特許拒絶査定不服審判
2022-011545
低電圧で電力供給される電気機械および関連するマルチセルパワートレイン
- 審判番号
- 2022-011545
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-544689
- 請求日
- 2022年07月26日
- 審決日
- 2024年02月28日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 【請求人】ユニヴェルシテ パリ-サクレー
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 【請求人】サントラルシュペレック
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 【請求人】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 【請求人】エコール ノーマル シュペリウール パリ-サクレー
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 審判長/審判官
- 審判長 柿崎 拓
- 審判官 関口 哲生
- 審判官 伊藤 秀行
- 分類
- P18 .121-WZ (H02K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-544689「低電圧で電力供給される電気機械および関連するマルチセルパワートレイン」拒絶査定不服審判事件〔平成30年8月23日国際公開、WO2018/149996、令和2年3月26日国内公表、特表2020-509727〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
この出願(以下、「本願」という。)は、2018年(平成30年)2月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年2月17日 (FR)フランス共和国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。
令和3年12月10日付け 拒絶理由通知書
令和4年 3月14日 意見書、手続補正書の提出
令和4年 3月16日付け 拒絶査定
令和4年 7月26日 審判請求書、手続補正書の提出
令和5年 9月 7日付け 拒絶理由通知書
令和5年12月12日 意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~9に係る発明は、令和5年12月12日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「ロータ及びステータを含むタイプの電気機械と、
複数の電力インバータと、
複数のDC電源と、
を備え、
前記ステータは、絶縁された導電性材料のコイルから作成される少なくとも1つの巻線を含み、
各巻線は前記電気機械の相に関連付けられており、
各巻線が、複数のコイルを含み、
前記少なくとも1つの巻線は、前記巻線をより小さい大きさの複数のコイルに分割することにより得られ、
前記コイルが、独立して電力供給され、
前記電力インバータが、前記電気機械の異なる相に関連付けられるAC供給信号を生成するように構成されており、
前記DC電源それぞれは、個別の電力インバータに関連付けられており、まったく同一の巻線のコイルは、個別の電力インバータによって生成されるまったく同一の相に関連付けられた電力信号によって電力供給されており、
まったく同一の前記巻線の前記コイルによって生成される磁力線が、同じ方向に向けられることを特徴とする、電動パワートレイン。」
第3 拒絶の理由
令和5年9月7日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)のうち、理由1(進歩性)は、次の理由を含むものである。
本願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載の事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開平9-331694号公報
引用文献2:国際公開第2011/093202号
第4 引用文献の記載及び引用発明
1.引用文献1の記載及び引用発明
