審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2022-007820

ウィックの製造方法

審判番号
2022-007820
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-051832外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年05月25日
審決日
2023年04月10日
公報発行日
2023年08月25日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (F28D) / P18 .57 -WZ (F28D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-51832「ウィックの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和1年9月26日出願公開、特開2019-163895〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成30年3月19日に出願された特願2018-51832号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 令和 1年 8月28日 :手続補正書の提出 令和 3年10月27日付け:拒絶理由通知 令和 4年 1月14日 :意見書及び手続補正書の提出 同 年 2月 1日付け:拒絶査定 同 年 5月25日 :審判請求と同時に手続補正書及び手続補足書の提出 同 年10月27日付け:補正の却下の決定及び拒絶理由通知 令和 5年 1月16日 :意見書及び手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)の提出 同 年 1月17日 :手続補足書の提出 第2 本願発明 本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「放熱部材に使用されるウィックの製造方法であって、 金属粉末を含んでなる原料を基台上に供給する工程と、 基台上の原料を加熱して焼結体を得る工程と、 焼結体を圧延する工程と、を含み、 金属粉末のかさ密度は、真密度に対して、15~35%の範囲内であり、 基台上に供給された原料の厚みは、0.1~2.0mmの範囲内であり、かつ、圧延後の焼結体の厚みは、0.05~1.0mmの範囲内であることを特徴とするウィックの製造方法。」 第3 拒絶の理由 令和4年10月27日付けで当審が通知した拒絶理由のうち、理由2(進歩性)の概要は、次のとおりのものである。 本願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明に基いて、 また、請求項2~4に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、 その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2004-332069号公報 引用文献2:特開2015-13192号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1の記載、引用発明 引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。 ア「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、シート状多孔質金属体の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来、各種フィルタ、アルカリ二次電池の電極基板、ヒートパイプにおけるウィックや、ウエハのような薄板を吸着させて搬送する治具などに、開放気孔を有する多孔質金属体が使用されている(たとえば特許文献1参照)。 ・・・ 【0013】 【発明の実施の形態】 本発明の製造方法により製造されるシート状多孔質金属体は、金属粉末を焼成して形成された骨格間に気孔を有し、この気孔が表裏にわたり連通していることにより通気性を有するものである。以下、本発明の実施形態に係るシート状多孔質金属体の製造方法について、図1ないし図4を用いて説明する。 【0014】 〈スラリー製造工程〉 まず、以下に示す原料を十分に混合・混練し、成形用スラリーSを作製する。ここで、必要に応じてスラリー中の気泡を取り除く真空脱泡を行う。 ・金属粉末P1(SUS316L粉末) ・樹脂ビーズP2(球状アクリル樹脂ビーズ) ・有機バインダ(メチルセルロース) ・溶媒(水) ・消泡材(エタノール) 【0015】 〈スラリーシート形成工程〉 次に、図1に示すように、成形用スラリーSをホッパ10に貯蔵する。そして、ローラ11,12によって搬送されるキャリアシート13上に、この成形用スラリーSをドクターブレード14により延ばし(ドクターブレード法)、所定厚さのスラリーシート15を形成する。スラリーシート15はキャリアシート13上に付着した状態であり、形状が定まっていないため、キャリアシート13なしで取り扱うことができる状態ではない。 【0016】 なお、成形用スラリーSは十分に混練されており、金属粉末および樹脂ビーズが均一に分散した状態でホッパ10に投入されるので、ホッパ10からキャリアシート13上に供給される当初は、成形用スラリーS中の金属粉末および樹脂ビーズは均一となっている。その後、ホッパ10内の成形用スラリーSはホッパ内下層部から順にキャリアシート13上に供給されるので、ホッパ10の上層部から下層部に至る間に、またホッパ10内での貯蔵時間が長時間におよぶと、成形用スラリーS中で比重の異なる金属粉末および樹脂ビーズが分離する虞がある。この問題を防止するには、成形用スラリーSの粘度を60~150Pa・sとしておくことが好ましい。また、これにより、キャリアシート13上に供給後の成形用スラリーS(スラリーシート15)においても、搬送時の振動や時間経過による金属粉末および樹脂ビーズの分離を防止することができる。 【0017】なお、ここではドクターブレード法によりスラリーの塗布を行ったが、キャリアシート上に極薄いシートを形成することができればよく、ロールコータ、リップコータ、グラビアコータ等の成膜装置、塗工装置を用いた方法などでもよい。」 イ「【0019】 〈乾燥工程〉 次に、キャリアシート13上のスラリーシート15に含まれる水(溶媒)を蒸発させ、グリーンシートGを得る。乾燥したグリーンシートGは、図2に示すように金属粉末P1および樹脂ビーズP2が均一に分散し、バインダにより接合されてシート状をなしたものであり、単体で取り扱うことができる状態となっている。 【0020】 〈グリーンシート取り外し工程〉 さらに、得られたグリーンシートGをキャリアシート13上から取り外し、セラミックス板等の敷板上に載せる。この時点でグリーンシートGは軟質であり、敷板上に載置されることにより、取り扱いを容易にすることができる。なお、グリーンシートGを取り外した後のキャリアシート13は、再利用することもできる。 【0021】 〈脱脂・焼成工程〉 敷板上のグリーンシートGを敷板ごと脱脂装置中に通し、たとえば真空中で500℃、15分間保持することにより、樹脂ビーズおよびバインダを除去する。これにより金属粉末P1は、図3に示すように、消失した樹脂ビーズ部分P2を空洞とする構造を形成しているが、金属粉末粒同士が点接触しているだけの結合されていない状態となる。 次いで、脱脂したグリーンシートGを敷板ごと焼成炉中に通して、たとえば真空中で1200℃、2時間保持することにより図4に示すように金属粉末P1粒同士を焼成し、シート状の多孔質金属体を得る。この脱脂・焼成工程は、たとえばバッチ式の真空炉、還元雰囲気中での連続炉を用いて行われる。 【0022】 このように製造されたシート状多孔質金属体は、金属粉末の平均粒径、樹脂ビーズの平均粒径、金属粉末と樹脂ビーズとの混合比等の条件を適宜調整することにより、所望の気孔径や気孔率とされる。たとえば、気孔径を大きくするには樹脂ビーズの粒径を大きくし、気孔率を大きくするには樹脂ビーズの配合割合を大きくするなどの調整が考えられるが、処理温度や時間によっても気孔径や気孔率を変化させることができるので、各条件の適切な組み合わせを検討する必要がある。 【0023】 なお、シート状多孔質金属体の厚みは、焼成時の収縮率を考慮してスラリーの成形厚さを調整することにより所望のものが得られる。特に、フィルタとして用いる場合、強度および圧力損失を考慮すると、シート状多孔質金属体の厚みは50~300μm程度が好ましい。また、金属粉末および樹脂ビーズの粒径および混合比等の調整により、シート状多孔質金属体の気孔率は20%~80%とすることが好ましい。」 ウ「【0026】樹脂ビーズを添加した実施例1,実施例2では、図5および図6にも示すように気孔径のばらつきが小さい多孔質体が得られた。