特許拒絶査定不服審判
2022-014795
検出のためのシステムおよび方法
- 審判番号
- 2022-014795
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-557546外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年09月20日
- 審決日
- 2023年05月09日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】フォトスイッチ・バイオサイエンシズ・インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】山本 修
- 【請求人代理人】宮前 徹
- 【請求人代理人】松尾 淳一
- 【請求人代理人】大牧 綾子
- 分類
- P18 .113-Z (G01N) / P18 .121-Z (G01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-557546「検出のためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 7月19日国際公開、WO2018/132487、令和 2年 3月26日国内公表、特表2020-509391〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
特願2019-557546「検出のためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年7月19日国際公開、WO2018/013188、令和2年3月26日国内公表、特表2020-509391〕について、以下のとおり審決する。
結 論
本件審判請求は、成り立たない。
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)1月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年1月10日、(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和元年 9月 5日 :翻訳文の提出
令和2年12月18日 :手続補正書の提出
令和4年 1月 4日付け:拒絶理由通知書
同年 4月 1日 :意見書、手続補正書の提出
同年 5月23日付け:拒絶査定
同年 9月20日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和4年9月20日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年9月20日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項18の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「照明アセンブリおよび検出アセンブリを含むシステムであって、
(a)ウェルのアレイのうちの複数のウェルに光を向け、
(b)前記複数のウェルの各ウェルから信号を実質的に並行して収集し、
(c)各信号を実質的に並行して対応する検出器に転送する、
ように構成され、
100ヘルツ(Hz)より大きいウェルの前記アレイにわたる前記信号のサンプリングレートを有し、5/10mV細胞膜電位変化を超える信号対雑音比で、前記複数のウェルの各ウェルからの信号の強度の変化を測定する、
システム。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和4年4月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項18の記載は次のとおりである。
「照明アセンブリおよび検出アセンブリを含むシステムであって、
(a)ウェルのアレイのうちの複数のウェルに光を向け、
(b)前記複数のウェルの各ウェルから信号を実質的に並行して収集し、
(c)各信号を実質的に並行して対応する検出器に転送する、
ように構成され、
100ヘルツ(Hz)より大きいウェルの前記アレイにわたる前記信号のサンプリングレートを有する、
システム。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項18に記載された発明を特定するために必要な事項である「100ヘルツ(Hz)より大きいウェルの前記アレイにわたる前記信号のサンプリングレートを有する」という「システム」の動作性能に関する構成について、「5/10mV細胞膜電位変化を超える信号対雑音比で、前記複数のウェルの各ウェルからの信号の強度の変化を測定する」との限定を付加するものであって、補正前の請求項18に記載された発明と補正後の請求項18に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項18に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか)について、以下、検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(1)に摘記した本件補正後の請求項18に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2) 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献2に記載された事項及び引用発明の認定
(ア)引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された文献である米国特許出願公開第2016/0041095号明細書(以下「引用文献2という。)には、次の事項が記載されている。
摘記の後の括弧内に合議体が作成した日本語訳を示す。下線は合議体が付した。以下同様である。
a [0224]
「Briefly, the inventors have recognized and appreciated that a pixelated sensor device with a relatively large number of pixels (e.g., hundreds, thousands, millions or more) that allows for the detection of a plurality of individual molecules or particles in parallel. Such single molecules may be nucleotides or amino acids having tags. Tags may be detected while bound to single molecules, upon release from the single molecules, or while bound to and upon release from the single molecules. In some examples, tags areluminescent tags. The molecules may be, by way of example and not limitation, proteins and/or nucleic acids (e.g., DNA, RNA). Moreover, a high-speed device that can acquire data at more than one hundred frames per second allows for the detection and analysis of dynamic processes or changes that occur over time within the sample being analyzed.」
