特許拒絶査定不服審判
2022-013965
光学フィルム
- 審判番号
- 2022-013965
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-180835外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年09月06日
- 審決日
- 2023年10月17日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第44条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-180835「光学フィルム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 2月25日出願公開、特開2021- 28723〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 出願の分割の経緯
特願2020-180835号(以下「本件出願」という。)は、令和2年10月28日にされた特許法44条1項の規定による出願であって、平成26年8月7日に出願した特願2014-161215号(先の出願に基づく優先権主張 平成25年8月9日、同年9月10日、平成26年1月31日)を最先の出願とする、いわゆる第3世代の分割出願であるところ、出願の分割の経緯は、以下のとおりである。なお、括弧内は当該出願の出願日を示す。
最先の出願:特願2014-161215号(平成26年 8月 7日)
第1世代 :特願2015-180451号(平成27年 9月14日)
第2世代 :特願2019- 19419号(平成31年 2月 6日)
本件出願 :特願2020-180835号(令和 2年10月28日)
2 出願の経緯
本件出願の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和 2年11月26日 :手続補正書の提出
令和 3年 4月12日 :手続補正書の提出
令和 3年 9月27日付け:拒絶理由通知
令和 4年 1月28日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 4年 5月30日付け:拒絶査定
令和 4年 9月 6日 :審判請求
令和 4年 9月 6日 :手続補正書の提出
令和 5年 2月21日 :上申書の提出
令和 5年 7月 4日付け:拒絶理由通知
令和 5年 9月 4日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 本願発明の認定
本件出願の請求項に係る発明は、令和5年9月4日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「 第一の位相差層と第二の位相差層とを有する光学フィルム及び偏光板を備える円偏光板であって、
前記偏光板は、偏光子の片面に保護フィルムを有するものであって、前記偏光子の他方の面に活性エネルギー線硬化型接着剤又は水系接着剤を介して前記光学フィルムが貼合されており、
前記第一の位相差層及び前記第二の位相差層は、それぞれ1以上の重合性液晶を重合させることにより形成されるコーティング層であり、
前記第一の位相差層及び前記第二の位相差層の厚さは、それぞれ、5μm以下であり、
前記第一の位相差層が式(4)で表される光学特性を有し、
前記第二の位相差層が式(3)で表される光学特性を有し、
前記光学フィルムが式(1)及び式(2)で表される光学特性を有する、円偏光板。
Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
nx≒ny<nz (3)
100nm<Re(550)<160nm (4)
(式中、Re(450)は波長450nmにおける面内位相差値を表し、Re(550)は波長550nmにおける面内位相差値を表し、Re(650)は波長650nmにおける面内位相差値を表す。nxは、位相差層が形成する屈折率楕円体において、フィルム平面に対して平行な方向の主屈折率を表す。nyは、位相差層が形成する屈折率楕円体において、フィルム平面に対して平行であり、且つ、該nxの方向に対して直交する方向の屈折率を表す。nzは、位相差層が形成する屈折率楕円体において、フィルム平面に対して垂直な方向の屈折率を表す。)」
第3 拒絶の理由
令和5年7月4日付けで当合議体が通知した拒絶理由は、概略、本件出願の請求項1~8に係る発明は、本件出願の最先の先の出願(以下「先の出願」という。)前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
記
引用文献1:特開2013-92632号公報
引用文献2:特開2004-118185号公報
引用文献3:特開2004-226762号公報
引用文献4:特開2013-50583号公報
引用文献5:特開2013-71956号公報
(当合議体注:引用文献1は主引例であり、引用文献2~5は副引例又は周知技術を示す文献である。)
第4 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
1 引用文献1の記載事項
当合議体が拒絶の理由で引用した、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開2013-92632号公報(以下、同じく「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は、当合議体が付与した。
(1)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半透過型液晶表示装置、有機EL表示装置、タッチパネル付き表示装置等の表示装置に関する。
・・・省略・・・
【0009】
そこで本発明は、表示装置本体の視認側に円偏光板が配置されてなる表示装置において、低コストで、外光反射を効果的に抑制しつつ、色味の発生をも十分に抑制しうる手段を提供することを目的とする。
・・・省略・・・
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、表示装置本体の視認側に円偏光板が配置されてなる表示装置において、外光反射を効果的に抑制しつつ、色味の発生をも十分に抑制しうる手段が提供されうる。また、本発明では、製造が困難で高コストな、理想に近いλ/4板を利用した円偏光板よりも、むしろ安価に製造可能な汎用の円偏光板を利用した方がより優れた反射防止効果が達成されうることから、工業的にもきわめて優位性の高い技術が提供されうる。」
(2)「【0040】
[有機EL表示装置(表示装置)]
まず、表示装置の全体的な構成について、説明する。
【0041】
