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特許拒絶査定不服審判

2022-010689

活動性強直性脊椎炎を治療するための抗TNF抗体、組成物、及び方法

審判番号
2022-010689
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-542504
請求日
2022年07月08日
審決日
2024年12月09日
公報発行日
2025年05月30日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
  • 【請求人代理人】小林 浩
  • 【請求人代理人】片山 英二
  • 【請求人代理人】小林 純子
  • 【請求人代理人】大森 規雄
  • 【請求人代理人】星川 亮
審判長/審判官
  • 審判長 松波 由美子
  • 審判官 冨永 みどり
  • 審判官 吉田 佳代子
分類
P18 .121-WZ (A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2019-542504「活動性強直性脊椎炎を治療するための抗TNF抗体、組成物、及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月16日国際公開、WO2018/147915、令和 2年 3月 5日国内公表、特表2020-506947〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 結論 本件審判の請求は、成り立たない。 理由 第1 手続の経緯 本願は、2017年(平成29年)11月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年2月7日、(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は、次のとおりである。 令和3年 7月28日付け 拒絶理由通知書 令和4年 2月 2日 意見書及び手続補正書の提出 同年 2月28日付け 拒絶査定 同年 7月 8日 審判請求書及び手続補正書の提出 令和6年 2月28日 当審による拒絶理由通知書 同年 9月 4日 意見書及び手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項4及び6に係る発明(以下「本願発明4」及び「本願発明6」という。)は、令和6年9月4日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項4及び6に記載された以下のとおりのものである。なお、下線は補正された箇所を示す。 「【請求項4】 活動性強直性脊椎炎の安全かつ効果的な治療に使用するための、配列番号36を含む重鎖(HC)及び配列番号37を含む軽鎖(LC)を有する少なくとも1つの単離された哺乳類抗TNF抗体と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は希釈剤と、を含む組成物であって、前記組成物が、IV注入により投与され、前記抗TNF抗体が0週目及び4週目に、次いでその後8週ごと(q8w)に、30±10分にわたって投与される2mg/kgの用量で投与されるように、前記組成物が投与され、前記組成物は、pH5.5のヒスチジン、ソルビトール、及びポリソルベート80を含む水性媒体を含み、前記組成物が、治療の16週目に、前記抗TNF抗体で治療された患者が、BASFI=-2.4±2.1SD、BASMI=-0.4±0.6SD、SF-36 PCS=8.5±7.5SD、SF-36 MCS=6.5±9.1SD、及びASQoL=-5.4±5.0SDからなる群から選択される1つ又は2つ以上の基準におけるベースラインからの平均変化を達成するように用いられる、組成物。」 「【請求項6】 活動性強直性脊椎炎の安全かつ効果的な治療に使用するための医薬組成物であって、配列番号36を含む重鎖(HC)及び配列番号37を含む軽鎖(LC)を有する少なくとも1つの単離された哺乳類抗TNF抗体を含み、前記抗TNF抗体が、0週目及び4週目に、次いでその後8週ごと(q8w)に、30±10分にわたって投与される2mg/kgの用量で静脈内(IV)注入により投与されるように前記医薬組成物が用いられ、前記医薬組成物は、pH5.5のヒスチジン、ソルビトール、及びポリソルベート80を含む水性媒体を含み、前記組成物が、前記治療を受けた患者の≧65%が治療の16週目にASAS20を達成するように用いられる、医薬組成物。」 