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特許拒絶査定不服審判

2022-013902

電磁波吸収シート、およびその製造方法

審判番号
2022-013902
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-067164
請求日
2022年09月06日
審決日
2023年04月25日
公報発行日
2023年05月26日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
  • 【請求人】デュポン帝人アドバンスドペーパー株式会社
  • 【請求人代理人】田中 伸一郎
  • 【請求人代理人】須田 洋之
  • 【請求人代理人】山崎 一夫
  • 【請求人代理人】市川 さつき
  • 【請求人代理人】服部 博信
  • 【請求人代理人】松田 七重
審判長/審判官
  • 審判長 ▲吉▼田 耕一
  • 審判官 野崎 大進
  • 審判官 富澤 哲生
分類
P18 .121-WY (H05K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2018- 67164「電磁波吸収シート、およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月17日出願公開、特開2019-179797、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は,平成30年3月30日の出願であって,本願の手続の経緯は,概略,以下のとおりである。 令和3年12月 3日付け:拒絶理由通知 令和4年 1月28日 :意見書,手続補正書の提出 令和4年 6月14日付け:拒絶査定(原査定) 令和4年 9月 6日 :拒絶査定不服審判の請求,手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定(令和4年6月14日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 1.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は,以下の引用文献1ないし3,7,8に記載された発明に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり, この出願の請求項2に係る発明は,以下の引用文献1ないし4,7,8に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであり, この出願の請求項3ないし6,8,9に係る発明は,以下の引用文献1ないし5,7,8に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであり, この出願の請求項7に係る発明は,以下の引用文献1ないし8に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 引用文献1:特開昭59-44709号公報 引用文献2:特開2012-84577号公報 引用文献3:特開2001-156487号公報 引用文献4:特開2006-205524号公報 引用文献5:特開2016-111257号公報 引用文献6:国際公開第2012/137631号 引用文献7:特表2008-542557号公報 引用文献8:国際公開第2015/033697号 第3 本願発明 本願の請求項1ないし9に係る発明(以下,「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は,令和4年9月6日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項9に記載された事項により特定される,以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 導電性短繊維と,絶縁材料に被覆された軟磁性体粒子と,アラミドファイブリッドと, を含む電磁波吸収シートであって, 導電性短繊維の含有量が,シート全重量の3wt%~20wt%であり, 絶縁材料に被覆された軟磁性体粒子の含有量が,シート全重量の70wt%~90wt%である,電磁波吸収シート。 【請求項2】 一方向に特に大きい電波吸収性を示す請求項1に記載の電磁波吸収シート。 【請求項3】 周波数範囲が6~20GHzの電磁波の少なくとも一方向の電磁波吸収率が99%以上である,請求項1または2に記載の電磁波吸収シート。 【請求項4】 300℃で30分間熱処理した後の周波数5GHzでの電磁波吸収率の熱処理前に対する少なくとも一方向の変化率が10%以下であることを特徴とする,請求項1~3のいずれかに記載の電磁波吸収シート。 【請求項5】 300℃で30分間熱処理した後の周波数5GHzでの電磁波吸収率の熱処理前に対する少なくとも一方向の変化率が1%以下であることを特徴とする,請求項1~3のいずれかに記載の電磁波吸収シート。 【請求項6】 湿式抄造法により,導電性短繊維と,絶縁材料に被覆された軟磁性体粒子と,アラミドファイブリッドと,を含むシートを作製することを含む請求項1~5のいずれかに記載の電磁波吸収シートの製造方法。 【請求項7】 導電性短繊維と絶縁材料に被覆された軟磁性体粒子を含むシートを一方に移動させると 同時に,低空隙率化する,請求項6に記載の電磁波吸収シートの製造方法。 【請求項8】 請求項1~5のいずれかに記載の電磁波吸収シートを装着した電気・電子回路。 【請求項9】 請求項1~5のいずれかに記載の電磁波吸収シートを装着したケーブル。」 第4 引用文献 1 引用文献1および引用発明 (1)引用文献1の記載事項 原査定の拒絶理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は,当審が付加した。以下同様。)。 ア (1頁左下欄8行~2頁右下欄11行) 「3.発明の詳細な説明 本発明は水分散性繊維と導電性物質とを混合抄紙して,電磁波シールド性を付与した紙に関するものである。 高密度集積回路技術の急速な発達により,コンピューター,電子キャッシュレジスター,ディジタル時計,電卓,ワードプロセッサー,テレビゲームなど,にみられるように,ディジタル機器が広範囲に使用されるようになってきた。 これらの装置の収容ケースとして,従来使用されていた板金やアルミダイキャストに代って,小型化及び大量需要のニーズから,プラスチックが用いられるようになった為,電磁波障害の問題が指摘されている。 プラスチック自体は,電気絶縁性が高くそのままでは電磁波を透過してしまうので,ディジタル機器から発生して,ラジオやテレビなどの受信機能に支障を与えるノイズとなる電磁波をシールドする効果はない。プラスチックをシールド化する方法としては,表面に導電層を形成するのが一般的であるが,この方法はケースを成型した後,表面処理を施してから導電剤を塗布するものであり,コストが高く,表面塗布層の耐久性に問題があった。また,導電性フィラーをプラスチックに混練してシールド化する方法は,導電性フィラーの分散が悪く,混練した素材を射出成型する際に,ノズルや屈曲部に導電性フィラーが滞留する傾向があるために,均一なシートが得られにくく,更に,導電性フィラー相互の接触がプラスチックにより阻害され易いために,シールド効果が不十分となることが多い。 本発明は,叙上のプラスチック素材に変わる新規な電磁波シールド紙を提供するものである。本発明に係る電磁波シールド紙は,水分散性繊維に導電性の繊維又は粉体を配合して,体積固有抵抗103~10-3Ω-cmに抄造したことを特徴とする。 従来,放電破壊記録紙や静電記録紙に於て導電性フィラーを配合する例がみられるが,この場合には体積固有抵抗が104~107Ω-cm程度になるように調整されており,殆んど電磁波シールド性を有していない。また帯電防止用紙も静電気の除去のみで電磁波シールド効果はない。 本発明に係る電磁波シールド紙は,水分散性繊維と導電性の繊維又は粉体を含有する均一なスラリーを調製し,このスラリーを常法により抄紙することにより得られる。 本発明に使用する水分散性繊維としては,植物繊維である木材パルプ(針葉樹パルプ,広葉樹パルプ),コットンパルプ,わらパルプ,竹パルプ,バガスパルプ,マニラ麻パルプ,亜麻パルプ,黄麻パルプ及び故紙パルプ,又鉱物繊維であるアスベスト,グラスファイバー,ロックウール,シリカ繊維,更に合成パルプであるポリエチレンパルプ,ポリプロピレンパルプ,ポリエステルパルプ,ポリアミドパルプを例示することができる。 また導電性繊維としては,アルミニウム,アルミニウム合金,銅,銅合金,鉄,ステンレス,亜鉛,鉛,ニッケル,錫,炭素繊維等があげられ,繊維長さ100μ~60mm,繊維径5~100μ程度であれば良い。 更に,導電性粉体としては,アルミニウム,アルミニウム合金,銅,銅合金,鉄,ステンレス,亜鉛,鉛,ニッケル,錫,カーボン等があげられる。粉体の大きさは1μ~3mm程度のものが良く,特に薄片状の粉体を使用することが望ましい。 配合比率は導電性の繊維又は粉体15~90重量%に対して,水分散性繊維85~10重量%程度とすることが望ましく,水分散性繊維が10重量%より少ないと強度が不足して取扱作業に支障を生じ,一方導電性の繊維又は粉体が15重量%より少ないと充分な電磁波シールド性が得られない。尚,導電性繊維と導電性粉体とを併用すると抄造される紙の均一性を向上させることができる。 本発明においては水分散性繊維を配合し,湿式でシート化するので水分散性繊維と導電性繊維や導電性粉体との混合が完全となり,また,大量の水で稀釈してスラリー化するので,フローボックスからワイヤーバートにかけてシートフォーメーションが良好となり,幅方向,進行方向共に均一なシートが得られる。更に,シート形成後にプレス工程やカレンダー工程を通すことにより,導電性物質相互間の接触状態が良くなり,これに伴ない体積固有抵抗は低く安定して電磁波シールド効果が向上する。 尚,本発明の電磁波シールド紙製造に際して上述水分散性繊維と導電性繊維又は導電性粉体を含有する紙料スラリー中にフェライト,スピネル型フェライト,ニッケル-亜鉛フェライト,磁性酸化鉄等の磁性粉体を組み合わせることは,特に電磁波吸収材としての性能を強化する上で効果的である。