図1は、本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置を模式的に表した断面概略図である。図1に示すように、本実施形態の有機EL表示装置1は、表示装置本体としての有機ELパネル10の視認側に、円偏光板20が配置されてなる構成を有している。そして、円偏光板20は、視認側から、表面反射抑止層22と、偏光板保護フィルム24と、偏光子26と、λ/4板28と、がこの順に積層されてなる構成を有している。また、表面反射抑止層22は、屈折率の異なる3つの層が積層されてなる構成を有している。具体的には、視認側から、低屈折率層(屈折率が1.38程度)22a、高屈折率層(屈折率が1.87程度)22b、中屈折率層(屈折率が1.64程度)22cがこの順に積層され、表面反射抑止層22を構成している。以下、有機EL表示装置1を構成するそれぞれの構成要素について、説明する。
【0042】
[有機ELパネル(表示装置本体)]
有機ELパネルは、本実施形態に係る有機EL表示装置の表示装置本体であり、薄型であることによる省スペース性および軽量性、10V程度の印加電圧であっても高輝度な発光が得られるなどの特徴を有するものである。この有機ELパネルは、発光可能な有機層を電極で挟んだ構成を有する。有機層は基本的に正孔輸送層、発光層、および電子輸送層を積層したものである。電極としては、光を取り出す側に例えばITO(Indium Tin Oxide)などの透明電極を用い、対向する基板に例えばアルミニウムなどの金属電極を用いる。このような構成において、両電極より各々電子と正孔を、電子輸送層および正孔輸送層を介して発光層に注入し、発光層において電子と正孔を再結合させて発光させるのである。なお、有機EL表示装置は、TFTが配置される位置に応じて、これが発光層よりも視認側に配置されるボトムエミッション方式と、これが発光層よりも奥面に配置されるトップエミッション方式とに分類されるが、本発明はいずれの方式にも適用可能である。
・・・省略・・・
【0047】
[円偏光板]
続いて、円偏光板の構成について、説明する。図1や図2に示すように、本発明に係る円偏光板20は、視認側から、表面反射抑止層22と、偏光子26と、λ/4板28と、がこの順に積層されてなる構成を必須に有する。そして、図1や図2に示すように、表面反射抑止層22と偏光子26との間には、偏光板保護フィルム24が介在することが好ましい。
【0048】
(偏光子)
偏光子26は、円偏光板の主構成要素であり、一定方向の偏波面の光だけを通す素子である。そして、偏光子26は、後述するλ/4板28と積層されることで、円偏光板としての機能を発揮するようになる。
・・・省略・・・
【0050】
(偏光板保護フィルム)
なお、このような偏光子を用いる場合には、偏光子26の表面反射抑止層22側に偏光板保護フィルム24を配置することが必要である。偏光板保護フィルム24としては、従来公知のフィルムが適宜用いられ、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート等のアクリル系樹脂、ポリカーボネートや、ポリカーボネートとスチレン系化合物の共重合体、または混合体、ポリカーボネートとフルオレン系化合物の共重合体または混合体等のポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。このなかでも特に、セルロース系樹脂からなるフィルム(特に、セルロースエステルフィルム)が好適に用いられる。市販のセルロースエステルフィルムとしては、例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC6UA、KC4UA、KC8UY-HA、KC8UX-RHA、KC8UXW-RHA-C、KC8UXW-RHA-NC、KC4UXW-RHA-NC(以上、コニカミノルタオプト株式会社製)等が好ましく用いられる。
・・・省略・・・
【0063】
(λ/4板)
λ/4板28は、上述した偏光子24と積層されることで、円偏光板としての機能を発揮する。この際、円偏光板としての機能に優れるという観点から、偏光子24の吸収軸と、λ/4板28の面内の遅相軸とのなす角は45°であることが理想である。実際には、この角が45°±2°の範囲であることが好ましい。
【0064】
「λ/4板」とは、面内リターデーション(Ro)の値が、広い波長領域でλ/4を示すような位相差フィルムをいう。より詳細には、波長550nmで測定した面内リターデーションRo(550nm)は、108~168nmであることが好ましく、128~148nmであることがさらに好ましく、138±5nmであることが最も好ましい。ここで、面内リターデーション(Ro)は、下記式に従って算出する。
【0065】
【数11】
[図:0001405387000001.jpg]
【0066】
(式中、nxは、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率(面内の最大屈折率)であり、nyは、フィルム面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率であり、dは、フィルムの厚み(nm)である。)
λ/4板の具体的な構成について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。ただし、λ/4板は透明樹脂から構成されることが好ましく、当該透明樹脂の可視光の透過率は、好ましくは60%以上であり、より好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。また、λ/4板を構成する透明樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。また、この透明樹脂は、固有複屈折値が正である樹脂であることが好ましい。λ/4板を構成する透明樹脂としては、例えばセルロースエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。
【0067】
λ/4板は、これらの樹脂を用いて溶液流延法、または溶融流延法によって製膜し、延伸操作(流延方向、幅手方向、または斜め方向等の組み合わせ)等により上述したようなリターデーションを付与することで製造されうる。λ/4板の製造には、斜め延伸装置等も好適に用いることができる。このような斜め延伸装置を用いてλ/4板を製造することで、フィルムの長手方向に対する遅相軸の角度が実質的に45°であるλ/4板を製造することができ、偏光子との貼合をロール・トゥ・ロールで行うことが可能となることから、円偏光板を製造する際の生産性が格段に向上しうる。なお、λ/4板を偏光子と貼合する際には、好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤が用いられる。
【0068】
本発明においては、λ/4板28が、下記数式2を満たすことが好ましい。
【0069】
【数12】
[図:0001405387000002.jpg]