第3 当審拒絶理由 当審が、令和6年2月28日付けで通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)のうち、令和6年5月31日受付の手続補正書による補正前の請求項4及び6に係る発明(以下「補正前発明4」及び「補正前発明6」という。)に対する拒絶理由の概要は、補正前発明4及び6は、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献1~4に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないという理由を含むものである。 引用文献1:Arthritis & Rheumatology, 2016 ACR/ARHP Annual Meeting,2016年,Vol. 68, No. S10, Abstract Number: 1043 引用文献2:Scandinavian Journal of Immunology,2010年,Vol. 72, Issue 2,pp. 75-85 引用文献3:Biotechnol. Prog.,2012年,Vol. 28, No. 4,pp. 899-916 引用文献4:Clinical Therapeutics, 2012年, Vol.34, Issue 1, p.77-90,<https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0149291811007661?via%3Dihub> 第4 引用文献に記載された事項及び引用発明 1 引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載された発明 (1)引用文献1の記載事項 当審拒絶理由において引用された、本願優先日前に発行された引用文献1(Arthritis & Rheumatology, 2016 ACR/ARHP Annual Meeting,2016年,Vol. 68, No. S10, Abstract Number: 1043)は、「活動性強直性脊椎炎の成人患者におけるゴリムマブ静脈内投与の安全性と有効性:28週目までの結果」と題する文献であって、次の事項が記載されている。なお、引用文献1は英文のため、その記載事項は翻訳文で示す(下線は当審が付したものである。以下同様。)。 ・記載事項1-1 「背景/目的:ゴリムマブ(GLM)は現在、RA、PsA、ASの成人患者を対象に皮下投与が承認されている。GO-ALIVE試験は、活動性ASの成人患者を対象にGLM静注療法の安全性と有効性を評価するために計画された。 方法:GO-ALIVE試験は第3相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験である。患者(18歳以上)は、確定AS(修正ニューヨーク基準による)と診断され、BASDAI≧4、総腰痛視覚的アナログスケール≧4、CRP≧0.3mg/dLであった。患者は0週目、4週目、8週ごとにGLM 2mg/kgを静脈内投与する群と、0週目、4週目、12週目にPBOを静脈内投与する群に1:1で無作為に割り付けられ、16週目にGLMにクロスオーバーした。最大20%の患者は抗TNF薬(GLM以外)の前治療歴があり、最大10%の患者は脊椎に完全強直症がある可能性があった。主要評価項目はwk16時点のASAS20であった。主要二次評価項目は、ASAS40、BASDAI50、およびwk16におけるBASFIスコアの変化であった。その他の統計学的に管理された評価項目は、BASMI、ASAS部分寛解、SF-36 PCS/MCS、ASQoLであった。患者は有害事象(AE)についてモニターされた。wk28までのデータがここに報告される。すべての治験責任医師と一部の治験依頼者は試験終了(wk60)まで治療群の割り付けを盲検化されたままである。 結果:208例が無作為に割り付けられ、試験薬が投与された(PBO:103例、GLM:105例)。ベースラインの人口統計学的および疾患特性は治療群間で類似していた。患者の78%は男性、平均年齢は39歳、平均罹病期間は5.5年、HLA-B27陽性は89.9%、脊椎の完全強直症は5.8%、抗TNF薬の前治療歴は14.4%であった。wk16時点で、GLM群ではPBO群に比べてASAS20(73.3%対26.2%)、ASAS40(47.6%対8.7%)、BASDAI50(41.0%対14.6%)の奏効率が有意に高かった(すべてp<0.001;表)。