また強度,耐薬品性,又は柔軟性向上を目的として結合剤を添加することもでき,ポリアクリル酸エステル,ポリ塩化ビニル,ポリ酢酸ビニル,ポリビニルアルコール,NBR(ニトリルブタジエン共重合体),SBR,クロロプレン等の合成高分子物質やエマルジョン分散体,澱粉,ゼラチン,天然ゴム等の天然高分子物質を例示できる。更に,凝集剤の使用は生産性の向上,排水の改善に有効である。 本発明によって得られる電磁波シールド紙は,電子機器用のケース並びにケーブルやコネクタ部分の電磁波シールドに有効に用いられるばかりでなく,電子機器を設置した部屋の内装用としても使用できる。」 イ (2頁右下欄14行~3頁左上欄11行) 「〔実施例1〕 平均繊維径25μ,平均長さ6mmのアルミニウム繊維20部及び平均粒径200μのアルミニウム粉末20部を予め水に分散しておき,この分散液に針葉樹未晒硫酸塩パルプ(カナダ標準濾水度450cc)60部を加えて,ラボミキサーで5分間攪拌後SBRラテックスを5部添加し攪拌を続けた。更に5分後硫酸バンド2部を加えて,濃度0.5%の紙料スラリーを作製した。 この紙料スラリーを固形分で4.8g採り,TAPPI式手抄シートマシンで抄紙した。尚この際ワイヤーを通ったスラリー白水を循環し,歩留りを100%近くにした。得られたシートを60メッシュの2枚のプラスチックワイヤーで挾み荷重3.5Kg/cm2で5分間プレスして脱水し,更にステンレス金属プレートにシートを張付けて50℃で1時間乾燥した後,荷重10kg/cm2で5分間プレスして電磁波シールド紙を得た。 (中略) 〔実施例5〕 平均繊維径40μ,平均長さ3mmのステンレス繊維30部及び平均粒径2μのフェライト粉末20部を予め水に分散しておき,この分散液にアスベスト(カナダケペック標準6クラス)50部を加えて,ラボミキサーで5分間攪拌した後,NBRラテックスを10部添加し,攪拌しながら更に5分後硫酸バンド2部を加えて,濃度0.5%の紙料スラリーを得た。この紙料スラリーを固形分で11g採り,実施例1と同様にして電磁波シールド紙を調製した。」 ウ 表1(4頁下部) [図:0001397083000001.jpg] 上記表1の「実施例1」の配合比率に着目すると,水分散性繊維が60重量%,導電性繊維が20重量%,導電性粉体が20重量%であると認められる。 エ 「表1から明らかなように,体積固有抵抗が105Ω-cmの比較例1に於ては,電磁波シールド効果が殆んどない。又,水分散性繊維を含まない比較例2に於ては,電磁波シールド性は得られたが,強度が低く,取扱作業性が悪い。これに対して,各実施例に係る電磁波シールド紙は,良好なシールド効果が得られていると共に取扱作業性も良い。」 (2)引用発明 上記(1)のア,特に下線を付加した記載に着目すると,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「水分散性繊維と導電性物質とを混合抄紙して,電磁波シールド性を付与した電磁波シールド紙であって, 水分散性繊維に導電性の繊維又は粉体を配合し, 水分散性繊維としては,植物繊維である木材パルプ(針葉樹パルプ,広葉樹パルプ),コットンパルプ,わらパルプ,竹パルプ,バガスパルプ,マニラ麻パルプ,亜麻パルプ,黄麻パルプ及び故紙パルプ,又鉱物繊維であるアスベスト,グラスファイバー,ロックウール,シリカ繊維,更に合成パルプであるポリエチレンパルプ,ポリプロピレンパルプ,ポリエステルパルプ,ポリアミドパルプを例示することができ, 導電性繊維としては,アルミニウム,ステンレス等があげられ, 導電性粉体としては,アルミニウム,アルミニウム合金,銅,銅合金,鉄,ステンレス,亜鉛,鉛,ニッケル,錫,カーボン等があげられ, 配合比率は導電性の繊維又は粉体15~90重量%に対して,水分散性繊維85~10重量%程度とすることが望ましく, 導電性繊維として,平均繊維径25μ,平均長さ6mmのアルミニウム繊維を用い, 配合比率は,水分散性繊維が60重量%,導電性繊維が20重量%,導電性粉体が20重量%である 電磁波シールド紙。」 2 引用文献2ないし8 (1)引用文献2 原査定の拒絶理由において,引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は,電磁波吸収粉末及びこの電磁波吸収粉末を有する樹脂組成物に関する。 【背景技術】 【0002】 モバイル等の半導体機器のリードフレーム金属からは,高周波の電磁波が発生し,これらの電磁波は,他の要素,部品等に悪影響を及ぼすノイズの原因となる。これは,リードフレーム金属を有する半導体機器における最大の課題である。 【0003】 この課題を解決するため,磁性体の粉末を電磁波吸収フィラーとして用いる技術がある。しかし,電磁波吸収フィラーの構成要素である磁性金属粉末が互いに接触する場合があるため,磁性金属粉体をセラミックスで被覆して絶縁性を確保する技術が開発されてきている。 【0004】 情報機器への電磁波対策の国際規格「CISPR22」の導入などにより,電磁波吸収性能と絶縁性との両立が新たに求められるようになっている。 【0005】 このため,電磁波吸収材料である磁性体をシリカ等のセラミックスとの複合材料とし,この複合材料をフィラーとして樹脂に混練し,樹脂の高機能化を図ることが必要とされている。 【0006】 特許文献1には,フェライト磁性粉体として,シリカで被覆したスピネル型フェライト磁性粉体が開示されている。 【0007】 特許文献2には,磁性金属材料とセラミックスとが一体となった複合磁性粒子を,高電気抵抗率を有する材料に分散させた電磁波吸収材が開示されている。 【0008】 特許文献3には,磁性金属材料とセラミックスとが一体となった電磁波吸収材料を有する部材で覆われた発光素子及び受光素子を搭載した光送信・受信モジュールが開示されている。 【0009】 特許文献4には,軟磁性金属材料から成り非金属物質で表面処理が施された粉末がゴムに分散してなる耐食性に優れた電磁波吸収材が開示されている。 【0010】 特許文献5には,フェライト酸化物と軟磁性金属粒子とからなる高周波磁性材料をエアロゾル化して吹きつけることによって,所望の部材に電磁波吸収特性を付与する方法が開示されている。 【0011】 特許文献6には,高導電性を示すアルミ粉末を異種金属で被覆した導電性粉末が開示されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0012】 【特許文献1】 特開2005-139050号公報 【特許文献2】 特開2001-358493号公報 【特許文献3】 特開2002-299648号公報 【特許文献4】 特開2000-223884号公報 【特許文献5】 特開2006-128278号公報 【特許文献6】 特開2000-17194号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0013】 従来の電磁波対策は,シランカップリングなどによって電磁波吸収に有効な磁性金属粉末の表面にシリカ若しくはガラス状物質をコーティングした電磁波吸収フィラーを,樹脂に混練することにより行われてきた。 【0014】 しかし,この対策では,樹脂混練中に電磁波吸収フィラーにかかるストレスのため,被覆物質であるシリカの破砕又は剥離が生じる。このため,磁性金属が露出しやすく,その後のシート化のプレス加工によって磁性金属粉末同士が接触して絶縁性が低下する傾向があった。 【0015】 また,磁性金属と樹脂とが接触すると,加熱・混練の際に磁性金属の触媒作用によって樹脂の高分子鎖が切断され,樹脂の物理的および機械的性質が劣化する場合があった。 【0016】 特許文献1~6のいずれの技術を用いても,樹脂の絶縁性を高く保つためには,熱可塑性樹脂に混練する際に粉末が受ける強いストレスによる粉末のせん断から十分に保護することは難しい。 【0017】 本発明の目的は,磁性金属を樹脂に混練した場合に磁性金属と樹脂とが接触して触媒反応を生ずることを防止するとともに,磁性金属を混練した樹脂に十分な絶縁性を付与することにある。」 イ 図1 [図:0001397083000002.jpg] ウ 「【0032】 (複合材料の概要) 図1は,実施例の電磁波吸収粉末を構成する粒子を示す断面図である。 【0033】 本図において,電磁波吸収粉末粒子14の中心部は,最大長さが1~30マイクロメートルの磁性金属粒子11(鉄片)で構成されている。磁性金属粒子11の周囲は,直径10~100ナノメートルのセラミックス粒子13(シリカ粒子)で覆われている。磁性金属粒子11の表面,すなわち磁性金属粒子11とセラミックス粒子13との間には,中間層12が形成されている。」 (2)引用文献3 原査定の拒絶理由において,引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,アンテナの不要輻射対策,テレビゴースト対策,レーダーゴースト対策,電波暗室,電波暗箱,医療用機器,デジタル情報機器のEMC対策用部品,建築用壁材,タイル等に用いられる電波吸収体に関する。 【0002】 【従来の技術】従来,電波を使用する建物,設備,機器,及びその周囲において,電波の不要な反射,散乱,干渉が生じる箇所に装着することによって,入射した電波を電波吸収層で吸収し,電波エネルギーを熱エネルギーに変換する電波吸収体を用いることで,種々のトラブルを抑制することができる。 【0003】一般に,絶縁体中に磁性粉末を分散含有し,その磁気損失を利用して電波を減衰させることで,不要波の除去を行う電波吸収体が知られている。 【0004】上記電波吸収体を構成する材質としては,ゴム,熱可塑性樹脂,熱硬化性樹脂中に,磁性粉末を所定の比率で配合した複合材が使用されており(特開平10-74611号公報,特開平5-27060号公報,特開平4-213803号公報参照),通常,インジェクション成型法,圧延法,熱間プレス成型法,鋳込み成型法等により製作されていた。 【0005】一般に,電波吸収体が電波を吸収しやすい周波数は電波吸収体の材料によって決まるため,電波吸収体の材料は使用する周波数帯で電波を吸収するものが用いられている。近年,小型軽量化の要求と各種デバイスの高機能化に伴って,広い周波数帯域に亘って電波を効率よく吸収できる電波吸収体が強く望まれてきている。この様に吸収すべき電波の周波数領域が広い場合,単一の材料では広い周波数にわたって電波を吸収できないため,吸収できる電波の周波数が異なる材料を接着材等で貼り合わせて電波吸収体を作成していた。