特許拒絶査定不服審判
2022-012881
誘導結合プラズマ処理チャンバ内における低バイアス電圧での基板近傍補充プラズマ密度生成
- 審判番号
- 2022-012881
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-538352
- 請求日
- 2022年08月17日
- 審決日
- 2023年07月03日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ラム リサーチ コーポレーション
- 【請求人代理人】弁理士法人明成国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 波多江 進
- 審判官 松川 直樹
- 審判官 金高 敏康
- 分類
- P18 .121-Z (H05H) / P18 .113-Z (H05H)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-538352号「誘導結合プラズマ処理チャンバ内における低バイアス電圧での基板近傍補充プラズマ密度生成」拒絶査定不服審判事件〔平成30年7月26日国際公開、WO2018/136121号、令和2年2月20日国内公表、特表2020-505722号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)10月20日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2017年1月17日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
令和元年 9月 3日 :翻訳文の提出
令和2年10月16日 :手続補正書、上申書の提出
令和3年 9月30日付け:拒絶理由通知書
同年12月21日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 4月14日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
同年 8月17日 :審判請求書の提出
第2 本願発明について
本願の請求項1-20に係る発明は、令和3年12月21日に提出された手続補正書における特許請求の範囲の請求項1-20に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項16に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項16に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項16】
誘導結合プラズマ処理システムであって、
プラズマ処理空間を囲み、上側窓構造を有するチャンバと、
コイルであって、前記コイルから前記上側窓構造を通して前記プラズマ処理空間へ至る高周波信号の伝送を可能にするような位置で前記チャンバの外側に配置されているコイルと、
前記チャンバ内に配置されている基板支持構造であって、前記プラズマ処理空間へ露出させて基板を保持するよう構成されている基板支持構造と、
前記基板支持構造内に配置されている電極と、
前記コイルへ第1高周波信号を供給するように接続されている第1高周波信号発生器と、
前記基板支持構造内の前記電極へ第2高周波信号を供給するように接続されている第2高周波信号発生器であって、前記第1高周波信号発生器に対して独立制御可能な第2高周波信号発生器と、を備え、前記第2高周波信号は、27メガヘルツ以上の周波数を有し、前記第2高周波信号は、前記基板が前記基板支持構造上に存在する時に、前記基板のレベルで補充プラズマ密度を生成するよう規定され、前記基板の前記レベルは前記プラズマ処理空間内における前記基板上方の近接領域であり、前記第2高周波信号は、前記基板が前記基板支持構造上に存在する時に、前記基板の前記レベルでバイアス電圧を実質的に変化させることなく、前記プラズマ処理空間内に前記基板の前記レベルで前記補充プラズマ密度を生成する、誘導結合プラズマ処理システム。」
第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。
