審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2022-013325

マルチチャネル光結合器アレイ

審判番号
2022-013325
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-545695外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年08月25日
審決日
2024年03月04日
公報発行日
2024年08月30日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .536-WZ (G02B) / P18 .537-WZ (G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-545695「マルチチャネル光結合器アレイ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月11日国際公開、WO2018/085435、令和 2年 1月16日国内公表、特表2020-501198〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 10項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、2017年(平成29年)11月1日を国際出願日とする外国語特許出願(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年3月15日、米国及び2016年11月3日、米国)であって、その手続の経緯の概略は次のとおりである。

令和元年 6月19日 :翻訳文の提出
令和3年 7月27日付け:拒絶理由通知書
令和4年 2月 8日 :手続補正書及び意見書の提出

同年 4月18日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)

(同月26日 :原査定の謄本の送達)

同年 8月25日 :審判請求書及び手続補正書の提出

令和5年10月13日付け:拒絶理由通知書
令和6年 1月17日 :意見書及び手続補正書の提出

第2 本願発明

令和6年1月17日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1には、「前記第2の端部に近接する箇所において、前記光結合器アレイは、前記結合器ハウジング構造と前記複数の導波路の少なくとも1つとの間に、実質的にキャップを形成しない」と記載されているところ、この記載中の「キャップ」との記載は、請求項1の他の記載及び明細書の記載を参酌すれば、「ギャップ」の誤記であることは明らかである。

よって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年1月17日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載中、「キャップ」との誤記を「ギャップ」と正した、以下に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める(下線は、誤記を正した部分を示す。)。

<本願発明>

「複数の光ファイバと光学的に結合するための第1の端部、及び光デバイスと光学的に結合する第2の端部を有する細長い光エレメントを備える、前記複数の光ファイバを前記光デバイスに光学的に結合するためのマルチチャネル光結合器アレイであって、
前記光エレメントは、共通の単一結合器ハウジング構造と、各導波路がモードフィールドプロファイルの少なくとも1つの光モードに対するキャパシティを有するとともに、前記共通の単一結合器ハウジング構造内に埋設され、複数の細長い導波路と、を有し、前記複数の細長い導波路の少なくとも1つは、バニシングコア導波路であり、前記バニシングコア導波路は、第1の屈折率(N-1)及び前記第1の端部において第1の内部コアサイズ(ICS-1)、前記第2の端部において第2の内部コアサイズ(ICS-2)を有する内部バニシングコアと、当該内部バニシングコアを長さ方向に囲み、第2の屈折率(N-2)及び前記第1の端部で第1の外部コアサイズ(OCS-1)、前記第2の端部において第2の外部コアサイズ(OCS-2)を有する外部コアと、当該外部コアを長さ方向に囲み、第3の屈折率(N-3)及び前記第1の端部で第1のクラッドサイズ、前記第2の端部で第2のクラッドサイズを有する外部クラッドを備え、
前記共通の単一結合器ハウジング構造は、前記複数の導波路を囲む第4の屈折率(N-4)を有する横方向に連続した媒体を備え、
前記第1の屈折率、前記第2の屈折率及び前記第3の屈折率(それぞれN-1,N-2,N-3)の相対的な大きさは、N-1>N-2>N-3の関係を備え、
続きを表示(全11行)
前記共通の単一結合器ハウジング構造の前記媒体の全体積は、前記共通の単一結合器ハウジング構造内に閉じ込められた前記バニシングコア導波路の、前記内部バニシングコア及び前記外部コアの全体積よりも大きく、
前記第1の内部コアサイズ(ICS-1)及び前記第1の外部コアサイズ(OCS-1)は、前記光エレメントに沿った前記第1の端部及び前記第2の端部の間の、減少プロファイルにしたがって、前記第2の内部コアサイズ(ICS-2)及び前記第2の外部コアサイズ(OCS-2)に到達するまで、同時かつ徐々に減少し、
前記第2の内部コアサイズ(ICS-2)は光を伝播させるのに不十分な大きさとし、
前記第2の外部コアサイズ(OCS-2)は少なくとも1つの光モードを伝播させるのに十分な大きさとし、これによって、前記第1の端部から前記第2の端部に伝播する光は、前記第2の端部に近接した箇所において、前記内部バニシングコアから前記外部コアに漏えいし、前記第2の端部から前記第1の端部に伝播する光は、前記第1の端部に近接した箇所において前記外部コアから前記内部バニシングコアに移動し、
前記第1の端部に近接した箇所における前記共通の単一結合器ハウジング構造は、複数の孔を有する横方向に連続した構造の断面形態を備え、
前記複数の孔のそれぞれの孔は、前記結合器ハウジング構造と前記複数の導波路の少なくとも1つの間に前記第1の端部においてそれぞれのギャップを形成する、当該少なくとも1つの導波路を備え、
前記第2の端部に近接する箇所において、前記光結合器アレイは、前記結合器ハウジング構造と前記複数の導波路の少なくとも1つとの間に、実質的にギャップを形成しない、ことを特徴とする、マルチチャネル光結合器アレイ。」