すなわち,従来の電波吸収体は,図3の様に磁気特性の異なった電波吸収層21,22,23を接着剤26を介して積層し,金属板,金属箔,導電性繊維,導電性樹脂板からなる電波吸収層25で裏打ちされていた。(特開平4-26195号公報,特開平5-206677号公報参照) 【0006】 【発明が解決しようとする課題】近年,前述した部品においては,高吸収化,広帯域化,低価格化の要求が厳しく,広範囲の周波数帯域における電波を,厚みの薄い電波吸収層で高吸収することが求められていた。ところが,従来の成形法で作製された電波吸収体においては,図3のように,ゴム,或いは樹脂中に黒鉛,炭素繊維,扁平状の軟磁性金属等を添加した電波吸収層21,22,23,そして金属板からなる電波反射層25を接着剤26を介して接着する,あるいは熱圧着する事によって,高吸収化を図っているが,製造工程が増えることによるコストUP,熱膨張率の違いによる剥離,接着不良による剥離といった問題があった。」 イ 「【0030】また,磁性粉末間を電気的に遮断するために,磁性粉末の表面を酸化処理,或いはカップリング剤等で予め絶縁処理しても構わない。また,電波吸収材の加熱硬化中に,金属の腐食を促進させる酸性,又はアルカリ性のガスを発生するような合成樹脂を用いて磁性粉末の表面に絶縁層を形成しても構わない。」 (3)引用文献4 原査定の拒絶理由において,引用された引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は,電波の影響が懸念されるオフィスや病院等において壁や天井の内装あるいは衝立等に用い,無線LANなどにより発生する電波を有効に吸収する電波吸収体に関するものである。 【背景技術】 【0002】 従来から,誘電率等を調整して電波吸収機能をもたせた層を有する積層構造のシート状の電波吸収体は種々開発されており,例えば特許文献1に示されるように,透明フィルムの一面に透明電波反射膜が形成された第1積層体と,透明フィルムの一面に透明電波吸収膜が形成された第2積層体とを,スペーサを介して積層したもの等が知られている。 【特許文献1】 特開2001-111334号 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 ところで,例えば病院や電子機器が多く設置されているオフィス,実験室等で電波の悪影響を除去すべく壁や天井の内装あるいは衝立等に電波吸収体を用いようとするような場合に,電波吸収体は,比較的薄くしても充分に強靭性,耐久性を有することが要求される。さらに,衝立等に用いる場合の持ち運びの容易性,あるいは壁や天井の内装に用いる場合の施工時の取り扱い性等の面から,できるだけ軽量であることが望まれる。また,電波吸収体の吸収性能が方向により大きく異なるような異方性があると,各種方向から電波が入射されるような場所では充分な電波吸収効果が得られず,あるいは,特定の方向から電波が入射される場所であっても,例えばパーティクルボードとして壁や天井等に組み込まれるような場合に,施工時にボードの縦横を間違って組み付けたときなどに吸収性能が損なわれる可能性があり,このような弊害を避けるため,上記異方性をできるだけなくすことが要求される。これらの要求を満足するために,改善の余地が残されていた。 【0004】 本発明は,このような課題を解決するためになされたもので,軽量であって,かつ,強靭性,耐久性に富み,しかも電波の入射方向に拘わらず高い電波吸収性能を有する電波吸収体を提供することを目的とする。」 イ 図1 [図:0001397083000003.jpg] ウ 図2 [図:0001397083000004.jpg] エ 「【0013】 図1は本実施形態に係る電波吸収体を示す分解斜視図であり,図2は上記電波吸収体の断面図である。これらの図に示すように,電波吸収体1は,2枚の導電紙3,5の間に第1スペーサ4が配された電波吸収部2を有し,この電波吸収部2の片側,図示例では導電紙5の下側に,第2スペーサ6を介して反射板7が設けられた構造となっている。なお,各導電紙3,5と第1,第2スペーサ4,6との間,及び第2スペーサ6と反射板7との間は,バインダーにより接着されている。また,この電波吸収体1は,反射板7が電波入射側とは反対側になるように用いられる。 【0014】 上記各導電紙3,5は,和紙を素材とし,これに炭素繊維を混入したもので,和紙に対する炭素繊維の混入割合は0.1~0.5w%(w%は重量百分率)とされており,とくに好ましい例として,電波入射側の導電紙3は炭素繊維が0.3w%程度混入され,他の導電紙5は炭素繊維が0.2w%程度混入されている。これら導電紙3,5は,和紙に対して,炭素繊維(短繊維)を,炭素繊維の長手方向を1方向に揃えて混合させたもので,導電紙3における炭素繊維の長手方向をAとし,導電紙5における炭素繊維の長手方向をBとすると,AとBとがほほ直交するように導電紙3と5が配される。図3は,導電紙3と5の配置状態(AとBとがほほ直交する状態)を示す図である。」 オ 図3 [図:0001397083000005.jpg] カ 「【0015】 また,導電紙3,5は,例えば2層式湿式抄法で連続的に製造するのが好ましい。その理由は,炭素繊維の長手方向を製造ラインに沿って容易に製造でき,大量生産に適するからである。炭素繊維は,例えばポリアクリロニトリル系で,太さが0.5~3デニール(好ましくは1デニール程度),長さが2~8mm(好ましくは6mm程度)とされている。また,2層式湿式抄法による製造において,和紙は厚さが0.4~1.0mm,好ましくは0.5mm程度とされ,目付けが150g/m2程度とされている。なお,導電紙3,5の母材として和紙を用いるのは,一般の洋紙に比べて強く,しかも炭素繊維の方向性を確保することが容易であるからである。また,上記2層式湿式抄法は,以下のような工程を経る。即ち,原料パルプを煮熟し,水洗して打解し,その後に炭素繊維を配合して抄紙となし,得られた和紙を二枚重ねて目付け量を調整(合紙)し,最後に乾燥させることで製造される。 【0016】 また,第1スペーサ4は樹脂製のもので,厚さが2~4mm,好ましくは3mm程度に設定されており,第2スペーサ6も樹脂製のもので,厚さが2~7mm,好ましくは5mm程度に設定されている。更に,反射板7は,金属製のものが用いられるが,この実施形態では,例えば厚さ4ミクロン程度のアルミニウム箔をラミネートしたフィルムを用いている。」 キ 図4 [図:0001397083000006.jpg] ク 「【0017】 図4は,導電紙3,5における炭素繊維の方向と電波吸収方向との関係を説明するための図である。 【0018】 和紙10に混入された炭素繊維11は,長手方向Cが1方向に揃っていて,その炭素繊維11の長手方向Cが電波吸収効率の高い方向Dと一致し,炭素繊維11の長手方向と振幅方向とを平行にして入射する電波を高い効率で吸収する。 【0019】 次に,このように構成された本実施形態の電波吸収体1における電波吸収作用につき説明する。 【0020】 電波吸収体1は,反射板7が電波入射側とは反対側になるように配され,電波吸収部2の導電紙3,5で入射した電波を吸収し,更に反射板7で反射した電波を再度電波吸収部2の導電紙3,5で吸収する。このとき,導電紙3,5のそれぞれによる電波吸収特性は,上述したように炭素繊維11の長手方向と振幅方向とを平行にして入射する電波を高い効率で吸収する特性である。そして,炭素繊維11が一定方向に並んだ導電紙が1層だけであれば,電波吸収に異方性(方向による吸収性能の相違)を生じるが,当実施形態では2層の導電紙3,5を有して,それぞれの炭素繊維11の長手方向をほぼ直交するように異ならせているため,電波吸収の等方性(吸収性能が方向により違わないこと)が高められ,つまり入射電波の方向を選ばない状態で電波吸収特性を向上させ得る。」 (4)引用文献5 原査定の拒絶理由において,引用された引用文献5には,図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は,近傍界におけるGHz帯電磁波ノイズによる装置の誤作動防止用の薄型電磁波ノイズ抑制シートに関する。 【背景技術】 【0002】 近年,通信機器としての機能が充実し,小型・軽量化が進むスマホ・パソコン等は情報処理の増加に伴い使用する電波の周波数帯がGHzに移行しつつある。 上記は,装置の小型化と高速での情報処理が要求されるため装置に内蔵される電子部品及び配線回路等が増加し,部品同士が高密度にセッテイングされるため,各電子部品や配線部等から発生する電磁波ノイズ同士の干渉が大きくなり装置の誤作動や通信時間の遅れなどを生じさせている。 また,自動車用部材に関しても交通事故の軽減を目的に安全走行システムが急速に整備されている。安全走行システムの一例として,走行中の衝突(歩行者・車・壁等)を回避するための車搭載型衝突防止機構(周囲警告・LEDの点灯・自動ブレーキ等)の普及が一般化している。 車搭載型の衝突防止用システムは,センサとしてレーダ・レーザ・超音波・カメラなどを使用し各社各様の方法にて対応しているが,走行中の悪天候(雨や霧,雪)によるシステムの機能低下及び搭載価格等を考慮すると,レーダをセンサに使用するシステムが好ましい。 前記レーダシステムは,車の前方(96.5GHz:ミリ波),後方・側面(24GHz:準ミリ波)にて対応している。 しかし,上記の電波は,送受信機内部の電子回路が他の通信機器から発生する電磁波ノイズとの干渉を起こし易く,レーダの誤作動を招く恐れがある。また,送受信機の小型化及び薄型化に伴う,実装部品の高密度化も誤作動の要因となっている。 【0003】 上記した電磁波による誤作動を誘発する要因は,電磁波ノイズによる電子回路の異常作動が主原因であり,対策として送受信機内部のノイズ発生箇所の上部や周辺に発生電磁波ノイズを抑制するシートを貼り付け対応している。 電磁波ノイズ抑制シートの特徴は,シールド材料(電磁波反射)と異なり吸収した電磁波を熱に変換するため,シールド材料の様に反射した電磁波ノイズで二次的に電子部品の誤作動を招くことはない。 一般的に使用される電波ノイズ抑制シートは,磁性損失によるノイズ抑制シートで磁性金属粉と弾性樹脂を混合・シート化したものが使用されている。 