審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2022-010466

蓄電実験装置

審判番号
2022-010466
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-163763外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年07月05日
審決日
2023年05月09日
公報発行日
2023年06月30日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (H02J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-163763「蓄電実験装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 3月 5日出願公開、特開2020- 36520、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

目次 ▾ 16項目
理 由

第1 手続の経緯

本願は、平成30年8月31日の出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。

令和 3年10月27日付け 拒絶理由通知書

12月27日 意見書・手続補正書

令和 4年 3月28日付け 拒絶査定

7月 5日 審判請求書・手続補正書

以下では、令和4年3月28日付け拒絶査定のことを「原査定」といい、同年7月5日の手続補正書による補正を「本件補正」という。

第2 原査定の概要

原査定の概要は、以下のとおりである。

1.(進歩性)この出願の請求項1及び3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2~9に示される周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>

1.山本逸郎,小学校理科6年「電気の利用」の中の手回し発電機とコンデンサーを用いた実験について,弘前大学教育学部紀要,2012年3月,第107号,p.51~64

2.登録実用新案第3147353号公報

3.コンデンサー|物理[理科教材・科学工作 web販売、ネット通販の美工社],2015年10月6日,[2021年10月22日検索],<URL:https://web.archive.org/web/20151006235206/http://bicosya.com:80/kyouzai/catalogue/r0409.shtml>

4.コンデンサー蓄電実験器 インジケータ付 9730の商品ページ|卸・仕入れサイト[スーパーデリバリー],2018年4月28日,[2021年10月22日検索],<URL:https://www.superdelivery.com/p/r/pd_p/6115543/>

5.手まわし発電機&電気変換実験セット エレチェンジャー ECO-303,2015年9月15日,[2022年3月28日検索],<URL:https://www.suzuki-music.co.jp/products/52282/>

6.手まわし発電機&電気変換実験セット エレチェンジャー ECO-303製品カタログ,2015年8月1日,[2022年3月28日検索],<URL:https://www.suzuki-music.co.jp/app/uploads/99c084968184629cb30abe4dfb54c51a.pdf>

7.理科教材,[2022年3月28日検索],<URL:https://www.suzuki-music.co.jp/app/uploads/17_SCI-1.pdf>

8.特開2011-250494号公報

9.特開2007-291650号公報

第3 本件補正について

本件補正は、請求項1の「蓄電状態を表示する表示部と、」との記載を、「蓄電状態を数値でデジタル表示する表示部と、」(下線は補正箇所を示す。)に補正するものであり、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当する。

そして、本件補正は、同条3項及び4項の要件に違反するものではない。

また、以下の第4~第9に示すように、本件補正後の請求項1~3に係る発明は、同条第6項において準用する同法第126条第7項(独立特許要件)を満たすものである。

したがって、本件補正は適法になされたものである。

第4 本願発明

本願の請求項1~3係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明3」という。)は、本件補正によって補正された特許請求の範囲に記載される以下のとおりのものであると認める。

「 【請求項1】
入力端子を介して外部から供給される電気エネルギーを蓄える蓄電器と、
前記蓄電器の蓄電状態を数値でデジタル表示する表示部と、
前記蓄電器の蓄電電圧に基づいて、前記表示部に表示する前記蓄電状態を制御する表示制御部と、を備え、
続きを表示(全13行)
前記表示制御部は、前記蓄電器の前記蓄電電圧が前記蓄電器の定格電圧よりも低い所定の割合に達すると、前記蓄電器が満充電されたとみなして前記蓄電状態が満充電であると前記表示部に表示させる蓄電実験装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電実験装置において、
前記表示制御部は、前記蓄電器の蓄電電圧が前記蓄電器の定格電圧よりも低い所定電圧に達したときを100パーセントとするみなし蓄電率を
みなし蓄電率=(前記蓄電器の蓄電電圧)/(前記所定電圧)
によって算出し、前記みなし蓄電率が100%以上であるときに前記蓄電器が満充電されたとみなす蓄電実験装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の蓄電実験装置において、
前記蓄電器が満充電されたとみなされたことを報知する満充電報知部材をさらに備える蓄電実験装置。」

第5 引用文献の記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)

1 引用文献1について

(1)引用文献1の記載

原査定で引用された“小学校理科6年「電気の利用」の中の手回し発電機とコンデンサーを用いた実験について”(山本逸郎著、弘前大学教育学部紀要)(以下、「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は強調のために当審で付した(以下同様)。

ア 52頁左欄下から7行~右欄6行

「筆者は,10年以上前から学部の授業の中で手回し発電機とコンデンサーを用いた実験を実施してきた。学習指導要領が改訂された20年度からは,学部の小学校教育専攻の学生に対する授業や小学校教諭対象の教員免許状更新講習の中で,学習指導要領の内容に対応した手回し発電機,コンデンサー,発光ダイオードを用いた実験を展開してきた。これらの経験に基づいて前述の教科書の内容を見ると,手回し発電機とコンデンサーの使い方に関して,若干気になる点が見られる。今回,いろいろな条件でコンデンサーの放電特性を測定したので,それらの結果と合わせながら,手回し発電機とコンデンサーを使った実験の内容を考察していく。」