第3 当審拒絶理由の概要

令和5年10月13日付け拒絶理由通知書で通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)のうち、理由1及び理由2の概要は次のとおりである。

理由1.(委任省令要件違反)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。

理由2.(サポート要件違反)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。

記

1 理由1(委任省令要件違反)について

本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、経済産業省令(特許法施行規則24条の2)で定めるところにより(すなわち、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することにより)、当業者が請求項1~30に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、本願は、発明の詳細な説明の記載が、請求項1~30に係る発明について、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。

2 理由2(サポート要件違反)

理由1で検討したとおり、請求項1~30に係る発明によってどのように課題が解決されたのかは不明であるから、請求項1~30に係る発明が、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているともいえる。

よって、請求項1~30に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

第4 当審の判断

1 理由1(委任省令要件違反)について

(1)委任省令要件違反の概要

後記(2)において検討するように、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、経済産業省令(特許法施行規則24条の2)で定めるところにより(すなわち、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することにより)、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、本願は、発明の詳細な説明の記載が、本願発明について、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。

(2)委任省令要件違反の詳細な説明

ア 発明の詳細な説明の記載

発明の詳細な説明には、本願発明に対応する図9に示される形態等について、次の記載がある。下線は本願発明の技術上の意義を理解するために必要な事項に特に関連する記載に対して当合議体が付したものである。

