で含有していること。 この請求項2は、経時的に変動し易い潤滑液コーティング層の厚みを用いずに、本発明をより好適な態様に特定したものである。 例えば、前記(ハ)の限定は、実施例に基づくものであり、実施例1~7での内面樹脂層中への潤滑液浸透量は、0.87~2.34g/m2である。また、前記(ニ)の限定において、EVOHとLDPEとの量比については、段落[0032]に記載され、さらに、EVOHとLDPEとの合計量100質量部当りのアイオノマーの量については、段落[0036]に記載されている。」 そして、補正後発明2は、補正前発明2が有していた「潤滑液コーティング層」という発明特定事項を有さないものである。 また、補正前発明1、3及び7の発明特定事項は、補正後発明1が有しており、補正後発明3~6は補正前発明4~6及び8に対応する。 したがって、補正後発明2は、補正前発明1~8のいずれかを減縮したものとはいえず、補正後発明2と補正前発明1~8は、本件補正の前後において一対一またはこれに準ずるような対応関係にならない。 (2)特許法第17条の2第5項第1号、第3号及び第4号について 補正後発明2に係る本件補正が、特許法第17条の2第5項第1号でいう「請求項の削除」,同条第3号でいう「誤記の訂正」、同条第4号でいう「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」のいずれを目的とするものでないことは明らかである。 (3)小括 上記(1)(2)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでもないから、同項に規定する要件に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 (4)本件補正が、仮に特許法第17条の2第5項第2号を目的とした補正である場合 上記(3)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものであるが、本件補正が、同法第17条の2第5項第2号の目的とするものに該当する場合について、補正後発明1が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について、以下予備的に検討する。 ア 補正後発明1 補正後発明1は、上記1(1)【請求項1】に記載したとおりのものである(以下、「本件補正発明」という。)。 イ 引用例の記載事項 (ア) 引用例1 a 原査定の拒絶の理由で引用された、本願出願前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015-100968号公報(平成27年6月4日出願公開。以下「引用例1」という。)には、次の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。 「【0001】 本発明は、粘稠性を有する内容物、特にソース、マヨネーズ、ケチャップ等の粘稠な内容物を収容するための包装容器に関するものである。」 「【0020】 <包装容器の層構成> 本発明の包装容器の層構造の一例を示す図1を参照して、全体として20で示す容器壁は、液拡散防止層1及び酸素バリア層3を中間層として有しており、酸素バリア層3は、液拡散防止層1の外面側に位置していると共に、この容器壁20の内表面には、液層5が形成されている。 さらに、この層構造においては、液層5は、下地層7上に形成されており、液層5と液拡散防止層1との間に下地層7が存在するようになっている。また、液拡散防止層1と酸素バリア層3との間には、中間介在層9が存在しており、酸素バリア層3の外側には所定の容器基材樹脂からなる外面層11が設けられている。 【0021】 液拡散防止層1; 液拡散防止層1は、液層5を形成する液体の浸透・拡散を遮断するものであり、このような層を形成することにより、液層5により付与される表面特性が長期間にわたって安定に維持されることとなる。 即ち、液層5は、種々の手段によって形成されるが(この手段については後述する)、どのような手段により液層5が形成されていたとしても、液層5を形成する液体が下地層7を通って容器壁20の内部に浸透・拡散してしまう。即ち、一定の量の液体で液層5が形成されていたとしても、該液体が容器壁20の内部に徐々に移行していくため、その液量が経時と共に減少し、この結果、液層5により付与される表面特性が経時と共に失われていくこととなる。しかるに、本発明では、液拡散防止層1の存在により、液層5からの液の浸透拡散が遮断されるため、液層5の液量減少が有効に抑制され、表面特性の経時的損失を回避することが可能となる。 