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特許拒絶査定不服審判

2022-015243

外科用ロボット用のモータ制御回路

審判番号
2022-015243
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-529493
請求日
2022年09月26日
審決日
2023年12月20日
公報発行日
2024年06月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】シーエムアール サージカル リミテッド
  • 【請求人代理人】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
  • 【請求人代理人】中根 美枝
  • 【請求人代理人】笠井 美孝
審判長/審判官
  • 審判長 岡田 吉美
  • 審判官 濱本 禎広
  • 審判官 九鬼 一慶
分類
P18 .121-WZ (G01R)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-529493「外科用ロボット用のモータ制御回路」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月 7日国際公開、WO2018/100399、令和 1年12月12日国内公表、特表2019-536052〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 1 手続の経緯 本願は、2017年(平成29年)12月1日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年12月2日(以下「優先日」という。)、英国)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和元年 7月30日 :翻訳文の提出 同年11月19日 :手続補正書の提出 令和3年11月24日付け:拒絶理由通知書 令和4年 2月28日 :意見書の提出 同年 5月17日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月24日 :原査定の謄本の送達) 同年 9月26日 :審判請求書の提出 令和5年 7月28日付け:拒絶理由通知書 同年10月31日 :意見書、手続補正書の提出 なお、令和5年7月28日付けで当審において通知した拒絶理由通知書を、以下「当審拒絶理由通知書」といい、これに対して、同年10月31日に請求人から提出された意見書を、以下、単に「意見書」という。 2 請求項1の記載及び本願発明の認定 (1) 請求項1の記載 令和5年10月31日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次に示すとおりのものとなっている。なお、下線は当合議体において付したものである。 「【請求項1】 外科用ロボット用のモータ制御回路であって 前記モータ制御回路は、前記外科用ロボットの外科用ロボットアームの多相モータの駆動電流を感知するための回路であって、 前記多相モータは前記外科用ロボットアームのジョイントを駆動するように構成され、前記モータ制御回路は回路基板上のICに統合されており、 前記多相モータの各フェーズ用の前記駆動電流を生成するように構成されているドライバで、すべての前記駆動電流の瞬間合計がゼロになるドライバと、 前記多相モータの各フェーズ用の電流センサであり、各々が6mm未満の距離で離隔しつつ、各フェーズの前記駆動電流を測定するように構成されている電流センサで、各電流センサが2つの電流センサ素子を含み、各電流センサ素子が該フェーズの該駆動電流を測定して駆動電流読取値を生成するように構成されており、該フェーズの測定駆動電流が前記2つの電流センサ素子の前記駆動電流読取値の組み合わせであり、測定すべき該駆動電流の外部の磁界が原因である、各電子センサ素子の該駆動電流の系統的な誤差の大きさが同じになるように、各電流センサの該2つの電流センサ素子が相対配置されている電流センサと、 前記多相モータの各フェーズについて、該フェーズの前記測定駆動電流からすべての前記フェーズの測定駆動電流の合計の1/nを引いたものとなるように該フェーズの該駆動電流の推定値を生成するように構成されたコントローラで、nが該多相モータのフェーズ数であるコントローラと、 を含んで構成されており、 前記ドライバから前記多層モータへ延びるn本のモータ駆動ラインがあり、各モータ駆動ラインのそれぞれが、前記多層モータの各フェーズのそれぞれに1本ずつ対応し、各モータ駆動ラインが各電流センサを1個ずつ備えており、各電流センサの前記2つの電流センサ素子が反対向きに配置されており、かつ、(i)前記回路基板上で背中合わせに配置されているか、または(ii)前記回路基板上で並んで配置されて並列に配線されているか、のいずれかである回路。」 (2) 本願発明の認定 ア 前記請求項1には、「前記多層モータ」(下線は当合議体による。)という語句が2回現れるところ、この「前記多層モータ」との記載は、「前記多相モータ」の明らかな誤記である。 イ そこで、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記アの誤記を正し、次の事項により特定されるとおりのものであると認める。 「【請求項1】 外科用ロボット用のモータ制御回路であって 前記モータ制御回路は、前記外科用ロボットの外科用ロボットアームの多相モータの駆動電流を感知するための回路であって、 前記多相モータは前記外科用ロボットアームのジョイントを駆動するように構成され、前記モータ制御回路は回路基板上のICに統合されており、 前記多相モータの各フェーズ用の前記駆動電流を生成するように構成されているドライバで、すべての前記駆動電流の瞬間合計がゼロになるドライバと、 前記多相モータの各フェーズ用の電流センサであり、各々が6mm未満の距離で離隔しつつ、各フェーズの前記駆動電流を測定するように構成されている電流センサで、各電流センサが2つの電流センサ素子を含み、各電流センサ素子が該フェーズの該駆動電流を測定して駆動電流読取値を生成するように構成されており、該フェーズの測定駆動電流が前記2つの電流センサ素子の前記駆動電流読取値の組み合わせであり、測定すべき該駆動電流の外部の磁界が原因である、各電子センサ素子の該駆動電流の系統的な誤差の大きさが同じになるように、各電流センサの該2つの電流センサ素子が相対配置されている電流センサと、 前記多相モータの各フェーズについて、該フェーズの前記測定駆動電流からすべての前記フェーズの測定駆動電流の合計の1/nを引いたものとなるように該フェーズの該駆動電流の推定値を生成するように構成されたコントローラで、nが該多相モータのフェーズ数であるコントローラと、 を含んで構成されており、 前記ドライバから前記多相モータへ延びるn本のモータ駆動ラインがあり、各モータ駆動ラインのそれぞれが、前記多相モータの各フェーズのそれぞれに1本ずつ対応し、各モータ駆動ラインが各電流センサを1個ずつ備えており、各電流センサの前記2つの電流センサ素子が反対向きに配置されており、かつ、(i)前記回路基板上で背中合わせに配置されているか、または(ii)前記回路基板上で並んで配置されて並列に配線されているか、のいずれかである回路。」 3 当審拒絶理由通知書において通知した拒絶の理由の概要 当審拒絶理由通知書において通知した拒絶の理由のうち、本件補正前の請求項1に係る発明に対する拒絶の理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。 (進歩性の欠如)本件補正前の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において発行された、下記の引用文献に記載された発明に基づいて、本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献2.特開2005-59786号公報(主たる引用例) 引用文献4.特開2015-36636号公報(周知技術を示す文献) 引用文献5.国際公開第2012/29438号(周知技術を示す文献) 引用文献6.特開2007-78418号公報(周知技術を示す文献) 引用文献7.特開2006-184269号公報(周知技術を示す文献) 4 当審の判断 (1) 引用文献に記載された発明の認定等 ア 引用文献2に記載された事項と引用発明の認定 (ア) 引用文献2に記載された事項 当審拒絶理由通知書において引用した前記引用文献2(特開2005-59786号公報)には、以下の事項が記載されている。下線は、当合議体によるものであり、後記(イ)の引用発明の認定において引用発明の認定に直接用いるところに付している。 