1 (新規性)この出願の請求項16に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2 (進歩性)この出願の請求項16に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.特表2010-512031号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
原査定で引用された前記引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同じ。)。
「【0011】
[0020]図2は、図1のその場の電極10を使用できるプラズマリアクタの一形式を示す一実施例である。図2のリアクタは、(任意であるが)リフトサーバ105によって上昇及び下降できるワークピース支持体103に保持された半導体ウェハでよいワークピース102を処理するためのものである。このリアクタは、チャンバ側壁106及び天井108によって境界定めされたチャンバ104で構成される。天井108は、小さなガス噴射オリフィス110をその内面に有するガス分配シャワーヘッド109を備えることができ、このシャワーヘッド109は、プロセスガス供給源112からプロセスガスを受け取る。更に、プロセスガスは、ガス噴射ノズル113を通して導入されてもよい。リアクタは、誘導性結合のRFプラズマソース電力印加装置114と、容量性結合のRFプラズマソース電力印加装置116の両方を備えている。誘導性結合のRFプラズマソース電力印加装置114は、天井108の上に横たわる誘導性アンテナ又はコイルでよい。チャンバ104への誘導性結合を許すために、ガス分配シャワーヘッド109は、セラミックのような誘電体材料で形成することができる。VHF容量性結合のソース電力印加装置116は、天井108内又はワークピース支持体103内に配置できる電極である。別の実施形態では、容量性結合のソース電力印加装置116が、天井108内の電極及びワークピース支持体103内の電極で構成され、RFソース電力を天井108及びワークピース支持体103の両方から容量性結合するようにしてもよい。(電極が天井108内にある場合には、オーバーヘッドコイルアンテナからチャンバ104への誘導性結合を許すように複数のスロットをもつことができる。)RF電力ジェネレータ118は、任意のインピーダンス整合要素120を経て誘導性結合のソース電力印加装置114へ(例えば、約10MHzから27MHzの範囲内の)高周波(HF)電力を与える。別のRF電力ジェネレータ122は、任意のインピーダンス整合要素124を経て容量性結合のソース電力印加装置116へ(例えば、約27MHzから200MHzの範囲内の)超高周波(VHF)電力を与える。
【0012】
[0021]プラズマイオンを発生する際の容量性結合のソース電力印加装置116の効率は、VHF周波数の上昇と共に高くなり、また、周波数範囲は、かなりの容量性結合を生じさせるためにはVHF領域にあるのが好ましい。図2に象徴的に示されたように、RF電力印加装置114、116の両方からの電力は、ワークピース支持体103上に形成されたチャンバ104内のバルクプラズマ126に結合される。(例えば)ウェハ102の下に横たわるワークピース支持体103内の電極130に結合されたRFバイアス電源からワークピース102へRFプラズマバイアス電力が容量性結合される。RFバイアス電源は、低周波数(LF)RF電力ジェネレータ132及び別のRF電力ジェネレータ134を含んでもよく、これは、中間周波(MF)又は高周波(HF)RF電力ジェネレータでよい。バイアス電力ジェネレータ132、134とワークピース支持電極130との間には、インピーダンス整合要素136が結合される。真空ポンプ160は、チャンバ104からバルブ162を通してプロセスガスを排気し、バルブ162は、排気率を調整するのに使用できる。バルブ162を通る排気率及びガス分配シャワーヘッド109を通る到来ガス流量は、チャンバ圧力及びチャンバ内のプロセスガス滞在時間を決定する。
【0013】
[0022]プラズマイオン密度は、誘導性結合の電力印加装置114又はVHF容量性結合の電力印加装置116のいずれかにより印加される電力が増加されるにつれて高くなる。しかしながら、それらは、誘導性結合の電力が、バルクプラズマにおけるイオン及び基のより多くの解離、並びに中心低の半径方向イオン密度分布を促進するという点で、異なる振舞いをする。対照的に、VHF容量性結合の電力は、より少ない解離、及び中心高の半径方向イオン分布を促進し、更に、そのVHF周波数が高くなるにつれてより高いイオン密度を与える。