上記ノイズ抑制シートは,高コスト・厚みが厚い・重い・使用磁性金属粉の変質(錆び)によるノイズ抑制効果の低減などの問題があり,低コストで薄く軽量で変質の少ない電磁波ノイズ抑制シートの開発が求められている。 特にシートの薄型化は,前記した様に通信機器の小型化・薄型化に伴い装置内部の空間部が減少しているため開発の重要なポイントとなっている。 【0004】 一方,ノイズ抑制システムが誘電損失となる炭素系材料使用の電磁波ノイズ抑制材料は,低比重で薄型化が可能でまた使用炭素の劣化がほとんど無い特徴を有するが,厚みバラツキによりノイズ抑制の周波数帯が大きく変化してしまう欠点を有している。 また,電磁波ノイズ抑制シートの薄型化を可能とする炭素系導電性塗料と薄型フィルムの組み合わせ(フィルム基材面に塗工)は,塗料とフィルムの相性(塗料のハジキ・塗工性・塗料の密着性)から有機溶剤系樹脂に炭素材料を混合して使用するのが一般的であり,この有機溶剤-炭素材料塗料を用いた場合,作業中に有機溶剤が飛散するため安全対策設備や環境対策設備の導入などから製品のコストを引き上げている現状がある。 【0005】 炭素系材料を使用した近傍界電磁波ノイズ抑制シートとして,例えば特許文献1があるが,これは導電性カーボン含有材料と磁性粉含有材料をそれぞれシート化し2層構造にしたもので,抑制できるノイズ周波数帯(低周波から高周波)を広げたものである。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0006】 【特許文献1】 国際公開第2012/173188号 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 しかしながら,特許文献1の場合,使用材料コスト及び製造工程が煩雑となるため製造されるシートコストが高いものとなる。炭素系材料単独使用で,コスト・厚み・各特性を満足した近傍界用のGHz帯対応電磁波ノイズ抑制シートは現在のところ開発されていない。 【0008】 本発明は,従来技術の炭素系単独導電材料使用の電磁波ノイズ抑制シートの課題であった厚み変化に伴う抑制周波数領域の変化幅の減少と,ノイズ制御量(吸収量)を増加させ,ノイズ反射量を減少させる低コストで環境・安全に考慮した密着性に優れ,GHz帯送受信機内部に使用する薄型の電磁波ノイズ抑制シートを提供することを目的とした。」 イ 「【0035】 実施例及び比較例に示す測定値の測定方法を説明する。 【0036】 ・作製導電性塗料の粘度 ポリ容器に入れた導電性塗料を25℃に調整した水槽に入れ,塗料温度を25℃にしBL型回転粘度計(30回転/分(min-1))で測定した。 ・導電性塗料層の厚み 上下式マイクロメータ(ID-C112C:低測定力デジマチックインジケータ,株式会社ミツトヨ製)にて測定した。 【0037】 (1)伝送減衰率(測定周波数:0.04 ~6GHz:マイクロストリップライン法) 近傍界電磁波ノイズ抑制効果の確認として,国際規格(IEC62333)に準じ伝送減衰率を測定した。 ネットワークアナライザ(アンリツ株式会社製:MS4624B)とマイクロストリップライン(キーコム社製)を接続し,各周波数での電波反射量及び吸収量を測定計算し各周波数帯での伝送減衰率を求めた。 (2)伝送減衰率(測定周波数:3GHz~30GHz:マイクロストリップライン法) 近傍界電磁波ノイズ抑制効果の確認として,国際規格(IEC62333)に準じ伝送減衰率を測定した。 ベクトルネットワークアナライザ(Wiltron社製:37169A)とマイクロストリップライン(キーコム社製)を接続し,各周波数での電波反射量及び吸収量を測定し各周波数帯での伝送減衰率を求めた。 ・測定試料サイズ:縦50mm,横100mm」 ウ 「【0039】 表1に,実施例1,2及び比較例1の測定結果を示した。 【0040】 [図:0001397083000007.jpg] 」 (5)引用文献6 原査定の拒絶理由において,引用された引用文献6には,図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「技術分野 [0001] 本発明は,回転機(発電機,電動機),変圧器分野および電気・電子機器の帯電防止材料,特に,回転機のコロナ発生防止材料,電気電子機器の帯電防止部品等として有用な導電性アラミド紙及びその製造方法に関する。 (中略) [0005] 本発明は,回転機のコロナ抑制材料や,さらに電気電子機器の帯電防止部品およびこれらの加工組み立て時の副資材として良好に使用できる電界緩和機能,帯電防止機能を持つ導電性アラミド紙を提供することを目的とする。 (中略) [0006] 本発明者は,上記課題を解決するため鋭意検討した結果,アラミド短繊維,アラミドファイブリッド及び導電性フィラーを適宜組み合わせて,密度が0.45~1.10g/cm3,引張強度が2.5kN/m以上,及び表面抵抗率が1.0×101~5.0×102Ω/□である導電性アラミド紙とすると,該導電性アラミド紙は,電界緩和に十分な効果を示し,良好な帯電防止機能と改善された機械的特性を有することにより,上記の課題を解決できることを見出し,本発明を完成するに至った。 すなわち,本願の第1の発明は,アラミド短繊維,アラミドファイブリッド及び導電性フィラーからなる導電性アラミド紙であって,密度が0.45~1.10g/cm3,引張強度が2kN/m以上,及び表面抵抗率が1.0×101~5.0×102Ω/□であることを特徴とする導電性アラミド紙を提供するものである。」 イ 「[0007] 以下,本発明について詳細に説明する。 [アラミド] 本発明においてアラミドとは,アミド結合の60%以上が芳香環に直接結合した線状高分子化合物を意味する。このようなアラミドとしては,例えば,ポリメタフェニレンイソフタルアミドおよびその共重合体,ポリパラフェニレンテレフタルアミドおよびその共重合体,コポリパラフェニレン・3,4’-ジフェニルエーテルテレフタルアミドなどが挙げられる。これらのアラミドは,例えば,芳香族酸二塩化物および芳香族ジアミンとの縮合反応による溶液重合法,二段階界面重合法等により工業的に製造されている。本発明において用いられるアラミドの形態は,特に限定されないが,アラミドファイブリッド,アラミド短繊維,フィブリル化したアラミドなどの形態が好ましい。 [0008] [アラミド短繊維] 本発明で用いるアラミド短繊維としては,アラミドを原料とする繊維を所定の長さに切断したものがあげられ,そのような繊維としては,例えば,帝人テクノプロダクツ(株)の「テイジンコーネックス(登録商標)」,「テクノーラ(登録商標)」,デュポン社の「ノーメックス(登録商標)」,「ケブラー(登録商標)」,テイジンアラミド社の「トワロン(登録商標)」等の商品名で入手することができるものが挙げられるが,これらに限定されるものではない。 アラミド短繊維は,好ましくは,0.05dtex以上25dtex未満の範囲内の繊度を有することができる。繊度が0.05dtex未満の繊維は,湿式法での製造(後述)において凝集を招きやすいために好ましくなく,また,繊度が25dtex以上の繊維は,繊維直径が大きくなり過ぎるため,例えば,真円形状で密度を1.4g/cm3とすると,直径45ミクロン以上である場合,アスペクト比の低下,力学的補強効果の低減,導電性アラミド紙の均一性不良などの不都合が生じる可能性がある。導電性アラミド紙の均一性不良が生じた場合,紙の導電性にバラツキが生じ,それにより求められる電界緩和機能や帯電防止機能が十分に発現できない可能性があるため好ましくない。 アラミド短繊維の長さは,1mm以上25mm未満の範囲から選ぶことができる。短繊維の長さが1mmよりも小さいと,導電性アラミド紙の力学特性が低下し,他方,25mm以上のものは,後述する湿式法での導電性アラミド紙の製造に際して「からみ」「結束」などが発生しやすく欠陥の原因となりやすいため好ましくない。 [0009] [アラミドファイブリッド] 本発明で用いるアラミドファイブリッドとは,アラミドからなるフィルム状微小粒子で,アラミドパルプと称することもある。製造方法は,例えば特公昭35-11851号,特公昭37-5732号公報等に記載の方法が例示される。ファイブリッドは,通常の木材(セルロース)パルプと同じように抄紙性を有するため,水中分散した後,抄紙機にてシート状に成形することができる。この場合,抄紙に適した品質を保つ目的でいわゆる叩解処理を施すことができる。この叩解処理は,ディスクリファイナー,ビーター,その他の機械的切断作用を及ぼす抄紙原料処理機器によって実施することができる。この操作において,ファイブリッドの形態変化は,JIS P8121に規定の濾水度(フリーネス)でモニターすることができる。本発明において,叩解処理を施した後の前記有機化合物のファイブリッドの濾水度は,10~300cm3(カナディアンスタンダードフリーネス)の範囲内にあることが好ましい。この範囲より大きな濾水度のファイブリッドでは,それから成形される前記不織布状シートの強度が低下する可能性がある。他方,10cm3よりも小さな濾水度を得ようとすると,投入する機械動力の利用効率が小さくなり,また,単位時間当たりの処理量が少なくなることが多く,さらに,ファイブリッドの微細化が進行しすぎるため,いわゆるバインダー機能の低下を招きやすい。したがって,10cm3よりも小さな濾水度を得ようとしても,格段の利点が認められない。 [00010] [導電性フィラー] 本発明で用いる導電性フィラーとしては,約10-1Ω・cm以下の体積抵抗を持つ導体から,約10-1~108Ω・cmの体積抵抗を持つ半導体まで,広範囲にわたる導電性を有する繊維状または微粒子(粉末またはフレーク)状物があげられる。このような導電性フィラーとしては,例えば金属繊維,炭素繊維,カーボンブラックなどの均質な導電性を有する材料,あるいは金属めっき繊維,金属粉末混合繊維,カーボンブラック混合繊維など,導電材料と非導電材料とが混合されて全体として導電性を示す材料などが挙げられるが,これらに限定されるものではない。この中で,本発明においては炭素繊維を使用することが好ましい。 本発明で用いる炭素繊維は,繊維状有機物を不活性雰囲気にて高温焼成して炭化したものが好ましい。一般に炭素繊維は,ポリアクリロニトリル(PAN)繊維を焼成したものと,ピッチを紡糸した後に焼成したものに大別されるが,これ以外にもレーヨンやフェノールなどの樹脂を紡糸後,焼成して製造するものもあり,これらも本発明において使用することができる。