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特許拒絶査定不服審判

2022-009208

乳酵素処理物、その製造方法、組成物および製品

審判番号
2022-009208
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-174778外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年06月15日
審決日
2023年12月26日
公報発行日
2024年12月27日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (C12P) / P18 .575-Z (C12P)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-174778「乳酵素処理物、その製造方法、組成物および製品」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 1月14日出願公開、特開2022- 9514〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成28年5月31日(優先権主張 平成27年6月1日)を国際出願日とする特願2017-521953号の一部を令和3年10月26日に新たな特許出願としたものであって、主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和3年11月24日付け:拒絶理由通知書 令和4年 1月28日 :意見書の提出 令和4年 3月15日付け:拒絶査定 令和4年 6月15日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和4年11月28日 :上申書の提出 第2 令和4年 6月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和4年 6月15日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「乳をβ-ガラクトシダーゼおよびシアリダーゼと接触させる工程を含んでなり、 前記乳がウシ由来の乳(ただし、ウシ初乳を除く)である、乳酵素処理物の製造方法。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、本願の出願の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「乳をβ-ガラクトシダーゼおよびシアリダーゼと接触させる工程を含んでなり、 前記乳がウシ初乳を含まない、乳酵素処理物の製造方法。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「乳」の内容について、「乳がウシ初乳を含まない」とあったものを、「乳がウシ由来の乳(ただし、ウシ初乳を除く)である」とし、「ウシ由来の乳」の限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項及び引用発明の認定 ア 引用文献1 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、第135回日本薬学会年会要旨集,2015年3月,27PB-am293(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審による。) 「【目的】ウシ初乳は分娩後数日間に分泌される乳汁であり、免疫グロブリンを豊富に含有することで運動力増強や免疫力亢進などの効果を持つ。血清糖タンパク質由来マクロファージ活性化因子Gc protein-derived macrophage activating factor(GcMAF)は、GalNAc単糖を介してマクロファージの貪食能を活性化させることが示唆されており、ウシ血清糖タンパク質を含有するウシ初乳もGcMAFと同様に糖鎖に糖鎖修飾することでマクロファージを活性化する可能性がある。そこで本研究は、糖鎖修飾したウシ初乳のマクロファージ活性化能の評価及び作業機序の解析を目的とする。」 「【方法】ウシ初乳をbeta-ガラクトシダーゼ単独もしくはシアリダーゼ併用で37℃、1時間酵素処理しウシ初乳MAFを得た。マウス腹腔から単離したマクロファージをウシ初乳MAFで刺激し、オプソニン化SRBCに対する貪食能を評価した。またマクロファージをウシ初乳MAFで刺激後、各サイトカイン量の発現をFACSによって評価した。」 「【結果・考察】beta-ガラクトシダーゼ単独もしくはシアリダーゼで併用処理したウシ初乳MAFは、未処理のウシ初乳と比べて有意なマクロファージ貪食活性化能を示し、その活性値はLPSやGcMAFと同程度であった。また、ウシ初乳MAFは炎症性サイトカインであるTNF-alphaおよびIL-1betaの誘導能は示さなかった。