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特許拒絶査定不服審判

2022-007428

撮像システム、方法及び用途

審判番号
2022-007428
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-109314外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年05月18日
審決日
2025年03月06日
公報発行日
2025年08月29日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .536-WZ (G02B) / P18 .121-WZ (G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-109314「撮像システム、方法及び用途」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年10月22日出願公開、特開2020-173461〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 9項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、2015年(平成27年)5月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年(平成26年)5月6日、米国。以下、この日を「優先日」という。)を国際出願日とする特願2017-511155号の一部を2020年(令和2年)6月25日に新たな出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 3年 6月24日付け:拒絶理由通知書

同年10月 5日 :意見書、手続補正書の提出

令和 4年 1月11日付け:拒絶査定

同年 5月18日 :審判請求書、手続補正の提出

令和 5年 3月30日付け:拒絶理由通知書

同年 9月12日 :意見書、手続補正書の提出

同年11月24日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和 6年 2月16日 :意見書の提出

同年 8月19日付け:拒絶理由通知書(以下、この拒絶理由通知書に係る拒絶理由を「当審拒絶理由」という。)

同年11月25日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明の認定

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年11月25日に提出された手続補正書により補正(以下「本件補正」という。)された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであって、その請求項1の記載は以下のとおりである。

「【請求項1】
多重カメラパノラマ撮像システムであって、
中心を有する三次元幾何学的形状を形成する並んだアレイに構成された複数の別個の撮像システムを備え、
前記別個の撮像システムのそれぞれは、複数のエッジを有する第1のレンズ要素を含み、前記複数のエッジのそれぞれは、隣接する前記別個の撮像システムの前記第1のレンズ要素の隣接するエッジに境界を接するように配置され、前記別個の撮像システムの前記第1のレンズ要素間で複数の共通エッジを形成し、前記複数のエッジのそれぞれは、前記三次元幾何学的形状の前記中心を通る、前記別個の撮像システムの光軸に対して、前記エッジに沿った複数のポイントにおいて複数のエッジ面角度を画定し、
前記別個の撮像システムのそれぞれは、前記第1のレンズ要素の前記エッジに沿って入射する複数の主光線を、少なくとも前記エッジの中心から前記エッジの一端まで、前記複数の前記エッジによって画定される前記エッジ面角度に等しい入射角を有するように制約するよう構成されることで、前記隣接する前記別個の撮像システムにより制約され、前記共通エッジに沿って入射する前記主光線が平行になり、前記共通エッジに沿って組み合わされた視野を提供して、視差が最小限の又は視差がない画像を形成する、
多重カメラパノラマ撮像システム。」

第3 当審拒絶理由の概要

本願発明は、本件補正前の請求項1に係る発明における「前記エッジのコーナー」を「前記エッジの一端」に補正したものであるところ、本件補正前の各請求項に係る発明に対して通知された当審拒絶理由は、本件補正前の請求項1に係る発明に対する次の理由を含むものである。

1 実施可能要件違反

本願の発明の詳細な説明の記載は、本件補正前の請求項1に係る発明に係る多重カメラパノラマ撮像システムを実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、本願は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。

2 進歩性欠如

本件補正前の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

記

引用文献1 特開2003-162018号公報

第4 当審の判断

1 実施可能要件違反について

(1)当審の判断の概要

本願発明は、「前記別個の撮像システムのそれぞれは、前記第1のレンズ要素の前記エッジに沿って入射する複数の主光線を、少なくとも前記エッジの中心から前記エッジの一端まで、前記複数の前記エッジによって画定される前記エッジ面角度に等しい入射角を有するように制約するよう構成されることで、前記隣接する前記別個の撮像システムにより制約され、前記共通エッジに沿って入射する前記主光線が平行になり、前記共通エッジに沿って組み合わされた視野を提供して、視差が最小限の又は視差がない画像を形成する」という発明特定事項(以下「本件特定事項」という。)を含んでいる。

しかしながら、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特定事項の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

(2)当審の判断の詳細な説明

ア 本願明細書等の記載

本件特定事項について、本願の発明の詳細な説明及び図面(以下「本願明細書等」という。)には次の記載がある。下線は、特に関連する記載について、当合議体が付したものである。

(ア)【技術分野】

「…(前略)…
【0002】
本発明の態様及び実施形態は、最も一般的には光学撮像システム、それに関連する方法及びその用途に関し、より具体的にはパノラマ光学撮像システム、それに関連する方法及びその用途に関し、最も具体的には視差がゼロ又はほぼゼロのパノラマ光学撮像システム、それに関連する方法及びその用途に関する。」

(イ)【背景技術】

「…(前略)…
【0005】
光学システムの視差及び主光線
視差は、「影響、即ち、それによって、物体の位置又は方向が、例えばカメラのファインダ及びレンズを通して様々な位置から見られた場合に、異なるように見えるという影響」として定義される。視差は、それぞれ世界の自らの独特な見方を備えた多数のカメラからの画像をつなぎ合わせることの結果として生成される。
…(中略)…
【0008】
視差を補正できるアルゴリズムの追求が何年も続いている。多くの解決法が開発されたが、しかし現在までの最も精巧なアルゴリズムを用いてさえ、アーチファクトは、やはりパノラマ画像に残される。人によっては、これは、フレームごとに画像を修正するためにソフトウェアエンジニアを雇うことかできるので、問題にならない場合がある。しかしながら一般消費者にとって、各画像を補正するこの選択肢は、実現可能ではない。かかるシステムが、消費者市場で入手可能になり得る前に、視差を効果的に補正するより優れた解決法が必要とされる。画像における視差を計算的にではなく光学的に低減する問題を解決することが望ましい。
【0009】
ワンショットパノラマ撮像用に作成された現在の設計は、それらが、重複する視野を備えた撮像システムから作成されるので、視差に悩まされる。…(後略)…」

(ウ)【課題を解決するための手段】

「【0010】
従って、本発明者は、視差がない、且つ視差が、後処理ソフトウェアによってではなく光学的に除去されるパノラマ撮像システム及び関連する方法の利点及び利益を認識した。…(後略)…」