(日本語訳:簡単に言えば、本発明者らは、複数の個々の分子または粒子を並行して検出できる、比較的多数のピクセル(例えば、数百、数千、数百万、またはそれ以上)を有するピクセル化されたセンサデバイスを認識し、理解した。そのような単一分子は、タグを有するヌクレオチドまたはアミノ酸であり得る。タグは、単一分子に結合している間、単一分子からの放出時、または単一分子に結合している間および単一分子からの放出時に検出することができる。いくつかの例では、タグは蛍光タグである。分子は、限定ではなく一例として、タンパク質および/または核酸(例えば、DNA、RNA)であり得る。さらに、毎秒100フレーム以上でデータを取得できる高速デバイスにより、分析対象のサンプル内で経時的に発生する動的プロセスまたは変化の検出と分析が可能になる。)
b [0225]
「The inventors have recognized and appreciated that a low-cost, single-use disposable assay chip may be used in connection with an instrument that includes an excitation light source, optics, and a light sensor to measure an optical signal (e.g., luminescent light) emitted from biological samples. Using a low-cost assay chip reduces the cost of performing a given bioassay. A biological sample is placed onto the assay chip and, upon completion of a single bioassay, may be discarded. In some embodiments, more than one type of sample may be analyzed simultaneously, in parallel, by placing multiple samples on different portions of the assay chip at the same time. The assay chip interfaces with the more expensive, multi-use instrument, which may be used repeatedly with many different disposable assay chips. A low-cost assay chip that interfaces with a compact, portable instrument may be used anywhere in the world, without the constraint of high-cost biological laboratories requiring laboratory expertise to analyze samples. Thus, automated bioanalytics may be brought to regions of the world that previously could not perform quantitative analysis of biological samples. For example, blood tests for infants may be performed by placing a blood sample on a disposable assay chip, placing the disposable assay chip into the small, portable instrument for analysis, and processing the results by a computer that connects to the instrument for immediate review by a user. The data may also be transmitted over a data network to a remote location to be analyzed, and/or archived for subsequent clinical analyses. Alternatively, the instrument may include one or more processors for analyzing the data obtained from the sensors of the instrument.」
(日本語訳:本発明者らは、生物学的サンプルから放出される光シグナル(例えば、ルミネッセンス光)を測定するために、励起光源、光学系、および光センサーを含む機器に関連して、低コストで一回使用の使い捨てアッセイチップを使用できることを認識し、理解した。低コストのアッセイチップを使用すると、特定のバイオアッセイを実行するコストが削減される。生物学的サンプルはアッセイチップ上に置かれ、1回のバイオアッセイが完了すると廃棄される。いくつかの実施形態では、複数のサンプルをアッセイチップの異なる部分に同時に配置することによって、複数のタイプのサンプルを同時に、並行して分析することができる。アッセイチップは、多くの異なる使い捨てアッセイチップで繰り返し使用できる、より高価な多目的器具とインターフェースする。コンパクトでポータブルな機器と接続する低コストのアッセイチップは、世界中のどこでも使用でき、サンプルを分析するために実験室の専門知識を必要とする高コストの生物学的実験室の制約はない。したがって、自動化された生物分析は、以前は生物学的サンプルの定量分析を実行できなかった世界の地域にもたらされる可能性がある。例えば、乳児の血液検査は、ユーザーによって、血液サンプルを使い捨てのアッセイチップに置き、使い捨てのアッセイチップを分析用の小型の携帯型機器に置き、機器に接続されたコンピューターで結果を処理してすぐに確認できるようにすることで実行できる。データはまた、データネットワークを介して遠隔地に送信されて分析され、および/またはその後の臨床分析のためにアーカイブされてもよい。あるいは、器具は、器具のセンサから得られたデータを分析するための1つまたは複数のプロセッサを含むことができる。)
c [0227]
「A schematic overview of the apparatus 2-100 is illustrated in FIG. 2-1. The system comprises both an assay chip 2-110 and an instrument 2-120 comprising an excitation source 2-121 and at least one sensor 2-122. The assay chip 2-110 interfaces with the instrument 2-120 using any suitable assay chip interface. For example, the assay chip interface of the instrument 2-120 may include a socket (not illustrated) for receiving the assay chip 2-110 and holding it in precise optical alignment with the excitation source 2-110 and the at least one sensor 2-122. The external excitation source 2-121 in the instrument 2-120 is configured to provide excitation energy to the assay chip 2-110 for the purpose of exciting a sample in the sample well 2-111 of the assay chip 2-110. In some embodiments, the assay chip 2-110 has