BASFIの低下もGLM群で有意に大きかった。SF-36のPCS/MCSとASQoLの改善は、wk16でPBOに対してGLM群で有意に大きかった。ASAS20はwk2の時点でGLM群がPBO群より有意に高かった(37.1%vs19.4%;p=0.005)。GLM群の反応はwk28まで維持された。wk16でGLMに移行したPBO群では、wk20で臨床効果が改善し、wk28まで維持された。wk16までにPBO群の23.3%、GLM群の32.4%が1回以上のAEを認めた。感染症が最も多かった(PBO群7.8%、GLM群11.4%)。wk28までに全てのGLM処置群の34.8%が1以上のAEを認めた;上咽頭炎(5.4%)が最も多かった。2例(1.0%)にSAEが認められた(膵炎、1例、肺炎、1例)。wk28まで日和見感染、悪性腫瘍、死亡は認められなかった。輸液反応の発現率は1.4%と低かった。3例に4回の反応がみられたが、重篤なものはなかった。 結論:GLM 2mg/kgの静脈内投与は、PBOと比較してASの徴候および症状の軽減に有効であった。GLMはwk28まで良好な忍容性を示し、安全性プロファイルはSC GLMを含む他の抗TNFsと一致していた。」 ・記載事項1-2 「 [図:0001421633000001.jpg] 」 表題の訳「16週目の有効性」 (2)引用文献1に記載された発明 引用文献1の記載事項1-1には、活動性強直性脊椎炎の患者に対して、0週目、4週目、その後8週ごとに2mg/kgの抗TNF抗体であるゴリムマブを静脈内投与(IV)することが記載され、記載事項1-2に示された表によると、治療された患者は、16週目に、BASFI=-2.4±2.1SD、BASMI=-0.4±0.6SD、SF-36 PCS=8.5±7.5SD、SF-36 MCS=6.5±9.1SD、及びASQoL=-5.4±5.0SDのベースラインからの平均変化を達成することが記載されている。 さらに、記載事項1-1には、治療された患者の73.3%が、16週目にASAS20を達成することが記載されている。 そうすると、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。 「活動性強直性脊椎炎の治療に使用するための、ゴリムマブである抗TNF抗体を含む組成物であって、前記組成物が、IV注入により投与され、ここで、前記抗TNF抗体が0週目及び4週目に、次いでその後8週ごと(q8w)に、投与される2mg/kgの用量で投与されるように、前記組成物が投与され、16週間目に、前記組成物により治療された患者が、BASFI=-2.4±2.1SD、BASMI=-0.4±0.6SD、SF-36 PCS=8.5±7.5SD、SF-36 MCS=6.5±9.1SD、及びASQoL=-5.4±5.0SDのベースラインからの平均変化を達成し、16週目にASAS20を達成する患者の割合が73.3%である、組成物。」(以下「引用発明1」という。) 2 引用文献2の記載事項 当審拒絶理由において引用された、本願優先日前に発行された引用文献2(Scandinavian Journal of Immunology,2010年,Vol. 72, Issue 2,pp. 75-85)は、「関節リウマチのゴリムマブ療法:概要」と題する文献であって、次の事項が記載されている。なお、引用文献2は英文のため、その記載事項は翻訳文で示す。 ・記載事項2-1(77頁右欄19行~30行) 「ゴリムマブは、ヒトTNF-αで免疫したトランスジェニックマウスで産生されるTNF-αに対して産生されたヒトモノクローナル抗体で、ヒト由来の可変領域および定常領域を持つ特異的な抗体を与える。このマウスは、重鎖およびκ軽鎖について活性化されたヒト免疫グロブリン遺伝子と不活化されたマウス免疫グロブリン遺伝子を含んでいた[28]。最終製品(SimponiTM・・・)には、有効成分であるゴリルマブと、L-ヒスチジン、L-ヒスチジン一塩酸塩、ソルビトール、ポリソルベート80及び注射用水から構成される不活性成分からなる2種類の成分が含まれている。」 3 引用文献3の記載事項 当審拒絶理由において引用された、本願優先日前に発行された引用文献3(Biotechnol. Prog.,2012年,Vol. 28, No. 4,pp. 899-916)には、次の事項が記載されている。なお、引用文献3は英文のため、その記載事項は翻訳文で示す。 ・記載事項3-1(908頁右欄下から8行~下から2行) 「バイオ医薬品の製造における2つの重要な課題は、高濃度の最終濃度を達成すること(およびそれを取り扱うこと)、そして工程時間と凝集体形成を削減することである112。mAbsはしばしば高い治療用量が必要とされ(表9参照)、剤形は容量制限されているため、高濃度におけるDFとUFの両方を最適化する能力は、mAb製造の成功にとって極めて重要である20。」 ・記載事項3-2(908頁表9) 「 [図:0001421633000002.jpg] 」 表題の訳「FDA承認のmAb製剤」 4 引用文献4の記載事項 当審拒絶理由において引用された、本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献4(Clinical Therapeutics, 2012年, Vol.34, Issue 1, p.77-90,<https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0149291811007661?via%3Dihub>)は、「関節リウマチ患者における反復皮下および静脈内投与後のゴリムマブの薬物動態および併用メトトレキサートの効果:非盲検ランダム化研究」と題する文献であって、次の事項が記載されている。なお、引用文献4は英文のため、その記載事項は翻訳文で示す。 ・記載事項4-1(「アブストラクト」の項) 「背景:腫瘍壊死因子αの活性を阻害するヒトモノクローナル抗体であるゴリムマブの単回皮下(SC)または静脈内(IV)投与後の薬物動態はこれまでに検討されている。 目的:本研究の目的は、活動性の関節リウマチ(RA)患者において、ゴリムマブの複数回皮下または静脈内投与後の薬物動態を評価することであった。また、メトトレキサート(MTX)の併用がゴリムマブの薬物動態に及ぼす影響についても検討した。 方法:この非盲検無作為化第I相試験において、49名の成人関節リウマチ患者は、20週目まで4週毎にゴリムマブ100mgをSC投与(n=33)、または0週目と12週目にゴリムマブ2mg/kgを静脈内投与(n=16)された。連続採血を行い、血清中のゴリムマブ濃度を電気化学発光免疫測定法により測定した。ゴリムマブの薬物動態パラメータは、ノンコンパートメント解析を用いて算出した。有害事象は毎回モニタリングした。 結果:被験者は白人(84%)、女性(76%)が多く、年齢中央値は57歳であった。ゴリムマブSC投与後、血清中ゴリムマブ濃度は約12週で定常状態に達し、平均トラフ血清中濃度は1.15~1.24μg/mLであった。ゴリムマブ2mg/kgの最終30分静注後の平均クリアランス(SD)は7.5(2.6)mL/d/kgであった。ゴリムマブ2mg/kgの点滴静注後の平均終末半減期は約13日であった。ゴリムマブSC投与の平均絶対バイオアベイラビリティは53%と推定された。MTXの併用有無によるゴリムマブのCL/Fの幾何平均値はそれぞれ13.9mL/d/kgと21.2mL/d/kgであり、CL/Fの幾何平均比は65.5%(90%信頼区間:45.2%-94.9%、P= 0.06)であった。ゴリムマブの忍容性は一般的に良好であった。試験期間中に悪性腫瘍および死亡は発生しなかった。 結論:ゴリムマブの薬物動態は、本RA患者集団におけるSCまたは静脈内投与で一貫していた。本試験において、ゴリムマブの忍容性は良好であり、予期せぬ有害事象は認められなかった。」 第5 当審の判断 1 本願発明4について (1)対比 本願明細書の【0302】には、「SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)は、免疫グロブリンG1(IgG1)重鎖アイソタイプ(G1m[z]アロタイプ)及びκ軽鎖アイソタイプを有する完全ヒトモノクローナル抗体である。ゴリムマブは、配列番号36を含む重鎖(HC)及び配列番号37を含む軽鎖(LC)を有する。ゴリムマブの分子量は、149,802~151,064ダルトンの範囲である。ゴリムマブは、高い親和性及び特異性でヒト腫瘍壊死因子α(TNFα)に結合し、TNFα生物活性を中和する。」と記載されていることからみて、引用発明1の「ゴリムマブである抗TNF抗体」は、本願発明4の「配列番号36を含む重鎖(HC)及び配列番号37を含む軽鎖(LC)を有する少なくとも1つの単離された哺乳類抗TNF抗体」に相当する。 