(1)当審拒絶理由で引用された引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付加した。以下、同様である。)。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、可変電圧・可変周波数の交流出力を発生するインバータを備えたインバータモータに関する。」
イ 「【0002】
【発明が解決しようとする課題】例えば、大容量のインバータモータを実現する場合には、インバータ主回路を構成するスイッチング素子の電流容量を大きくすることにより対応できる。しかしながら、このような対応では、低容量のものに比べて割高な大容量のスイッチング素子が必要となるためコストの上昇を招くという問題点がある。また、大容量のスイッチング素子を使用する場合には、その機械的配置や熱的配置に制約が生じて装置全体の大形化を招くという問題点も出てくる。
【0003】本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コストの高騰及び全体の大形化を伴うことなく大容量化が可能になるなどの効果を奏するインバータモータを提供することにある。」
ウ 「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するために、一相当たり複数個のコイルが設けられたインバータモータにおいて、各相コイルを分割して複数の分割多相コイルを形成すると共に、それら分割多相コイルに対して多相交流出力を個別に印加可能な複数のインバータ主回路を設ける構成としたものである(請求項1)。
【0005】このような構成のインバータモータによれば、その大容量化を図った場合でも、各相コイルを分割した状態の分割多相コイルの各々に流れる電流は小さくて済むようになる。従って、上記分割多相コイルに多相交流出力を個別に印加するように設けられたインバータ主回路の出力電流も小さくて済むことになり、そのインバータ主回路を構成するスイッチング素子として割安な低容量のものを利用できるようになる。この結果、必要となるスイッチング素子の数が増えるものの、全体としてはコスト安に製造できるようになる。」
エ 「【0006】しかも、スイッチング素子として小形で尚且つ発熱量が小さいのものを使用すれば良いから、その機械的配置及び熱的配置の自由度が高くなって、全体をコンパクトにまとめる仕様を容易に実現できるものであり、結果的に全体の大形化を効率良く防止可能になる。
【0007】この場合、一相に設けられる複数個のコイルを、同一スロットに並列に巻装されたものとすることができる(請求項2)。この構成によれば、一部の分割多相コイルを断電してもモータの基本特性が変化することがないから、例えば、軽負荷の場合に一部の分割多相コイルを断電することにより省エネルギ効果を図るという運転方法を採用できるようになる。また、当初から、一部の分割多相コイルを断電しておく構成とすれば、その分割多相コイル及びこれに通電するためのインバータ主回路を、故障時のバックアップ用として機能させることができ、運転継続に対する信頼性が高くなる。」
オ 「【0008】前記分割多相コイルの各相のコイルを、複数個のコイルを並列接続して形成することができ(請求項3)、この構成によれば、各相のコイル数が多い場合でも、必要となるインバータ主回路の数を適宜に調節できるようになって、設計上の自由度が増すようになる。
【0009】分割多相コイルは、各相毎に直列配置された複数の単位コイルから成るコイルを、当該単位コイル毎に分割して形成しても良いものであり(請求項4)、また、分割多相コイルは、各相毎に直列配置された4個以上の単位コイルから成るコイルを、2個以上直列接続された単位コイル群毎に分割して形成しても良いものである(請求項5)。」
カ 「【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を三相誘導電動機より成るインバータモータに適用した第1実施例について図1~図3を参照しながら説明する。図1において、電源を構成する整流平滑回路1は、三相交流電源2の出力を整流・平滑して電源ラインL1及びL2間に出力するようになっており、この電源ラインL1及びL2からインバータ主回路3及び4に給電される構成となっている。
【0014】上記インバータ主回路3及び4は、具体的には図示しないが、例えば6個ずつの半導体スイッチング素子(パワートランジスタ或いはIGBTのようなパワー素子)及びフライホイールダイオードをブリッジ接続して成る周知構成のものであり、そのスイッチング動作に応じてU、V、Wの出力端子から三相交流電圧を出力する構成となっている。