【0014】
[0023]誘導性及び容量性結合の電力印加装置は、プロセスの要件に基づいて組み合せて又は個別に使用することができる。一般に、組み合せて使用するときには、誘導性結合のRF電力印加装置114及び容量性結合のVHF電力印加装置116は、電力をプラズマへ同時に結合し、一方、LF及びHFバイアス電力ジェネレータは、バイアス電力をウェハ支持電極130に同時に与える。これら電力源の同時の動作は、プラズマイオン密度、プラズマイオン半径方向分布(均一性)、プラズマの解離又は化学種含有量、シースイオンエネルギー及びイオンエネルギー分布(巾)のような最も重要なプラズマ処理パラメータを独立して調整できるようにする。この目的のため、ソース電力コントローラ140は、バルクプラズマイオン密度、プラズマイオン密度の半径方向分布、並びにプラズマにおける基及びイオンの解離を制御するために、ソース電力ジェネレータ118、122を互いに独立して調整する(例えば、それらの電力比を制御する)。コントローラ140は、各RFジェネレータ118、122の出力電力レベルを独立して制御することができる。それに加えて又はそれとは別に、コントローラ140は、RFジェネレータ118、122の一方又は両方のRF出力をパルス化することができ、且つVHFジェネレータ122及び任意であるがHFジェネレータ118の各々のデューティサイクルを独立して制御するか又はそれらの周波数を制御することができる。それに加えて、バイアス電力コントローラ142は、イオンエネルギーレベル及びイオンエネルギー分布巾の両方を制御するためにバイアス電力ジェネレータ132、134の各々の出力電力レベルを制御する。
【0015】
[0024]図2のリアクタにおけるその場の電極10は、ワークピース支持ペデスタル103と天井108との間の平面内に設置される。1つの態様において、その場の電極10は、セラミックのような絶縁材料(例えば、窒化アルミニウム)で形成される。」
「【図2】
[図:0001404260000001.jpg]
」
2 引用発明
(1) 前記1で摘記した引用文献1の記載事項から、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。なお、参考までに、認定の根拠とした箇所である引用文献1の段落等を括弧内に記載する。)。
「 ワークピース支持体103に保持された半導体ウェハでよいワークピースを処理するためのプラズマリアクタであって、
前記リアクタは、チャンバ側壁106及び天井108によって境界定めされたチャンバ104で構成され、誘導性結合のRFプラズマソース電力印加装置114と、容量性結合のRFプラズマソース電力印加装置116の両方を備え、
前記誘導性結合のRFプラズマソース電力印加装置114は、天井108の上に横たわるコイルであり、
前記容量性結合のソース電力印加装置116は、ワークピース支持体103内に配置できる電極であり、
RF電力ジェネレータ118は、任意のインピーダンス整合要素を経て誘導性結合のソース電力印加装置114へ約10MHzから27MHzの範囲内の高周波(HF)電力を与え、別のRF電力ジェネレータ122は、任意のインピーダンス整合要素を経て容量性結合のソース電力印加装置116へ約27MHzから200MHzの範囲内の超高周波(VHF)電力を与え、(ここまで【0011】)
RF電力印加装置114、116の両方からの電力は、ワークピース支持体103上に形成されたチャンバ104内のバルクプラズマ126に結合され、
ウェハ102の下に横たわるワークピース支持体103内の電極130に結合されたRFバイアス電源からワークピース102へRFプラズマバイアス電力が容量性結合され、RFバイアス電源は、低周波数(LF)RF電力ジェネレータ132及び中間周波(MF)又は高周波(HF)RF電力ジェネレータ134を含み、(ここまで【0012】)