(エ)【発明を実施するための形態】及び図面

「【0012】
本発明の態様は、視差を有しない多重カメラパノラマ撮像システムである。非限定的な実施形態によれば、多重カメラパノラマ撮像システムは、並んだアレイに配置された複数の別個の撮像システムを含み、各別個の撮像システムの視野は、各隣接する別個の撮像システムの視野と結合され、更に、別個の撮像システムにおけるいずれか一撮像システムの視野のエッジにおける主光線のステンシルは、主光線のほぼ平行なステンシルの全てが、物体空間から見られた場合に共通ポイントに集束するように見えるように、別個の撮像システムの任意の隣接する撮像システムの視野のエッジにおいて、主光線のステンシルとほぼ平行である。
…(中略)…
【0015】
パノラマカメラが最小の視差を達成するために、撮像システムの視野(FOV)、重複してはならない。従って、FOVのエッジにおける主光線は、隣接する光学システムのエッジにおける主光線と平行に光学システムに接近しなければならない。
【0016】
図6は、視差を有しない並んだ2つの撮像システムを示す。各システムのエッジにおける主光線は、互いに平行に位置するように制約される。従って、この線に沿って位置する物体は、画像面における同じポイントに撮像される。これは、個々のレンズ素子を設計するために利用できるアプローチである。視野は、互いに重複しない。何故なら、混合角度における主光線が、互いに平行になり、共通ポイントに集束するように制約されるからである。共通ポイントは、レンズが入れられるジオメトリに依存する。換言すれば、主光線は、物体空間からレンズシステムを見た場合に、主光線が同じポイントで光軸を横断するように見えるように、平行に制約される。実際には、それらは、仮想ポイントの前に位置する画像センサにおいて光軸を横断するが、しかし物体空間からレンズシステムをのぞくと、それらは、同じポイントで横断するように見える。」
「【図6】
[図:0001424851000001.jpg]
」
「【0017】
NPポイント(非視差ポイント)
前の概念の理解を助けるために、我々は、非視差ポイント(NPポイント)と呼ばれる用語を定義する。NPポイントは、FOVのエッジにおける主光線が、どのように互いに平行に位置するように物理的にされ得るか、及びそれらがどの規則に従うべきかを理解するために用いられる抽象概念である。NPポイントは、視差のないパノラマ撮像システム用の物体空間からシステムを見た場合に、隣接する光学システムのエッジにおける主光線が、光軸と交差するポイントである。
【0018】
具体化された本発明によれば、各撮像システムのNPポイントは、同じ位置に存在しなければならない。即ち、隣接する光学システムの光線は、平行でなければならない。
…(中略)…
【0020】
本発明の実施形態は、多重カメラパノラマ撮像システムに関し、そこにおいて、隣接する撮像ユニットの視野は、図7の概略図に示されているように、全撮像システムの合成視野を形成するために結合する。従来のパノラマ撮像システムは、それらのそれぞれの視野が、図8の概略図に示されているように重複するような方法で撮像ユニットを組み立てるが、それは、結果としての画像における視差につながり、且つ視差を除去するように画像をつなぎ合わせる補正ソフトウェアを必要とする。」
「【図7】
[図:0001424851000002.jpg]
【図8】
[図:0001424851000003.jpg]
」
「【0021】
この例示的な実施形態において、1つの撮像ユニットのエッジに当たる光線は、両方の撮像システムが同じエッジ光線セットを共有するように、隣接する撮像ユニットの入射光線と平行に位置するように制約される。図13の3次元モデルで見られるように、1つの撮像ユニットのエッジにおける光線は、隣接する撮像ユニットのエッジにおける光線と同じである。光線は、十二面体エッジの表面に沿って位置するように制約された灰色の線である。各五角形状のレンズのエッジにおける灰色の光線は、その隣接する表面に入る光線に一致する。エッジ光線の下の半径における全ての光線は、これらの光線が、隣接するシステムからの光線と重複しないように、より小さな入射角に位置する。」
「【図13】
[図:0001424851000004.jpg]
」
「【0022】
具体化されたパノラマ撮像システムは、NPポイントが画像センサの背後にある撮像システムを設計する前述の技術を利用し、且つ視差が最小か又はない360度FOVカメラを作製するために、多数のレンズシステムを十二面体ジオメトリに組み合わせる。
【0023】
第1のレンズ素子は、正五角形の表面に形作られる。完全なシステムは、12の個別の撮像ユニットから構成され、それぞれは、五角形のエッジに沿った、且つ十二面体のジオメトリによって指定されたジオメトリを満たす入射角を有するように制約された光線用の共通のNPポイントを備える。
【0024】
十二面体は、12の表面を備えた多面体である。多面体は、エッジにおいて連結された多角形の集まりからなる3次元の固体である。十二面体の各側面は、正五角形(等しい長さの側面を備えた五角形)である。十二面体は、ジオメトリを利用してレンズシステムを設計するために理解されなければならない幾つかの重要な幾何学的特性を有する。特性は、なぜ第1のレンズが五角形の表面に形作られなければならないかを簡単に論じた後で、次に順番に論じられる。
【0025】
円形に縁取られたレンズを十二面体ジオメトリにおける第1の素子として使用することにより、エッジ光線を整列させる現在の技術を用いて360度視野における全ての情報を捕捉することは不可能である。第1のレンズが、五角形に内接される際の欠けたエリア(図14における網掛け領域)は、盲点を生成する。視野が決して重複しないので、この情報は、決して捕捉されない。円エリアと円エリアが内接される五角形エリアとの間の比率は、π/5又は62.83%と等しいことを計算することができる。これは、我々のまわりの360度視野用に我々が記録できる最大の情報量である。レンズと五角形との間に生成される盲点は、360度画像における情報のほぼ40%を削除する。」
「【図14】
[図:0001424851000005.jpg]
」
「【0026】
次の説明は、十二面体のジオメトリを示すように意図され、且つ前述のNP技術及び十二面体ジオメトリを利用してレンズシステムを生成する場合に必要であるが、しかし本明細書で具体化される、視差のないパノラマ撮像システムを生成するために不可欠ではない。
…(中略)…
【0028】
続きを表示(全15行)
…(中略)…「a」は、正五角形の辺長である。…(中略)…
【0031】
制約
十二面体の幾何学的特性は、十二面体を具体化する12のレンズの設計を制約する。特に、我々は、上記で与えられた説明に基づく次の4つのパラメータを有する。
1.第1のレンズ素子の直径:1.7013a
2.第1のレンズ素子から十二面体の中心までの距離:1.1135a
3.第1のレンズ素子の上端から十二面体の中心までの距離:1.31a
4.FOV=37.3777度
最初の3つの制約のうち任意の2つを与えられたとすると、レンズの光軸と第1のレンズ素子の上端との間の角度が、37.3777度(図19を参照)であることを得る。
tan-1((1.7013/2)/1.1135)-37.377°
我々は、37.37度のこの角度がレンズの視野であることを望む。これは、NPポイント、即ち、混合(混合角度は完全なFOVである)の主光線が物体空間において光軸と交差するポイントが、十二面体の中心に位置することを保証する。他の制約の全ては、レンズ素子が、NPポイントの前に位置すること、及び要素が、光の31.717度半角円錐内に入ることを保証する。」
「【図19】
[図:0001424851000006.jpg]
」
「【0032】
他のレンズ素子及びセンサの直径
4つの制約が上記で与えられたとすると、我々は、十二面体ジオメトリに収まるために第1のレンズ素子後の各レンズ素子のサイズが、何でなければならないかが分かる。先行するレンズ素子が収まるために、どんなレンズ又はセンサ素子も、十二面体の中心で始まる、且つ第1のレンズ素子の直径に接する光の31.717度円錐内に収まらなければならない。第1のレンズ素子からの距離が増加すると共に、先行するレンズ素子の直径は、比例して減少する(図20を参照)。」
「【図20】
[図:0001424851000007.jpg]
」
「【0033】
第1のレンズ素子に先行するどんなレンズ素子又はセンサの最大部直径も、(1.1135a-D)*tan(31.716度)以下であることが幾何学的に分かる。この式で、Dは、第1のレンズ素子からのその素子の距離である。
【0034】
従って、ここで、我々は、このレンズシステムが、十二面体のジオメトリと一致し、且つ360度撮像をできるようにする5つの制約を有する。
続きを表示(全15行)
1.第1のレンズ素子の直径:1.3763a。
2.第1のレンズ素子から十二面体の中心までの距離:1.1135a。
3.第1のレンズ素子の上端から十二面体の中心までの距離:1.31 a。
4.FOV=37.377度
5.φLi<(1.1135a-DLI、Li)tan(31.717°)
この式でφLiは、距離DLI、Liによって第1のレンズ素子から分離された任意のレンズ素子の直径である。全てのレンズが、十二面体の中心から出る光の31.717度円錐内に入るように設計される上記の5つの制約が与えられたとすると、視差のないレンズシステムを構成することが可能である。
【0035】
システム設計
レンズ用のジオメトリが選択された。プラトンの固体は、それらが、等しいジオメトリ及び体積の多くの固体で構成されるという特性を有する。360度を撮像するシステム用に、これは、同じ複製されたレンズ設計から複合撮像システムを作製できるようにする。十二面体ジオメトリは、それがそのジオメトリにおいてほぼ球状であるので選択された。
【0036】
1つの撮像ユニットのエッジ光線が、隣接ユニットのエッジ光線と平行に位置するために、それらは、同じ角度で入射しなければならない。両方の撮像ユニットによって共有される角度は、十二面体エッジ面の角度である。エッジ面の中心において、十二面体中心の中心に対する角度は、図21に示されているように、31.717度である。エッジ面のコーナーにおいて、十二面体中心の中心に対する角度は、図22に示されているように、37.377度である。」
「【図21】
[図:0001424851000008.jpg]
【図22】
[図:0001424851000009.jpg]
」
「【0037】
隣接する撮像ユニットに沿った光線を一致させるために、撮像ユニットの第1のレンズは、十二面体の表面と一致する五角形に切り込まれる。エッジの中心において、表面に当たる光線は、31.717度の入射角で入射する。エッジのコーナーにおいて、入射光線の入射角は、37.377度である。レンズのエッジに沿った全てのポイントにおいて、入射光線の入射角は、十二面体表面のジオメトリと一致するようにされる。
【0038】
五角形レンズのエッジに沿った37の光線用の入射角は、十二面体の中心から五角形フェースの中心までの距離を知り、且つ十二面体の中心から、図21及び22に示されているような問題のエッジポイントまでの距離を知り、三角法を用いて計算された。各光線の高さは、五角形エッジに沿って位置するように制約された。例えば、表面1の外接円を示す120mmの半径を用いると、ポイント1の光線は、48.54mmの高さ及び31.717度の入射角を有する。ポイント37の光線は、60mmの高さ及び37.377度の入射角を有する。表Iは、図23におけるポイント1~ポイント36の37ポイント用の光線高さ及び入射角の値を示す。」
「【図23】
[図:0001424851000010.jpg]
」
「【0039】
【表1】
[図:0001424851000011.jpg]
【0040】
光線制約を示す図が、図24に示されている。光線1は、48.54mmの高さ及び31.717度の入射角を有する。光線1は、図24においてポイント1を通過する光線である。光線2は、60mmの高さ及び37.377度の入射角を有し、図24においてポイント37を通過する光線である。全ての37の光線は、上記の表に指定された光線高さ及び角度によって制約される。このように制約されて、全ての光線は、十二面体の表面と同じ角度でレンズに入射する。別の方法でそれらの同じ光線を見ると、我々は、光線が、図25及び26に示されているように、正確な入射角で五角形ジオメトリに適切に制約されることが分かる。」
「【図24】
[図:0001424851000012.jpg]
【図25】
[図:0001424851000013.jpg]
【図26】
[図:0001424851000014.jpg]
」