また、引用発明1の組成物は、「前記組成物により治療された患者が、BASFI=-2.4±2.1SD、BASMI=-0.4±0.6SD、SF-36 PCS=8.5±7.5SD、SF-36 MCS=6.5±9.1SD、及びASQoL=-5.4±5.0SDのベースラインからの平均変化を達成」するものであるから、本願発明4の「前記組成物が、治療の16週目に、前記抗TNF抗体で治療された患者が、BASFI=-2.4±2.1SD、BASMI=-0.4±0.6SD、SF-36 PCS=8.5±7.5SD、SF-36 MCS=6.5±9.1SD、及びASQoL=-5.4±5.0SDからなる群から選択される1つ又は2つ以上の基準におけるベースラインからの平均変化を達成するように用いられる」ものに相当する。 そうすると、本願発明4と引用発明1の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 活動性強直性脊椎炎の治療に使用するための、配列番号36を含む重鎖(HC)及び配列番号37を含む軽鎖(LC)を有する少なくとも1つの単離された哺乳類抗TNF抗体と、を含む組成物であって、前記組成物が、IV注入により投与され、前記抗TNF抗体が0週目及び4週目に、次いでその後8週ごと(q8w)に、2mg/kgの用量で投与されるように、前記組成物が投与され、前記組成物は、治療の16週目に、前記抗TNF抗体で治療された患者が、BASFI=-2.4±2.1SD、BASMI=-0.4±0.6SD、SF-36 PCS=8.5±7.5SD、SF-36 MCS=6.5±9.1SD、及びASQoL=-5.4±5.0SDからなる群から選択される1つ又は2つ以上の基準におけるベースラインからの平均変化を達成するように用いられる、組成物。 <相違点4-1> 治療が、本願発明4では、「安全かつ効果的な」ものであることが特定されているのに対し、引用発明1はそのような特定がない点。 <相違点4-2> 組成物が、本願発明4では、「少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は希釈剤と」を含むことが特定されているのに対し、引用発明1はそのような特定がない点。 <相違点4-3> 組成物が、本願発明4では、「30±10分にわたって投与される」のに対し、引用発明1はそのような特定がない点。 <相違点4-4> 組成物が、本願発明4では、「pH5.5のヒスチジン、ソルビトール、及びポリソルベート80を含む水性媒体を含」むことが特定されているのに対し、引用発明1ではそのような特定がない点。 (2)判断 ア 相違点4-1について 引用文献1には、ゴリムマブは28週まで良好な忍容性を示した旨が記載されているから(記載事項1-1)、引用発明1における治療は、「安全」なものといえ、さらに、引用文献1には、ゴリムマブの静脈内投与は、活動性強直性脊椎炎の徴候および症状の軽減に有効であったことが記載されているから(記載事項1-1)、引用発明1における治療は、「効果的な」ものであるといえる。 よって、この相違点1は、実質的な相違点とはいえない。 イ 相違点4-2について 当該技術分野において、抗体製剤を担体又は希釈剤を含むように調製することは技術常識であることを考慮すると、抗体であるゴリムマブを含む引用発明1の組成物は、「担体又は希釈剤」を含むものと認められる。 仮に、この点で相違するとしても、上記技術常識を考慮すれば、抗体であるゴリルマブを含む引用発明1において、「担体又は希釈剤」を含むようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 ウ 相違点4-3について 引用文献4には、2mg/kgのゴリムマブを30分間、静脈注射することが記載されていることを考慮すると、引用発明1において、組成物を「30±10分にわたって投与」することは、当業者が容易に想到し得ることである。 エ 相違点4-4について 当該技術分野において、製剤の物性向上といった周知の課題を解決するために、医薬組成物の組成を好適化することはよく行われていることであるところ、上記引用文献2、3に記載されるように、ゴリルマブを含む製品として、ゴリムマブと、pH5.5のヒスチジン、ソルビトール、ポリソルベート80及び注射用水からなる組成物はよく知られていることを考慮すれば、引用発明1において、「pH5.5のヒスチジン、ソルビトール、及びポリソルベート80を含む水性媒体」を含むようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 オ 効果について 本願発明4の構成により奏される効果について検討すると、本願の特許請求の範囲には、本願発明4に係る組成物が、「BASFI=-2.4±2.1SD、BASMI=-0.4±0.6SD、SF-36 PCS=8.5±7.5SD、SF-36 MCS=6.5±9.1SD、及びASQoL=-5.4±5.0SDからなる群から選択される1つ又は2つ以上の基準におけるベースラインからの平均変化を達成する」ように用いられることが特定され、発明の詳細な説明には、実際、基準におけるベースラインからの平均変化を達成したことが確認されている。