これらの結果より、ウシ初乳MAFはGcMAFと同様な作用機序でマクロファージを活性化することが示された。」 (イ)上記(ア)から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 a 引用文献1に記載された技術は、ウシ血清糖タンパク質を含有するウシ初乳もGcMAFと同様に糖鎖に糖鎖修飾することでマクロファージを活性化する可能性について評価することを課題としたものである(【目的】)。 b ウシ初乳をbeta-ガラクトシダーゼ、シアリダーゼ併用で酵素処理したウシ初乳MAFを得た(【方法】)。 c beta-ガラクトシダーゼ、シアリダーゼで併用処理したウシ初乳MAFは、未処理のウシ初乳と比べて有意なマクロファージ貪食活性化能を示し、その活性値はLPSやGcMAFと同程度であり、ウシ初乳MAFはGcMAFと同様な作用機序でマクロファージを活性化することが示された(【結果・考察】)。 (ウ)上記(イ)bから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ウシ初乳を、beta-ガラクトシダーゼ、シアリダーゼ併用で酵素処理する、ウシ初乳MAFを得る方法」 イ 引用文献3 (ア)同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特表2005-508892号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。 「【0009】Gc-グロブリンは、従来医薬品には使用されていなかった。しかし、Yamamoto(1994)は、誘導体、βガラクトシダーゼおよびシアリダーゼ(Sialidase)で処理したGc-グロブリンが、効能のあるマクロファージ活性因子を生成することを示し、このマクロファージ活性因子に変換される組換えGc-グロブリンをYamamoto(1996)に記載している。」 「【0026】本発明は、Gc-グロブリンの大規模生産のための新規な精製方法に関する。Gc-グロブリン源は、好ましくは粗血漿フラクションであるが、Gc-グロブリンを含むいかなる溶液、懸濁液または上澄液、例えば乳製品、初乳または発酵培養液であってもよい。Gc-グロブリンは血漿由来のものでもよく、遺伝子組換生物による生成物であってもよい。」 「【0030】 もう一つの形態では、Gc-グロブリンは、ヒトGc-グロブリンを発現する哺乳動物からの乳および/または初乳から精製される 。一つの形態では、哺乳動物はヒト以外の遺伝子組換動物である。」 「【0127】本発明の方法は、さらに、ヒトの医薬品としてのGc-グロブリン製品を使用するために、細胞培養上澄液、溶解細胞懸濁液、乳製品または初乳から、Gc-グロブリンを精製することを目的としている。」 (イ)上記(ア)から、引用文献3には、次の技術的事項が記載されていると認められる。 a 「Gc-グロブリンは、βガラクトシダーゼおよびシアリダーゼで処理することで、効能のあるマクロファージ活性因子を生成すること。」 b 「Gc-グロブリンの大規模生産のための方法におけるGc-グロブリン源は、好ましくは粗血漿フラクションであるが、例えば乳製品、初乳または発酵培養液であってもよいこと。」 (3)引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)本願明細書の【0019】には、「接触(酵素処理)」と記載されているから、引用発明の「酵素処理する」工程は、「接触させる」工程に相当する。 (イ)引用発明の「beta-ガラクトシダーゼ」は、本件補正発明の「β-ガラクトシダーゼ」に相当する。 (ウ)引用発明の「ウシ初乳」は、本件補正発明の「ウシ由来の乳(ただし、ウシ初乳を除く)」と「ウシ乳」で共通するので、引用発明のウシ初乳を酵素処理して得られた「ウシ初乳MAF」は、本件補正発明の「乳酵素処理物」に相当する。 (エ)引用発明の「得る方法」は、本件補正発明の「製造方法」に相当する。 イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「ウシ乳をβ-ガラクトシダーゼおよびシアリダーゼと接触させる工程を含んでなる、乳酵素処理物の製造方法。」 【相違点】 「ウシ乳」について、本件補正発明は、「ウシ由来の乳(ただし、ウシ初乳を除く)」であるのに対し、引用発明は、「ウシ初乳」である点。 (4)判断 以下、相違点について検討する。 ア 相違点について 本件補正発明におけるウシ由来の「乳」については、本願明細書の【0016】段落に「乳は、酵素処理に付す前に、予め前処理しておいてもよい。そのような前処理としては、水分量を減少させる濃縮の他、乳からチーズをつくる際にチーズとして固まる成分(カゼイン、脂肪等)を除去する処理(脱チーズ成分処理)が含まれる。以下、濃縮により得られる乳を「濃縮乳」、脱チーズ成分処理により得られる乳を「脱チーズ成分乳」(乳清)ともいう。」と記載されるとおり、前処理された各種の乳製品を含むといえる。 