【0070】
数式2において、Ro(480nm)およびRo(650nm)は、それぞれ波長が480nmまたは650nmの場合のλ/4板の面内リターデーション値である。そして、Ro(480nm)/Ro(650nm)の値は「波長分散」と称され、λ/4板の重要な機能の1つである逆波長分散性の指標である。λ/4板28の波長分散の値は、好ましくは0.80~1.00であり、より好ましくは0.80~0.95である。
【0071】
ここで、後述する実施例の欄において表2に示すように、すべての波長に対してλ/4板として機能するような位相差発現性能(逆波長分散性)を有する「理想」のλ/4板では、理論上、480nm、550nm、650nmのそれぞれに対する面内リターデーション(Ro)の値は以下のようになる:
【0072】
【数13】
[図:0001405387000003.jpg]
・・・省略・・・
【0078】
(表面反射抑止層)
表面反射抑止層22は、表示装置1、2(円偏光板20)の最も視認側に配置される層であり、表示装置1、2の視認側の表面における反射(表面反射RS)を防止する層である。」
(3)「【実施例】
【0105】
以下、実施例(実施例1~8)および比較例(比較例1~15)を用いて本発明の実施形態をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲が下記の形態のみに限定されるわけではない。
【0106】
[各部材の準備(作製)]
≪偏光子の準備≫
液晶ディスプレイ(SONY社製、KDL-55HX920)の偏光板から偏光板保護フィルムを剥離することで偏光子(ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたもの)を単離し、以下のすべての実施例および比較例において用いた。
【0107】
≪偏光板保護フィルムの作製≫
以下の手法により、セルロースエステルフィルムからなる偏光板保護フィルムを作製し、以下のすべての実施例および比較例において用いた。
【0108】
(ドープ液の調製)
下記の材料を順次密閉容器中に投入し、容器内温度を20℃から80℃まで昇温した後、温度を80℃に保ったままで3時間攪拌を行って、セルロースエステルを完全に溶解した。酸化ケイ素微粒子は予め添加する溶媒と少量のセルロースエステルの溶液中に分散して添加した。このドープを濾紙(安積濾紙株式会社製、安積濾紙No.244)を使用して濾過し、ドープ液Aを得た。
【0109】
(ドープ液Aの調製)
セルローストリアセテート(アセチル基置換度2.9) 100質量部
トリメチロールプロパントリベンゾエート 5質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 5質量部
酸化ケイ素微粒子(アエロジルR972V、日本アエロジル株式会社製)
0.1質量部
チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1質量部
チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1質量部
メチレンクロライド 400質量部
エタノール 40質量部
ブタノール 5質量部
上記の材料を混合してドープ液Aを調製し、得られたドープ液Aを、温度35℃に保温した流延ダイを通より、ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる温度35℃の支持体上に流延して、ウェブを形成した。
【0110】
次いで、ウェブを支持体上で乾燥させ、ウェブの残留溶媒量が80質量%になった段階で、剥離ロールによりウェブを支持体から剥離した。
【0111】
次いで、ウェブを上下に複数配置したロールによる搬送乾燥工程で90℃の乾燥風にて乾燥させながら搬送し、続いてテンターでウェブ両端部を把持した後、130℃で幅方向に延伸前の1.1倍となるように延伸した。テンターでの延伸の後、ウェブを上下に複数配置したロールによる搬送乾燥工程で135℃の乾燥風にて乾燥させた。乾燥工程の雰囲気置換率15(回/時間)とした雰囲気内で15分間熱処理した後、室温まで冷却して巻き取り、幅1.5m、膜厚80μm、長さ4000m、屈折率1.49の長尺のセルロースエステルフィルムを作製し、偏光板保護フィルムとした。ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出される剥離直後のウェブ搬送方向の延伸倍率は1.1倍であった。
【0112】
≪表面反射抑止層の形成≫
以下の手法により、上記で作製した偏光板保護フィルムの一方の面に、表面反射抑止層を形成した。
【0113】
まず、上記で作製した偏光板保護フィルムの一方の面に、以下の手法によってハードコート層を形成した。
【0114】
下記のハードコート層塗布組成物を押出しコートし、次いで80℃に設定された乾燥部で30分間乾燥した後、紫外線を150mJ/cm2照射して塗布層を硬化させた。
【0115】
(ハードコート層塗布組成物)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(2量体以上の成分を2割程度含む)
108質量部
イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)2質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 180質量部
酢酸エチル 120質量部
これにより、厚さ5μmのハードコート層(屈折率1.55)を形成した。
【0116】
次いで、以下の手法により、上記ハードコート層の露出表面に、中屈折率層塗布組成物、高屈折率層塗布組成物、および低屈折率層塗布組成物をこの順にダイを用いて塗布し、120℃で乾燥した後、上述したハードコート層の形成と同様の条件で紫外線照射を行い各層を硬化させ、3層構造からなる表面反射抑止層を形成した。なお、形成される層の膜厚をオンラインで測定しながら流量条件を制御した。
【0117】
(中屈折率層塗布組成物1)
テトラ(n)ブトキシチタン 250質量部
末端反応性ジメチルシリコーンオイル(日本ユニカー社製L-9000)
0.48質量部
アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBE903)
22質量部
UV硬化性エポキシ樹脂(旭電化社製KR500) 21質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 4900質量部
イソプロピルアルコール 4840質量部
(高屈折率層塗布組成物)
テトラ(n)ブトキシチタン 310質量部
末端反応性ジメチルシリコーンオイル(日本ユニカー社製L-9000)
0.4質量部
アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBE903)
4.8質量部