イ 判断

(ア)a 本件特定事項は、「前記別個の撮像システムのそれぞれは、前記第1のレンズ要素の前記エッジに沿って入射する複数の主光線を、少なくとも前記エッジの中心から前記エッジの一端まで、前記複数の前記エッジによって画定される前記エッジ面角度に等しい入射角を有するように制約するよう構成されることで、前記隣接する前記別個の撮像システムにより制約され、前記共通エッジに沿って入射する前記主光線が平行になり、前記共通エッジに沿って組み合わされた視野を提供して、視差が最小限の又は視差がない画像を形成する」というものであるところ、そのうち「前記別個の撮像システムのそれぞれは、前記第1のレンズ要素の前記エッジに沿って入射する複数の主光線を、少なくとも前記エッジの中心から前記エッジの一端まで、前記複数の前記エッジによって画定される前記エッジ面角度に等しい入射角を有するように制約するよう構成される」という特定事項は、その文言に照らせば、一の(別個の)撮像システム(「撮像システムA」などという。)において観念される一の主光線が、共通エッジ上の一のポイント(「ポイントP」などという。)を通過するとしたとき(その通過する主光線を「エッジ通過主光線R」などという。)、a)共通エッジの中心(ポイントP1)を通過する主光線(以下「エッジ中心通過主光線R1」という。)とb)共通エッジの一端(ポイントP2)を通過する主光線(以下「エッジ一端通過主光線R2」という。)という少なくとも2つの主光線R1及びR2について、これらの主光線R1及びR2が、それぞれポイントP1及びP2に係るエッジ面角度に等しい入射角を有するように制約されているという事項(以下「本件制約事項」という。)を満たすことを少なくとも特定しているといえる。そして、ポイントPに係るエッジ面角度は、三次元幾何学的形状の中心OとポイントPを結んだ直線OPと、撮像システムAの光軸のなす角といえるのであり、このことは、「エッジ面角度」が本願発明において「前記複数のエッジのそれぞれは、前記三次元幾何学的形状の前記中心を通る、前記別個の撮像システムの光軸に対して、前記エッジに沿った複数のポイントにおいて複数のエッジ面角度を画定」すると特定されていることに照らせば明らかである。そうすると、本件制約事項を満たす主光線Rは、共通エッジ上のポイントPに入射する前の光線(以下「エッジ入射前主光線」という。)をそのまま直線状に延長すると、中心Oに至るものであると解される。

このように、本件特定事項は、エッジ中心通過主光線R1とエッジ一端通過主光線R2という少なくとも2つのエッジ通過主光線R1及びR2に対して、それらのエッジ入射前主光線をそのまま直線状に延長すると中心Oに至ることを特定しているところ、これら2つのエッジ通過主光線R1及びR2は、結像に寄与しているのが当然の前提になっているといえる。これに加えて、本件特定事項がレンズ要素を含んだ多重カメラパノラマ撮像システムに係るものであること、換言すれば、Fナンバーが、ピンホールカメラのような非常に大きい光学系ではなく、相当程度小さい光学系を用いるものであることに照らせば、本件特定事項を満たすことの前提には、エッジ中心通過主光線R1とエッジ一端通過主光線R2のみならず、エッジ中心通過主光線R1を含めた相当程度の範囲の物体光とエッジ一端通過主光線R2を含めた相当程度の範囲の物体光が、しかるべく、結像に寄与すること(以下「本件結像寄与事項」という。)も存在すると解するのが相当である。

b そこで、本願明細書等の記載に接した当業者が、技術常識をも踏まえて本件特定事項(その前提となる本件結像寄与事項も含む。)を実施することができるかどうかについて検討する。

(a)本願明細書等には、第1のレンズ要素のエッジに沿って位置する37の光線に対する制約を示すデータとしてポイント1~37までの光線高さと入射角を示すデータが記載されている(【0039】)が、これらのデータは単なる制約条件の記載にすぎず、これらの制約条件を具体的に実現するために各別個の撮像システムのレンズ系の諸元(各レンズの曲率半径、屈折率、レンズ間隔等)をどのように設計するかについての、一般的な指針や具体的な設計例の記載はない。

この点、本願明細書等の【0031】、【0034】等には、第1のレンズ要素の直径や十二面体の距離等の制約についての記載があるが、これらの記載は、やはり、単なる制約条件の記載にすぎず、各レンズの曲率半径、屈折率、レンズ間隔等を明らかにするものではないから、上記でいうレンズ系の諸元を具体的に設計するための指針を開示するものではない。

