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特許拒絶査定不服審判

2022-013175

抗酸化ストレス剤、化粧品、および医薬品

審判番号
2022-013175
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-007954外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年08月23日
審決日
2024年01月09日
公報発行日
2024年03月29日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (A61K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020- 7954「抗酸化ストレス剤、化粧品、および医薬品」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 8月10日出願公開、特開2021-116228〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

第1 手続の経緯

本願は、令和2年1月22日の出願であって、令和3年11月12日付けで拒絶理由が通知され、令和4年1月13日に意見書および手続補正書が提出され、同年5月19日付けで拒絶査定され、同年8月23日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 令和4年8月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和4年8月23日にされた手続補正を却下する。

[理由]

1 本件補正について

(1)令和4年8月23日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、本件補正による記載の変更箇所である。)

「 【請求項1】
酸化ストレスを与えた後に投与することを特徴とする間葉系幹細胞由来のExosomeを含む抗酸化ストレス剤。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載

本件補正前の、令和4年1月13日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。(下線部は、本件補正により記載が変更された箇所である。)

「 【請求項1】
酸化ストレスを与えた後に投与可能であることを特徴とする間葉系幹細胞由来のExosomeを含む抗酸化ストレス剤。」

(3)本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「間葉系幹細胞由来のExosomeを含む抗酸化ストレス剤」について、その投与タイミングを、酸化ストレスを与えた後に「投与する」ことに限定したものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(いわゆる「独立特許要件」))について、以下、検討する。

2 本願補正発明の独立特許要件の判断

(1)本願補正発明

本願補正発明は、上記1(1)に摘記した本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項等

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ア 引用文献1及びその記載事項

原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1の韓国公開特許第10-2019-0069301号公報には、次の記載がある。