一方、樹脂ビーズを添加しない従来例では、実施例1,実施例2と比較して、主孔径の0.75~1.25倍の範囲Rに含まれる気孔の割合が少なく、図7にも示すように気孔径のばらつきが大きい多孔質体となった。したがって、樹脂ビーズを添加することにより気孔径が均一となり、ろ過精度の優れた金属フィルタとして好適な、シート状多孔質金属体を製造することができた。 【0027】 ここで、金属粉末および樹脂ビーズの平均粒径や体積比を異ならせた場合について実験した結果を比較、検討する。 【0028】 まず、金属粉末および樹脂ビーズの平均粒径比を種々異ならせた場合について実験した。スラリー中の金属粉末(SUSL316L粉末)と樹脂ビーズ(球状アクリルビーズ)の体積比は2:1、金属粉末および樹脂ビーズの重量の合計は500gとし、有機バインダとしてメチルセルロース30g、溶媒として水200gを混合した。以上の配合組成で、密閉容器中、大気圧下で1時間混練した後、さらに消泡剤としてエタノール50gを添加し、スラリーの粘度が100Pa・sになるように減圧下で混合・混練して成形用スラリーを得た。この成形用スラリーを、ドクターブレード法によりキャリアシート上に塗布し、スラリーシートを形成した。このとき、ドクターブレードのブレードギャップ(キャリアシートとドクターブレード先端との隙間の大きさ)は0.4mmとした。これを室温にて12時間保持して自然乾燥させ、グリーンシートを作製した。次いで、グリーンシートをキャリアシートからはがし、セラミックス板(敷板)上に載置して、脱脂装置により真空中で500℃、15分間保持してバインダと樹脂ビーズを消失させ、さらに焼成炉により真空中で1200℃、2時間保持してシート状多孔質金属体を得た。 【0029】 以上のようにして、金属粉末および樹脂ビーズの平均粒径を異ならせてシート材を製造したところ、表2に示す結果が得られた。 【0030】 【表2】 [図:0001400061000001.jpg] 【0031】 ここで、収縮率とは、焼成前のグリーンシートの長さ、幅に対して焼成後にシート材が収縮した分の長さ、幅のそれぞれの割合を平均したものである。これらのうち、例1のものは他のものに比べて若干気孔径のばらつきが大きく、また例5のものは脱脂後に崩れることがあるため、比較的薄いものに限られる。したがって、平均粒径比については例2,例3,例4のものがより好ましく、金属粉末粒径と樹脂ビーズ粒径とが比較的近い方(平均粒径比で2:1~1:2)が、樹脂ビーズによる気孔がより均一になるとともに、厚いものでも潰れることなく形成することができる。 【0032】 つぎに、金属粉末および樹脂ビーズの体積比を種々異ならせた場合について実験した。スラリー中の金属粉末(SUSL316L粉末)と樹脂ビーズ(球状アクリルビーズ)の平均粒径はいずれも10μm、金属粉末および樹脂ビーズの重量の合計は500gとし、有機バインダとしてメチルセルロース30g、溶媒として水200gを混合した。 以上の配合組成で、密閉容器中、大気圧下で1時間混練した後、さらに消泡剤としてエタノール50gを添加し、スラリーの粘度が100Pa・sになるように減圧下で混合・混練して成形用スラリーを得た。 この成形用スラリーを、ドクターブレード法によりキャリアシート上に塗布し、スラリーシートを形成した。このとき、ドクターブレードのブレードギャップ(キャリアシートとドクターブレード先端との隙間の大きさ)は0.4mmとした。これを室温にて12時間保持して自然乾燥させ、グリーンシートを作製した。 次いで、グリーンシートをキャリアシートからはがし、セラミックス板(敷板)上に載置して、脱脂装置により真空中で500℃、15分間保持してバインダと樹脂ビーズを消失させ、さらに焼成炉により真空中で1200℃、2時間保持してシート状多孔質金属体を得た。 【0033】 以上のようにして、金属粉末および樹脂ビーズの体積比を異ならせてシート材を製造したところ、表3に示す結果が得られた。 【0034】 【表3】 [図:0001400061000002.jpg] 【0035】 これらのうち、例6のものは収縮率が大きく、面積が比較的小さいものに制限され、また例11のものは他のものに比べて若干気孔径のばらつきが大きくなった。したがって、体積比については例7~例10のもの(体積比1:3~4:1)がより好ましく、大きな面積のものでも大きな寸法変化を生じることなく製造でき、気孔径がより均一なものを形成することができる。 【0036】 以上のように、スラリーに樹脂ビーズを配合した本発明の実施例では、各製造条件の調整により多孔質体の気孔率、孔径のばらつき、収縮率等を変化させ、フィルタに好適なシート状多孔質金属体を製造することができた。