UV硬化性エポキシ樹脂(旭電化社製KR500) 4.6質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 4900質量部
イソプロピルアルコール 4800質量部
(低屈折率層塗布組成物1)
下記のシリカ系微粒子P-1 35質量部
フッ素含有樹脂オプスターJM5010(JSR(株)製)
64.5質量部
FZ-2222(日本ユニカー製、10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液) 0.5質量部
イソプロピルアルコール 500質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 300質量部
メチルエチルケトン(MEK) 100質量部
〈シリカ系微粒子P-1の調製〉
平均粒径5nm、SiO2濃度20質量%のシリカゾル100gと純水1900gの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO2として0.98質量%のケイ酸ナトリウム水溶液9000gとAl2O3として1.02質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは添加直後、12.5に上昇し、その後、ほとんど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20質量%のSiO2・Al2O3核粒子分散液を調製した(工程(a))。
【0118】
この核粒子分散液500gに純水1700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、ケイ酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られたケイ酸液(SiO2濃度3.5質量%)3000gを添加して第1シリカ被覆層を形成した核粒子の分散液を得た(工程(b))。
【0119】
次いで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%になった第1シリカ被覆層を形成した核粒子分散液500gに純水1125gを加え、さらに濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、第1シリカ被覆層を形成した核粒子の構成成分の一部を除去したSiO2・Al2O3多孔質粒子の分散液を調製した(工程(c))。上記多孔質粒子分散液1500gと、純水500g、エタノール1,750gおよび28%アンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO228質量%)104gを添加し、第1シリカ被覆層を形成した多孔質粒子の表面をエチルシリケートの加水分解重縮合物で被覆して第2シリカ被覆層を形成した。次いで、限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-1)の分散液を調製した。
【0120】
この中空シリカ系微粒子の第1シリカ被覆層の厚さは3nm、平均粒径は47nm、MOx/SiO2(モル比)は0.0017、屈折率は1.28であった。ここで、平均粒径は動的光散乱法により測定した。
【0121】
以上の手法により、中屈折層、高屈折層、および低屈折率層をハードコート層の露出表面にこの順に形成し、表面反射抑止層とした。
【0122】
なお、各層の屈折率と膜厚は、各層を単独で塗工したサンプルについて、分光光度計の分光反射率の測定結果から求める。分光光度計はU-4000型(日立製作所製)を用いて、サンプルの裏面を粗面化した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行い、裏面の光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400~700nm)の反射率測定を行う。このようにして上記各層の屈折率を測定したところ、中屈折率層塗布組成物1を用いて形成された中屈折率層の屈折率は1.64であり、高屈折率層塗布組成物を用いて形成された高屈折率層の屈折率は1.87であり、低屈折率層塗布組成物1を用いて形成された低屈折率層の屈折率は1.38であった(下記の表1を参照)。
【0123】
また、下記の表1に示すように、実施例1では、中屈折率層として、中屈折率層塗布組成物1に代えて、テトラ(n)ブトキシチタンの配合量を255質量部とした中屈折率層塗布組成物2を用いて形成した層(屈折率1.65)を用いた。また、実施例1では、低屈折率層として、低屈折率層塗布組成物2に代えて、下記の低屈折率層塗布組成物2を用いて形成した層(屈折率1.51)を用いた。
【0124】
(低屈折率層塗布組成物2)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分
20質量部
光反応開始剤(イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製))
4質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 75質量部
メチルエチルケトン 75質量部
それぞれの実施例および比較例における表面反射抑止層を構成する3つの層の屈折率および膜厚を下記の表1に示す。また、それぞれの実施例および比較例における表面反射抑止層(比較例1~6については表面反射抑止層を形成していないため、ハードコート層)の表面における5°正面反射率および70°斜め反射率の測定値も下記の表1に併せて示す。なお表面反射率の測定には、まず、表面反射抑止層もハードコート層も形成していない偏光板保護フィルムの一方の面に黒色テープを貼付した。そして、黒色テープを貼付した側とは反対側の面から、3つの波長(480nm、550nm、650nm)について、CM-2500(コニカミノルタ社製)を用いて5°正面反射率を測定し、絶対反射測定装置(日本分光社製、V-670・ARMN-735)を用いて70°斜め反射率を測定した。これらの測定値から、偏光板保護フィルムの屈折率に基づき理論的に計算される表面反射率の値を引いて得られた値を、黒色テープと偏光板保護フィルムとの間の5°正面反射率および70°斜め反射率とした。そして、それぞれの実施例および比較例における表面反射抑止層における表面反射抑止層(またはハードコート層)についての測定値から、上述した偏光板保護フィルムの屈折率に基づき理論的に計算される表面反射率の値および黒色テープと偏光板保護フィルムとの間の反射率の値を引き、得られた値を表面反射抑止層(またはハードコート層)の5°正面反射率および70°斜め反射率とした。
【0125】
【表1】
[図:0001405387000004.jpg]
【0126】
≪λ/4板の準備(作製)≫
λ/4板としては、以下のものを準備(作製)した。