誘導性及び容量性結合の電力印加装置は、プロセスの要件に基づいて組み合せて又は個別に使用することができ、組み合せて使用するときには、誘導性結合のRF電力印加装置114及び容量性結合のVHF電力印加装置116は、電力をプラズマへ同時に結合し、LF及びHFバイアス電力ジェネレータは、バイアス電力をウェハ支持電極130に同時に与え、これら電力源の同時の動作は、プラズマイオン密度、プラズマイオン半径方向分布(均一性)、プラズマの解離又は化学種含有量、シースイオンエネルギー及びイオンエネルギー分布(巾)のような最も重要なプラズマ処理パラメータを独立して調整できるようにする目的のため、ソース電力コントローラ140は、バルクプラズマイオン密度、プラズマイオン密度の半径方向分布、並びにプラズマにおける基及びイオンの解離を制御するために、ソース電力ジェネレータ118、122を互いに独立して調整し、コントローラ140は、各RFジェネレータ118、122の出力電力レベルを独立して制御することができ、バイアス電力コントローラ142は、イオンエネルギーレベル及びイオンエネルギー分布巾の両方を制御するためにバイアス電力ジェネレータ132、134の各々の出力電力レベルを制御する、(ここまで【0014】)
プラズマリアクタ。」
第5 対比・判断
1 対比分析
本願発明と引用発明を対比する
(1) 引用発明の「プラズマリアクタ」は、「チャンバ側壁106及び天井108によって境界定めされたチャンバ104で構成され、誘導性結合のRFプラズマソース電力印加装置114」「を備え」、「ワークピース支持体103に保持された半導体ウェハでよいワークピースを処理するための」ものであるから、本願発明の「誘導結合プラズマ処理システム」に相当する。
(2) 本願発明の「プラズマ処理空間を囲み、上側窓構造を有するチャンバ」との発明特定事項について
ア 引用発明の「チャンバ側壁106及び天井108によって境界定めされたチャンバ104」は、本願発明の「チャンバ」に相当する。
イ 引用発明は、「ワークピースを処理するためのプラズマリアクタであって」、「RF電力印加装置114、116の両方からの電力は、ワークピース支持体103上に形成されたチャンバ104内のバルクプラズマ126に結合され[る]」ものであるから、引用発明の「チャンバ104」は、プラズマ処理空間を囲んでいるといえる。
ウ また、引用発明は、「天井108の上に横たわるコイルであ[る」」「誘導性結合のRFプラズマソース電力印加装置114」を備え、「誘導性結合のRF電力印加装置114」「は、電力をプラズマへ」「結合」するから、「プラズマリアクタ」が有する「天井108」は、「天井108の上に横たわるコイル」の「電力をプラズマへ」「結合」することができる「上側窓構造」であるといえる。
エ したがって、引用発明は上記発明特定事項で特定される構成を備える。
(3) 本願発明の「コイルであって、前記コイルから前記上側窓構造を通して前記プラズマ処理空間へ至る高周波信号の伝送を可能にするような位置で前記チャンバの外側に配置されているコイル」との発明特定事項について ア 引用発明の「天井108の上に横たわるコイル」は、本願発明の「コイル」に相当する。
イ 引用発明の「天井108の上に横たわるコイルであ」る「誘導性結合のRFプラズマソース電力印加装置114は」、「RF電力ジェネレータ118」から「任意のインピーダンス整合要素を経て誘導性結合のソース電力印加装置114へ約10MHzから27MHzの範囲内の高周波(HF)電力を与え」られるものであるから、当該コイルである誘導性結合のRFプラズマソース電力印加装置114から天井を通して、チャンバ側壁106及び天井108によって境界定めされたチャンバ104内のプラズマ処理空間へ至る約10MHzから27MHzの範囲内の高周波(HF)電力の伝送を可能にするような位置でチャンバ104の外側に配置されているといえる。
ウ したがって、引用発明は上記発明特定事項で特定される構成を備える。
(4) 本願発明の「前記チャンバ内に配置されている基板支持構造であって、前記プラズマ処理空間へ露出させて基板を保持するよう構成されている基板支持構造」との発明特定事項について
ア 引用発明の「チャンバ側壁106及び天井108によって境界定めされたチャンバ104で構成され」た「プラズマリアクタ」が、「ワークピース支持体103に保持された半導体ウェハでよいワークピースを処理するための」ものであることは、「プラズマリアクタ」のプラズマで処理する「チャンバ104」内の「ワークピース支持体103」に「半導体ウェハでよいワークピース」を配置することであるといえる。
また、プラズマで、「ワークピース支持体103に保持された半導体ウェハでよいワークピースを処理する」以上、当該「半導体ウェハでよいワークピース」は、チャンバ104内のプラズマで処理する空間に露出しているといえる。
イ ここで、引用発明の、「半導体ウェハでよいワークピース」及び「ワークピース支持体103」は、本願発明の「基板」及び「基板支持構造」にそれぞれ相当する。