a 【0001】 「【技術分野】 【0001】 本発明は、電動パワーステアリング装置に関し、特にブラシレスモータによって車両のステアリング機構に操舵補助力が与えられる電動パワーステアリング装置に関する。」 b 【0002】~【0011】 「【背景技術】 …(中略)… 【0006】 上記従来技術による構成では、電流検出回路は3相のうちいずれか2相にのみ設けられている。上記のような3相のブラシレスモータを用いた構成においては、モータ6に流れる電流は3相交流となり、各相に流れる電流の値の総和は零になる。例えば、図5および図6に示すように、U相とV相とに電流検出回路が設けられている場合、W相に流れる電流の値Iwは、U相に流れる電流の値IuとV相に流れる電流の値Ivとに基づき、次式(1)で求められる。 Iw=-(Iu+Iv) ・・・(1) 【0007】 ところで、モータに流すべき電流の値が零であるにも拘わらず、実際には電流検出回路で電流が検出されることがある。このような電流はオフセット電流と呼ばれており、モータの動作中、電流検出回路で検出される検出電流値は、当該モータに流れている電流の値にオフセット電流の値(以下「オフセット値」という)が重畳されたものとなる。上記従来技術による構成によると、このようなオフセット電流が生じた場合、本来モータの各相に流すべき電流と実際にモータの各相に流れる電流との間に誤差が生じ、トルクリップルが発生することがある。そこで、イグニッションスイッチがオンにされたときに電流検出回路で検出される検出電流値をオフセット補正値として保持し、モータの動作中には電流検出回路で検出される検出電流値をそのオフセット補正値に基づいて補正する電動パワーステアリング装置が提案されている。 【特許文献1】特開平8-119132号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 上記の構成によると、イグニッションスイッチがオンにされた時のオフセット値が保持されるので、電動パワーステアリング装置の動作開始時における各電流検出回路の特性による影響は補正される。ところが、電動パワーステアリング装置の動作中、電流検出回路は温度変化等の影響を受け、オフセット値は変動する。オフセット値の変動後は、本来モータの各相に流すべき電流と実際にモータの各相に流れる電流との間に誤差が生じ、トルクリップルが発生している。このため、運転者はハンドル操作に違和感を感じることがある。 【0009】 そこで本発明では、動作中に温度変化等の環境変化が生じても、トルクリップルが発生することなく、運転者に違和感のない操舵感を与えることができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。」 【課題を解決するための手段】 【0010】 第1の発明は、車両操舵のための操作手段に加えられる操舵トルクに応じてブラシレスモータを駆動することにより、当該車両のステアリング機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置であって、 前記ブラシレスモータの各相毎に設けられ、前記ブラシレスモータの各相に流れる電流を検出し、その検出信号を出力するモータ電流検出手段と、 前記検出信号に基づいて得られた前記モータ電流値を補正するための補正値を、前記ブラシレスモータの全ての相の前記モータ電流値の和を当該ブラシレスモータの相数で除することにより算出する補正値算出手段と、 前記補正値に基づいて前記モータ電流値を補正するモータ電流値補正手段と、 前記モータ電流値補正手段によって補正された前記モータ電流値に基づいて前記ブラシレスモータを駆動するモータ駆動手段とを備えることを特徴とする。 【発明の効果】 【0011】 上記第1の発明によれば、ブラシレスモータの全ての相において、各相に設けられたモータ電流検出手段によって検出された検出電流値に基づいて当該各相のモータ電流値が求められる。このため、ブラシレスモータの全ての相のモータ電流値について、計算による誤差が生じなくなる。また、ブラシレスモータの各相に設けられたモータ電流検出手段によって検出された検出電流値のオフセット値の変動分が、モータ電流値を補正するための補正値として算出される。そして、その補正値により、ブラシレスモータを駆動するためのモータ電流値が補正される。このため、温度変化等によって、モータ電流検出手段で検出される検出電流値のオフセット値に変動が生じても、そのオフセット値の変動が補償されるようにブラシレスモータが駆動される。これにより、環境変化が生じても、トルクリップルの発生を効果的に抑制することができる。 c 【0012】-【0014】、【図1】 「【発明を実施するための最良の形態】 …(中略)… 【0013】 <1.全体構成> 図1は、本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成を、それに関連する車両構成と共に示す概略図である。この電動パワーステアリング装置は、操舵のための操作手段としてのハンドル100に一端が固着されるステアリングシャフト102と、そのステアリングシャフト102の他端に連結されたラックピニオン機構104と、ハンドル100の操作によってステアリングシャフト102に加えられる操舵トルクTsを検出するトルクセンサ3と、当該車両の走行速度Vsを検出する車速センサ4と、ハンドル操作による運転者の負荷を軽減するための操舵補助力を発生するブラシレスモータ6と、その操舵補助力をラック軸に伝達するボールねじ駆動部11と、ブラシレスモータ6のロータの回転位置を検出するモータ位置センサ12と、車載バッテリ8から電源の供給を受けて、トルクセンサ3および車速センサ4からのセンサ信号に基づきブラシレスモータ6の駆動を制御する電子制御ユニット(ECU)5とを備えている。 【0014】 運転者がハンドル100を操作すると、トルクセンサ3によって検出された操舵トルクTsと車速センサ4によって検出された車速Vsとモータ位置センサ12によって検出されたロータの回転位置とに基づいて、ECU5によりブラシレスモータ6が駆動される。これによりブラシレスモータ6は操舵補助力を発生し、この操舵補助力がボールねじ駆動部11を介してラック軸に加えられることにより、運転者の負荷が軽減される。すなわち、ハンドル操作によって加えられる操舵トルクTsとブラシレスモータ6の発生する操舵補助力とによって、ラック軸が往復運動を行う。ラック軸の両端はタイロッドおよびナックルアームから成る連結部材106を介して車輪108に連結されており、ラック軸の往復運動に応じて車輪108の向きが変わる。」 「【図1】 [図:0001410710000001.jpg] 」 d 【0015】~【0018】、【図2】 「【0015】 <2.制御装置の構成> 図2は、上記電動パワーステアリング装置の制御装置であるECU5の構成を示すブロック図である。このECU5は、モータ制御部20とモータ駆動部10とリレー駆動回路70とを備えている。モータ制御部20は、マイクロコンピュータで構成され、メモリに格納された所定のプログラムを実行することにより作動する。モータ駆動部10は、PWM信号生成回路17とモータ駆動回路50とから構成される。モータ駆動回路50は、上アームの各ラインに設けられたFET51H~53Hと下アームの各ラインに設けられたFET51L~53Lとが互いに対となるように直列に接続して構成されており、そのFET対が3対並列に接続された3相の構成となっている。そして、上アームと下アームとの各接続点は、モータの各相の端子61~63と接続されている。また、3相すべてに下アームのFET51L~53Lと直列に接続された電流検出回路41~43が設けられている。この電流検出回路41~43にはシャント抵抗が含まれており、そのシャント抵抗の両端間の電圧に基づいて、U相電流検出値Iu、V相電流検出値Iv、およびW相電流検出値Iwが算出される。なお、ここで算出される電流検出値には、オフセット値が含まれている。 【0016】 モータ制御部20は、トルクセンサ3で検出された操舵トルクと、車速センサ4で検出された車速と、モータ駆動回路50の各相に設けられた電流検出回路41~43で検出された相電流検出値Iu、Iv、Iwとを受け取る。モータ制御部20は、その相電流検出値Iu、Iv、Iwからオフセット値を減算し、モータ6の各相に流れる電流値(以下「モータ電流値」という)を求める。また、アシストマップと呼ばれる、操舵トルクと目標電流値とを対応づけるテーブルを参照して、操舵トルクと車速とに基づいて、モータ6に流すべき目標電流値を決定する。そして、その目標電流値とモータ電流値との偏差に基づき比例積分演算を行い、PWM信号生成回路17に与える指令値Vを生成する。また、モータ制御部20は、故障等の検出結果に基づいてリレー駆動回路70を制御するためのリレー制御信号を出力する。