イ 53頁右欄28~33行

「今から40年ほど前,日本において電気二重層コンデンサーまたはスーパーキャパスタと呼ばれる極めて大きな電気容量Cをもつコンデンサーが開発された。小学校理科の実験で使われるコンデンサーは,この電気二重層コンデンサーであり,その電気容量は1Fとか10Fの値をもつ。」

ウ 54頁右欄図6

[図:0001398007000001.jpg]

エ 54頁右欄5~6行

「図6に本研究で使用した5.5V1Fの電気二重層コンデンサーの写真を示す。」

オ 54頁右欄26~29行

「図7に回路図を示す。2連の切り替えスイッチ(アンテナスイッチ)の真ん中の端子にコンデンサーをつなぐ。切り替えスイッチの右側が充電回路,左側が放電回路を形成する。」

カ 55頁左欄図7

[図:0001398007000002.jpg]

キ 59頁右欄10~12行

「簡単にまとめると,20秒ほどで大まかな充電は終わるが,mAオーダーの充電は5分程度かかる。」

ク 60頁左欄16~21行

「まず,手回し発電機の30秒後の充電電圧は4.58Vであり,電圧の上昇カーブから推定すると,回転を続けた場合もう少し(5V弱まで)上がりそうである。しかしながら,電流は30秒でほぼ0Aになっている。従って,30秒は,ほぼ充電状態と言える。」

ケ 63頁左欄11~19行

「以上を踏まえると,基本の実験は,コンデンサーを満充電状態にしてから電球等につなぎかえるのが適当である。すなわち,約5Vで30秒間充電してコンデンサーをほぼ満充電状態にし,モーターの回転時間,豆電球や発光ダイオードの点灯時間を測定する実験を行う。10節で示したように,30秒間の充電でコンデンサーは,ほぼ満充電状態になる。実際にはもう少し時間をかけた方がより完全に充電されるが,児童が回すことを考えると,30秒が適当であろう。」

コ 63頁右欄6~24行

「ここでの実験では,充電と放電の切り替えに,図7の回路図のように切り替えスイッチを利用した。しかしながら,切り替えスイッチを使わずに,コンデンサーにつないだ手回し発電機のミノムシクリップを手で取り外して,つなぎ換える場合,特に10V充電では,手回し発電機のハンドルから手を離した途端,ハンドルが速く回りだすので慌ててしまうかもしれない。慌てて時間がかかった分,コンデンサーにたまった電荷の量が減ってしまい,表のように2倍にならない場合が予想される。実際,筆者が授業の中で同じ実験を行っても,3.8V0.3A豆電球の点灯時間が1.5倍くらいしか長くならない学生が結構いる。これを避けるためには,本研究のように切り替えスイッチを使うか,教材会社で取り扱っている製品で,充電側に電流の流れを一方向にする整流ダイオードをつなぐことによって,充電を止めても放電の向きに電流が流れないコンデンサー充電器25)を使うとよい。これだと手回し発電機のハンドルから手を離しても,ハンドルが回転を始めることはない。」

(2)引用発明の認定

前記(1)の記載によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「手回し発電機と電気二重層コンデンサーを使った小学校理科の実験であって(前記(1)ア、イ)、
充電と放電の切り替えに切り替えスイッチを利用し(前記(1)コ)、
2連の切り替えスイッチの真ん中の端子にコンデンサーをつなぎ、切り替えスイッチの右側が充電回路、左側が放電回路を形成し(前記(1)オ、カ)、
約5Vで30秒間充電してコンデンサーをほぼ満充電状態にし、モーターの回転時間、豆電球や発光ダイオードの点灯時間を測定する実験(前記(1)ケ)。」

2 引用文献8について

原査定で周知技術を示すために引用された特開2011-250494号公報(以下、「引用文献8」という。)には、以下の記載がある。

「【0016】
一方、車両駐車検出装置8としてのキースイッチセンサがキースイッチのOFFによる車両駐車を検出した時に、温度検出手段9によって検出された電気二重層コンデンサ3の温度が予め設定された所定レベル、例えば80℃を超え、かつ電圧検出手段10によって検出された電気二重層コンデンサ3が満充電に相当するレベルであった場合、制御装置7は電力変換器4を動作させ電気二重層コンデンサ3の放電とバッテリ5の充電を行う。これにより、電気二重層コンデンサ3が高温かつ満充電で長時間放置されることが避けられ、電気二重層コンデンサ3の劣化が抑制される。なお、電気二重層コンデンサ3の満充電は、例えば満充電時の電圧が27Vのとき、電圧検出手段10による検出電圧が例えば25Vを超えれば満充電とみなすことで判定される。」