ウ したがって、引用発明の「ワークピース支持体103」は、本願発明の「前記チャンバ内に配置されている基板支持構造であって、前記プラズマ処理空間へ露出させて基板を保持するよう構成されている基板支持構造」に相当する。
(5) 引用発明の「ワークピース支持体103内に配置できる電極であ[る]」「容量性結合のソース電力印加装置116」は、本願発明の「基板支持構造内に配置されている電極」に相当する。
(6) 引用発明の「任意のインピーダンス整合要素を経て誘導性結合のソース電力印加装置114へ約10MHzから27MHzの範囲内の高周波(HF)電力を与え[る]」「RF電力ジェネレータ118」は、本願発明の「前記コイルへ第1高周波信号を供給するように接続されている第1高周波信号発生器」に相当する。
(7) 本願発明の「前記基板支持構造内の前記電極へ第2高周波信号を供給するように接続されている第2高周波信号発生器であって、前記第1高周波信号発生器に対して独立制御可能な第2高周波信号発生器と、を備え、前記第2高周波信号は、27メガヘルツ以上の周波数を有し」との発明特定事項について
ア 引用発明の「約27MHzから200MHzの範囲内の超高周波(VHF)電力」は、本願発明の「第2高周波信号」に相当するから、前記(5)も踏まえると、引用発明の「任意のインピーダンス整合要素を経て容量性結合のソース電力印加装置116へ約27MHzから200MHzの範囲内の超高周波(VHF)電力を与え[る]」「別のRF電力ジェネレータ122」は、本願発明の「前記基板支持構造内の前記電極へ第2高周波信号を供給するように接続されている第2高周波信号発生器」に相当する。
イ また、引用発明が、「バルクプラズマイオン密度、プラズマイオン密度の半径方向分布、並びにプラズマにおける基及びイオンの解離を制御するために、ソース電力ジェネレータ118、122を互いに独立して調整」することは、「RF電力ジェネレータ118」に対して「別のRF電力ジェネレータ122」が独立して制御可能であるを意味することは明らかであるから、引用発明の「別のRF電力ジェネレータ122」は、本願発明の「第1高周波信号発生器に対して独立制御可能な第2高周波信号発生器」に相当する。
ウ 引用発明は、「別のRF電力ジェネレータ122は、任意のインピーダンス整合要素を経て容量性結合のソース電力印加装置116へ約27MHzから200MHzの範囲内の超高周波(VHF)電力を与え[る]」ものであるから、前記アも踏まえると、本願発明と引用発明は、「前記第2高周波信号は、27メガヘルツ以上の周波数を有[する]」点で一致する。
エ したがって、引用発明は上記発明特定事項で特定される構成を備える。
(8) 本願発明の「前記第2高周波信号は、前記基板が前記基板支持構造上に存在する時に、前記基板のレベルで補充プラズマ密度を生成するよう規定され、前記基板の前記レベルは前記プラズマ処理空間内における前記基板上方の近接領域であり、前記第2高周波信号は、前記基板が前記基板支持構造上に存在する時に、前記基板の前記レベルでバイアス電圧を実質的に変化させることなく、前記プラズマ処理空間内に前記基板の前記レベルで前記補充プラズマ密度を生成する」との発明特定事項について
ア(ア) 引用発明の「超高周波(VHF)電力」は、「別のRF電力ジェネレータ122」から「容量結合のソース電力印加装置116」へ与えられ、「RF電力印加装置114、116の両方からの電力は、ワークピース支持体103上に形成されたチャンバ104内のバルクプラズマ126に結合され」、「ソース電力コントローラ140」が「ソース電力ジェネレータ118、122を互いに独立に調整し」、「バルクプラズマイオン密度、プラズマイオン密度の半径方向分布、並びにプラズマにおける基及びイオンの解離を制御する」のであるから、引用発明の「超高周波(VHF)電力」は、「プラズマ密度を生成するよう規定され[た]」ものであるといえる。
(イ) そして、「ワークピース支持体103に保持された半導体ウェハでよいワークピース」の上方の近接領域では、「誘導性結合のRFプラズマソース電力印加装置114」に与える「約10MHzから27MHzの範囲内の高周波(HF)電力」が生成するプラズマ密度を、「容量性結合のソース電力印加装置116」に与える「約27MHzから200MHzの範囲内の超高周波(VHF)電力」が生成する「プラズマ密度」で補充することとなるといえるから、引用発明の「超高周波(VHF)電力」が生成する「プラズマ密度」は、本願発明の「補充プラズマ密度」に相当する。