なお、モータ電流値の算出とその算出されたモータ電流値の補正についての詳しい説明は後述する。 【0017】 モータ駆動部10では、PWM信号生成回路17が上記指令値Vを受け取り、その指令値Vに応じてデューティ比の変化するPWM信号を生成する。このPWM信号に基づいて、モータ駆動回路50がモータ6に電圧を印加することによりモータ6が駆動される。 【0018】 リレー駆動回路70は、モータ制御部20が出力したリレー制御信号に基づいて動作する。リレー駆動回路70は、故障が検出された旨を示す信号をモータ制御部20から受け取るまでは、リレー9を閉状態に保ち、モータ駆動部10及びモータ6への電源供給を続ける。モータ制御部20における故障検出処理で故障が検出されると、リレー駆動回路70は、モータ制御部20より故障が検出された旨を示す信号を受け取る。これにより、リレー駆動回路70は、リレー9を開状態にし、モータ駆動部10およびモータ6への電源供給を遮断する。」 「【図2】 [図:0001410710000002.jpg] 」 e 【0019】~【0028】、【図3】 「【0019】 <3.モータ電流値の算出および補正> 次に、本実施形態におけるモータ電流値の算出と算出されたモータ電流値の補正について説明する。本実施形態では、モータ6の各相の下アームに設けられた電流検出回路41~43によって、U相電流検出値Iu、V相電流検出値Iv、およびW相電流検出値Iwが検出される。そして、各相それぞれについて、相電流検出値からオフセット値を減算することによりモータ電流値が求められる。 【0020】 ここで、電動パワーステアリング装置の動作中に電流検出回路41~43で生じるオフセット値が変動しないのであれば、相電流検出値からオフセット値を減算して算出されたモータ電流値に基づいてモータ6を駆動してもトルクリップルは発生しない。ところが、上述のように、電動パワーステアリング装置の動作中、温度変化等の環境変化の影響により、電流検出回路41~43で生じるオフセット値は変動する。このため、上記のモータ電流値と実際にモータ6に流れている電流値とは、オフセット値の変動分(以下「オフセット変動値」という)だけ誤差がある。これにより、本来モータ6の各相に流すべき電流と実際にモータ6の各相に流れる電流との間に誤差が生じ、トルクリップルが発生する。そこで、本実施形態では、オフセット変動値に基づいてモータ電流値が補正される。 【0021】 Y結線による3相のブラシレスモータでは、各相に流れるモータ電流値(U相モータ電流値Imu、V相モータ電流値Imv、W相モータ電流値Imw)の総和は零になるので、オフセット値の変動がなければ、次式(2)が成立する。 Imu+Imv+Imw=0 ・・・(2) ところが、前述のとおりオフセット値は変動する。また、各相に設けられた電流検出回路41~43は近接して配置されているので、各相それぞれが受ける温度変化等の影響はほぼ等しいと考えられる。このため、或る相に設けられた電流検出回路で生じるオフセット変動値を「a」で示すと、次式(3)が成立する。 Imu+Imv+Imw=3a ・・・(3) そこで、上式(3)に基づいて算出されたオフセット変動値によってモータ電流値を補正することにより、実際のモータ電流値(以下「補正後モータ電流値」という)が算出される。この補正後モータ電流値に基づいて、モータ6が駆動される。 【0022】 図3は、本実施形態におけるモータ制御部20のモータ電流値算出手順を示すフローチャートである。以下、図3を参照しつつ説明する。 【0023】 この電動パワーステアリング装置において、各電流検出回路41~43で生じるオフセット値の初期特性を取得するために、イグニッションスイッチがオンにされると、その時に電流検出回路41~43で検出される相電流検出値Iu、Iv、およびIwを、U相オフセット補正値Iou、V相オフセット補正値Iov、およびW相オフセット補正値Iowとして設定する(ステップS101)。 【0024】 ステップS103では、電流検出回路41~43が出力した検出信号に基づいて、U相電流検出値Iu、V相電流検出値Iv、およびW相電流検出値Iwを取得する。さらに、ステップS105では、U相電流検出値Iu、V相電流検出値Iv、およびW相電流検出値IwからそれぞれU相オフセット補正値Iou、V相オフセット補正値Iov、およびW相オフセット補正値Iowを減算することにより、U相モータ電流値Imu、V相モータ電流値Imv、およびW相モータ電流値Imwを算出する。 【0025】 ステップS107では、ステップS105で算出されたU相モータ電流値Imu、V相モータ電流値Imv、およびW相モータ電流値Imwを補正するための補正値を算出する。本実施形態では3相のブラシレスモータが用いられているので、次式(4)のように、各相のモータ電流値Imu、Imv、およびImwの総和を3(相数)で除することにより補正値Ihoを算出する。 Iho=(Imu+Imv+Imw)/3 ・・・(4) なお、このステップS107によって、補正値算出手段が実現される。 【0026】 ステップS109では、ステップS105で算出されたモータ電流値を補正する。具体的には、次式(5)~(7)のように、ステップS105で算出されたU相モータ電流値Imu、V相モータ電流値Imv、およびW相モータ電流値ImwからステップS107で算出された補正値Ihoを減算する。以下、U相、V相、およびW相の補正後のモータ電流値をそれぞれ、U相補正後モータ電流値Ihmu、V相補正後モータ電流値Ihmv、およびW相補正後モータ電流値Ihmwという。 Ihmu=Imu-Iho ・・・(5) Ihmv=Imv-Iho ・・・(6) Ihmw=Imw-Iho ・・・(7) なお、このステップS109によって、モータ電流値補正手段が実現される。 【0027】 ステップS111では、各相のオフセット補正値Iou、Iov、Iowを更新する。ステップS107で算出された補正値Ihoは各相に設けられた電流検出回路41~43のオフセット変動値であるので、次式(8)~(10)のように、U相オフセット補正値Iou、V相オフセット補正値Iov、およびW相オフセット補正値IowそれぞれにステップS107で算出された補正値Ihoを加算する。 Iou←Iou+Iho ・・・(8) Iov←Iov+Iho ・・・(9) Iow←Iow+Iho ・・・(10) 【0028】 ステップS113では、上述の手順により得られたU相補正後モータ電流値Ihmu、V相補正後モータ電流値Ihmv、およびW相補正後モータ電流値Ihmwに基づいて、従来と同様のモータ駆動処理を行う。その後、ステップS103に戻り、上述の処理が繰り返される。」 「【図3】 [図:0001410710000003.jpg] 」 f 【0029】~【0031】、【図4】 「【0029】 <4.変形例等> 図4は、上記実施形態の変形例に係る電動パワーステアリング装置の制御装置であるECU5の構成を示すブロック図である。上記実施形態においては、電流検出回路41~43はモータ駆動回路50の各相の下アームに設けられたが、図4に示すように、電流検出回路81~83をモータ駆動回路50とモータ6との間に備える構成としてもよい。この構成においても、全ての相において電流検出回路により電流が検出されるので、上記実施形態と同様の手順によりモータ電流値が正しく算出される。 【0030】 また、上記実施形態では、3相のブラシレスモータを例に挙げて説明したが、本発明のブラシレスモータの相数は3相に限定されるものではない。モータ6のそれぞれの相に電流検出回路を備えることにより、4相以上の複数相のブラシレスモータが使用されている電動パワーステアリング装置にも適用することができる。この場合、各相のモータ電流値を補正するための補正値は、ブラシレスモータの全ての相のモータ電流値の和を当該ブラシレスモータの相数で除することにより算出される。 【0031】 <5.効果> 以上のように、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置では、ブラシレスモータの全ての相に電流検出回路が設けられ、各相に流れるモータ電流値が検出される。そして、各相に流れる電流値の和を当該ブラシレスモータの相数で除することにより、オフセット変動値が補正値として算出される。また、その補正値をモータ電流値から減ずることにより当該モータ電流値は補正される。これにより、電動パワーステアリング装置の動作中に、電流検出回路で検出される相電流検出値のオフセット値が温度変化等の影響により変動しても、全ての相においてモータ電流値が正しく算出される。そして、その正しく算出されたモータ電流値に基づいてモータが駆動されるため、トルクリップルの発生が抑制される。このため、運転者に違和感のない操舵感を与えることができる。」 