【0022】 このような液拡散防止層1の材質は、液層5からの液の浸透拡散を防止し得るように緻密な熱可塑性樹脂(例えば密度が1.00g/cm3以上でガラス転移点Tgが35℃以上の樹脂)であればよいが、特にエチレン-ビニルアルコール共重合体(エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物)を含み、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体のみによって液拡散防止層1が形成されていてもよいし、浸透拡散防止能が損なわれない限り、他の熱可塑性樹脂とのブレンド物であってもよい。例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体を60質量%以上の量で含むブレンド物により液拡散防止層1を形成することができる。このようなブレンド物により形成された液拡散防止層1は、液層5の下地層7或いは中間介在層9に対する接着性が良好であり、これらの層と液拡散防止層1との間に格別の接着剤層(以下、接着層とも記載する)を設ける必要が無いという利点がある。」 「【0027】 酸素バリア層3; 酸素バリア層3は、酸素の容器内への透過を遮断し、これにより内容物の酸化劣化を防止するというものである。 このような酸素バリア層3は、酸素バリア性樹脂の中でも特に優れた酸素バリア性を示すエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)から形成される。このEVOHは、前述した液拡散防止層1の形成に使用されるEVOHと同じである。例えば、エチレン含有量が20乃至60モル%、特に25乃至50モル%のエチレン-酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が好適に使用される。 【0028】 また、かかる酸素バリア層3においても、EVOHの優れた酸素バリア性が損なわれない程度の量、例えばEVOHが60質量%以上の量となるような範囲で、他の樹脂がブレンドされていてもよい。即ち、前述した液拡散防止層1と同様、この酸素バリア層3に、これに隣接する中間介在層9や外面層11を形成する樹脂(例えば容器基材樹脂)をブレンドしておくことにより、これらの隣接層9、11と酸素バリア層3との接着性を高めることができる。」 「【0031】 液層5; 容器壁20の内表面に形成される液層5は、この容器内容物の種類に応じて滑り性や撥水性が付与されるように、適宜の液体により形成されるが、当然のことながら、大気圧下での蒸気圧が小さい不揮発性の液体、例えば沸点が200℃以上の高沸点液体により液層5が形成されることとなる。揮発性液体により液層5が形成されていると、使用形態によっても異なるが、この液層5が容易に揮散して経時と共に消失し、或いは液層5を形成することが困難となってしまうからである。 【0032】 液層5を形成する液体の具体例としては、上記のような高沸点液体であることを条件として、種々のものを挙げることができるが、特に水や水を含む親水性の内容物に対する撥水性や滑り性を付与するために、フッ素系界面活性剤、シリコーンオイル、脂肪酸トリグリセライド、各種の植物油などが代表的である。植物油としては、大豆油、菜種油、オリーブオイル、米油、コーン油、べに花油、ごま油、パーム油、ひまし油、アボガド油、ココナッツ油、アーモンド油、クルミ油、はしばみ油、サラダ油などが挙げられる。」 「【0036】 下地層7; 上述した液層5を支持する下地層7は、液拡散防止層1の内面側に隣接しており、表面に形成される液層5が脱落しないように保持するための層である。即ち、液拡散防止層1の上に直接液層5を形成してしまうと、液層5を形成する液体が浸透しないため、液層5の脱落を生じ易くなってしまい、一定の被覆率で液層5を安定に形成することが困難となってしまう。このため、下地層7を設け、この上に液層5を形成することが望ましい。 【0037】 このように、下地層7は、液層5からの液の浸透をある程度許容し、液層5に対してアンカー効果を示すものである。従って、液拡散防止層1と比較すると、比較的ルーズな樹脂により形成され、例えば密度が1.0g/cm3未満の熱可塑性樹脂により形成される。」 「【0044】 中間介在層9; 中間介在層9は、液拡散防止層1と酸素バリア層3との間に設けられるものであり、酸素バリア層3をできるだけ容器壁20の内面(或いは液拡散防止層1)から引き離すことにより、水分によるEVOHの酸素バリア性の低下をより一層効果的に抑制するためのものである。 即ち、この中間介在層9の厚みは、前述した液拡散防止層1と酸素バリア層3との間隔d1に相当する。従って、この厚みは、先の説明から理解されるように、容器の全体厚みDに対し、厚み比d1/Dが、30%以上、特に35乃至70%の範囲にあることが望ましい。 【0045】 このような中間介在層9は、液拡散防止層1と酸素バリア層3との間に適当な間隔d1を形成するために設けられるものであるため、その材質は、特に制限されず、成形可能な任意の樹脂で形成されていてよく、さらに、単層構造に限定されるものではなく、中間介在層9が2層以上の多層であってもよい。 