焼成に先立ち酸素等を使用して酸化架橋処理を行い,焼成時の融断を防止することも可能である。 本発明で用いる炭素繊維の繊度は,0.5~10dtexの範囲が好ましい。また,繊維長は1mm~20mmの範囲から選ばれる。 導電性フィラーの選択においては,導電性が高く,かつ,後述の湿式抄造法において良好な分散を示す材料を使用することがより好ましい。また,炭素繊維を選択する場合には,更に高強度,かつ脆化しにくいものを選択することが好ましい。そのような材料を選択することにより,本発明の特徴である,高強度,電界緩和材料や帯電防止材料に適した導電性,及び熱圧加工により特定の範囲に緻密化された導電性アラミド紙を得ることが可能となる。 [0011] [導電性アラミド紙] 本発明の導電性アラミド紙は,前述のアラミド短繊維,アラミドファイブリッド,及び導電性フィラーで構成されることを特徴とする。 本発明の導電性アラミド紙の全重量中に占めるアラミド短繊維の含量は,5~60重量%,好ましくは10~55重量%,より好ましくは20~50重量%であるが,これに限定されるものではない。一般に,アラミド短繊維の含量が5重量%未満の場合は導電性アラミド紙の機械的強度が低下しやすく,60重量%を超える場合はアラミドファイブリッドの含量が低下し,やはり機械的強度が低下しやすい。 本発明の導電性アラミド紙の全重量中に占めるアラミドファイブリッドの含量は,30~80重量%,好ましくは35~70重量%,より好ましくは40~65重量%であるが,これに限定されるものではない。一般に,アラミドファイブリッドの含量が30重量%未満の場合は導電性アラミド紙の機械的強度が低下しやすく,80重量%を超える場合は,湿式法での製造(後述)において濾水性が低下し,導電性アラミド紙の均一性不良などを生じやすい。 また,本発明の導電性アラミド紙に占める導電性フィラーの含量については,本発明の特徴である表面抵抗率が1.0×101~5.0×102Ω/□の範囲にある紙を得るために,1~30重量%とすることが好ましく,より好ましくは2~20重量%,更に好ましくは3~10重量%である。導電性フィラーの含量が1重量%未満の場合には,上記範囲の表面抵抗値を得ることが難しく,また一般に,30重量%を超える場合は,導電性アラミド紙の機械的強度が低下しやすく,かつ,複雑な方法を用いずに均質な紙を製造することが困難となる。 [0012] 本発明の導電性アラミド紙の密度は,JIS C 2300-2で規定された(坪量/厚さ)より算出される値であり,0.45~1.10g/cm3の範囲内の値をとることを特徴とする。密度が0.45g/cm3未満の場合は,機械的強度を高めるために坪量を大きくする必要があり,それにより厚みが増大するため好ましくなく,また1.10g/cm3を超えると紙中の空隙が少なくなるため,例えば樹脂を含浸して使用する用途などに適さない上,製造が困難となるため好ましくない。本発明の導電性アラミド紙の密度は,好ましくは0.50~1.00g/cm3である。 本発明の導電性アラミド紙の引張強度は2.5kN/m以上であることを特徴とし,好ましくは3.0kN/m以上である。引張強度が2.5kN/m未満の場合には,例えば本発明の紙を用いて作製されたテープを,自動テープ巻取機を用いてコイル導体などに巻回していく際,破れや裂けなどが起こる可能性がある。本発明の導電性アラミド紙の引張強度は,より好ましくは3.5~10.0kN/mである。 本発明の導電性アラミド紙は,表面抵抗率が1.0×101~5.0×102Ω/□からなることを特徴とし,好ましくは5.0×101~5.0×102Ω/□,より好ましくは5.0×101~4.0×102Ω/□である。表面抵抗率が1.0×101Ω未満の場合には,この表面抵抗率を得るために導電性フィラーの含量を多くする必要があり,それにより十分な機械的強度を得ることが困難となる上,求められる電界緩和機能の発現が困難となるため好ましくなく,5.0×102Ω/□を超える場合は,やはり求められる電界緩和機能や帯電防止機能を安定して得ることが困難となるため好ましくない。 また,導電性アラミド紙の厚みについても特に制限はないが,一般に,20μm~100μmの範囲内の厚さを有していることが好ましく,より好ましくは30~80μmである。20μmよりも厚みが小さい場合,機械的特性が低下し,製造工程での搬送等の取り扱い性に問題を生じやすく,他方,100μmを超える場合,例えば,電気装置あるいは導体へ据え付ける際に,省スペース化の障害となりやすい。尚,導電性アラミド紙の坪量は,10~110g/m2であるのが好ましい。 [0013] [導電性アラミド紙の製造] 以上に述べた如き性能を持つ本発明の導電性アラミド紙は,一般に,前述したアラミド短繊維,アラミドファイブリッド及び導電性フィラーを混合した後シート化する方法により製造することができる。具体的には,例えば,上記のアラミド短繊維,アラミドファイブリッド及び導電性フィラーを乾式でブレンドした後に,気流を利用してシートを形成する方法,アラミド短繊維,アラミドファイブリッド及び導電性フィラーを液体媒体中で分散混合した後,液体透過性の支持体,例えば網またはベルト上に吐出してシート化し,液体を除いて乾燥する方法などを適用することができるが,これらの中でも水を媒体として使用する,いわゆる湿式抄造法が好ましく選択される。 湿式抄造法では,少なくともアラミド短繊維,アラミドファイブリッド,及び導電性フィラーの単一または混合物の水性スラリーを抄紙機に送液し分散した後,脱水,搾水および乾燥操作を行うことによって,シートとして巻き取る方法が一般的である。抄紙き紙きとしては,例えば,長網抄紙機,円網抄紙機,傾斜型抄紙機及びこれらを組み合わせたコンビネーション抄紙機などを利用することができる。コンビネーション抄紙機での製造の場合,配合比率の異なる水性スラリーをシート成形し合一することにより,複数の紙層からなる複合シートを得ることも可能である。湿式抄造の際に必要に応じて分散性向上剤,消泡剤,紙力増強剤などの添加剤を使用することは差し支えなく,また導電性フィラーが粒子状物である場合には,アクリル系樹脂,定着剤,高分子凝集剤などを添加してもかまわないが,本発明の目的を阻害することがないよう,その使用には注意を払う必要がある。 [0014] また,本発明の導電性アラミド紙には,本発明の目的を阻害しない範囲で,上記成分以外に,その他の繊維状成分,例えば,ポリフェニレンサルファイド繊維,ポリエーテルエーテルケトン繊維,セルロース系繊維,ポリビニルアルコール繊維,ポリエステル繊維,ポリアリレート繊維,液晶ポリエステル繊維,ポリイミド繊維,ポリアミドイミド繊維,ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維などの有機繊維,ガラス繊維,ロックウール,ボロン繊維などの無機繊維を添加することもできる。尚,上記添加剤や他の繊維状成分を用いる場合には,導電性アラミド紙全重量の20重量%以下とするのが好ましい。 このようにして得られる導電性アラミド紙は,例えば,一対の平板間または金属製ロール間にて高温高圧で熱圧加工することにより,機械的強度を向上させることができる。熱圧加工の条件は,例えば,金属製ロール使用の場合,温度100~400℃,線圧50~1000kg/cmの範囲内を例示することができるが,本発明の導電性アラミド紙の特徴である高い引張強度と表面平滑性を得るために,ロール温度は330℃以上とすることが好ましく,より好ましくは330℃~380℃である。又,線圧は50~500kg/cmであるのが好ましい。該温度はメタ型アラミドのガラス転移温度より高く,またメタ型アラミドの結晶化温度に近いことから,該温度で熱圧加工することにより機械的強度が向上するだけでなく,導電性アラミド紙を構成する材料同士を強固に密着させることで,例えば,導電性フィラーが炭素繊維の場合にはその飛散を防ぐことができ,導電性アラミド紙の加工又は使用する現場において,繊維との直接接触や繊維の飛散による皮膚等への付着,及びそれによる痒みや痛み等の皮膚刺激を抑制し,作業環境の劣悪化を防ぐことができる。」 (6)引用文献7 原査定の拒絶理由において,引用された引用文献7には,図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 アラミドファイバー,ファイブリッドおよびフィラーの総重量を基準として,5~65重量部のアラミドファイバーと,30~90重量部のアラミドファイブリッドと,1~20重量部の導電性フィラーとを含んでなるアラミド紙であって,0.43g/cm3以下の見かけ密度,および60Nm/g以上の比引張強さを有するアラミド紙。」 イ 「【技術分野】 【0001】 本発明は,静電放電干渉および/または電磁干渉のシールドに好適な導電性アラミド紙に関する。」 (中略) 【0017】 本発明の紙はまた,アラミドファイブリッドを含んでなる。本明細書で用いる「ファイブリッド」という用語は,長さと幅が約100~1000マイクロメートルで厚さが僅か約0.1~1マイクロメートルであることが分かっている,小さく,フィルム状の実質的に二次元の粒子の微粉砕ポリマー製品を意味する。ファイブリッドは,ポリマー溶液を,溶液の溶剤と非混和の液体の凝固浴に流し込むことにより作製される。ポリマーが凝固するにつれて,ポリマー溶液のストリームに,激しい剪断力および乱流が加わる。アラミドファイブリッドは,米国特許第3,756,908号明細書または第3,018,091号明細書に記載されたような,単一工程で,ポリマー溶液を沈殿および剪断する抄紙(fibridating)機を用いて作製することができる。 【0018】 本発明の紙は30~90重量部のアラミドファイブリッドを含んでなる。30重量部未満のファイブリッドを有する紙は,最も好ましい用途について,適正な引張強度を有さず,一方,90重量部を超える紙は,典型的に,脆すぎて,多くの処理工程について十分な引裂き特性を有さないだけでなく,かかる高ファイブリッド含量の紙は,低密度でも樹脂含浸性が非常に限られているものと考えられる。ある実施形態において,本発明の紙は,約35~60重量部のアラミドファイブリッド含量を有するのが好ましい。本発明のある実施形態において,本発明の好ましいアラミドファイブリッドは,メタ-アラミドポリマーから作製され,最も好ましいメタ-アラミドはポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)である。」 