2022-016721
見守りシステム
- 審判番号
- 2022-016721
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-184337外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年10月19日
- 審決日
- 2023年08月24日
- 公報発行日
- 2023年11月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】パラマウントベッド株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人iX
- 分類
- P18 .55 -Z (G08B) / P18 .537-Z (G08B) / P18 .57 -Z (G08B) / P18 .561-Z (G08B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項、特許法第36条、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 14項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成27年2月24日に出願された特願2015-34571号の一部を令和元年8月5日に新たな特許出願とした特願2019-144026号の一部を令和2年11月4日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 2年11月 4日 上申書
令和 3年 7月26日付け 拒絶理由通知書
9月24日 意見書・手続補正書
令和 4年 1月20日付け 拒絶理由通知書(最後)
3月24日 意見書・手続補正書
7月21日付け 補正却下
拒絶査定
10月19日 審判請求書・手続補正書
12月19日付け 前置報告書
以下では、令和3年9月24日の手続補正書による補正を「前回補正」
といい、令和4年7月21日付け拒絶査定を「原査定」といい、同年10月19日の手続補正書による補正を「本件補正」という。
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正前の請求項1及び本件補正後の請求項1を、それぞれ以下の(1)及び(2)に示す。
(1)本件補正前の請求項1の記載
本件補正前の、前回補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
【請求項1】
利用者のベッド上の重心位置の移動および前記利用者の呼吸数をそれぞれ検出する検出部と、
前記重心位置の移動の正常範囲と、前記利用者の呼吸数の正常範囲と、を保持可能な記憶部と、
前記利用者の前記ベッド上の行動を予測する制御部と、
を備え、
前記検出部は、前記利用者の在床および離床をさらに検出し、
前記制御部は、前記検出部により検出された前記重心位置の移動および前記呼吸数と、前記重心位置の移動の正常範囲および前記呼吸数の正常範囲と、に基づいて、前記利用者の前記ベッドからの落下、もしくは、前記利用者が端座位から前記ベッドを離れようとしていることを予測する、見守りシステム。
(2)本件補正後の請求項1の記載
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。なお、下線は、本件補正による補正箇所を示すものであり、請求人が付した。
【請求項1】
利用者のベッド上の重心位置の移動を検出するように、前記ベッドのフレームを支持する支柱に設けられる第1検出部と、
前記利用者の単位時間あたりの呼吸数を検出する第2検出部と、
前記重心位置の移動量の正常範囲と、前記利用者の呼吸数の正常範囲と、を保持可能な記憶部と、
前記利用者の前記ベッド上の行動を予測する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1検出部の検出データに基づいて、前記利用者の在床および離床を判断し、前記重心位置の移動量の前記正常範囲を設定し、前記利用者が端座位から前記ベッドを離れることを予測し、前記第2検出部の検出データに基づいて、前記呼吸数の前記正常範囲を設定する、見守りシステム。
2 本件補正の目的
本件補正のうち、本件補正前の請求項1に関する補正(以下、「請求項1補正」という。)について、以下、検討する。
(1)請求項1補正は、以下の補正A~補正Cからなる。
補正A 本件補正前の「利用者のベッド上の重心位置の移動および前記利用者の呼吸数をそれぞれ検出する検出部」を、
「利用者のベッド上の重心位置の移動を検出するように、前記ベッドのフレームを支持する支柱に設けられる第1検出部と、前記利用者の単位時間あたりの呼吸数を検出する第2検出部」に補正する。