(1)帝人社製、TT-138(ポリカーボネート(PC)フィルム)
(2)下記の手法で作製したシクロオレフィンポリマー(COP)フィルム
熱可塑性ノルボルネン系樹脂のペレットを、熱風乾燥機を用いて100℃で4時間乾燥したのち押出機に供給した。溶融樹脂温度260℃で押し出し、T型ダイスから第1冷却ロールまでの間のフィルムから10mm以内の雰囲気温度が260℃になるように加熱し、フィルムの両端部に静電気を印加した。第1冷却ロールの温度120℃、引き取り速度18.0m/min、第2冷却ロールの温度125℃、引き取り速度18.1m/min、第3冷却ロールの温度110℃、引き取り速度17.9m/minとした。得られた未延伸フィルムの平均厚さは71μmであった。
【0127】
得られた未延伸フィルムの両端をクリップに把持させて、第1ゾーン、第2ゾーンおよび第3ゾーンからなるテンター延伸機内に導入し、横方向の一軸延伸を行った。仕切り板で仕切られた各ゾーンの長さは1,150mmであり、フィルム送り速度は3.5m/minとした。第1ゾーンは温風温度T1を144℃とし、延伸を行わずに予熱した。第2ゾーンは温風温度T2を144℃とし、第2ゾーンでフィルムが1.25倍に延伸されるクリップ設定とした。第3ゾーンは温風温度T3を140℃とし、第3ゾーン出口でフィルムが初期幅に対して1.5倍に延伸されるクリップ設定とした。第3ゾーンから出た延伸フィルムをクリップから脱離させ、両端を連続的に裁断して巻き取った。得られた延伸フィルムは、平均厚さ45.9μmであり、面内リターデーション(Ro(550nm))は138nmであった。なお、面内リターデーションの測定については、得られたフィルムから試料35mm×35mmを切り出し、23℃,55%RHで2時間調湿し、自動複屈折計(KOBRA21DH、王子計測(株))で、550nmにおける測定した値をRo(550nm)とした。
(3)帝人社製、ピュアエースWRS(ポリカーボネート系共重合体フィルム)
(4)帝人社製、ピュアエースWRW(ポリカーボネート系共重合体フィルム)
(5)帝人社製、ピュアエースWRZ(ポリカーボネート系共重合体フィルム)
(6)下記の手法で作製したセルロースアセテートプロピオネート(CAP)フィルム
(ポリエステル系可塑剤の合成)
窒素雰囲気下、テレフタル酸ジメチル4.85g、1,2-プロピレングリコール4.4g、テトライソプロピルチタネート10mgを混合し、140℃で2時間攪拌を行った後、p-トルイル酸6.8gを加え、さらに2時間撹拌した。その後210℃で16時間攪拌を行った。次に、170℃まで降温し、未反応物の1,2-プロピレングリコールを減圧留去することにより、下記の構造を有するポリエステル系可塑剤を得た。
【0128】
この際、分子量の制御は反応温度および反応時間を調整することにより行い、また分子量分布については、分子量の異なるポリエステル系可塑剤を混合することにより制御した。具体的には、ポリエステル系可塑剤の数平均分子量(Mn)が1150となるように、また、分子量分布(Mw/Mn)が1.6となるように調整した。
【0129】
【化1】
[図:0001405387000005.jpg]
【0130】
(糖エステル化合物の合成)
撹拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた四頭コルベンに、ショ糖34.2g(0.1モル)、無水安息香酸180.8g(0.8モル)、ピリジン379.7g(4.8モル)を仕込み、撹拌下に窒素ガス導入管から窒素ガスをバブリングさせながら昇温し、70℃で5時間エステル化反応を行なった。次に、コルベン内を4×102Pa以下に減圧し、60℃で過剰のピリジンを留去した後に、コルベン内を1.3×10Pa以下に減圧し、120℃まで昇温させ、無水安息香酸、生成した安息香酸の大部分を留去した。そして、次にトルエン1L、0.5質量%の炭酸ナトリウム水溶液300gを添加し、50℃で30分間撹拌後、静置して、トルエン層を分取した。最後に、分取したトルエン層に水100gを添加し、常温で30分間水洗後、トルエン層を分取し、減圧下(4×102Pa以下)、60℃でトルエンを留去させ、下記の構造を有する糖エステル化合物を得た。
【0131】
【化2】
[図:0001405387000006.jpg]
【0132】
(微粒子分散液)
微粒子(アエロジル R812 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
【0133】
(微粒子添加液)
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液をゆっくりと添加した。さらに、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液を調製した。
【0134】
メチレンクロライド 99質量部
微粒子分散液 5質量部
(主ドープ液の調製)
下記組成の主ドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクに溶剤としてメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクに上記で製造したCE-1を攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
【0135】
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.5、プロピオニル基置換度0.9、総置換度2.4)
100質量部
糖エステル化合物 7.0質量部
下記の構造を有するポリエステル系可塑剤 2.5質量部
TINUVIN928(BASFジャパン社製) 1.5質量部
微粒子添加液 11質量部
次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープ液を温度33℃、1500mm幅でステンレスベルト支持体上に流延した。ステンレスベルトの温度は30℃に制御した。
【0136】
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力110N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。剥離したセルロースエステルフィルムを、160℃の熱をかけながらテンターを用いて幅方向に5%延伸した。延伸開始時の残留溶媒は15%であった。
【0137】
次いで、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、テンタークリップで挟んだ端部をレーザーカッターでスリットし、その後巻き取った。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。
【0138】