「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、導波路の断面方向の位置決めを正確に行い得るような改良を行うことが望ましい。」
「 【0012】
多くのマルチチャネル光結合器アレイにおいては、導波路の断面方向(横方向)の位置決めを改良することが望まれている。本開示において、ハウジング構造の実施形態(例えば、共通の単一結合器ハウジング構造)は、第1の端部に近接した位置において、導波路の自己配列を可能(例えば、(図8に示すように)円形のハウジング構造内に六角形状に導波路を梱包し、あるいは六角形状の内部断面を有する)とする。これによって、第2の端部において、導波路の断面方向の配列が(正確あるいはほぼ正確に)改良することができる。」
「 【0103】
図8及び図9を参照すると、マルチチャネル光結合器アレイの第1の端部に近接した部分の断面図が示されている。その断面図は、光結合器アレイの長さ方向に垂直なものである。それらの構成は、第1の端部において改良された断面、すなわち横方向の導波路の位置決め状態を示している。この位置決め状態は、第1の端部に近接した箇所での、自己配列した導波路アレンジメント(例えば、円形(図8に示す)すなわち六角形状の内部断面を有するハウジング構造における六角形状のパッケージアレンジメント)及び第2の端部において、改良された導波路の断面上の位置決め(ある場合において正確あるいはほぼ正確)状態を示している。それらの形態は、第2の端部における導波路の断面上の位置決めが所望の通りに正確に行われるように、製造過程にあるアライメントをも提供するものである。」
「 【0108】
改良された位置決め操作を行うために、実施形態は、第1の端部の近傍において図8に示すようなハウジング構造の断面形態を含むことができる。断面形態は、光結合器アレイの長さ方向に垂直である。図8に示すように、結合器アレイ800は、長さ方向において第1の端部に近接した箇所において、複数の長い導波路805を囲むようなリング状の断面形態を有するハウジング構造801を含むことができる。エアーギャップのようなギャップが、複数の導波路805をリングから分離させている。このような形態は、第1の端部の近傍において、導波路の自己配列を可能としている(例えば、円形(図8に示す)すなわち六角形状の内部断面を有するハウジング構造における六角形状のパッケージアレンジメント)。」
「 【0112】
図9は、第1の端部の近傍におけるハウジング構造の他の断面形態を示す。図9に示すように、結合器アレイ850は、複数の孔852を有する構造(例えば、連続した構造)の形態を有するハウジング構造851を有することができる。孔852の少なくとも1つは、導波路855の少なくとも1つを含む。エアーギャップのようなギャップが複数の導波路855をその周囲に存在するハウジング構造から分離することができる。図8に関連して説明したように、外部断面は、円形、楕円形、六角形、D形、四角形、矩形、五角形、八角形、その他の多角形とすることができる。これらの形態の内のいくつかは、結合器アレイの一端あるいは両端において、パッシブアライメントを可能にする。図8に示す形態は、比較的簡易な製造を可能とするが、図9に示す形態は、任意の横方向の導波路の位置決めが必要となる。」
「 【0114】
図9は、バニシングコア(VC)導波路として記載されている導波路855を有する孔852を示す。しかしながら、導波路の少なくとも1つはVC導波路であるが、1以上の孔852は非バニシングコア(非VC)導波路を含むこともできる。VC導波路あるいは非VC導波路855は、ここで説明した導波路、例えばシングルモードファイバ、マルチモードファイバ、定偏波ファイバなどを含むことができる。実施形態において、1以上の孔852は空洞とすることもできるし、例えばフィデューシャルマークとして機能する他の材料(例えば非導波路)を配設することもできる。1以上の孔852には、図9に示すように、単一の導波路855を配設する(好ましい形態)こともできるし、複数の導波路855を配設することもできる。デザインに応じて、1以上の孔852は、他の孔852と同一あるいは異なるようにし、例えば、異なる形状及び大きさ(例えば、断面形状、直径、楕円の長径/短径など)の導波路855を収容することができる。孔852の断面は円形あるいは非円形とすることができる。例えば、円形、楕円形、六角形、D形(例えば、定偏波チャネルのパッシブ軸アライメントを提供する)、四角形、矩形、五角形、八角形、その他の多角形とすることができる。図示するように、多くの場合、第1の端部に近接した箇所における孔852の断面は、導波路855の断面よりも大きく、このため、結合器ハウジング構造851の内部表面851aと導波路855との間にはギャップが形成される。」
「 【0116】
実施形態において、図8及び図9に示す形態は、例えば第2の端部における導波路の断面(横方向)の位置決めを向上させたデバイスの改良された製造を可能とするものである。横方向位置は、例えばx及び/又はyで確定される。一方、z方向は、結合器アレイの長さ方向(例えば、第1の端部から第2の端部)に沿うものである。種々の製造アプローチにおいて、導波路(例えば、図8における805及び図9における855)及び結合器ハウジング構造(例えば、図8における801あるいは図9における851)を備えるアセンブリは、加熱及び引抜加工されて、図3Aから図3Lに示すような横方向断面を呈する第2の端部を形成する。図8を参照すると、導波路805は、リングの形態(例えば、xy平面において、光結合器アレイの長さ方向に垂直な断面において)を有する結合器ハウジング構造801内に挿入することができる。上述したように、エアーギャップのようなギャップが、光ハウジング構造801及び導波路805間に形成され、導波路が、結合器ハウジング構造801に関して横方向(x及び/又はy方向)に動けるようにしている。図9を参照すると、1以上の導波路855は、複数の孔852を有する結合器ハウジング構造851内に挿入することができる(例えば、xy平面において、光結合器アレイの長さ方向に垂直な断面において見られるように)。ここで、導波路855は、ハウジング構造851内にパッシブアライメントすることができる。エアーギャップのようなギャップが、光ハウジング構造851及び導波路855間に形成され、導波路が、結合器ハウジング構造851に関して横方向(x及び/又はy方向)に動けるようにしている。密な導波路パッケージアレンジメント(例えば六角形)の場合、このような動きが、製造後の第2の端部における断面内の位置決めをより正確に行う。
【0117】
図1Aを参照すると、結合器アレイは、内部コア20A及び外部コア22Aを有する少なくとも1つのVC導波路30Aを備える複数の長い導波路30A,32A-1,32A-2を含むことができる。内部コア20A,外部コア22A、及び複数の導波路30A,32A-1,32A-2間の隙間は、第1の端部(位置Bに近接した部分)から第2の端部(位置C及びDに近接した部分)まで、その径を減少(ある場合において、同時かつ徐々に)させる、例えば、S-1からS-2に減少させることができる。種々の実施形態において、第1の端部(位置Bに近接した部分)における断面形態は、図8あるいは図9に示す。一方、第2の端部(位置C及びDに近接した部分)は、図3Aから図3L及び図7に示すことができる。実施形態において、第2の端部に近接した部分では、結合器ハウジング構造と導波路との間にギャップを実質的に形成しない。ギャップは、ハウジング材で充填及び導波路クラッド材で充填する。第1の端部での上述した断面形態の結果として、第2の端部における断面方向すなわち横方向の位置決めを改良することができる。したがって、第2の端部における導波路は、光デバイスに対して、横方向(例えば、x及び/又はy方向)において適切に配列される。」
「【図8】
[図:0001412623000001.jpg]
」
「【図9】
[図:0001412623000002.jpg]
」