(b)そして、本件特定事項は、軸対称性(軸を中心に、形状や物理量が軸からの距離のみに依存し、周方向に依存しない性質)を有しない構造に係るものである(本願発明で特定されている「中心を有する三次元幾何学的形状」が例えば正十二面体であれば、本件特定事項における「前記複数の前記エッジ」に係る「複数のエッジを有する第1のレンズ要素」は5回対称性を有するのであり、軸対称性を有しない。)ところ、仮に本件特定事項が軸対称性を有する構造に係るものであれば、本件特定事項における「エッジの中心」及び「エッジの一端」に対応する点が、いずれも光軸を中心とした同一の円上にあることとなり、そのため、例えば、エッジ一端通過主光線R2について本件制約事項(その前提となる本件結像寄与事項も含む。)を満たすように撮像システムAのレンズ系を設計すれば、エッジ中心通過主光線R1に対しても必然的に本件制約事項を満たすことになるから、これらいずれの点に対しても本件制約事項(その前提となる本件結像寄与事項を含む。)を満たすような撮像システムAのレンズ系が設計可能ないし実施可能であることは、当業者にとって理解できるといってよい。

しかしながら、本件特定事項は、上記のとおり軸対称性を有しない構造に係るものであるから、軸対称性を有する構造と同様には考えることができず、本件特定事項を実施するためには、(i)本件結像寄与事項を満たすことを前提としつつ、(ii)エッジ一端通過主光線R2について本件制約事項を満たすこと(エッジ一端通過主光線R2に係るエッジ入射前主光線をそのまま直線状に延長すると中心Oに至ること)とエッジ中心通過主光線R1についても本件制約事項を満たすこと(エッジ中心通過主光線R1に係るエッジ入射前主光線をそのまま直線状に延長すると中心Oに至ること)を、両立する必要がある。しかるところ、(ii)のみを設計することはさておき、(i)を前提とした(ii)の設計は、当業者といえどもたやすく実現できるとは言い難い。

すなわち、(ii)のみを考慮した設計は、エッジ一端通過主光線R2のみが通過する範囲とエッジ中心通過主光線R1のみが通過する範囲という、ごく狭い(少なくとも2つの)範囲のみを考慮して撮像システムAのレンズ系を設計すれば足りることから、これら両者の光(エッジ一端通過主光線R2が通過する範囲の物体光とエッジ中心通過主光線R1が通過する範囲の物体光)がレンズ系上の同じ場所に入射する可能性は低く、したがって、そのような設計は可能とみる余地がある。しかしながら、(i)を前提とした(ii)の設計は、(ii)のみを考慮した設計とは異なり、エッジ一端通過主光線R2を含む相当程度の範囲の物体光の一部とエッジ中心通過主光線R1を含む相当程度の範囲の物体光の一部が、レンズ系上の同じ場所に入射することが通常に生じることから、そのような場所において、一方の光をしかるべく結像に寄与させようとすると、他方の光にも影響を与えてしまうのであり、したがって、当業者といえどもたやすく設計ないし実現できるとは言い難い。そして、このことは、本件特定事項が「複数の主光線」を、「エッジの中心」及び「エッジの一端」のみならず、その間の任意の点においても制約することを念頭においていることからみて、ますます明らかである。

(c)このように、本願明細書等には、本件特定事項(その前提となる本件結像寄与事項も含む。)を実施することに関する内容について、単なる制約条件が記載されているにとどまり、これらの制約条件を具体的に実現するために各別個の撮像システムのレンズ系の諸元をどのように設計するかについての、一般的な指針や具体的な設計例の記載はないところ、本願明細書等の記載に基づいては、当業者であっても、(i)本件結像寄与事項を満たすことを前提としつつ、(ii)エッジ一端通過主光線R2及びエッジ中心通過主光線R1について本件制約事項を満たすことを実現するのは困難であり、(iii)エッジ一端通過主光線R2及びエッジ中心通過主光線R1に加えて、他のエッジ通過主光線Rについても本件結像寄与事項及び本件制約事項を満たすことを実現するのはさらに困難である。

そして、これらの問題点を解消するに足りる技術常識があるともいえない。

そうすると、本願明細書等の記載に接した当業者が、技術常識をも踏まえて本件特定事項(その前提となる本件結像寄与事項も含む。)を実施することができるとはいえない。

(イ)これに対して請求人は、本願明細書等の記載は本願発明について実施可能要件を満たしている旨主張し、その根拠として、a)本願発明は、単体のレンズ系に係るものではなく、複数のレンズ系を配置したレンズシステムに係るものであって、レンズ系の諸元ではなく、レンズシステムを実現するために必要なことが本願明細書等に記載されている、b)本願明細書等の【0017】~【0040】には、本願発明に係るシステムを設計する方法について、数式、レンズ形状及び例が開示されており、これらの開示があれば光学設計ソフトウェアを使用して十分に設計が可能である、c)引用文献にもこれらのデータ以上のことは開示されていない、d)前記(ア)bで説示するところの、エッジ一端通過主光線R2及びエッジ中心通過主光線R1その他のエッジ通過主光線Rに対して本件結像寄与事項及び本件制約事項を満たすようにするという設計の困難性については、光学設計は、そのような設計を行うために光学ソフトウェアを用いるものである、e)本願発明は、レンズ系の諸元ではなく、エッジ中心通過主光線R1を制約するアイデアを提供することに特徴がある、ことを挙げる。

しかしながら、a)及びe)については、本願発明が請求人の主張するようなものであるとしても、エッジ一端通過主光線R2及びエッジ中心通過主光線R1その他のエッジ入射主光線Rに対して本件結像寄与事項及び本件制約事項を満たすようにするという設計を行うことは、本願発明の内容に照らして重要であると考えられる上、本願発明を実施するために常に問題になることでもあることから、請求人の主張によって、この設計を実現できるか否かについての前記(ア)の判断が左右されることはない。b)及びd)については、本願明細書等の記載は、前記(ア)b(a)で説示したとおり、単なる制約条件を開示するものにすぎず、これらの制約条件を具体的に実現するための設計例や一般的な指針を明らかにするものではないし、光学ソフトウェアを用いればこれらの制約条件から具体的な設計を行うことができるとの請求人の主張は具体性を欠いている。c)については、本願明細書等の記載の実施可能要件の判断には関連のない事項である。

(ウ)以上のとおりであるから、本願の発明の詳細な説明の記載は、技術常識に照らしても、本件特定事項を当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。

したがって、本願は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。

2 進歩性欠如について

(1)引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定

(ア)引用文献1に記載された事項

当審拒絶理由に引用され、本願の優先日前に発行された特開2003-162018号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は当審が付したものである。

a 請求項1、3

「【請求項1】 広範囲の被写体を分割した複数の各分割被写部をそれぞれ個別に複数の撮像手段によって撮影し、該各撮像手段からの映像情報を入力した処理手段によって1つの映像に張り合わせ処理する撮像装置であって、
上記撮像手段が、レンズ及び該レンズを通過した光線を検知する撮像素子を備え、
上記撮像手段の上記レンズの開口絞りの中心を通る主光線中、ガウス領域に位置する主光線を選択し、該選択された主光線の物空間における直線成分を延長して光軸と交わる点をNP点と定義したときに、
各上記撮像手段において、上記NP点が上記撮像素子より後方に設定され、
かつ上記複数の撮像手段の各NP点を1つのNP点を中心とした所定の半径領域内に集合させたことを特徴とする撮像装置。」