【0046】 一般的には、成形性等の観点から、後述する外面層11の形成に使用される容器基材樹脂や前述した下地層7の形成に使用されるオレフィン系樹脂(例えばポリエチレンやポリプロピレン)を用いて中間介在層9を形成することが好ましい。さらに、かかる中間介在層9は、容器を成形する際に生じるバリ等のスクラップ樹脂がブレンドされたリグラインドにより形成することがコストの低減の点でより好ましい。このようなリグラインドは、通常、60質量%以下の量で上記スクラップ樹脂を含むものである。 さらに、この中間介在層9は、それ自体公知の酸素吸収性樹脂層を含む多層構造となっていてもよい。この酸素吸収性樹脂層は、酸素バリア性を補足するものであり、特開2002-240813号等に記載されているように、酸化性重合体及び遷移金属系触媒を含む層であり、遷移金属系触媒の作用により酸化性重合体が酸素による酸化を受け、これにより、酸素を吸収して酸素の透過を遮断する。このような酸化性重合体及び遷移金属系触媒は、上記の特開2002-240813号等に詳細に説明されているので、その詳細は省略するが、酸化性重合体の代表的な例は、第3級炭素原子を有するオレフィン系樹脂(例えばポリプロピレンやポリブテン-1等、或いはこれらの共重合体)、熱可塑性ポリエステル若しくは脂肪族ポリアミド;キシリレン基含有ポリアミド樹脂;エチレン系不飽和基含有重合体(例えばブタジエン等のポリエンから誘導される重合体);などである。また、遷移金属系触媒としては、鉄、コバルト、ニッケル等の遷移金属の無機塩、有機酸塩或いは錯塩が代表的である。このような酸素吸収性樹脂層は、中間介在層9の厚みd2の25%以下の厚みを有しており、この酸素吸収性樹脂層と前述したリグラインドの層とにより中間介在層9が形成されていることが、コストと酸素バリア性との点でさらに好適である。 【0047】 外面層11; 外面層11は、この容器の形態や用途に応じて、そのような容器を形成するための各種の熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンイソフタレート或いはこれらの共重合体などのポリエステル、前述した下地層7の形成にも使用されるオレフィン系樹脂が代表的であり、粘稠な内容物が収容され、このような内容物を排出するという容器の特性を考慮すると、オレフィン系樹脂が最適である。」 「【0056】 上述した本発明の包装容器は、液層5による表面特性を十分に発揮させることができるため、特に、粘度(25℃)が100mPa・s以上の粘稠な内容物、例えば、ケチャップ、水性糊、蜂蜜、各種ソース類、マヨネーズ、マスタード、ドレッシング、ジャム、チョコレートシロップ、乳液等の化粧液、液体洗剤、シャンプー、リンス等の粘稠な内容物が充填された容器として最も好適である。即ち、内容物の種類に応じて適宜の液により液層5を形成しておくことにより、容器を傾斜或いは倒立させることにより、これらの内容物が容器内壁に付着することなく、速やかに排出できる。 例えば、ケチャップ、各種ソース類、蜂蜜、マヨネーズ、マスタード、ジャム、チョコレートシロップ、乳液などは、水分を含む親水性物質であり、液層5を形成する液体としては、シリコーンオイル、グリセリン脂肪酸エステル、食用油などの食品添加物として認可されている油性液体が好適に使用される。 さらには、上述した内容物の酸化劣化も有効に防止することができる。」 「【0064】 <液層形成用液体> 中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT) 表面張力;28.8mN/m (23℃) 粘度;33.8mPa・s (23℃) 沸点;210℃以上 引火点;242℃(参考値) 尚、液体の表面張力は固液界面解析システムDropMaster700(協和界面科学(株)製)を用いて23℃にて測定した値を用いた。なお、液体の表面張力測定に必要な液体の密度は、密度比重計DA-130(京都電子工業(株)製)を用いて23℃で測定した値を用いた。また、潤滑液の粘度は音叉型振動式粘度計SV-10((株)エー・アンド・デイ製)を用いて23℃にて測定した値を示した。 【0065】 <内面下地層形成用樹脂> 低密度ポリエチレン(LDPE) MFR;0.3g/10min (190℃、2.16Kg) 密度;0.922g/cm3 <液拡散防止層形成用樹脂> エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH) 密度;1.20g/cm3 Tg=60℃ エチレン-ビニルアルコール共重合体とポリオレフィンのブレンド物 (EVOH/POブレンド、EVOH/変性ポリオレフィン=7/3(重量比)からなる組成物) <接着剤層形成用樹脂> 無水酸変性ポリエチレン <酸素バリア性層形成用樹脂> エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH) 密度1.20g/cm3 Tg=60℃ エチレン-ビニルアルコール共重合体とポリオレフィンのブレンド物 (EVOH/POブレンド、EVOH/変性ポリオレフィン=7/3(重量比)からなる組成物) <ポリオレフィン系樹脂層形成用樹脂> 低密度ポリエチレン(LDPE) MFR;0.3g/10min (190℃、2.16Kg) 密度;0.922g/cm3 <外面層形成用樹脂> 低密度ポリエチレン(LDPE) MFR;0.3g/10min (190℃、2.16Kg) 密度;0.922g/cm3」 「【0070】 <実験例5> 内面下地層形成用樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)、液拡散防止層形成用樹脂としてエチレン-ビニルアルコール共重合体とポリオレフィンのブレンド物(EVOH/POブレンド)、酸素バリア性層形成用樹脂としてエチレン-ビニルアルコール共重合体とポリオレフィンのブレンド物(EVOH/POブレンド)、液拡散防止層と酸素バリア性層の間に存在するポリオレフィン系樹脂層形成用樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)、外面層形成用樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)、のペレットをそれぞれ押出機に供給し、さらに、包装容器の最内面樹脂層を被覆するための液層形成用材料として中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)をポンプにて供給し、温度210℃の多層ダイヘッドにより溶融パリソンを押出、金型温度22℃にて公知のダイレクトブロー成形法により、内容量500g、重量20gの多層ボトルを作製した。このボトルの層構成、および各層の厚みの比は下記の通りである。 層構成; 内面下地層(26)/液拡散防止層(10)/ポリオレフィン系樹脂層(52)/酸素バリア層(8)/外面層(4) 全体厚み;520μm ここで、括弧内の値は、全体の厚みに対する各層の厚み比(%)である。 作製したボトルを用い、酸素透過度測定、液層被覆量の測定、液層持続試験、滑落速度測定を行った。結果をまとめて表1に示す。 【0071】 <実験例6> 各層の構成比を変更した以外は実験例5と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの層構成、および各層の厚みの比は下記の通りである。 層構成; 内面下地層(27)/液拡散防止層(6)/ポリオレフィン系樹脂層(58)/酸素バリア層(4)/外面層(5) 全体厚み;510μm ここで、括弧内の値は、全体の厚みに対する各層の厚み比(%)である。 作製したボトルを用い、酸素透過度測定、液層被覆量の測定、液層持続試験、滑落速度測定を行った。結果をまとめて表1に示す。 【0072】 <実験例7> 各層の構成比を変更した以外は実験例5と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの層構成、および各層の厚みの比は下記の通りである。 層構成; 内面下地層(21)/液拡散防止層(6)/ポリオレフィン系樹脂層(14)/酸素バリア層(5)/外面層(54) 全体厚み;535μm ここで、括弧内の値は、全体の厚みに対する各層の厚み比(%)である。 作製したボトルを用い、酸素透過度測定、液層被覆量の測定、液層持続試験、滑落速度測定を行った。結果をまとめて表1に示す。」 「【0075】 【表1】 [図:0001416976000001.jpg] 」 「【図1】 [図:0001416976000002.jpg] 」 b これらのことから、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「マヨネーズが充填されるダイレクトブロー成形法により作製されるボトルにおいて、 容器内容物の種類に応じて滑り性や撥水性が付与されるための液体により形成された液層5、上述した液層5を支持する下地層7、液層5を形成する液体の浸透・拡散を遮断するものであり、エチレン-ビニルアルコール共重合体を60質量%以上の量で含むブレンド物により形成された液拡散防止層1、液拡散防止層1と酸素バリア層3との間に設けられ、それ自体公知の酸素吸収性樹脂層を含む中間介在層9、前述した液拡散防止層1の形成に使用されるEVOHと同じで酸素バリア性樹脂の中でも特に優れた酸素バリア性を示すエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)から形成される酸素バリア層3及び外面層11が、内面から外面に向かってこの順で形成されているとともに、 下地層7は、低密度ポリエチレン(LDPE)により形成されるとともに、液層5からの液の浸透をある程度許容し、 液拡散防止層形成用樹脂はエチレン-ビニルアルコール共重合体とポリオレフィンのブレンド物(EVOH/POブレンド、EVOH/変性ポリオレフィン=7/3(重量比)からなる組成物)であり、 液層5を形成する液体として油性液体が使用されているボトル。」 (イ) 引用例2 本願出願前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開昭63-237924号公報(昭和63年10月4日出願公開。以下「引用例2」という。)には、次の記載がある。 「 [図:0001416976000003.jpg] [図:0001416976000004.jpg] 」(第3ページ右上欄第19行~同ページ左下欄第6行) 「 [図:0001416976000005.jpg] 」(第3ページ右下欄第9~13行) 「 [図:0001416976000006.jpg] [図:0001416976000007.jpg] 」(第6ページ右下欄第11行~第7ページ左上欄最終行) (ウ) 引用例3 本願出願前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平10-139030号公報(平成10年5月26日出願公開。以下「引用例3」という。)には、次の記載がある。 「【0061】また、第1重合体層12aと第2重合体層12bとの接着性に難点がある場合には、熱融着性のある樹脂を少なくとも一方の層にブレンドしたり、あるいは各層間に接着樹脂を介在させれば、両層12a,12bの接着性が良好となる。前者の例としては、たとえばLDPE(底密度ポリエチレン)とEVOHとのブレンドを用いる多層押し出しブロー成形がある。この場合、LDPEとEVOHとの間には、ブレンド層が形成される。ブレンド層には、LDPEとEVOHとの接着性を良好にするためのアイオノマーが添加されることが好ましい。一方、後者の例としては、接着剤として、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを用いる方法がある。ポリオレフィンと無水マレイン酸変性ポリオレフィンは相溶性があり、接着性は良好である。また、EVOHと無水マレイン酸変性ポリオレフィンとの間では、EVOHの水酸基とグラフトされている無水マレイン酸とが化学的に結合するものと考えられており、接着性は良好である。」 (エ) 引用例4 本願出願前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特公昭51-41657号公報(昭和51年11月11日公告。以下「引用例4」という。)には、次の記載がある。 「 [図:0001416976000008.jpg] 」(第1欄特許請求の範囲) 「 [図:0001416976000009.jpg] [図:0001416976000010.jpg] 」(第1欄下から4行~第2欄第4行) 「 [図:0001416976000011.jpg] 」(第3欄第5~13行) 「 [図:0001416976000012.jpg] 」(第8欄第32~43行) 「 [図:0001416976000013.jpg] 」(第10欄第35~41行) 「 [図:0001416976000014.jpg] [図:0001416976000015.jpg] 」(第11欄第27行~第12欄第1行) 「 [図:0001416976000016.jpg] [図:0001416976000017.jpg] 」(第17欄第17行~第18欄第18行) 「 [図:0001416976000018.jpg] [図:0001416976000019.jpg] [図:0001416976000020.jpg] 」(第23欄下から6行~第25欄第2行) (オ)周知技術 上記(イ)には、低密度ポリエチレン、エチレン-ビニルアルコール共重合体、アイオノマーから成る3成分系混合物を、接着層を設けていない容器の中間層として用いる事項が示されている。 上記(ウ)には、容器において、LDPE(低密度ポリエチレン)とEVOHとのブレンド層に、アイオノマーが添加されてLDPEとEVOHとの接着性を良好にすることが示されている。 上記(エ)には、低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、及びアイオノマーのブレンドからなる樹脂組成物から成形されたフイルムを他の合成樹脂フイルムとラミネートした形で容器を形成することが示されている。 ここで、エチレン-ビニルアルコール共重合体、EVOH、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物は、いずれも同じ組成物を異なる表現で示したものである。また、低密度ポリエチレンは、ポリオレフィン系樹脂の一種である。 そうすると、上記(イ)~(エ)からみて、次の事項は本願出願日以前に周知の技術的事項である。 「低密度ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂とエチレン-ビニルアルコール共重合体との接着性を考慮し、樹脂組成物においてエチレン・ビニルアルコール共重合体と低密度ポリエチレン、さらに、アイオノマーを含有させる技術」(以下「周知技術」という。) ウ 対比 (ア)本件補正発明と引用発明とを対比する。 