【0015】インバータ主回路3及び4の動作は、共通の制御回路5により制御されるようになっている。制御回路5は、具体的には図示しないが、例えば、速度指令に応じたPWM信号などに基づいて前記スイッチング素子のオンオフ動作をドライバを介して制御する周知構成のものである。尚、制御回路5の電源は、図示しない制御用電源回路から与えられる。
【0016】三相誘導電動機のステータ6は、一相当たり2個ずつのコイルU1及びU2、V1及びV2、W1及びW2を備えた構成(各コイルの巻装位置はそれぞれ異なる)のものであり、それらを分割することにより2つの三相コイル6a、6b(本発明でいう分割多相コイルに相当)を形成している。具体的には、第1の三相コイル6aは、コイルU1、V1、W1をスター結線することにより形成され、第2の三相コイル6bは、コイルU2、V2、W2をスター結線することにより形成されている。
【0017】そして、第1の三相コイル6aには、インバータ主回路3からの三相交流出力が印加され、第2の三相コイル6bには、インバータ主回路4からの三相交流出力が印加されるように接続している。」
キ 「【0021】因みに、例えば図2(a)、(b)に示すように、ステータ6のコイルエンド部6cに、制御回路5のための環状基板7を実装すると共に、この基板7上にスイッチング素子(図2中にSWで示す)を分散して配置する構成とすれば、熱設計が容易になると共に、上述したような大形化防止のために寄与できるようになる。
【0022】また、インバータ主回路3及び4の出力が数アンペアオーダー程度のものであった場合には、それらインバータ主回路3及び4をICチップ化することも可能であり、従って、全体のさらなる小形化を促進できるようになる。特に、このようなICチップ化を行った場合には、図3に実線或いは二点鎖線で示すように、当該ICチップ(図3中にICで示す)を、コイルエンド部6cに直付けしたり埋め込んだりすることが可能となるから、全体の大幅な小形化を実現できるものである。
【0023】さらに、本実施例では、インバータ主回路3及び4の電源を、共通の整流平滑回路1から得る構成としたから、個別に電源を設ける場合に比べて全体のコストを引き下げ得るようになる。また、インバータ主回路3及び4の動作を、同一の制御回路5により制御する構成としたから、両インバータ主回路3及び4の動作が必ず同期するようになって、その制御動作が安定すると共に、全体のコストを引き下げ得るようになる。」
ク 「【0031】図6及び図7には本発明の第3実施例が示されており、以下これについて前記第1実施例と異なる部分のみ説明する。即ち、この第3実施例における三相誘導電動機のステータ9は、図7に示すように、本来的には各相のコイルU1、V1、W1毎に直列配置された2個ずつの単位コイルuc1及びuc2、vc1及びvc2、wc1及びwc2を備えたものであり、これの接続を変更することにより図6のような構成としている。
【0032】図6において、各相のコイルU1、V1、W1の単位コイルuc1及びuc2、vc1及びvc2、wc1及びwc2を2グループに分割すると共に、各グループ内の単位コイルをスター結線することにより、2つの三相コイル9a、9b(本発明でいう分割多相コイルに相当)を形成している。具体的には、第1の三相コイル9aは単位コイルuc1、vc1、wc1により形成され、第2の三相コイル9bは単位コイルuc2、vc2、wc2により形成されている。
【0033】そして、第1の三相コイル9aには、インバータ主回路3からの三相交流出力が印加され、第2の三相コイル9bには、インバータ主回路4からの三相交流出力が印加されるように接続している。
【0034】このような構成の本実施例によれば、単位コイルuc1及びuc2、vc1及びvc2、wc1及びwc2による三相コイル9a、9bの分担電圧が低くなるため、インバータ主回路3、4による出力電圧を低くできる。従って、インバータ主回路3、4内のスイッチング素子として耐圧の低い安価なものを使用できるようになり、また、インバータ主回路3、4用の電源仕様も低電圧化できて安価にできるから、この面からも製造コストを引き下げ得ることになる。」
ケ 「【0046】図13には本発明の第8実施例が示されており、以下これについて前記第1実施例と異なる部分のみ説明する。即ち、この第8実施例における三相誘導電動機のステータ16は、一相当たり2個ずつ設けられるコイルU1及びU2、V1及びV2、W1及びW2は、各相毎に同一スロットに巻装されたものであり、それらを分割することにより2つの三相コイル16a、16b(本発明でいう分割多相コイルに相当)を形成している。具体的には、第1の三相コイル16aは、コイルU1、V1、W1をスター結線することにより形成され、第2の三相コイル16bは、コイルU2、V2、W2をスター結線することにより形成されている。」