第6 本願発明1と引用発明との対比

以下では、後の参照の便宜のため、本願の特許請求の範囲の請求項1を、以下のように分説する。

【請求項1】

A 入力端子を介して外部から供給される電気エネルギーを蓄える蓄電器と、

B 前記蓄電器の蓄電状態を数値でデジタル表示する表示部と、

C 前記蓄電器の蓄電電圧に基づいて、前記表示部に表示する前記蓄電状態を制御する表示制御部と、を備え、

D 前記表示制御部は、前記蓄電器の前記蓄電電圧が前記蓄電器の定格電圧よりも低い所定の割合に達すると、前記蓄電器が満充電されたとみなして前記蓄電状態が満充電であると前記表示部に表示させる

E 蓄電実験装置。

1 発明特定事項Aについて

引用発明の「コンデンサー」(電気二重層コンデンサー)は、明らかに、本願発明1の「電気エネルギーを蓄える蓄電器」に相当する。

引用発明において、「コンデンサー」に蓄えられる電気エネルギーは、「切り替えスイッチ」の右側の充電回路から供給されることが明らかであるから、引用発明の「切り替えスイッチ」の右側の端子は、本願発明1の「入力端子」に相当し、本願発明1と引用発明とは「入力端子を介して外部から供給される電気エネルギーを蓄える蓄電器」を備える点で一致する。

2 発明特定事項Eについて

引用発明の「コンデンサー」及び「切り替えスイッチ」は、小学校理科の実験をするための装置、すなわち、実験装置を構成する。

また、引用発明の実験においては「約5Vで30秒間充電してコンデンサーをほぼ満充電状態」にするから、前記実験は蓄電の実験であり、前記実験装置は蓄電実験装置であるといえる。

したがって、引用発明の「コンデンサー」及び「切り替えスイッチ」は、本願発明1の「蓄電実験装置」に相当する。

3 前記1及び2によれば、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

〈一致点〉

「入力端子を介して外部から供給される電気エネルギーを蓄える蓄電器を備える
蓄電実験装置。」である点。

〈相違点〉

本願発明1は、「前記蓄電器の蓄電状態を数値でデジタル表示する表示部」(発明特定事項B)及び「前記蓄電器の蓄電電圧に基づいて、前記表示部に表示する前記蓄電状態を制御する表示制御部」(発明特定事項C)を備え、「前記表示制御部」が、「前記蓄電器の前記蓄電電圧が前記蓄電器の定格電圧よりも低い所定の割合に達すると、前記蓄電器が満充電されたとみなして前記蓄電状態が満充電であると前記表示部に表示させる」(発明特定事項D)のに対し、引用発明には「表示部」及び「表示制御部」が存在しない点。

第7 本願発明1の進歩性についての判断

前記第6、3に示した相違点について検討する。

引用発明の「ほぼ満充電状態」は、満充電ではないものの、満充電に近い状態であるという点で、本願発明1の「満充電されたとみな」された状態(発明特定事項D)に対応する。

しかしながら、引用発明の「ほぼ満充電状態」は、「約5Vで30秒間充電」することで得られる状態であって、コンデンサーの蓄電電圧によって判断される状態ではない。

そして、引用発明においては、30秒間充電をすることによって「ほぼ満充電状態」になることがわかっているから、コンデンサーがほぼ満充電になったか否かを判断する目的で蓄電電圧を測定する構成を導入する動機付けが存在しない。

なお、電気二重層コンデンサーにおいて満充電時の電圧よりも低い所定電圧を超えた時点で満充電とみなすという周知技術(前記第5、2)は、引用発明において前記動機付けが存在しないことを左右するものではない。

したがって、前記相違点に係る本願発明1の構成は、当業者といえども引用発明から容易に想到し得るものではない。

以上によれば、本願発明1は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められない。

第8 本願発明2及び3の進歩性についての判断

本願発明2及び3は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに別の発明特定事項を付加したものである。

したがって、本願発明2及び3と引用発明とは、少なくとも、前記第6、3に示した相違点において相違する。

そして、前記第7のとおり、前記相違点に係る構成は、当業者といえども引用発明から容易に想到し得るものではない。

以上によれば、本願発明2及び3は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められない。

第9 むすび

前記第7及び第8のとおり、本願発明1~3は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2022-010466

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ論点・分野の審決(審決分類)486件(121・H02J)
  • 2025-011202拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)異物質検出方法及びそのための装置及びシステム
    共通の審決分類: 121・H02J
  • 2025-011204拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)異物質検出方法及びそのための装置及びシステム
    共通の審決分類: 121・H02J
  • 2025-009390拒絶査定不服審判 / 2026-08-19 / 原査定取消(特許/登録すべき)電力制御システム、機器および情報処理装置
    共通の審決分類: 121・H02J
  • 2025-011194拒絶査定不服審判 / 2026-08-18 / 原査定取消(特許/登録すべき)無線電力伝送制御方法および装置
    共通の審決分類: 121・H02J
  • 2025-001850拒絶査定不服審判 / 2026-06-23 / 請求不成立電力供給システム
    共通の審決分類: 121・H02J

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存