(ウ) そうすると、本願発明と引用発明は、「前記第2高周波信号は、補充プラズマ密度を生成するよう規定され[る]」点で共通する。
イ(ア) 引用発明の「別のRF電力ジェネレータ122」が、「超高周波(VHF)電力」を与えるのは、「半導体ウェハでよいワークピース」が「ワークピース支持体103に保持され」て「処理する」際、すなわち、本願発明でいう「前記基板が前記基板支持構造上に存在する時」であることは明らかである。
(イ) また、容量性結合プラズマが電力を印加するための電極付近に生成されることは技術常識であって、「容量性結合のソース電力印加装置116」へ与えられる「超高周波(VHF)電力」により生成される容量性結合プラズマは、前記(ア)も踏まえると、「容量性結合のソース電力印加装置116」である「ワークピース支持体103内に配置できる電極」が配置される「ワークピース支持体103」及び「ワークピース」の上方の近接領域、すなわち本願発明でいう「前記プラズマ処理空間内における前記基板上方の近接領域であ[る]」「基板のレベル」に生成されることは当該技術常識から見て自明である。
ウ したがって、本願発明と引用発明は、「前記第2高周波信号は、前記基板が前記基板支持構造上に存在する時に、前記基板のレベルで補充プラズマ密度を生成するよう規定され、前記基板の前記レベルは前記プラズマ処理空間内における前記基板上方の近接領域であり、前記第2高周波信号は、前記基板が前記基板支持構造上に存在する時に、前記プラズマ処理空間内に前記基板の前記レベルで前記補充プラズマ密度を生成する」点で共通する。
2 一致点及び相違点
(1) 以上によれば、本願発明と引用発明は、以下の構成において一致する。
【一致点】
「誘導結合プラズマ処理システムであって、
プラズマ処理空間を囲み、上側窓構造を有するチャンバと、
コイルであって、前記コイルから前記上側窓構造を通して前記プラズマ処理空間へ至る高周波信号の伝送を可能にするような位置で前記チャンバの外側に配置されているコイルと、
前記チャンバ内に配置されている基板支持構造であって、前記プラズマ処理空間へ露出させて基板を保持するよう構成されている基板支持構造と、
前記基板支持構造内に配置されている電極と、
前記コイルへ第1高周波信号を供給するように接続されている第1高周波信号発生器と、
前記基板支持構造内の前記電極へ第2高周波信号を供給するように接続されている第2高周波信号発生器であって、前記第1高周波信号発生器に対して独立制御可能な第2高周波信号発生器と、を備え、前記第2高周波信号は、27メガヘルツ以上の周波数を有し、前記第2高周波信号は、前記基板が前記基板支持構造上に存在する時に、前記基板のレベルで補充プラズマ密度を生成するよう規定され、前記基板の前記レベルは前記プラズマ処理空間内における前記基板上方の近接領域であり、前記第2高周波信号は、前記基板が前記基板支持構造上に存在する時に、前記プラズマ処理空間内に前記基板の前記レベルで前記補充プラズマ密度を生成する、誘導結合プラズマ処理システム。」
(2) 本願発明と引用発明は、以下の点で一応相違する。
【相違点】
第2高周波信号が、補充プラズマ密度を生成する際に、本願発明は、「前記基板の前記レベルでバイアス電圧を実質的に変化させること」がないのに対して、引用発明の「超高周波(VHF)電力」が、「RFバイアス電源」が「ウェハ102の下に横たわるワークピース支持体103内の電極130」に与える「RFプラズマバイアス電力」による基板レベルでの電圧を実質的に変化させることがないか明らかではない点。
第6 判断
1 新規性について
(1) 本願発明の「前記基板のレベルでバイアス電圧を実質的に変化させることなく、前記プラズマ処理空間内に前記基板の前記レベルで前記補充プラズマ密度を生成する」との発明特定事項について
ア 本願発明における「第2高周波信号」が、「前記基板のレベルでバイアス電圧を実質的に変化させることなく、前記プラズマ処理空間内に前記基板の前記レベルで補充プラズマ密度を生成すること」について、本願の発明の詳細な説明には以下の記載がある。下線は当審において付したものである。
(ア) 「基板111レベルでのイオンエネルギの増大を引き起こすことなしに基板111レベルでのプラズマ密度の増大を提供するための方法およびシステムが、本明細書で開示されている。・・・本明細書に開示する方法およびシステムは、バイアス電極113を用いて、特別に制御された高周波信号をプラズマ処理空間101へ伝送することで、基板111レベルでのイオンエネルギを増大させることなしに基板111レベルで局所的に補充プラズマ密度を生成する。」(【0031】)