multiple pixels, the sample well 2-111 of each pixel configured to receive a sample used in an analysis independent from the other pixels. Each pixel of the assay chip 2-110 comprises a sample well 2-211 for receiving, retaining and analyzing a sample from the specimen being analyzed. Such pixels may be referred to as “passive source pixels” since the pixels receive excitation energy from an excitation source separate from the pixel. In some embodiments, there is a pixel in the instrument 2-120 corresponding to each pixel present on the assay chip 2-110. Each pixel of the instrument 2-120 comprises at least one sensor for detecting emission energy emitted by the sample in response to the sample being illuminated with excitation energy from the excitation source 2-121. In some embodiments, each sensor may include multiple sub-sensors, each sub-sensor configured to detect a different wavelength of emission energy from the sample. While more than one sub-sensor may detect emission energy of a certain wavelength, each sub-sensor may detect a different wavelength band of emission energy.」
(日本語訳:装置2-100の概略図が図2-1に示されている。このシステムは、アッセイチップ2-110と、励起源2-121および少なくとも1つのセンサ2-122を備える機器2-120との両方を備える。アッセイチップ2-110は、任意の適切なアッセイチップインターフェースを使用して機器2-120とインターフェースする。例えば、機器2-120のアッセイチップインターフェースは、アッセイチップ2-110を受け取り、それを励起源2-110および少なくとも1つのセンサ2-122と正確に光学的に整列させて保持するためのソケット(図示せず)を含み得る。機器2-120内の外部励起源2-121は、アッセイチップ2-110のサンプルウェル2-111内のサンプルを励起する目的で、アッセイチップ2-110に励起エネルギーを提供するように構成される。 いくつかの実施形態では、アッセイチップ2-110は複数のピクセルを有し、各ピクセルのサンプルウェル2-111は、他のピクセルとは独立して分析に使用されるサンプルを受け取るように構成されている。アッセイチップ2-110の各ピクセルは、分析される標本からのサンプルを受け取り、保持し、分析するためのサンプルウェル2-211を含む。そのようなピクセルは、ピクセルがピクセルとは別の励起源から励起エネルギーを受け取るので、「パッシブソースピクセル」と呼ばれることがある。いくつかの実施形態では、アッセイチップ2-110上に存在する各ピクセルに対応する機器2-120内のピクセルが存在する。機器2-120の各ピクセルは、励起源2-121からの励起エネルギーでサンプルが照射されることに応答して、サンプルによって放出される放出エネルギーを検出するための少なくとも1つのセンサを備える。いくつかの実施形態では、各センサは複数のサブセンサーを含むことができ、各サブセンサーはサンプルからの放出エネルギーの異なる波長を検出するように構成されている。2つ以上のサブセンサーが特定の波長の放出エネルギーを検出することができる一方で、各サブセンサーは、放出エネルギーの異なる波長帯域を検出することができる。)
d [0228]
「In some embodiments, optical elements for guiding and coupling excitation energy from the excitation source 2-121 to the sample well 2-111 are located both on the assay chip 2-110 and the instrument 2-120, as represented by arrow 2-101 in FIG. 2-1. Such source-to-well elements may include mirrors, lenses, dielectric coatings and beam combiners located on the instrument 2-120 to couple excitation energy to the assay chip 2-110 and lenses, plasmonic elements and dielectric coatings on the assay chip 1-110 to direct the excitation energy received from the instrument 2-120 to the sample well 2-111. Additionally, in some embodiments, optical elements for guiding emission energy from the sample well 2-111 to the sensor 2-122 are located on the assay chip 2-110 and the instrument 2-120, as represented by arrow 2-102 in FIG. 2-1. Such well-to-sample elements may include may include lenses, plasmonic elements and dielectric coatings located on the assay chip 2-110 to direct emission energy from the assay chip 2-110 to the instrument 2-120 and lenses, mirrors, dielectric coatings, filters and diffractive optics on the instrument 1-120 to direct the emission energy received from the assay chip 2-110 to the sensor 2-111. In some embodiments, a single component may play a role both in coupling excitation energy to a sample well and delivering emission energy from the sample well to the sensor.」