なお、引用文献1は韓国語で記載されているため、当審合議体による訳文にて摘記する。また、「・・・」は摘記の省略を示す。

(ア)「請求範囲
請求項1
幹細胞由来のエクソソームを有効成分として含む、敏感性皮膚の予防、抑制、緩和又は改善用組成物。
請求項2
第1項において、
上記幹細胞由来のエクソソームが皮膚で酸化ストレスを減少させる、敏感性皮膚の予防、抑制、緩和又は改善用組成物。」
(イ)「技術分野
[0001] 本発明は、幹細胞由来のエクソソームを有効成分として含む新しい敏感性皮膚の予防、抑制、緩和又は改善用組成物に関するものである。
[0002] また、本発明は、上記組成物を含む敏感性皮膚の予防、抑制、緩和又は改善用機能性化粧料組成物及び皮膚外用剤に関するものである。
背景技術
続きを表示(全14行)
[0003] 外部成分や環境変化などに過敏な反応を示す皮膚を敏感性皮膚という。一般的に、敏感性皮膚とは大部分の人々には問題にならない物質に特異的に反応して皮膚トラブルを起こしやすい皮膚、皮膚障壁機能が低下していてアレルギー性物質や刺激性物質に体質的に敏感な皮膚、睡眠不足、過労、生理、季節の変り目、精神的なストレスなどによって皮膚本来の抵抗力又は皮膚の生理機能が弱くなるときに、刺激物質に対して一時的に皮膚トラブルが起きやすい皮膚などを意味する。場合によっては敏感性皮膚を平均的集団に比べて接触性刺激やアレルギー反応をさらによく示す皮膚と定義することもある。
[0004] 皮膚状態が敏感になる要因としては、皮膚障壁機能の低下、皮膚刺激臨界値の低下、皮膚の乾燥、物理化学的刺激、ストレス、体調、季節変化、紫外線、生理などを挙げることができる。また、誤った皮膚管理によって皮膚を敏感にさせるか、心理的不安により皮膚を敏感にさせる場合もある。
[0005] 一般的に敏感性皮膚保有者は、紅斑、皮膚乾燥、肌荒れ、暖かさ、痒みなどを訴える。敏感性皮膚の改善のための皮膚用化粧品は、刺激を起こす余地がある物質を前もって除去して副作用を最小化している。より積極的な方法として最近開発された機能性化粧品や医薬部外品は、サイトカイン及び炎症媒介物質の発現抑制、皮膚障壁強化機能などを通じて敏感性皮膚を改善している。
[0006] しかしながら、サイトカインの調節及び炎症媒介分子の発現抑制のために効果的な非ステロイド系抗癌剤、ステロイド系抗癌剤、神経ペプチド拮抗剤、COX抑制剤等は、副作用が深刻で、化粧料に配合する場合、安定性側面で問題がある。このような問題点を勘案して天然物を原料にする敏感性皮膚改善用の皮膚外用剤や化粧料組成物に対する研究が活発である。例えば、スイカ内皮抽出物、インド乳香レジン抽出物、ラベンダー抽出物、黒豆抽出物、ヒジキ抽出物などを使用して敏感性皮膚を改善しようとする努力がある。
[0007] しかし、このような天然物を原料とする敏感性皮膚改善用化粧品の場合、天然抽出物内の有効成分含量が少ない関係で、敏感性皮膚の実質的な改善のためには多くの量の使用が必要であり、これらの大部分は、天然物素材という点をマーケティングに活用しているだけで、敏感性皮膚改善の実質的効能に対しては科学的研究がさらに必要な状況である。
[0008] 一方、最近、細胞分泌物(secretome)に細胞の行動(behavior)を調節する多様な生体活性因子が含まれているという研究が報告されており、特に細胞分泌物内には細胞の間信号伝達機能を有する‘エクソソーム(exosome)’が含まれていて、その成分と機能に対する研究が活発に進行中である。
[0009] 細胞は、細胞の外環境に多様な膜(membrane)類型の小胞体を放出するが、通常このような放出小胞体を細胞の外小胞体(Extracellular vesicles、EV)と呼んでいる。細胞の外小胞体は、細胞膜由来小胞体、エクトソーム(ectosomes)、シェディング小胞体(shedding vesicles)、マイクロパーティクル(microparticles)、エクソソームなどと呼ばれ、場合によってはエクソソームとは区別されて使われたりする。
[0010] エクソソームは、細胞膜の構造と等しい二重リン脂質膜からなる数十ないし数百ナノメートルサイズの小胞体として内部にエクソソームカーゴ(cargo)と呼ばれるタンパク質、核酸(mRNA、miRNAなど)などが含まれている。エクソソームカーゴには、広範囲な信号伝達要素(signaling factors)が含まれ、これら信号伝達要素は細胞タイプに特異的で分泌細胞の環境によって相違するように調節されることが知られている。エクソソームは、細胞が分泌する細胞の間信号伝達媒介体としてこれを通じて伝達された多様な細胞信号は標的細胞の活性化、成長、移動、分化、脱分化、死滅(apoptosis)、壊死(necrosis)を含んだ細胞行動を調節することが知られている。エクソソームは、由来した細胞の性質及び状態によって特異的な誘電物質と生体活性因子が含まれている。増殖する幹細胞由来エクソソームの場合、細胞の移動、増殖及び分化のような細胞行動を調節して、組織再生と関わる幹細胞の特性が反映されている(Nature Review Immunology 2002(2) 569-579)。