補正B 本件補正前の「前記重心位置の移動の正常範囲」を、
「前記重心位置の移動量の正常範囲」に補正する。
補正C 本件補正前の「前記検出部は、前記利用者の在床および離床をさらに検出し、前記制御部は、前記検出部により検出された前記重心位置の移動および前記呼吸数と、前記重心位置の移動の正常範囲および前記呼吸数の正常範囲と、に基づいて、前記利用者の前記ベッドからの落下、もしくは、前記利用者が端座位から前記ベッドを離れようとしていることを予測する」を、
「前記制御部は、前記第1検出部の検出データに基づいて、前記利用者の在床および離床を判断し、前記重心位置の移動量の前記正常範囲を設定し、前記利用者が端座位から前記ベッドを離れることを予測し、前記第2検出部の検出データに基づいて、前記呼吸数の前記正常範囲を設定する」に補正する。
(2)補正Cは、以下の補正内容C1~C5に分けられる。
補正内容C1 本件補正前で「前記検出部は、前記利用者の在床および離床をさらに検出」する、とされていたものを、本件補正後では「制御部は、」「前記第1検出部の検出データに基づいて、前記利用者の在床および離床を判断」する、に変更する。
補正内容C2 本件補正前の「制御部」に対して、「前記重心位置の移動量の前記正常範囲を設定し」との限定、及び、「前記第2検出部の検出データに基づいて、前記呼吸数の前記正常範囲を設定する」との限定を加える。
補正内容C3 本件補正前の「前記検出部により検出された前記重心位置の移動および前記呼吸数と、前記重心位置の移動の正常範囲および前記呼吸数の正常範囲と、に基づいて、前記利用者の前記ベッドからの落下、もしくは、前記利用者が端座位から前記ベッドを離れようとしていることを予測する」との事項から、「前記検出部により検出された前記重心位置の移動および前記呼吸数と、前記重心位置の移動の正常範囲および前記呼吸数の正常範囲と、に基づいて、」との限定を削除する。
補正内容C4 本件補正前の「前記利用者の前記ベッドからの落下、もしくは、前記利用者が端座位から前記ベッドを離れようとしていることを予測する」との事項のうち、択一事項であった「前記利用者の前記ベッドからの落下」を「予測する」との事項を削除する。
補正内容C5 本件補正前の「前記利用者が端座位から前記ベッドを離れようとしていることを予測する」との事項を、「前記利用者が端座位から前記ベッドを離れることを予測」するとの事項に変更する。
(3)事案に鑑み、補正内容C1について検討する。
請求項1で特定される「前記利用者の在床および離床」は、本件補正前では「検出部」により「検出」されると特定されていたのが、本件補正後では「制御部」により「判断」されると特定されることとなる。つまり、補正内容C1を含む本件補正は、「前記利用者の在床および離床」を対象とする動作の内容を「検出」から「判断」に変更し、その動作主体を「検出部」から「制御部」に変更するものである。このような補正は、特許請求の範囲の減縮を目的としているとは認められない。
また、補正内容C1を含む本件補正の目的は、明らかに、「請求項の削除」、「誤記の訂正」及び「明りようでない記載の釈明」のいずれにも該当しない。
(4)本件補正の目的についての小括
前記(3)のとおりであるから、補正内容C1を含む本件補正は、特許法17条の2第5項各号に掲げるいずれの目的にも合致せず、特許法17条の2第5項の規定に違反する。
3 本件補正による新規事項の追加
本件補正後の請求項1に記載された「前記制御部は、」「前記利用者の在床および離床を判断」するとの発明特定事項(補正内容C1)は、以下の(1)~(3)に示すように、本願に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載されたものではない。
(1)当初明細書等には、「検出装置1」について、「荷重センサの荷重検出値をもとに、ベッド上に患者が在床しているか、又は離床しているかを検出することができる」(【0018】)との記載はあるが、在床及び離床の判断を「制御部5」が行うことについての記載はない。
(2)また、当初明細書等には、「制御部5」について、サーバ4に格納された正常範囲を修正することと、実行部6に異常を外部に通知するよう指示をすること(【0019】、【0021】)について記載されているが、在床及び離床の判断をすることについての記載はない。
(3)前記(1)及び(2)を総合すると、当初明細書等のすべての記載によっても、補正内容C1に係る「前記制御部は、」「前記利用者の在床および離床を判断」するとの技術的事項を導くことはできない。