この原反フィルムを、従来公知のオフライン延伸装置を用いて延伸した。なお、延伸の際には、得られたフィルムの面内の遅相軸の角度がフィルム搬送方向に対して45°となるように調整した。また、延伸温度は180℃とし、延伸倍率は1.78倍とした。得られたフィルムの面内リターデーション(Ro(550nm))は133nmであった。
【0139】
なお、上述したλ/4板に加えて、「理想」のλ/4板を用いた場合についても検討を行った(後述する比較例13を参照)。「理想」のλ/4板とは、λ/4板として理論上最も好ましい位相差発現性能を有するものであり、上述したセルロースアセテートプロピオネート(CAP)フィルムの膜厚を変えることで、480nm、550nmおよび650nmのそれぞれの波長の光に対してλ/4板として機能するような異なる膜厚のフィルムをそれぞれ作製したものである。このような「理想」のλ/4板の波長分散は、0.74となる(表2を参照)。
【0140】
以上で準備(作製)したそれぞれのλ/4板について、上述した面内リターデーション(Ro(550nm))の測定と同様の手法により、波長480nmの光に対する面内リターデーション(Ro(480nm))および波長650nmの光に対する面内リターデーション(Ro(650nm))を測定した。結果を下記の表2に示す。また、Ro(480nm)とRo(650nm)との比の値(Ro(480nm)/Ro(650nm))として算出される波長分散の値についても、下記の表2に示す。
【0141】
【表2】
[図:0001405387000007.jpg]
【0142】
また、それぞれの実施例および比較例で用いたλ/4板の種類について、その波長分散の値と併せて下記の表3に示す。なお、実施例7~8および比較例14~15では、λ/4板の偏光子とは反対側の面にポジティブCプレートとして機能する位相差層(p-C層)を配置した(表3に記載の「p-C層」)。具体的には、液晶材料をその液晶分子が光軸方向に沿った配向状態のまま硬化させることで、当該p-C層を形成した。このp-C層は、面方向における屈折率(nx、ny)と、これらに直交する光軸方向における屈折率nzとが、nz>nx=nyとなる関係を満たすように構成されている。かような構成を有することで、p-C層は、面内において屈折率が等方性を有し、厚さ方向の屈折率が大きい媒体であるポジティブCプレートとして機能することになるのである。
【0143】
≪円偏光板の作製≫
上記で準備した偏光子の各面に、上記で作製した偏光板保護フィルムとλ/4板とを、粘着剤を介してそれぞれ貼合した。その際、λ/4板の面内の遅相軸が偏光子の吸収軸となす角が45°となるように、貼合の向きを調整した。
【0144】
≪有機EL表示装置の作製≫
Clix2(iRiver社製)に貼合されている円偏光板を剥離し、上記で作製した円偏光板を粘着剤を介して貼合して、有機EL表示装置を作製した。
【0145】
[評価]
(反射率の測定)
上記と同様の測定装置を用い、それぞれの実施例および比較例で作製した有機EL表示装置の表面反射抑止層(比較例1~6については表面反射抑止層を形成していないため、ハードコート層)の側から入射した光の5°正面反射率および70°斜め反射率を測定した。結果を下記の表3に示す。なお、比較例13の「理想」のλ/4板については、理論上内部反射がゼロとみなせることから、上記の表1に記載の表面反射率の値がそのまま、表3においても反射率の値として記載されている。
【0146】
(色味目視評価)
外光の照度が1000Lxの環境、および、外光の照度が2000Lxの環境において、有機EL表示装置の正面(面法線)の方向、および面法線に対して50°の方向から、目視で色味を評価した。黒を○、他の色づきをわずかに感じるものを△、他の色づきを明確に感じるものを×とした。結果を表3に示すが、表3に示す目視評価の結果は10名による評価結果の平均である。また、「理想」のλ/4板を用いている比較例13では有機EL表示装置の作製ができないことから、色味目視評価は行わなかった。
【0147】
【表3】
[図:0001405387000008.jpg]
【0148】
表3に示す結果から、本発明の構成とすることで、有機ELパネルの視認側に円偏光板が配置された有機EL表示装置において、外光反射が効果的に抑制され、色味の発生も十分に抑制されることがわかる。特に、比較例14~15では、黒表示の安定化に寄与するp-C層を形成した場合であっても、色味の問題が依然として発生したのに対し、実施例1~6では、このようなp-C層を配置しなくても、反射防止および色味の低減という効果が達成されている。また、本発明の構成によれば、円偏光板に理想のλ/4板を用いるよりも、より波長分散の大きい(低コストで製造可能な)λ/4板を用いる方が、上述の効果を発現させやすいことも示される。
【0149】
以上のことから、本発明は、色味に優れ外光反射も防止できる手段を低コストで提供できるという、極めて優位性の高いものであるといえる。」
(4)図1
[図:0001405387000009.jpg]
2 引用発明
上記1により、引用文献1には、偏光子の各面に偏光板保護フィルムと実施例7のλ/4板とを粘着剤を介して貼合した次の「円偏光板」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「 偏光子の各面に偏光板保護フィルムとλ/4板とを粘着剤を介してそれぞれ貼合し、λ/4板の面内の遅相軸が偏光子の吸収軸となす角が45°となるように、貼合の向きを調整した円偏光板であって、
偏光板保護フィルムはセルロースエステルフィルムからなり、偏光板保護フィルムの一方の面にハードコート層を形成し、ハードコート層の露出表面に表面反射抑止層を形成し、
λ/4板はセルロースアセテートプロピオネートフィルムであって、波長480nm、550nm及び650nmの光に対する面内リターデーションRoは、それぞれ、134nm、138nm及び142nmであり、
λ/4板の偏光子とは反対側にポジティブCプレートとして機能する位相差層p-C層を配置し、位相差層p-C層は、液晶材料をその液晶分子が光軸方向に沿った配向状態のまま硬化させることで形成し、面方向における屈折率(nx、ny)と、これらに直交する光軸方向における屈折率nzとが、nz>nx=nyとなる関係を満たすように構成されている、円偏光板。」
第5 対比並びに一致点及び相違点の認定
1 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)第一の位相差層について
引用発明の「λ/4板」は、「セルロースアセテートプロピオネートフィルムであって、波長480nm、550nm及び650nmの光に対する面内リターデーションRoは、それぞれ、134nm、138nm及び142nmであ」る。
上記構成からみて、引用発明の「λ/4板」は、本願発明の「第一の位相差層」に相当する。
また、引用発明の「λ/4板」は、本願発明の「第一の位相差層」の「式(4)で表される光学特性を有し」、「100nm<Re(550)<160nm (4)式中」、「Re(550)は波長550nmにおける面内位相差値を表」すとの要件を満たす。