コ 「【0052】尚、本発明は上記実施例にのみ限定されるものではなく、次のような変形また拡張が可能である。三相誘導電動機によりインバータモータを構成したが、永久磁石形のDCブラシレスモータなどの他のモータや、さらに多相のモータにより構成することもできる。インバータ主回路に共通の電源回路(整流平滑回路1)を設けるようにしたが、インバータ主回路毎に電源回路を設ける構成としても良く、このようような構成によれば、当該電源回路に必要な平滑用コンデンサの容量を小さくできる利点が出てくる。」
サ 「【0053】
【発明の効果】本発明によれば以上の説明によって明らかなように、一相当たり複数個のコイル(或いは単位コイル)が設けられたインバータモータにおいて、各相コイルを分割して形成された複数の分割多相コイルに対して個別にインバータ出力を与える構成としたので、コストの高騰及び全体の大形化を伴うことなく大容量化が可能になるという有益な効果を奏するものである。」
シ 引用文献1には、以下の図面が示されている。
「【図1】
[図:0001412601000001.jpg]
【図2】
[図:0001412601000002.jpg]
【図6】
[図:0001412601000003.jpg]
【図7】
[図:0001412601000004.jpg]
【図13】
[図:0001412601000005.jpg]
」
ス 上記カ~キ及び図2の記載、並びに、技術常識から、三相誘導電動機がロータを有することは、明らかである。また、三相誘導電動機のステータのコイル線について、絶縁された導電性材料を使用することは、技術常識から明らかである。
セ 上記ク及び図6の記載から、各相のコイルU1、V1、W1は三相誘導電動機の相に関連付けられていることは明らかである。
ソ 上記ク及び図6の記載から、各相のコイルU1、V1、W1が、それぞれ、単位コイルuc1及びuc2、vc1及びvc2、wc1及びwc2から分割構成されることは明らかであり、すなわち、各相のコイルU1、V1、W1は、小さい大きさの複数の単位コイルに分割することにより得られているといえる。
タ 上記ク及び図6の記載から、インバータ主回路3、4が、三相誘導電動機の異なる相に関連付けられるAC供給信号を生成するように構成されていることは、明らかである。
チ 上記ク及び図6の記載から、各相のコイルU1、V1、W1の単位コイルuc1及びuc2、vc1及びvc2、wc1及びwc2について、例えば、単位コイルuc1及びuc2は、インバータ主回路3、4により同一の相に関連付けられた電力信号によって電力供給されていることがわかり、単位コイルvc1及びvc2、wc1及びwc2についても、同様であることがわかるから、各相のコイルU1、V1、W1のそれぞれの単位コイルは、個別のインバータ主回路3、4によって生成される同一の相に関連付けられた電力信号によって電力供給されているものであるといえる。
(2)引用文献1の上記ア~チで示した内容を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ロータ及びステータ9を含む三相誘導電動機と、
複数のインバータ主回路3、4と、
共通の電源回路と、
を備え、
前記ステータ9は、絶縁された導電性材料のコイルから作成される各相のコイルU1、V1、W1を含み、
各相のコイルU1、V1、W1は前記三相誘導電動機の相に関連付けられており、
各相のコイルU1、V1、W1が、複数の単位コイルを含み、
前記各相のコイルU1、V1、W1は、前記各相のコイルU1、V1、W1をより小さい大きさの複数の単位コイルに分割することにより得られ、
前記単位コイルが、共通の電源回路から電力供給され、
前記インバータ主回路3、4が、前記三相誘導電動機の異なる相に関連付けられるAC供給信号を生成するように構成されており、
前記共通の電源回路から個別のインバータ主回路3、4に給電され、各相のコイルU1、V1、W1のそれぞれの単位コイルは、個別のインバータ主回路3、4によって生成される同一の相に関連付けられた電力信号によって電力供給されている、
インバータモータ。」
2.引用文献2の記載
当審拒絶理由で引用された引用文献2には、図面とともに、次の記載がある。
(1)「[0001]
この発明は、インバータを内蔵した駆動モジュールおよびその製造方法に関するものである。」
(2)「[0004]