特に、金属粉末および樹脂ビーズの平均粒径、体積比を、それぞれ大きく異ならせずに製造すると、孔径のばらつきが小さい多孔質体が得られ、金属製フィルタに好適となった。」 上記摘記ウにある表2、表3中には、製造されたシート状多孔質金属体の気孔率として、55%のものが例8に記載されていることが看取できる。 以上総合すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 (引用発明) 「ヒートパイプにおけるウィックに使用される開放気孔を有するシート状多孔質金属体の製造方法であって、 金属粉末P1を含む成形用スラリーSをキャリアシート13上にドクターブレード14によりスラリーの厚さを0.4mmに延ばす工程と、 前記スラリーSを乾燥し脱脂した後、前記キャリアシート上、またはセラミックス板上に載置して焼成炉で焼成して多孔質金属体を得る工程と、を含み、 焼結後の厚みは50~300μm程度とし、 焼結後の気孔率が55%である 製造方法。」 2 引用文献2の記載 ア「【0098】 図15aには、露出する毛管構造を両面に備えた面状複合体22の別の実施形態が示されている。この面状複合体は、そこに示されるように、均質な粒状、繊維状、又はフレーク状の一つの焼結複合体34により形成された、開放孔を有する焼結構造から成っている。薄肉の多孔質焼結複合体の製造手法はかねてより知られている。米国特許第3,433,632(レイモンド・J.・エルバート(Raymond J. Elbert))には、例えば厚さが75μm以上で孔径が1~50μmの間にある、薄肉の多孔質金属板の製造方法が説明されている。加工されたのは、何よりも特にニッケル並びに特殊鋼(AISI 304)から成る粉末であった。最大で60%の空隙率を達成しているが、多層構造を持つ別の変形例では、(いずれにせよ最上層だけではあるが)何と最大で90%の空隙率を達成している。米国特許第6,652,804号(ピーター・ノイマン(Peter Neumann)他)にも、同様の方法が説明されている。特開2004-332069号(辻本哲志他、三菱マテリアル株式会社)には、更に一段と改良発展された、厚さが50~300μmの範囲にあることが好ましい薄肉の金属製多孔質焼結複合体の製造方法が説明されるが、これは、加工対象である金属粉末に、除去可能な増量剤、具体的な例ではアクリル樹脂ビーズを添加する工程を特色としている。このアクリル樹脂ビーズは、場所を確保するためのものであり、本来の焼結工程に先行して、約500℃の真空中で行われる熱処理の過程で実質的に残滓無しで昇華してその後には空隙が残されることになるが、この空隙は、焼結工程の間も、又その後にも維持されるようになっている。そのようにして、類型的に70~90%の空隙率を有するAISI 316L仕様の特殊鋼から成るシート状複合体を製造していた。同じくユーリッヒ研究センターのエネルギ究所(IEF、www.fz-juelich.de/ief/ief-1)にも、厚さ500μm迄の薄肉の多孔質金属フォイルを製造する能力がある。その製造手法は、特開2004-332069号の製法と同様に、所謂ドクターブレード・テープキャスト法に依拠したものである。 【0099】 基本的には上述の方法は全て、本発明に従った面状焼結複合体22、34を製造するために適用できるだろうが、その中でも優先されるのは高い空隙率が達成されることから、特開2004-332069号に従った方法である。注意しなければならないのは、液状材料16が十分に急速に芯に浸透することを保証するために、均質な焼結複合体の内部の平均孔径を可能な限り10μmとする点だけである。加工対象である金属粉末及びアクリル樹脂ビーズの粒度は、この条件に合うように調整される。特開2004-332069号に記載される方法に例として挙げられている50~300μmの厚さ範囲によって、面状複合体22にとり非常に好ましい厚さ範囲がカバーされることになる。」 イ「【0103】 最後に・・・本発明に従った面状複合体22のためには、厚さが100~500μmの範囲内、好ましい孔径が20~150μmの範囲内にある、空隙率が70%の、薄いフォイル状のフォームが必要である。そのような発泡材料については、特殊鋼仕様(例えばAISI 316L)のものを三菱マテリアル株式会社(www.mmc.co.jp)から取り寄せることができる。ここでは発泡材料として、厚さ0.5mm、孔径が50~150μmの範囲内にある、空隙率約90%の規格品を想定しているが、この材料は圧延加工により最大で約100μmの任意の厚さに圧縮されるとよい。