(2)第二の位相差層について
引用発明の「位相差層p-C層」は、「ポジティブCプレートとして機能」し、「液晶材料をその液晶分子が光軸方向に沿った配向状態のまま硬化させることで形成し、面方向における屈折率(nx、ny)と、これらに直交する光軸方向における屈折率nzとが、nz>nx=nyとなる関係を満たすように構成されている」。
上記構成からみて、引用発明の「位相差層p-C層」は、本願発明の「第二の位相差層」に相当する。
また、引用発明の「位相差層p-C層」は、本願発明の「第二の位相差層」の「式(3)で表される光学特性を有し」、「nx≒ny<nz (3)」「式中」、「nxは、位相差層が形成する屈折率楕円体において、フィルム平面に対して平行な方向の主屈折率を表す。nyは、位相差層が形成する屈折率楕円体において、フィルム平面に対して平行であり、且つ、該nxの方向に対して直交する方向の屈折率を表す。nzは、位相差層が形成する屈折率楕円体において、フィルム平面に対して垂直な方向の屈折率を表す。」との要件を満たす。
(3)光学フィルムについて
引用発明は、「λ/4板の偏光子とは反対側にポジティブCプレートとして機能する位相差層p-C層を配置」する構成を具備する。
引用発明の「λ/4板」及び「位相差層p-C層」を「光学部材A」とする。ここで、引用発明の「光学部材A」がフィルムであることは明らかである。
そうしてみると、引用発明の「光学部材A」は、本願発明の「光学フィルム」に相当する。
また、上記(1)及び(2)の構成から、引用発明の「光学部材A」の面内リターデーションRoは、「λ/4板」に依存して「位相差層p-C層」には依存しないといえる。ここで、引用発明の「光学部材A」の面内リターデーションRoについて計算すると、波長550nmの面内リターデーションRoに対する波長650nmの面内リターデーションRoの比は、1.03(=142/138)となる。
そうしてみると、引用発明の「光学部材A」は、本願発明の「光学フィルム」の「式(2)で表される光学特性を有する」ものであって、「1.00≦Re(650)/Re(550) (2)式中」、「Re(550)は波長550nmにおける面内位相差値を表し、Re(650)は波長650nmにおける面内位相差値を表す」との要件を満たす。
(4)偏光子、保護フィルム及び偏光板について
引用発明は、「偏光子の各面に偏光板保護フィルムとλ/4板とを粘着剤を介してそれぞれ貼合」する構成を具備する。
上記構成からみて、引用発明の「偏光子」及び「偏光板保護フィルム」は、それぞれ、本願発明の「偏光子」及び「保護フィルム」に相当する。
ここで、引用発明の「偏光子の」「面に偏光板保護フィルム」「を粘着剤を介して」「貼合し」た部材を「偏光部材A」とする。上記構成からみて、引用発明の「偏光部材A」は、本願発明の「偏光板」に相当する。
さらに、上記(3)の構成及び上記構成からみて、引用発明の「偏光部材A」は、「偏光子」の片面に「偏光板保護フィルム」を有するものであって、「偏光子」の他方の面に「光学部材」が貼合されているといえる。そうしてみると、引用発明の「偏光部材A」は、本願発明の「偏光板」の「偏光子の片面に保護フィルムを有するものであって、前記偏光子の他方の面に」「前記光学フィルムが貼合されており」との要件を満たす。
(5)円偏光板について
上記(1)~(4)を総合すると、引用発明の「円偏光板」は、その文言どおり、本願発明の「円偏光板」に相当する。
また、引用発明の「円偏光板」は、「光学部材A」及び「偏光部材A」を備えるといえる。そうしてみると、引用発明の「円偏光板」は、本願発明の「円偏光板」の「光学フィルム及び偏光板を備える」との要件を満たす。
2 一致点及び相違点の認定
(1)一致点
上記1によれば、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。
「 第一の位相差層と第二の位相差層とを有する光学フィルム及び偏光板を備える円偏光板であって、
前記偏光板は、偏光子の片面に保護フィルムを有するものであって、前記偏光子の他方の面に前記光学フィルムが貼合されており、
前記第一の位相差層が式(4)で表される光学特性を有し、
前記第二の位相差層が式(3)で表される光学特性を有し、
前記光学フィルムが式(2)で表される光学特性を有する、円偏光板。
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
nx≒ny<nz (3)
100nm<Re(550)<160nm (4)
(式中、Re(550)は波長550nmにおける面内位相差値を表し、Re(650)は波長650nmにおける面内位相差値を表す。nxは、位相差層が形成する屈折率楕円体において、フィルム平面に対して平行な方向の主屈折率を表す。nyは、位相差層が形成する屈折率楕円体において、フィルム平面に対して平行であり、且つ、該nxの方向に対して直交する方向の屈折率を表す。nzは、位相差層が形成する屈折率楕円体において、フィルム平面に対して垂直な方向の屈折率を表す。)」
(2)相違点
本願発明と引用発明は、以下の点で相違するか、一応相違する。
<相違点1>
「偏光板」について、本願発明は、「偏光子の他方の面に活性エネルギー線硬化型接着剤又は水系接着剤を介して前記光学フィルムが貼合されて」いるのに対して、引用発明の「偏光部材A」は、「偏光子の」「面に」「λ/4板」「を粘着剤を介して」「貼合し」ている点。
<相違点2>
「前記第一の位相差層」について、本願発明は、「1以上の重合性液晶を重合させることにより形成されるコーティング層であり」、「厚さは」、「5μm以下であ」るのに対して、引用発明の「λ/4板」は、「セルロースアセテートプロピオネートフィルム」であり、厚さは明らかではない点。
<相違点3>
「前記第二の位相差層」について、本願発明は、「1以上の重合性液晶を重合させることにより形成されるコーティング層であり」、「厚さは」、「5μm以下であ」るのに対して、引用発明の「ポジティブCプレートとして機能する位相差層p-C層」は、「液晶材料をその液晶分子が光軸方向に沿った配向状態のまま硬化させる」ものにとどまり、厚さは明らかではない点。
<相違点4>
本願発明においては、「光学フィルムが式(1)で表される光学特性を有する」ものであって、「Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)」「(式中、Re(450)は波長450nmにおける面内位相差値を表し、Re(550)は波長550nmにおける面内位相差値を表す」のに対して、引用発明の「光学部材A」は、この点が一応明らかでない点。
第6 判断
1 相違点についての判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