ウ 「【0041】 実施例1 0.5%の稠度(水中0.5重量パーセント固体材料)で,乾燥履歴のないポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)(MPD-I)ファイブリッドで水性分散液を作製した。カーボンファイバーをこの分散液に添加した。連続攪拌して約10分後,追加の水およびメタ-アラミドフロックを,約10分さらに攪拌しながら添加し,材料を完全にブレンドし,最終稠度が0.35%のスラリーを得た。最終スラリーは,39重量%MPD-Iフロック,50重量%MPD-Iファイブリッドおよび11重量%カーボンファイバーの固体を含んでなっていた。 【0042】 MPD-Iファイブリッドを,米国特許第3,756,908号明細書に開示され記載された一般法を用いて作製した。MPD-Iフロックの線密度は0.22tex(2.0デニール),切断長さは0.64cmおよび初期モジュラスは約800cN/tex(ノーメックス(NOMEX)(登録商標)という商品名でデュポン(DuPont)より販売)であった。カーボンファイバーは,フォータフィル社(FORTAFIL Inc.)より入手可能なフォータフィル(FORTAFIL)ファイバータイプ150(長さ0.32cm)であった。 【0043】 スラリーをポンピングして,チェストを供給し,そこからフォードリニア(Fourdrinier)機へ供給して,坪量が約30.9g/m2の紙を作製した。紙を,表面温度が約320℃および接触滞留時間が約7秒の加熱金属ロールとの表面接触により熱処理した。この紙から作製された幅2cmのテープは,自動巻取りプロセスを用いてコイルに,破断や引裂きなしに,順調に巻けた。」 (7)引用文献8 原査定の拒絶理由において,引用された引用文献8には,図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「技術分野 [0001] 本発明は,電磁波シールド用導電性アラミド紙及びその製造方法に関する。」 イ 「[0004] 本発明は,耐熱性が高く,電磁波シールド特性と加工性に優れた導電性アラミド紙を提供することを目的とする。 [0005] 本発明者らは,上記課題を解決するため鋭意検討した結果,アラミド短繊維,アラミドファイブリッド及び導電性フィラーからなるアラミド紙の表面に金属層を形成することにより,上記の課題を解決できることを見出し,本発明を完成するに至った。 すなわち,本願の第1の発明は,アラミド短繊維,アラミドファイブリッド及び導電性フィラーを含むアラミド紙の表面に金属層を有する,厚み方向の抵抗値が0.01~0.10Ω・cm2である,導電性アラミド紙を提供するものである。」 ウ 「[0006] (アラミド) 本発明においてアラミドとは,アミド結合の60%以上が芳香環に直接結合した線状高分子化合物を意味する。このようなアラミドとしては,例えば,ポリメタフェニレンイソフタルアミドおよびその共重合体,ポリパラフェニレンテレフタルアミドおよびその共重合体,コポリパラフェニレン・3,4’-ジフェニルエーテルテレフタルアミドなどが挙げられる。これらのアラミドは,例えば,芳香族酸二塩化物および芳香族ジアミンとの縮合反応による溶液重合法,二段階界面重合法等により工業的に製造されており,市販品として入手することができるが,これに限定されるものではない。これらのアラミドの中では,ポリメタフェニレンイソフタルアミドが良好な成型加工性,難燃性,耐熱性などの特性を備えている点で好ましく用いられる。 [0007] (アラミド短繊維) 本発明で用いるアラミド短繊維としては,アラミドを原料とする繊維を所定の長さに切断したものが挙げられ,そのような繊維としては,例えば,帝人(株)の「テイジンコーネックス(登録商標)」,「テクノーラ(登録商標)」,デュポン社の「ノーメックス(登録商標)」,「ケブラー(登録商標)」,テイジンアラミド社の「トワロン(登録商標)」等の商品名で入手することができるものが挙げられるが,これらに限定されるものではない。 アラミド短繊維は,好ましくは,0.05dtex以上25dtex未満の範囲内の繊度を有することができる。繊度が0.05dtex未満の繊維は,湿式法での製造(後述)において凝集を招きやすいために好ましくなく,また,繊度が25dtex以上の繊維は,繊維直径が大きくなり過ぎるため,例えば,真円形状で密度を1.4g/cm3とすると,直径45μm以上である場合,アスペクト比の低下,力学的補強効果の低減,アラミド紙の均一性不良などの不都合が生じる可能性がある。導電性アラミド紙の均一性不良が生じた場合,導電性アラミド紙の導電性にバラツキが生じ,それにより求められる電磁波シールド機能が十分に発現できない可能性があるため好ましくない。アラミド短繊維の長さは,1mm以上25mm未満の範囲から選ぶことができる。短繊維の長さが1mmよりも小さいと,導電性アラミド紙の力学特性が低下し,他方,25mm以上のものは,後述する湿式法での導電性アラミド紙の製造に際して「からみ」「結束」などが発生しやすく欠陥の原因となりやすいため好ましくない。 [0008] (アラミドファイブリッド) 本発明で用いるアラミドファイブリッドとは,アラミドからなるフィルム状微小粒子で,アラミドパルプと称することもある。製造方法は,例えば特公昭35-11851号,特公昭37-5732号公報等に記載の方法が例示される。アラミドファイブリッドは,通常の木材(セルロース)パルプと同じように抄紙性を有するため,水中分散した後,抄紙機にてシート状に成形することができる。この場合,抄紙に適した品質を保つ目的でいわゆる叩解処理を施すことができる。この叩解処理は,ディスクリファイナー,ビーター,その他の機械的切断作用を及ぼす抄紙原料処理機器によって実施することができる。この操作において,ファイブリッドの形態変化は,JIS P8121に規定の濾水度(フリーネス)でモニターすることができる。本発明において,叩解処理を施した後のアラミドファイブリッドの濾水度は,10~300cm3(カナディアンスタンダードフリーネス)の範囲内にあることが好ましい。この範囲より大きな濾水度のファイブリッドでは,それから成形されるシートの強度が低下する可能性がある。他方,10cm3よりも小さな濾水度を得ようとすると,投入する機械動力の利用効率が小さくなり,また,単位時間当たりの処理量が少なくなることが多く,さらに,ファイブリッドの微細化が進行しすぎるため,いわゆるバインダー機能の低下を招きやすい。したがって,10cm3よりも小さな濾水度を得ようとしても,格段の利点が認められない。 [0009] (導電性フィラー) 本発明で用いる導電性フィラーとしては,約10-1Ω・cm以下の体積抵抗を持つ導体から,約10-1~108Ω・cmの体積抵抗を持つ半導体まで,広範囲にわたる導電性を有する繊維状または微粒子(粉末またはフレーク)状物があげられる。このような導電性フィラーとしては,例えば金属繊維,炭素繊維,カーボンブラックなどの均質な導電性を有する材料,あるいは金属めっき繊維,金属粉末混合繊維,カーボンブラック混合繊維など,導電材料と非導電材料とが混合されて全体として導電性を示す材料などが挙げられるが,これらに限定されるものではない。この中で,本発明においては炭素繊維を使用することが好ましい。本発明で用いる炭素繊維は,繊維状有機物を不活性雰囲気にて高温焼成して炭化したものが好ましい。一般に炭素繊維は,ポリアクリロニトリル(PAN)繊維を焼成したものと,ピッチを紡糸した後に焼成したものに大別されるが,これ以外にもレーヨンやフェノールなどの樹脂を紡糸後,焼成して製造するものもあり,これらも本発明において使用することができる。焼成に先立ち酸素等を使用して酸化架橋処理を行い,焼成時の融断を防止することも可能である。本発明で用いる炭素繊維の繊度は,0.5~10dtexの範囲が好ましい。また,繊維長は1mm~20mmの範囲から選ばれる。 導電性フィラーの選択においては,導電性が高く,かつ,後述の湿式抄造法において良好な分散を示す材料を使用することがより好ましい。また,炭素繊維を選択する場合には,更に高強度,かつ脆化しにくいものを選択することが好ましい。そのような材料を選択することにより,本発明の特徴である,電磁波シールド材料に適した導電性,及び熱圧加工により特定の範囲に緻密化された導電性アラミド紙を得ることが可能となる。 [0010] (導電性アラミド紙) 本発明の導電性アラミド紙は,前述のアラミド短繊維,アラミドファイブリッド及び導電性フィラーを含むアラミド紙の表面に金属層を有することを特徴とする。本発明の導電性アラミド紙の金属層形成前の全重量中に占めるアラミド短繊維の含量は,好ましくは5~60重量%,より好ましくは10~55重量%,さらに好ましくは20~50重量%であるが,これに限定されるものではない。一般に,アラミド短繊維の含量が5重量%未満の場合は導電性アラミド紙の機械的強度が低下しやすく,60重量%を超える場合はアラミドファイブリッドの含量が低下し,やはり機械的強度が低下しやすい。本発明の導電性アラミド紙の金属層形成前の全重量中に占めるアラミドファイブリッドの含量は,好ましくは30~80重量%,より好ましくは35~70重量%,さらに好ましくは40~65重量%であるが,これに限定されるものではない。一般に,アラミドファイブリッドの含量が30重量%未満の場合は導電性アラミド紙の機械的強度が低下しやすく,80重量%を超える場合は,湿式法での製造(後述)において濾水性が低下し,導電性アラミド紙の均一性不良などを生じやすい。また,本発明の導電性アラミド紙の金属層形成前の全重量中に占める導電性フィラーの含量は,好ましくは1~30重量%,より好ましくは3~30重量%である。導電性フィラーの含量が1重量%未満の場合には,所望の導電性を得ることが難しく,また一般に,30重量%を超える場合は,導電性アラミド紙の機械的強度が低下しやすく,かつ,複雑な方法を用いずに均質な紙を製造することが困難となる。また,アラミド紙はフィブリル化したアラミドを含んでもよい。 [0011] また,金属層形成に用いられる金属材料としては,金,銀,銅,亜鉛,ニッケル,及びそれらの合金といったものが挙げられる。導電性及び製造コストを考慮すると銅,ニッケルが好ましいが,電磁波シールド性や耐久性を考慮して選択すればよく,特に限定されない。