圧縮後の材料は、オプションとして引き続いて更に焼結されるとよい。当然ながら圧縮により空隙率も低下するが、必要な場合には、最終工程のエッチング処理の過程で空隙率を再び増大することができる。・・・」 以上をまとめると、引用文献2には次の技術的事項が記載されている。 「特開2004-332069号に記載された薄肉の多孔質焼結複合体の製造方法に対して、圧延加工により最大で約100μmの任意の厚さに圧縮されるとよいこと」 第5 対比 本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。 引用発明の「ヒートパイプにおけるウィックに使用される開放気孔を有するシート状多孔質金属体の製造方法」は、本願発明の「放熱部材に使用されるウィックの製造方法」に相当する。 引用発明の「金属粉末P1を含む成形用スラリーSをキャリアシート13上にドクターブレード14により」「延ばす工程」は、本願発明の「金属粉末を含んでなる原料を基台上に供給する工程」に相当し、 引用発明の「前記スラリーSを乾燥し脱脂した後、前記キャリアシート上、またはセラミックス板上に載置して焼成炉で焼成して多孔質金属体を得る工程」は、本願発明の「基台上の原料を加熱して焼結体を得る工程」に相当する。 引用発明の「成形用スラリーS」が「スラリーの厚さを0.4mm」となっていることは、本願発明の「基台上に供給された原料の厚みは、0.1~2.0mmの範囲内であ」ることに相当する。 したがって、本願発明と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。 一致点 放熱部材に使用されるウィックの製造方法であって、 金属粉末を含んでなる原料を基台上に供給する工程と、 基台上の原料を加熱して焼結体を得る工程と、 を含み、 基台上に供給された原料の厚みは、0.1~2.0mmの範囲内であるウィックの製造方法。 相違点1 本願発明では、「焼結体を圧延する工程」を含み、「圧延後の焼結体の厚みは、0.05~1.0mmの範囲内である」のに対して、引用発明では、「焼結後の厚みは50~300μm程度」とすることが特定されているが、焼結体を圧延する工程を含むとされていない点。 相違点2 本願発明では、「金属粉末のかさ密度は、真密度に対して、15~35%の範囲内である」とされるのに対し、引用発明では、「焼結後の気孔率が55%である」ものの、金属粉末のかさ密度を直接明らかとはしていない点。 第6 判断 上記相違点1、2について検討する。 [相違点1について] 引用発明でできあがるヒートパイプにおけるウィックに使用される開放気孔を有するシート状多孔質金属体に対して、圧延処理を施すことは、上記「第4 2」に摘記したように、引用文献2に引用発明を対象とした直接の示唆がなされているため、引用発明の焼結体に圧延処理を施すことは、引用文献1及び2に接した当業者であれば、引用文献2に記載の示唆から容易になし得た事項にすぎない。 このようにして得られた圧延後の多孔質金属体の厚みは、上記の引用文献2に記載の技術的事項で示すとおり、「最大で約100μmの任意の厚さに圧縮される」のであるから、本願発明で特定する「圧延後の焼結体の厚みは、0.05~1.0mmの範囲内である」とした事項を充足することが明らかである。 そうすると、当該相違点1に係る構成は、引用発明及び引用文献2に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易になし得たものと認められる。 [相違点2について] 当該相違点2に係る本願発明の発明特定事項の技術的意義について検討する。 真密度に対して金属粉末のかさ密度が15~35%と低い値になるということは、金属粉末の粒子自体が密に接触して配置されておらず、互いに空間ないし間隙を十分にとった状況を呈していることを指し、そのため見かけの密度の低下に至ることを意味すると解される。また、このような状況を前提として焼結をなすことで、発明の課題に挙げられた毛細管力を得るために必要な焼結体の空隙率である5~90%の範囲(【0012】参照)の実現に至ると理解される。 他方で引用発明の原料を見ると、引用発明では、例8とされる原料のスラリー配合として、金属粉末に対して焼結後の空隙を生成する樹脂ビーズを体積比として金属粉末に対して1:1になるようにバインダ及び水を分散媒として混合分散させることで、焼結後に気孔率として55%の焼結体を得るとされている。