しかし、従来のパワーモジュール一体型モータでは、モータ巻線の各口出し線は、固定子の端面に沿って引き回されて、固定子の外径側を軸方向に削って形成されたパワーモジュール取付部に挿入、固定されているパワーモジュールのパワー端子に接続されるので、パワーモジュールとモータとの間の配線長さが長くなり、当該配線による銅損が大きくなるという不具合があった。
[0005]
また、従来のパワーモジュール一体型モータでは、モータ巻線はティース部のそれぞれに集中巻きに巻回された12本の相コイルを備えている、そして、12本の相コイルの配列については何ら記載されていないが、12本の相コイルは、一般的に、U相、V相,W相、U相、V相・・・V相、W相の順に並んで配列されている。
ここで、モータ巻線が2つの3相交流巻線で構成されているとすると、各3相交流巻線を構成するU相コイルは2本のU相の相コイルを直列に接続して構成され、V相コイルは2本のV相の相コイルを直列に接続して構成され、W相コイルは2本のW相の相コイルを直列に接続して構成される。このように、相コイルの結線数が極めて多くなるので、煩雑な結線作業が増大し、高コスト化をもたらすという不具合もあった。
[0006]
この発明は、上記課題を解決するためになされたもので、導体線を周方向に連続する複数のティース部に連続して集中巻きして相コイルを構成するとともに、インバータユニットを相コイルに軸方向に相対して近接して配設し、相コイルの結線数を削減するとともに、インバータモジュールとモータとの間の配線長さを短くし、銅損を低減できるインバータ一体型駆動モジュールおよびその製造方法を得ることを目的とする。」
(3)「[0041]
モータ40は、図8に示されるように、例えば、鉄などの磁性鋼板を積層して円柱状に作製され、その軸心位置に挿通されたシャフト15に固着されたロータ41と、ロータ41の外周面に固着された永久磁石19と、円筒状に作製されたステータヨーク部44、およびそれぞれステータヨーク部44の内周面から径方向内方に突設され、周方向に等角ピッチで配列されたティース部45を有する円環状のステータコア43、およびティース部45に巻回されたステータコイル46を有するステータ42と、を備えている。
[0042]
10個の永久磁石19が、N極とS極とが交互に並ぶように周方向に等角ピッチに配列されてロータ41の外周面に固着されている。
[0043]
ステータコア43は、例えば磁性鋼板を積層して作製され、12本のティース部45がステータヨーク部44の内周面に突設されている。そして、ステータコイル46は、6本の相コイル47から構成されている。各相コイル47は、1本の導体線を1つのティース部45に所定回巻回し、ついで周方向に隣接する次のティース部45に逆向きに所定回巻回して構成される。つまり、各相コイル47は、1本の導体線を周方向に隣接する2本のティース部45に、連続して巻回して構成される集中巻きコイルである。そこで、6本の相コイル47が、図8に示されるように、U1相、V2相、W1相、U2相、V1相、W2相の順に周方向に並んで、ステータコア43に巻装される。
[0044]
そして、図10に示されるように、U1相、V1相およびW1相の3本の相コイル47の巻き終わり端部同士を結線して、星形結線コイルに構成された第1の3相交流巻線46Aが作製され、U2相、V2相およびW2相の3本の相コイル47の巻き終わり端部同士を結線して、星形結線コイルに構成された第2の3相交流巻線46Bが作製される。なお、相コイル47の巻き終わり側が中性点引出線となり、巻き始め側が口出し線となる。
[0045]
モータ40は、ロータ41がシャフト15をハウジング(図示せず)に軸支されて回転自在に配設され、ステータ42が、ハウジングに固着されて、ロータ41を囲繞するように、かつシャフト15と同軸に配設されて、10極、12スロットのインナーロータ型の3相モータに構成されている。」
(4)「[0049]
このように構成されたインバータ一体型駆動モジュール1Bは、図10に示されるように、第1正極給電板2aと第1負極給電板3aとが配線31aを介して外部の電源30aに接続され、3個の2in1インバータユニット5の正極入力端子10が第1正極給電板2aに接続され、負極入力端子11が第1負極給電板3aに接続される。また、3個の2in1インバータユニット5の交流出力端子12のそれぞれが、3本の相コイル47の巻き始め端部のそれぞれに接続される。さらに、第1の平滑コンデンサ32aが第1のインバータモジュール50Aの入力側に並列に接続されている。
[0050]