よって、補正内容C1を含む本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであると認められ、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものとは認められないから、特許法17条の2第3項の規定に違反する。
4 本件補正の適否
前記2のとおりであるから、本件補正には、特許法17条の2第5項各号に規定するいずれの目的にも該当しないものが含まれる。
加えて、前記3のとおりであるから、本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に違反する。
したがって、本件補正は、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明
本件補正は前記第2のとおり却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(1)に示した請求項1に記載されたとおりのものと認める。
なお、前回補正により補正された箇所を明示する目的で、本願の請求項1を再掲する。なお、下線は、前回補正による補正箇所を示すものであり、請求人が付した。
利用者のベッド上の重心位置の移動および前記利用者の呼吸数をそれぞれ検出する検出部と、
前記重心位置の移動の正常範囲と、前記利用者の呼吸数の正常範囲と、を保持可能な記憶部と、
前記利用者の前記ベッド上の行動を予測する制御部と、
を備え、
前記検出部は、前記利用者の在床および離床をさらに検出し、
前記制御部は、前記検出部により検出された前記重心位置の移動および前記呼吸数と、前記重心位置の移動の正常範囲および前記呼吸数の正常範囲と、に基づいて、前記利用者の前記ベッドからの落下、もしくは、前記利用者が端座位から前記ベッドを離れようとしていることを予測する、見守りシステム。
第4 原査定の概要
原査定の概要は、以下のとおりである。
1.(新規事項)前回補正後の請求項1において、「重心位置の移動および前記呼吸数と、前記重心位置の移動の正常範囲および前記呼吸数の正常範囲と、に基づいて、前記利用者の前記ベッドからの落下、もしくは、前記利用者が端座位から前記ベッドを離れようとしていることを予測する」と記載されていが、当初明細書等には、上記補正後のパラメータ、およびその正常範囲に基づいて、ベッドからの落下、端座位からベッドを離れようとしていることを予測することは記載されておらず、さらに、重心位置の移動および呼吸数、それらの正常範囲によって、ベッドからの落下、もしくは端座位からベッドを離れようとしていることの予測が可能であることは、当業者において自明のことでもないから、前回補正後の発明は、当初明細書等に記載されていない。
よって、前回補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
2.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の請求項1~6の記載が下記の点で、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
(1)請求項1~5について、「ベッドからの落下や、端座位からベッドを離れようとしていること」を予測するパラメータとして、「呼吸数、および呼吸数の正常範囲」を用いることは、明細書の発明の詳細な説明に記載がなく、また、技術常識を参酌しても、両者は無関係なため、係るパラメータを用いて上記の予測を行うことの意味が不明である。
(2)請求項1~5について、「重心位置の移動および呼吸数」と、「重心位置の正常範囲および呼吸数の正常範囲」、それらと、「ベッドからの落下、もしくは、利用者が端座位からベッドを離れようとしていること」がどのように関連するのか、技術的な関係が特定されておらず、例えば、重心位置の移動および呼吸数が、それぞれ正常範囲に対してどうであった場合に、ベッドからの落下、端座位からベッドを離れようとしていると予測できるのか不明である。
(3)請求項6について、呼吸数や、重心位置の移動は、それぞれ、「呼吸数」、「重心位置の移動」のデータによって即判定され、正常範囲を必要としないため、それぞれの「正常範囲」によって、「呼吸数」および「重心位置の移動」を判定するということが、どのようなことを意味するのか、不明である。また、係る「呼吸数および重心位置の移動の判定」と、「ベッドからの落下、もしくは、利用者が端座位からベッドを離れようとしていることの予測」とが、技術的に関連しておらず、どのような根拠に基づいて予測を行っているのか不明である。
3.(発明該当性)この出願の請求項6に記載されたものは、下記の点で特許法29条1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