a 引用発明における「マヨネーズ」は本件補正発明における「含水物質」に相当する。そして、容器に内容物を「充填」することは、容器の「使用」にほかならないから、引用発明の「マヨネーズが充填される」という事項は、本件補正発明における「含水物質が充填されて使用される」事項に相当する。 b 引用発明における「ダイレクトブロー成形法により作製されるボトル」は、内容物を充填する前は空ボトルであるから、本件補正発明における「ダイレクトブロー空ボトル」に相当する。 c 引用発明における「容器内容物の種類に応じて滑り性や撥水性が付与されるための液体により形成された液層5」、「上述した液層5を支持する下地層7」、「それ自体公知の酸素吸収性樹脂層を含む中間介在層9」、「エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)から形成される酸素バリア層3」及び「外面層11」はそれぞれ、本件補正発明における「前記含水物質に対する滑性を向上させるための潤滑液により形成された潤滑液コーティング層」、「該コーティング層の下地となっている内面樹脂層」、「酸素吸収層」、「酸素バリア層」及び「外面樹脂層」に相当する。 d 引用発明における「エチレン-ビニルアルコール共重合体を60質量%以上の量で含むブレンド物により形成された液拡散防止層1」は、酸素バリア性樹脂の中でも特に優れた酸素バリア性を示すエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)を含んでおり、酸素バリア層3と同様に酸素バリア性も示すことは明らかであるから、本件補正発明における「該潤滑液の拡散を防止するための液拡散防止性酸素バリア層」に相当する。 e 「マヨネーズ」は水中油型乳化食品の一種であるから、引用発明の「マヨネーズ」は本件補正発明の「水中油型乳化食品」に相当する。 f 引用発明における「下地層7は、低密度ポリエチレン(LDPE)により形成される」という事項は、本件補正発明における「前記内面樹脂層が低密度ポリエチレンにより形成され」ているという事項に相当する。 g 引用発明における「下地層7は、液層5からの液の浸透をある程度許容し」ている事項は、本件補正発明における「前記内面樹脂層中には、前記潤滑液コーティング層から潤滑液の一部が浸透して」いる事項に相当する。 h 引用発明における「液層5を形成する液体として油性液体が使用されている」は、本件補正発明における「前記潤滑液として油性液体が使用される」という事項に相当する。 (イ)以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 含水物質が充填されて使用されるダイレクトブロー空ボトルにおいて、 前記含水物質に対する滑性を向上させるための潤滑液により形成された潤滑液コーティング層、該コーティング層の下地となっている内面樹脂層、該潤滑液の拡散を防止するための液拡散防止性酸素バリア層、酸素吸収層、酸素バリア層及び外面樹脂層が、内面から外面に向かってこの順で形成されていると共に、 前記含水物質が水中油型乳化食品であり、 前記内面樹脂層が低密度ポリエチレンにより形成されていると共に、 前記内面樹脂層中には、前記潤滑液コーティング層から潤滑液の一部が浸透しており、 前記潤滑液として油性液体が使用されるダイレクトブロー空ボトル。 <相違点1> 「含水物質」に関し、本件補正発明は粘度が「30Pa・s以上」であるのに対し、引用発明は粘度が不明である点。 <相違点2> 本件補正発明は「内面樹脂層が、前記潤滑液コーティング層を除いたボトル総質量に対して15~45質量%となる厚み」であるのに対し、引用発明の「下地層7」は質量%での厚みが不明である点。 <相違点3> 「液拡散防止性酸素バリア層」に関し、本件補正発明は「エチレン・ビニルアルコール共重合体と低密度ポリエチレン、さらに、アイオノマーを含有」しているのに対し、引用発明は「エチレン-ビニルアルコール共重合体と変性ポリオレフィンのブレンド物」である点 エ 判断 以下、相違点1~3について検討する。 (ア)相違点1について 「マヨネーズ」は、ドレッシングの日本農林規格(昭和50年10月4日農林省告示第955号、最終改正平成28年2月24日農林水産省告示第489号)の定義では「粘度30Pa・s以上のもの」である半個体状ドレッシングの一種として定義されている。 そうすると、上記相違点1に係る事項は、実質的な相違点ではない。 (イ)相違点2について 上記イ(ア)の引用例1には実施例5~7として「下地層7」、「液拡散防止層1」、「中間介在層9」、「酸素バリア層3」及び「外面層11」が、内面から外面に向かってこの順で形成されているボトルの作製例が各層の厚みとともに示されているから、引用発明も具現化した際には同程度の構成になると推認される。 