(日本語訳:いくつかの実施形態では、図2-1中の矢印2-101によって表されるように、励起エネルギーを励起源2-121からサンプルウェル2-111に誘導および結合するための光学要素が、アッセイチップ2-110および機器2-120の両方に配置される。そのようなソースからウェルへの要素は、励起エネルギーをアッセイチップ2-110に結合するために機器2-120上に配置されたミラー、レンズ、誘電体コーティング、およびビーム結合器、ならびに、器具2-120から受け取った励起エネルギーをサンプルウェル2-111に向けるためにアッセイチップ1-100に配置されたレンズ、プラズモニック要素、および誘電体コーティングを含み得る。さらに、いくつかの実施形態では、放出エネルギーをサンプルウェル2-111からセンサ2-122に誘導するための光学要素が、図2-1中の矢印2-102によって表されるように、アッセイチップ2-110および機器2-120上に配置される。そのようなウェルからサンプルへの要素は、アッセイチップ2-110から機器2-120に放出エネルギーを向けるためにアッセイチップ2-110上に配置されたレンズ、プラズモニック要素、および誘電体コーティング、ならびに、アッセイチップ2-110から受け取った放出エネルギーをセンサ2-111(当審注:「2-122」の誤記と推測される。)に向けるために器具2-120に配置されたミラー、誘電体コーティング、フィルタ、回折光学系を含み得る。いくつかの実施形態では、単一構成要素が、励起エネルギーのサンプルウェルへの結合と、サンプルウェルからセンサへの放出エネルギーを供給する両方の役割を果たすことができる。)
e [0233]
「When the excitation source 2-121 illuminates the assay chip 2-110 with excitation energy, samples within one or more pixels of the assay chip 2-110 may be excited. In some embodiments, a specimen is labeled with multiple markers and the multiple markers, each associated with a different sample within the specimen, are identifiable by the emission energy. The path from the sample well 2-111 to the sensor 2-122 may include one or more components that aid in identifying the multiple markers based on emission energy. Components may focus emission energy towards the sensor 2-122 and may additionally or alternatively spatially separate emission energies that have different characteristic energies, and therefore different wavelengths. In some embodiments, the assay chip 2-110 may include components that direct emission energy towards the sensor 2-122 and the instrument 2-120 may include components for spatially separating emission energy of different wavelengths. For example, optical filters or diffractive optics may be used to couple the wavelength of the emission energy to a spatial degree of freedom. The sensor or sensor region may contain multiple sub-sensors configured to detect a spatial distribution of the emission energy that depends on the radiation pattern. Luminescent tags that emit different emission energies and/or spectral ranges may form different radiation patterns. The sensor or sensor region may detect information about the spatial distribution of the emission energy that can be used to identify a marker among the multiple markers.」
(日本語訳:励起源2-121は励起エネルギーでアッセイチップ2-110を照明するとき、アッセイチップ2-110の1つ又はそれ以上のピクセル内のサンプルが励起され得る。いくつかの実施形態では、試料は複数のマーカーで標識し、複数のマーカーは、試料内の異なる試料に関連し、発光エネルギーによって識別可能である。サンプルウェル2-111からセンサ2-122への経路は、発光エネルギーに基づいて、複数のマーカーを同定することを補助する、1つまたは複数の構成要素を含むことができる。コンポーネントは、放出エネルギーをセンサ2-122に向けて集束させ、追加的または代替的に、異なる特性エネルギー、したがって異なる波長を有する放出エネルギーを空間的に分離することができる。いくつかの実施形態では、アッセイチップ2-110は、放出エネルギーをセンサ2-122に向ける構成要素を含むことができ、器具2-120は、異なる波長の放出エネルギーを空間的に分離するための構成要素を含むことができる。例えば、光フィルタまたは回折光学系は、空間的自由度に放出エネルギーの波長を結合するために使用することができる。センサまたはセンサ領域は、放出パターンに依存する発光エネルギーの空間的分布を検出するように構成された複数のセンサを含んでいてもよい。異なる放出エネルギーおよび/またはスペクトル範囲を放出する発光タグは、異なる放出パターンを形成することができる。センサまたはセンサ領域は複数のマーカーのうちマーカーを同定するために使用することができる放出エネルギーの空間分布に関する情報を検出することができる。)
f [0237]
「An overview of some components associated with a single pixel of the assay chip 2-110 and a single pixel of the sensor chip 2-260 is illustrated in FIG. 2-3. The apparatus 2-100 comprises both the assay chip 2-110 and the instrument 2-120. In some embodiments, the assay chip 2-110 is a disposable chip designed for the analysis of a single specimen. The assay chip 2-110 includes one or more metal layers 2-221, one or more dielectric layers 2-225 and focusing elements 2-227. In some embodiments, metal layer 2-221 includes a stack of layers, some of which may include absorbing layers. The instrument 2-120 includes one or more excitation sources 2-250, at least one polychroic mirror 2-230, and the sensor chip 2-260, which may include filtering