イ 判断

(ア)前記経済産業省令で定められる「当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」としては、請求項に係る発明が解決しようとする技術上の課題が少なくとも一つ記載されていることが通常求められるとともに、請求項に係る発明によってどのように課題が解決されたかについて記載されていることが通常求められる。しかるに、前記アのとおり、本願の明細書の発明の詳細な説明には、本願発明の解決しようとする課題として「導波路の断面方向の位置決めを正確に行い得るような改良を行うことが望ましい」(【0008】)こと(以下「本件課題」という。)が記載されており、課題を解決するための手段として、(i)図8のように、ハウジング構造の実施形態は、共通の単一結合ハウジング構造の第1の端部に近接した位置において、導波路の自己配列を可能とすることによって、当該結合ハウジング構造の第2の端部において、導波路の断面方向の配列が(正確あるいはほぼ正確に)改良することができること(【0012】・【0103】・【0108】・【0116】)、(ii)図9のように、結合ハウジング構造851の第1の端部に近接した箇所における孔852の断面は、導波路855の断面よりも大きく、このため、結合器ハウジング構造851の内部表面851aと導波路855との間にはギャップが形成され、導波路が、結合器ハウジング構造851に関して横方向(x及び/又はy方向)に動けるようにすること(【0112】・【0114】・【0116】)、(iii)第2の端部に近接した部分では、結合器ハウジング構造と導波路との間にギャップを実質的に形成せず、第1の端部での上述した断面形態の結果として、第2の端部における断面方向すなわち横方向の位置決めを改良できること(【0117】)が記載されている。そして、本願発明には、上記の本件課題を解決するための手段に関連して、「前記複数の孔のそれぞれの孔は、前記結合器ハウジング構造と前記複数の導波路の少なくとも1つの間に前記第1の端部においてそれぞれのギャップを形成する」構成(以下「第1端部ギャップ形成構成」という。)とともに「前記第2の端部に近接する箇所において、前記光結合器アレイは、前記結合器ハウジング構造と前記複数の導波路の少なくとも1つとの間に、実質的にギャップを形成しない」構成(以下「第2端部ギャップ非形成構成」という。)が特定されている。