[0011] しかしながら、エクソソームを利用した特定疾患の治療に対する可能性の提示など多様な研究が行われているにもかかわらず、エクソソームを安定的に維持・保管することができる新しい剤形開発と、エクソソームの使用便宜性及び効能増大などのための多様な医療あるいは美容技術との繋がりは、相対的に注目されていない。
[0012] 本発明者らは、人体に副作用がなく、化粧料配合時安定性問題を解決することができる、新しい敏感性皮膚改善物質を開発しようと努力した。よって、本発明者らは、幹細胞に由来するエクソソームが敏感性皮膚の予防、抑制、緩和または改善に効果的であることを確認し、本発明を完成した。」
(ウ)「解決しようとする課題
[0015] 本発明の目的は、幹細胞由来のエクソソームを有効成分として含む、新しい敏感性皮膚の予防、抑制、緩和又は改善用組成物を提供することにある。
[0016] また、本発明の目的は、前記組成物を含む敏感性皮膚の予防、抑制、緩和または改善用機能性化粧料組成物及び皮膚外用剤を提供することにある。
・・・
課題の解決手段
[0019] 上記のような目的を達成するために、本発明は、幹細胞由来のエクソソームを有効成分として含む、敏感性皮膚の予防、抑制、緩和又は改善用組成物を提供する。
・・・
[0021] 一方、本明細書で使用された“エクソソーム”という用語は、幹細胞から分泌され、細胞の外空間に放出されたナノサイズのベシクル構造を有しており、エクソソームと類似する組成を有するベシクル(例えば、エクソソーム-類似ベシクル)を全て含むことを意味する。上記幹細胞の種類は制限されないが、本発明を限定しない一つの例示として、望ましくは間葉系幹細胞、例えば、脂肪、骨髄、臍帯又は臍帯血由来の幹細胞であることができ、より望ましくは、脂肪由来幹細胞であることができる。上記脂肪由来幹細胞の種類は、病原体による感染の危険がなく、免疫拒否反応を起こさないならば、制限されないが、望ましくはヒト脂肪由来幹細胞であることができる。」
(エ)「発明の効果
[0057] 本発明の敏感性皮膚の予防、抑制、緩和又は改善用組成物は、敏感性皮膚関連サイトカインの発現又は生成を減少させ、酸化ストレスを予防または抑制し、敏感性皮膚を効果的に予防、抑制、緩和又は改善することができる。また、本発明の敏感性皮膚の予防、抑制、緩和又は改善用組成物を人の皮膚に直接適用した場合、敏感性皮膚と関わる皮膚トラブル、紅潮症状及び紅斑などを著しく緩和あるいは改善させることができる。
[0058] よって、本発明の敏感性皮膚の予防、抑制、緩和又は改善用組成物は、敏感性皮膚の予防、抑制、緩和又は改善用皮膚外用剤及び機能性化粧料組成物として有用に使われることができる。」
(オ)「0065] 実施例1: 細胞の培養
・・・
[0067] ヒト皮膚線維芽細胞(human dermal fibroblast)であるHS68細胞は、ATCCから購入し、10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum:ThermoFisher Scientificで購入)及び1%抗生剤-抗真菌剤(antibiotics-antimycotics:ThermoFisher Scientificから購入)が含有されたDMEM(ThermoFisher Scientificで購入)培地で、5%CO2、37℃の条件で継代培養した。
[0068] 当該発明が属する技術分野に知られた細胞培養方法によって、5%CO2、37℃の条件で脂肪由来幹細胞を培養した。その後、リン酸塩緩衝液(phosphate-buffered saline)(ThermoFisher Scientificから購入)で洗浄後、無血清、無フェノールレッド培地と入れ替えて、1日ないし10日間培養し、その上清液(以下、培養液)を回収した。
続きを表示(全15行)