しかしながら、引用文献1には、ゴリムマブを、IV注入により、0週目及び4週目に、次いでその後8週ごと(q8w)に、2mg/kgの用量で投与することにより、これらの基準におけるベースラインからの平均変化が達成されることが示されているのであるから、本願発明4の構成により奏される効果が、引用発明1及び引用文献1~4の記載から当業者が予測し得る範囲を超える顕著な効果であるとは認められない。 また、本願明細書の実施例において、当該効果を確認した臨床試験について、次のように記載されている。 「GO-ALIVEは、活動性ASを有する成人患者におけるIVゴリムマブの安全性と有効性を評価するためにデザインされたフェーズ3多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験である。患者(18歳以上)は明確なAS(改訂ニューヨーク基準に従って)及びBASDAI≧4、総腰痛視覚的アナログスケール≧4、及びCRP≧0.3mg/dLの診断を受けた。患者は、0週目、4週目及び8週ごとのIVゴリムマブ2mg/kg、又は16週目にゴリムマブにクロスオーバーする0週目、4週目、及び12週目のプラセボに無作為化された(1:1)。最大20%の患者は、以前の抗TNF薬(ゴリムマブ以外)を有し得、患者の最大10%は、脊椎の完全な強直性を有し得る。一次エンドポイントは、16週目におけるASAS20であった。主要な二次エンドポイントは、16週目におけるASAS40、BASDAI50、及びBASFIスコアの変化であった。他の統計的に制御された評価はBASMI、ASAS部分寛解、SF-36 PCS/MCS、及びASQoLであった。患者は、有害について監視され、28週目までのデータをここに報告する。全ての研究者及び何人かのスポンサー職員は、研究の終了(60週目)まで治療群について盲検化されたままである。」(【0452】) 一方、引用文献1には、臨床試験について、次のように記載されている。 「GO-ALIVE試験は第3相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験である。患者(18歳以上)は、確定AS(修正ニューヨーク基準による)と診断され、BASDAI≧4、総腰痛視覚的アナログスケール≧4、CRP≧0.3mg/dLであった。患者は0週目、4週目、8週ごとにGLM 2mg/kgを静脈内投与する群と、0週目、4週目、12週目にPBOを静脈内投与する群に1:1で無作為に割り付けられ、16週目にGLMにクロスオーバーした。最大20%の患者は抗TNF薬(GLM以外)の前治療歴があり、最大10%の患者は脊椎に完全強直症がある可能性があった。主要評価項目はwk16時点のASAS20であった。主要二次評価項目は、ASAS40、BASDAI50、およびwk16におけるBASFIスコアの変化であった。その他の統計学的に管理された評価項目は、BASMI、ASAS部分寛解、SF-36 PCS/MCS、ASQoLであった。患者は有害事象(AE)についてモニターされた。wk28までのデータがここに報告される。すべての治験責任医師と一部の治験依頼者は試験終了(wk60)まで治療群の割り付けを盲検化されたままである。」(記載事項1-1) 両者の記載からみて、引用文献1に記載された臨床試験と本願明細書に記載された臨床試験は、その名称、研究目的、研究方法、研究結果がすべて一致するものであるから、同一の試験である。 そうすると、引用文献1には、上記相違点4-2~4-4に係る賦形剤や用法についての具体的な記載はないものの、本願発明1と同じ賦形剤を用いて、同じ用法で用いられたものである蓋然性が高く、また、仮に賦形剤が異なったとしても、BASFIの基準からの平均変化について同効が達成されていることからみて、賦形剤の相違によってその効果が損なわれるとは解されないから、本願発明1の効果は、引用文献1の記載から予測し得るものであって格別なものとは認められない。 