偏光子の面に接着剤を介して光学フィルムを貼合することは周知慣用手段(例えば、引用文献1の【0067】並びに引用文献4の【0025】及び【0082】~【0084】参照。)である。そして、光学部材の厚さを小さくするという課題は一般的であるので、上記周知慣用手段を心得た当業者にとって、引用発明においても円偏光板を薄くするために、引用発明の「粘着剤」を活性エネルギー線硬化型接着剤又は水系接着剤に置き換えることは、適宜選択可能な設計変更にすぎない。
したがって、引用発明において上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(2)相違点2及び4について
ア 上記第5「1(3)」で述べたように、引用発明の「光学部材A」の面内リターデーションRoは、「λ/4板」に依存するので、上記相違点2及び4をまとめて検討する。
イ まず、相違点4について、引用発明の「光学部材A」の面内リターデーションRoについて計算すると、波長550nmの面内リターデーションRoに対する波長480nmの面内リターデーションRoの比は、0.97(=134/138)となる。波長450nmと480nmとは微差であるから、引用発明の「光学部材A」の面内リターデーションRoについて、波長550nmの面内リターデーションRoに対する波長450nmの面内リターデーションRoの比は、1以下となる蓋然性が高いといえる。
したがって、上記相違点4は、実質的な差異ではない。
仮に、相違するとしても、以下に示すように、引用発明において上記相違点4に係る式(1)を満たすようにすることは何ら格別の困難性はない。
ウ λ/4板として、1以上の重合性液晶を重合させることにより形成されるコーティング層であるものは、引用文献5の【0281】~【0301】に記載されている。また、同【0241】には、「本光学フィルムの厚さは・・・0.2~5μmであることがさらに好ましい。」と記載されている。そして、同【0300】における実施例4のリタデーションの値から、引用文献5の実施例4の光学フィルムは、本願発明に係る式(1)、(2)及び(4)を満たすものである。
ここで、引用文献1においては、λ/4板は、延伸操作をした透明樹脂から構成されたものしか記載されていないが、引用文献1の【0066】には、「λ/4板の具体的な構成について特に制限はなく」と記載されているので、引用発明の「λ/4板」として1以上の重合性液晶を重合させることにより形成されるコーティング層であるものとすることに、阻害要因があるとまではいえない。
そして、引用文献1の【0071】には、「すべての波長に対してλ/4板として機能する位相差発現性能(逆波長分散性)を有する「理想」のλ/4板」が記載されている。また、光学フィルムの厚さを小さくするという課題は一般的であるので、引用発明の「λ/4板」を引用文献5に記載された光学フィルムに置き換えて、本願発明に係る式(1)、(2)及び(4)を満たしつつ、厚さを5μm以下とすることに何ら格別の困難性はない。
そうしてみると、引用発明に引用文献5に記載された事項を適用して上記相違点2及び4に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(3)相違点3について
ポジティブCプレートとして機能する位相差層として、1以上の重合性液晶を重合させることにより形成されるコーティング層であり、厚さが5μm以下であるものは、引用文献2の請求項16~17及び引用文献5の【0219】~【0245】に記載されているように周知技術である。
そして、光学フィルムの厚さを小さくするという課題は一般的であるので、引用発明の「位相差層p-C層」における「液晶材料」を具体化したものとして、周知の引用文献2及び5に記載された重合性液晶を用いて重合させてコーティング層とすることで、本願発明1に係る式(3)を満たしつつ、厚さを5μm以下とすることに何ら格別の困難性はない。
そうしてみると、引用発明に引用文献2及び5に記載された事項を適用して上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
2 効果について
本件明細書の【0006】には、発明の効果として「本発明によれば、黒表示時の光の漏れ抑制に優れる光学フィルムを提供することができる。」と記載されている。
しかしながら、このような効果は、本願発明の構成から当業者が予測できる範囲内のものである。
3 審判請求人の主張について
(1)令和5年2月21日に提出された上申書について
審判請求人は、令和5年2月21日に提出された上申書において、「引用文献1に記載の発明において、安価に製造可能は汎用樹脂フィルムであるλ/4位相差フィルムに代えて、引用文献2に記載されるような、容易かつ安価に製造し得るとはいえない特殊で複雑な構造を有する液晶材料を用いてなるλ/4板を採用する理由や動機付けは何ら存在しません。むしろ、引用文献1に記載の発明において、引用文献2に記載されるようなλ/4位相差層を用いるとすれば、引用文献1に記載される「低コストで、外光反射を効果的に抑制しつつ、色味の発生をも十分に抑制しうる手段を提供する」(段落[0009])という目的を達成できなくなる上に、理想のλ/4板ではなく、より波長分散の大きい低コストで製造可能なλ/4板を用いることによって発現される引用文献1に記載の効果([0148])が得られなくなるのであるから、引用文献1においてλ/4板を、引用文献2に記載されるような液晶化合物に基づくλ/4板に置き換えることは阻害要因さえ存在し得ると考えます。」と主張している。
しかしながら、上記1(2)で述べたとおりであり、審判請求人の上記主張は、採用できない。
(2)令和5年9月4日に提出された意見書について
審判請求人は、令和5年9月4日に提出された意見書において、「引用発明においては、位相差層(λ/4板)として剛性の高い樹脂から形成される延伸フィルムが用いられており、このような位相差層の場合、偏光板との貼合に粘着剤を用いても、該粘着剤層に加わる外力による位相差層の変形は生じません。すなわち、λ/4板が延伸フィルムであって、該延伸フィルムと偏光板(偏光子)に変形が生じても位相差値の変化が生じ難い構成であるといえます。したがって、位相差層と偏光板とを貼合する層として活性エネルギー線硬化型接着剤または水系接着剤を用いることによって、かつ、厚みが5μmという薄膜である場合にはじめて発現される効果であって、本願発明の円偏光板とその構成において全く異なる引用発明からは予測し得ない格別の効果です。」と主張している。
しかしながら、上記効果は、引用発明並びに引用文献2及び5に記載された事項から予測できる範囲内であり、審判請求人の上記主張は、採用できない。
4 小括
本願発明は、引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本件出願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-013965