本発明の導電性アラミド紙の表面に形成される金属層の含量については平均値で10~20g/m2の範囲内であることが好ましい。金属層の量がこの範囲より小さいと十分な導電性が得られない恐れがある。逆に金属層の量がこの範囲より大きいとコストアップを招く恐れがある。 本発明の導電性アラミド紙において,前記金属層が適切に形成されているか否かについては,例えば抵抗値計を用いて測定されるアラミド紙の厚み方向の抵抗値により確認される。具体的には,抵抗値計測定で得られる実効抵抗値に,電極との接触面積を乗じた値を厚み方向の抵抗値とし,これが0.01~0.10Ω・cm2の範囲内の値をとる場合に,「表面および内部に連続した金属層が適切に形成され」ていると言える。厚み方向の抵抗値が0.01Ω・cm2~0.10Ω・cm2の範囲内であれば,軽量でかつ,充分な電磁波シールド特性も有する導電性アラミド紙が提供される。厚み方向の抵抗値が0.01Ω・cm2未満では,機器の軽量化が達成されず,0.10Ω・cm2を超えると電磁波シールド特性が充分でない。厚み方向の抵抗値は,好ましくは0.01Ω・cm2~0.07Ω・cm2,より好ましくは0.01Ω・cm2~0.04Ω・cm2である。 また,導電性アラミド紙の厚みについては特に制限はないが,一般に,20μm~100μmの範囲内の厚さを有していることが好ましく,より好ましくは25~80μmである。20μmよりも厚みが小さい場合,機械的特性が低下し,製造工程での搬送等の取り扱い性に問題を生じやすい。他方,100μmを超える場合,例えば,電気装置あるいは導体へ据え付ける際に,省スペース化の障害となりやすい。尚,導電性アラミド紙の坪量は,10~110g/m2であるのが好ましい。 [0012] (導電性アラミド紙の製造) 以上に述べた本発明の導電性アラミド紙は,一般に,前述したアラミド短繊維,アラミドファイブリッド及び導電性フィラーを混合した後シート化し,一対の金属製ロール間にて熱圧加工した後でめっき加工する方法により製造することができる。 具体的には,例えば,(i)アラミド短繊維,アラミドファイブリッド及び導電性フィラーを乾式でブレンドした後に,気流を利用してシートを形成し,一対の金属製ロール間にて熱圧加工した後で金属層を形成する方法,(ii)アラミド短繊維,アラミドファイブリッド及び導電性フィラーを液体媒体中で分散混合した後,液体透過性の支持体,例えば網またはベルト上に吐出してシート化し,液体を除いて乾燥し,一対の金属製ロール間にて熱圧加工した後で金属層を形成する方法などを適用することができる。これらの中でも水を媒体として使用する,いわゆる湿式抄造法でシート化し,一対の金属製ロール間にて熱圧加工した後で金属層を形成する方法が好ましく選択される。 [0013] 湿式抄造法では,少なくともアラミド短繊維,アラミドファイブリッド,及び導電性フィラーの単一または混合物の水性スラリーを抄紙機に送液し分散した後,脱水,搾水および乾燥操作を行うことによって,シートとして巻き取る方法が一般的である。抄紙機としては,例えば,長網抄紙機,円網抄紙機,傾斜型抄紙機及びこれらを組み合わせたコンビネーション抄紙機などを利用することができる。コンビネーション抄紙機での製造の場合,配合比率の異なる水性スラリーをシート成形し合一することにより,複数の紙層からなる複合シートを得ることも可能である。湿式抄造の際に必要に応じて分散性向上剤,消泡剤,紙力増強剤などの添加剤を使用することは差し支えなく,また導電性フィラーが粒子状物である場合には,アクリル系樹脂,定着剤,高分子凝集剤などを添加してもかまわないが,本発明の目的を阻害することがないよう,その使用には注意を払う必要がある。また,本発明の導電性アラミド紙には,本発明の目的を阻害しない範囲で,上記成分以外に,その他の繊維状成分,例えば,ポリフェニレンサルファイド繊維,ポリエーテルエーテルケトン繊維,セルロース系繊維,ポリビニルアルコール繊維,ポリエステル繊維,ポリアリレート繊維,液晶ポリエステル繊維,ポリイミド繊維,ポリアミドイミド繊維,ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維などの有機繊維,ガラス繊維,ロックウール,ボロン繊維などの無機繊維を添加することもできる。尚,上記添加剤や他の繊維状成分を用いる場合には,導電性アラミド紙の金属層形成前の全重量の20重量%以下とするのが好ましい。 [0014] このようにして得られるシートは,例えば,一対の平板間または金属製ロール間にて高温高圧で熱圧加工することにより,機械的強度を向上させることができる。熱圧加工の条件は,例えば,金属製ロールを使用する場合,温度100~400℃,線圧50~1000kg/cmの範囲内を例示することができるが,本発明の導電性アラミド紙の特徴である高いシールド特性を得るために,ロール温度は330℃以上とすることが好ましく,より好ましくは330℃~380℃である。又,線圧は50~500kg/cmであるのが好ましい。該温度はメタ型アラミドのガラス転移温度より高く,またメタ型アラミドの結晶化温度に近いことから,該温度で熱圧加工することにより機械的強度が向上するだけでなく,導電性アラミド紙を構成する材料同士を強固に密着させることで,厚み方向の抵抗を低減できる。上記の熱圧加工は複数回行ってもよく,また用途によっては過度に省スペース化を必要とせず,100μmを超える厚みを必要とする場合も出てくる可能性もあるため,その場合には,上述の方法により得たシート状物を複数枚重ね合わせて熱圧加工を行ってもよい。 このようにして得られたシートの表面に,金属層を形成する方法としては,真空蒸着法,スパッタリング法および無電解めっき法等が挙げられるが,形成される金属層の均一性,生産性の観点から,無電解めっき法が特に好ましい。 また,金属の量を増加させるために,金属層を形成する前に表面処理を実施することが可能である。ここで表面処理としては,UV照射表面処理,プラズマ表面処理,コロナ表面処理,電子線照射表面処理,イオン線照射表面処理,樹脂加工,液体浸漬による表面処理などが挙げられるが,これらに限定されるものではない。表面処理を実施することにより,金属層形成前のシートの表面の表面エネルギーが向上し,金属との界面エネルギーが低下する結果,金属層形成性が向上する。処理の簡便さから,特にUV照射表面処理,プラズマ表面,電子線照射表面処理が好ましい。 本発明の導電性アラミド紙は,(1)導電性を有していること,(2)耐熱性,難燃性を備えていること,(3)形状安定性が高いこと,(4)良好な加工性を有していることなどの優れた特性を有しており,電気電子機器,特にハイブリッドカー,電気自動車中の電子機器などの電磁波シールド材料として好適に用いることができる。 以下,本発明を,実施例を挙げてさらに具体的に説明する。なお,これらの実施例は,単なる例示であり,本発明の内容を何ら限定するためのものではない。 (測定方法) (1)シートの目付,厚み,密度 JIS C 2300-2に準じて実施し,密度は(目付/厚み)により算出した。 (2)引張強度 幅15mm,チャック間隔50mm,引張速度50mm/minで実施した。 (3)表面抵抗率 ロレスターMCP-T350 ESPタイプ(三菱化学製)を用いて測定した。 (4)厚み方向抵抗値 一対の電極で挟み,シートにかかる面圧(電極の重量も含む)が250g/cm2の状態で,ミリオームハイテスタ(日置電気製)を用いて測定した抵抗値に電極の面積を乗じた。 (5)形状安定性 JIS L 1096 A法(45°カンチレバー法)に準じて測定した。長いほど,形状安定性が優れていると言える。 (6)耐熱性 表1~3に示した温度で1時間保持した後,引張強度を測定した。 (7)電磁波シールド性能 KEC法(社団法人関西電子工業振興センターの標準測定方法であるMIL-STD285)に基づいて測定した。具体的には,近距離間に発信アンテナと受信アンテナが設置されたシールドボックス内の所定の位置(アンテナ間)にサンプルシートを保持し,周波数を10M~1GHzの範囲で変化させて発信し,その時の各周波数における電界の減衰状態をスペクトラム・アナライザーで測定した。近接界における電磁波シールド性が評価できる。 [0016] (原料調製) 特開昭52-15621号公報に記載の,ステーターとローターの組み合わせで構成されるパルプ粒子の製造装置(湿式沈殿機)を用いて,ポリメタフェニレンイソフタルアミドのファイブリッドを製造した。これを叩解機で処理し長さ加重平均繊維長を0.9mmに調節した(濾水度200cm3)。一方,デュポン社製メタアラミド繊維(ノーメックス(登録商標),単糸繊度2.2dtex)を長さ6mmに切断(以下「アラミド短繊維」と記載)し抄紙用原料とした。 [0017] (実施例1~3) 上記のとおり調製したメタアラミドファイブリッド,メタアラミド短繊維,及び炭素繊維(東邦テナックス株式会社製,繊維長3mm,単繊維径7μm,繊度0.67dtex,体積抵抗率1.6×10-3Ω・cm)をそれぞれ水中に分散してスラリーを作製した。このスラリーを,メタアラミドファイブリッド,メタアラミド短繊維,及び炭素繊維が,表1に示す配合比率となるように混合し,タッピー式手抄き機(断面積325cm2)で処理してシート状物を作製した。次いで,得られたシートを1対の金属製カレンダーロールにより温度330℃,線圧150kg/cmで熱圧加工したシートの表面に,無電解めっき法により金属(銅-ニッケル合金)層を形成し,導電性アラミド紙を得た。このようにして得られた導電性アラミド紙の主要特性値を表1に示す。 (実施例4) 実施例1と同様の方法にて得られたシート状物を1対の金属製カレンダーロールにより温度350℃,線圧150kg/cmで熱圧加工したシートの表面に,無電解めっき法により金属(銅-ニッケル合金)層を形成し,導電性アラミド紙を得た。このようにして得られた導電性アラミド紙の主要特性値を表1に示す。 [0018] [表1] [図:0001397083000008.jpg] 」 第5 対比・判断 1 本願発明1 (1)対比 以下では,本願発明1と引用発明を対比する。 ア 引用発明は,「水分散性繊維と導電性物質とを混合抄紙して,電磁波シールド性を付与した電磁波シールド紙であって,水分散性繊維に導電性の繊維又は粉体を配合し,」「導電性繊維としては,アルミニウム,ステンレス等があげられ,」「導電性繊維として,平均繊維径25μ,平均長さ6mmのアルミニウム繊維を用い,配合比率は,水分散性繊維が60重量%,導電性繊維が20重量%,導電性粉体が20重量%である磁波シールド紙」とされている。 