さらに、第2正極給電板2bと第2負極給電板3bとが配線31bを介して外部の電源30bに接続され、3個の2in1インバータユニット5の正極入力端子10が第2正極給電板2bに接続され、負極入力端子11が第2負極給電板3bに接続される。また、3個の2in1インバータユニット5の交流出力端子12のそれぞれが、3本の相コイル47の巻き始め端部のそれぞれに接続される。さらに、第2の平滑コンデンサ32bが第2のインバータモジュール50Bの入力側に並列に接続されている。
[0051]
このように構成されたインバータ一体型駆動モジュール1Bは、第1および第2のインバータモジュール50A,50Bを構成する6個のインバータユニット5の上アームスイッチング素子7および下アームスイッチング素子8のON/OFFが制御装置33により制御され、電源30a,30bから供給された直流電力が交流電力に変換され、ステータコイル46に供給される。これにより、ステータ42に回転磁界が発生される。このステータ42の回転磁界と永久磁石19による磁界との相互作用により回転力が発生し、ロータ41が回転駆動される。
[0052]
この実施の形態4によれば、2in1インバータユニット5のそれぞれを相コイル47のそれぞれに軸方向に相対させて、第1および第2のインバータモジュール50A,50Bをモータ40の軸方向両端に近接して配置し、ステータコイル46を構成する2つの3相交流巻線のそれぞれに電力を供給するようにしているので、2in1インバータユニット5とステータコイル46とを結線する配線長さを短くできる。そこで、2in1インバータユニット5とステータコイル46とを結線する配線による銅損を低減することができる。」
(5)「[0055]
なお、上記実施の形態4では、2つの電源から第1および第2のインバータモジュールのそれぞれに独立して電力を供給するものとしているが、1つの電源から第1および第2のインバータモジュールのそれぞれに電力を供給してもよい。
また、上記実施の形態4では、ステータコイルの2つの3相交流巻線がそれぞれ3つの相コイルをY結線(交流結線)してなる星形結線コイルに構成されているものとしているが、ステータコイルの2つの3相交流巻線はそれぞれ3つの相コイルをΔ結線(交流結線)してなる環状結線コイルに構成されてもよい。この場合、中性点結線がないので、第1および第2のインバータモジュールとモータとの接続/切り離しが容易となる。そこで、第1および第2のインバータモジュールやモータが故障した場合、第1および第2のインバータモジュールやモータを簡易に交換できる。」
(6)引用文献2には以下の図が示されている。
「[図8]
[図:0001412601000006.jpg]
[図10]
[図:0001412601000007.jpg]
」
第5 対比・判断
1.対比
以下、本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「三相誘導電動機」は、その作用、機能からみて、本願発明の「電気機械」に相当し、同様に、「インバータ主回路3、4」は「電力インバータ」に、「コイルU1、V1、W1」は「巻線」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明の「各相のコイルU1、V1、W1」は、本願発明の「少なくとも1つの巻線」に相当し、また、本願発明の「各巻線」にも相当する。
また、引用発明の「単位コイル」は、本願発明の「コイル」に相当する。
また、引用発明の「共通の電源回路」と本願発明の「複数のDC電源」とは、「電源」の点で共通し、また、引用発明の「前記単位コイルが、共通の電源回路から電力供給され、」と本願発明の「前記コイルが、独立して電力供給され、」とは、「前記コイルが、電力供給され」る点で共通する。
また、引用発明の「前記共通の電源回路から個別のインバータ主回路3、4に給電され」と本願発明の「前記DC電源それぞれは、個別の電力インバータに関連付けられており」とは、「電源は、個別の電力インバータに関連付けられており」の点で共通する。
また、引用発明の「各相のコイルU1、V1、W1のそれぞれの単位コイルは、個別のインバータ主回路3、4によって生成される同一の相に関連付けられた電力信号によって電力供給されている、」は、本願発明の「まったく同一の巻線のコイルは、個別の電力インバータによって生成されるまったく同一の相に関連付けられた電力信号によって電力供給されており、」に相当する。
また、引用発明の「インバータモータ」は、本願発明の「電動パワートレイン」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
「ロータ及びステータを含むタイプの電気機械と、