[0069] エクソソームの分離過程で粒径分布が均一で純度が高いエクソソームを取得するために、培養液にトレハロースを2重量%添加した。トレハロースを添加した後、培養液を0.22μmフィルターで濾過して細胞残骸物、老廃物及び巨大粒子などの不純物を除去した。濾過された培養液は直ちに分離過程を通じてエクソソームを分離した。また、濾過された培養液は冷蔵庫(零度以上10℃以下)で保管した後、エクソソーム分離に使用した。また、濾過された培養液は-60℃以下の超低温冷凍庫で凍結保管してから解凍させた後、エクソソーム分離を実行した。以後、培養液から接線流濾過装置(Tangential Flow Filtration;TFF)を用いてエクソソームを分離した。
[0071] 実施例2: TFF方法によるエクソソームの分離及び錠剤
[0072] 実施例1から0.22μmフィルターに濾過された培養液からエクソソームを分離、濃縮、脱塩とバッファー交換(diafiltration)のためにTFF(Tangential Flow Filtration)方法を用いた。TFF方法のためのフィルターではカートリッジフィルター(cartridge filter、別名hollow fiber filter;GE Healthcareから購入)又はカセットフィルター(cassette filter;Pall又はSartorius又はMerck Milliporeから購入)を用いた。TFFフィルターは多様な分子量遮断(molecular weight cutoff;MWCO)によって選択されうる。選択されたMWCOによって選別的にエクソソームを分離、濃縮し、MWCOより小さな粒子やタンパク質、地質、核酸、低分子化合物などは除去した。
[0073] エクソソームを分離、濃縮するために、MWCO100,000Da(Dalton)、300,000Da、または500,000DaのTFFフィルターを使用した。 培養液をTFF方法を利用して1/100ないし1/25程度の体積になるまで濃縮しながら、MWCOより小さな物質は除去してエクソソームを分離した。
[0074] 分離、濃縮されたエクソソーム溶液は、TFF方法を利用して追加で脱塩とバッファー交換(diafiltration)を実行した。
・・・
[0108] 実施例8: 過酸化水素による酸化ストレスの予防効果
[0109] ヒト皮膚線維芽細胞であるHDF細胞を12ウェルプレート(12-well plate)の各ウェルに6.5×104細胞の密度で分注した。無血清培地に希釈した本発明の1具体例のエクソソーム(実施例2で準備されたエクソソーム)を濃度別に処理して22時間の間培養した。その後、1mMの過酸化水素(Sigmaから購入)を追加処理して2時間の間培養した。
[0110] 本発明の1具体例のエクソソームが過酸化水素によって誘導された酸化ストレスによる細胞死滅を防止することができるか確認するために、フローサイトメーター(flow cytometer)を利用して次のようにHDF細胞生残率を測定した。先に培養培地を除去してDPBS(Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline)(Gibcoから購入)1mLで洗浄した後、トリプシン/EDTA(Gibcoから購入)150μLを入れて37℃、5%CO2培養基で4分間静置した。以後培養培地450μLを入れて細胞を懸濁させた後、1,500rpmで3分間遠心分離した。上清液を除去してDPBS500μLで2回洗浄した後、1XアネキシンVバインディングバッファー(annexin V binding buffer)(BDから購入)25μLを利用して細胞を懸濁した。懸濁された細胞サンプルあたり25μLの1XアネキシンVバインディングバッファー、FITCアネキシンV(BDから購入)及びPI染色溶液(Propidium Iodide staining solution)(BDから購入)混合液を入れて室温で15分間、暗反応した。サンプルあたり1XアネキシンVバインディングバッファー150μLを入れてフローサイトメーター(NovoCyte)で細胞死滅の程度を測定した。
[0111] その結果、本発明の1具体例のエクソソーム共に処理された群で過酸化水素によって誘導された酸化ストレスによる細胞死滅が著しく減少することを確認した(図14及び図15)。このような実験結果は、本発明の1具体例のエクソソームを含む組成物が抗酸化ストレス効果があり、酸化ストレスによって発生する敏感性皮膚を抑制、緩和あるいは改善することができることを強力に示唆する。
[0112] よって、本発明の1具体例のエクソソームを有効成分で含む組成物は酸化ストレスを予防あるいは抑制する効果があることが分かり、敏感性皮膚の予防、抑制、緩和又は改善において優れた効果を示すといえる。」
(カ)「図14
[図:0001407185000001.jpg]
図15
[図:0001407185000002.jpg]
」