さらに、引用文献1に開示される「BASFI」、「ASAS20」等のスコアが改善されていることからみて、引用発明1により活動性強直性脊椎炎に対する治療効果が高まっていることは理解できるから、引用文献1に結果の開示のない「ASDAS不活性疾患」等のスコアについても改善されることは(本願明細書【表11】)、引用発明1及び引用文献1~4の記載から当業者が予測し得る範囲を超える顕著な効果であるとは認められない。 (3)小括 以上のとおり、本願発明4は、引用発明1及び引用文献1~4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 2 本願発明6について (1)対比 引用発明1の組成物は、「16週目にASAS20を達成する患者の割合が73.3%」であるから、本願発明6の「前記組成物が、前記治療を受けた患者の≧65%が治療の16週目にASAS20を達成するように用いられる」ものに相当する。 さらに、上記1(1)での検討を踏まえると、本願発明6と引用発明1の一致点及び相違点は次のとおりになる。 <一致点> 活動性強直性脊椎炎の治療に使用するための医薬組成物であって、配列番号36を含む重鎖(HC)及び配列番号37を含む軽鎖(LC)を有する少なくとも1つの単離された哺乳類抗TNF抗体を含み、前記抗TNF抗体が、0週目及び4週目に、次いでその後8週ごと(q8w)に、投与される2mg/kgの用量で静脈内(IV)注入により投与されるように前記医薬組成物が用いられ、前記医薬組成物は、前記治療を受けた患者の≧65%が治療の16週目にASAS20を達成するように用いられる、医薬組成物。 <相違点6-1> 治療が、本願発明6では、「安全かつ効果的な」ものであることが特定されているのに対し、引用発明1はそのような特定がない点。 <相違点6-2> 組成物が、本願発明6では、「30±10分にわたって投与される」のに対し、引用発明1はそのような特定がない点。 <相違点6-3> 組成物が、本願発明6では、「pH5.5のヒスチジン、ソルビトール、及びポリソルベート80を含む水性媒体を含」むことが特定されているのに対し、引用発明1ではそのような特定がない点。 (2)判断 ア 相違点6-1について 引用文献1には、ゴリムマブは28週まで良好な忍容性を示した旨が記載されているから(記載事項1-1)、引用発明1における治療は、「安全」なものといえ、さらに、引用文献1には、ゴリムマブの静脈内投与は、活動性強直性脊椎炎の徴候および症状の軽減に有効であったことが記載されているから(記載事項1-1)、引用発明1における治療は、「効果的な」ものである。 よって、この相違点1は、実質的な相違点とはいえない。 イ 相違点6-2について 当該技術分野において、抗体製剤を担体又は希釈剤を含むように調製することは技術常識であることを考慮すると、抗体であるゴリムマブを含む引用発明1の組成物は、「担体又は希釈剤」を含むものと認められる。 仮に、この点で相違するとしても、上記技術常識を考慮すれば、抗体であるゴリルマブを含む引用発明1において、「担体又は希釈剤」を含むようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 ウ 相違点6-3について 引用文献4には、2mg/kgのゴリムマブを30分間、静注することが記載されていることを考慮すると、引用発明1において、組成物を「30±10分にわたって投与」することは、当業者が容易に想到し得ることである。 エ 効果について 本願の特許請求の範囲には、本願発明6に係る組成物が、「前記治療を受けた患者の≧65%が治療の16週目にASAS20を達成するように用いられる」という効果を奏するように用いられることが特定され、発明の詳細な説明には、当該効果を奏することが確認されているが、ゴリムマブを、IV注入により、0週目及び4週目に、次いでその後8週ごと(q8w)に、2mg/kgの用量で投与することにより、当該効果が達成されることは、引用文献1に示されるとおり既に知られており、ゴリルマブを含む静脈注射用の製品として、ゴリムマブと、pH5.5のヒスチジン、ソルビトール、ポリソルベート80及び注射用水を含むものは周知であって、水性媒体の組成の変更によって当該効果が損なわれるとは解されないから、本願発明6の構成により奏される効果が、引用発明1及び引用文献1~4の記載から当業者が予測し得る範囲を超える顕著な効果であるとは認められない。 また、上記1(2)オで説示したように、引用文献1に記載された臨床試験と本願明細書に記載された臨床試験は、同一の試験である。 