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特許拒絶査定不服審判

2022-017611

ポリエステル容器およびポリエステルプリフォーム

審判番号
2022-017611
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-011713外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年11月02日
審決日
2024年07月30日
公報発行日
2024年10月25日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .536-Z (B65D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項、特許法第36条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-11713「ポリエステル容器およびポリエステルプリフォーム」拒絶査定不服審判事件〔令和3年8月10日出願公開、特開2021-116112〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、令和2年1月28日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和4年 3月24日付け:早期審査に関する通知書
令和4年 4月26日付け:拒絶理由通知書
令和4年 6月17日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 8月29日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)

(令和4年 9月 2日 :原査定の謄本の送達)

令和4年11月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和4年11月2日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和4年11月2日に提出された手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正の内容

本件補正のうち、特許請求の範囲の請求項1に係る補正は以下のとおりである(下線部は、補正箇所である。)。

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載

「【請求項1】
ポリエステルにより構成されたポリエステル容器であって、
前記ポリエステル容器の高さ方向中間部にて、周方向に異なる5箇所をカットして、一片が約0.4cmの正方形の試料を5個準備し、5個の試料からそれぞれ7mgをアルミニウムパンに秤量し、続いて、175ml/minの空気気流下にて、試料を30℃で10分間保持し、その後、10℃/minの昇温温度で600℃まで昇温させた際のTG-DTAにより測定した熱分解開始温度の標準偏差が、2.5℃以上3.3℃以下である、ポリエステル容器。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載

「【請求項1】
ポリエステルにより構成されたポリエステル容器であって、
前記ポリエステル容器の高さ方向中間部にて、周方向に異なる5箇所をカットして、一片が約0.4cmの正方形の試料を5個準備し、5個の試料からそれぞれ7mgをアルミニウムパンに秤量し、続いて、175ml/minの空気気流下にて、試料を30℃で10分間保持し、その後、10℃/minの昇温温度で600℃まで昇温させた際のTG-DTAにより測定した熱分解開始温度の標準偏差が、2.0℃以上5.0℃以下である、ポリエステル容器。」

2 本件補正の適否

本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された「熱分解開始温度の標準偏差」について、補正前は「2.0℃以上5.0℃以下」であったものを、「2.5℃以上3.3℃以下」に限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そして、本件補正は、本願当初明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の【請求項1】や【0017】の記載に基づくものであるから、当初明細書等に記載した範囲内においてするものであって、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

また、本件補正後の請求項1に関する補正は、特別な技術的特徴を変更(シフト補正)しようとするものではなく、同法第17条の2第4項の規定に適合している。

そして、上記特許請求の範囲の減縮を目的とする補正の場合には、同法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(本件補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か)について検討を要するところ、以下、検討する。

3 独立特許要件の判断

本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(1)発明の詳細な説明の記載

発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。

ア 発明が解決しようとする課題

「【0004】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、容易に押し潰すことができるポリエステル容器を提供することである。
また、このポリエステル容器の製造に用いるポリエステルプリフォームを提供することである。」

イ 課題を解決するための手段

「【0005】
本発明は、ポリエステルにより構成されたポリエステル容器であって、
ポリエステル容器内の異なる5箇所をTG-DTAで測定した際に、熱分解開始温度の標準偏差が、2.0℃以上5.0℃以下である、ポリエステル容器である。
【0006】
一実施形態において、ポリエステル容器は、内層を構成している第1層と、第2層とを有し、第1層が、バージンポリエステルにより構成され、記第2層が、リサイクルポリエステルにより構成されている。
・・・」

ウ 発明の効果

「【0013】
本発明によれば、容易に押し潰すことができるポリエステル容器を提供することができる。
また、このポリエステル容器の製造に用いるポリエステルプリフォームを提供することができる。」

エ 発明を実施するための形態

発明の詳細な説明の【0015】~【0082】には、発明を実施するための形態として、概略、次の内容が記載されている。

【0015】~【0055】ポリエステル容器について

【0056】~【0072】ポリエステルプリフォームについて

【0073】~【0078】ポリエステル容器の製造方法について

【0079】~【0097】実施例1~4、比較例1、2について

(2)実施可能要件について

ア 実施可能要件の判断規範について

本件補正発明は「ポリエステル容器」に係る「物」の発明である。ここで、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な説明の記載内容及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用できる程度の記載があることを要する(知財高裁平成31年(行ケ)第10064号判決)。そこで、当該規範に基づいて、本願が実施可能要件を満たすかについて以下検討する。

イ 本件補正発明についての実施可能要件の判断

本件補正発明は上記1(1)で示したとおりのものであり、

「ポリエステルにより構成されたポリエステル容器であって、
前記ポリエステル容器の高さ方向中間部にて、周方向に異なる5箇所をカットして、一片が約0.4cmの正方形の試料を5個準備し、5個の試料からそれぞれ7mgをアルミニウムパンに秤量し、続いて、175ml/minの空気気流下にて、試料を30℃で10分間保持し、その後、10℃/minの昇温温度で600℃まで昇温させた際のTG-DTAにより測定した熱分解開始温度の標準偏差が、2.5℃以上3.3℃以下である、ポリエステル容器。」である。