(イ)前記(ア)のとおり、発明の詳細な説明には、本件課題並びに本件課題を解決する手段としての第1端部ギャップ形成構成及び第2端部ギャップ非形成構成が記載されているものの、以下のとおり、当業者は、発明の詳細な説明の記載及び技術常識に基づいては、第1端部ギャップ形成構成及び第2端部ギャップ非形成構成によって、本件課題を解決できたと理解できるとはいえず、また、他にどのような課題を解決できたのか理解できるともいえないことから、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載したものとはいえない。

すなわち、本件課題は、導波路の断面方向の位置決めを正確に行い得るような改良を行うことであるところ、ここでの「導波路の断面方向の位置決め」における位置決めがされる箇所は、前記(ア)で本件課題を解決するための手段について、(i)~(iii)で説示したことに照らせば、(当該結合ハウジング構造の)第2の端部であると解される。しかるところ、第1端部ギャップ形成構成では、導波路が結合器ハウジング構造に関して第1の端部で横方向に動けることは当然に理解できるものの、導波路が第1の端部で横方向に動けることが、なぜ第2の端部における導波路の断面方向(横方向)の位置決めを改良することに寄与するのかは、直ちに理解できるとはいえないのであり、このことは、第1の端部と第2の端部が共通の単一結合ハウジング構造において相当に離隔していることからみて明らかである。しかも、本件課題を解決する手段には、前記のとおり、第2端部ギャップ非形成構成も含まれることから、第2の端部では導波路は横方向に動くことができないのであり、そうである以上、第1端部ギャップ形成構成、つまり、導波路が第1の端部で横方向に動けることは、第2の端部における導波路の断面方向(横方向)の位置決めの改良には寄与しないと言わざるを得ない。このように、発明の詳細な説明の記載及び技術常識に基づいては、当業者は、第1端部ギャップ形成構成及び第2端部ギャップ非形成構成によって、第2の端部における導波路の断面方向の位置決めという本件課題を解決できたと理解できるとはいえない。

そして、発明の詳細な説明の他の記載を参酌しても、当業者は、第1端部ギャップ形成構成及び第2端部ギャップ非形成構成によって、他にどのような課題を解決できたのかを理解できるとはいえない。

(ウ)これに対し、請求人は、結合器ハウジング構造と少なくとも1つの導波路との間にそれぞれ設けられたそれぞれのギャップは、製造前に、結合器ハウジング構造の(例えば、第1の端部から第2の端部に延在するように)孔全体に存在し、セルフ又はパッシブアライメントを提供するものであること、製造(融着)後、ギャップは、第1の端部に残るが、第2の端部には残らないものであること、ギャップは、横方向の動きと、その結果として生じる第2の端部におけるパッシブ又はセルフアライメントを提供するものであることを主張する。

しかしながら、そもそも、製造前にギャップが結合器ハウジング構造の孔全体に存在することや、そのような製造前の結合器ハウジング構造を用いて製造した結果、ギャップが第1の端部に残る一方、第2の端部に残らないことは、時系列的な概念に係るものであることから、物の発明である本願発明においては特定されていない。そうすると、請求人の主張は本願発明の特定事項に基づくものではない。

また、セルフアライメントを提供することは、上記(ア)で説示した(i)の導波路の自己配列を可能にすることに対応するものと解されるが、導波路の自己配列を可能にするためには図8のように1つの孔に複数の導波路を備えることを要するところ、本願発明においては1つの孔に複数の導波路を備えることは特定されていないから、セルフアライメントを提供するとの請求人の主張も本願発明の特定事項に基づくものではない。