また、引用文献3には、上記(2)イのとおり、血漿、乳製品、初乳から得られる「Gc-グロブリン」について記載されているところ、同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった放射線生物研究,2004年,Vol.39, No.3,pp.328-341(以下「引用文献2」という。)には、「Gcタンパク質(ヒトでの群特異成分group-specific component(Gc))は、一般的にはビタミンD結合タンパク質(vitamine D-binding protein,DBP)またはGcグロブリンとして知られているアルブミンスーパーファミリーに属する血清タンパク質で、肝臓から分泌される55KDのタンパク質である。」(328頁2-5行)と記載されていることから、引用文献1の「血清糖タンパク質(Gc-protein)」は、引用文献3の「Gc-グロブリン」を言い換えたものであるといえる。 引用発明と、引用文献3は、マクロファージ活性化因子を生成できる血清糖タンパク質(Gc-グロブリン)に関する点で技術分野が共通し、引用文献1は、上記(2)ア(イ)a及びcのとおり、ウシ初乳がウシ血清糖タンパク質を含有することを契機として、ウシ初乳中のウシ血清糖タンパク質の糖鎖に糖鎖修飾するために酵素処理をしてウシ初乳MAFを得、そのマクロファージ貪食活性化能を評価したものであるから、引用文献1に接した当業者は、引用発明のウシ初乳が血清糖タンパク質を含有する原料として用いられているものであることを理解するといえる。そして、引用文献3には、上記(2)イ(イ)bのとおり、Gc-グロブリン源、即ち、血清糖タンパク質を含有する原料として、初乳とともに、乳製品も挙げられていることから、引用発明の血清糖タンパク質の原料として挙げられるウシ初乳が、引用文献3に「血清糖タンパク質(Gc-グロブリン)源」として挙げられている乳製品のような初乳以外の乳に代替可能なことは当業者が容易に認識できるといえる。 また、発明の実施にあたり、原料の流通性や入手性は重要な視点であり、当業者にとって流通性、入手性が高い原料を選択することは自明の課題であるところ、ウシ乳、いわゆる牛乳・乳製品は、流通量が多く、入手しやすいものであることは周知の事実である。一方、わが国では、乳及び乳製品等の製造において、分娩後5日以内の牛からは搾乳を禁じられているため(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令第3条、別表二(一)(2)1)、ウシ初乳は、一般に流通しているものではなく、牛乳などのウシ乳と比べると入手しやすいものとはいえない。 したがって、牛乳などのウシ乳は、引用発明で原料として使用される初乳と比較して、流通量が多く、入手しやすいものであることは明らかであり、引用文献3の記載に照らすと、「血清糖タンパク質(Gc-グロブリン)源」として初乳に代替し得るものであるから、引用発明のウシ初乳に代えてウシ乳を血清糖タンパク質(Gc-グロブリン)源として採用することは当業者が容易に想到し得たものである。 そして、本願明細書や図面等を参酌しても、実際にウシ乳を、β-ガラクトシダーゼ及びシアリダーゼを接触させて製造した乳酵素処理物の具体的なマクロファージ活性化能等の実験結果は示されておらず、ウシ初乳を除くウシ乳を原料とした場合に、当業者の予測を超えるマクロファージ活性化能を示す乳酵素処理物が製造できるとも認められないので、上記相違点による効果を格別顕著と評価することはできない。 イ 請求人の主張及び当審の見解 (ア)請求人の主張 a 「引用文献4には「初乳における分泌量は常乳と比較して有意に高く、ウシミルクではそれぞれ250μg/mlおよび6μg/mlと見積もられている」と記載されており、初乳には常乳の40倍以上のVDBPが含まれていることが周知技術でした。この記載を踏まえると、当業者はVDBPを高濃度で含むウシの初乳を用いることが自然であり、あえて、ウシの、初乳以外の乳を選択する動機はありません。」(審判請求書) b 「添付資料1の図1~6、表3でも、ウシの乳に含まれる各成分の含有量が、分娩直後から大きく変動することが示されています。このように、本件優先日以前において、ウシの、初乳と初乳以外の乳では、Gcプロテイン以外の成分が相違することが技術常識でした。また、一般的に、酵素反応の効率が、その反応系に存在する夾雑タンパク質、脂質等の種類や濃度の影響を受けることは当業者の技術常識です。したがって、仮に、引用文献1においてウシ初乳に代えて、ウシの、初乳以外の乳を用いたとしても、GcプロテインをMAFに活性化できるとは、容易に予想できません。」(審判請求書) c 「さらに、本願発明の方法で得られる乳酵素処理物は、引用文献1に記載されるウシ初乳由来の処理物よりも高いマクロファージ活性化能を有します。本願明細書の段落[0050]~[0057]に記載の方法によりβガラクトシダーゼおよびシアリダーゼを使用して乳酵素処理物を製造し、マクロファージ貪食能活性を測定したところ、図1に示すように、サンプル量10ng、および100ngにおいて、貪食指数はそれぞれ25.3と29.1でした。