「【図4】 [図:0001410710000004.jpg] 」 (イ) 引用発明の認定 a 引用文献2の段落【0029】には、実施形態の変形例についての説明があり、「上記実施形態においては、電流検出回路41~43はモータ駆動回路50の各相の下アームに設けられたが、図4に示すように、電流検出回路81~83をモータ駆動回路50とモータ6との間に備える構成としてもよい。」と記載されている。この構成以外については、【0013】~【0028】において説明された実施形態と同一の構成であることが理解できる。 b 上記aの点を踏まえつつ前記(ア)の記載事項を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 <引用発明> 「ハンドル操作による運転者の負荷を軽減するための操舵補助力を発生するブラシレスモータ6の駆動を制御する電子制御ユニット(ECU)5であって、(【0013】) このECU5は、モータ制御部20とモータ駆動部10とを備えており、 モータ制御部20は、マイクロコンピュータで構成され、 モータ駆動部10は、PWM信号生成回路17とモータ駆動回路50とリレー駆動回路70から構成され、 モータ駆動回路50は、上アームの各ラインに設けられたFET51H~53Hと下アームの各ラインに設けられたFET51L~53Lとが互いに対となるように直列に接続して構成されており、そのFET対が3対並列に接続された3相の構成となっており、 上アームと下アームとの各接続点は、モータの各相の端子61~63と接続され、(【0015】) 電流検出回路81~83をモータ駆動回路50とモータ6の間に備え、(【0029】、【図4】) この電流検出回路81~83にはシャント抵抗が含まれており、そのシャント抵抗の両端間の電圧に基づいて、U相電流検出値Iu、V相電流検出値Iv、およびW相電流検出値Iwが算出され、ここで算出される電流検出値には、オフセット値が含まれ、(【0015】、【0029】、【図4】) モータ制御部20は、モータ駆動回路50とモータ6の間に設けられた電流検出回路81~83で検出された相電流検出値Iu、Iv、Iwを受け取り、 モータ制御部20は、その相電流検出値Iu、Iv、Iwからオフセット値を減算し、モータ6の各相に流れる電流値(以下「モータ電流値」という)を求め、モータ6に流すべき目標電流値を決定し、 モータ6に流すべき目標電流値とモータ電流値との偏差に基づき比例積分演算を行い、PWM信号生成回路17に与える指令値Vを生成し、(【0016】、【0029】、【図4】) モータ駆動部10では、PWM信号生成回路17が上記指令値Vを受け取り、その指令値Vに応じてデューティ比の変化するPWM信号を生成し、 このPWM信号に基づいて、モータ駆動回路50がモータ6に電圧を印加することによりモータ6が駆動され、(【0017】) 各電流検出回路81~83で生じるオフセット値の初期特性を取得するために、イグニッションスイッチがオンにされると、その時に電流検出回路81~83で検出される相電流検出値Iu、Iv、およびIwを、U相オフセット補正値Iou、V相オフセット補正値Iov、およびW相オフセット補正値Iowとして設定し、(【0023】、【0029】、【図4】) 電流検出回路81~83が出力した検出信号に基づいて、U相電流検出値Iu、V相電流検出値Iv、およびW相電流検出値Iwを取得し、 U相電流検出値Iu、V相電流検出値Iv、およびW相電流検出値IwからそれぞれU相オフセット補正値Iou、V相オフセット補正値Iov、およびW相オフセット補正値Iowを減算することにより、U相モータ電流値Imu、V相モータ電流値Imv、およびW相モータ電流値Imwを算出し、(【0024】、【0029】、【図4】) Y結線による3相のブラシレスモータでは、各相に流れるモータ電流値(U相モータ電流値Imu、V相モータ電流値Imv、W相モータ電流値Imw)の総和は零になるので、オフセット値の変動がなければ、次式(2)が成立し、 Imu+Imv+Imw=0 ・・・(2) ところが、オフセット値は変動し、また、各相に設けられた電流検出回路81~83は近接して配置されているので、各相それぞれが受ける温度変化等の影響はほぼ等しく、 このため、或る相に設けられた電流検出回路で生じるオフセット変動値を「a」で示すと、次式(3)が成立し、 Imu+Imv+Imw=3a ・・・(3)(【0021】、【0029】、【図4】) 次式(4)のように、各相のモータ電流値Imu、Imv、およびImwの総和を3(相数)で除することにより補正値Ihoを算出し、 Iho=(Imu+Imv+Imw)/3 ・・・(4)(【0025】) U相モータ電流値Imu、V相モータ電流値Imv、およびW相モータ電流値Imwから補正値Ihoを減算し、 以下、U相、V相、およびW相の補正後のモータ電流値をそれぞれ、U相補正後モータ電流値Ihmu、V相補正後モータ電流値Ihmv、およびW相補正後モータ電流値Ihmwといい、(【0026】) 上述の手順により得られたU相補正後モータ電流値Ihmu、V相補正後モータ電流値Ihmv、およびW相補正後モータ電流値Ihmwに基づいて、モータ駆動処理を行う、(【0028】) 電子制御ユニット(ECU)5。」 イ 引用文献4、5に記載された事項と周知技術A (ア) 引用文献4に記載された事項 当審拒絶理由通知書において引用した前記引用文献4(特開2015-36636号公報)には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。 「【0040】 図6は、磁気抵抗効果素子を通過する外部磁界を説明するための電流センサの模式平面図である。本実施形態の電流センサ10において、第1の磁気抵抗効果素子31と第2の磁気抵抗効果素子32とは、基板30を挟んで対向して配置されており、第1の磁気抵抗効果素子31と第2の磁気抵抗効果素子32との間隔が小さい。そのため、第1の磁気抵抗効果素子31及び第2の磁気抵抗効果素子32を通過する外部磁界29の角度、大きさは、ほぼ等しくなる。 【0041】 図6に示すように、第1の磁気抵抗効果素子31の副感度軸方向31bと外部磁界29とのなす角度をθ1とし、第2の磁気抵抗効果素子32の副感度軸方向32bと外部磁界29とのなす角度をθ2とする。外部磁界29の大きさをHとすると、第1の磁気抵抗効果素子31を通過する外部磁界29の副感度軸方向31bの成分H1は、H1=H・cosθ1と表される。また、第2の磁気抵抗効果素子32を通過する外部磁界29の副感度軸方向32bの成分H2は、H2=H・cosθ2と表される。本実施形態において、副感度軸方向31b、32bは、互いに逆向きに設けられているため、θ2=180-θ1の関係となる。よって、H2=H・cos(180-θ1)=-Hcosθ1=-H1となり、外部磁界29の副感度軸方向31b、32bの成分が、同じ大きさで正負が逆となる。 【0042】 したがって、第1の磁気抵抗効果素子31の出力信号と第2の磁気抵抗効果素子32の出力信号との和を電流センサ10の出力信号とすることで、H1とH2とが相殺される。よって、外部磁界29の副感度軸方向31b、32bの成分による測定誤差が確実に相殺されて、電流センサ10の出力精度の低下が抑制される。」 「【図6】 [図:0001410710000005.jpg] 」 (イ) 引用文献5に記載された事項 当審拒絶理由通知書において引用した前記引用文献5(国際公開第2012/29438号)には、以下の事項が記載されている。 「[0033] また、第一の磁気センサ14aに対しては、感度軸方向D1から所定の角度θをなす方向より誘導磁界M1が印加され、第二の磁気センサ14bに対しては、感度軸方向D1の逆方向から所定の角度θをなす方向より誘導磁界M1が印加される。このため、第一及び第二の磁気センサ14a、14bからは互いに逆相の出力信号が出力される。さらに、第一の及び第二の磁気センサ14a、14bの感度軸方向D1に対して略同一の角度θから誘導磁界M1が印加されるので、感度軸方向D1の磁気ベクトルM2、M4の大きさは略同一となる。このため、第一及び第二の磁気センサ14a、14bから出力される出力信号は、互いに略同一の大きさとなる。さらに、第一及び第二の磁気センサ14a、14bは、感度軸方向D1が略同一方向に固定されているので、外乱磁気Hcに対しては、互いに同相の略同一の出力信号が出力される。したがって、第一及び第二の磁気センサ14a、14bの出力信号を差動演算することにより、誘導磁界M1からの出力信号が加算処理され、外乱磁気からノイズ成分が同相で除去される。これにより、電流センサ1の測定精度を向上することが可能となる。」 「【図3】 [図:0001410710000006.jpg] 」 (ウ) 周知技術Aの認定 前記引用文献4及び引用文献5の記載に例示されているように、次の事項は周知技術(以下「周知技術A」という。)