elements 2-241, spectral sorting elements 2-243, focusing elements 2-245 and at least one sensor 2-122 in or on the substrate 2-247. While FIG. 2-3 illustrates only a single pixel of the assay chip 2-110 and only a single pixel of the sensor chip 2-260, some components of the instrument 2-120, such as the excitation source 2-250, the polychroic mirror 2-230 and filtering elements 2-241, may be common to a plurality of the pixels. For example, in some embodiments, a single excitation source 2-250 and polychroic mirror 2-230 may direct the excitation energy to every pixel of the assay chip 2-110.」
(日本語訳:アッセイチップ2-110の単一のピクセルおよびセンサチップ2-260の単一のピクセルに関連するいくつかの構成要素の概要が、図2-3に示されている。装置2-100は、アッセイチップ2-110と機器2-120の両方を含む。いくつかの実施形態では、アッセイチップ2-110は、単一の標本の分析のために設計された使い捨てチップである。アッセイチップ2-110は、1つまたは複数の金属層2-221、1つまたは複数の誘電体層2-225、および集束要素2-227を含む。いくつかの実施形態では、金属層2-221は層のスタックを含み、そのいくつかは吸収層を含むことができる。機器2-120は、1つまたは複数の励起源2-250、少なくとも1つの多色ミラー2-230、センサチップ2-260を含み、センサチップ2-260は、フィルタ要素2-241、スペクトル分類要素2-243、集束要素2-245、少なくとも1つのセンサ2-122を、基板2-247内又は上に含み得る。図2-3は、アッセイチップ2-110の単一ピクセルのみ、およびセンサチップ2-260の単一ピクセルのみ図示されているが、励起源2-250、多色ミラー2-230、及び、フィルタリング要素2-241のような機器2-120のいくつかのコンポーネントは、複数のピクセルに共通であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、単一の励起源2-250および多色ミラー2-230は、アッセイチップ2-110のすべてのピクセルに励起エネルギーを向けることができる。)
g [0257]
「According to some embodiments, a sample well 2-211 may be a partially enclosed structure, as depicted in FIG. 3-2. In some implementations, a sample well 2-211 comprises a sub-micron-sized hole or opening (characterized by at least one transverse dimension Dsw) formed in at least one layer of material 2-221. The transverse dimension of the sample well may be between approximately 20 nanometers and approximately 1 micron, according to some embodiments, though larger and smaller sizes may be used in some implementations. A volume of the sample well 2-211 may be between about 10-21 liters and about 10-15 liters, in some implementations. A sample well may be formed as a waveguide that may, or may not, support a propagating mode. In some embodiments, a sample well may be formed as a zero-mode waveguide (ZMW) having a cylindrical shape (or similar shape) with a diameter (or largest transverse dimension) Dsw. A ZMW may be formed in a single metal layer as a nano-scale hole that does not support a propagating optical mode through the hole.」
(日本語訳:いくつかの実施形態によれば、試料ウェル2-211は部分的に密閉された構造であってもよく、図3-2に示されている。いくつかの実施形態において、サンプルウェル2-211は少なくとも1つの材料層の2-211の中に形成されたサブミクロンサイズの孔または開口部(少なくとも1つの横方向寸法Dswを特徴とする)を含む。サンプルウェルの横方向の寸法は、いくつかの実施形態によれば、約20ナノメートル~約1マイクロメートルであってもよいが、いくつかの実施形態においては、これより大きい又は小さいサイズを使用してもよい。サンプルウェル2-211の容積は、いくつかの実装において、約10-21リットルと約10-15リットルの間であり得る。サンプルウェルは、伝搬モードをサポートする場合もサポートしない場合もある導波路として形成され得る。いくつかの実施形態では、サンプルウェルは、直径(または最大横寸法)Dswを有する円筒形状(または同様の形状)を有するゼロモード導波路(ZMW)として形成され得る。ZMWは、単一の金属層内にナノスケールの穴として形成されてもよく、穴を通る伝搬光学モードをサポートしない。)
h [0442]
「At a time t3 following termination of the drive signal for the excitation source, a sensor 2-260 (or sensor segment) at the pixel may be gated to accumulate charge at a charge accumulation node 7-311 during a second time interval 7-452 extending from a time t3 to a time t4. The second time interval may be between about 1 nanosecond and about 50 microseconds, according to some embodiments, though other durations may be used in some implementations. As can be seen in reference to FIG. 7-4B, a charge accumulation node will collect more signal charges due to the emitting sample then due to the excitation source. Accordingly, an improved signal-to-noise ratio may be obtained.」