複数の電力インバータと、
電源と、
を備え、
前記ステータは、絶縁された導電性材料のコイルから作成される少なくとも1つの巻線を含み、
各巻線は前記電気機械の相に関連付けられており、
各巻線が、複数のコイルを含み、
前記少なくとも1つの巻線は、前記巻線をより小さい大きさの複数のコイルに分割することにより得られ、
前記コイルが、電力供給され、
前記電力インバータが、前記電気機械の異なる相に関連付けられるAC供給信号を生成するように構成されており、
電源は、個別の電力インバータに関連付けられており、まったく同一の巻線のコイルは、個別の電力インバータによって生成されるまったく同一の相に関連付けられた電力信号によって電力供給される、
電動パワートレイン。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明は、電源が「複数のDC電源」であり、「前記コイルが、独立して電力供給され」、「前記DC電源それぞれは、個別の電力インバータに関連付けられ」ているのに対し、
引用発明は、電源が共通の電源回路であり、単位コイルが、共通の電源回路から電力供給され、前記共通の電源回路から個別のインバータ主回路3、4に給電される点。
(相違点2)
本願発明は、「まったく同一の前記巻線の前記コイルによって生成される磁力線が、同じ方向に向けられる」のに対し、
引用発明は、各相のコイルU1、V1、W1それぞれの複数の単位コイルによって生成される磁力線が、同じ方向に向けられていることが記載されていない点。
2.判断
(1)相違点について
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用文献1の段落0032の「各相のコイルU1、V1、W1の単位コイルuc1及びuc2、vc1及びvc2、wc1及びwc2を2グループに分割すると共に、各グループ内の単位コイルをスター結線することにより、2つの三相コイル9a、9b(本発明でいう分割多相コイルに相当)を形成している。具体的には、第1の三相コイル9aは単位コイルuc1、vc1、wc1により形成され、第2の三相コイル9bは単位コイルuc2、vc2、wc2により形成されている。」(上記第4の1(1)クを参照)との記載、また、段落0033の「第1の三相コイル9aには、インバータ主回路3からの三相交流出力が印加され、第2の三相コイル9bには、インバータ主回路4からの三相交流出力が印加されるように接続している。」(上記第4の1(1)クを参照)との記載、及び、図6(上記第4の1(1)シを参照)の記載内容から、引用文献1には、各相のコイルU1、V1、W1の複数の単位コイルは、独立してインバータ主回路に接続されて、電力供給がされていることが示されている。
また、引用文献1の段落0052に「インバータ主回路に共通の電源回路(整流平滑回路1)を設けるようにしたが、インバータ主回路毎に電源回路を設ける構成としても良く、このようような構成によれば、当該電源回路に必要な平滑用コンデンサの容量を小さくできる利点が出てくる。」(上記第4の1(1)コを参照)と記載され、これら記載によれば、引用文献1には、複数の電源回路を設け、単位コイルがインバータ主回路3、4毎に設けられた電源回路から独立して電力供給され、個別のインバータ主回路3、4に、電源回路それぞれを関連付ける点も示されている。
さらに、引用文献2には、モータ40と、モータ40のU1相、V1相及びW1相、又は、U2相、V2相及びW2相に関連付けられた複数のインバータモジュール50A、50Bと、複数の直流の電源30a、30bとを備え、直流の電源30a、30bそれぞれが、インバータモジュール50A、50Bそれぞれと関連付けられたインバータ一体駆動モジュールが開示されており(上記第4の2(4)を参照)、即ち、電気機械と、電気機械のU1相、V1相及びW1相、又は、U2相、V2相及びW2相に関連付けられた複数の電力インバータと、複数のDC電源とを備え、各DC電源それぞれが、個別の電力インバータと関連付けられたパワーモジュールが開示されている。
また、引用文献2には、段落0055に「なお、上記実施の形態4では、2つの電源から第1および第2のインバータモジュールのそれぞれに独立して電力を供給するものとしているが、1つの電源から第1及び第2のインバータモジュールのそれぞれに電力を供給してもよい。」とも記載されている。
そして、引用文献1の上記記載(特に、段落0052の記載)や、引用文献2の上記記載によれば、引用発明のインバータ主回路3、4に、共通の電源回路から給電するか、インバータ主回路3、4毎に電源回路を設け、それぞれの電源回路から給電するかは、採用する電源回路の容量等に応じて、当業者が任意に選択し得た事項である。