であると認められる。 <周知技術A> 「電流が発生する磁気を検出することにより当該電流を検出するセンサ素子において、二つのセンサ素子を回路基板上で背中合わせに配置して、当該二つのセンサ素子の検出値の和や差をとることで外部磁界を相殺すること。」 ウ 引用文献6、7に記載された事項と周知技術Bの認定 (ア) 引用文献6に記載された事項 当審拒絶理由通知書において引用した前記引用文献6(特開2007-78418号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【0024】 図5(a)および(b)に、上記バスバー(被検出体)の配設態様を例示する。上記バスバーBBの形状は、平行な2本のラインBB1およびBB2を形成するものであれば基本的には任意であり、例えば図5(a)に示されるように、上流から一旦二手に分岐したものが再び下流にて合流するような形状などを採用することができる。また、上記平行な2本のラインBB1およびBB2の形状も、線(ライン)状のものであれば基本的には任意であり、例えば図5(b)に示されるように、電流方向に徐々に拡幅された形状であっても、あるいは波線形状であってもよい。 【0025】 次に、このセンサの動作について説明する。 すなわち、このような電流センサにおいて、例えば被検出体であるバスバーのラインBB1およびBB2に図1に矢印で示す方向(各ラインとも同一方向)へ電流が流れると、集積チップCP1の表裏に位置するラインBB2およびBB1によって、基板面(チップ表面)に平行な方向で、且つ、互いに異なる(相反する)方向の磁気ベクトルが、縦型ホール素子TH2およびTH1に対して付与される(図2中の一点鎖線矢印を参照)。そこで、この電流センサにおいては、上記縦型ホール素子TH1およびTH2を通じて、こうした磁気ベクトルを各々電圧値(ホール電圧)として検出することにより、これら各検出される磁気ベクトル(電圧値)の差動増幅値に基づいて、上記ラインBB1およびBB2により構成されるバスバーに流れる電流を検出(差動検出)するようにしている。そして、この実施の形態おいても、このように磁気ベクトルの差分値をとる(減算する)ことで、外乱(外乱磁界)の影響が相殺(キャンセル)、除去され、上記被検出体(バスバー)に電流が流れることに起因した磁気(磁界)に対応する信号成分のみが抽出、検出されることになる。」 「【図1】 [図:0001410710000007.jpg] 」 「【図5】 [図:0001410710000008.jpg] 」 (イ) 引用文献7に記載された事項 当審拒絶理由通知書において引用した前記引用文献7(特開2006-184269号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【0021】 また、上述したように第1のホール素子3aは、開口部2a内の導体部21近傍に配置され、第2のホール素子3bは、開口部2a内の導体部22近傍に配置され、この際、第1のホール素子3a及び第2のホール素子3bは、導体部21と導体部22の中心線に対して対称となる位置に配置される。つまり、導体部21から第1のホール素子3aまでの距離と、導体部22から第2のホール素子3bまでの距離が略同一となる。 【0022】 各ホール素子3a,3bは、該ホール素子3a,3bに印加される磁界に比例した大きさとなる電圧信号を生成し、この電圧信号を演算回路4に出力する。 【0023】 演算回路4は、各ホール素子3a,3bより出力される電圧信号に基づいて、バスバー2に流れる電流値を求め、求めた電流値を後段の回路(図示せず)に出力する。 【0024】 次に、上記のように構成された本実施形態に係る電流センサ1の作用について説明する。図3は、バスバー2の開口部2a周辺に発生する磁界を示す説明図である。同図に示すように、導体部21に電流が流れることにより、電流方向に対する右ねじの方向に第1の磁界が発生し、同様に導体部22に電流が流れることにより、電流方向に対する右ねじの方向に第2の磁界が発生する。この際、上述したように、各導体部21,22に流れる電流は同一となるので、これらの電流により生じる第1の磁界、第2の磁界は大きさが等しくなる。ここで、この磁界をBIとする。 【0025】 更に、バスバー2に流れる電流に起因して生じる磁界以外の外部磁界として、例えば、バスバー2の開口部2aの法線方向に向く外部磁界Bαが発生し、この外部磁界Bαが各ホール素子3a,3bに印加された場合を想定する。」 「【0037】 このようにして、第1の実施形態に係る電流センサ1では、バスバー2の中央部に開口部2aを形成し、この開口部2a内に特性が同一となる2つのホール素子3a,3bを配置し、各ホール素子3a,3bより出力される電圧信号V1,V2の差分を演算することにより、外部磁界Bαを相殺し、バスバー2に流れる電流に起因した磁界のみについての電圧信号を得ることができる。従って、外部磁界Bαが存在する場合であっても、この影響を受けることなく、バスバー2に流れる電流により発生する磁界のみを高精度に検出することができ、電流検出精度を著しく向上させることができる。」 「【図3】 [図:0001410710000009.jpg] 」 (ウ) 周知技術Bの認定 前記引用文献6及び引用文献7の記載に例示されているように、次の事項は周知技術(以下「周知技術B」という。)であると認められる。 <周知技術B> 「電流が発生する磁気を検出することにより当該電流を検出するセンサ素子において、二つのセンサ素子を回路基板上で並んで配置されて並列に配線して、当該二つのセンサ素子の検出値の差をとることで外部磁界を相殺すること。」 エ 引用文献9及び引用文献10に記載された事項と技術常識事項Aの認定 (ア) 引用文献9に記載された事項 当審において新たに引用する、特表2016-531669号公報(以下「引用文献9」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【0032】 図6は、一例として、スレーブマニピュレータ200又は医療装置250の関節410を作動させるモータ401を制御するために用いられる関節制御システム400のブロック図を例示している。スレーブマニピュレータ200又は医療装置250の他の関節を作動させる他のモータを制御するために、類似の制御システムを医療ロボットシステム1000中に設けてよい。本実施例において、モータ401は、好ましくは、電流コントローラ402によって制御される三相ブラシレス直流(DC)モータである。電流コントローラ402は関節位置コントローラ304から電流命令ICを受信し、パルス幅変調された電圧信号Va,Vb,Vcを生成し、それはそれらを三相ブラシレスDCモータ401のそれぞれのモータ巻線にもたらす。センサ処理ユニット403が、ホール効果センサ及び/又は回転エンコーダのような1つ又はそれよりも多くのセンサを含み、それはモータ401のロータ角度Rを感知し、感知したロータ角度Rの情報を電流コントローラ402にフィードバックする。感知したロータ角度Rは、関節位置コントローラ304に直接的にフィードバックされてよく、或いは、図示のように、電流コントローラ402を通じて間接的にフィードバックされてよい。電流コントローラ402は、位相調節のために感知したロータ角度Rフィードバックを用いることによって並びに電流制御フィードバックのために内部的に感知した出力電圧Va,Vb,Vc及び/又は電流ia,ib,ic(即ち、モータ巻線に流入する電流)を用いて、従来的な方法において電流命令ICに応答して、パルス幅変調された電圧信号Va,Vb,Vcを生成する。」 「【図6】 [図:0001410710000010.jpg] 」 (イ) 引用文献10に記載された事項 当審において新たに引用する、特開2016-116364号公報(以下「引用文献10」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 ところで、例えば医療器具の分野に用いられるロボットを構成しているモータが制御対象である場合、特に手術用メスの操作を行うためのロボット等では、インバータ回路に故障が発生した際に動作を直ちに停止することなく、稼働を継続できることが望ましい。また、人間の生活環境において共存する例えばコンパニオンロボットや介護作業をアシストするためのロボット等も同様であり、インバータ回路に故障が発生しても稼働を継続して、安全な状況下で確実に動作を停止できることが望ましい。 【0005】 本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、インバータ回路に故障が発生した際にもロボットの稼働を継続できるインバータ装置を提供することにある。」 