かかるスラリーの配合を考えると、体積比として樹脂ビーズを金属粉末と同体積混合する関係から、かさ密度を考えるとバインダや水の分量を無視したとしても、焼結後には金属しか残らないのであるから、真密度に対するかさ密度の割合は、少なく見積もっても50%を下回ることは確実であり、金属粉末と樹脂ビーズの合計質量である435g+65g=500gに対して、焼結により後に残らない分散媒の水200gとメチルセルロース30gの体積の分量も、焼結体の空隙に寄与することを考えると、引用発明とされた例8のかさ密度はさらに低く、本願発明と引用発明の焼結体のかさ密度に、顕著な相違はないことが、引用発明に接した当業者であれば、容易に理解できる。 そうすると、当該相違点2に係る構成は、引用発明のシート状多孔質金属体でも本願発明の発明特定事項と同等と当業者であれば理解できる程度のものといえ、仮に相違するとしても、引用発明に基いて、当業者が容易になし得た程度の微差にすぎない。 以上まとめると、相違点1および2に係る相違は、いずれも引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易になし得たものと認められるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2022-007820

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決2件(ポーライト株式会社)
  • 2016-012264拒絶査定不服審判 / 2017-10-16 / 原査定取消(特許/登録すべき)焼結軸受
    同じ当事者: ポーライト株式会社
  • 2018-300377取消審判 / 2018-09-04 / 請求成立(取消)ポライト
    同じ当事者: ポーライト株式会社
同じ根拠条文の審決7,656件(特許法29条2項)
  • 2022-019925拒絶査定不服審判 / 2023-08-21 / 請求不成立独立バッフルを有する多分岐熱交換器
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2021-000128拒絶査定不服審判 / 2021-11-25 / 請求不成立シェルアンドチューブ式凝縮器およびシェルアンドチューブ式凝縮器の熱交換チューブ(…
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2020-015698拒絶査定不服審判 / 2021-09-16 / 請求不成立冷却装置及び投影表示装置
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2019-017369拒絶査定不服審判 / 2021-04-08 / 請求不成立ベーパーチャンバ
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2017-003924拒絶査定不服審判 / 2018-03-12 / 請求不成立全熱交換素子
    共通の条文: 特許法29条2項
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)80件(121・F28D、57・F28D)
  • 2025-015929拒絶査定不服審判 / 2026-05-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)能動/受動冷却システム
    共通の審決分類: 121・F28D
  • 2024-004711拒絶査定不服審判 / 2026-01-26 / 原査定取消(特許/登録すべき)蓄冷材
    共通の審決分類: 121・F28D
  • 2024-008790拒絶査定不服審判 / 2025-12-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)温度制御ユニット、温度制御装置
    共通の審決分類: 121・F28D
  • 2024-001688拒絶査定不服審判 / 2025-11-05 / 原査定取消(特許/登録すべき)温度制御媒体輸送用管路装置
    共通の審決分類: 121・F28D
  • 2024-009766拒絶査定不服審判 / 2025-08-27 / 原査定取消(特許/登録すべき)ベーパーチャンバーおよびベーパーチャンバーの製造方法
    共通の審決分類: 121・F28D

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存