また、引用文献1の段落0013に「電源を構成する整流平滑回路1は、三相交流電源2の出力を整流・平滑して電源ラインL1及びL2間に出力するようになっており、この電源ラインL1及びL2からインバータ主回路3及び4に給電される構成となっている。」(上記第4の1(1)カを参照)と記載されるように、引用発明の電源回路は、三相交流電源2を入力するものではあるものの、三相交流電源2の出力を整流・平滑してインバータ主回路3、4に給電するものであり、インバータ主回路3、4には、交流電源から変換された直流の電力を供給するものである。
そして、上記で示したように、引用文献2には、「電気機械と、電気機械のU1相、V1相及びW1相、又は、U2相、V2相及びW2相に関連付けられた複数の電力インバータと、複数のDC電源とを備え、各DC電源それぞれが、個別の電力インバータと関連付けられたパワーモジュール」が開示されているところ、モータのインバータに給電する電源として、引用文献2に記載されるように、直流電源を直接用いるか、引用発明のように、交流電源を直流に変換したものを用いるかは、モータの設置環境等に応じて、当業者が適宜選択し得る事項である。
以上によれば、引用発明において、引用文献2に記載の事項に倣って、電源を複数の直流電源とし、単位コイルが、独立して電力供給され、前記直流電源それぞれは、個別のインバータ主回路3、4に関連付けられるように構成し、本願発明の相違点1に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点2について
引用文献1の段落0031の「第3実施例における三相誘導電動機のステータ9は、図7に示すように、本来的には各相のコイルU1、V1、W1毎に直列配置された2個ずつの単位コイルuc1及びuc2、vc1及びvc2、wc1及びwc2を備えたものであり、これの接続を変更することにより図6のような構成としている。」(上記第4の1(1)クを参照)との記載及び図6(上記第4の1(1)シを参照)の記載内容、並びに誘導電動機における技術常識を踏まえると、2個の単位コイル(uc1及びuc2、vc1及びvc2、又はwc1及びwc2)によって生成されるそれぞれの磁力線が、ロータに対して互いに逆向きとなるように構成されていないことは明らかであるから、引用発明の複数の単位コイルによって生成される磁力線は、少なくともロータに対して同じ方向を向いているといえる。
また、本願発明の「まったく同一の前記巻線の前記コイルによって生成される磁力線が、同じ方向に向けられる」という事項が、同一の巻線のコイルが同じティースに巻かれることで、磁力線が同じ方向に向けられることまで特定するものであったとしても、引用発明における、生成される磁力線がロータに対して同じ方向を向く複数の単位コイルを、同じティースに巻くか、別のティースに巻くかは、誘導電動機に求められる性能、サイズ等によって定まるティースの数等に応じて、当業者が適宜、選択し得る設計事項にすぎないものである。
そして、引用文献1の段落0046の「この第8実施例における三相誘導電動機のステータ16は、一相当たり2個ずつ設けられるコイルU1及びU2、V1及びV2、W1及びW2は、各相毎に同一スロットに巻装されたものであり、それらを分割することにより2つの三相コイル16a、16(本発明でいう分割多相コイルに相当)を形成している。具体的には、第1の三相コイル16aは、コイルU1、V1、W1をスター結線することにより形成され、第2の三相コイル16bは、コイルU2、V2、W2をスター結線することにより形成されている。」(上記第4の1(1)ケを参照)との記載及び図13(上記第4の1(1)シを参照)の記載内容も勘案すると、引用発明において、各相のコイルU1、V1、W1それぞれの複数の単位コイルを同じティースに巻くように構成し、本願発明の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(2)本願発明の作用効果について
本願発明の作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載の事項から、当業者が予測できる範囲のものであって、格別顕著なものではない。
3.まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、この出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-011545