「【0015】 (第1実施形態) 以下、第1実施形態について図1から図20を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態のインバータ装置1は2つのインバータ回路2A,2Bを備えており、インバータ回路2A,2Bの各相出力端子は何れも、ACモータ3の各相固定子巻線4U,4V,4Wに接続されている。ACモータ3は、ロボットの関節軸を構成するものである。インバータ回路2A,2Bのスイッチング制御は、MCU(Micro Control Unit)5によって行われる。」 「【図1】 [図:0001410710000011.jpg] 」 (ウ) 技術常識事項Aの認定 前記引用文献9及び引用文献10の記載に例示されているように、次の事項は技術常識であると認められる(以下「技術常識事項A」という。)。 <技術常識事項A> 「医療用ロボットの関節を三相モータで駆動すること。」 オ 引用文献11及び引用文献12に記載された事項と技術常識事項Bの認定 (ア) 引用文献11に記載された事項 当審において新たに引用する、特開2010-268844号公報(以下「引用文献11」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【0024】 図1、図2及び図3に示すように、本実施の形態に係る医療用マニピュレータ10は、先端動作部12に生体の一部又は湾曲針等を把持して所定の処置を行うためのものであり、通常、把持鉗子やニードルドライバ(持針器)等とも呼ばれる。 【0025】 医療用マニピュレータ10は、人手によって把持及び操作される操作部14と、該操作部14に対して着脱自在な作業部16とを備え、操作部14に対してコネクタ24を介して着脱自在なコントローラ(制御部)27を有するマニピュレータシステムとして構成されている。 【0026】 医療用マニピュレータ10は、基本構成として操作部14と作業部16とを有しており、コントローラ27は当該医療用マニピュレータ10の電気的な制御をするものであり、グリップハンドル26の下端部から延在するケーブル62に対してコネクタ24を介して接続されている。制御部であるコントローラ27の機能の一部又は全部を、例えば操作部14に一体的に搭載することもできる。 【0027】 コントローラ27は、時計27aと、モータドライバ27bと、該モータドライバ27bに設けられた電流センサ27cとを有している。電流センサ27cは、例えばホール素子であって、後述するモータ40a~40cの負荷電流を検出する。」 「【0089】 電流センサ27cは、始業点検時以外の通常の手技の最中にも負荷検出手段として用いることができ、例えば、負荷電流に基づいてグリッパ60が針や生体組織の一部を把持しているときの把持力を求めることができる。」 「【図1】 [図:0001410710000012.jpg] 」 (イ) 引用文献12に記載された事項 当審において新たに引用する、国際公開第2015/137038号(以下「引用文献12」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【0017】 なお、以下の説明では、本開示の好適な一実施形態として、主に医療用途に用いられるロボットアーム装置を例に挙げて説明を行う。ただし、本実施形態はかかる例に限定されず、例えば工業用等、他の分野に対しても適用可能である。」 「【0069】 関節制御用CPU160は、図1に示す関節制御部135に対応する。例えば、関節制御用CPU160からモータドライバユニット170に対して、アクチュエータ180のモータを駆動するための制御量(例えば電流量)が伝達される(これは、例えば、上述した図1に示す駆動制御部111の機能に対応する)。このような、関節制御用CPU160における、アクチュエータ180の駆動を制御するための構成については、図3-図5を参照して詳しく後述する。 【0070】 また、アクチュエータ180から関節制御用CPU160に対して、アクチュエータ180に搭載される各センサによる検出値(例えば、電流量、温度、回転角度等)についての情報、すなわち、関節部130の状態を示す情報が送信される。関節部130の状態を示す情報は、通信ユニット150を介して制御装置20に送信される。また、図3-図5を参照して後述するように、関節制御用CPU160では、制御装置20から送信される制御量に加えて、アクチュエータ180の各センサによる検出値に更に基づいてアクチュエータ180の駆動制御が行われ得る。なお、図2では、アクチュエータ180の各センサによる検出値についての情報が関節制御用CPU160を介して、通信ユニット150から制御装置20に送信されるように図示されているが、これらの検出値についての情報は、通信ユニット150を介して直接制御装置20に送信されてもよい。また、アクチュエータ180に搭載される各センサの構成については、図6を参照して詳しく後述する。」 「【0073】 また、上述したように、アクチュエータ180は、自身の駆動に関する各種の物理量を検出するセンサを搭載している。例えば、アクチュエータ180は、モータに供給されている電流量を検出する電流センサ、モータの温度を検出する温度センサ、モータの回転角度及び減速機の出力軸の回転角度を検出する角度センサ、減速機の出力軸におけるトルクを検出するトルクセンサ等を有する。これらのセンサは、例えば、図1に示す関節状態検出部132に対応する。これらのセンサによる検出値が、関節制御用CPU160及び通信ユニット150に提供され、アクチュエータ180の駆動制御や関節部130の異常検出に用いられることとなる。」 「【0090】 以上、図6を参照して、アクチュエータ180に搭載される各センサの構成について説明した。なお、本実施形態では、電流センサ182、温度センサ187、トルクセンサ183、モータ角度センサ184a及び出力軸角度センサ184bの具体的な構成は特定のものに限定されず、これらのセンサとしては、各種の公知のセンサを用いることができる。例えば、電流センサ182は、抵抗による電圧降下に基づいて電流を検出するものであってもよいし、ホール素子による磁界の変化に基づいて電流を検出するものであってもよい。また、例えば、温度センサ187は、熱電対を利用するものであってもよいし、測温抵抗体を利用するものであってもよい。また、例えば、トルクセンサ183は各種の歪センサを用いたものであってよい。また、例えば、モータ角度センサ184a及び出力軸角度センサ184bは、各種のロータリエンコーダであってよい。」 「【図2】 [図:0001410710000013.jpg] 」 (ウ) 技術常識事項Bの認定 前記引用文献11及び引用文献12の記載に例示されているように、次の事項は技術常識であると認められる(以下「技術常識事項B」という。)。 <技術常識事項B> 「ホール素子を用いて医療用ロボットアームのモータ駆動電流を検出すること。」 (2) 対比 ア 対比分析 本願発明と引用発明を対比する。 (ア)a 引用発明の「電子制御ユニット(ECU)5」は、モータ制御部20とモータ駆動部10とを備えており、モータ制御部20はマイクロコンピュータで構成され、モータ駆動部10はPWM信号生成回路17とモータ駆動回路50とリレー駆動回路70から構成されている、すなわち、回路で構成されており、さらにブラシレスモータ6の駆動を制御するものである。 したがって、引用発明の「電子制御ユニット(ECU)5」は、本願発明の「外科用ロボット用のモータ制御回路」と、「モータ制御回路」という点において共通する。 b よって、「外科用ロボット用のモータ制御回路」の発明である本願発明と「電子制御ユニット(ECU)5」の発明である引用発明は、「モータ制御回路」の発明である点において共通する。 (イ)a 引用発明の「電子制御ユニット(ECU)5」は、「電流検出回路81~83をモータ駆動回路50とモータ6との間に備え」(【0029】、【図4】)、「この電流検出回路81~83にはシャント抵抗が含まれており、そのシャント抵抗の両端間の電圧に基づいて、U相電流検出値Iu、V相電流検出値Iv、およびW相電流検出値Iwが算出される」(【0015】、【0029】、【図4】)から、引用発明の「電流検出回路81~83」は、「多相である「モータ6」の各相の駆動電流を感知するためのもの」であるといえる。 したがって、引用発明の「電流検出回路81~83」を備える「電子制御ユニット(ECU)5」は、「多相である「モータ6」の各相の駆動電流を感知するための回路」であるといえる。 b よって、本願発明と引用発明は、次の点において共通する。 「前記モータ制御回路は、多相モータの駆動電流を感知するための回路であ[る]」点。 (ウ)a 引用発明の「モータ駆動回路50」は、モータ6に電圧を印加することによりモータ6を駆動するものであり、駆動電流を生成するものであることは明らかであるから、本願発明の「前記多相モータの各フェーズ用の前記駆動電流を生成するように構成されているドライバ」に相当する。 