[図1]ウシ初乳を用いた点を除いて、本願明細書の段落[0050]~[0057]の記載内容と同様にβガラクトシダーゼおよびシアリダーゼで処理し、マクロファージ貪食能活性を測定しました。その結果、サンプル量1ng、10ng、および100ngにおいて、貪食指数はそれぞれ21.60、23.46、および24.54でした。なお、マクロファージ貪食アッセイにおいてサンプルを添加しないコントロールでは18.99であり、酵素処理しなかったサンプルを1ng、10ng、および100ng添加したときの貪食指数はそれぞれ17.12、17.96、および19.45でした。このように本願発明の方法で得られる乳酵素処理物がウシ初乳由来の処理物よりも高いマクロファージ活性化能を有することは、引用文献1に引用文献2やその他の周知技術を組み合わせても容易に予想できません。特に、初乳には常乳の40倍以上のVDBPが含まれるという引用文献4に記載の周知技術に基づくと、本願発明の方法により得られるマクロファージ活性化能は驚くべきものということができます。」(意見書) [図:0001416908000001.jpg] d 「前置報告書では、下記のように述べられています。『審判請求人は、令和4年1月28日付け意見書で提示した効果、すなわち、初乳ではないウシ由来の乳を用いた場合、ウシ初乳を用いた場合よりも、高いマクロファージ活性能を有する乳酵素処理物が得られる旨、主張している。しかしながら、審判請求人が主張する効果は、本願明細書に記載された効果ではなく、本願明細書又は図面の記載から推論できる効果であるとも認められないから、当該効果を参酌することはできない。』 しかし、前置審査官殿がご指摘の試験結果は、ウシ初乳を用いて得られる酵素処理物と、本願発明の方法で得られる酵素処理物の効果を比較したものであり、本願発明の方法で得られる酵素処理物のマクロファージ活性化能は、本願明細書に十分に開示されています。一般的に、出願時には、審査で引用される先行技術を予想することはできず、あらゆる先行技術との比較結果を明細書に盛り込むことは事実上、不可能です。ウシ初乳を用いて得られる酵素処理物の活性データが当初明細書等に記載されていないことをもとに、当該データが参酌されないとすると不可能が強いられることとなり、妥当ではありません。」(上申書) (イ)当審の見解 a 請求人の主張上記(ア)aについて 本願の優先日当時の技術情報を示すJ. Nutr. Biochem., 1992年,Vol.3, Issue 10, pp.498-502(以下「参考文献」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 「498頁左欄Introduction The vitamin D-binding protein (DBP), also called Group Specific Component (Gc) is a glycoprotein present in the plasma of most vertebrates and it has a molecular weight of about 52,000 in humans.」 (下線部の当審訳:ビタミンD結合タンパク質(DBP)は、群特異成分(Gc)とも呼ばれ、ほとんどの脊椎動物の血漿中に存在する糖タンパク質であり、ヒトの分子量は約52,000である。) 「Figure 2 [図:0001416908000002.jpg] Figure 2 Changes in the concentration of DBP and albumin in cow's colostrum and milk during the first month of lactation. Values are expressed as a percentage of the first milking concentration (250 ± 40 mg/L and 3,129 ± 1,284 mg/L for DBP and albumin, respectively). Vertical bars indicate the standard deviation. ●-● DBP; ○-○ albumin.」 (下線部の当審訳:乳分泌1か月間のウシ初乳とウシ乳のDBP及びアルブミンの濃度変化。値は、最初の搾乳時の濃度(DBP及びアルブミンに対してそれぞれ、250±40mg/L及び3,129±1,284mg/L)のパーセントとして表される。縦棒は、標準偏差を示す。●-●DBP;○-○アルブミン。」 