イ 引用文献1に記載された発明

引用文献1は、幹細胞由来のエクソソームを有効成分として含む、新しい敏感性皮膚の予防、抑制、緩和又は改善用組成物に関する文献であり(摘記(イ))、摘記(ア)には、請求項1を引用する請求項2に係る発明として、幹細胞由来のエクソソームを有効成分として含み、該幹細胞由来のエクソソームが皮膚で酸化ストレスを減少させる、敏感性皮膚の予防、抑制、緩和又は改善用組成物の発明が記載され、摘記(オ)に記載されるとおり、対応する具体例によって、エクソソームが過酸化水素によって誘導された酸化ストレスによる細胞死滅を防止することができるか確認するために、HDF細胞生残率を測定し、その結果として、エクソソーム共に処理された群で過酸化水素によって誘導された酸化ストレスによる細胞死滅が著しく減少することを確認し(図14及び図15)(摘記(カ))、1具体例のエクソソームを含む組成物が抗酸化ストレス効果があり、酸化ストレスによって発生する敏感性皮膚を抑制、緩和あるいは改善することができることが示されている。

そうすると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「幹細胞由来のエクソソームを有効成分として含み、該幹細胞由来のエクソソームが皮膚で酸化ストレスを減少させる、敏感性皮膚の予防、抑制、緩和又は改善用組成物。」

(3)本願補正発明と引用発明との対比・判断

ア 本願補正発明と引用発明とを対比する(下線は、当審合議体にて追加。)。

まず、引用発明の「幹細胞由来のエクソソーム」は、本願補正発明の「間葉系幹細胞由来のExosome」と、「幹細胞由来のExosome」である限りにおいて共通している。

また、引用発明の「皮膚で酸化ストレスを減少させる、敏感性皮膚の予防、抑制、緩和又は改善用組成物」は、本願補正発明の「酸化ストレスを与えた後に投与する」「抗酸化ストレス剤」と、「抗酸化ストレス剤」である限りにおいて共通している。

イ したがって、本願補正発明と引用発明とは、

「幹細胞由来のExosomeを含む抗酸化ストレス剤。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:

Exosomeが由来する幹細胞の種類について、本願補正発明が、「間葉系幹細胞」と特定しているのに対して、引用発明においては、特定していない点。

相違点2:

抗酸化ストレス剤について、本願補正発明が、「酸化ストレスを与えた後に投与する」と特定しているのに対して、引用発明においては、「皮膚で酸化ストレスを減少させる、敏感性皮膚の予防、抑制、緩和又は改善用」と特定している点。

ウ 相違点の判断

(ア)相違点1の判断

まず、相違点1について検討する。

引用文献1には、摘記(ウ)に、「[0021]一方、本明細書で使用された“エクソソーム”という用語は、幹細胞から分泌され、細胞の外空間に放出されたナノサイズのベシクル構造を有しており、エクソソームと類似する組成を有するベシクル(例えば、エクソソーム-類似ベシクル)を全て含むことを意味する。上記幹細胞の種類は制限されないが、本発明を限定しない一つの例示として、望ましくは間葉系幹細胞、例えば、脂肪、骨髄、臍帯又は臍帯血由来の幹細胞であることができ、より望ましくは、脂肪由来幹細胞であることができる。上記脂肪由来の幹細胞の種類は、病原体による感染の危険がなく、免疫拒否反応を起こさないならば、制限されないが、望ましくはヒト脂肪由来の幹細胞であることができる。」(下線は、当審合議体が追加した。)と記載され、幹細胞としては本願発明と同じ間葉系幹細胞が望ましいことが記載され、本願明細書の実施例(【0035】参照)で具体的に使用されている、ヒト脂肪由来間葉系幹細胞がさらに望ましいことも示されているのであるから、引用発明において、幹細胞として、望ましいとされる間葉幹細胞を使用して、相違点1の構成をなすことは当業者が容易になし得た技術的事項である。