b 引用発明においては、「各相に流れるモータ電流値の総和は零になる」(【0021】、【0029】、【図4】)とされているから、引用発明の「モータ駆動回路50」は、本願発明の「すべての前記駆動電流の瞬間合計がゼロになるドライバ」に相当する。 c 前記a及びbを踏まえると、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「モータ制御回路」が「前記多相モータの各フェーズ用の前記駆動電流を生成するように構成されているドライバで、すべての前記駆動電流の瞬間合計がゼロになるドライバ」を含んで構成されている点。 (エ)a 前記(イ)aにおいて検討したとおり、引用発明の「電流検出回路81~83」は、「多相である「モータ6」の各相の駆動電流を感知するためのもの」であるから、本願発明の「多相モータの各フェーズ用の電流センサであり」、「各フェーズの前記駆動電流を測定するように構成されている電流センサ」に相当する。 b(a) 「前記多相モータの各フェーズ用の電流センサ」の「各々が6mm未満の距離で離隔し[ている]」ことの技術的意味を理解するために、明細書の翻訳文(以下、単に「明細書」という。)の【0050】を参照すると、次のとおり記載されている。 「【0050】 ICに統合されたモータ制御回路では、ホールセンサ114は互いに極めて接近している。例えば、それらは約6mm未満の距離で離隔していてもよい。好適には、ホールセンサ114は、それらが取り付けられている回路基板に対して同じ方向を向いている。したがって、各ホールセンサが受ける外部電磁界は実質的に同じである。したがって、ホールセンサが同じ誤差を受けるという推定は妥当である。」 (b) 上記(a)に摘記した本願の明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌すると、「各々が6mm未満の距離で離隔し[ている]」ことの技術的意味は、「ホールセンサが同じ誤差を受けるという推定は妥当である」ことを担保するための条件であることが分かる。 (c) 前記(b)の検討結果を踏まえると、引用発明において、「各相に設けられた電流検出回路81~83は近接して配置されて」おり、「各相それぞれが受ける温度変化等の影響がほぼ等し[い]」ことと、本願発明の「電流センサ」において、「各々が6mm未満の距離で離隔し[ている]」ことは、「電流センサ」において、「各々が各相それぞれが受ける外的環境に起因する影響がほぼ等しくなる程度の近接した距離で離隔している」点において共通する。 c よって、本願発明と引用発明は、次の点において共通する。 「モータ制御回路」が「前記多相モータの各フェーズ用の電流センサであり、各々が各相それぞれが受ける外的環境に起因する影響がほぼ等しくなる程度の近接した距離で離隔しつつ、各フェーズの前記駆動電流を測定するように構成されている電流センサ」を含んで構成されている点。 (オ)a 引用発明の「モータ制御部20」は、「モータ駆動回路50とモータ6の間に設けられた電流検出回路81~83で検出された相電流検出値Iu、Iv、Iwを受け取り」、「その相電流検出値Iu、Iv、Iwからオフセット値を減算し、モータ6の各相に流れる電流値(モータ電流値)」を求めるものである(【0016】、【0029】、【図4】)。 b そして、引用発明においては、「各相のモータ電流値Imu、Imv、およびImwの総和を3(相数)で除することにより補正値Ihoを算出し」(【0025】)、「U相モータ電流値Imu、V相モータ電流値Imv、およびW相モータ電流値Imwから補正値Ihoを減算し[ている]」(【0026】)ところ、このことは、本願発明の「前記多相モータの各フェーズについて、該フェーズの前記測定駆動電流からすべての前記フェーズの測定駆動電流の合計の1/nを引いたものとなるように該フェーズの該駆動電流の推定値を生成する」こと、及び、「nが該多相モータのフェーズ数である」ことに相当する。 c 前記a及びbを踏まえると、引用発明の「モータ制御部20」は、本願発明の「コントローラ」に相当する。 d よって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「モータ制御回路」が「前記多相モータの各フェーズについて、該フェーズの前記測定駆動電流からすべての前記フェーズの測定駆動電流の合計の1/nを引いたものとなるように該フェーズの該駆動電流の推定値を生成するように構成されたコントローラで、nが該多相モータのフェーズ数であるコントローラ」を含んで構成されている(「モータ制御回路」である)点。 (カ)a 引用発明は、「モータ駆動回路50は、上アームの各ラインに設けられたFET51H~53Hと下アームの各ラインに設けられたFET51L~53Lとが互いに対となるように直列に接続して構成されており、そのFET対が3対並列に接続された3相の構成となっており」「上アームと下アームとの各接続点は、モータの各相の端子61~63と接続され[ており]」(【0015】)、「U相補正後モータ電流値Ihmu、V相補正後モータ電流値Ihmv、およびW相補正後モータ電流値Ihmwに基づいて、モータ駆動処理を行う」(【0028】)ものであり、「電流検出回路81~83をモータ駆動回路50とモータ6の間に備え[ている]」(【0029】、【図4】)、ところ、この構成は、前記(ウ)及び(エ)の検討も踏まえると、本願発明の「前記ドライバから前記多相モータへ延びるn本のモータ駆動ラインがあり、各モータ駆動ラインのそれぞれが、前記多相モータの各フェーズのそれぞれに1本ずつ対応し、各モータ駆動ラインが各電流センサを1個ずつ備えて[いる]」ことに相当する。 b よって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「前記ドライバから前記多相モータへ延びるn本のモータ駆動ラインがあり、各モータ駆動ラインのそれぞれが、前記多相モータの各フェーズのそれぞれに1本ずつ対応し、各モータ駆動ラインが各電流センサを1個ずつ備えて[いる]」点。 イ 一致点及び相違点 前記(1)の対比分析の検討結果を総合すると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次の(ア)及び後記(イ)に示すとおりである。 (ア) 一致点 モータ制御回路であって 前記モータ制御回路は、多相モータの駆動電流を感知するための回路であって、 前記多相モータの各フェーズ用の前記駆動電流を生成するように構成されているドライバで、すべての前記駆動電流の瞬間合計がゼロになるドライバと、 前記多相モータの各フェーズ用の電流センサであり、各々が各相それぞれが受ける外的環境に起因する影響がほぼ等しくなる程度の近接した距離で離隔しつつ、各フェーズの前記駆動電流を測定するように構成されている電流センサと、 前記多相モータの各フェーズについて、該フェーズの前記測定駆動電流からすべての前記フェーズの測定駆動電流の合計の1/nを引いたものとなるように該フェーズの該駆動電流の推定値を生成するように構成されたコントローラで、nが該多相モータのフェーズ数であるコントローラと、 を含んで構成されており、 前記ドライバから前記多相モータへ延びるn本のモータ駆動ラインがあり、各モータ駆動ラインのそれぞれが、前記多相モータの各フェーズのそれぞれに1本ずつ対応し、各モータ駆動ラインが各電流センサを1個ずつ備えている、 回路、である点。 (イ) 相違点 本願発明においては、 a モータ制御回路の用途が、「外科用ロボット用」であり、「外科用ロボットの外科用ロボットアームの多相モータの駆動電流を感知するための回路であって」、「前記多相モータは前記外科用ロボットアームのジョイントを駆動するように構成されて」おり、(以下「部分相違点A」という。) b(b1) 各電流センサが、「各電流センサが2つの電流センサ素子を含み、各電流センサ素子が該フェーズの該駆動電流を測定して駆動電流読取値を生成するように構成されており、該フェーズの測定駆動電流が前記2つの電流センサ素子の前記駆動電流読取値の組み合わせであり、測定すべき該駆動電流の外部の磁界が原因である、各電子センサ素子の該駆動電流の系統的な誤差の大きさが同じになるように、各電流センサの該2つの電流センサ素子が相対配置されている電流センサ」であり、(以下「部分相違点b1という。) (b2) 前記モータ制御回路は回路基板上のICに統合されており、(以下「部分相違点b2」という。) (b3) 各相それぞれが受ける外的環境に起因する影響がほぼ等しくなる程度の近接した距離であるところの電流センサの各々の離隔距離が、6mm未満の距離に限定されているのに対して、(以下「部分相違点b3」という。また、以下、「部分相違点b1」から「部分相違点b3」までをまとめて「部分相違点B」という。) 