(日本語訳:励起源の駆動信号の終了に続く時間t3で、ピクセルのセンサ2-260(またはセンサセグメント)をゲート制御して、時刻t3から時刻t4までの第2の時間間隔7-452中に電荷蓄積ノード7-311に電荷を蓄積することができる。いくつかの実施形態によれば、第2の時間間隔は、約1ナノ秒から約50マイクロ秒の間であってもよいが、いくつかの実施形態では他の持続時間が使用されてもよい。図7-4Bに示されるように、電荷蓄積ノードは、励起源によるよりも放出サンプルにより多くの信号電荷を収集する。したがって、改善された信号対雑音比を得ることができる。)
i [0446]
「In some embodiments, the duration of time each time bin captures after an excitation pulse may vary. For example, shorter time bins may be used to detect luminescence shortly after the excitation pulse, while longer time bins may be used at times further from an excitation pulse. By varying the time bin intervals, the signal to noise ratio for measurements of the electrical signal associated with each time bin may be improved for a given sensor.・・・(以下、省略)」
(日本語訳:いくつかの実施形態では、励起パルス後にビンが捕捉するたびに持続時間は変化し得る。例えば、短い時間ビンを使用して励起パルス直後のルミネセンスを検出することができ、長い時間ビンを励起パルスから離れた時間に使用することができる。時間ビン間隔を変更することにより、各時間ビンに関連する電気信号の測定値に対する信号対雑音比が、所与のセンサについて改善されるかもしれない。・・・)
j FIG.2-1
[図:0001402438000001.jpg]
FIG.2-1の看取事項
励起源2-121からサンプルウェル2-111への作用があり、サンプルウェル2-111からセンサ2-122への作用がある。
k FIG.2-2
[図:0001402438000002.jpg]
FIG.2-2の看取事項
アッセイチップ2-110は、サンプルウェル2-111をアレイ状に備えている。
(イ)引用発明の認定
a (ア)bの「複数のサンプルをアッセイチップの異なる部分に同時に配置する」という記載と、(ア)cの「アッセイチップ2-110は複数のピクセルを有し、各ピクセルのサンプルウェル2-111は、他のピクセルとは独立して分析に使用されるサンプルを受け取るように構成されている。」という記載とから、≪複数のサンプルをアッセイチップの異なるサンプルウェル2-111に同時に配置する≫との技術事項を読み取ることができる。
b (ア)jの看取事項と(ア)dの記載事項とから、≪励起エネルギーが励起源2-121からサンプルウェル2-111へ向けられ、放出エネルギーがサンプルウェル2-111からセンサ2-122へ向けられる≫との技術事項を読み取ることができる。
c (ア)hには、励起源による励起に対しサンプルから放出される信号をセンサで収集するにあたり、励起源の駆動信号の終了後の1ns~50μsの「第2の時間間隔」についてセンサをゲート制御することで励起源による信号電荷よりもサンプルによる信号電荷を多く収集するようにし、それにより信号対雑音比を向上させる制御が記載されているといえ、この制御は、引用文献2の他の記載と総合すると、≪センサ2-122は、信号対雑音比を改善するために、励起源による信号電荷よりもサンプルによる信号電荷を多く収集するように励起エネルギーと放出エネルギーの時間分離を行うようゲート制御される≫との技術事項を読み取ることができる。
d 上記摘記a~kを含む引用文献2全体の記載及び上記(イ)a~cを総合すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
引用発明:
「複数のサンプルウェル2-111をアレイ状に備えるアッセイチップ2-110と機器2-120との両方を備えるシステムであって、
アッセイチップ2-110は、複数のピクセルを有し、各ピクセルのサンプルウェル2-111は、サンプルを受け取るように構成されており、
機器2-120は、励起源2-121、センサ2-122、励起エネルギーを励起源2-121からサンプルウェル2-111に誘導および結合するための光学要素、放出エネルギーをサンプルウェル2-111からセンサ2-122に誘導するための光学要素を含み、アッセイチップ2-110上に存在する各ピクセルに対応するピクセルが機器2-120内に存在し、機器2-120の各ピクセルは、サンプルによって放出される放出エネルギーを検出するための少なくとも1つのセンサ2-122を備えており、励起源は、機器の複数のピクセルに共通であり、
励起エネルギーが励起源からサンプルウェル2-111へ向けられ、放出エネルギーがサンプルウェル2-111からセンサ2-122へ向けられ、複数のサンプルをアッセイチップの異なるサンプルウェル2-111に同時に配置することによって、サンプルを同時に、並行して分析することができ、
センサ2-122は、信号対雑音比を改善するために、励起源による信号電荷よりもサンプルによる信号電荷を多く収集するように励起エネルギーと放出エネルギーの時間分離を行うようゲート制御され、毎秒100フレーム以上でデータを取得し、
蛍光タグを用いて分析対象のサンプル内で経時的に発生する動的プロセスまたは変化の検出と分析が可能である、
システム。」
イ 周知例1、2、3に記載された事項と周知技術の認定
(ア)周知例1(特表2015-522040号公報)
本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった周知例1には、次の記載が存在する。
段落0164
「膜電位の評価。TSB中で対数後期まで成長させたブドウ球菌を、2,400×gにおいて10分間遠心分離によってペレット化し、PBSに再懸濁することによって2回洗浄した。細菌ペレットを、元の体積の半量までPBSに再懸濁して、50mMのグルコースにより、15分間、37℃においてエネルギーを与えた。ブドウ球菌膜の膜電位を測定するために、500nMのDiBAC4(3)(ビス-(1,3-ジブチルバルビツール酸)トリメチンオキソノール;Molecular Probes、ユージーン、オレゴン、米国)を加えた。96ウェルプレートにおいて、次いで、100μLの体積のこの細菌懸濁液を、ビヒクル単独又はALAFAC及び抗生物質併用を含有する100μLのPBSに、特定のイオン輸送阻害化合物の存在下又は不在下で加え、最終濃度25mMのグルコース及び250nMのiBAC4(3)/ウェルを得た。Triton X-100(0.1%;Sigma-Aldrich)を膜の脱分極及び破壊に関する陽性対照として使用した。次いで、プレートを、あらかじめ温めた(37℃)Synergy2 Multi-Mode Microplate Reader(BioTek)に迅速に配置し、このプレートリーダーは、DiBAC4(3)(485/20nm励起、528/20nm放射)からの蛍光読み取り値を、1分ごとに1時間記録した。未処理対象とALAFAC処理試料との間の蛍光強度の差を、「阻害剤非含有」試料及び「阻害剤」試料に関して60分後の値を使用して計算した。その後、「阻害剤」試料に関する蛍光強度の差を、ALAFAC単独(「阻害剤非含有」)試料と比較した強度の倍率変化として表して、「ALAFAC単独」試料と比較した脱分極の程度を提供した。」
(イ)周知例2(特表2015-529221号公報)
本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった周知例2には、次の記載が存在する。
段落0148