「【請求項3】 上記各撮像手段において、上記レンズ及び上記撮像素子とを有する光学系が、上記NP点と上記レンズの各方向の外周部とを通る直線からなる空間に内包されるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。」

b 【0001】

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、全天(全方位)等の広い範囲を撮像することができる撮像装置に係わる。」

c 【0005】~【0007】

「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の従来の撮像装置にあっては、ビデオカメラ1,2,3,4の水平画角は90°以上必要であり、図9に示す2つのビデオカメラ3,4の撮像領域9がオーバーラップした領域10で、いわゆるパララックス(視差)を発生する。
【0006】カメラから被写体までの距離により、このパララックスの値が異なるので、カメラ3とカメラ4でそれぞれ撮像した画像を張り合わせる際には、オーバーラップした領域10内の画像のどの位置を基準とするかによって、張り合わせて得られる画像が変わってくる。即ちパララックスのある画像において、実用的な張り合わせを実施するには、画像のどの部分が重要であるかを編集者が眼で見て判断して、その位置を基準とする必要がある。このため、動画の張り合わせを自動化することは困難であり、撮像した画像の処理の自動化の大きな障害となっている。
【0007】上述した問題の解決のために、本発明においては、パララックスの発生を抑制することにより、複数のカメラから広い範囲の画像を得ることができる撮像装置を提供するものである。」

d 【0008】~【0009】

「【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の撮像装置は、広範囲の被写体を分割した複数の各分割被写部をそれぞれ個別に複数の撮像手段によって撮影し、各撮像手段からの映像情報を入力した処理手段によって1つの映像に張り合わせ処理するものであって、撮像手段が、レンズ及びこのレンズを通過した光線を検知する撮像素子を備え、撮像手段のレンズの開口絞りの中心を通る主光線中、ガウス領域に位置する主光線を選択し、この選択された主光線の物空間における直線成分を延長して光軸と交わる点をNP点と定義したときに、各撮像手段においてNP点が撮像素子より後方に設定され、かつ複数の撮像手段の各NP点を1つのNP点を中心とした所定の半径領域内に集合させたものである。
【0009】上述の本発明の撮像装置の構成によれば、各撮像手段においてNP点が撮像素子より後方に設定されていることにより、各撮像手段の光学系が他の撮像手段の光路をさえぎらない。また、複数の撮像手段の各NP点を1つのNP点を中心とした所定の半径領域内に集合させたことにより、各撮像手段の間のパララックスをなくすことが可能になる。」

e 【0013】~【0025】、【図面の簡単な説明】、図1~3

「【0013】まず、本発明の具体的な実施の形態に先立ち、本発明の概要を説明する。
【0014】ビデオカメラ等に用いられているレンズは、複数のレンズを組み合わせて色収差や像面湾曲、フレアなどの収差をできるだけ少なくするように設計されている。このようなレンズは、原理的には図1に示すような薄い1枚の凸レンズ201で構成されており、この凸レンズ201の焦点位置に、CCDやMOS等の固体撮像素子によるビデオ用撮像デバイス、あるいは銀塩カメラの場合であればフィルムである撮像素子202が配置されている。そして、このような基本構造の撮像装置において、画角αは、凸レンズ201による屈折分を無視すると、ほぼ撮像素子202の直径d1と、凸レンズ201と撮像素子202との間の距離d4(焦点距離)により決定され、tan(α/2)=(d1/2)/(d4)の式で表すことができる。
【0015】従って、このようなカメラを用いて被写体を撮影するときに、仮に凸レンズ201の内部中心に位置する後述のNP点(ノンパララックス点)203を中心として回転させながら撮像すれば、それにより得られた複数の画像間にパララックスは発生しない。
【0016】ここでNP点とは、本願の発明者らが光学系の基本的な考えに基づいて、複数の画像をつなぎ合わせた場合に生じるパララックスを如何に減少させることができるかを多くの実験を積み重ねた結果として検出されたもので、図2に示すように、物体で反射した光が等価凸レンズ300を介して撮像部301に像を結ぶ状態の場合で説明する。
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【0017】即ち等価凸レンズ300は、複数のレンズ302~308によって構成され、開口絞り309がレンズ304とレンズ305の間に設けられている。尚、図2中321は鏡胴を示し、322はカメラを示す。
【0018】そして、開口絞り309の中心を通る無数の主光線のうち、光軸310に最も近い領域、つまり収差が最も小さいガウス領域を通る主光線311を選択する。この主光線311のうちの物空間312における直線部分を延長して光軸310と交わる点をNP点(ノンパララックス点)313として設定したものである。
【0019】そして、このNP点313の存在を検証した上で、さらに複数のカメラを用いた場合即ち1つのカメラを回転させる代わりに、同時に複数のカメラを用いて撮像する場合に応用した。図1に示した1つの凸レンズ201ではNP点203の位置は制約されたポイントのみとなるため、複数のカメラをそれぞれのNP点203を共通するように配置することは物理的に不可能である。これに対して、図2に示す等価凸レンズ300のように複数のレンズを組み合わせることによって、NP点313をほぼ光軸310の延長線上の任意の位置に設定することが可能になることを見出した。
【0020】同時に複数のカメラを用いて撮像する場合に、それぞれのNP点を一致させる構成としては、例えば図2に示した複数のレンズ間(302-303)の空中にNP点313を位置させる構成、あるいは図示しないがレンズの前段にミラーを設置してミラーで反射させた光をカメラで撮像すると共に各カメラのNP点の虚像の位置を一致させる構成が考えられる。
【0021】しかしながら、いずれの構成でもカメラの撮像素子と信号処理回路部が物理的障害となり、全方位を撮影することが不可能となっていた。即ちNP点が図2に示したようにレンズの中にある場合に、図3に示すように各カメラのNP点12を一点に一致させたとする。図3は、4つのカメラのそれぞれの便宜的な画角14,15,16,17とその境界線10,11を示している。
【0022】この場合、図3に示す1つのカメラ13(画角14)の撮像素子や信号処理回路部が入った部分が他のカメラの撮像範囲(画角16)と物理的に干渉してしまう。このため、干渉する部分の画像が得られず、全方位の画像を得ることができなくなってしまう。
【0023】尚、カメラの光軸をずらして、カメラを縦方向に重ねることは可能であるが、これでは画像が垂直方向にずれたものとなってしまう。
【0024】そこで、本発明は、各カメラにおいてそのNP点を撮像素子より後方に配置すると共に、所定の半径領域(球形領域)内に全てのカメラのNP点を位置させるようにしたものである。これによって、カメラ画像間にパララックスは発生しない。
【0025】そして、上述のようにNP点を撮像素子より後方にするには、複数のレンズを組み合わせて、テレフォト型(望遠型)の光学系を構成すればよい。テレフォト型の光学系を構成して、NP点を撮像素子より後方にするには、例えば物空間側(被写体側)に凸レンズ作用(収束作用)を有するレンズを配置すると共に、像空間側(撮像素子側)に凹レンズ作用(発散作用)を有するレンズを配置すればよい。」
「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の撮像装置の原理を説明するための図である。
【図2】本発明の撮像装置の原理を説明するための図である。
【図3】NP点がレンズの中にある場合を示した平面図である。」
「【図1】
[図:0001424851000015.jpg]
【図2】
[図:0001424851000016.jpg]
【図3】
[図:0001424851000017.jpg]
」