引用発明においては、 a モータ制御回路の用途は「ハンドル操作による運転者の負荷を軽減するための操舵補助力を発生するブラシレスモータ6の駆動」であり、 b(b1) 各電流センサは、シャント抵抗であり、 (b2) 前記モータ制御回路が回路基板上のICに統合されているとの限定はなく、 (b3) 電流センサの各々の離隔距離は、具体的にどの程度なのか不明である点。 (3) 判断 前記相違点について検討する。 ア 部分相違点Aについて (ア) 前記(1)エ(ウ)において技術常識事項Aとして示したとおり、医療用ロボットの関節を三相モータで駆動することは、優先日前に技術常識である。 (イ) 引用発明は、運転者の負荷を軽減するための操舵補助力を発生する、三相のブラシレスモータ6の駆動を制御するものであるが、前記(ア)のとおり、医療用ロボットの関節を三相モータで駆動することが技術常識であり、このようなモータにおいても検出電流値のオフセット値の変動を補償すべきことは自明の課題であり、モータの駆動の制御技術の当業者が、引用発明を、医療用ロボットの関節を駆動する三相モータの制御に適用することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。 イ 部分相違点Bについて (ア) 部分相違点b1について a 前記(1)オ(ウ)において技術常識事項Bとして示したとおり、ホール素子を用いて医療用ロボットアームのモータ駆動電流を検出することは、優先日前に技術常識である。 b また、それぞれ前記(1)イ(ウ)及びウ(ウ)において周知技術A及び周知技術Bとして示したとおり、以下に示す二つの技術は、いずれも優先日前に周知である。 <周知技術A> 「電流が発生する磁気を検出することにより当該電流を検出するセンサ素子において、二つのセンサ素子を回路基板上で背中合わせに配置して、当該二つのセンサ素子の検出値の和や差をとることで外部磁界を相殺すること。」 <周知技術B> 「電流が発生する磁気を検出することにより当該電流を検出するセンサ素子において、二つのセンサ素子を回路基板上で並んで配置されて並列に配線して、当該二つのセンサ素子の検出値の差をとることで外部磁界を相殺すること。」 c 前記アにおいて検討したとおり、引用発明を、医療用ロボットの関節を駆動する三相モータの制御に用いる場合、前記技術常識事項Bである「ホール素子を用いて医療用ロボットアームのモータ駆動電流を検出すること」を踏まえると、引用発明の「電流検出回路81~83」をシャント抵抗に代えてホール素子とすることは、当業者にとっては、自明の設計事項にすぎない。 d ここで、電流センサにおいてノイズを低減することは周知の課題であるから、引用発明においてホール素子を用いて電流検出を行う場合に、前記課題を解決するために前記周知技術A又は周知技術Bを併せて適用することも当業者が適宜選択し得た自明の設計事項にすぎない。 e その場合、周知技術A又は周知技術Bは、二つのセンサ素子を回路基板上で背中合わせに配置して、又は、二つのセンサ素子を回路基板上で並んで配置されて並列に配線して、当該二つのセンサ素子の検出値の和や差をとることで外部磁界を相殺するものであるから、当該構成が、前記部分相違点b1に係る構成に相当することになる。 f よって、引用発明において、前記部分相違点b1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (イ) 部分相違点b2について a 引用発明の「電子制御ユニット(ECU)5」は回路で構成されており(前記(2)ア(ア)参照)、「電流検出回路81~83」をシャント抵抗に代えてホール素子とすることは当業者にとっては自明の設計事項にすぎないところ(前記(ア)c参照)、回路を集積化して小型化することも自明な設計指針であるから、「電子制御ユニット(ECU)5」の回路を回路基板上のICに統合することは、当業者が適宜になし得た自明のことにすぎない。 b よって、引用発明において、前記部分相違点b2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (ウ) 部分相違点b3について 引用発明において、各相に設けられた電流検出回路81~83を近接して配置しているのは、各相それぞれが受ける温度変化等の影響がほぼ等しくなるようにするためであるところ、電流検出回路81~83をホール素子にした場合においても、前記影響がほぼ等しくなるようにすべきことは明らかであるから、電流検出回路81~83を具体的にどの程度まで近接させるかは、温度変化等の影響をどこまで等しくするかに応じて、当業者が適宜に定めることにすぎず、電流センサの各々の離隔距離が「6mm未満の距離」に限定する点は、実質的な相違点とはいえない。 ウ 総合検討 前記ア及びイにおいて検討したとおり、引用発明において前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明、周知技術A、周知技術B、技術常識事項A及び技術常識事項Bに基づいて当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願発明の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本願発明は、引用発明、周知技術A、周知技術B、技術常識事項A及び技術常識事項Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ 請求人の主張について (ア) 審判請求書における請求人の主張内容 請求人は、意見書において、概略次の主張をしている。 引用発明は、電動パワーステアリング装置に関するものである。したがって、外科用ロボットとは全く関係のない分野である。電動パワーステアリング装置の電流を測定するための電流センサには、外科用ロボット用の小型化された電流検出装置のような設計上の制約がない。電動パワーステアリング装置は、構成部品のサイズや測定電流の大きさの点で、本願発明よりはるかに大きなスケールで動作するものである。システムの規模(例えば部品の大きさや電流の大きさ)は、電流センサの誤差や磁気干渉に関して適用される仮定に影響するため、これは重要な違いとなる。当業者であれば、引用発明の電動パワーステアリング装置で許容される誤差が、数mm四方のスケールの小型電流検出回路に適用された場合にも維持されると考えない。 さらに、引用発明は電流センサにおける磁気干渉の影響を低減することを目的としていない。引用発明は、磁気干渉によって電流センサに誤差が出る可能性があることを認識すらしておらず、磁気干渉によって生じるそのような不正確さを低減するのに有用な電流センサ素子の配置は、なおさら開示がない。 したがって、当業者が磁気干渉によって生じる電流検出測定の不正確さを低減し、可能な限り小型化した手術ロボット用の電流検出装置を提供しようとする場合、引用発明が関連するとは考えなかったであろうと考える。 (イ) 請求人の主張についての検討 引用発明は、要するに、電流検出回路81~83の測定値にオフセットが含まれており、そのオフセットを低減するために、各相のモータ電流値の総和を3(相数)で除することにより求めた補正値を用いて補正するものであるところ、このオフセットを低減するという課題は、オフセットが含まれる電流検出装置を用いていることにより生じるものであり、モータ制御装置の大きさとは関係するものでない。そうすると、当該課題は、電動パワーステアリング装置に限らず、より小型の三相モータ駆動制御装置においても当然に成り立つものであるから、モータの駆動の制御技術の当業者が引用発明の応用先を電動パワーステアリング装置に限定してしか考えられない旨の請求人の主張は失当である。 そして、引用発明の応用先を、医療用ロボットアームのモータ制御装置とした場合、前記(1)オ(ウ)のとおり、医療用ロボットアームのモータ駆動電流をホール素子により検出することは技術常識事項であることを踏まえると、電流検出回路81~83をホール素子とし、当該ホール素子の磁気干渉による影響を考慮するようにすることに格別の困難性があるものではない。 したがって、前記ア及びイにおいて示したように、引用発明を医療用ロボットの関節を駆動する三相モータの制御に用い、電流検出装置をホール素子として、前記ホール素子の外部磁界によるノイズを低減するために、周知技術A及び周知技術Bを引用発明に適用することには、困難性は認められない。 よって、請求人の主張は採用できない。 5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、周知技術A、周知技術B、技術常識事項A及び技術常識事項Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-015243

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