ここで、引用例1には、「下地層7」、「中間介在層9」、「外面層11」を形成する「低密度ポリエチレン」と、「液拡散防止層1」と「酸素バリア層3」で用いられる「エチレン・ビニルアルコール共重合体」についてもそれぞれ、密度が「0.922g/cm3」及び「1.20g/cm3」と示されている。また、引用例1の変性ポリオレフィンについては、密度が不明であるが、実施例5~7で用いられているポリオレフィンである、低密度ポリエチレンと同程度であるとし、エチレン-ビニルアルコール共重合体/変性ポリオレフィン=7/3で「液拡散防止層1」及び「酸素バリア層3」を形成するものとして計算すると、実施例5~7について、液層5を除いたボトル総質量に対して下地層7の質量は、25.0%(実施例5)、26.4%(実施例6)、20.5%(実施例7)となるから、当該数値の算出における変性ポリオレフィンの密度の推定に多少の差異があったとしても、下地層7は、ボトル総質量に対して15~45質量%となる厚みとなる蓋然性が高い。 そうすると、相違点2に係る事項は、実質的な相違点ではない。 仮に、この点で実質的に相違したとしても、当該数値範囲に臨界的意義又は特異な効果はみられず、当該数値範囲は当業者が従来から用いていた数値範囲内のものであるから、引用発明において上記相違点2に係る本件補正発明の数値範囲とすることは、当業者が容易になし得たものである。 (ウ)相違点3について 上記イ(オ)で示したとおり、低密度ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂とエチレン-ビニルアルコール共重合体との接着性を考慮し、樹脂組成物においてエチレン・ビニルアルコール共重合体と低密度ポリエチレン、さらに、アイオノマーを含有させる技術は、本願出願前から当業者にとって周知技術である。 そして、引用発明の「液拡散防止層1」は、「下地層7」等の隣接する層との接着性を良好とするために、変質ポリオレフィンとのブレンド物としている。ここで、一定の課題を解決するための公知材料の中からの最適材料の選択は、当業者にとって通常の創作能力の発揮にすぎない。 そうすると、引用発明における「液拡散防止層1」として上記周知技術を採用し、相違点3に係る本件補正発明の事項を備えたものとすることは、当業者にとって容易になし得た事項である。 (エ)そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び上記周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 (オ)したがって、本件補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび 上記2(3)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 仮に、本件補正が第17条の2第5項第2号を目的とした補正であったとしても、上記2(4)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和4年11月24日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~8に係る発明は、令和4年5月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)【請求項1】に記載のとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1~8に係る発明は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、それぞれ、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2015-100968号公報 引用文献2:特開2017-18290号公報(周知技術を示す文献) 3 引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、上記第2[理由]2(4)イに記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、上記第2[理由]2(4)で検討した本件補正発明から、「前記内面樹脂層中には、前記潤滑液コーティング層から潤滑液の一部が浸透して」いるという事項及び「前記潤滑液として油性液体が使用される」という限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明と引用発明とは、上記第2[理由]2(4)ウ(イ)に記載した一致点から上記限定事項を削除した点で一致し、上記相違点1~3で相違するから、上記第2[理由]2(4)エと同様の理由により、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-018820

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