「DisC3-5(3、3’-ジプロピルチアジカルボシアニドヨージド、Invitrogen)は、細菌細胞の細胞質膜電位に従って細胞と培地との間に分配される膜電位感受性色素である。分極化した細胞質膜上でのDisC3-5の分配は、蛍光強度を自己クエンチする(self-quench)であろう。膜電位を分散させる膜活性抗微生物物質の添加は、周囲の培地への色素の放出を引き起こし、蛍光の増大が観察されるであろう。分離株S.aureus(DM4001)およびE.coli ATCC8739の膜電位に対するリポペプチドの効果を調べた。簡単に説明すると、臨床分離株S.aureus(DM4001)またはE.coli ATCC8739を、指数増殖期の初期に回収し、5mMのHEPES緩衝溶液(0.1MのKCl、および0.2mMのEDTA、pH7)で、620nmで0.09の光学密度[OD620]が得られるまで懸濁した。リポペプチドについては、この細胞懸濁物を0.4μMのDiSC3-5とともに、DiSC3-5の取り込みが最大になるまで、37℃で30分間インキュベートした。Photon Technology International Model 814蛍光分光光度計を使用して、蛍光の読み取りを500秒間、660nmの励起波長および675nmの発光波長で安定なベースラインが得られるまでモニターした。所望する濃度のリポペプチドを、撹拌キュベットに添加し、蛍光シグナルを、読み取り値が安定するまでモニターした。」
(ウ)周知例3(特表2014-528995号公報)
本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった周知例3には、次の記載が存在する。
段落0155
「図5は、膜電位感受性色素であるDiSC3(5)を加えることによる、CS-g-K16での病原菌膜の破壊を例示し、DiSC3は、未処理の二分子膜へと吸収され、続いて膜を破壊すると放出される。図5(a)において、第1のピークは、DiSC3(5)の付加を示し、グラム陰性菌である大腸菌の膜へと徐々に組み込まれる。100μg ml-1(およそ650秒)の濃度でのCS-g-K16の付加は、直ちに、蛍光の増加を引き起こし、細胞膜の破壊による色素の放出を示す。グラミジシンD(gramidicin D)で色素が100%漏出することによる蛍光のピークは、およそ1250秒である。FESEMの形態研究およびLIVE/DEADアッセイと共に、この結果により、CS-g-K16が作用して細菌膜を破壊および/または透過させることの確固たる証拠が得られる。図6は、CS-g-K16を投与したグラム陽性菌である黄色ブドウ球菌において、膜電位感受性色素であるDiSC3(5)が漏出することと類似した結果を実証する。」
(エ)周知技術の認定
前記(ア)~(ウ)において周知例1~3の記載を摘記して例示したように、次の技術事項は、周知技術(以下「周知技術」という。)であると認められる。
[周知技術]
「細菌において、投与した物質の影響などを測定するために細胞膜電位を、膜電位感受性色素を用いて蛍光測定すること」
(3)対比
ア 引用発明の「励起源2-121」及び「励起エネルギーを励起源2-121からサンプルウェル2-111に誘導および結合するための光学要素」は、本件補正発明の「照明アセンブリ」に相当する。
イ 引用発明の「センサ2-122」及び「放出エネルギーをサンプルウェル2-111からセンサ2-122に誘導するための光学要素」は、本件補正発明の「検出アセンブリ」に相当する。
ウ 引用発明は、「複数のサンプルをアッセイチップの異なるサンプルウェル2-111に同時に配置することによって、サンプルを同時に、並行して分析することができ」るものであり、引用発明の「複数のサンプルウェル2-111」は、「アレイ状」に設けられており、引用発明の「励起源は、複数のピクセルに共通であ」るから、引用発明は、「同時に複数のサンプルウェル2-111に励起エネルギーを向ける」ように構成されていることは明らかである。そうすると、引用発明の「同時に」「アレイ状に設けられた」「複数のサンプルウェル2-111に励起エネルギーを向ける」ことは、本件補正発明の「(a)ウェルのアレイのうちの複数のウェルに光を向け」ることに相当する。
エ 引用発明の「サンプルウェル2-111からセンサ2-122へ向けられ」る「放出エネルギー」は、本件補正発明の「ウェルからの信号」に相当する。そして、引用発明は、「複数のサンプルをアッセイチップの異なる部分に同時に配置することによって、複数のタイプのサンプルを同時に、並行して分析することができ」るものであり、上記ウで検討したように引用発明は、「同時に複数のサンプルウェル2-111に励起エネルギーを向ける」ものであるから、引用発明は、同時に複数の「サンプルウェル2-111」からの「放出エネルギー」がセンサ2-122に向けられるものである。「放出エネルギー」は、「サンプルウェル2-111からセンサ2-122に誘導するための光学要素」により誘導されるものである。そうすると、引用発明の、同時に複数の「サンプルウェル2-111からセンサ2-122へ向けられ」る「放出エネルギー」を、「サンプルウェル2-111からセンサ2-122に誘導するための光学要素」により「サンプルウェル2-111からセンサ2-122」まで誘導することが、本件補正発明の「(b)前記複数のウェルの各ウェルから信号を実質的に並行して収集し、(c)各信号を実質的に並行して対応する検出器に転送する」ことに相当する。
オ 引用発明は、「毎秒100フレーム以上でデータを取得」するものであるから、100Hz以上のサンプリングレートを前提とすることが技術常識からみて明らかである。そして、「データの取得」は、「センサ2-122」で、「アレイ状」の「複数のサンプルウェル2-111」から「放出エネルギー」を「検出」することにより行われることは明らかである。そして、本件補正発明の「100ヘルツ(Hz)より大きいウェルの前記アレイにわたる前記信号のサンプリングレートを有し」という記載の「100ヘルツ(Hz)より大きい」は、「ヘルツ」が周波数の単位であることから、直後の「ウェル」を修飾するのではなく、「前記信号のサンプリングレート」を修飾するものと解するのが妥当である。そうすると、引用発明の「アレイ状」の「複数のサンプルウェル2-111」から「放出エネルギー」を「検出」することよる「データ」の「取得」が「毎秒100フレーム以上」であることは、本件補正発明の「100ヘルツ(Hz)より大きいウェルの前記アレイにわたる前記信号のサンプリングレートを有」することに相当する。
カ 引用発明は、「センサ2-122」が、「信号対雑音比を改善するために、励起源による信号よりもサンプルによる信号を多く収集するように励起エネルギーと放出エネルギーの時間分離を行うようゲート制御され」るものであるから、所定値以上の信号対雑音比で測定を行うものといえる。また、引用発明は、「複数のサンプルを」「同時に、並行して分析する」に際して、「分析対象のサンプル内で経時的に発生する」「変化の検出」を行うものであり、「複数のサンプル」が、「異なるサンプルウェル2-111」に配置されるものであるから、異なる複数のサンプルウェルからの放出エネルギーの変化を検出することは明らかである。
また、本件補正発明は、「5/10mV細胞膜電位変化を超える信号対雑音比で、前記複数のウェルの各ウェルからの信号の強度の変化を測定する」ための構成について、なんらの特定事項を備えていない。そして、本件の明細書には、
・段落0061に、「[0070]本明細書に記載のシステムは、高速の応答プローブまたは光検出可能センサを高速のサンプリングレートと組み合わせて、高い信号対雑音比(SNR)で並行して複数のサンプルから信号を収集することができる。例えば、光検出可能センサは、約1ミリ秒未満の応答時定数を含んでもよい。場合によっては、応答時定数は約100マイクロ秒未満であってもよい。そのような場合、システムは、複数のウェルの各ウェル内の光検出可能センサの変化を並行して測定することができる。複数のウェルにわたる平行測定は、約1ミリ秒未満で起こってもよい。複数のウェルにわたる平行測定は、約100マイクロ秒未満で起こってもよい。システムのSNRは、約5/10mVの細胞膜電位変化を超える、または約25/10mVの細胞膜電位変化を超える、または約50/10mVの細胞膜電位変化を超えてもよい。・・・」