「499頁右欄~500頁左欄Result The changes in the concentration of bovine DBP throughout early lactation are shown in Figure 2. The highest concentration of DBP was found in the first colostrum (250 mg/mL), which represents about 27% of the serum concentration. DBP levels fell sharply to about 22% of the initial value within the first 48 hours, and then declined slowly to 3.5% of the level in the first milking after 1 week postpartum. This level did not change significantly during the following 3 weeks of lactation. Albumin levels were also determined in the same whey samples, and similar changes in concentration were found. The highest concentration corresponded to the first colostrum (3.1 mg/mL) reaching a stable level (about 5% of the first milking) after 1 week postpartum.」 (下線部の当審訳:乳分泌初期におけるウシDBP濃度の変化を図2に示す。DBPの最も高い濃度は、初乳(250mg/mL)であり、これは血清濃度の約27%に相当する。DBPレベルは最初の48時間以内に初期値の約22%まで急激に低下し、その後、分娩後1週間後の最初の搾乳時のレベルの3.5%までゆっくりと低下する。このレベルは、その後の3週間の乳分泌期間中に有意に変化しない。) ここで、上述した引用文献2の「Gcタンパク質(ヒトでの群特異成分group-specific component(Gc))は、一般的にはビタミンD結合タンパク質(vitamine D-binding protein,DBP)・・」という記載から、引用文献1の「血清糖タンパク質(Gc-protein)」は、参考文献の「DBP」及び請求人の言う「VDBP」を言い換えたものである。 上記の参考文献の記載を参酌すると、請求人の主張する「初乳には常乳の40倍以上のVDBPが含まれている」とは、分娩0日目の初乳と分娩1週間後以降の常乳を比較したものであって、「血清糖タンパク質(Gc-protein)」のレベルは最初の48時間で22%まで急激に低下し、分娩1週間後からは有意に変化しないところ、本願明細書の[0016]の「ウシ初乳(母牛が分娩後10日目までに分泌する乳汁)」という記載に基づけば、分娩後1週間程度のウシ初乳と、分娩後11日目以降のウシ乳との間では、「血清糖タンパク質(Gc-protein)」濃度には顕著な差はないと認められることも考慮すると、「分娩後数日間に分泌される」という引用発明の初乳と、そのような初乳以外の乳との間において、「血清糖タンパク質(Gc-protein)」濃度に、常に40倍以上の差があるとは認められない。 もっとも、引用文献3には、Gc-グロブリン源として、好ましくは粗血漿フラクションであるが、乳製品、初乳等であってよいことが記載されているところ(上記(2)イ(イ)b)、上記アで述べたとおり、牛乳などの初乳以外のウシ乳は、初乳と比較して流通量が多く入手しやすいものであるから、初乳とウシ乳の「血清糖タンパク質(Gc-protein)」濃度の差が、上記アの容易想到性の判断を阻害するとはいえない。したがって、「ウシの、初乳以外の乳を選択する動機はありません。」という請求人の主張上記(ア)aは採用できない。 b 請求人の主張上記(ア)bについて 請求人は、β-ガラクトシダーゼ又はシアリダーゼの活性を阻害する具体的成分は明らかにしていない。また、審判請求書の添付資料1の図1~6、表3を参酌しても、ウシ初乳には存在せず、ウシ乳のみに存在する特異的成分を見いだせない。 加えて、引用文献2の328頁5-7行には、引用文献1の「血清糖タンパク質(Gc-protein)」の機能について、 「主な生理機能としてはビタミンDの輸送および貯蔵、細胞外アクチンのスカベンジャー、さらに炎症における好中球の走化性の亢進やマクロファージを活性化することが報告されているタンパク質である。」と記載されているとともに、331頁「2.2-1GcMAFの生成」において 「すなわちGcタンパク質は、炎症がトリガーとして生成したlyso-PCにより誘導されたB細胞のβ-ガラクトシダーゼとT細胞の常在性のシアリダーゼにより糖類が三糖類から単糖のN-アセチルガラクトサミンにプロセシングされマクロファージ活性化能を発揮するマクロファージ活性化因子(Gc-derived MAF、GcMAF)に変換されることを発見した。」と記載されているように、生体内の血中等でβ-ガラクトシダーゼ及びシアリダーゼにより酵素処理される旨が記載されている。 そうすると、β-ガラクトシダーゼ及びシアリダーゼは、ウシ初乳だけでなく、全く異なる環境下である血中でも機能していることを考慮すると、ウシ初乳以外のウシ乳(牛乳)でも、β-ガラクトシダーゼ及びシアリダーゼが機能すると合理的に推認することができる。 