f 【0026】~【0035】、【図面の簡単な説明】、図4、5

「【0026】続いて本発明の具体的な実施の形態を説明する。本発明の撮像装置の一実施の形態として、撮像装置を構成する単位の撮像部の概略構成図を図4に示す。この撮像部は、複数のレンズから成る撮像レンズ群21と、開口絞り22と、撮像素子23と、信号処理部24とを有してなり、撮像レンズ群21及び開口絞り22が鏡筒(鏡胴)25内に収納されて構成されている。
【0027】そして、撮像レンズ群21のうち、物空間側(被写体側)にある前玉のレンズ群28が凸レンズ作用(収束作用)を有し、前述したテレフォト型(望遠型)の光学系を構成している。これにより、NP点26を撮像素子23より後方に位置させることができる。
【0028】さらに、前玉のレンズ28aの外周部とNP点26とを直線27A,27Bで結んだ空間内に鏡筒(鏡胴)25及び信号処理部24が収まるように設計することにより、この空間内にビデオカメラを配置することが可能となる。
【0029】従って、図4に示した撮像部を、それぞれのNP点26を略一致させるように複数配置させることにより、撮像素子23及び信号処理部分24が他のカメラの光路を遮ることがなくなり、上下左右全方位360度の映像をパララックスなしで撮影することが可能になる。
【0030】各撮像部のNP点を略一致させることは、具体的には所定の半径領域(球体)内に各撮像部のNP点を設定することに相当する。パララックスをなくして各撮像部が撮像した画像を張り合わせるためには、少なくとも各撮像部のNP点が半径約50mmの領域(球体)内に配置されるように構成し、より好ましくは各撮像部のNP点が半径約20mmの領域(球体)内に配置されるように構成する。
【0031】図4に示した撮像部を、それぞれのNP点26を略一致させるように複数配置させた構成の撮像装置の一形態を図5に示す。図5に示す撮像装置は、前玉のレンズ28の外周が五角形となっているテレフォト型の光学系を組み立てて、正12面体とした場合を示す。この撮像装置は、正12面体の12面のうち、底面は支柱43の取り付けや各カメラの信号線(図示せず)の引き出しに用い、残りの11面の各面に1個ずつ合計11個の光学系(図4参照)を配置して構成されている。
【0032】この構成から明らかなように、多面体上に光学系を配置することにより、ほとんど全天球を撮像するカメラシステムが構成できる。
【0033】尚、多面体としては図5に示した正12面体に限らず、正6面体(立方体)や正20面体でもよい。また、多面体は正多面体が設計しやすいが、光学系の設計により、必ずしも正多面体でなくともよい。
【0034】上述の本実施の形態の構成によれば、複数の撮像部のNP点26を略一致させることにより、各撮像部の画像のパララックスをなくすことができる。また、複数の撮像部により、広い範囲、図5の構成によればほぼ全方位を撮像することが可能になる。従って、パララックスをなくし、かつ全方位を撮影することができる。
【0035】また、複数の撮像部により撮像領域を分担して撮像するため、各カメラにおいて高い解像度で撮像することにより、広い範囲を高い解像度で撮像することが可能になる。」

「【図面の簡単な説明】」

「【図4】本発明の一実施の形態の撮像装置を構成する撮像部の概略構成図である。
【図5】図4の撮像部を複数配置させた構成の撮像装置の一形態を示す図である。」
「【図4】
[図:0001424851000018.jpg]
【図5】
[図:0001424851000019.jpg]
」

(イ)引用発明の認定

前記(ア)に摘記した引用文献1に記載された事項から、引用文献1には、図5の実施形態に係る撮像装置について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付してある。)。

<引用発明>

「全天(全方位)等の広い範囲を撮像することができる撮像装置であって、(【0001】)
広範囲の被写体を分割した複数の各分割被写部をそれぞれ個別に複数の撮像手段によって撮影し、該各撮像手段からの映像情報を入力した処理手段によって1つの映像に張り合わせ処理する撮像装置であって、
上記撮像手段が、レンズ及び該レンズを通過した光線を検知する撮像素子を備え、
上記撮像手段の上記レンズの開口絞りの中心を通る主光線中、ガウス領域に位置する主光線を選択し、該選択された主光線の物空間における直線成分を延長して光軸と交わる点をNP点と定義したときに、
続きを表示(全11行)
各上記撮像手段において、上記NP点が上記撮像素子より後方に設定され、 かつ上記複数の撮像手段の各NP点を1つのNP点を中心とした所定の半径領域内に集合させており、(【請求項1】)
これによって、各撮像手段の間のパララックスをなくすことが可能となり、(【0009】)
NP点は、それを中心として回転させながら撮像すれば、それにより得られた複数の画像間にパララックスが発生しないものであり、(【0015】)
上記各撮像手段において、上記レンズ及び上記撮像素子とを有する光学系が、上記NP点と上記レンズの各方向の外周部とを通る直線からなる空間に内包されるように配置されており、(【請求項3】)
前玉のレンズの外周が五角形となっている上記光学系を組み立てて、正12面体としており、(【0031】)
従って、パララックスをなくし、かつ全方位を撮影することができる、(【0034】)
撮像装置。」

(2)対比

ア 対比分析

本願発明と引用発明を対比する。

(ア)本願発明の「多重カメラパノラマ撮像システムであって、」「多重カメラパノラマ撮像システム。」という特定事項について

a 引用発明の「撮像装置」は、本願発明の「撮像システム」に相当する。

b そして、引用発明の「撮像装置」は「全天(全方位)等の広い範囲を撮像することができる」ものであるから、本願発明でいう「パノラマ撮像システム」であるといえるし、また、引用発明の「撮像装置」は「広範囲の被写体を分割した複数の各分割被写部をそれぞれ個別に複数の撮像手段によって撮影し、該各撮像手段からの映像情報を入力した処理手段によって1つの映像に張り合わせ処理する」ものであるから、本願発明でいう「多重カメラ」「撮像システム」であるといえる。

c したがって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を備える。

(イ)本願発明の「中心を有する三次元幾何学的形状を形成する並んだアレイに構成された複数の別個の撮像システムを備え、」という特定事項について

a 引用発明の「正12面体」は、本願発明の「中心を有する三次元幾何学的形状」に相当する。

b 引用発明の「複数の撮像手段」は、それぞれ「撮像素子」を備えており、「広範囲の被写体を分割した複数の各分割被写部をそれぞれ個別に複数の撮像手段によって撮影」するためのものであることから、当該それぞれの「撮像手段」は本願発明の「撮像システム」に相当し、引用発明は、本願発明でいう「複数の別個の撮像システム」を備えているといえる。

c そして、引用発明では、各「撮像手段」における「前玉のレンズの外周が五角形となっている上記光学系を組み立てて、正12面体とする」から、引用発明の「複数の撮像手段」は、本願発明でいう「中心を有する三次元幾何学的形状を形成する並んだアレイに構成された」ものであるといえる。

d したがって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を備える。

(ウ)本願発明の「前記別個の撮像システムのそれぞれは、複数のエッジを有する第1のレンズ要素を含み、前記複数のエッジのそれぞれは、隣接する前記別個の撮像システムの前記第1のレンズ要素の隣接するエッジに境界を接するように配置され、前記別個の撮像システムの前記第1のレンズ要素間で複数の共通エッジを形成し、前記複数のエッジのそれぞれは、前記三次元幾何学的形状の前記中心を通る、前記別個の撮像システムの光軸に対して、前記エッジに沿った複数のポイントにおいて複数のエッジ面角度を画定し、」という特定事項について

a 引用発明の「撮像手段」における「光学系」が有する「前玉のレンズ」は、本願発明の「第1のレンズ要素」に相当する。そして、引用発明の「前玉のレンズ」は、「外周が五角形となっている」ところ、「五角形」の「外周」の各辺は、本願発明の「エッジ」に相当し、「五角形」全体として「エッジ」は「複数」であることとなる。

b 引用発明の「前玉のレンズの外周が五角形となっている上記光学系」は「組み立て」られて、「正12面体」の「撮像装置」となるところ、正12面体を構成する各面はいずれも五角形であるという幾何学的事項を考え合わせれば、引用発明では、隣り合う「撮像手段」の「光学系」が、「五角形となっている」「前玉のレンズ」の五角形の一辺を共有するように「組み立て」られていることが明らかである。そうすると、引用発明において、そのように一辺を共有することは、本願発明において、「隣接するエッジに境界を接する」ことに相当し、引用発明の共有される一辺は、本願発明の「共通エッジ」に相当するのであり、また、そのため、引用発明は、本願発明でいう「前記複数のエッジのそれぞれは、隣接する前記別個の撮像システムの前記第1のレンズ要素の隣接するエッジに境界を接するように配置され、前記別個の撮像システムの前記第1のレンズ要素間で複数の共通エッジを形成」するものといえる。