(イ)相違点2の判断

次に、相違点2について検討する。

本願補正発明において、「酸化ストレスを与えた後に投与する」との特定事項の技術的意味は、本願明細書において、

「【0021】
本発明においては、例えば、皮膚線維芽細胞に対して間葉系幹細胞由来Exosomeを添加することが好ましいが、皮膚繊維芽細胞に間葉系幹細胞由来のExosomeを添加するタイミングは、酸化ストレスを加える前であっても後であってもよい。即ち、本発明の抗酸化ストレス剤は、酸化ストレスに対する予防効果及び酸化ストレスを受けた後の治療・回復効果を有する。換言すると、本発明の抗酸化ストレス剤は、酸化ストレスに由来する活性酸素種(ROS)の産生及び細胞老化促進機構に対する予防または治療効果を有する。
また、本発明の抗酸化ストレス剤は、肌細胞の保湿効果や抗加齢作用効果を有する。」

と記載されるように、Exosomeを添加するタイミングに関するものであって、酸化ストレスを加える前であっても後であってもよいところ、酸化ストレスを与えた後に投与するということは、酸化ストレスを受けた後の治療・回復効果を目的としているものと理解できる。

したがって、引用発明の抗酸化ストレス剤においても、「酸化ストレスを減少させる、敏感性皮膚の予防、抑制、緩和又は改善用」と特定され、酸化ストレスを減少させ、緩和又は改善することも選択肢として特定されているのであるから、酸化ストレスを受けた後の治療・回復効果をも目的としていることが理解できる。

そうすると、本願発明もExosomeを添加するタイミングを単に酸化ストレスを与えた後に特定しただけであることを考慮すると、相違点2は、実質的な相違点であるとはいえない。

また、仮に実質的な相違点であるとしても、酸化ストレスを減少させる、敏感性皮膚の予防、抑制、緩和又は改善用である引用発明において、酸化ストレスを受けた後の治療・回復効果を目的として、「酸化ストレスを与えた後に投与する」とExosomeを添加するタイミングを特定することは、治療・回復効果を目的とする場合、酸化ストレスを受けた後であるのは当然であるから、当業者が容易になし得た技術的事項である。

審判請求人は、審判請求書4頁4行~5頁1行において、実施例8を含めて引用文献1に酸化ストレスを与えた後にExosomeを投与する記載がないことを指摘し、酸化ストレスを与える前にExosomeを加えた場合は、酸化ストレスを与えた後に効果が得られても予防効果であって、治療効果ではない旨を主張している。

しかしながら、引用発明は、酸化ストレスを減少させる、敏感性皮膚の予防、抑制、緩和又は改善用であり、引用文献1の具体的実験結果において、引用文献1の発明の1具体例のエクソソームを含む組成物が抗酸化ストレス効果があり、酸化ストレスによって発生する敏感性皮膚を抑制、緩和あるいは改善することができることを強力に示唆すること、引用文献1の発明の1具体例のエクソソームを有効成分で含む組成物は酸化ストレスを予防あるいは抑制する効果があることが分かり、敏感性皮膚の予防、抑制、緩和又は改善において優れた効果を示すといえることが記載されているのであるから、引用発明は、敏感性皮膚の予防、抑制だけでなく、緩和又は改善という治療・回復を目的としたものである。

そして、引用文献1の図14及び図15を含めた実施例において(摘記(オ)及び摘記(カ))、過酸化水素によって誘導された酸化ストレスによる細胞死滅が著しく減少することを確認するための実験手順としては、ヒト皮膚線維芽細胞であるHDF細胞を各ウェルに分注し、無血清培地に希釈した1具体例のエクソソームを濃度別に処理して22時間の間培養し、以後1mMの過酸化水素を追加処理して2時間の間培養したとの例が示されているものの、引用発明が予防効果も含めて緩和または改善という治療・回復を目的としたものであれば、実際の使用においては、Exosomeを投与するタイミングは、酸化ストレスが与えられて緩和または改善という治療・回復が必要になった後であることは自明の事項である。