請求人の主張は、いずれも、ウシ初乳以外のウシ乳は、β-ガラクトシダーゼ及びシアリダーゼが機能するには適さない可能性があることを述べるにとどまるものであり、これらを具体的に裏付けるものとは認められないから、「ウシ初乳」に代えて「ウシ初乳以外のウシ乳」を用いることを当業者に断念させるに足りるほどの事情があったとは認められない。したがって、請求人の主張上記(ア)bは採用できない。 c 請求人の主張上記(ア)c、dについて 本願明細書や図面に、実際にウシ乳を、β-ガラクトシダーゼ及びシアリダーゼを接触させて製造した乳酵素処理物の具体的なマクロファージ活性化能等の実験結果が示されていないことからすると、意見書図1で示された結果(データ)は、本願明細書又は図面に記載されていたものではなく、本願明細書又は図面の記載から推論できる効果であるとも認められないから、本件補正後の請求項1に係る発明の効果として参酌することはできない。 仮に参酌することができるとしても、請求人が意見書で述べるように本願明細書の段落[0050]~[0057]に記載の方法によりβガラクトシダーゼおよびシアリダーゼを使用した乳酵素処理物の原料は「固体のウシ乳」であり 、牛乳の組成が乳固形分12.6%、水分87.4%からなること(一般社団法人 日本乳業協会ウェブサイト)を考慮すれば、タンパク質及びタンパク質の中に含まれるGcプロテイン等成分が極めて濃縮されている特殊な原料を用いた結果であるから、意見書図1で示された結果(データ)は「ウシ初乳以外のウシ乳」と「ウシ初乳」の効果上の差異を実証したものとは認められない。 また、(i)ウシ乳のコントロール摂食指数(16.2%)と、ウシ初乳のコントロール摂食指数(18.99)との間で、コントール値同士にも、大きな差が生じているから実験系には無視できない程度の大きな測定誤差が含まれること、(ii)ウシ初乳のLPSを用いたポジティブコントール摂食指数が示されていないことから、ウシ初乳の乳酵素処理物の効果の程度が不明であること、(iii)ウシ乳の乳酵素処理物の摂食指数(10ng:25.4、100ng:29.1)と、ウシ初乳の乳酵素処理物の摂食指数(10ng:23.46、100ng:24.54)との間で統計上の有意差があるか否かの検定がされていないこと、(iv)分娩後1~10日の間で「血清糖タンパク質(Gc-protein)」の濃度は大きく変化するところ、意見書で使用されたウシ初乳が分娩後の何日のものであるかが不明であることを総合的に考慮すると、この点においても、意見書図1で示された結果(データ)が「ウシ初乳以外のウシ乳」と「ウシ初乳」の効果上の差異を実証したものとは認められない。 よって、請求人の主張上記(ア)c、dの主張は採用できない。 ウ したがって、本件補正発明は、引用発明、すなわち引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和4年6月15日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし8に係る発明は、令和3年10月26日にされた出願の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものを含むものである。 引用文献1:第135回日本薬学会年会要旨集,2015年3月,27PB-am293 引用文献3:特表2005-508892号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、引用文献3及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「ウシ由来の乳」に係る限定事項を削除したものであるから、本願発明は本件補正発明を包含するものであることは明らかである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明、すなわち引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-009208

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

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    共通の審決分類: 121・C12P
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    共通の審決分類: 121・C12P
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    共通の審決分類: 121・C12P
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    共通の審決分類: 121・C12P

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