・段落0103に「 [00113]本開示のシステムは、検出アセンブリなど、システムによって検出された信号の信号対雑音比(SNR)を提供することができる。場合によっては、検出された信号は電流信号であってもよい。場合によっては、信号は、細胞膜電位の変化、または細胞内もしくは細胞外のイオン濃度の変化を示してもよい。・・・」といった記載が存在する(他にも段落0013、0044、0053に信号対雑音比に関する記載が存在する)ものの、いずれの記載においても「5/10mV細胞膜電位変化を超える信号対雑音比で、前記複数のウェルの各ウェルからの信号の強度の変化を測定する」ための具体的手段については、説明がなされていない。
そして、本件補正発明は、「信号対雑音比」の基準として「細胞膜電位変化」を特定していることから、測定対象が「細胞膜電位」であり得ることを特定していると把握されるものである。
そうすると、本件補正発明の信号対雑音比に関する特定事項は、測定対象が「細胞膜電位」であり得ることを特定し、該測定対象を例にとって、該特定事項以外の本件補正発明の構成からなるシステムの性能を表現したものと理解され、前記信号対雑音比を得るための特定のハードウェア構成を(前記特定事項以外に)間接的に特定するものとは認められない。
してみると、引用発明と本件補正発明は、所定値以上の信号対雑音比で、「前記複数のウェルの各ウェルからの信号の強度の変化を測定する」ことで共通するものである。
以上によれば、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
一致点:
「照明アセンブリおよび検出アセンブリを含むシステムであって、
(a)ウェルのアレイのうちの複数のウェルに光を向け、
(b)前記複数のウェルの各ウェルから信号を実質的に並行して収集し、
(c)各信号を実質的に並行して対応する検出器に転送する、
ように構成され、
100ヘルツ(Hz)より大きいウェルの前記アレイにわたる前記信号のサンプリングレートを有し、所定値以上の信号対雑音比で、前記複数のウェルの各ウェルからの信号の強度の変化を測定するシステム。」
相違点:
「複数のウェルの各ウェルからの信号の強度の変化」の測定に関して、本件補正発明が、「5/10mV細胞膜電位変化を超える信号対雑音比で」行うのに対して、引用発明は、所定値以上の信号対雑音比で行うものの、細胞膜電位変化を基準とした信号対雑音比は不明である点。
(4)判断
ア 上記相違点の検討
(ア)上記(2)ア(ア)gで摘記したとおり、引用文献2には、サンプルウェルを1マイクロメートルよりも大きく形成することが示唆されており、引用発明は、サンプルウェルの大きさを、一般的には数マイクロメートルの大きさである細菌を配置できるサイズとすることができるものである。
そして、上記(2)イ(エ)で認定したとおり、「細菌において、投与した物質の影響などを測定するために細胞膜電位を、膜電位感受性色素を用いて蛍光測定すること」は周知であるから、引用発明を、投与した物質の影響などを測定するために、細菌の細胞膜電位を蛍光測定するように構成することは当業者が容易に想到し得たことである。
(イ)本件補正発明の「5/10mV細胞膜電位変化を超える信号対雑音比」を得る旨の構成(機能)について、(3)カで検討したように、本件補正発明において該構成(機能)に関連する具体的な構成要素は特定されていないし、明細書の説明(段落0103)を参酌しても、信号対雑音比と特定の装置構成の要素との因果関係についての言及がない。よって、前記構成(機能)は、該構成(機能)以外の、本願発明の全特定事項によって結果的にもたらされる機能であるか、または、単に目標とする数値を希望的に特定したものと解するほかない。
・前者の解釈によれば、本願発明のうち当該構成(機能)以外の構成は前記容易想到な発明と変わりないのであるから、前記容易想到な発明により自ずと獲得される機能であるといえる。
・後者の解釈によれば、上記(ア)で説示したとおり、引用発明において細菌の細胞膜電位を蛍光測定するように構成することは当業者が容易に想到し得たこと(容易想到な発明)である。前記容易想到な発明も、蛍光を測定するものであるから、「信号対雑音比を改善するため」の、「励起源による信号電荷よりもサンプルによる信号電荷を多く収集するように励起エネルギーと放出エネルギーの時間分離を行う」「ゲート制御」により、その蛍光測定による測定項目である細胞膜電位やその変化の値についても、信号対雑音比を改善できることに変わりがない。そして、信号対雑音比が大きい方が好ましいことは、測定機器における技術常識であり、信号対雑音比を改善することは、引用発明を含む一般的な測定機器において自明の課題であるから、引用発明において、ゲート制御を適切に行い、本件補正発明の上記相違点の構成を具備させること、つまり、測定における信号対雑音比を「5/10mV細胞膜電位変化を超える」ものとすることは、当業者が適宜なし得る数値範囲の最適化又は好適化にすぎない。
また、信号対雑音比の基準として、「5/10mV細胞膜電位変化」を下限値とすることについての臨界的意義は、明細書の記載を参酌しても認められない。
イ 本件補正発明の効果
本件補正発明が奏する効果は、引用文献2記載及び上記周知技術から当業者が十分予想しうる範囲内のものである。
ウ 審判請求人の主張についての判断
審判請求人は、審判請求書の請求の理由において、上記相違点の本件補正発明に係る事項が、引用文献2に開示も示唆もされていない旨の主張を行っている。しかし、この点についての判断は、上記アで説示したとおりであり、審判請求人の主張は採用できない。
3 補正の適否のむすび
以上のとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができず、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について1 本願発明
令和4年9月20日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、同年4月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~19に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項18に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項18に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、理由2は、本願発明は引用文献2に記載された発明と同一であり、特許法29条1号3号に該当し、特許を受けることができない、というものであり、理由3は、本願発明は、引用文献2に記載された発明及び引用文献2の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献2.米国特許出願公開第2016/0041095号明細書
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2の記載事項は、前記第2.2ア(ア)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2 2(3)及び(4)で検討した本件補正発明から、本件補正で付加された限定事項である「5/10mV細胞膜電位変化を超える信号対雑音比で、前記複数のウェルの各ウェルからの信号の強度の変化を測定する」という事項を削除したものである。
前記第2 2(3)の対比のとおり、本件補正発明は、引用発明と本件補正発明で付加された限定事項以外の点で一致するものであるから、本願発明と引用発明との間に相違点は存在しない。そうすると、本願発明は、引用発明と同一である。
また、本願発明は、引用発明及び原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当するものであるから、特許を受けることができない。
また、本願発明は、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2に記載された発明及び同文献の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-014795