c 引用発明の「撮像装置」は「正12面体」となっているから、対称性からみて、引用発明の「撮像手段」(本願発明の「別個の撮像システムのそれぞれ」に相当。)における「光学系」は、その光軸が本願発明でいう「前記三次元幾何学的系上の前記中心を通る」ものといえる。そして、引用発明の「前玉のレンズ」の各辺(本願発明の「共通エッジ」に相当。)は、幾何学的にみて、本願発明でいう「前記三次元幾何学的形状の前記中心を通る、前記別個の撮像システムの光軸に対して、前記エッジに沿った複数のポイントにおいて複数のエッジ面角度を画定」するものといえる。

d したがって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を備える。

(エ)本願発明の「前記別個の撮像システムのそれぞれは、前記第1のレンズ要素の前記エッジに沿って入射する複数の主光線を、少なくとも前記エッジの中心から前記エッジの一端まで、前記複数の前記エッジによって画定される前記エッジ面角度に等しい入射角を有するように制約するよう構成されることで、前記隣接する前記別個の撮像システムにより制約され、前記共通エッジに沿って入射する前記主光線が平行になり、前記共通エッジに沿って組み合わされた視野を提供して、視差が最小限の又は視差がない画像を形成する、」という特定事項について

a 引用発明は、「各撮像手段の間のパララックスをなくすことが可能とな」るものであるから、本願発明でいう「前記共通エッジに沿って組み合わされた視野を提供して、視差が最小限の又は視差がない画像を形成する」ものであるといえる。

b したがって、本願発明と引用発明とは、「前記共通エッジに沿って組み合わされた視野を提供して、視差が最小限の又は視差がない画像を形成する」点で共通する。

イ 一致点及び相違点の認定

前記アの対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次に示すとおりである。

(ア)一致点

「多重カメラパノラマ撮像システムであって、
中心を有する三次元幾何学的形状を形成する並んだアレイに構成された複数の別個の撮像システムを備え、
前記別個の撮像システムのそれぞれは、複数のエッジを有する第1のレンズ要素を含み、前記複数のエッジのそれぞれは、隣接する前記別個の撮像システムの前記第1のレンズ要素の隣接するエッジに境界を接するように配置され、前記別個の撮像システムの前記第1のレンズ要素間で複数の共通エッジを形成し、前記複数のエッジのそれぞれは、前記三次元幾何学的形状の前記中心を通る、前記別個の撮像システムの光軸に対して、前記エッジに沿った複数のポイントにおいて複数のエッジ面角度を画定し、
前記共通エッジに沿って組み合わされた視野を提供して、視差が最小限の又は視差がない画像を形成する、
多重カメラパノラマ撮像システム。」である点。

(イ)相違点

本願発明は、「前記別個の撮像システムのそれぞれは、前記第1のレンズ要素の前記エッジに沿って入射する複数の主光線を、少なくとも前記エッジの中心から前記エッジの一端まで、前記複数の前記エッジによって画定される前記エッジ面角度に等しい入射角を有するように制約するよう構成されることで、前記隣接する前記別個の撮像システムにより制約され、前記共通エッジに沿って入射する前記主光線が平行にな」るものであるのに対し、引用発明は、各撮像手段において、NP点(撮像手段のレンズの開口絞りの中心を通る主光線中、ガウス領域に位置する主光線を選択し、該選択された主光線の物空間における直線成分を延長して光軸と交わる点)が撮像素子より後方に設定され、かつ複数の撮像手段の各NP点を1つのNP点を中心とした所定の半径領域内に集合させており、レンズ及び撮像素子とを有する光学系が、NP点とレンズの各方向の外周部とを通る直線からなる空間に内包されるように配置されているものである点。

(3)判断

ア 相違点についての判断

(ア)引用発明から出発した当業者が相違点に係る構成に至るためには、(i)引用発明の「複数の撮像手段の各NP点」が、いずれも、撮像装置を構成する「正12面体」の中心に一致すること、(ii)各撮像手段において、「NP点」((i)によれば「正12面体」の中心に一致する。)と当該撮像手段に含まれる光学系の「レンズの各方向の外周部」とを通る直線(以下「レンズ外周部・中心間直線」という。)が、当該「NP点」を定義するための「ガウス領域に位置する主光線」に係るレンズに入射する前の光線(以下「レンズ入射前特定主光線」という。)に一致すること、(iii)一の「撮像手段」に含まれる「光学系」(以下「光学系A」という。)とそれに隣接する他の「撮像手段」に含まれる「光学系」(以下「光学系B」という。)において、光学系Aを内包する空間を画定するレンズ外周部・中心間直線が、光学系Bを内包する空間を画定するレンズ外周部・中心間直線と実質的に一致し、このことが「撮像装置」に含まれる任意の光学系A及びBにおいて成立すること、(iv)上記(ii)及び(iii)の各撮像手段に含まれる光学系における「レンズの各方向の外周部」の「各方向」に対応する位置が、「レンズ」中の「外周が五角形となっている」「前玉のレンズ」(本願発明の「第1のレンズ要素」に相当。)の少なくとも「一端」及び「中心」を含むこと、を満たすようにすれば足りる。

(イ)そこで、引用発明から出発した当業者が、前記(i)~(iv)を満たすように構成するか否かについて検討する。

a 引用発明は、「複数の撮像手段の各NP点を1つのNP点を中心とした所定の半径領域内に集合させ」るものであるところ、「NP点は、それを中心として回転させながら撮像すれば、それにより得られた複数の画像間にパララックスが発生しないものであ」ることから、各NP点は、これを互いに一致させるのが、パララックスが発生しないという観点において最適なものであることが、当業者にとって明らかである。そして、各NP点が一致するということは、「正12面体」の「撮像装置」における対称性からみて、各NP点が「正12面体」の中心に一致することにほかならない(以上については、引用文献1の図3のNP点12の位置からも理解できることである。)。

したがって、引用発明において(i)が満たされた構成(以下「引用発明各NP点一致構成」という。)は、最適なものとして当業者が典型的に想定することであるし、いずれにせよ、当業者が適宜設計し得たことにすぎない。

b そして、引用発明各NP点一致構成において、(ii)及び(iii)を満たした構成は、当業者が自然に至るものといえる。

(a)すなわち、引用発明各NP点一致構成は、「各撮像手段の間のパララックスをなくすことが可能とな」り、かつ「全方位を撮影することができる」ものであるところ、このことが可能になるメカニズムは、(段階1)「全方位を撮影する」ために、被写界を、(可能な範囲で)切れ目無く、かつ重複無く分割した上で、(段階2)パララックスは撮像領域がオーバーラップした領域で発生するものである(【0005】)ことから、オーバーラップした領域が生じないようにするために、分割された一の被写界には、(可能な範囲で)その全体を撮像できる一のみの撮像手段を割り当てるという2つの段階に基づくものであるといえる。このことは、引用文献1の図3において、被写界の全方位が、カメラの画角の境界線10、11により、切れ目無く、かつ重複無く分割されていること(段階1関係)や、引用文献1の図4において、NP点26と前玉のレンズ28aの外周部を結んだ直線27A、27B(当該直線はNP点を通過することから、NP点の定義に照らして、当該直線上を入射する光線は、主光線となる。)が、撮像手段の境界線と一致することが見て取れること(段階2関係)からも明らかである。