さらに、本願明細書においても、酸化ストレスを与える処理とExosome処理の順序を変えた試験は行われているものの、酸化ストレスを与える処理を行った後の状態を確認した上で、Exosome処理が行われているわけでもなく、「Exosomeを添加するタイミングは、酸化ストレスを加える前であっても後であってもよい。即ち、本発明の抗酸化ストレス剤は、酸化ストレスに対する予防効果及び酸化ストレスを受けた後の治療・回復効果を有する」との【0021】の記載からみて、治療・回復との意味は、Exosomeを投与するタイミングが酸化ストレスの後ということにすぎないといえる。

したがって、引用文献1には、酸化ストレスが与えられた後の緩和または改善という治療・回復に関する事項も記載されており、酸化ストレスを与える前にExosomeを加えた実験例の記載を指摘し、酸化ストレスを与えた後に効果が得られても予防効果しか示さず、治療効果ではないという趣旨の審判請求人の上記主張は採用できない。

(ウ)本願補正発明の効果について

本願明細書の実施例によって、過酸化水素による酸化ストレスを与える前でも後でも間葉系幹細胞由来のExosomeを添加することで、酸化ストレスに対する抑制又は回復の効果があったことが示されているが、引用文献1には、摘記(エ)に「酸化ストレスを予防または抑制し、敏感性皮膚を効果的に予防、抑制、緩和又は改善することができる。また、本発明の敏感性皮膚の予防、抑制、緩和又は改善用組成物を人の皮膚に直接適用した場合、敏感性皮膚と関わる皮膚トラブル、紅潮症状及び紅斑などを著しく緩和あるいは改善させることができる。」との効果の記載と共に、上述のとおり、[0111]及び[0112]に、

「本発明の1具体例のエクソソーム共に処理された群で過酸化水素によって誘導された酸化ストレスによる細胞死滅が著しく減少することを確認した(図14及び図15)。このような実験結果は、本発明の1具体例のエクソソームを含む組成物が抗酸化ストレス効果があり、酸化ストレスによって発生する敏感性皮膚を抑制、緩和あるいは改善することができることを強力に示唆する。・・・よって、本発明の1具体例のエクソソームを有効成分で含む組成物は酸化ストレスを予防あるいは抑制する効果があることが分かり、敏感性皮膚の予防、抑制、緩和又は改善において優れた効果を示すといえる。」

と記載されるように、酸化ストレスに対する抑制(予防、抑制)又は回復(緩和または改善)の効果も示されているといえるので、本願補正発明の上記効果は、本願出願時の技術常識も考慮すると、予測できない、かつ顕著なものとはいえない。

エ したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用文献1に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正の却下の決定のむすび

よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明

令和4年8月23日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~6に係る発明は、令和4年1月13日にされた手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められ、その請求項1に係る発明は、前記第2の[理由]1(2)に摘記した、次のとおりのものである。

「酸化ストレスを与えた後に投与可能であることを特徴とする間葉系幹細胞由来のExosomeを含む抗酸化ストレス剤。」(以下「本願発明」という。)

第4 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由の一つは、次のとおりのものと認める。

この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

記

引用文献1 韓国公開特許第10-2019-0069301号公報

第5 当審合議体の判断

当審合議体は、原査定の拒絶の理由のとおり、本願発明は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、原査定の拒絶の理由で引用されたものと同じ引用文献1に記載された発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、進歩性を欠如しており、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、と判断する。

理由は以下のとおりである。

1 引用文献及び引用発明

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び同文献に記載された発明(「引用発明」)は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

2 対比・判断

本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本願補正発明から、抗酸化ストレス剤について「酸化ストレスを与えた後に投与可能である」として、投与時期の可能性の一例のみを示し、投与時期を特定しないものから、酸化ストレスを与えた後に投与する場合に範囲を限定する特定事項を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て備え、さらに投与時期を限定したものに相当する本願補正発明が、前記第2の[理由]2(2)、(3)に記載したとおり、引用文献1に記載された発明及び引用文献1に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、引用文献1に記載された発明及び引用文献1に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたものである。

3 小括

以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献1に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたものである。

第6 むすび

上記のとおりであって、本願発明は、本願の出願前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、引用文献1に記載された発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-013175

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