請求項6は、それぞれの動作の主体が特定されず、単なる人為的取り決めを記載したものにすぎないため、自然法則を利用した発明と認められない。
第5 前回補正における新規事項追加の有無についての判断
以下では、前回補正によって新規事項が追加されたか否かについて検討する。
1 当初明細書等の請求項1の記載
当初明細書等の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである。
【請求項1】
利用者のベッド上の重心位置の移動を含む生体情報を検出する検出部と、
前記ベッドからの前記利用者の落下に関する異常判定に用い前記重心位置の移動量の正常範囲を含む第1基準と、前記利用者ごとの生体情報と、を保持可能な記憶部と、
前記利用者の生体情報が所望の数だけ前記記憶部に蓄積されたとき、機械学習を用いて、前記第1基準を修正した前記利用者固有の第2基準を算出し、前記利用者の生体情報と前記第2基準に基づいて、前記利用者の異常を判定し、前記利用者の生体情報が所望の数だけ前記記憶部に蓄積されていないとき、前記利用者の生体情報と前記第1基準に基づいて、前記利用者の異常を判定し、前記利用者が前記ベッドの端座位にいて、いま、まさに前記ベッドから離れようとしているか否かを予測する制御部と、
を備える、見守りシステム。
2 前回補正により導入された事項
当初明細書等の請求項1には、「制御部」が「前記利用者が前記ベッドの端座位にいて、いま、まさに前記ベッドから離れようとしているか否かを予測する」ことが記載されていた。
これに対し、本願発明では、「制御部」が「重心位置の移動および前記呼吸数と、前記重心位置の移動の正常範囲および前記呼吸数の正常範囲と、に基づいて、前記利用者の前記ベッドからの落下、もしくは、前記利用者が端座位から前記ベッドを離れようとしていることを予測する」との発明特定事項を備えている。
当初明細書等の請求項1に記載された発明も、本願発明も、共に、「前記利用者が前記ベッドの端座位」にいて、そこから、「前記ベッドを離れようとしていることを予測する」ことを発明特定事項として備えているものの、前記「予測」が「重心位置の移動および前記呼吸数と、前記重心位置の移動の正常範囲および前記呼吸数の正常範囲と、に基づいて」なされることは、当初明細書等の請求項1には記載されておらず、この点は前回補正によって導入された事項であると認められる。
3 当初明細書等の記載事項
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前記2で示した前回補正によって導入された事項が、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項であるか否かについて、以下、検討する。
(1)当初明細書等には、以下の記載がある。
「【0018】検出装置1としては、例えば、呼吸数のセンサがある。この呼吸数センサとしては、シート状の袋内に空気を封入して、この空気の圧力の変動を圧電センサが検出するものがある。このシート状センサを、ベッド上の患者の下(患者とベッドとの間に)に敷き、患者の呼吸に応じて空気圧が変化する状態を圧電センサにより検出して、患者の呼吸数を検出することができる。この呼吸数の正常範囲が、サーバ4に設定される。また、ベッドのフレームを支持する支柱等に荷重センサを設け、この荷重センサの荷重検出値をもとに、ベッド上に患者が在床しているか、又は離床しているかを検出することができる。更に、この支柱に印加される荷重を、4本の支柱において検出し、ベッドにおける重心位置を演算することにより、ベッド上の患者が、ベッドの端座位にいて、いま、まさに離床しようとしているか否かを予測することができる。更には、重心位置の移動により、ベッド上の患者の移動を検知することもできる。これらの例えば重心位置移動量の正常範囲が、サーバ4に設定される。なお、これらの検出結果により、ベッド上の患者の行動を予測することができる。」
(2)前記(1)の記載は、意味上のまとまりから、以下の3つの記載A~Cに分けられる。
記載A 「検出装置1としては、例えば、呼吸数のセンサがある。この呼吸数センサとしては、シート状の袋内に空気を封入して、この空気の圧力の変動を圧電センサが検出するものがある。このシート状センサを、ベッド上の患者の下(患者とベッドとの間に)に敷き、患者の呼吸に応じて空気圧が変化する状態を圧電センサにより検出して、患者の呼吸数を検出することができる。この呼吸数の正常範囲が、サーバ4に設定される。」
記載B 「また、ベッドのフレームを支持する支柱等に荷重センサを設け、この荷重センサの荷重検出値をもとに、ベッド上に患者が在床しているか、又は離床しているかを検出することができる。更に、この支柱に印加される荷重を、4本の支柱において検出し、ベッドにおける重心位置を演算することにより、ベッド上の患者が、ベッドの端座位にいて、いま、まさに離床しようとしているか否かを予測することができる。更には、重心位置の移動により、ベッド上の患者の移動を検知することもできる。これらの例えば重心位置移動量の正常範囲が、サーバ4に設定される。」