(b)しかるに、引用発明各NP点一致構成では、(ii)で記載したところのレンズ外周部・中心間直線によって、パララックスのないように被写界が複数に分割されるとともに、同じく(ii)で記載したところのレンズ入射前特定主光線によって、一の撮像手段におけるパララックスのないように撮像できる範囲(言い換えると、他の撮像手段の撮像領域とオーバーラップした領域が生じないような撮像範囲)が定められると解されることから、レンズ外周部・中心間直線をレンズ入射前特定主光線に一致させれば、分割された一の被写界には、(可能な範囲で)その全体を撮像できる一のみの撮像手段が割り当てられたことになるのが明らかである。加えて、互いに隣接する撮像手段において、レンズ外周部・中心間直線同士を実質的に一致させれば、複数に分割された被写界が(可能な範囲で)切れ目が無く、かつ重複も無いものになるのも明らかである。

(c)この点、引用発明各NP点一致構成においては、「NP点」を定義するために「ガウス領域に位置する主光線」を用いているものの、このことは、上記の判断を左右するものではない。すなわち、まず、「ガウス領域」とは、一般に、光線追跡において線形近似が許される領域を意味しているところ、どこまでを線形近似が許されると評価するかについては、それが考慮されている状況に応じて相当程度広い範囲をとって差し支えないともいえる(実際、引用発明は、正12面体に係るものであるから、これを実現する各撮像手段においても、「ガウス領域」に位置しているとみなしているといえる。)ことから、引用発明各NP点一致構成におけるレンズ外周部・中心間直線に一致する光線もガウス領域に位置しているといえる。また、仮にそうはいえないとしても、引用文献1では、「ガウス領域に位置する」ことについての技術的意味が、収差が最も小さいという自明なこと以上のものは説明されていないし、前記のメカニズムによれば、「主光線」を「ガウス領域」(上記のとおり、光線追跡において線形近似が許される領域)に配置させなければならない技術的必然性もないことから、「NP点」を定義するために「ガウス領域」外の主光線を用いることも当業者は適宜なし得たことである。そうすると、「ガウス領域に位置する」との特定によって、上記の判断が左右されることはない。

そのため、引用発明各NP点一致構成において(ii)及び(iii)が満たされるようにした構成は、最適なものとして当業者が典型的に想定するものであるし、いずれにせよ、当業者が適宜設計し得たことにすぎない。

c そして、引用発明各NP点一致構成において、(iv)を満たすようにすることは、前記bで説示した、被写界を、(可能な範囲で)切れ目無く、かつ重複無く分割した上で、分割された一の被写界には、(可能な範囲で)その全体を撮像できる一のみの撮像手段を割り当てるというメカニズムにおいて、上記2つの「可能な範囲」をできるだけ大きくするという通常求められる方向性のものを実現した結果、当業者が自然に至ることにすぎない。

すなわち、前記bのとおり、被写界の分割は、レンズ外周部・中心間直線、つまり、各撮像手段における「NP点」(前記aのとおり、「正12面体」の中心に一致している。)と当該撮像手段に含まれる光学系の「レンズの各方向の外周部」とを通る直線によってされることから、前記直線が多数であるほど、つまり、「レンズの各方向の外周部」の「各方向」が多数であるほど、さらに換言すれば、前記直線が、上記の「レンズ」中の「外周が五角形となっている」「前玉のレンズ」の各辺において、より多数の点を通過するほど、光軸に垂直な断面における、被写界の境界の形状をより五角形に近づけることができ、その結果、被写界をより切れ目無く、かつ重複無く分割できることになるのが明らかである。そして、そのように多数とされたレンズ外周部・中心間直線を、いずれもレンズ入射前特定主光線、つまり、当該「NP点」を定義するための「ガウス領域に位置する主光線」に係るレンズに入射する前の光線に一致させれば、分割された一の被写界に、(可能な範囲で)その全体を撮像できる一のみの撮像手段が割り当てられたことになる。

このように、当業者は、上記メカニズムにおいて通常求められる方向性のものを実現することを通じて、各撮像手段におけるレンズ外周部・中心間直線を、「レンズ」中の「外周が五角形となっている」「前玉のレンズ」の各辺における多数の点を通過するものとした上で、それらの直線を全て、レンズ入射前特定主光線と一致させようとするといえる。しかるに、上記の「レンズ」中の「外周が五角形となっている」「前玉のレンズ」の各辺における多数の点として、一端及び中心という点は、数学的にみても、最も代表的なものであるから、当業者がこれを選択することに何らの困難性もないというべきである。

さらにいえば、引用発明各NP点一致構成において「外周が五角形となっている」「前玉のレンズ」の各辺の一端及び中心を通過する直線に着目する点については、図4からも明らかであるといえる。すなわち、図面の簡単な説明に「【図5】図4の撮像部を複数配置させた構成の撮像装置の一形態を示す図である。」と記載されていることからみて、図4に示される撮像部は正12面体に係る図5の一の撮像部として妥当するものであるところ、図4は、その撮像部の光軸を通る断面図であると解されることから、外周が五角形となっている前玉のレンズにおける一の頂点(辺の一端)と当該頂点に向かい合う辺の中点(辺の中心)とを結んだ直線と、光軸とを含む断面について記載したものであると解するのが自然であり、そうである以上、直線27A及び27Bのうち、一方が五角形の頂点(及びNP点)を通るものであり、他方が五角形の辺の中点(及びNP点)を通るものであると考えられる。しかるに、図4には、これらの直線27A、27Bに沿った光線が描かれていることからみて、引用文献1では、五角形の頂点を通過する光線及び五角形の辺の中点を通過する光線にも着目していることが明らかであるといえる。

d 以上のとおり、引用発明から出発した当業者は、前記(i)~(iv)の構成に自然にないし適宜至るのであり、したがって、相違点に係る構成は、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 本願発明の効果について

本願発明の効果は、その構成が奏するものとして、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて当業者が予測し得たものであって、格別顕著なものということはできない。

ウ 請求人の主張について

これに対して請求人は、引用文献1には、複数の画像間にパララックスが発生しないことについて、狭角レンズを用いた場合にのみ課題が解決される方法が開示されているにとどまり、引用発明に係る「正12面体」のような広角レンズを用いる態様を実際に実現することは困難である旨主張し、その根拠として、引用文献1には、NP点を定義するために、ガウス領域に位置する主光線を用いており、本願発明のように共通エッジに沿った主光線を最適化することを開示していないことを挙げる。しかしながら、前記ア(イ)b(a)で説示した、被写界を、(可能な範囲で)切れ目無く、かつ重複なく分割した上で、分割された一の被写界には、(可能な範囲で)その全体を撮像できる一のみの撮像手段を割り当てるという引用発明のメカニズムからすれば、主光線がガウス領域に位置するかどうかが重要ではないことは、前記ア(イ)b(c)で説示したとおりであるし、また、被写界の境界となる、「外周が五角形となっている」「前玉のレンズ」の外周部における主光線に対して制約を課すことも、前記ア(イ)b(b)で説示したとおり、当業者が当然想定する事項であるといえる。

さらに、請求人は、本願発明では、共通エッジに沿った主光線の制約が複数の主光線に対して行われている旨主張するが、前記ア(イ)cで説示したとおり、上記メカニズムに照らせば、光軸に垂直な断面における、被写界の境界の形状をより五角形に近づけるために、当業者が当然想定する事項である。

エ 小括

したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび

以上のとおり、本願は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしておらず、また、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-007428

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