そうすると、引用文献1には、上記相違点6-2及び6-3に係る賦形剤や用法についての具体的な記載はないものの、本願発明1と同じ賦形剤を用いて、同じ用法で用いられた蓋然性が高く、また、仮に賦形剤が異なったとしても、ASAS20について同効が達成されていることからみて、賦形剤の相違によってその効果が損なわれるとは解されないから、本願発明1の効果は、引用文献1の記載から予測し得るものであって格別なものとは認められない。 さらに、引用文献1に開示される「BASFI」、「ASAS20」等のスコアが改善されていることからみて、引用発明1により活動性強直性脊椎炎に対する治療効果が高まっていることは理解できるから、引用文献1に結果の開示のない「ASDAS不活性疾患」等のスコアについても改善されることは(本願明細書【表11】)、引用発明1及び引用文献1~4の記載から当業者が予測し得る範囲を超える顕著な効果であるとは認められない。 (3)小括 以上のとおりであるから、本願発明6は、引用発明1及び引用文献1~4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 3 審判請求人の主張について (1)審判請求人の主張 審判請求人は、令和6年9月4日提出の意見書において、次のアの点を述べ、本願発明4及び6の進歩性を主張している。 ア 引用文献1~4には、pH5.5のヒスチジン、ソルビトール、及びポリソルベート80を含む水性媒体を含み、IV注入により投与され、活動性強直性脊椎炎の安全かつ効果的な治療に使用されるような組成物を記載も示唆もしていないところ、本願発明4及び6に係る組成物は、pH5.5のヒスチジン、ソルビトール、およびポリソルベート80を含む水性媒体を含むものであり、0週目及び4週目、次いでその後8週ごと(q8w)の、30±10分にわたるゴリムマブの2mg/kgの用量でのIV投与により、有効性が改善すること、すなわち、本願発明4に記載のような基準におけるベースラインからの平均変化によって測定される有効性の改善や、本願発明6に記載のようなASAS20を達成する対象の割合によって測定される有効性の改善が示されるという、引用文献1~4の記載から当業者が予測できない効果を奏するものである。 (2)審判請求人の主張に対する当審の判断 上記主張について検討する。 上記1(2)及び2(2)で説示したとおり、本願発明4又は6における、「活動性強直性脊椎炎の安全かつ効果的な治療に使用するための、配列番号36を含む重鎖(HC)及び配列番号37を含む軽鎖(LC)を有する少なくとも1つの単離された哺乳類抗TNF抗体と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は希釈剤と、を含む組成物であって、前記組成物が、IV注入により投与され、前記抗TNF抗体が0週目及び4週目に、次いでその後8週ごと(q8w)に、30±10分にわたって投与される2mg/kgの用量で投与されるように、前記組成物が投与され、前記組成物は、pH5.5のヒスチジン、ソルビトール、及びポリソルベート80を含む水性媒体を含み」という構成については、引用発明1及び引用文献1~4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得るものである。 そして、審判請求人は、当該構成を採択したことにより、本願発明4では、「BASFI=-2.4±2.1SD、BASMI=-0.4±0.6SD、SF-36 PCS=8.5±7.5SD、SF-36 MCS=6.5±9.1SD、及びASQoL=-5.4±5.0SDからなる群から選択される1つ又は2つ以上の基準におけるベースラインからの平均変化を達成する」という効果を、本願発明6では、「前記治療を受けた患者の≧65%が治療の16週目にASAS20を達成する」という効果を奏するものである旨主張するが、前記1(2)オ及び前記2(2)エで説示したとおり、これらの効果は、引用発明1においても奏することが予測し得る効果であるし、本願明細書の実施例において賦形剤や用法の影響については検証されていないことから、賦形剤及び用法の特定によって新たな効果が奏されるものとはいえない。 したがって、引用文献1~4の記載から当業者が予測できない効果である旨の審判請求人の主張は、採用することができない。 第6 むすび 以上のとおり、本願の請求項4及び6に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献1~4の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-010689

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