このような本件補正発明において、発明の詳細な説明の記載が、上記アで示した考え方に基づき、実施可能要件を満たすといえるか否かについて検討する。

(ア)本件補正発明のようなポリエステル容器は、まず射出成形機を用いて射出成形を行うことでポリエステルプリフォームを作製し、その後にブロー成形を行うことで所望の容器形状とするものであり、そのような射出成形機によりプリフォームを作製する際の射出条件として、樹脂温度、金型温度、射出成形機のシリンダ容量と成形品の射出容量の比、成形品容量に基づくスクリュの回転速度や吐出量があり、それらが適宜制御されるものであることは、令和5年5月1日上申書に記載された以下の文献に開示されているとおり、出願時の技術常識であるといえる。

文献1:エンプラの本(第4版)、エンプラ技術連合会、2004年5月発

行、51~56ページ、

文献2:近藤滋、「信頼性確保のためのポリエステル系樹脂の成形管理」、

日本信頼性学会誌、1996年、vol.18、No.6、通巻7

6号、475~485ページ

したがって、射出成形機によるプリフォームの作製において、射出条件を適宜設定すること自体は、発明の詳細な説明に各条件の具体的な記載がなくとも、発明の詳細な説明の記載内容及び出願時の技術常識に基づき当業者がなし得たことであるといえる。

(イ)しかしながら、本件補正発明の「TG-DTAにより測定した熱分解開始温度の標準偏差が、2.5℃以上3.3℃以下」とするための具体的な方法は、発明の詳細な説明に記載されておらず、また、かかる具体的な方法は、上記文献に開示されておらず、技術常識でもない。

(ウ)なお、本願明細書には、「上記熱分解開始温度の標準偏差の範囲を有する本発明のポリエステル容器は、ポリエステルプリフォームの作製において、射出成型の際の条件等を適切に制御することにより製造することができる。該条件としては、例えば、溶融したポリエステルをスクリュで送り出す際のスクリュの回転速度や温度、金型に溶融したポリエステル供給するノズルの温度や供給速度、金型の温度等が挙げられる。」(【0078】)と記載されており、「ポリマーの熱分解開始温度は、原料のモノマーが同一であっても、分子量や立体構造などにより異なることが知られ、」(【0017】)との記載も踏まえると、熱分解開始温度及びその標準偏差の範囲は、ポリエステルプリフォームの射出条件やポリマーの分子量や立体構造に応じて変化することが記載されていることは認められる。

しかしながら、射出成形の各条件(溶融したポリエステルをスクリュで送り出す際のスクリュの回転速度や温度、金型に溶融したポリエステル供給するノズルの温度や供給速度、金型の温度等(【0078】))やポリマーの分子量や立体構造に応じて、熱分解開始温度がどのように影響を受けるかについて各々検証する必要がある。

そして、本件明細書の実施例1~4、比較例1、2において、ポリエステルプリフォームの厚さ、目付量、加熱温度、ブロー成形後のポリエステル容器の厚さはいずれも同じであり、ポリエステルプリフォームの材料(リサイクルポリエステルかリサイクルされていないポリエステルか)と層構成は相違しているものの、それらの相違が測定結果(熱分解開始温度の標準偏差)の違いに影響しているのか、影響しているとすればどのような機序や法則に基づいて影響しているのかについては何ら記載されていないから、上記実施例及び比較例の測定結果は上記検証の手がかりにはならない。

そうすると、出願時の技術常識を参照したとしても、当業者が本件補正発明の実施をするに際し、過度の試行錯誤を要するものである。

(エ)したがって、本件補正発明の「TG-DTAにより測定した熱分解開始温度の標準偏差が、2.5℃以上3.3℃以下」とすることについては、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識並びに出願時の技術常識に基づいて、当業者がどのように実施するかを理解することができない。

ウ 請求人の主張

折りたたみ中(クリックで表示)

請求人は、審判請求書において、「本願明細書からは、熱分解開始温度の標準偏差は、ポリエステルプリフォームの作製時の射出成型条件のみならず、原料であるポリエステルの分子量や立体構造などによっても制御できることが読み取れます(段落[0017]、[0078]等)。そして、実施例においても、プリフォームの作製時の射出成型条件を揃えて一定とし、使用するポリマーの違いによって容器の熱分解開始温度の標準偏差が変わることが示されております。・・・そして、実施例において、プリフォームを製造する際の射出成型条件(バレル温度、スクリュー回転数、金型温度、吐出量等)が明記されていなかったとしても、当業者であればポリエステルプリフォームを製造する際に通常採用されている条件を試みるはずです。」と主張している。

しかしながら、請求人の上記主張は、熱分解開始温度の標準偏差が、ポリエステルプリフォームの作製時の射出条件や、原料であるポリエステルの分子量や立体構造によって異なり得ること、及び、使用するポリマーの違いによって容器の熱分解開始温度の標準偏差が異なっていたことを説明しているに過ぎず、射出条件、分子量や立体構造及びポリマーの種類を具体的にどのように調整すれば、熱分解開始温度の標準偏差が大きくなる/小さくなるのかについて、具体的な条件や証拠は示されておらず、当業者が本件補正発明を実施する際の手がかりにはならない。

したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(3)小括

以上のとおり、この出願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 本件補正のむすび

以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年6月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、この出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない、というものである。

3 判断

本願発明は、上記第2[理由]2で述べたとおり、本件補正発明における「熱分解開始温度の標準偏差」の数値範囲を広げるものである。

そして、上記第2[理由]3(2)及び(3)で述べたとおり、発明の詳細な説明は、当業者が、本件補正発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、これと同じ理由により、発明の詳細な説明は、当業者が、本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。

したがって、本願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

第4 むすび

以上のとおり、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-017611

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