(イ) 「一般に、バイアス高周波信号発生器115によって供給される高周波信号によって生成されるバイアス電圧(Vb)は、これらの高周波信号の周波数(f)に反比例する(Vb∝1/f)。・・・そして、バイアス電圧(Vb)は、バイアス高周波信号の周波数(f)に反比例するので、所与のバイアス高周波電力(Pb)に対してより低いバイアス電圧(Vb)を得るために、バイアス高周波信号の周波数(f)は増大されうる。したがって、基板111レベルで生成されるプラズマ密度の増大を得るために、バイアス電圧(Vb)を低く維持すると同時に、より高い周波数(f)の高周波信号が、バイアス電極113に供給されうる。」(【0032】)
(ウ) 「基板111レベルでのイオンエネルギを増大させることなしに、より高いプラズマ密度が基板111レベルで求められるいくつかの実施形態において、低バイアス電圧(Vb)(例えば、約200V未満)で基板111レベルにおいて補充プラズマ密度を生成するために、補充プラズマ密度高周波電力が高周波数(例えば、約27MHz(メガヘルツ)以上)でバイアス電極113に供給され、バイアス電圧(Vb)の制御を提供するために、バイアス高周波電力も低周波数(例えば、15MHz以下)でバイアス電極113に供給され、プラズマ処理空間101内でプラズマ102を生成するために、プラズマ一次高周波電力がコイル121に供給される。」(【0033】)
(エ) 「ICP処理チャンバ100内で高周波数(例えば、約27MHz以上)の基板レベル補充プラズマ密度高周波電力を利用することは、かかる高周波数の高周波信号のバイアス電極113への供給が、従来は高周波信号をバイアス電極113へ供給する主な目的であった相当量のバイアス電圧(Vb)を生成しないので、直感的ではないことを理解されたい。」(【0034】)
(オ) 「基板レベル補充プラズマ密度高周波信号発生器401が、基板レベル111でのイオンのエネルギを大幅に増大させることなしに、図4の点線で示すように、基板レベル111で補充プラズマ402を生成するために基板レベル補充プラズマ密度高周波電力をバイアス電極113に供給するのに用いられる。基板レベル補充プラズマ密度高周波信号発生器401は、対応するインピーダンス整合回路403を通して伝送ロッド119へ高周波数(例えば、約27MHz以上)の高周波信号を伝送する。」(【0035】)
(カ) 「図4のICP処理チャンバ100の構成において、基板レベル補充プラズマ密度高周波信号発生器401は、バイアス電圧(Vb)の生成に実質的に寄与することなしに、すなわち、基板111レベルでイオンのエネルギを増大させることなしに、基板111レベルでイオン束および/またはラジカル束を増大させるために、基板111レベルで補充プラズマ密度を生成するように、より高い周波数で動作されることを理解されたい。」(【0039】)
(キ) 「図6Bおよび図6Cは、バイアス電極113へ高周波数の高周波電力を供給するための基板レベル補充プラズマ密度高周波数発生器401の動作が、50Vの低いバイアス電圧(Vb)を超えることなしになされうることを示す。60MHzの周波数で動作する基板レベル補充プラズマ密度高周波数発生器401によって生成されるバイアス電圧(Vb)は、バイアス電極113へ13.56MHzの低周波数で高周波を供給することによって得られるバイアス電圧(Vb)よりも4~10倍小さい。」(【0047】)
(ク) 「基板レベルで補充プラズマ密度を生成するために用いられる高周波数の高周波信号(約27MHz以上)は、基板レベルで大きいバイアス電圧(Vb)を生成しないので、本明細書に開示する基板レベル補充プラズマ密度生成方法およびシステムは、基板からの材料の等方性除去が望まれる用途(例えば、フォトレジストトリム動作など)でも利用可能である。」(【0067】)
イ 上記アによれば、本願発明の「前記基板のレベルでバイアス電圧を実質的に変化させることなく、前記プラズマ処理空間内に前記基板の前記レベルで前記補充プラズマ密度を生成する」との作用は、補充プラズマ密度を生成するために補充プラズマ密度高周波数発生器がバイアス電極へ供給する高周波電力の周波数を、バイアス電圧を生成するためのバイアス高周波電力の周波数(例えば、15MHz)よりも高い「約27MHz以上」とすることにより得られることが開示されている。