さらに第2の端部におけるパッシブアライメントを提供する点について検討すると、製造前に孔全体にギャップが存在することは発明の詳細な説明には明記されてはいないし、仮に、製造前に孔全体にギャップが存在し、第2の端部においてパッシブアラインメントを行うということであるとしても、第2の端部において具体的にどのようにパッシブアラインメントを行えばよいのかは発明の詳細な説明に記載されていない。また、それをさておき、第2の端部においてパッシブアラインメントを行うことが可能となる余地があるとしても、製造(融着)後の時点において第2端部ギャップ非形成構成を採用する以上、その時点で第1端部にあえてギャップを残す必要はないように考えられ(第2の端部でパッシブアライメントを行った後であれば、製造(融着)後に第1端部にギャップをなくすようにしても、第2の端部におけるパッシブアライメントに影響はない)、その意味からも、発明の詳細な説明の記載からは第1端部ギャップ形成構成と第2の端部におけるパッシブアライメントを提供することの技術的な関連を読み取ることができず、第1端部ギャップ形成構成を採用する技術上の意義は依然として理解できない。そして、他の発明の詳細な説明の記載をみても上記の説示を左右するものはない。そうすると、請求人の主張は、発明の詳細な説明の記載に基づくものでもない。

したがって、請求人の主張は採用できない。

(エ)以上のとおり、当業者は、発明の詳細な説明の記載及び技術常識に基づいては、第1端部ギャップ形成構成及び第2端部ギャップ非形成構成によって、本件課題を解決できたと理解できるとはいえず、また、他にどのような課題を解決できたのか理解できるともいえないことから、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載したものとはいえない。

(3)小括

よって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することにより、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。

2 理由2(サポート要件違反)について

(1)サポート要件違反の説明

理由1で検討したとおり、本願発明によってどのように本件課題が解決されたのかは不明であるから、本願発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲内のものともいえない。

これに対し、請求人は、本願発明の特徴は、発明の詳細な説明の【0116】のように、第2の端部においてパッシブアライメントを提供する旨を主張するが、前記1(2)で検討したとおり、パッシブアライメントを行うためには製造前にギャップが孔全体に存在することが必要であるところ、製造前にギャップが孔全体に存在することは、物の発明である本願発明では特定されていない。

したがって、請求人の主張は本願発明の構成に基づくものではないから、採用できない。

(2)小括

よって、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

3 当審の判断のまとめ

以上検討のとおり、本願は、特許法36条4項1号及び6項1号に規定する要件を満たしていない。

第5 むすび

以上のとおり、本願は、特許法36条4項1号及び6項1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2022-013325

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ論点・分野の審決(審決分類)900件(536・G02B、537・G02B)
  • 2025-011564拒絶査定不服審判 / 2026-06-23 / 原査定取消(特許/登録すべき)反射防止フィルム
    共通の審決分類: 536・G02B、537・G02B
  • 2024-006919拒絶査定不服審判 / 2026-03-26 / 請求不成立ばね部材用金属箔、ばね部材用金属箔の製造方法、および、電子機器用ばね部材の製造方…
    共通の審決分類: 536・G02B、537・G02B
  • 2024-006934拒絶査定不服審判 / 2026-03-26 / 請求不成立ばね部材用金属箔、ばね部材用金属箔の製造方法、および、電子機器用ばね部材の製造方…
    共通の審決分類: 536・G02B、537・G02B
  • 2024-020062拒絶査定不服審判 / 2026-03-23 / 原査定取消(特許/登録すべき)真空回折格子および製造方法
    共通の審決分類: 536・G02B、537・G02B
  • 2024-012394拒絶査定不服審判 / 2025-11-28 / 原査定取消(特許/登録すべき)成形された光学フィルム
    共通の審決分類: 536・G02B、537・G02B

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存