記載C 「なお、これらの検出結果により、ベッド上の患者の行動を予測することができる。」
(3)前記(2)に示した各記載について、その記載内容を検討する。
記載Aは、空気の圧力の変化を検出することで「呼吸数」が得られることと、及び、「呼吸数」の正常範囲を設定することについて記載したものである。記載Aには、「呼吸数」によって「ベッドを離れようとしていることを予測する」ことについては記載されていない。
他方、記載Bは、「荷重検出値」をもとに演算された「重心位置」により「離床しようとしているか否かを予測すること」が記載されているが、該「予測」に「呼吸数」が用いられるとは記載されていない。
そして、患者がベッドから離れようとしているか否かの予測を、「呼吸数」によって行うことは、技術常識ではない。
そうすると、記載Cにおける「ベッド上の患者の行動を予測する」という動作が「呼吸数」に基づいて行われると解釈するのは不自然であり、記載Cにおける「これらの検出結果」は、記載Bの検出結果である「荷重検出値」のことを指すのであって、記載Aの検出結果である「空気の圧力の変化」のことを指すとは認められない。
(4)当初明細書等のその他の部分を参照しても、「呼吸数」に基づいて患者が「ベッドを離れようとしていることを予測」していると伺わせる記載は存在しない。
(5)前記(1)~(4)によれば、前回補正によって導入された「前記ベッドを離れようとしていることを予測する」ことが「重心位置の移動および前記呼吸数と、前記重心位置の移動の正常範囲および前記呼吸数の正常範囲と、に基づいて」なされるとの事項(前記2、下線は強調のために当審で付した。)は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導かれるものではない。
したがって、前回補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであって、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものではないから、特許法17条の2第3項の規定に違反する。
第6 本願発明の明確性についての判断
本願発明は「前記重心位置の移動および前記呼吸数と、前記重心位置の移動の正常範囲および前記呼吸数の正常範囲と、に基づいて、前記利用者の前記ベッドからの落下、もしくは、前記利用者が端座位から前記ベッドを離れようとしていることを予測する」との発明特定事項を有する。
「重心位置の移動」及び「重心位置の移動の正常範囲」は、ベッドの上での人体の位置を表すパラメータであると認められるため、これらに基づいて「前記利用者の前記ベッドからの落下、もしくは、前記利用者が端座位から前記ベッドを離れようとしていることを予測する」ことは、合理的である。
しかしながら、「呼吸数」及び「呼吸数の正常範囲」は、呼吸の回数ないし頻度についてのパラメータに過ぎず、人体の移動とは明らかに無関係なパラメータであるから、これら「呼吸数」及び「呼吸数の正常範囲」に基づいて「前記利用者の前記ベッドからの落下、もしくは、前記利用者が端座位から前記ベッドを離れようとしていることを予測する」のは明らかに不合理であり、その具体的な実現手法は皆目見当が付かない。
したがって、前記発明特定事項のうち、「前記呼吸数と、」「前記呼吸数の正常範囲と、に基づいて、前記利用者の前記ベッドからの落下、もしくは、前記利用者が端座位から前記ベッドを離れようとしていることを予測する」という部分については、その具体的な実現手法が不明であるため、この発明特定事項によってどのような技術的内容が特定されているのかが不明である。
以上によれば、前記発明特定事項を含む本願発明は、明確であるとはいえないため、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項2号の規定に違反する。
第7 むすび
前記第5のとおり、前回補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものとは認められないから、特許法17条の2第3項の規定に違反する。
加えて、前記第6のとおり、本願発明は明確とは認められないから、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項2号の規定に違反する。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-016721