(2) しかるに、本願発明の「第2高周波信号」に相当する引用発明の「超高周波(VHF)電力」(前記第5の1(7)ア参照。)は、「低周波数(LF)RF電力ジェネレータ132及び中間周波(MF)又は高周波(HF)RF電力ジェネレータ134を含[む]」RFバイアス電源の周波数よりも高い、「約27MHzから200MHzの範囲内」の周波数であるから、本願発明における「第2高周波信号」が、「前記基板のレベルでバイアス電圧を実質的に変化させることなく、前記プラズマ処理空間内に前記基板の前記レベルで補充プラズマ密度を生成すること」を実現するための構成である、バイアス高周波電力の周波数よりも高い、約27MHz以上の周波数を有することを満たすものである。
(3) そうすると、引用発明の「超高周波(VHF)電力」も、本願発明の「第2高周波信号」と同じく、「基板のレベルでバイアス電圧を実質的に変化させることなく、前記プラズマ処理空間内に前記基板の前記レベルで前記補充プラズマ密度を生成する」ものであると認められる。
(4) 新規性についてのまとめ
よって、引用発明は、本願発明の「前記第2高周波信号は、前記基板のレベルでバイアス電圧を実質的に変化させることなく、前記プラズマ処理空間内に前記基板の前記レベルで前記補充プラズマ密度を生成する」との発明特定事項で特定される構成を備えるから、相違点は実質的な相違点ではなく、本願発明と引用発明は発明特定事項に差異がなく、両者は同一の発明である。
したがって、本願発明は、引用発明である。
2 進歩性について
(1) 引用発明の「バイアス電力コントローラ142」は、「イオンエネルギーレベル及びイオンエネルギー分布巾の両方を制御するためにバイアス電力ジェネレータ132、134の各々の出力電力レベルを制御」するものであり、「ソース電力コントローラ140」は、「バルクプラズマイオン密度、プラズマイオン密度の半径方向分布、並びにプラズマにおける基及びイオンの解離を制御するために、ソース電力ジェネレータ118、122を互いに独立して調整し」、別のRFジェネレータ122の「約27MHzから200MHzの範囲内の超高周波(VHF)電力」の「出力電力レベルを独立して制御」するものである。 したがって、「バイアス電力コントローラ142」は、「ソース電力コントローラ140」が「バルクプラズマイオン密度、プラズマイオン密度の半径方向分布、並びにプラズマにおける基及びイオンの解離を制御するために」、「出力電力レベルを独立して制御」する「超高周波(VHF)電力」とは独立して、「イオンエネルギーレベル及びイオンエネルギー分布巾」を決定する基板のレベルでのバイアス電圧を所望の「イオンエネルギーレベル及びイオンエネルギー分布巾」を達成できる電圧に制御しているといえる。
そうすると、「バルクプラズマイオン密度、プラズマイオン密度の半径方向分布、並びにプラズマにおける基及びイオンの解離を制御する」ための「超高周波(VHF)電力」によって、バイアス電力コントローラ142が制御する当該バイアス電圧が、所望の「イオンエネルギーレベル及びイオンエネルギー分布巾」を達成できる電圧から変化することは望ましくないことは明らかであるから、「超高周波(VHF)電力」によって基板のレベルでバイアス電圧が変化することのないように、「超高周波(VHF)電力」の出力レベルや周波数を制御することは当業者が容易になし得たことである。
(2) 効果について
そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(3) 進歩性についてのまとめ
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
3 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、概略、引用文献1に記載のソース電力印加装置116は、プラズマ生成のための電力を印加する装置であり、この結果、引用文献1には、「第2高周波信号は、基板のレベルでバイアス電圧を実質的に変化させることなく、プラズマ処理空間内に基板のレベルで補充プラズマ密度を生成する」ための構成について示唆すらされていない旨主張する。
しかしながら、この点は上記1及び2で検討したとおりであるから、請求人の主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-012881