ここで,引用発明の「導電性繊維」は,「導電性」を有した「繊維」であるから,本願発明1の「導電性短繊維」に対応しているといえる。 さらに,本願明細書の段落0006には,本願発明1の「導電性短繊維」について,繊維径と繊維長の関係が下式で表されるものとして定義されている。 100 ≦ 繊維長/繊維径 ≦ 20000 引用発明の「導電性繊維」は,「平均繊維径25μ,平均長さ6mmのアルミニウム繊維」とされており,この場合,繊維長/繊維径=240となるから,上式を満たしており,引用発明の「平均繊維径25μ,平均長さ6mmのアルミニウム繊維」は,本願発明1の「導電性短繊維」に相当するといえる。 また,引用発明の「電磁波シールド紙」と,本願発明1の「電磁波吸収シート」は,いずれも,電磁波を吸収することによりシールドしていることは明らかであるから,引用発明の「電磁波シールド紙」は,本願発明1の「電磁波吸収シート」に対応しているといえる。 したがって,本願発明1と引用発明とは,「導電性短繊維」「を含む電磁波吸収シート」である点で共通しているといえる。 しかし,本願発明1は,「絶縁材料に被覆された軟磁性体粒子」を含んでいるのに対して,引用発明は,絶縁材料に被覆された軟磁性体粒子を含んでいない点で相違している。 また,本願発明1の「電磁波吸収シート」は,「アラミドファイブリッド」も含んでいるのに対し,引用発明の「電磁波吸収シート」は,「アラミドファイブリッド」を含んでいない点で相違している。 イ 引用発明において,「配合比率は,水分散性繊維が60重量%,導電性繊維が20重量%,導電性粉体が20重量%である」とされている。 ここで,引用発明の「導電性繊維」は,「20重量%」であるから,引用発明の「導電性繊維」と,本願発明1の「導電性短繊維の含有量が,シート全重量の3wt%~20wt%であ」る「導電性短繊維」とは,「導電性短繊維の含有量が,シート全重量の」「20wt%であ」る点で共通しているといえる。 また,上記アで述べたように,本願発明1は,「絶縁材料に被覆された軟磁性体粒子」を含んでおり,さらに,「絶縁材料に被覆された軟磁性体粒子の含有量が,シート全重量の70wt%~90wt%である」のに対して,引用発明は,絶縁材料に被覆された軟磁性体粒子を含んでいない点で相違している。 (2)一致点・相違点 本願発明1と,引用発明とは,以下アの点で一致し,以下イの点で相違する。 ア 一致点 「導電性短繊維を含む電磁波吸収シートであって, 導電性短繊維の含有量が,シート全重量の20wt%である, 電磁波吸収シート。」 イ 相違点 (ア)<相違点1> 本願発明1は,「絶縁材料に被覆された軟磁性体粒子」を含み「絶縁材料に被覆された軟磁性体粒子の含有量が,シート全重量の70wt%~90wt%である」のに対して,引用発明は,絶縁材料に被覆された軟磁性体粒子を含んでいない点。 (イ)<相違点2> 本願発明1の「電磁波吸収シート」は,「アラミドファイブリッド」も含んでいるのに対し,引用発明の「電磁波吸収シート」は,「アラミドファイブリッド」を含んでいない点 (3)相違点についての判断 ア <相違点2>に係る「アラミドファイブリッド」の含有も,<相違点1>に係る「軟磁性体粒子の含有量」に影響を与えるので,以下では,両者を総合的に判断する。 イ <相違点1>の「絶縁材料に被覆された軟磁性体粒子」を含む構成 まず,本願発明1の<相違点1>に係る構成の内「絶縁材料に被覆された軟磁性体粒子」を含む点について,引用文献1の2頁左下欄12~18行(上記第4の1(1)ア)には,「本発明の電磁波シールド紙製造に際して上述水分散性繊維と導電性繊維又は導電性粉体を含有する紙料スラリー中にフェライト,スピネル型フェライト,ニッケル-亜鉛フェライト,磁性酸化鉄等の磁性粉体を組み合わせることは,特に電磁波吸収材としての性能を強化する上で効果的である。」という記載がある。 ここで,「ニッケル-亜鉛フェライト」「等の磁性粉体」は,軟磁性体であるから,引用文献1の当該記載は,引用発明に軟磁性体を含むよう構成することを示唆するものであるといえる。 また,引用文献2および3には,いずれも,磁性粉体を絶縁材料で被覆する周知技術が記載されている。 以上から,引用発明に,引用文献2および3に記載の周知技術を適用すると,<相違点1>に係る構成の内「絶縁材料に被覆された軟磁性体粒子」を含む構成が想到できるといえる。 ウ <相違点2>の「アラミドファイブリッド」の含む構成 さらに,引用文献7および引用文献8には,「アラミドファイブリッド」を含む電磁波シールド用導電性アラミド紙が記載されているから,引用発明において,水分散性繊維に代えて,あるいは,水分散性繊維に加えて,引用文献7および引用文献8に記載された「アラミドファイブリッド」を含む<相違点2>に係る構成とすることは,容易に想到し得たものである。 エ <相違点1>の「絶縁材料に被覆された軟磁性体粒子の含有量が,シート全重量の70wt%~90wt%である」構成 以下では,<相違点1>に係る構成の内「絶縁材料に被覆された軟磁性体粒子の含有量が,シート全重量の70wt%~90wt%である」点が設計的事項といえるか検討する。 まず,「電磁波吸収シート」が「アラミドファイブリッド」を含む<相違点2>に係る構成に関して提示されている引用文献7および引用文献8を参照すると,「アラミドファイブリッド」の含有量は,それぞれ,30~90重量%(請求項1),30~80重量%(段落0010)とされており,特に,引用文献8の段落0010(上記第4の2(7)ウ)には,「一般に,アラミドファイブリッドの含量が30重量%未満の場合は導電性アラミド紙の機械的強度が低下しやすく」と記載されている。これから,引用文献8の電磁波シールド用導電性アラミド紙において,アラミドファイブリッドの含量が導電性アラミド紙の機械的強度に影響するといえる。 また,引用文献1でも,「水分散性繊維を含まない比較例2に於ては,電磁波シールド性は得られたが,強度が低く,取扱作業性が悪い。」(上記第4の(1)エ)との記載があり,上記第4の(1)ウの表1の比較例2の引張強度(kg/15mm)の値も,〔実施例1〕の5.5に対して,比較例2は1.3であり,引張強度が不足しているといえる。 引用発明は,導電性繊維が20重量%含有されているため,仮に,軟磁性体粒子の含有量を,シート全重量の70wt%~90wt%とした場合に,アラミドファイブリッドの含量は,10重量%未満となるから,引用文献8や引用文献1の上記記載に接した当業者は,軟磁性体粒子の含有量を,シート全重量の70wt%~90wt%とした場合に,引張強度が不足すると予測しうる。 しかし,本願発明1の実施例1(炭素繊維5重量%,メタアラミドファイブリッド15重量%,メタアラミド短繊維5重量%,被服粒子75重量%)の引張強度(kgf/15mm)の値は,5.6となっており(本願明細書の段落0017の【表1】),引用発明の〔実施例1〕の引張強度5.5に対しても,十分な引張強度を備えているといえる。 以上から,引用文献8で,「一般に,アラミドファイブリッドの含量が30重量%未満の場合は導電性アラミド紙の機械的強度が低下しやす」いとされているにもかかわらず,本願発明1は,「絶縁材料に被覆された軟磁性体粒子」を含み,その含有量がシート全重量の70wt%~90wt%とした場合で,アラミドファイブリッドの含量が30重量%未満の場合であっても,十分な機械的強度が得られているといえ,これは,当業者が,引用文献1および8から予測できない効果であるといえるから,<相違点1>に係る構成の内「絶縁材料に被覆された軟磁性体粒子の含有量が,シート全重量の70wt%~90wt%である」点は設計的事項といえない。 したがって,引用発明および引用文献2ないし8の記載事項に基づいて,当業者は本願発明1の<相違点1>に係る構成の内「絶縁材料に被覆された軟磁性体粒子の含有量が,シート全重量の70wt%~90wt%である」構成を容易に想到することができない。 オ 小括 以上から,本願発明1は,引用発明および引用文献2ないし8の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2~5 本願発明2ないし本願発明5は,いずれも,本願発明1を減縮したものであって,本願発明1と同一の構成を備えるものであるから,上記1で述べた本願発明1と同じ理由により,引用発明および引用文献2ないし8の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 3 本願発明6および本願発明7 本願発明6および本願発明7は,本願発明1ないし本願発明5の「電磁波吸収シート」の「製造方法」を特定したものであって,本願発明1と同じ構成を備えるものであるから,上記1で述べた本願発明1と同じ理由により,引用発明および引用文献2ないし8の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 4 本願発明8および本願発明9 本願発明8は,本願発明1ないし本願発明5の「電磁波吸収シート」「を装着した電気・電子回路」であり,本願発明9は,本願発明1ないし本願発明5の「電磁波吸収シート」「を装着したケーブル」であるから,本願発明1と同じ構成を備えるものであり,上記1で述べた本願発明1と同じ理由により,引用発明および引用文献2ないし8の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 第6 原査定について 上記第5で述べたように,本願発明1ないし本願発明9は,いずれも,原査定において引用された引用文献1ないし8に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえないから,進歩性を有しない旨の拒絶の理由は解消した。 したがって,原査定の理由は,維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。

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2022-013902

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